一方、本出願人は、上述した光ディスクに対する光ピックアップ部の構成の簡素化、全体の小型化、高精度化、信頼性の向上等を可能にした光結合素子であるCLC(コンフォーカル・レーザ・カプラ)素子を提案した。このCLC素子は、半導体レーザからなる発光素子とフォトダイオードからなる受光素子が近接したモノリシックに形成される。
図10〜図12を用いて、この光結合素子であるCLC素子について説明する。同図において、1は光結合素子、2は被照射部、3は収束手段即ち集光光学レンズを示す。
光結合素子1は、発光素子4と受光素子5が共通の半導体基板6上に一体化されて成り、発光素子4からの出射光LFが被照射部2に収束照射し、この被照射部2から反射された戻り光LRが収束手段3によって集光され、収束手段3の共焦点位置(厳密には共焦点位置近傍)に配置された受光素子5に受光されるように構成される。この構成では発光素子からの光が、被照射部2において反射される前及び後において、その光軸を鎖線aで示すように、互いに同軸の径路を通過して受光素子5において受光される構成とする。
この光結合素子1では、図11の拡大図で示すように、発光素子4が水平共振器を有する半導体レーザLD(但し9はそのストライプ電極)と反射鏡7で構成され、受光素子5がフォトダイオード(PD)で構成される。半導体レーザLDは、これからの出射光LFを反射鏡7によって反射させて被照射部2に向かう径路に一致させている。
そして、受光素子5に向かう戻り光LRは、光回折限界(即ちレンズの回折限界)近傍まで収束させるものであり、受光素子5はその少なくとも一部の受光面が、この光回折限界内、すなわち発光素子4からの出射光の波長λ、収束手段3の開口数をNAとするとき、受光面の配置基準面Sを横切る発光素子4からの出射光の光軸aからの距離が1.22λ/NA以内の位置に設けられるようにする。
また、この場合、図10及び図12に示すように、受光素子5の受光面の配置基準面Sで発光素子4の出射光LFの直径Φsを、上記光回折限界の直径Φdより小とし、受光素子5の有効受光面は、発光の直径Φs外に位置するようにする。ここで、発光素子として半導体レーザを用いると、その出射光の直径Φsは、約1〜2μm程度とすることができる。一方、収束手段3の開口数NAが光結合素子1側を例えば0.09〜0.1、出射光の波長λが780nm程度の場合、回折限界すなわちΦdは1.22λ/NA≒10μm程度となる。
そして、収束手段3の1の焦点位置に発光素子4を配置し、共焦点位置に被照射部(例えば光ディスク)2を配置する。発光素子4の半導体レーザLDから出射されたレーザ光は反射鏡7で概略垂直方向へ反射され、収束手段3を通して被照射部2に照射される。合焦時に、被照射部2から反射された戻り光、すなわち、被照射部2における記録情報を含んで反射した戻り光LRは、同じ光路を逆戻りし、再び収束手段3によって集光され、共焦点位置近傍に配置された受光素子5のフォトダイオードに入射し、この戻り光LRが受光素子5で受光検出されるようになる。即ち、電気信号に変換され再生信号として取り出される。
図13〜図14は光結合素子1の製造方法の一例を示す。この場合、選択的MOCVD(有機金属化学気相成長)法によって製造することができる。
図13Aに示すように、第1導電型例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板11上に、半導体レーザを構成する各半導体層をエピタキシャル成長する。すなわち、例えば順次基板11と同導電型のAlGaAsよりなる第1のクラッド層12、例えばGaAsよりなる活性層13、第1のクラッド層12と異なる第2導電型例えばp型の第2のクラッド層14とを順次MOCVD等によってエピタキシーした積層半導体層を形成する。
次に、図13Bに示すように、これらエピタキシャル成長した半導体層14,13および12の一部を半導体レーザLDとして残して少なくとも最終的に反射鏡7を形成する部分をRIE(反応性イオンエッチング)等によってエッチングする。そして、このエッチング面による半導体層の両端面を半導体レーザLDの両共振器端面16A,16Bとし、両端面16A及び16B間に半導体レーザの水平共振器を形成する。この場合、図示しないが、不純物のイオン注入等によって電流阻止層を形成する。
次に、図13Cに示すように、基板11上に残された半導体レーザLDの構成部を覆って、選択的MOCVDのマスク層17、例えばSiO2,SiN等の例えば絶縁膜を被着形成する。
次に、図14Dに示すようにマスク層17によって覆われていない基板11上に第1導電型例えばn型のGaAsによる第1の半導体層18を選択的にMOCVDによって形成し、続いて第2導電型例えばp型のGaAsによる第2の半導体層19を選択的にMOCVDによって形成し、第1及び第2の半導体層18及び19によってフォトダイオードPDを形成する。
