JP4008833B2 - 鋼中析出物中炭素の定量分析方法 - Google Patents

鋼中析出物中炭素の定量分析方法 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、鋼中析出物中の炭素量を精度良く分析する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼中には、酸化物,炭化物,窒化物、硫化物等の様々な種類の析出物が存在している。そしてその大きさも種々であり、100nm以下の微細なものから、100μmを超えるものまで様々である。いずれにしても微細な粒子であり、これら析出物の種類や析出量が鋼材の特性に大きく影響している。このため、各析出物の種類と量を制御することが、鋼材の性質を造りこむ上で重要なポイントになる。したがって、各々の析出物の種類を定性的に分析するとともに、析出量を定量的に分析する必要がある。特に炭化物の析出量は、鋼の特性に著しい影響を与えるので、その量を正確に知る必要がある。
【0003】
各種析出物の一般的な分析方法として、形態別分離定量分析法が採用されている。形態別分離定量分析法は、析出物の種類等によって具体的分析方法は若干異なるが、概略的には次のような手順からなる。
(1) 析出物を中に含む鋼材試料を、化学的手段(酸溶解)や電気化学的手段(電解)により溶解する。鋼の母材は溶解液中に溶けるが析出物が溶解しない条件を選ぶと、析出物は液中に固体状の残渣として懸濁した状態で液中に残る。
(2) 残渣が懸濁した溶解液をフィルターでろ過し、フィルター上に各種析出物の混合残渣を捕集する。
(3) 上記捕集した混合残渣を分別すべき析出物の種類によって選定された処理条件でさらに溶解(例えば酸溶解)し、フィルターでろ過する。或る析出物は溶解液中に溶け、或る析出物はフィルター上に残渣として残り、捕集される。
(4) 上記操作を繰り返して、それぞれの析出物が分離される。
(5) 析出物量の定量化は、目的とする元素によって、溶液中に溶け出した元素量を定量するか、あるいは最終的に残った残渣中の元素量を定量することにより行なっている。一般的には、後者を採用している。
【0004】
ところで、上記形態別分離定量法では、鋼中の炭化物について炭素量を直接に定量することはできない。
鋼中の炭化物量を正確に定量するためには、フィルター上に捕集される残渣を、フィルターの微細孔に捕捉された炭化物まで全て余すところなく定量にかける必要がある。しかしながら、一般的に用いられている有機物からなるフィルターには多くの炭素が含まれているため、残渣中の炭素量のみを定量することはできない。
炭化物が溶液中に溶解する条件を選定して処理し、溶液中の炭素を定量することが考えられるが、有機物からなる電解液などの溶液中にも炭素が含まれていると言う問題もある。
【0005】
そのため、残渣中の炭素量、すなわち炭化物量を定量する手段としては、他の析出物量を定量分析し、全体の析出物残渣から逆算して炭化物量を知る間接的な手段が実用されている。
しかし、間接法では、ただ単に、炭化物の量のみを知る場合においても、他の析出物量の定量分析を多数回行なっているので、それぞれの定量分析での誤差が積算され、全体としての精度が落ちる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、特開2000−9719号公報では、鋼中の炭化物量を直接定量分析するために、フィルターとして炭素を含まない、例えばガラス繊維フィルター,アルミナ繊維フィルター,銀メンブレンフィルター等の無機質フィルターを使用し、フィルターに捕集した後、高真空中で焼いて電解液等から混入した汚染炭素を除去し、その後酸素中で燃焼させ、赤外線吸収法等を使用して炭化物量を最終的に定量することが提案されている。
しかしながら、同文献に記載の方法では、フィルターに捕集後、電解液等から混入した汚染炭素を除去のために高真空雰囲気下で高温に加熱しているが、高真空雰囲気にする段階で真空ポンプからのオイルにより汚染される虞がある。このオイルからの炭素の汚染を防止するための設備が必要となるばかりでなく、操作も煩雑になる。
【0007】
