JP4009317B2 - 酵素的合成 - Google Patents
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Description
ポリエステルは、例えば自動車産業における成形体として主に用いられる産業用生成物としてよく知られている。ポリエステルは、ポリウレタン(これも成形体の形成に用いられる)の製造における中間体としても興味深い。ポリエステルは、イソシアナートと反応してポリウレタンを形成する。得られるポリウレタンの特性は、少なくとも一部はポリエステルの特性に依存する。
ポリエステルは、典型的には、高められた温度、強い酸および長い反応時間を用いる化学的触媒反応により製造される。エステル化反応、エステル交換反応および加水分解反応の間の競合は、生成物の分子量を制限する。更に、これらの反応は、相当量の希望しない副生成物、例えば環状エステルの形成を伴い、触媒の除去が困難であるという追加の欠点を有する。そのほか、平衡を生成物側に進めるために、反応水を除去する必要がある。副生成物および残留触媒の存在が所望物質の特性を劣化しない場合であっても、副生成物の形成を防ぎ、かつ主反応後にそれらを除去するために、複雑な手はずが必要である(例えばEP-A-0425201参照)。
本発明は、リパーゼ酵素の使用により、化学的触媒反応の困難を克服しようとするものである。リパーゼは、かつて、単純なエステル化反応およびエステル交換反応(例えばEP-A-0383405参照)、および立体選択的オリゴマー化反応(例えばMargolin A. L. et al., Tet. Letters, 28:1607-1610(1987)参照)のために用いられることが知られているが、ポリエステル化反応においては、リパーゼは限られた場合にしか使用されなかった。特にWallace and Morrow, J. Polymer Science Part A, 27, 2553-2562(1989)およびGutman, Mat. Res. Soc. Symp. Proc., 174, 217-222(1990)は、エステル部分が高度に活性化されたジカルボン酸ジエステル(2,2,2,-トリクロロエステル)から、またはヒドロキシカルボン酸のエステルおよびヒドロキシジカルボン酸のジエステルから出発して、高い重量平均分子量を有するポリエステルを生成するのに成功した。しかしながら、これらの方法は有機溶剤の使用に頼っていた。
本発明は、無溶剤の酵素的ポリエステル化方法に関し、この方法は、これまでの化学的および酵素的技術の欠点を回避するのみならず、注目すべきことに、高い重量平均分子量および狭い分布を有し、また、希望しない副生成物を含まないという点で極めて純粋なポリエステルを与える。本発明は更に、この方法により得られる新規なポリエステルを提供する。
本発明は、一つの態様において、
繰り返し単位として、
(i)脂肪族ヒドロキシカルボン酸、またはそのエステルもしくは酸無水物;あるいは
(ii)(a)少なくとも1種の脂肪族ジカルボン酸またはそのエステルもしくは酸無水物の残基、(b)少なくとも1種以上の脂肪族、ジオール、またはポリオールの残基、および所望により(c)少なくとも1種の脂肪族ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルもしくは酸無水物の残基
を含むポリエステルの製造方法であって、
(i)で定義した成分または(ii)で定義した成分を、不活性な有機溶剤の不在下で、かつリパーゼの存在下で反応させ、反応物質においてヒドロキシル基に対する酸の基のモル比が1:1から1:1.1であることからなる前記ポリエステルの製造方法を提供する。
本方法は二つの段階で進行すると考えることができる。第一段階は、オリゴマー化段階であり、最初のモノマーの実質的に全てが反応してオリゴマーを生成した時に完結する。第二段階は、生成したオリゴマーがポリエステルに変換することと考えることができる。
本発明の方法に用いるのに好適な脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、式:
HOCH2−R’−CO2H
(式中、R’は結合であるか、または置換または非置換C1〜C12アルキル基の2価の残基であり、この基は場合により1個または数個の炭素-炭素二重結合および場合により1個または数個の炭素-炭素三重結合を有する)で表されるものが挙げられる。
好適な脂肪族ジカルボン酸としては、式:
HO2C−R5−CO2H
(式中、R5は結合であるか、またはR’について定義した2価の残基である)で表されるものが挙げられる。
好適な脂肪族ジオールとしては、式:
HOCH2−R6−CH2OH
(式中、R6は結合であってよく、またはR’について定義した2価の残基である)で表されるものが挙げられる。
