JP4010133B2 - 滅菌器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、蒸気により被滅菌物を滅菌する滅菌器に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、医療用器具等の被滅菌物の滅菌処理において、前記被滅菌物へ蒸気を直接接触させることがある。そして、最近ではその供給される蒸気の品質管理が重要になっている。従来の蒸気の品質管理は、蒸気の圧力管理および温度管理が主に行われている。しかし、蒸気の品質を厳密に管理するには、これだけでは不充分である。すなわち、前記滅菌処理においては、蒸気に含有されている非凝縮性ガスにより、滅菌不良が生じることがある。そこで、蒸気の品質管理において、前記非凝縮性ガスの量を測定し表示することにより、蒸気の品質情報を滅菌処理を行う作業者へ提供したり、制御に反映させたり記録しておくことが必要である。また、稼動による経時変化に伴う蒸気の品質の悪化の傾向を測定し、継続して監視する必要がある。
【0003】
一方、前記非凝縮性ガスの量の測定において、従来の装置および方法では、たとえば欧州規格で示された測定方法(EN285:1997)がある。この測定方法では、分離された非凝縮性ガスを50mlビュレットへ導き、そのビュレットに刻まれている目盛を直読して測定するものであり、かつバッチ的な測定方法である。このため、連続して測定することは困難であった。また、測定装置を装備した滅菌器はなかった。これは、前記非凝縮性ガスの量がきわめて微量であるため、通常の流量計等による測定が困難であることにも起因しているからである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この発明が解決しようとする課題は、滅菌に用いる蒸気の品質管理に役立つ情報の表示ができる滅菌器を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この発明は、前記課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、滅菌に用いる蒸気に含有されている非凝縮性ガスの量を、前記蒸気を発生させるための給水の温度に基づいて演算した演算結果として表示する非凝縮性ガス量表示手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。まず、第一の実施の形態について説明する。この発明は、蒸気を用いる滅菌器において、好適に実施することができる。この第一の実施の形態の滅菌器は、滅菌処理において使用する蒸気が、専用あるいは共用として別個に設置された蒸気発生手段から供給される構成としている。
【0012】
この第一の実施の形態の滅菌器は、蒸気の品質情報表示手段を備えている。すなわち、前記蒸気発生手段から供給される蒸気の品質情報を受け取り、これを表示する手段,たとえばメーターやLED(発光ダイオード)を備えている。
【0013】
前記品質情報は、適宜な検出手段あるいは測定手段により前記品質情報表示手段へ伝達され表示される。前記検出手段あるいは前記測定手段からのそれぞれの情報は、前記品質情報表示手段へ直接表示されるものと、演算手段等により加工された情報として表示されるものがある。
【0014】
前記品質情報としては、まず前記蒸気発生手段の装置情報,蒸気の圧力情報,温度情報,乾き度情報等の蒸気そのものの情報があり、つぎにこの蒸気を発生させるもととなる給水の品質情報,たとえば給水の電気伝導度情報,不純物濃度情報,温度情報,pH値情報,給水の水処理情報等がある。さらに、前記品質情報としては、滅菌に用いる蒸気に含有されている窒素,酸素,アルゴン等の非凝縮性ガスの量の情報がある。この非凝縮性ガスの量は、滅菌不良を防止するための情報として重要である。前記各品質情報は、経時的に連続して測定された量の情報が好ましいが、実施に応じ、バッチ式で測定された情報でも好適である。
【0015】
つぎに、前記第一の実施の形態の変形例である第二の実施の形態について説明する。この第二の実施の形態の滅菌器は、滅菌に用いる蒸気を発生させる蒸気発生手段を別個に設置するのではなく、専用として近接配置した状態で備えている。そして、この第二の実施の形態の滅菌器は、前記第一の実施の形態と同様、蒸気の品質情報表示手段を備えている。
【0016】