次に、図14Eに示すように、マスク層17をエッチング除去し、半導体レーザLD上と第2半導体層19上の一部とに、半導体レーザLDとフォトダイオードPDの各一方の電極21及び2を夫々オーミックに被着し、基板11の裏面に共通の電極23をオーミックに被着する。
この場合、図14Dの基板11上に選択的にエピタキシャル成長された半導体層、この例では第1及び第2の半導体層18及び19の、共振器端面16Aと対向する面が特定された結晶面となる。例えば、半導体レーザの水平共振の共振器方向即ち図14Dの矢印bで示す方向を、[011]結晶軸方向とするときは対向面は{111}A結晶面による斜面として生じモフォロジーの良い斜面が形成される。このようにして形成された特定された結晶面による斜面を図14Eに示すように、半導体レーザの水平共振器の端面16Aからの出射光を反射させて所定方向に向ける反射鏡7とすることができる。
この構成によれば、反射鏡7が、結晶面によって形成されることから、鏡面性にすぐれ、またその傾きの設定が正確に行われる。
ところで、上述した光結合素子1のように、発光素子である半導体レーザLDと受光素子であるフォトダイオードPDが近接してモノシリックに形成されている場合、半導体レーザLDの駆動電流が一部リークしてフォトダイオードPDに流れるようになり、フォトダイオードPDで発生した光電流がリーク電流以下であれば、信号が得られなくなりSNが低下する懼れが生ずる。
光結合素子1において、半導体レーザLDと、反射鏡7側のフォトダイオードPDとの距離はミクロンオーダ(〜μm)と極めて隣接し、しかもそれぞれはモノリシックに形成されている。この光結合素子1の等価回路を図17A,Bに示すが、1つのpnpトランジスタで表わされることになる。すなわち、コレクタ電流が半導体レーザLDとフォトダイオードPDとの間のクロストーク電流となる。
前述したように、反射鏡7側のフォトダイオードPDの接合を結晶成長で作製した場合、反射鏡7の面が{111}A結晶面であると、この第1の半導体層18の{111}A結晶面上にも第2の半導体層19の結晶成長が起こるため、図15の矢印B1で示すように、半導体レーザLDとGaAs基板11の付け根が近くなり、即ちフォトダイオードPDのpn接合jが半導体レーザLD側に近くなることがわかる。
また、図16に示すように、選択的MOCVDによって第1の半導体層18を形成した後、Zn拡散によってp型拡散層25を形成してpn接合を形成した場合においても、矢印B2で示すように図15と同様に、フォトダイオードPDのpn接合jが、半導体レーザLD側に近くなり、このためリーク電流が発生し易い。
半導体レーザ側にフォトダイオードPDのpn接合が近づくということは、図17A,Bの等価回路によるとpnpトランジスタのベース領域が狭く、pnpトランジスタの利得が大きくなり、コレクタ電流が多く流れることで、結果として、半導体レーザLD−フォトダイオードPD間のクロストーク電流、即ちリーク電流が大きくなる。
上述の問題は、CLC素子以外の例えば水平共振器による半導体レーザからのレーザ光を反射鏡で反射させて上方に出射させるいわゆる面発光型の半導体レーザと、之に近接して設けたモニタ用フォトダイオードを備えた光学装置においても同様である。
本発明は、上述の点に鑑み、発光素子と受光素子が近接して形成された光学装置において、その発光素子と受光素子間の電気的クロストークを低減できる光学装置、及びこの光学装置の製造方法を提供するものである。
本発明に係る光学装置は、{100}結晶面を主面とするGaAsの同一半導体基板上に、共振器長方向を[0−11]結晶軸方向として発光素子であるGaAs系の半導体レーザと、受光素子であるGaAsのフォトダイオードが結晶成長により近接して形成され、フォトダイオードが{111}B結晶面の傾斜面を有するように連続的に結晶成長された導電型の異なる第1の半導体層及び第2の半導体層からなり、pn接合が{111}B結晶面を除く第1の半導体層の上面のみに形成され、{111}B結晶面が、半導体レーザからの出射光を反射する反射鏡となり、半導体レーザとフォトダイオードとの間に高濃度不純物領域によるリーク電流阻止層が設けられた構成とする。
