JP2019191005A - キレート剤の測定方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を低濃度まで精度よく測定できる測定方法を提供する。【解決手段】測定対象液とCu2+イオンとを混合し、混合液Mを得る工程A1と、混合液Mと、疎水性有機溶媒とを混合し混合液Sとした後、混合液Sを有機層と水層とに分離させる工程A2と、有機層を乾燥及び/又はろ過して得られる固形物D中の銅の量を、ICP−AES、ICP−MS、AA、FL−AASからなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、固形物Dの銅の量からジチオカルバミン酸系キレート剤の濃度を算出する工程A3a及び/又は水層をろ過して得られる固形物P中の銅の量を、ICP−AES、ICP−MS、AA、FL−AASからなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、固形物P中の銅の量からピペラジン系キレート剤の濃度を算出する工程A3bを有する。【選択図】図1

Description

本発明は、測定対象液中のジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を測定する測定方法に関する。
廃棄物の焼却処理により発生する飛灰は、溶融固化処理、セメント固化処理、薬剤処理等の定められた方法により中間処理を施した後に、埋立等の最終処分をすることが義務付けられている。
中間処理方法の大半を占める方法が薬剤処理である。この薬剤処理に使用される薬剤は、一般的に、有機系キレート剤である。有機系キレート剤の中でも、ジチオカルバミン酸系キレート剤とピペラジン系キレート剤の2種類が、使用量の大半を占めている。これらのキレート剤は、飛灰に含まれる重金属と反応し、キレート錯体を生成することで、重金属を不溶化して安定化する。
薬剤処理では、薬剤処理された処理飛灰の溶出液中の重金属濃度を測定し、溶出液中の重金属の濃度が基準値を下回ることを確認した後に、埋立処理等が行われる。薬剤処理時には、重金属が確実に不溶化するために、キレート剤は、飛灰中に含有されると考えらえる重金属に対して過剰となるように添加されることが一般的である。
また、薬剤処理時のキレート剤の適正量を求める方法としては、キレート剤と金属イオンからなる錯体やキレート剤の光学特性を利用した方法が知られている(特許文献1、2)。これらの方法は、キレート剤が高価であるため、飛灰中の重金属をより少ないキレート剤で処理しようとするものであり、また、処理飛灰の溶出液中の重金属濃度を直接測定する方法よりも簡単な方法でキレート剤の適正量を求めようとするものである。
特開平10−337550号公報 特開2004−216209号公報
久保倉宏一、他3名、「キレート処理飛灰溶出液中に残存するジチオカルバミン酸塩の簡易定量法」、2008年、第29回全国都市清掃研究・事例発表会講演論文集、p.285−288
処理飛灰中の未反応キレート剤は、最終処分場において、降雨等により洗い出され、浸出水にキレート剤が含まれた状態で、浸出水処理施設で処理されている。従来、キレート剤のコストを抑えるため、薬剤処理時のキレート剤の使用量を少なくする検討が行われている。また、比色法を利用した飛灰溶出液中に残存するジチオカルバミン酸系キレートの定量法により、処理飛灰の溶出試験時にキレート剤が与える影響が検証されている(非特許文献1)。
しかしながら、未反応のキレート剤は時間の経過とともに分解されるため、未反応のキレート剤自身の影響については、ほとんど考慮されていないのが現状である。例えば、浸出水中に排出される未反応のキレート剤の影響はほとんど検証されていない。
一方、近年、過剰なキレート剤による影響が指摘され始めている。本発明者らは、浸出水中の未反応キレート剤濃度が1mg/Lを超えると浸出水処理設備では生物硝化による窒素処理に影響が出始め、その濃度が10mg/Lであればジチオカルバミン酸系キレート剤では70%、ピペラジン系では40%硝化効率が低下するという知見を得た。そのため、ジチオカルバミン酸系キレート剤及びピペラジン系キレート剤の硝化阻害に対する影響を把握するためには、これらのキレート剤の硝化阻害が起きる濃度付近の定量精度の確保が必要である。
しかしながら、従来の方法では、ジチオカルバミン酸系キレート剤とピペラジン系キレート剤とを分離して分析できず、また、キレート剤による生物硝化阻害の影響濃度である1mg/L付近の定量精度を満足するものではなかった。
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明の目的は、測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を低濃度まで精度よく測定できる測定方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> 測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を測定する方法であって、下記工程(A1)〜工程(A3)を有する測定方法。
