JP4010654B2 - 斜組杭の杭頭部施工方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、海上等に人工地盤等を高く支持するため実海域に構築された斜組杭の杭頭部を一体化処理する技術分野に属し、更に云えば、高所作業となる斜組杭の杭頭部の一体化処理をハーフプレキャスト版を用いて無足場、無支保工で安全、確実、迅速に低コストで施工する杭頭部施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、海上等に人工地盤を高く支持するため実海域に構築された斜組杭の杭頭部を一体化処理する技術としては、下記の工法が考えられ実施されている。
▲1▼ 斜組杭の杭頭部に受け金具を取り付け、同受け金具で型枠(ハーフプレキャスト版)等に仮置き、支持させる工法。
▲2▼ 斜組杭の周囲(海上)に支保工及び足場を設け、支保工で型枠(ハーフプレキャスト版)等を支持させる工法。
【0003】
【本発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記▲1▼の工法は、受け金具が型枠等の重量を杭との摩擦力のみで支持する構造なので、受け金具自体も大規模な構造になり、受け金具の取り付け、取り外しが困難で、仮設工事に手間と時間が掛かるという問題があった。
また、前記▲2▼の工法は、支保工を製作し、海底等から立ち上げた形に設置する作業が生じるので、仮設工事に多大の作業時間を要し、コストが嵩むという問題点があった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、ハーフプレキャスト版そのものを作業足場に利用し、斜組杭の杭頭部を無足場、無支保工で安全、確実、迅速に低コストで施工できる斜組杭の杭頭部施工方法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係る斜組杭の杭頭部施工方法は、
少なくとも2本の杭頭部を集合させた斜杭の各杭頭部に巻き付けた杭頭部補強板同士を連結プレートで互いに接合して斜組杭とする工程と、
前記の各杭頭部にパイルキャップを取付ける工程と、
前記斜組杭の杭頭部を包囲する環状体で内側に作業用床部を有する形態のハーフプレキャスト版をクレーン等の重機で吊り、前記斜組杭の杭頭部を包囲する高さ位置に略水平に仮置きし、位置、レベルを調整する工程と、
前記斜組杭の杭頭部のパイルキャップと前記ハーフプレキャスト版とをアングル等の本つなぎ材で接合する工程と、
前記クレーン等の重機によるハーフプレキャスト版の吊りを解除し、ハーフプレキャスト版の下端開口部に底型枠を設ける工程と、
前記斜組杭の杭頭部及び前記ハーフプレキャスト版の内部の配筋作業を行い、同ハーフプレキャスト版の内部にコンクリートを打設して前記斜組杭の杭頭部とハーフプレキャスト版とを一体化させる工程と、
から成ることをそれぞれ特徴とする。
【0006】
請求項2に記載した発明は、請求項1に記載した斜組杭の杭頭部施工方法において、2本の斜杭を平面的に略180度向きを変えて対称的に配設し、同2本の斜杭の杭頭部に巻き付けた杭頭部補強板同士を連結プレートで互いに接合して斜組杭とすることを特徴とする。
請求項3に記載した発明は、請求項1に記載した斜組杭の杭頭部施工方法において、底型枠は斜組杭の杭頭部パイルキャップに吊り支持させることを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態及び実施例】
以下に、図示した本発明の実施形態及び実施例を説明する。