好適な脂肪族ポリオールとしては、式:
HOCH2−R7−CH2OH
(式中、R7はR’について定義した2価の残基であり、かつ少なくとも1個のヒドロキシ置換基を有する)で表されるものが挙げられる。
前記のC1〜C12アルキル基のそれぞれは、置換されていても非置換でもよく、そして環状、分岐状または直鎖状であってよく、場合により少なくとも1個の炭素-炭素二重結合(シス-またはトランス-配座)を有し、かつ場合により少なくとも1個の炭素-炭素三重結合を有する。C1〜C12アルキル基が2個以上の炭素-炭素二重結合または三重結合を有する場合は、これらの結合は共役でも非共役でもよい。C1〜C12アルキル基は、場合により1個または数個の置換基(2個以上の置換基がある場合、これら置換基は同一でも異なってもよい)で置換されており、それぞれハロゲン原子、例えば弗素、塩素または臭素、ヒドロキシル、−NHR2(R2は水素またはC1〜12アルキルである)、−OR3(R3は水素またはC1〜C12アルキルである)、および−CO2R4(R4は水素またはC1〜C12アルキルである)から選択される。
好ましくは、ジオールは2〜14個の炭素原子を有し、α,ω-ジオールであり、例えば1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサン-1,6-ジオールまたはドデカン-1,12-ジオール、最も好ましくは1,4-ブタンジオールである。
ジエタノールアミンが、本製造方法に好ましく用いられるモノマーである。好ましくは、ジ酸は2〜14個の炭素原子を有し、例えばシュウ酸、コハク酸、フマル酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、マレイン酸またはアジピン酸である。アジピン酸が最も好ましい。
好ましくは、ヒドロキシカルボン酸は2〜14個の炭素原子を有し、例えばグリコール酸、乳酸、2-ヒドロキシ酪酸、2-ヒドロキシイソ酪酸、2-ヒドロキシカプロン酸、2-ヒドロキシイソカプロン酸、クエン酸またはリンゴ酸である。
ここで用いられるように、“カルボン酸誘導体”なる用語は、エステルおよび酸無水物を指す。ジ酸のエステルはモノエステルでもジエステルでもよく、例えばモノまたはジアルキルエステルである。好ましくは、そのアルキル基は、それぞれ1〜4個の炭素原子を有し、メチルエステル、エチルエステルおよびジエステルがより好ましく、アジピン酸メチルおよびアジピン酸ジメチルが最も好ましいエステルである。
ジエチレングリコールは、他の好適なジオールよりも低い活性を有するので、ジエチレングリコールをモノマーとして用いる場合には、より高い温度で(この場合は分布が比較的広い)、または低温で長期間、反応を行なう必要がある。
ポリオールは少なくとも3個のヒドロキシル基を有し、そのうち少なくとも2個は立体障害されていない第一級または第二級ヒドロキシル基であることが好都合である。好ましくは、ポリオールは3個、4個または5個のヒドロキシ基を有する。第三級ヒドロキシル基、あるいは立体障害された第一級または第二級ヒドロキシル基は、本発明の条件下では反応しないようであるが、それにもかかわらず、続いてイソシアナートと反応させる場合に分岐点を提供するであろう。好ましいポリオールとしては、ペンタエリスリトールおよびトリオール、特にグリセロールが挙げられる。グリセロールを使用すると、酵素が第一級ヒドロキシル基を優先的にエステル化し、第二級ヒドロキシル基が立体的に障害されるので、一般的に線状ポリマーを生じるが、ある種の酵素を用いて分岐状生成物を得ることができる。
本発明のポリエステルは、線状でも分岐状でもよい。ペンダントヒドロキシル基を有する分岐状ポリマーおよび線状ポリマーは、一般的に、少ない割合の分岐状多官能性モノマー、例えばトリメチロールプロパン(TMP)、ジメチロールプロパン酸(DMPA)、ペンタエリスリトール(PE)またはグリセロールを導入することにより形成される。このようなモノマーの導入は、線状および分岐状ポリエステルの両方を生じさせる。生成した線状ポリエステルは、一般的にペンダントヒドロキシル基を有し、これらの基は、ポリエステルをイソシアナートと共に急冷する(quenching)場合に分岐/架橋に導く。
同様に、ヒドロキシ酸は、立体的に障害されていない第一級または第二級ヒドロキシル基を有することが都合がよい。好ましいヒドロキシ酸は、ヒドロキシ-直鎖状脂肪族カルボン酸である。
高い希釈度で、ある種のヒドロキシカルボン酸はラクトンを形成する傾向を有し、従ってこのようなヒドロキシカルボン酸を本発明方法に用いる場合には、希望しないラクトン形成反応を回避するために、これらの酸を高濃度でのみ使用することが好ましい。
