JP4009571B2 - 塩化ビニル重合体組成物の回収方法 - Google Patents
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Description
(2)(特許文献2)に記載のPVCの分離方法では、PVCをジメチルスルホキシドを溶剤として溶解させる工程において、75〜90℃の高い温度で溶解するため省エネルギー性に欠け、またジメチルスルホキシドは、吸湿性が強く、加熱すると悪臭物質である硫化メチルやメチルメルカプタンが生成するので取扱性が困難であり、また、沸点が高いため、再利用のために蒸留により分離する際、蒸留温度が高くなり省エネルギー性に欠けるという課題を有していた。
(3)上記で述べた方法の共通点はPVCを溶解する良溶剤に溶解させた後、溶解し難い貧溶剤を加えてPVCを析出させる溶剤法であり、良溶剤と貧溶剤の組み合わせにそれぞれ工夫が見られる。これらの溶剤法によってPVCを回収することは可能であるが、用いた有機溶剤は回収し再利用しなければコストが高くなり経済性が低くなるので、回収した溶剤は良溶剤と貧溶剤に分離することが必須の条件である。しかしながら実際にこのような混合溶剤を調製し分離を行ってみると、中には分離が極めて困難な組み合わせがあることが解った。例えばテトラヒドロフランを良溶剤にメタノールを貧溶剤にしたときには、両者の沸点差による分離は極めて困難である。また特開平11−310660においてはここで提示されている溶剤の中には水とかなり混和するものがある。有機溶剤と水との分離は可能ではあるが困難を伴うことは周知のとおりであり、実用性に欠ける。更に良溶剤を溶解した溶液に貧溶剤を加えてPVCを析出させるには、大量の貧溶剤を必要とすることがある。例えば良溶剤にシクロへキサノンを用いてPVC溶液を調製し、この中にメタノールを添加してPVCを析出させるには、PVCの濃度にもよるが等量以上のメタノールを加えないと十分満足する結果が得られないことが解った。
この構成により、以下のような作用を有する。
(1)塩化ビニル含有廃棄物中のPVCとジクロロメタンは相溶性がよいので、塩化ビニル含有廃棄物からPVC及びジクロロメタン可溶分を溶出させることができる。
(2)ジクロロメタン不溶分はロ別等の分離により容易にPVCから分離できる。
(3)PVC及びジクロロメタン可溶分は貧溶剤を添加することにより、高純度で劣化分の少ないPVCを高収率で回収できる。
(4)ジクロロメタンの沸点は40℃なので、低温蒸留でかつ高純度で回収でき回収物を再度PVC等の溶解分散溶剤として用いることができる。
(5)ジクロロメタンは不燃性で過酸化物を形成しないので、火災や爆発等の危険性がなく安全性に優れるとともに取扱性に優れる。
(6)PVC含有廃棄物をジクロロメタン中で加熱するとPVC含有廃棄物はジクロロメタンを吸収しながら微粒子状に砕けてしまう。従って、PVC含有廃棄物をあまり小さく粉砕せずに投入しても強い撹拌を行わずとも処理中に小さく粉砕されてしまうので、操作性に優れる。
(7)ジクロロメタンにPVC含有廃棄物を添加して撹拌しながら溶解分散させる溶解分散工程を有するので、膨潤し溶解分散したPVC含有廃棄物を微粒子状に粉砕され、回収後に再利用し易い形状にすることができる。また、例えばPVC被覆電線等を添加すると、PVC被覆材を銅線から剥離させ易くすることができるのでPVC含有廃棄物中のPVC組成物を分離する作業性に優れる。
(8)PVC含有廃棄物が微粒子化されるので、PVC含有廃棄物が含有する可塑剤を効率よく抽出することができる。また、抽出された可塑剤はPVC組成物を分離回収した後の溶剤を蒸留することで分離することができる。
(9)PVC含有廃棄物が溶解分散する際、溶解分散物の粘性を低く維持することができるので、溶解分散工程において作業性に優れる。
(10)PVC含有廃棄物が溶解分散する際、溶解分散物の粘性を低く維持することができるので、析出工程及び回収工程において作業性に優れる。
(11)PVCの溶解度の低い貧溶剤を添加するので、溶解分散したPVC含有廃棄物中の充填材等の無機物が含有されたPVC組成物が粒状又は綿状で効率良く析出,沈降され、また、回収されたPVC組成物の再利用の際、不足した充填材等の無機物を添加するだけでよいので、経済性に優れる。
(12)析出工程で得られたPVC組成物を分離して回収する回収工程を有するので、PVC組成物を粒状又は綿状で溶剤と容易に分離され、効率良く回収することができる。
この構成により、請求項1の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)ジクロロメタン100重量部に対して、前記廃棄物が5〜25重量部添加されるので、溶解分散の効率を最適にすることができる。