図1は、実海域の海底深くに構築し海上にまで立ち上げられた2本の斜杭1,1が、水平面に対し約65度傾けられ、これを平面的に見れば略180度向きを変えて対称的に配置され、各斜杭1,1の杭頭部が海上で集合した形態を示し、更に前記2本の斜杭1,1の各杭頭部に杭頭部補強板2を巻き付け、2本の斜杭1,1の前記杭頭部補強板2,2同士を連結プレート3で互いに接合して斜組杭10とした段階を示している。図中の符号4は海面を示している。なお、前記斜杭1は、海底地盤のみならず、陸地の地中に設置して空中に高く構築した場合にも本発明を同様に実施することができる。また、斜杭1の傾斜角度は前記した約65度に限定されない。地震等の水平力に十分抵抗可能な範囲で傾斜角度が決定される。更に、図示の実施例では斜杭1を2本用いて実施しているが、これに限定されない。斜杭1の杭頭部が集合可能な範囲で3本、4本の場合でも同様に実施できる。なお、斜杭1は図示したようにパイルキャップを必要とする中空構造であるか、又はパルキャップの取付けに必要な中空部を杭頭部にのみ設けた中実構造を前提に実施される。
【0008】
図2は、上記斜杭1の各杭頭部にパイルキャップ6を取付けた段階を示している。パイルキャップ6は通例鋼製であり、斜杭1の中空部1aへ挿入して取付ける脚部6aを斜杭1と同一角度に傾けたものとして有する。また、後記本つなぎのための連結部6bも備えている。パイルキャップ6は最終的には杭頭部へ固定する処置を行う。
【0009】
図3A、Bは、前記斜組杭の杭頭部を包囲する環状体(図3B)で内側に作業用床部5aを有する形態のハーフプレキャスト版5を、クレーン等のワイヤー14で吊り、斜組杭の杭頭部の上方から斜組杭の杭頭部を包囲する高さ位置まで吊り込み(下降させ)、略水平に仮置きした段階を示している。前記仮置きとは、クレーンのワイヤー14で吊ったままハーフプレキャスト版5の高さ(レベル)及び水平位置を適正に調整して、斜組杭を構成する各斜杭1の杭頭部に載置することを云う。前記クレーンによる据付け、仮置きを容易にするため、図示を省略したが、吊具(天びん)が好適に使用される。前記仮置きの後、作業員19は前記ハーフプレキャスト版5の作業用床部5aに乗り込み各種の作業を開始する。ワイヤー14はハーフプレキャスト版5の上部に設けた吊り部5cに連結される。
【0010】
図示例のハーフプレキャスト版5は、横が5100mm程度、縦が2100mm程度、高さは1400mm程度の大きさの直方体形状のRC造環状体で、縦断面は略L字形状である(図3A)。前記ハーフプレキャスト版5の内側には、便宜上図示を省略した打ち込み鉄筋と共に、後記本つなぎのための連結部5bが露出されている。
【0011】
図4は、前記の位置決め後に、前記斜組杭の杭頭部へ取付けたパイルキャップ6の連結部6bと前記位置決めされたハーフプレキャスト版5の連結部5bとをアングル等の本つなぎ材15を用いて溶接接合してハーフプレキャスト版5の位置を固定(確定)し、その後クレーンのワイヤー14を撤去した段階を示している。前記本つなぎ材15の本数及び配置は、斜組杭の杭頭部のパイルキャップ6とハーフプレキャスト版5とをしっかり接合できる本数及び配置であれば良い。前記の接合手段は溶接には限らず、ボルト止め等でも良い。
【0012】
図4はまた、前記ハーフプレキャスト版5の下端開口部に底型枠16を敷設し、これをパイルキャップ6から吊り下げたワイヤー17で支持させた段階も示している。前記底型枠16は、2本の斜杭1,1の水平な断面形状に沿って切り抜いた孔を有する長方形状の鉄板を、ハーフプレキャスト版5の長手方向(図4の左右方向)への切線で略二分割した二つの底型枠片を、図4の紙面と垂直方向へ差し入れて両先端を当接させ、同当接面を溶接接合して敷設する。そして、斜組杭の杭頭部のパイルキャップ6から吊り下げた複数本のワイヤー17により吊り支持させる。
【0013】
図5は、前記斜組杭の杭頭部及び前記ハーフプレキャスト版5の内部に補強鉄筋13の配筋作業を行った段階を示す。