本発明方法に用いられる温度が、従来の化学的に触媒されるポリエステル化反応温度と比較して低いために、ジ酸およびヒドロキシ酸、例えばシュウ酸、乳酸およびグリコール酸(これらの酸は高められた温度で脱炭酸する)を用いることができ、従ってこれまでの方法では一般的にアクセスできなかったポリエステルの製造が可能である。
一つの態様において、本発明方法により製造されるポリエステルは、1種または数種のヒドロキシ酸の繰り返し単位からなることができる。
他の態様において、本発明方法により製造されるポリエステルは、ジ酸およびジオール;ジ酸およびポリオール;ジ酸、ジオールおよびポリオール;ジ酸、ジオールおよびヒドロキシ酸;ジ酸、ポリオールおよびヒドロキシ酸;ジ酸、ジオール、ポリオールおよびヒドロキシ酸;の繰り返し単位、あるいはモノマーの他の好適な組み合わせ、例えばジ酸がそのメチルエステルまたはエチルエステル誘導体で置き換えられた組み合わせの繰り返し単位を含むか、あるいはこれら繰り返し単位からなることができる。モノマーの好ましい組み合わせは次のものである。アジピン酸ジメチル/1,4-ブタンジオール、ジエタノールアミン/アジピン酸、エタノールアミン/アジピン酸ジメチル、N-メチルエタノールアミン/アジピン酸ジメチル、ジエタノールアミン/アジピン酸ジメチル、アジピン酸/グリセロール、アジピン酸/1,4-ブタンジオール、アジピン酸/ジエチレングリコール、アジピン酸/ジエチレングリコール/グリセロール、アジピン酸/ジエチレングリコール/トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール/アジピン酸/ジメチロールプロパン、アジピン酸/1,6-ヘキサンジオール。
一般的に、反応関与体の反応性カルボキシル基と、反応関与体の反応性ヒドロキシ基は、ヒドロキシル基に対する酸基のモル比が、1:1〜1:1.1であるように存在する。反応は化学量論的不均衡で行なうことができるが、酸基の数に対するヒドロキシル基の量を増加させると、その結果、反応関与体を等モル量で用いた場合よりも、低い重量平均分子量(より短い鎖長)を有する生成物が一般的に生成する。最初の反応混合物中に存在するヒドロキシル基の過剰量を変えることにより、得られるポリマーの長さを変えることができる。しかしながら、本発明の特別な態様においては、末端ヒドロキシ単位を有するポリエステルが得られるように、比率をわずかに調節することができる。末端ヒドロキシ単位を有するポリエステルは、ポリウレタンの製造においてソフトセグメントとして使用できる。
本発明の方法に用いられる酵素は、不活性担体、例えば陰イオン交換樹脂、アクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂またはポリウレタン樹脂のようなポリマー上に結合されていてもよく、あるいは遊離形態で使用することもできる。酵素が不活性担体上に結合されている場合、複雑な精製段階の必要なしに酵素を反応混合物から容易に除去することができる(例えば濾過により)。好ましくは、酵素は反応混合物から回収され、再使用される。好ましくは、酵素は単離形態で存在する。
酵素は、反応が完結に至るまで反応容器中に存在していてもよい。反応が進行すると、反応関与体の粘度が上昇し、反応混合物の攪拌に必要な上昇した剪断力は、酵素への損傷を引き起こすことがある。加えて、オリゴマーのポリエステルへの変換は、反応温度を少なくとも80℃に、例えば少なくとも85℃、90℃、95℃または100℃に高めることにより促進できる。これらの高い温度は、酵素の変性を引き起こすことがあり、これは一般的に非可逆的である。
好適な酵素は商業的に入手しうるリパーゼである。全てのリパーゼが実質的量の水の存在下でポリエステル化触媒として機能するわけではないので(その一例はMucor meiheiからのリパーゼである)、反応中に水を除去して酵素の活性を保持するか、あるいは水が存在する場合に機能する酵素を選択する必要があろう。
驚くべきことに、本発明の反応に用いられる酵素の多くは水の存在下でもなお活性であることが見出された。水の除去は、厳密に必要ではないが、好ましい。
本発明方法に使用するのに好適な酵素は、Candida antarcticaから誘導されるリパーゼ、非特異的トリアシルグリセロールリパーゼ[E.C. no.3.1.1.3]、例えばNovo Industri ASから入手しうるNovozym 435(登録商標)であり、この商品において酵素はマクロ多孔質アクリル樹脂上に固定化されている。この酵素は、組み換えDNA技術により商業的に得ることができ、天然配列または遺伝子工学的なその修飾体を有するが、所望により微生物から抽出してもよい。他の好適なリパーゼは、当業者の能力の範囲内にある簡単な試行錯誤実験法によって同定できる。