本発明の光学装置においては、{100}結晶面を主面とする同一半導体基板上に、共振器長方向を[0−11]結晶軸方向として発光素子である半導体レーザと、これに近接する受光素子であるフォトダイオードが結晶成長により形成されるので、フォトダイオードを構成する半導体層側では半導体レーザと対向する面(反射鏡)が{111}B結晶面となる。この{111}B結晶面上には結晶成長が起こらないので、フォトダイオードのpn接合は、第1の半導体層の上面にのみ形成される。従って、半導体レーザより離れた位置でフォトダイオードのpn接合が形成されることになり、半導体レーザとフォトダイオード間でのリーク電流(いわゆる電気的クロストーク)が低減される。
更に半導体レーザとフォトダイオードとの間に高濃度不純物領域によるリーク電流阻止層を設けることにより、オーバーフローしたキャリアが高濃度不純物領域で消滅し、半導体レーザとフォトダイオード間のリーク電流が更に低減される。
本発明に係る光学装置は、{100}結晶面を主面とするGaAsの同一半導体基板上に、共振器長方向を[0−11]結晶軸方向として発光素子であるGaAs系の半導体レーザと、受光素子であるGaAsのフォトダイオードが結晶成長により近接して形成され、フォトダイオードが{111}B結晶面の傾斜面を有するように連続的に結晶成長された導電型の異なる第1の半導体層及び第2の半導体層からなり、pn接合が{111}B結晶面を除く第1の半導体層の上面のみに形成され、{111}B結晶面が、半導体レーザからの出射光を反射する反射鏡となり、半導体レーザ又はフォトダイオードと半導体基板との間に、半導体レーザ又はフォトダイオード側の半導体領域とは反対導電型の半導体層が形成された構成とする。
本発明の光学装置においては、上述と同様に、フォトダイオードを構成する半導体側では半導体レーザと対向する面(反射鏡)が{111}B結晶面となり、フォトダイオードのpn接合が、第1の半導体層の上面にのみ形成されて、半導体レーザより離れた位置に形成されることになり、半導体レーザとフォトダイオード間でのリーク電流が低減される。
さらに、半導体レーザ又はフォトダイオードと半導体基板との間に、半導体レーザ又はフォトダイオード側の半導体領域とは反対導電型の半導体層を形成することにより、この反対導電型半導体層によるpn接合でリーク電流が阻止され、半導体レーザとフォトダイオード間のリーク電流が更に低減される。
本発明に係る光学装置は、{100}結晶面を主面とする半絶縁性GaAsの同一半導体基板上に、共振器長方向を[0−11]結晶軸方向として発光素子であるGaAs系の半導体レーザと、受光素子であるGaAsのフォトダイオードが結晶成長により近接して形成され、フォトダイオードが{111}B結晶面の傾斜面を有するように連続的に結晶成長された導電型の異なる第1の半導体層及び第2の半導体層からなり、pn接合が{111}B結晶面を除く第1の半導体層の上面のみに形成され、{111}B結晶面が、半導体レーザからの出射光を反射する反射鏡である構成とする。
本発明に係る光学装置においては、上述と同様に、フォトダイオードを構成する半導体側では半導体レーザと対向する面(反射鏡)が{111}B結晶面となり、フォトダイオードのpn接合が、第1の半導体層の上面にのみ形成されて、半導体レーザより離れた位置に形成されることになり、半導体レーザとフォトダイオード間でのリーク電流が低減される。
さらに、半導体基板を半絶縁性基板で形成することにより、この半絶縁性の半導体基板でリーク電流が阻止され、半導体レーザとフォトダイード間のリーク電流が更に低減される。
本発明に係る光学装置の製造方法は、{100}結晶面を主面とするGaAaの半導体基板上に共振器長方向を[0−11]結晶軸方向としてGaAs系のエピタキシャル成長により、半導体レーザを形成する工程と、半導体レーザをマスク層で被覆する工程と、マスクで被覆されない半導体基板上に、半導体レーザに近接して導電型が異なり{111}B結晶面の傾斜面を有するGaAsの第1及び第2の半導体層を連続的にエピタキシャル成長し、{111}B結晶面を除く第1の半導体層の上面のみにpn接合が形成されたフォトダイオードを形成する工程とを有し、{111}B結晶面を半導体レーザからの出射光を反射する反射鏡とする。
本発明の光学装置の製造方法においては、{100}結晶面を主面とする半導体基板上に共振器長方向を{0−11}結晶軸方向としてエピタキシャル成長により、半導体レーザを形成する。この半導体レーザをマスク層で被覆して、半導体基板上にフォトダイオードを構成する第1及び第2の半導体層を連続的にエピタキシャル成長することにより、半導体レーザに対向する面が{111}B結晶面となる。このとき、第2の半導体層は、第1の半導体層の{111}B結晶面上には形成されず、第1の半導体層の上面のみに形成される。従って、pn接合は、半導体レーザから離れた第1の半導体層の上面のみに形成される。