さらに、前記第二の実施の形態の変形例である第三の実施の形態について説明する。この第三の実施の形態の滅菌器は、前記蒸気発生手段と、この蒸気発生手段への給水の温度を所定の温度に維持する給水温度維持手段と、前記品質情報表示手段を備えている。すなわち、前記第二の実施の形態の滅菌器へさらに、前記給水温度維持手段を備えている。
【0017】
前記給水温度維持手段は、たとえば給水タンクとこの給水タンクに貯留した水を加温する加温手段を備えている。この加温手段は、ヒーターや蒸気により行うものである。この加温手段を作動させて水を加温することにより、この水に含まれている前記非凝縮性ガスの発生要因となる溶存気体を少なくすることができる。この溶存気体が少なくなった水を前記蒸気発生手段へ給水することにより、前記非凝縮性ガスの少ない蒸気を滅菌用として使用することができる。
【0018】
また、前記3つの実施の形態において、さらに前記蒸気発生手段へ供給する給水の電気伝導度を表示する電気伝導度表示手段を備える構成も好適である。この構成によれば、発生した蒸気の品質情報,特に前記非凝縮性ガスの量の情報と、発生させる蒸気のもととなる給水の電気伝導度の情報とをともに把握できるので、より正確な蒸気の品質情報の表示ができる。
【0019】
したがって、前記3つの実施の形態において、滅菌に用いる蒸気の品質管理に役立つ情報の表示ができるので、適正な蒸気の管理と滅菌不良のない滅菌作業を行うことができる。
【0020】
【実施例】
以下、この発明の具体的実施例について、図面に基づいて詳細に説明する。ここで、図1は、この発明の第一実施例を適用するのに好適な滅菌器1の概略的な説明図である。
【0021】
まず、この第一実施例の滅菌器1の構成について説明する。この滅菌器1は、被滅菌物(図示省略)を収納する滅菌槽2と、前記滅菌槽2を密閉する扉(図示省略)を備えた本体部3と、前記滅菌器1を制御する第一制御器4と、滅菌に用いる蒸気の品質情報を表示する品質情報表示手段5により構成されている。
【0022】
前記滅菌器1は、滅菌に使用する蒸気の発生手段(図示省略)と、蒸気ライン6を介して接続されている。
【0023】
前記第一制御器4は、前記滅菌器1の制御を行うとともに、前記第一制御器4のケーシング(符号省略)の前面に前記品質情報表示手段5を配置している。
【0024】
前記品質情報表示手段5は、前記蒸気発生手段から供給される蒸気の品質情報を受け取り、これを表示する手段,たとえばメーターやLED(発光ダイオード)により構成されている。前記品質情報表示手段5は、前記蒸気発生手段の蒸気圧力センサ,給水温度センサ等の検出手段(図示省略)あるいは滅菌に用いる蒸気に含まれる非凝縮性ガスの測定手段(図示省略)とセンサ回線7を介してそれぞれ接続されている。
【0025】
ここにおいて、前記非凝縮性ガスとは、蒸気の中に存在する窒素,酸素,アルゴン等の不活性気体の総称である。前記非凝縮性ガスの量は滅菌不良を防止するための情報として重要である。そして、前記各品質情報は、前記蒸気圧力センサや前記温度センサあるいは前記非凝縮性ガスの測定手段からそれぞれ前記品質情報表示手段5へ前記センサ回線7を介して伝達され、表示される。
【0026】
以上のように、滅菌に用いる蒸気の品質管理に役立つ情報の表示ができる。したがって、この蒸気の品質情報を活用することにより、適正な蒸気の管理を行い、滅菌不良のない滅菌作業を行うことができる。
【0027】
つぎに、第二実施例を図2に基づいて説明する。図2は、この発明の第二実施例を適用するのに好適な滅菌器1の概略的な説明図である。この第二実施例の滅菌器1は、前記第一実施例の変形例である。前記第一実施例と同一の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。すなわち、前記第一実施例においては、前記蒸気発生手段(図示省略)を別個に備えていたが、この第二実施例においては、蒸気発生手段である蒸気ボイラ8を前記滅菌器1に専用として近接配置した状態で備えている。この第二実施例は、いわゆる前記蒸気発生手段を備えた滅菌システムとしての実施例である。
【0028】
図2において、この第二実施例の滅菌器1は、前記蒸気ボイラ8を備え、さらに前記第一実施例と同様、前記滅菌槽2と前記本体部3と前記品質情報表示手段5および前記滅菌器1を制御する第二制御器9とを備えている。
【0029】