酵素の活性は反応混合物中に存在する物質により影響されることがあり、例えばC.antarcticaからのリパーゼはグリセロールにより阻害される。分岐状多官能性モノマー、特に第二級アルコールを初期反応混合物中に含ませないことが好ましいが、その添加を反応が開始した後まで遅らせて、酵素活性の低下を回避することが好ましい。反応開始の少なくとも12時間、例えば少なくとも14時間、16時間または24時間に、分岐状多官能性モノマーを反応混合物に添加する場合、酵素が反応混合物中にまだ存在しているならば、酵素活性は低下するであろうが、完全に低下するのではなく、分岐状多官能性モノマーが添加されていない場合よりも遅い速度で反応は続くであろう。
酵素の使用量は臨界的ではなく、一般的に経済的な考慮によって制限される。少なすぎる酵素量は遅い反応を生じる一方で、多すぎる酵素はコストを不必要に増加させるだけである。Candida antarcticaからのリパーゼ(Novo Industri AS Catalogue no SP 435)の場合、モノマー総重量に基づき0.1〜1.5重量%、好ましくは0.1〜0.6重量%、最も好ましくは0.15〜0.3重量%の担持酵素を用いるのが好都合であることが見出された。
本方法は一般的に10℃〜90℃、好ましくは40℃〜60℃で行なわれる。90℃を越えると大部分の酵素は変性するであろうが、90℃より高い変性温度を有する酵素を用いることができ、この酵素が存在する場合は、反応の各段階を90℃より高い温度で行なうことができる。10℃未満では反応が極めて遅く、モノマーの完全な変化に達するのに不経済に長い反応時間を要する。
大部分の用途のためには、40℃〜60℃のような高められた温度で処理して、反応期間を短縮することが好ましいが、特に狭い分布が要求される場合には、低い温度および長い反応時間を用いることができる。
本方法は一般的に大気圧または減圧で行なわれる。反応により生成した水は一般的に反応中または反応後に除去され、例えば初期オリゴマー化後に、および続くオリゴマーのポリエステルへの変換中に除去される。反応が行なわれる圧力を低下することにより、例えば100mbarまたは50mbarに、好ましくは5mbarに低下することにより、水は好都合に除去される。あるいは、拭き取り式(wiped)フィルム蒸発器を用いて減圧下で、例えば5mmHgまたは1mmHg(1mmHg=133.322Pa)以下で水を除去することができる。他のもう一つの方法においては、乾燥剤、例えばモレキュラーシーブが用いられるが、乾燥剤と酵素支持体との摩擦による担持酵素への物理的損傷を回避するよう注意する。
一般的に、本方法は酵素を水和するのに充分な水の存在下に行なわれ、実質的量の水が存在していてもよく、ポリエステル化反応に影響を与えない。しかしながら、ポリエステルへの完全な変化を達成しようとするならば、少なくとも反応の終わりに大部分の水(即ち酵素を水和するのに必要な水を除いて)を除去することが必要であろう。
反応混合物についての要求条件は、カルボン酸エステル基を有するモノマーを用いた場合の反応により生成するアルコール、例えばメタノールまたはエタノールの除去に、同様に適用される。
反応の開始時に水が存在すると、反応速度が予想外に上昇することが見出された。
全反応時間は一般的に6〜48時間、好ましくは12〜24時間である。
本発明の方法は、一般的に高い重量平均分子量、例えば8kDaまで、またはそれ以上、特に10kDaまで、またはそれ以上を有するポリエステル(アミド)の製造を可能にする。
本発明の方法により製造されたポリエステル(アミド)は、一般的に200Da、好ましくは600Da、より好ましくは1000Da、最も好ましくは4kDaの最小重量平均分子量を有する。ポリエステルの重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーを用いて測定される。
本発明の方法により製造されたポリエステル(アミド)は、一般的に6〜50個のモノマー単位、好ましくは10〜40個のモノマー単位、最も好ましくは30〜40個のモノマー単位を含む。これは一般的に0〜50、好ましくは0〜25の酸価、より好ましくは0.5〜10の酸価を有する。最も好ましくは、ポリエステルは約1の酸価を有する。
本発明の方法により製造されたポリエステル(アミド)は、一般的に1.5以下、好ましくは1.3以下の分布を有する。分布は、下記のようにして計算され、
そして数平均分子量および重量平均分子量は、好適な方法により得ることができる。
一般的に、従来方法により製造されるポリエステルは、環状ジエステル不純物、例えば環状エステル、1,6-ジオキサシクロドデカン-7,12-ジオンを少なくとも0.5重量%またはそれ以上、例えば1.5重量%まで、またはそれ以上の量で含有している。必要な場合、環状ジエステル不純物含量は、例えば拭き取り式フィルム蒸発または高真空蒸留のような方法により低減される。蒸留の後、0.3〜0.7重量%ほどに低い環状ジエステル不純物含量を達成することができる。この不純物レベルは多くの場合に許容できるが、大きな出費で達成される。環状ジエステル不純物の存在は、ガスクロマトグラフィー、質量分析または高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて検出できる。