さらに、赤外線吸収法等による定量は絶対値の分析ではなく、測定強度と炭素量の関係を示す検量線を予め作成しておく必要がある。上記特開2000−9719号公報に記載の技術では、検量線として標準ガスを用いて装置の校正を行なっているものと思われるが、検量線作成手段の教示がない。また、赤外線吸収法での検量線は定量目的としている抽出残渣に類似したものとして作成することが望ましい。なぜなら、通常分析している鋼試料の燃焼と抽出残渣の燃焼は、燃焼状態が大きく異なっているため、精度良い検量線を得るためにはフィルター込みで検量線を作成しなければならない。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、形態別分離定量分析法を用いて鋼中の炭化物中炭素を定量分析する方法であって、汚染炭素を簡便な手段で除去し、精度良く定量できる方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の鋼中析出物中炭素の定量分析方法は、その目的を達成するため、分析対象鋼の抽出残渣を酸素存在下で加熱することによって前記残渣から生成する一酸化炭素及び二酸化炭素の量を測定することにより、分析対象鋼中に含まれる炭化物中炭素を定量分析する方法であって、前記抽出残渣をメチルアルコールによって洗浄した後、さらに温水による洗浄と有機溶剤による洗浄を施した後大気中で加熱乾燥し、その後に酸素存在下での燃焼による定量分析に供することを特徴とする。
【0009】
抽出残渣を抽出する際、事前加熱処理が施され汚染炭素が除去された無機質フィルターを使用することが好ましい。
さらに、炭素を赤外線吸収法を用いて定量分析する際、検量線作成のための試薬として、微量炭素分析法としてJISで推奨しているスクロース(C122211)を採用し、数種類の濃度別スクロース水溶液を作製して、これら濃度別のスクロース水溶液の所定量を無機質フィルターに捕水・乾燥させた後、1250℃での1分間の検出量を求め、濃度との関係式から検量線を作成し、当該検量線に基づいて炭素を定量することが好ましい。
【0010】
【実施の態様】
本発明方法においては、まず、分析対象鋼から、定量対象である鋼中の炭化物を含む抽出残渣を調製する。前記抽出残渣は、例えば、公知の抽出方法を用いて分析対象鋼の抽出を行なうことにより得ることができる。抽出方法としては、定量対象である鋼中の炭化物を分解することなく、分析対象鋼から抽出することのできる方法である限り、特に限定されるものではなく、例えば、化学的溶解法又は電解抽出法などを挙げることができる。
【0011】
前記化学的溶解法では、適当な無機酸(例えば塩酸または硝酸)、またはハロゲンと有機溶媒の混合溶液(例えばヨウ素−メチルアルコール)を用いることにより、鋼中含有炭素を化学的に抽出することができる。化学的溶解法においては、分析対象鋼を切削したりする必要はなく、また特別な試料形状に加工する必要もないので、加工の際に生じる可能性がある炭素汚染がないという良さがある。
【0012】
前記電解抽出法では、電解液として、微細な炭化物であっても分解することなく抽出することができる点で、非水溶液系電解液である10%アセチルアセトン−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メチルアルコール系電解液、または4%サリチル酸メチル−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メチルアルコール系電解液を使用することが好ましい。分析対象鋼の試料形状についても、塊状または板形状のまま用いることができるので、複雑な加工を施す必要がなく、加工の際に生じる可能性がある炭素汚染を抑制することができる。
電解抽出法においては、分析対象鋼を10%アセチルアセトン−1%塩化テトラメチルアンモニウム−メチルアルコール系電解液で電解抽出し、得られる抽出残渣を出発点に段階的に湿式分析的手法で析出物を分別し、硫化物,窒化物,炭化物を順次定量分析するものである。
【0013】