本発明によれば、{100}結晶面を主面とするGaAsの同一半導体基板上に、共振器長方向を[0−11]結晶軸方向として発光素子であるGaAs系の半導体レーザと、受光素子であるGaAsのフォトダイオードが結晶成長により形成されるので、フォトダイオードを構成する半導体層側に{111}B結晶面の反射鏡が形成される。この半導体層側の反射鏡が結晶成長面である{111}B結晶面であるので、フォトダイオードのpn接合を形成するための第2の半導体層は反射鏡に結晶成長せず、第1の半導体層の上面のみに成長する。従って、フォトダイオードのpn接合が半導体レーザより離れた半導体層の上面のみに形成されることになり、半導体レーザとフォトダイオード間の電気的クロストーク(即ちリーク電流)を低減でき、フォトダイオードの高いSNを得ることができる。
そして、半導体レーザとフォトダイオードとの間に高濃度不純物領域によるリーク電流阻止層を設けることにより、オーバーフローしたキャリアが高濃度不純物領域で消滅し、更に半導体レーザとフォトダイオード間のリーク電流を低減でき、フォトダイオードの高いSNを得ることができる。
あるいは、半導体レーザ又はフォトダイオードと半導体基板との間に、半導体レーザ又はフォトダイオード側の半導体領域とは反対導電型の半導体層を形成することにより、この反対導電型半導体層によるpn接合でリーク電流が阻止され、更に半導体レーザとフォトダイオード間のリーク電流を低減でき、フォトダイオードの高いSNを得ることができる。
あるいは、半導体基板を半絶縁性GaAs基板で形成することにより、この半絶縁性の半導体基板でリーク電流が阻止され、更に半導体レーザとフォトダイオード間のリーク電流を低減でき、フォトダイオードの高いSNを得ることができる
本発明の光学装置の製造方法によれば、半導体基板上に半導体レーザとこれに近接して半導体レーザからの出射光を反射する反射鏡とフォトダイオードが形成され、半導体レーザとフォトダイオード間でのリーク電流が低減された光学装置を製造することができる。
以下、図面を参照して本発明に係る光学装置の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係る光学装置である光結合素子(即ちCLC素子)の基本的な構成を示す。本例の光結合素子31は、発光素子である水平共振器の半導体レーザLDと、この半導体レーザLDからの前方出射光LFを立ち上げるための反射鏡33と、出射光LFの被照射部からの戻り光LR(図示せず)を共焦点位置近傍で受光検出するための受光素子であるフォトダイオードPDを同一半導体基板32上にモノリシックに形成し、その際、反射鏡33の面を{111}B結晶面で形成する。
即ち、この光結合素子31は、前述の図13及び図14の製法と同様にして第1導電型例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板32上にMOCVD法によりエピタキシャル成長した例えばAlGaAs(又はGaAs)によるn型の第1のクラッド層35、例えばGaAs(又はAlGaAs)による活性層36、例えばAlGaAs(又はGaAs)によるp型の第2のクラッド層37からなり、両共振器端面38A,38Bを有する水平共振器の半導体レーザLDを形成すると共に、この同一のn型GaAs基板32上の半導体レーザLDの前方出射光LF側の共振器端面38Aと対向した位置に、選択的MOCVDによって第1導電型例えばn型のGaAsによる第1の半導体層40及び第2導電型例えばp型のGaAsによる第2の半導体層41を順次結晶成長して反射鏡33と共に、pn接合jを有するフォトダイオードPDを形成する。
そして本例では、特に、反射鏡33及びフォトダイオードPDを形成するための選択的MOCVDにおいて、半導体レーザLDの水平共振器の共振器長方向、すなわち図1中の矢印bで示す方向を〔0−11〕結晶軸方向として結晶成長し、{111}B結晶面の反射鏡33を形成する。このときの反射鏡33は基板32の板面となす角が54.7°となる。
かかる光結合素子31によれば、反射鏡33の面を{111}B結晶面とすることにより、選択的MOCVDにより、n型の第1の半導体層40上に続けてp型の第2の半導体層41を結晶成長させたときに、第1の半導体層40の{111}B結晶面上には結晶成長が起こらず、第1の半導体層40の上面にのみ結晶成長する。これによって、フォトダイオードPDのpn接合jは半導体レーザLDから遠く離れた位置に形成されることになる。