図6は、前記ハーフプレキャスト版5の内部にコンクリート18を打設して前記斜組杭の杭頭部とハーフプレキャスト版5との一体化処理を行い、斜組杭の杭頭部施工の工程を完了した段階を示している。
【0014】
こうして、上記の各工程を経て一体化処理される斜組杭の杭頭部は、前記ハーフプレキャスト版5の作業用床部5aが足場及び支保工を兼ねるので、無足場、無支保工で実施できる。また、受け金具や支保工を製作し設置する工程が無いので、迅速に低コストで実施できる。更に、本つなぎ材15を複数本用いて斜組杭の杭頭部とハーフプレキャスト版5をしっかり接合しているので、安全、且つ確実に実施できる。
【0015】
【本発明が奏する効果】
本発明の斜組杭の杭頭部施工方法によれば、ハーフプレキャスト版の作業用床部が足場及び支保工を兼ねるので、無足場、無支保工で実施できる。従来のように受け金具や支保工を製作し、設置する工程が無いので、迅速に低コストで実施できる。
【0016】
また、本つなぎ材を複数本用いて斜組杭の杭頭部とハーフプレキャスト版をしっかり接合しているので、安全、且つ確実に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2本の斜杭の杭頭部を連結プレートで互いに接合した段階を示した正面図である。
【図2】斜杭の杭頭部にパイルキャップを取付けた段階を示す断面図である。
【図3】Aはハーフプレキャスト版をクレーン等により斜組杭の杭頭部の高さ位置に下降させた仮置き段階を示した断面図であり、Bは平面図である。
【図4】ハーフプレキャスト版を斜組杭の杭頭部へ仮置きし本つなぎ材で固定し底型枠を敷設した断面図である。
【図5】斜組杭の杭頭部及びハーフプレキャスト版の配筋作業を行った段階を示した断面図である。
【図6】ハーフプレキャスト版の内部にコンクリートを打設した段階を示した断面図である。
【符号の説明】
1 斜杭
2 杭頭部補強板
3 連結プレート
5 ハーフプレキャスト版
5a 作業用床部
6 パイルキャップ
13 鉄筋
14 クレーンのワイヤー
15 本つなぎ材
16 底型枠
17 ワイヤー
18 コンクリート

Claims (3)

  1. 少なくとも2本の杭頭部を集合させた斜杭の各杭頭部に巻き付けた杭頭部補強板同士を連結プレートで互いに接合して斜組杭とする工程と、
    前記の各杭頭部にパイルキャップを取付ける工程と、
    前記斜組杭の杭頭部を包囲する環状体で内側に作業用床部を有する形態のハーフプレキャスト版をクレーン等の重機で吊り、前記斜組杭の杭頭部を包囲する高さ位置に略水平に仮置きし、位置、レベルを調整する工程と、
    前記斜組杭の杭頭部のパイルキャップと前記ハーフプレキャスト版とを、アングル等の本つなぎ材で接合する工程と、
    前記クレーン等の重機によるハーフプレキャスト版の吊りを解除し、ハーフプレキャスト版の下端開口部に底型枠を設ける工程と、
    前記斜組杭の杭頭部及び前記ハーフプレキャスト版の内部の配筋作業を行い、同ハーフプレキャスト版の内部にコンクリートを打設して前記斜組杭の杭頭部とハーフプレキャスト版とを一体化させる工程と、
    から成ることをそれぞれ特徴とする、斜組杭の杭頭部施工方法。
  2. 2本の斜杭を平面的に略180度向きを変えて対称的に配設し、同2本の斜杭の杭頭部に巻き付けた杭頭部補強板同士を連結プレートで互いに接合して斜組杭とすることを特徴とする、請求項1に記載した斜組杭の杭頭部施工方法。
  3. 底型枠は斜組杭の杭頭部のパイルキャップに吊り支持させることを特徴とする、請求項1に記載した斜組杭の杭頭部施工方法。
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