前記の抽出方法により得られた抽出残渣を、フィルターにより捕集し、次工程の操作に供する。フィルターとしてはガラス繊維からなるものを使用することが好ましい。特開2000−9719号公報では、鋼中の炭化物量を直接定量分析するために、フィルターとして炭素を含まない、例えば、ガラスフィルター,アルミナフィルター,銀メンブランフィルター等の無機質フィルターが好ましいとの記載があるが、本発明でも同様に、炭素を含まないフィルターであれば特に制限されず使用できる。価格や取り扱い性を考慮すれば、市販のガラス繊維からなるフィルターで十分である。
【0014】
炭素を含まないガラス繊維質のフィルターであっても、その表面には炭素が付着し、汚染されているので、ガラス繊維フィルターを使用する場合には、フィルター表面に付着している汚染炭素を除去してから使用する必要がある。例えば、大気雰囲気下、450℃で加熱(仮焼)することによって汚染炭素を低位に安定させることができる。
有機電解液によって電解抽出した際の抽出残渣をフィルターで捕集すると、フィルターおよびその上に捕集された抽出残渣は、C分子を含んだ溶媒や有機電解液が付着・吸着して汚染されている。この場合も、フィルターおよびその上に捕集されている抽出残渣から有機電解液の残渣を除去した後に、次の測定工程に供しなければならない。
【0015】
電解液と抽出残渣をフィルターでろ過した後、フィルター上に残存・捕集された残渣には、C分子を含んだ有機電解液が付着しているので、これを適当な洗浄液で洗浄する。残渣上に少量の洗浄液を注ぎ、その洗浄液が吸引により流下した後、再び同様に洗浄することで、残渣に付着・吸着している電解液を除去する。
前記抽出残渣から汚染炭素を除去する操作方法としては、従来からのメチルアルコールによる洗浄に加えて、温水洗浄を実施し、さらにその後、ジエチルエーテルとメチルアルコールとの混合洗浄液(9:1)で最終的な洗浄を行なうことが好ましい。なお、温水の温度が高いほど、電解液として用いたアセチルアセトンの溶解度は大きくなるので、洗浄温水は80℃程度に高めることが好ましい。
【0016】
洗浄操作において、個人差をなくし、低位で再現性を良くする手段として、混合液の比率,洗浄液の温度管理,1回の洗浄液量,ろ過速度,洗浄の繰返し回数等を厳密に決めて洗浄することで洗浄効率を高めることが好ましい。
具体的には、ろ過後の抽出残渣をメチルアルコールで繰返し洗浄する。その後80℃の温水で繰返し洗浄する。さらにその後、電解液として用いたアセチルアセトンの溶解度が大きいジエチルエーテルを採用し、ジエチルエーテルとメチルアルコールとの混合洗浄液(9:1)で繰返し洗浄する。
なお、洗浄の繰返し回数はそれぞれの洗浄液で6回とし、1回の洗浄に用いる洗浄液の量は20mlとし、洗浄液を5分間静止させた後、吸引した。
【0017】
この後、汚染炭素が除去された抽出残渣を、酸素中で燃焼させて含有炭素量を定量する分析にかける。
残渣中の炭素を燃焼させてCO,CO2として定量する際には、従来の方法を採用することができる。酸素気流中燃焼における加熱は、外熱式の管状炉加熱でも、高周波加熱でも良いが、後者の方法では高周波で発熱する物質を共存させる必要があり、これからの炭素の混入による誤差を生じやすいので、前者の方法の方が好ましい。
CO,CO2としてからの定量方法も特に限定はしないが、機器化が進んでいる赤外線吸収法で行なうことが好ましい。
【0018】
ところで、赤外線吸収法等による定量は絶対値の分析ではないから、測定強度と炭素量の関係を示す検量線を予め設定する必要があり、分析操作が煩雑となることは前記した通りである。
そこで、本発明者等は、純粋標準物質としてスクロース(C112211)を使用した。
このスクロースは、JIS G1211−1995の微量炭素分析法の基準試薬として推奨されており、水溶液への調整方法が容易であるという利点がある。水溶液調整方法については、特に制限されないが、JIS G1211−1995に準じることが望ましい。
JIS G1211−1995により、数種類の炭素相当量のスクロース標準水溶液を作製し、これら濃度別のスクロース水溶液100μlを無機質フィルターに捕水後、100℃で2時間大気乾燥させた後、1250℃での1分間の検出量を求め、濃度との関係式を求め、検量線とした。
【0019】
【実施例】
予備実験1:
市販のガラス繊維フィルターには汚染炭素が8〜15ppm程度含まれており、そのバラツキも大きい。したがって、このまま抽出残渣のろ過に使用すると炭素の分析誤差も大きくなる。
当実施例では、炭素を含まない無機質のフィルターとして耐熱・耐薬品性に優れた市販のガラス繊維フィルターを採用した。このガラス繊維フィルターは直径1μm程度の繊維状ガラスが不規則に絡み合ったもので、1枚の大きさは直径25mm,厚さ0.35mm,重量約0.035gであり、公称保留粒子径0.3μmのものである。
【0020】
この市販ガラス繊維フィルターを次の3種の方法で洗浄した。
1.メチルアルコール中に約10分間浸漬した後、約10分間超音波洗浄し、乾燥したもの。
2.硝酸と塩酸の1対1の混合液中で約10分間煮沸処理し、その後メチルアルコールで洗浄した後乾燥したもの。
3.大気中450℃で2時間の加熱処理したもの。
このような汚染炭素除去処理を施した後の、ガラス繊維フィルター中の炭素量を、赤外線吸光法の分析装置で測定した。
その結果を表1に示す。なお、表中の各数字は、各処理を施した後のフィルター中の炭素量を分析した結果を示すものである。
この結果から、市販のガラス繊維フィルターでも、洗浄後最終的に450℃で2時間加熱する炭素除去処理を施せば、汚染炭素を1.5ppm程度まで低減することができ、炭素分析用フィルターとして使用できることがわかる。
【0021】
Figure 0004008833
【0022】
予備実験2:
抽出残渣の調整に使用した溶解液からも、フィルターおよびその上に捕集される抽出残渣は炭素に汚染される。この汚染炭素も除去する必要がある。
そこで、有機電解液として通常用いられている10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メチルアルコールを使用した場合、この電解液はC分子からなる有機溶剤を用いているために、抽出残渣にこのC分子が汚染炭素として付着・吸着されている。したがって、これら汚染炭素の除去手段について検討した。
【0023】
上記有機電解質の炭素イオンの付着・吸着により汚染されたガラス繊維フィルターを、ろ過操作を想定して、通常のメチルアルコールでの吸引洗浄後、80℃の温水で吸引洗浄し、さらにジエチルエーテルとメチルアルコールの混合液(9:1)を用いて吸引洗浄した。その後、最終的に大気中で時間を変えて、250℃で加熱乾燥した。加熱後のガラス繊維フィルター中の炭素量を赤外線吸収法の分析装置で測定した。その結果を表2に示す。
この結果から、抽出残渣を通常のメチルアルコールによる洗浄後、温水洗浄とジエチルエーテル+メチルアルコールの有機溶剤混合液での洗浄を施し、大気中250℃で2〜3時間加熱すると、電解液からの汚染炭素量の影響を7ppm前後の低いレベルで一定値まで低減できることが確認できた。
【0024】
Figure 0004008833
【0025】
予備実験3:
標準物質溶液を用いることにより、精度の良い検量線を作成した。
予備実験1で処理されたガラス繊維フィルターを使用し、このフィルターに各濃度のスクロース(C122211)の標準溶液100μlを捕水した状態での、標準溶液の各濃度での理論値と検出値の関係を調査した。ガラス繊維フィルター1枚に標準溶液100μlを捕水した場合と、ガラス繊維フィルター2枚に標準溶液100μlを捕水した場合について、標準溶液の各濃度での理論値と検出値の関係を調査した。なお、標準溶液の捕水は、溶液100μlをマイクロピペットを用いてガラス繊維フィルターに添加後、100℃×2時間の大気乾燥で行なった。分析は、分析装置の設定温度1250℃で分析時間1分の条件で行なった。そして、各濃度につき3回の分析を行なった。その結果を図1,2に示す。
【0026】
図1の結果からは、ガラス繊維フィルター1枚を使用したものではガラス繊維フィルターによる捕水が不十分であったためか、いずれの濃度でもバラツキが大きく、検量線定数の傾きから感度不足であることがわかる。図2からは、ガラス繊維フィルターによる捕水が十分で、各濃度毎のバラツキも小さく、感度,直線性の優れた検量線が得られることがわかる。