本発明の方法は、溶剤の不在下で行なわれる。本発明によれば、溶剤は本発明の反応条件下で不活性な有機液体である。
無溶剤ポリエステル化反応にアジピン酸を使用する問題の一つは、アジピン酸が他のモノマー、例えばジオールまたはポリオールに僅かしか溶解しないことである。本発明の方法では、低分子量のオリゴマーおよび2量体が初期反応生成物である。アジピン酸はこの低分子量生成物に溶解し、こうして反応が促進し、より高分子量のポリマーが生成する。
本発明の好ましい態様によれば、ヒドロキシ末端基を有するポリエステルを少なくとも1種のイソシアナートと更に反応させて、ポリウレタンを製造する。一般的に、イソシアナートとの反応前に、酵素はポリエステルから除去される。この除去は、酵素およびその支持体がポリエステル/イソシアナート反応を妨害しないように防ぐ。一般的に、ポリエステル化反応中に生成した水は、イソシアナートとの反応の前に除去される。
本発明のポリエステルは、鋭い融点を有し(これまで製造された広い分布を有する物質とは異なる)、ポリウレタンに優れた物理的特性、例えば硬度、曲げ強度および引張り強度の望ましい組み合わせを与える。
本発明により製造されるある種のポリエステルは新規物質である。
本発明のもう一つの態様において、繰り返し単位としてシュウ酸、乳酸およびグリコール酸の少なくとも1種の残基を含むポリエステルが提供される。
ポリエステルの組成に関して上記した優先性(または好ましさ)は、本発明のこれら二つの態様にも適用される。
本発明のポリエステルおよびポリウレタンは、成形体および成形発砲体として、特に自動車用に用いられる。
本発明を以下の実施例により更に説明するが、これら実施例は保護範囲を限定するものではない。
実施例1
材料
1. アジピン酸、Aldrich、9.83g、0.066モル、1当量。
2. グリセロール、Fison's、6.30g、0.0707モル、1.05当量。
3. リパーゼSP 435、BX LC 002、91/7、Novo、200mg。
手順
反応関与体を試験管型80mlセル反応器(CR)に入れ、これにラグビーボール磁気攪拌器を加えた。CRを油浴中で40℃に加熱し、粘度が低下してから内容物を磁気的に攪拌した。開放容器中で5時間攪拌を行ない、次いでCRにT−ピースアダプター(その頂部にはパージ用コックが嵌められている)を取付けた。側部アームにより、更に5時間、真空(10mbar、5mbarに低下)にした。ある割合の未反応アジピン酸があったが、GPC測定はオリゴマー状混合物を明確に示した。
分析技術
重縮合反応の経過は、薄層クロマトグラフィーにより定性的に監視できる。保持ファクター(retention factor)と分子サイズとの間には近似相関があるからである。アジピン酸/1,4-ブタンジオール系についての最適の溶離剤は、ジクロロメタンおよびエタノールの10:1(容量)混合物であり、これを用いると、このジオールはRf0.18に現れ、エステル生成物はRf0.26〜0.70の範囲に現れる(鎖が生長するにつれて次第に高くなる)が、個々のオリゴマーの同定を許容するには、分離は充分でない、ジオールおよび生成物は、p-アニスアルデヒドおよび熱で可視化すると青色に着色する。
反応残留物中の低次エステル生成物の存在、最も顕著には3成分および5成分ヒドロキシ末端オリゴマーの存在が、多段階カラムクロマトグラフィーにより確認された。完全な分離の達成を困難にするこれらオリゴマーの化学的類似性および相互溶解性にもかかわらず、一つの主要な種を含有する生成物フラクションを得ることができ、従来の分光分析手段による同定が可能である。次いで各フラクションからのクロマトグラフィーデータを相互参照すると、各成分の保持ファクターが得られ、これから、次の反応残留物中にそれらが存在するか、または存在しないかを容易に評価できる。
低重量生成物フラクションは、赤外線およびプロトンNMR分析、質量分析およびゲル透過クロマトグラフィーにより特性決定された。IRは鎖長については殆ど指示を与えることができないが(ヒドロキシル吸収の相対的強度の若干の変化以外)、有意な末端基を明確に示すであろう。最も重要な識別上の特色は、ヒドロキシルの場合は3450cm-1付近での強い吸収(O-Hストレッチ);カルボキシルの場合は2400-3600cm-1の範囲での非常に広い吸収(O-Hストレッチ)、およびカルボニル(C=Oストレッチ)吸収が1720cm-1より低く広がることである。