この結果、この光結合素子31においては、フォトダイオードPDのpn接合jが半導体レーザLDから離れた位置にあることによって、半導体レーザLDとフォトダイオードPDで構成される等価回路のpnpトランジスタのベース層が厚くなり利得が小さくなって、コレクタ電流が小さくなり、即ちリーク電流が小さくなる。即ち、半導体レーザLDとフォトダイオードPD間の電気的クロストークを低減でき、フォトダイオードPDの高いSNを得ることができる。
図1の光結合素子31の製造方法を前述の図13及び図14を参照して説明する。まず、第1導電型例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板32上に、共振器長方向b(図1参照)を[0−11]結晶軸方向として半導体レーザを構成する各半導体層をエピタキシャル成長する。即ち、例えば順次基板32と導電型のAlGaAsよりなる第1のクラッド層35、例えばGaAsよりなる活性層36、第1のクラッド層35と異なる第2導電型例えばp型の第2クラッド層37とを順次MOCVDなどによってエピタキシーした積層半導体層を形成する(図13Aの工程参照)。
次にエピタキシャル成長した半導体層35、36及び37の一部を半導体レーザLDとして残してRIE(反応性イオンエッチング)などによってエッチング除去する。このエッチング面による半導体層の両端面を共振器端面38A、38Bとし、両共振器端面38A及び38B間に半導体レーザLDの水平共振器を形成する。この半導体レーザLDの共振器長方向b(図1参照)が[0−11]結晶軸方向となる。この場合、不純物のイオン注入によって、電流阻止層を形成する(図13Bの工程参照)。
次に基板上32上に残された半導体レーザLDの構成部を覆って選択的MOCVDのマスク層となる例えば、SiO2、SiNなどの絶縁膜を被着形成する(図13Cの工程参照)。
次にマスク層によって覆われてない基板32上に第1導電型例えばn型のGaAsによる第1の半導体層40を選択的にMOCVDによって形成し、続いて第2導電型例えばp型のGaAsによる第2の半導体層41を選択的にMOCVDによって形成し、第1及び第2の半導体層40及び41によってフォトダイオードPDを形成する(図14Dの工程参照)。
この選択的MOCVDでは、主面を{100}面とし且つ共振器長方向bを[0−11]結晶軸方向としているので、半導体レーザPDの共振器端面38Aに対向する面が{111}B結晶面となるように第1及び第2の半導体層40及び41が結晶成長する。第2の半導体層41は、第1の半導体層40の{111}B結晶面上には結晶成長せず第1の半導体層40の上面にのみ結晶成長する。従って、フォトダイオードPDのpn接合は、第1の半導体層40の上面と第2の半導体層41との間に形成される。本例では、{111}B結晶面を半導体レーザLDからの出射光を反射鏡とする。
次にマスク層をエッチング除去し、半導体レーザLD上と第2の半導体層41上の一部に、半導体レーザLDとフォトダイオードPDの各一方の電極を夫々オーミックに被着し、基板32の裏面に共通の電極をオーミックに被着し(図14EDの工程参照)目的の光結合素子31を得る。
図2〜図4は夫々本発明に係る光学装置である光結合素子の実施の形態を示す。この各実施の形態は、光結合素子における半導体レーザLDとフォトダイオードPDの間に、n型の高濃度不純物領域を形成してここにおいてキャリアを消滅させて実質的なリーク電流(いわゆるクロストーク電流)を低減するようにしている。
即ち、図2に示す光結合素子47は、リーク電流阻止層となる基板、例えばn型の{100}結晶面を主面とする高濃度例えば2×1018cm-3以上の不純物濃度のGaAs基板48上に、上例と同様にMOCVD法によりエピタキシャル成長したn型の第1のクラッド層35,活性層36,p型の第2のクラッド層37からなり、両共振器端面38A,38Bを有する水平共振器の半導体レーザLDを形成する。
そして、基板48の反射鏡33及びフォトダイオードPDを形成すべき部分の主面を一部深さ方向に選択エッチングして除去し、選択エッチング後の基板48の底面48aから選択的MOCVDによって第1導電型例えばn型のGaAsによる第1の半導体層40及び第2導電型例えばp型のGaAsによる第2の半導体層49を順次結晶成長して{111}B結晶面の反射鏡33と共にpn接合jを有するフォトダイオードPDを形成する。
なお、反射鏡33の面を{111}B結晶面とした場合であるが、その他{111}A結晶面、あるいは{110}結晶面であってもかまわない。
かかる構成の光結合素子47によれば、n型の基板48が高濃度不純物領域で形成され、この基板48を挟んで半導体レーザLD及びフォトダイオードPDが形成されたかたちになるので、オーバーフローしたキャリアがこの高濃度の基板48において消滅し、フォトダイオードPDのpn接合が半導体レーザから離れた第1の半導体層40の上面のみに形成される構成と相俟って、更に半導体レーザLDとフォトダイオードPD間のリーク電流を低減することができ、フォトダイオードPDのSNを向上することができる。