工程(A1):
測定対象液とCu2+イオンとを混合し、混合液(M)を得る工程
工程(A2):
前記混合液(M)と疎水性有機溶媒とを混合し混合液(S)とした後、前記混合液(S)を有機層と水層とに分離させる工程
工程(A3):
前記有機層を乾燥及び/又はろ過して得られる固形物(D)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置からなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、前記固形物(D)の銅の量からジチオカルバミン酸系キレート剤の濃度を算出する工程(3a)
及び/又は
前記水層をろ過して得られる固形物(P)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置からなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、前記固形物(P)中の銅の量からピペラジン系キレート剤の濃度を算出する工程(3b)
<2> 定量下限値が3mg/L以下である<1>に記載の測定方法。
<3> 前記測定対象液中のジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度が、10mg/L以下である<1>又は<2>に記載の測定方法。
<4> 前記Cu2+イオンは、硫酸銅水溶液又は硝酸銅水溶液中のCu2+イオンである<1>から<3>のいずれかに記載の測定方法。
<5> 前記疎水性有機溶媒は、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム及び四塩化炭素からなる群から選択されるいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の測定方法。
<6> 前記測定対象液は、浸出水である<1>から<5>のいずれかに記載の測定方法。
<7> 測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及びピペラジン系キレート剤の濃度を測定する方法であって、下記工程(B1)〜工程(B3)を有する測定方法。
工程(B1):測定対象液とCu2+イオンとを混合し、混合液(M)を得る工程
工程(B2):前記混合液(M)をろ過して固形物(DP)を得る工程
工程(B3):前記固形物(DP)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置を用いて測定し、前記固形物(DP)中の銅の量からジチオカルバミン酸系キレート剤及びピペラジン系キレート剤の濃度を算出する工程
本発明によれば、測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を低濃度まで精度よく測定できる測定方法が提供される。
また、ジチオカルバミン酸系キレート剤とピペラジン系キレート剤のそれぞれの濃度について測定することもできる。
DTC系キレート剤及びPIP系キレート剤を含む測定対象液(1)を用いた場合の本発明の測定方法(A−I)の測定フローの例である。 DTC系キレート剤を含み、PIP系キレート剤を含まない測定対象液(2)を用いた場合の本発明の測定方法(A−II)の測定フローの例である。 PIP系キレート剤を含み、DTC系キレート剤を含まない測定対象液(3)を用いた場合の本発明の測定方法(A−III)の測定フローの例である。 実施例1の測定フローである。 実施例1にて作成した検量線の図である。 実施例1の測定結果である。 実施例2にて作成した検量線の図である。 実施例3の測定フローである。 実施例4の測定フローである。 実施例4にて作成した検量線の図である。 実施例4の測定結果である。 実施例5にて作成した検量線の図である。
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。
本発明は、測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を測定する方法であって、下記工程(A1)〜工程(A3)を有する測定方法(以下、「本発明の測定方法(A)」と記載する場合がある。)に関する。
工程(A1):
測定対象液とCu2+イオンとを混合し、混合液(M)を得る工程
工程(A2):
前記混合液(M)と疎水性有機溶媒とを混合し混合液(S)とした後、前記混合液(S)を有機層と水層とに分離させる工程
工程(A3):