この構成により、請求項1又は2の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)溶解分散工程が30〜45℃の温度域で撹拌するので、PVC含有廃棄物を低い温度で溶解分散することができ省エネルギー性に優れる。
この構成により、請求項1乃至3のいずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)貧溶剤の沸点が60〜200℃の温度域であるので、PVC組成物回収後のろ液であるジクロロメタンと貧溶剤を蒸留により分離することができ、ジクロロメタンと貧溶剤の再利用ができる。
この構成により、請求項1乃至4のいずれか1項の作用に加え、以下のような作用を有する。
(1)貧溶剤が3〜35重量部添加されるので、溶解分散した充填材等無機物を含有したPVC組成物を粒状又は綿状で最適に析出することができる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)塩化ビニル含有廃棄物中のPVCとジクロロメタンは相溶性がよいので、塩化ビニル含有廃棄物からPVC及びジクロロメタン可溶分を溶出させることができる塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(2)ジクロロメタン不溶分はロ別等の分離により容易にPVCから分離できる塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(3)PVC及びジクロロメタン可溶分は貧溶剤を添加することにより、高純度で劣化分の少ないPVCを高収率で回収できる塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(4)ジクロロメタンの沸点は40℃なので、低温蒸留でかつ高純度で回収でき回収物を再度PVC等の溶解分散溶剤として用いることができる塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(5)ジクロロメタンは不燃性で過酸化物を形成しないので、火災や爆発等の危険性がなく安全性に優れるとともに取扱性に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(6)PVC含有廃棄物をジクロロメタン中で加熱するとPVC含有廃棄物はジクロロメタンを吸収しながら微粒子状に砕けてしまう。従って、PVC含有廃棄物をあまり小さく粉砕せずに投入しても強い撹拌を行わずとも処理中に小さく粉砕されてしまうので、操作性に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(7)ジクロロメタンにPVC含有廃棄物を添加して撹拌しながら溶解分散させる溶解分散工程を有するので、膨潤し溶解分散したPVC含有廃棄物を微粒子状に粉砕され、回収後に再利用し易い形状にすることができる。また、例えばPVC被覆電線等を添加すると、PVC被覆材を銅線から剥離させ易くすることができるのでPVC含有廃棄物中のPVC組成物を分離する作業性に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(8)PVC含有廃棄物が微粒子化されるので、PVC含有廃棄物が含有する可塑剤を効率よく抽出することができる。また、抽出された可塑剤はPVC組成物を分離回収した後の溶剤を蒸留することで分離することができる塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(9)PVC含有廃棄物が溶解分散する際、溶解分散物の粘性を低く維持することができるので、溶解分散工程において作業性に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(10)PVC含有廃棄物が溶解分散する際、溶解分散物の粘性を低く維持することができるので、析出工程及び回収工程において作業性に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(11)PVCの溶解度の低い貧溶剤を添加するので、溶解分散したPVC含有廃棄物中の充填材等の無機物が含有されたPVC組成物が粒状又は綿状で効率良く析出,沈降され、また、回収されたPVC組成物の再利用の際、不足した充填材等の無機物を添加するだけでよいので、経済性に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(12)析出工程で得られたPVC組成物を分離して回収する回収工程を有するので、PVC組成物を粒状又は綿状で溶剤と容易に分離され、