図3に示す光結合素子51は、例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板32上に、上例と同様にMOCVD法によりエピタキシャル成長したn型の第1のクラッド層35,活性層36,p型の第2のクラッド層37からなり、両共振器端面38A,38Bを有する水平共振器の半導体レーザLDを形成する。
そして、基板32の反射鏡33及びフォトダイオードPDを形成すべき部分の主面にリーク電流阻止層となる基板32より高濃度、例えば2×1018cm-3以上のn型の高濃度不純物層52を例えばイオン注入によって形成し、このn型の高濃度不純物層52上に選択的MOCVDによって第1導電型例えばn型のGaAsによる第1の半導体層40及び第2導電型例えばp型のGaAsによる第2の半導体層49を順次結晶成長して反射鏡33と共に、pn接合jを有するフォトダイオードPDを形成する。53はn型の高濃度不純物領域52を形成するときのイオン注入用マスクで、選択的MOCVDのマスクともなる。フォトダイオードPDの構成は図2で説明したと同様の構成を採り得る。
かかる構成の光結合素子51においても、n型の高濃度不純物領域52によってオーバーフローしたキャリアは消滅し、フォトダイオードPDのpn接合が半導体レーザから離れた第1の半導体層40の上面のみに形成される構成と相俟って、更に半導体レーザLDとフォトダイオードPD間のリーク電流を低減することができ、フォトダイオードPDのSNを向上することができる。
なお、図3ではn型の高濃度不純物領域52をフォトダイオードPD側に設けたが、その他、図示せざるも半導体レーザ側の基板32の表面に形成しても同様の効果が得られる。
図4に示す光結合素子55は、第1導電型例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板32上に、図3に示すイオン注入によるn型の高濃度不純物領域52に代えてMOCVD法によりリーク電流阻止層となる基板32と同導電型の高濃度のn型半導体領域、例えば2×1018cm-3以上のn型のGaAsによる半導体領域56を結晶成長し、この高濃度の半導体領域56上に続けてエピタキシャル成長した上例と同様のn型の第1のクラッド層35,活性層36,p型の第2のクラッド層37からなり、両共振器端面38A,38Bを有する水平共振器の半導体レーザLDを形成する。
そして、基板32の反射鏡33及びフォトダイオードPDを形成すべき部分上に、前述と同様の選択的MOCVDによって第1導電型例えばn型のGaAsによる第1の半導体層40及び第2導電型例えばp型のGaAsによる第2の半導体層49を順次結晶成長して反射鏡33と共にpn接合jを有するフォトダイオードPDを形成する。
このフォトダイオードPDの構成は図2で説明したと同様の構成を採り得る。
かかる構成の光結合素子55においても、n型の高濃度半導体領域56によってオーバーフローしたキャリアは、この半導体領域56で消滅し、フォトダイオードPDのpn接合が半導体レーザから離れた第1の半導体層40の上面のみに形成される構成と相俟って、更に半導体レーザLDとフォトダイオードPD間のリーク電流を低減することができ、フォトダイオードPDのSNを向上することができる。
なお、図4では、n型の高濃度半導体領域56を半導体レーザLD側に設けた構成としたが、その他、図示せざるも、このn型の高濃度半導体領域56をフォトダイオードPD側の第1の半導体層40と基板32間に設けるようにしても、同様の効果が得られる。
図5は、本発明に係る光学装置である光結合素子の他の実施の形態を示す。本実施の形態の光結合素子58は、例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板32上に、MOCVD法によりリーク電流阻止層となる基板と異なる第2導電型例えばp型のGaAsによる半導体層59を結晶成長し、このp型半導体層59上に続けてエピタキシャル成長した上例と同様のn型の第1のクラッド層35,活性層36,p型の第2のクラッド層37からなり、両共振器端面38A,38Bを有する水平共振器の半導体レーザLDを形成する。
そして、基板32の反射鏡33及びフォトダイオードPDを形成すべき部分上に、前述と同様の選択的MOCVDによって第1導電型例えばn型のGaAsによる第1の半導体層40及び第2導電型例えばp型のGaAsによる第2の半導体層49を順次結晶成長して反射鏡33と共にpn接合jを有するフォトダイオードPDを形成する。