前記蒸気ボイラ8は、給水処理設備,たとえば純水製造装置(図示省略)に接続された給水タンク10と、この給水タンク10内の水が供給される缶体11と、この缶体11内の水を加熱するためのバーナ(図示省略)を備えている。前記給水タンク10は、前記純水製造装置と純水ライン12を介して接続されている。この純水ライン12には、前記給水タンク10内の水位を制御するボールタップ13が接続されている。前記給水タンク10は、この給水タンク10の側面に接続されている給水ライン14に設けた給水ポンプ15を介して、前記缶体11と接続されている。前記給水タンク10は、前記給水タンク10内の水の温度を検出する温度センサ16を備えている。前記缶体11は、前記蒸気ボイラ8で発生させた蒸気を前記滅菌槽2へ供給する前記蒸気ライン6と接続されている。
【0030】
前記第二制御器9は、前記滅菌器1の制御を行うとともに、前記第二制御器9のケーシング(符号省略)の前面に前記品質情報表示手段5を配置している。前記品質情報表示手段5は、前記蒸気ボイラ8から供給される蒸気の品質情報を受け取り、これを表示する。
【0031】
ここにおいて、前記品質情報表示手段5が前記蒸気ボイラ8から受け取る蒸気の品質情報のうち、滅菌に用いる蒸気に含有している非凝縮性ガスの量を表示する構成について説明する。
【0032】
前記品質情報表示手段5は、前記温度センサ16と第一回線17を介して接続されている演算手段18を備えている。前記演算手段18は、マイクロコンピュータ(図示省略)で構成されている。さらに、前記品質情報表示手段5は、前記非凝縮性ガスの量を表示する非凝縮性ガス量表示手段19(以下、「第一表示部19」と云う)を備えている。前記第一表示部19は、LEDで表示するものである。
【0033】
このような構成の第二実施例における蒸気の品質情報の表示,特に前記非凝縮性ガスの量の表示についてさらに詳細に説明する。前記非凝縮性ガスを直接測定することは、その量がきわめて微量であり困難であるので、この第二実施例では、前記蒸気を発生させるための給水の温度に基づいて、前記非凝縮性ガスの含有量を演算し、その演算結果を表示する。すなわち、前記給水温度と前記非凝縮性ガスの量との関係を求め、その関係式を前記コンピューターに記憶させておき、前記給水温度に基づいて、前記非凝縮性ガスの含有量を前記演算手段18により演算する。そして、この演算結果を前記第一表示部19で表示する。
【0034】
ここにおいて、前記演算手段18で演算する方法を図3に示すグラフで説明する。図3は、給水温度と蒸気に含有されている非凝縮性ガスの量の関係を示すグラフである。図3の横軸は、前記温度センサ16により検出される前記給水タンク10内の給水温度である。一方、図3の縦軸は、前記横軸の給水温度の水を前記蒸気ボイラ8へ給水し、発生させた蒸気に含有されている非凝縮性ガスの量を測定して求めた実測値である。たとえば、70℃の給水を行ったとき、前記非凝縮性ガスの量は2.5%(容量比率で示す)である。これにより、前記温度センサ16により給水温度を検出し、その検出温度に基づいて、前記含有量を求め、これを前記第一表示部19で表示する。
【0035】
つぎに、第三実施例の滅菌器1の構成について図4に基づいて説明する。図4は、この発明の第三実施例を適用するのに好適な滅菌器1の概略的な説明図である。この第三実施例は、前記第二実施例の変形例であり、同一の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0036】
この滅菌器1は、前記滅菌槽2と前記本体部3と前記蒸気ボイラ8と前記滅菌器1を制御する第三制御器20とにより構成されている。
【0037】
この第三実施例における蒸気ボイラ8は、給水の温度を所定の温度に維持して前記蒸気ボイラ8へ給水する給水温度維持手段21を備えている。この給水温度維持手段21は、前記蒸気ライン6から分岐した加温ライン22と、この加温ライン22に設けた蒸気の供給を制御する制御弁23と、前記給水タンク10内へ蒸気を噴出する加温部24および前記温度センサ16からの信号により前記制御弁23を制御する温度制御部25とにより構成されている。
【0038】
前記第二制御器20は、前記品質情報表示手段5と前記演算手段18と前記第一表示部19と前記温度制御部25とを備えている。この温度制御部25は、前記第二制御器20内に設けられており、前記第一回線17を介して前記温度センサ16と接続されている。さらに、前記温度制御部25は、第二回線26を介して前記制御弁23と接続されている。
【0039】