効率良く回収することができる塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(1)ジクロロメタン100重量部に対して、前記廃棄物が5〜25重量部添加されるので、溶解分散効率に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(1)溶解分散工程が30〜45℃の温度域で還流しながら撹拌するので、PVC含有廃棄物を低い温度で溶解分散することができ省エネルギー性に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(1)貧溶剤の沸点が60〜200℃の温度域であるので、PVC組成物回収後のろ液であるジクロロメタンと貧溶剤を蒸留により分離することができ、ジクロロメタンと貧溶剤の再利用性に優れた塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(1)貧溶剤が3〜35重量部添加されるので、溶解分散した充填材等無機物を含有したPVC組成物を粒状又は綿状で最適に析出することができる塩化ビニル重合体組成物の回収方法を提供することができる。
(実施例1)
2つのフラスコA,Bを用意しそれぞれにジクロロメタンを100g入れた。フラスコAには数平均分子量22,000(ALDRICH、Mw:43,000、極限粘度0.51、製品番号38,929−3。計算による重合度は352)試薬PVC30.0gを、フラスコBには数平均分子量99,000(ALDRICH、Mw:233,000、極限粘度1.40、製品番号34,676−4。計算による重合度は1584)試薬PVC40.0gを入れて両者とも還流下加熱撹拌した。1時間後フラスコAの方は無色透明であるのに対し、フラスコBの方はやや白濁しているが目視によると不溶物は認められなかった。しかし両者とも流動性はあるものの粘稠であった。このことはPVCが分子量がかなり高くてもジクロロメタンに溶解することを示している(ここで溶解とは目視により不溶物が認められないことを意味する)。
(実施例2)
2つのフラスコA,Bを用意しそれぞれにジクロロメタンを100g入れ、この中に小さく刻んだほぼ同じ大きさの赤色PVC系電線被覆材をそれぞれ10.0g入れた。(試料の平均重量:フラスコA;0.141g、フラスコB;0.164g)。Aには沸石を入れて還流し、Bはモータに接続した半月形羽根のついた撹拌棒を用い300rpmで撹拌した。2時間後温度を室温まで下げて内容物を観察すると、Aの中の被覆材は膨潤しているがまだ原形をそのまま残していた。しかしBの中の被覆材は原形を止めない位に粉々に粉砕されていた。両者ともに貧溶剤である1−プロパノール30gを添加し、加熱しながらジクロロメタンを留去し、約80%以上のジクロロメタンが留去されたならば、内容物を室温まで冷却後ろ過しAからは0.6g(大きな塊は除く)、Bからは7.7gの粉末を得た。また可塑剤の量はそれぞれ2.5gと2.3gであった。これにより撹拌の効果が確認された。
(実施例3)
硬質PVC(理研ビニル工業製、TM−1451、5mm立方体)を実施例2の電線被覆材の代わりに用いて同様の条件下フラスコBの方法で試験を行った。反応中PVCは粉々に粉砕されていた。還流停止後ろ過を行ない粉末4.4g、ろ液にはメタノールを過剰量加え、ろ過により3.6gの粉末を得た。
(実施例4)
ジクロロメタン100gを投入した撹拌槽にPVC被覆電線から銅線を除いたPVC廃棄物14.0gを添加し、パドル型の撹拌翼を有する撹拌棒により40℃還流下500rpmで撹拌を行ない、3時間後25℃で1−プロパノール20.0gを0.5時間かけて滴下添加し0.5時間撹拌を続けた。次に、ジクロロメタン中に析出した析出物をろ過器を用いて回収し、乾燥後、回収物の重量測定を行った。さらに、ほとんど無色透明のろ液を100℃で減圧蒸留し残留物である可塑剤の重量測定を行った。
実施例4によると、回収物は粉状で重量は10.5gであった。また可塑剤の重量は3.26gであった。これにより、PVC被覆電線から銅線を除いたPVC廃棄物はジクロロメタンによって溶解分散しながら撹拌により粉砕し、無機物を含有したPVC組成物を73.6%の回収率で回収することができた。また、可塑剤はジクロロメタンに抽出されることも確認された。また、無機着色剤はPVC組成物に含有されるため、得られたPVC組成物を電線被覆材としてさらに再利用し易いことがわかった。
(実施例5)
ジクロロメタン100gを投入した撹拌槽にPVC被覆電線から銅線を除いたPVC廃棄物25.0gを添加し、パドル型の撹拌翼を有する撹拌棒により40℃還流下500rpmで撹拌を行ない、4時間後25℃で1−プロパノール20gを0.5時間かけて滴下添加し0.5時間撹拌を続けた。次に、ジクロロメタン中に析出した析出物をろ過器を用いて回収し、乾燥後、回収物の重量測定を行った。さらに、ろ液を100℃で減圧蒸留し残留物である可塑剤の重量測定を行った。