フォトダイオードPDの構成は図2で説明したと同様の構成を採り得る。
かかる構成の光結合素子58によれば、フォトダイオードPDと半導体レーザLD間にp型半導体層59が形成されることによって、等価回路的には、いわゆるpnpnのサイリスタ構造が形成される。これによって、フォトダイオードPDのpn接合が半導体レーザから離れた第1の半導体層40の上面のみに形成される構成と相俟って、更に半導体レーザLDとフォトダイオードPD間のリーク電流が阻止され、フォトダイオードPDのSNを向上することができる。
なお、図5ではp型半導体層59を半導体レーザ側の基板32と第1のクラッド層35間に設けた構成としたが、その他、図示せざるも、フォトダイオードPD側の基板32と第1の半導体層40との間に設けても、同様の効果が得られる。
図6は、本発明に係る光学装置である光結合素子の他の実施の形態を示す。本実施の形態の光結合素子61は、リーク電流阻止層となる実質的な絶縁体、例えば{100}結晶面を主面とする半絶縁性のGaAs基板62上に、上側と同様のn型の第1クラッド層35,活性層36,p型の第2のクラッド層37からなり、両共振器端面38A,38Bを有する水平共振器の半導体レーザLDを形成する。
そして、基板62の反射鏡33及びフォトダイオードPDを形成すべき部分上に、前述と同様の選択的MOCVDによって例えばn型のGaAsによる第1の半導体層40及び例えばp型のGaAsによる第2の半導体層49を順次結晶成長して反射鏡33と共にpn接合jを有するフォトダイオードPDを形成する。
フォトダイオードPDの構成は、図2で説明したと同様の構成を採り得る。
この場合、フォトダイオードPDでは一部第1の半導体層40が臨む除去部を設け、p型の第2の半導体層49及びn型の第1の半導体層40上に夫々電極63及び64をオーミックに接続し、また半導体レーザLDでは一部n型の第1のクラッド層35が臨む欠除部を設け、p型の第2のクラッド層37及びn型の第1のクラッド層35に夫々電極65及び66をオーミックに接続する。
かかる構成の光結合素子61によれば、半絶縁性GaAs基板62上に半導体レーザLD及びフォトダイオードPDを結晶成長で形成することにより、半絶縁性GaAs基板62がリーク電流阻止層として作用し、フォトダイオードPDのpn接合が半導体レーザから離れた第1の半導体層40の上面のみに形成される構成と相俟って、更に半導体レーザLDとフォトダイオードPD間のリーク電流を低減することができる。従ってフォトダイオードPDの高いSNを得ることができる。
以上の各実施の形態は、光結合素子であるCLC素子に適用した場合であるが、半導体レーザとそのレーザの光出力をモニタする受光素子であるフォトダイオードをモノリシックに集積した光学装置の場合でも同様に本発明を適用できる。次にかかる光学装置に適用した実施の形態を図7〜図9に示す。
図7は、面発光型の半導体レーザとその光出力をフロントモニタするフォトダイオードとを備えた光学装置である半導体レーザ装置に適用した場合である。本実施の形態の半導体レーザ装置71は、例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板72上に、前述の図13〜図14の製法で説明したと同様に、MOCVD法によりエピタキシャル成長した例えばAlGaAs(又はGaAs)によるn型の第1のクラッド層73、例えばGaAs(又はAlGaAs)による活性層74、例えばAlGaAs(又はGaAs)によるp型の第2のクラッド層75からなり、両共振器端面76A,76Bを有する水平共振器の半導体レーザLDを形成する。
そして、同一のn型のGaAs基板72上の半導体レーザLDの前方出射光LF側の共振器端面76Aと対向した位置に、選択的MOCVDによって第1導電型例えばn型のGaAsによる第1の半導体層78及び第2導電型例えばp型のGaAsによる第2の半導体層79を順次結晶成長してフロントモニタ用のフォトダイオードPDを形成する。ここでフォトダイオードPD側の斜面は出射光LFを立ち上げるための反射鏡80となると共に、出射光LFの一部を透過してフォトダイオードPDに受光できる反射率及び透過率を有するものである。
そして、本例では、モニタ用のフォトダイオードPDを形成するための選択的MOCVDにおいて、図1で説明したと同様に反射鏡80の面が{111}B結晶面となるように結晶成長する。