プロトンNMRは、オリゴマー末端基の確認を提供するのみならず、繰り返し単位の数を評価するのにも使用できる。この系中に認められるシグナルは、1.66-1.68ppmでのマルチプレット(中央またはb、メチレン)、1.70-2.10ppmでの不安定なシングレット(ヒドロキシル)、2.33-2.34ppmでのマルチプレット(カルボニルに隣接するメチレン)、3.66-3.70ppmでのトリプレット(ヒドロキシルに隣接するメチレン)、4.10-4.14ppmでのトリプレット(エステル酸素に隣接するメチレン)、および7.00ppmでの広く不安定なシングレット(ヒドロキシルとカルボキシルとの組み合わせ)である。鎖長は、末端基シグナルの相対的強度から決定することができる。遊離酸残基において、ヒドロキシルシングレットはしばしば鎖メチレンマルチプレット内に隠され、カルボキシルシングレットは、もし認められるならば、痕跡量の水との水素結合のために誇張しがちであり、従って尺度ファクターとして用いるのに最も信頼できるシグナルは、3.68ppm付近でのCH2OHトリプレットである。全-ヒドロキシ末端の場合、例えば、このものは4のプロトン数を有するはずなので、積分の和はその分子の合計水素含量と解釈することができ、これは26+16nに等しく、nは繰り返し単位の数(あるいは類似のオリゴマーの混合物の場合は、数平均重合度)である。この技術は4単位以下の低次オリゴマーにとって有用であり;より長い鎖では、通常nが2以上の場合に、積分の不正確さは不確実性を生じる。
オリゴマー同一性の不明瞭でない確認は、質量分析によって提供される。アンモニア衝突による化学的イオン化を用いると、分子イオンは、600-700ダルトンの分子量までは水素およびアンモニアと結合して、即ちM+1およびM+18において認められ、それ以上では鎖はフラグメントになる傾向がある。
重縮合残留物の分析に用いた主な技術は、ゲル透過クロマトグラフィーであった。試料をテトラヒドロフランに溶解し、この溶液をポリマーゲル充填カラムに通した。成分はそれらの分子容積に応じて分離され、より小さい物質はそれて孔中に入る傾向があり、従って間隙を直接通過する大きな分子よりも長い経路をたどる。種々の成分の溶離は、示差反射計、および保持時間(チャート紙上の距離として表される)に対して作成された強度のプロットにより監視される。保持ファクターと分子サイズとの関係は対数であり、従って低いサイズ範囲にある物質は非常によく分離され、個々に同定できるピークを生じるが、サイズが大きくなると分離は低下し、シグナルは結果として、カラムの最大孔寸法によって定められる点で合体する。試料の成分が構造的に類似している場合には、分子量は実際の目的のために分子容積に比例するとみなすことができる。
オリゴマーを個々に特性決定できる領域の上方では、縮合生成物は、測定した溶離ピークの保持ファクターをポリエチレングリコール参照標準物のそれと比較することにより、分子量範囲に分類されている。残留物の分析の基礎としたデータは下記のとおりである。
ゲル透過クロマトグラフィーは、Baxenden Chemicals Ltd.により、Waters 440シリーズクロマトグラフィー装置を用い、THFを移動相として行なった。Polymer Laboratories Ltd.により製造されたカラムは、寸法が600 x 7.5mmであり、粒子サイズ10μmおよび孔サイズ50Å(または特定した場合は500Å)の高度に架橋した球状ポリスチレン/ジビニルベンゼン材料であるPLゲルが充填されていた。検出器はWatersモデル401示差反射計であり、分子量平均の評価は、BBCモデルBマイクロコンピューターにより、市販のPEG試料に対して検定して行なった。
生成物混合物の数平均分子量および重量平均分子量、MnおよびMwの評価値は、市販のPEG標準に対する検定によりコンピューターで作成され、残留出発物質の既知質量(殆どの場合アジピン酸、MW 146)に対して補正されていた。これらの数値は近似関係から計算され、従って、保持の直接比較よりも低い本来の精度を有するが、それにもかかわらず、これらの数値は実験結果の便利な尺度を提供する。補正した平均値の信頼幅は±10%と推定される。
実施例2
材料
1. アジピン酸(AA)、Aldrich、196.6g、1.35モル1当量。
2. 1,4-ブタンジオール(BD)、Aldrich、127.3g、1.41モル1.05当量。
3. リパーゼSP 435、BX LC 002、91/7、Novo、1g(モノマーの0.15重量%)。
手順