実施例5によると、回収物は粉状で重量は18.3gであった。また可塑剤の重量は6.30gであった。これにより、PVC被覆電線から銅線を除いたPVC廃棄物はジクロロメタンによって溶解分散しながら撹拌により粉砕し、無機物を含有したPVC組成物を73.2%の回収率で回収することができた。また、可塑剤はジクロロメタンに抽出されることも確認された。
また、実施例4と比べると溶解分散時間を長くしてもジクロロメタンが不足する傾向が有り、PVC廃棄物は均一に粉砕され難く、また1−プロパノールを添加した際、均一な粉状になり難い傾向がみられた。従って、PVC廃棄物の添加量は、ジクロロメタン100gに対し11〜17gが好ましいことが分かった。
(実施例6)
ジクロロメタン100gを投入した撹拌槽に農業用PVCフィルム5.50gを添加し、パドル型の撹拌翼を有する撹拌棒により40℃還流下400rpmで撹拌を行ない、3時間後25℃で1−プロパノール30gを0.5時間かけて滴下添加し0.5時間撹拌を続けた。次に、ジクロロメタン中に析出した析出物をろ過器を用いてろ過回収し、乾燥後、回収物の重量測定を行った。さらに、ほとんど無色透明のろ液を100℃で減圧蒸留し残留物である可塑剤の重量測定を行った。
実施例6によると、回収物は粉状で重量は4.89gであった。また可塑剤の重量は0.55gであった。これにより、農業用PVCフィルムはジクロロメタンによって溶解分散し、無機物を含有したPVC組成物を89%の回収率で回収することができた。また可塑剤はジクロロメタンに抽出されることも確認された。
(実施例7)
ジクロロメタン100gを投入した撹拌槽にPVC管廃棄物10gを添加し、パドル型の撹拌翼を有する撹拌棒により40℃還流下500rpmで撹拌を行ない、3時間後25℃で1−プロパノール20gを0.5時間かけて滴下添加し0.5時間撹拌を続けた。次に、ジクロロメタン中に析出した析出物をろ過器を用いてろ過回収し、乾燥後、回収物の重量測定を行った。さらに、ろ液を100℃で減圧蒸留し残留物である可塑剤の重量測定を行った。
実施例7によると、回収物は粉状で重量は7.55gであった。また可塑剤の重量は2.4gであった。これにより、PVC管はジクロロメタンによって溶解分散し、無機物を含有したPVC組成物を75.5%の回収率で回収することができた。また可塑剤はジクロロメタンに抽出されることも確認された。
(実施例8)
実施例4,6,7におけるPVC組成物中の組成比を分析し、PVC組成物から無機物等を除去後のPVCの極限粘度をシクロへキサノン溶媒中25℃で測定し粘度平均分子量を求めた。
その結果を表1に示す。
(実施例9)
実施例4におけるPVC被覆電線のPVC回収後のろ液から可塑剤除去後の溶剤をビグリュー型分留管を用いて40.5℃で分留し、分留後残留物の比重を測定した。ジクロロメタンと1−プロパノールの比重により残留物の成分組成を求めた。その結果、残留分は98%が1−プロパノールであることがわかった。これにより、PVC組成物回収後の溶剤は、分留により分離を簡単に行うことができ、再利用が可能であることがわかった。
Claims (5)
- ジクロロメタンに塩化ビニル重合体含有廃棄物を添加して撹拌しながら膨潤させ溶解分散させる溶解分散工程と、前記溶解分散工程における溶解分散物に貧溶剤を添加し塩化ビニル重合体組成物を析出させる析出工程と、前記析出工程で得られた前記塩化ビニル重合体組成物を分離して回収する回収工程と、を備えていることを特徴とする塩化ビニル重合体組成物の回収方法。
- 前記ジクロロメタン100重量部に対して、前記廃棄物が5〜25重量部添加されることを特徴とする請求項1に記載の塩化ビニル重合体組成物の回収方法。
- 前記溶解分散工程が30〜45℃の温度域で撹拌することを特徴とする請求項1又は2に記載の塩化ビニル重合体組成物の回収方法。
- 前記析出工程における前記貧溶剤の沸点が60〜200℃の温度域であることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の塩化ビニル重合体組成物の回収方法。
- 前記析出工程における前記貧溶剤が前記ジクロロメタン100重量部に対して3〜35重量部添加されることを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の塩化ビニル重合体組成物の回収方法。
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