かかる構成の面発光型の半導体レーザ装置71によれば、反射鏡80の斜面を{111}B結晶面とすることにより、p型の第2の半導体層79の結晶成長時にn型の第1の半導体層78の斜面に第2の半導体層79は成長しない。従って、モニタ用のフォトダイオードPDのpn接合が半導体レーザLDから遠く離れた位置に形成され半導体レーザLDの駆動電流のフォトダイオードPD側へのリークを低減することができ、フォトダイオードPDのSNを向上することができる。
図8の面発光型の半導体レーザ装置82は、図7と同様に、例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板72上に、n型の第1のクラッド層73,活性層74,第2のクラッド層75からなる水平共振器の半導体レーザLDを形成すると共に、基板72の一方の共振器端面76A及び他方の共振器端面76Bに対向する部分上に、夫々選択的MOCVDによってn型のGaAsによる第1の半導体層78及びp型のGaAsによる第2の半導体層79を順次結晶成長する。
前方の第1及び第2の半導体層78及び79による積層半導体層84及び後方の第1及び第2の半導体層78及び79による積層半導体層85の斜面80,81は、夫々{111}B結晶面で形成する。
そして、前方の積層半導体層84の斜面80は半導体レーザLDからの前方出射光LF1を立ち上げるための反射鏡となる。後方の積層半導体層85を構成する第1及び第2の半導体層78及び79によって後方出射光LF2を直接モニタするモニタ用のフォトダイオードPDが構成される。
この半導体レーザ装置82では、半導体レーザLDからの前方出射光LF1が反射鏡80によって立ち上げられて出射され、後方出射光LF2がフォトダイオードPDに受光されて前方出射光LF1の出力がモニタされる。
かかる構成の半導体レーザ装置82においても、フォトダイオードPDの斜面81を{111}B結晶面とすることにより、この斜面81上にp型の第2の半導体層79の結晶成長が起こらない。従って、図7の場合と同様に半導体レーザLDとフォトダイオードPD間で生ずるリーク電流を低減することができ、フォトダイオードPDのSNを向上することができる。
図9の面発光型の半導体レーザ装置87は、例えばn型の{100}結晶面を主面とするGaAs基板72上に、図7と同様に例えばn型の第1のクラッド層73,活性層74,p型の第2のクラッド層75からなる水平共振器の半導体レーザLDを形成する。そして、基板72の一方の共振器端面76Aに対向する部分上に選択的MOCVDによって例えばn型のGaAsによる第1の半導体層78を結晶成長して反射鏡80を形成する。
また、他方の共振器端面76Bから後の基板72の面にわたって例えばSiO2,SiN等の絶縁膜89を被着し、この絶縁膜89をマスクに基板72の面にZnの部分拡散を行って、p型の部分拡散層90を形成し、ここにリアモニタ用のフォトダイオードPDを形成する。
この半導体レーザ装置87においては、半導体レーザLDからの前方出射光LF1が反射鏡80にて反射され上方に出射される。一方、後方出射光LF2は基板72の面上に部分拡散で形成したリアモニタ用のフォトダイオードPDに受光検出される。
かかる構成の半導体レーザ装置87によれば、半導体レーザLDの後方の共振器端面76Bから基板72上の一部にわたって絶縁膜89で覆い、Znの部分拡散を行ってn型の基板72の上面にp型のZn拡散層90を形成してフォトダイオードPDを形成することにより、フォトダイオードPDのpn接合jを半導体レーザLDから遠ざけることができる。従って、半導体レーザLDとフォトダイオードPD間で生ずるリーク電流を低減することができ、リアモニタ用のフォトダイオードPDのSNを向上することができる。
尚、図7及び図8の半導体レーザ装置71及び82においては、フォトダイオードPDの斜面が{111}B結晶面となるように構成したが、その他、図示せざるも、前述の図2,図3,図4と同様の構成、即ち、半導体レーザLDとフォトダイオードPD間に高濃度不純物領域を形成する構成とすることもでき、または、図5と同様のサイリスタ構造とすることもでき、さらには、図6の基板を半絶縁性GaAsで構成することもできる。
また、図8及び図9において、反射鏡80側の半導体層84及び78を夫々戻り光の受光素子となるフォトダイオードを結晶成長で形成し、このフォトダイオードと半導体レーザ間でも、リアモニタ用のフォトダイオードと半導体レーザ間と同様の構成をとることによって、リアモニタとした光結合素子のCLC素子を構成できる。
31・・光結合素子、32・・n型GaAs基板、33・・反射鏡、35,37・・ クラッド層、36・・活性層、LD・・半導体レーザ、38A,38B・・共振器端面、40,41,49・・半導体層、89・・絶縁膜、48・・高濃度のGaAs基板、52,56,59,62・・リーク電流阻止層、45,90・・部分拡散層