アジピン酸、ブタンジオールおよびリパーゼを、500mlのフランジ付きフラスコに入れ、フラスコを油浴中で40℃に加熱した。粘稠混合物を木製スパーテルで攪拌し、次いで移動性スラッジが生じるまで、油浴中に0.5時間放置した。次いでフランジ付きフラスコに、ラグビーボール攪拌器(4cm)と、真空除去用コックおよびパージ用コックが装備された5頸容器蓋とを装着した。酵素の摩擦を回避するために混合物をゆっくり攪拌しながら、水流真空を22時間適用した。2時間後、混合物は透明な移動性溶液を形成し、固定化酵素だけが不溶であった。回転油圧ポンプにより高真空を適用し、真空を3時間かけて10mbarから5mbarに低下させた。パージは合計5時間続けた。完成した生成物は、反応の終りごろに、または続いて放置すると、固形物に固まった。
重量 約250g
酸価 6
ヒドロキシル価 35
分子量
− 数平均Mn 5020
− 重量平均Mw 7466
分布 1.49
ブタンジオール含量 <0.01%
水含量 0.18%
環状エステル含量 <0.1%
実施例3
材料
1. アジピン酸(AA)、Aldrich、590g、4.04モル、1当量。
2. 1,4-ブタンジオール(BD)、Aldrich、382g、4.24モル、1.05当量。
3. リパーゼSP 435、BX LC 002、91/7、Novo、3g(モノマーの0.15重量%)。
手順
アジピン酸、ブタンジオールおよびリパーゼを、1リットルのフランジ付きフラスコに入れ、フラスコを油浴中で40℃に加熱した。粘稠混合物を木製スパーテルで攪拌し、次いで移動性スラッジが生じるまで油浴中に0.5時間放置した。次いでフランジ付きフラスコに、オーバーヘッド攪拌器と、真空除去用コックおよびパージ用コックが装備された5頸容器蓋とを装着した。酵素の摩擦を回避するために混合物をゆっくり攪拌しながら、水流真空を22時間適用した。2時間後、混合物は透明な移動性溶液を形成し、固定化酵素だけが不溶であった。回転油圧ポンプにより高真空を適用し、真空を3時間かけて10mbarから5mbarに低下させた。油浴温度を60℃に高め、パージを合計17時間続けた。完成した生成物は、反応の終りごろに、または続いて放置すると、固形物に固まった。ポリプロピレン微細メッシュを通して濾過することにより、生成物からを酵素触媒を除去した。
重量 650g
酸価 8
ヒドロキシル価 36
分子量
− 数平均Mn 4783
− 重量平均Mw 7139
分布 1.49
ブタンジオール含量 0.21%
水含量 0.08%
環状エステル含量 <0.12%
実施例4
材料
1. アジピン酸、Aldrich、196.6g、1.35モル、1当量。
2. ジエチレングリコール、Chemi Trade、160.2g、1.51モル、1.12当量。
3. リパーゼ、Novozym 435、1.03g(0.29% w.w)。
4. 水6.8ml(1.9% w/w)。
方法
ジエチレングリコール(DEG)/水を、500mlのフラスコに入れた。フラスコを油浴中で40℃に加熱した。オーバーヘッド攪拌器/フランジ蓋を取り付けた。フラスコ内容物が40℃に達したとき、急速に攪拌しながらアジピン酸を加えた。攪拌速度を低下させ、酵素を加えた。このスラリーを40℃で6時間、次いで60℃で更に19時間攪拌した。酸価の監視は141の値を示し、フラスコ内容物は移動性液体であった。真空(100mbar)を1.5時間適用し、74ミクロンナイロン布を通して第二のフラスコに直接濾過し、酵素を除去した。攪拌速度を高速にセットし、オリゴマーに80℃で真空ストリップ(最初は20mbar、次いで5mbarに低下)を施した。
物質の特性
Bxサイズ-Kg: 350g
OH価-: 54.4
酸価-: 5.3
分子量: 2063
Mn−GPC: 2233
Mw−GPC: 4493
分布: 2.01
水含量: 0.0537
環状エステル含量: 1.5%
実施例5
分岐状多官能性モノマーの導入
材料
1. ジエチレングリコール(DEG)、FW 106、617.4g、5.82モル、1.08当量。
2. 水27.2g(1.9% w/w DEG+AA)。
3. アジピン酸(AA)、ex ICI、FW 146、786.4g、5.39、1.0当量。
4. リパーゼ、Novozym▲R▼435、Bx 0013-1、92-6、4.12g(0.29% w/w DEG+AA)。
5. グリセロール、ex FISON'S、FW 92、0.1628モル、0.0302当量、2.43% w/w DEG、1.07% w/w DEG+AA。
方法
DEGおよび水を、オーバーヘッド攪拌器および蓋を備えた1リットルのフランジ付きフラスコに入れた。フラスコ内容物の温度を恒温マントルに連結した金属プローブにより制御した。フラスコ内容物を40℃に加熱し、急速に攪拌しながらアジピン酸を加えた。攪拌速度を低下させ、酵素を加えた。得られたスラリーを40℃で6時間、次いで60℃で更に19時間攪拌した。酸価の監視は129の値を示した。フラスコ内容物は移動性液体であった。フラスコ内容物を74ミクロンナイロン布を通して濾過し、酵素を除去した。得られた透明液体にグリセロールを加え、そして最初は60℃、最後は80℃の温度を用い、攪拌力を高めて、オリゴマーに真空ストリップ(最初は20mbar、次いで5mbarに低下)を施した。G.C.アッセイにより遊離グリセロール含量の減損が確認された。