このような構成の第三実施例の滅菌器1の作用について説明する。この第三実施例における滅菌器1は、前記第二実施例と同様、前記給水温度と前記非凝縮性ガスの量との関係を求め、その関係式を前記コンピューターに記憶させておき、前記給水温度に基づいて、前記非凝縮性ガスの量を前記第一表示部19で表示する。
【0040】
さらに、この第三実施例における滅菌器1は、前記給水温度維持手段21の作動により、給水を所定の温度に維持して前記蒸気ボイラ8へ給水する。この給水温度維持手段21は、前記給水タンク10内に貯留した水を加温するとき、前記蒸気ボイラ8自身で発生させた蒸気を前記制御弁23を介して、前記加温部24から前記給水タンク10内へ供給する。前記温度センサ16により検出した検出温度に基づいて、前記温度制御部25により前記制御弁23の開閉を制御する。
【0041】
そして、前記給水タンク10内の水を加温することにより、水に含まれている前記非凝縮性ガスの発生要因となる溶存気体を少なくする。この溶存気体が少なくなった水を前記蒸気ボイラ8へ給水することにより、前記非凝縮性ガスの少ない蒸気を滅菌に使用する。
【0042】
さらに、第四実施例の滅菌器1の構成について図5に基づいて説明する。図5は、この発明の第四実施例を適用するのに好適な滅菌器1の概略的な説明図である。この第四実施例は、前記第三実施例のさらなる変形例であり、同一の部材には同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0043】
この滅菌器1は、前記滅菌槽2と前記本体部3と前記品質情報表示手段5と前記蒸気ボイラ8および前記滅菌器1を制御する第四制御器27とにより構成されている。
【0044】
この第四実施例における第四制御器27は、前記演算手段18と、前記温度制御部25および前記品質情報表示手段5を備えている。前記品質情報表示手段5は、前記第一表示部19と、前記蒸気ボイラ8へ供給する給水の電気伝導度を表示する電気伝導度表示手段28(以下、「第二表示部28」と云う)とから構成されている。
【0045】
前記第二表示部28は、前記給水タンク10に設けた電気伝導度センサ29と第三回線30を介して接続されている。
【0046】
このような構成の第四実施例の滅菌器1の作用について説明する。この第四実施例における滅菌器1は、前記品質情報表示手段5により、前記非凝縮性ガスの量を前記第一表示部19で表示するとともに、前記第二表示部28で前記蒸気ボイラ8へ給水する水の電気伝導度をメーターで表示する。
【0047】
以上のように、蒸気の品質情報,特に前記非凝縮性ガスの量の測定手段を前記滅菌器1に装備したので、蒸気の品質情報の表示ができる。滅菌作業を行うにあたり、この品質情報を管理し、滅菌作業に適正でない情報が表示されたときは、滅菌作業を開始せず、適正な情報が表示されるように改善する。たとえば、前記非凝縮性ガスの含有量が2.5%以上であれば、前記給水温度維持手段21による給水の加温を行い、前記表示が2.5%以下となってから滅菌作業を行う。また、前記第二表示部28,すなわち電気伝導度の表示が給水の品質として純水でないことを表示していれば、前記純水製造装置(図示省略)のチェックを行う。このようにして、適正な蒸気の管理と滅菌作業を行うことができる。
【0048】
【発明の効果】
この発明によれば、滅菌に用いる蒸気の品質管理に役立つ情報の表示ができる滅菌器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第一実施例を適用するのに好適な滅菌器の概略的な説明図である。
【図2】第二実施例を適用するのに好適な滅菌器の概略的な説明図である。
【図3】給水温度と蒸気に含有されている非凝縮性ガスの量の関係を示すグラフである。
【図4】第三実施例を適用するのに好適な滅菌器の概略的な説明図である。
【図5】第四実施例を適用するのに好適な滅菌器の概略的な説明図である。
【符号の説明】
5 品質情報表示手段
8 蒸気ボイラ(蒸気発生手段)
19 非凝縮性ガス量表示手段
21 給水温度維持手段
28 電気伝導度表示手段
Claims (1)
- 滅菌に用いる蒸気に含有されている非凝縮性ガスの量を、前記蒸気を発生させるための給水の温度に基づいて演算した演算結果として表示する非凝縮性ガス量表示手段19を備えたことを特徴とする滅菌器。
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