さらに上記2枚のガラス繊維フィルターと各種濃度のスクロース標準溶液を用いた分析を5回繰返し、その精度について確認した。
その結果を表3に示す。
この結果から、4〜50ppm程度の微量域での標準偏差は0.3ppm程度であり、ppmオーダーの定量分析には十分対応可能な精度であることが確認できた。
【0027】
Figure 0004008833
【0028】
実施例:
鋼中析出物中の炭素量が既知の供試材について、本発明分析法の有用性を確認する試験を行なった。
まず、供試材として、TiCとしての炭素量が29ppmおよび19ppmの2種類の鋼を準備した。
供試鋼を、10%アセチルアセトン−1%テトラメチルアンモニウムクロライド−メタノール系電解液中で、−200mVvs.SCEの電位で定電位電解抽出を行なった。
これとは別に、予備実験1で用いたものと同じ市販のガラス繊維フィルターを大気雰囲気下で450℃×2時間の加熱処理を施した。
【0029】
前記電解抽出での残渣を上記処理を施したガラス繊維フィルターでろ過し、抽出残渣をフィルター上で捕集した。捕集した残渣をフィルターごと洗浄用のメチルアルコールで吸引しながら洗浄した。その後フィルターごとフィルター上の残渣を80℃の温水、ジエチルエーテルとメチルアルコールの混合液(9:1)で吸引しながら洗浄を行ない、最終的に大気中で時間を変えて250℃で加熱乾燥し、分析用の抽出残渣を得た。
この抽出残渣を酸素中で燃焼させ、前記予備実験3で作成した検量線を基準にした赤外線吸収法により、炭素を分析・定量した。
その結果を、表4に示す。
この結果からわかるように、いずれの試料ともTiCとしての炭素量が28ppmおよび19ppmと、従来の結果と一致した定量値が得られている。分析再現精度も標準偏差で2ppm以下であり、炭化物の形態別分析に対応できる精度を有する方法であることが確認できた。
【0030】
Figure 0004008833
【0031】
【発明の効果】
以上に説明したように、分析対象鋼の抽出残渣を酸素存在下で加熱することによって分析対象鋼中に含まれる炭化物中炭素を定量分析する際に、抽出残渣に温水による洗浄と有機溶剤による洗浄を付加した後大気中で加熱乾燥し、その後に酸素存在下での燃焼による定量分析に供することにより、さらには、ろ過するフィルターとして、事前加熱処理が施され汚染炭素が除去された無機質フィルターを使用することにより、特別な設備を使用した特別なことを必要とせず、簡単な処理で汚染炭素の影響をなくし、精度良く鋼中析出物中の炭素を定量分析することができた。
抽出残渣を酸素存在下で燃焼させて含有炭素を赤外線吸収法を用いて定量分析する際、検量線の作成にスクロースを用いたことにより、微量域の定量分析を精度良く行なうことができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】 1枚のガラス繊維フィルターを使用したときの炭素定量値の理論値と検出値の関係を示す図
【図2】 2枚のガラス繊維フィルターを使用したときの炭素定量値の理論値と検出値の関係を示す図

Claims (3)

  1. 分析対象鋼の抽出残渣を酸素存在下で加熱することによって前記残渣から生成する一酸化炭素及び二酸化炭素の量を測定することにより、分析対象鋼中に含まれる炭化物中炭素を定量分析する方法であって、前記抽出残渣をメチルアルコールによって洗浄した後、さらに温水による洗浄と有機溶剤による洗浄を施した後大気中で加熱乾燥し、その後に酸素存在下での燃焼による定量分析に供することを特徴とする鋼中析出物中炭素の定量分析方法。
  2. 抽出残渣を抽出する際、事前加熱処理が施され汚染炭素が除去された無機質フィルターを使用する請求項1に記載の鋼中析出物中炭素の定量分析方法。
  3. 炭素を赤外線吸収法を用いて定量分析する際、標準試薬としてスクロース(C122211)を採用し、所定濃度・所定量のスクロース溶液を無機質フィルターに捕水・乾燥させた後、1250℃での1分間の分析値を基準値として検量線を作成し、当該検量線に基づいて炭素を定量する請求項1または2に記載の鋼中析出物中炭素の定量分析方法。
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