得られた物質の特性は表1に示すとおりである。
実施例6
グリセロールをトリメチロールプロパンで交換
材料
1. ジエチレングリコール、FW 106、154.4g、1.46モル、1.08当量。
2. 水6.8ml(1.9% w/w DEG+AA)。
3. アジピン酸、ex ICI、FW 146、196.6g、1.35モル、1.0当量。
4. リパーゼ、Novozym▲R▼ 435、BX 0013-1、92-6、1.03g、0.29% w/w(DEG+AA)。
5. トリメチロールプロパン(TMP)、ex Aldrich、FW 134、5.49g、0.041モル、0.030当量、3.6% w/w DEG、1.6% w/w(DEG+AA)。
方法
方法を実施例5に記載のように行ない、ただし油浴加熱を恒温マントル加熱で置き換えた。トリメチロールプロパンは、酵素を濾過した後で、最後の真空水ストリップの前に、加える。遊離TMPの減損はガスクロマトグラフィー(GC)により監視した。
得られた物質は表1に示す特性を有していた。
実施例7
TMPのジメチロールプロピオン酸(DMPA)での交換
材料
1. ジエチレングリコール、FW 106、156.1g、1.47モル、1.104当量。
2. 水、6.8ml(1.9% w/w DEG+AA)。
3. アジピン酸(AA)、ex ICI、FW 146、194.8g、1.33モル、1当量。
4. リパーゼ、NovozymR 435、Bx 0013-1、92-6、1.03g(0.29% w/w DEG+AA)。
5. ジメチロールプロピオン酸、ex Aldrich、FW 134、3.19g、0.024当量、2% w/w DEG、0.91% w/w(DEG+AA)。
方法
方法を実施例6と同様に行ない、ただしTMPをDMPAで置き換えた。ポリマーマトリックス中へのDMPAの導入は、イオン対逆相液体クロマトグラフィーを用いて測定して、遊離DMPAの減損によって証明された。
得られた物質の特性を表1に示す。
予備実験を行なって、種々の重合反応の実行可能性を決定した。結果を表IIに示す。
Claims (12)
- 繰り返し単位として、
(i)1種以上の脂肪族ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルもしくは酸無水物の残基;あるいは
(ii)(a)1種以上の脂肪族ジカルボン酸またはそのエステルもしくは酸無水物の残基、(b)1種以上の脂肪族ジオール、または脂肪族ポリオールの残基、さらに必要ならば(c)1種以上の脂肪族ヒドロキシカルボン酸またはそのエステルもしくは酸無水物の残基、
を含むポリエステルの製造方法であって、
(i)で定義した成分または(ii)で定義した成分を、不活性な有機溶剤の不在下で、かつリパーゼの存在下で反応させ、反応物質においてヒドロキシル基に対する酸の基のモル比が1:1から1:1.1であることを含む、上記ポリエステルの製造方法。 - ジカルボン酸がアジピン酸である、請求項1に記載の方法。
- ジカルボン酸エステルがメチルまたはエチルジエステルである、請求項1または2に記載の方法。
- ジオールが1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオールまたはジエチレングリコールである、請求項1〜3の何れか一つに記載の方法。
- ヒドロキシ酸がグリコール酸または乳酸である、請求項1〜4の何れか一つに記載の方法。
- 脂肪酸ジカルボン酸および脂肪族ジオールの残基からなるポリエステルを製造するための、請求項1〜4の何れか一つに記載の方法。
- リパーゼがCandida antarcticaからのものである、請求項1〜6の何れか一つに記載の方法。
- 反応により生成した水を反応容器から除去する、請求項1〜7の何れか一つに記載の方法。
- 得られるポリエステルが0.3重量%以下の環状ジエステル不純物を含有する、請求項1〜8の何れか一つに記載の方法。
- 得られるポリエステルが200〜10,000Daの重量平均分子量を有する、請求項1〜9の何れか一つに記載の方法。
- ヒドロキシ末端基を有するポリエステルを製造するための方法であって、ポリエステルからウレタンポリマーを生成させることを更に含む、請求項1〜10の何れか一つに記載の方法。
- ポリエステルまたはウレタンポリマーを成形体に成形することを更に含む、請求項1〜11の何れか一つに記載の方法。
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