前記有機層を乾燥及び/又はろ過して得られる固形物(D)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置からなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、前記固形物(D)の銅の量からジチオカルバミン酸系キレート剤の濃度を算出する工程(3a)
及び/又は
前記水層をろ過して得られる固形物(P)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置からなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、前記固形物(P)中の銅の量からピペラジン系キレート剤の濃度を算出する工程(3b)
本発明の測定方法(A)は、測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を求めるために、それぞれのキレート剤とCu2+イオンとの反応により生成される錯体を利用するものである。測定対象液中にジチオカルバミン酸系キレート剤が含まれれば、ジチオカルバミン酸系キレート剤とCu2+イオンとの反応によりCu−DTC系キレート錯体が生成される。また、測定対象液中にピペラジン系キレート剤が含まれれば、ピペラジン系キレート剤とCu2+イオンとの反応によりCu−PIP系キレート錯体が生成される。
さらに、飛灰中に含まれる2価の金属イオンの中でも、Pb2+イオン等に比べてイオン化傾向の小さいCu2+イオンを用いることで、錯体が形成されやすく、安定した錯体を得ることができる。
Cu−DTC系キレート錯体は、疎水性有機溶媒に溶解又は分散しやすく、Cu−PIP系キレート錯体は、疎水性有機溶媒への溶解度が低い。このように各錯体の溶解性が異なるため、疎水性有機溶媒で抽出、有機層と水層とに分離することで、それぞれの錯体を分離することができる。すなわち、混合液(M)中にCu−DTC系キレート錯体が含まれれば、工程(2)において、前記Cu−DTC系キレート錯体は有機層に移行する。また、混合液(M)中にCu−PIP系キレート剤が含まれれば、工程(2)において、前記Cu−PIP系キレート錯体は有機層には移行せずにそのまま水層に分散状態で存在する。また、未反応のCu2+イオンは、水層に溶解した状態である。
さらに、錯体の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)、原子吸光分析装置(AA)及びフレームレス原子吸光分析装置(FL−AAS)からなる群から選択されるいずれかの方法により定量することにより、ジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を低濃度まで精度よく算出することができる。
なお、「ジチオカルバミン酸系キレート剤(以下、「DTC系キレート剤」と記載する場合がある。)」とは、ジチオカルバミン酸構造を有するキレート剤であり、二価の金属イオンと反応してキレート錯体を形成するものである。例えば、下記式(1)で表される構造を有するキレート剤である。
(式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立に、アルキル基を表し、Mはアルカリ金属を表す。)
式(1)中のR1、R2において、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基等の炭素数1〜5の直鎖、分岐又は環状アルキル基等が挙げられる。また、式(1)中のMにおいて、アルカリ金属としては、ナトリウムやカリウム等が挙げられる。
具体的には、ジチオカルバミン酸系キレート剤としては、カリウム−ジエチルアミン−N−カルボジチオアートやナトリウム−ジエチルアミン−N−カルボジチオアート等が挙げられる。
また、「ピペラジン系キレート剤(以下、「PIP系キレート剤」と記載する場合がある。)」とは、ジチオカルバミン酸構造とピペラジン構造とを有するキレート剤であり、二価の金属イオンと反応してキレート錯体を形成するものである。例えば、下記式(2)で表される構造を有するキレート剤である。
(式(2)中、Mはアルカリ金属を表す。)
式(2)中のMにおいて、アルカリ金属としては、ナトリウムやカリウム等が挙げられる。具体的には、ピペラジン系キレート剤としては、ジカリウム−ピペラジン−1,4−ジカルボジチオアートやジナトリウム−ピペラジン−1,4−ジカルボジチオアート等が挙げられる。
測定対象液は、特に限定されないが、好適な測定対象の一つは浸出水である。また、測定対象液は、通常は、水を主成分とする水溶液である。浸出水のように、キレート剤の種類やその含有量を測定しようとする液体(水溶液)に本発明の測定方法を適用することができる。また、例えば、硝化阻害が問題となっている土壌に含まれる成分を溶出させた水溶液を測定対象液にし、各キレート剤の量を調べることで硝化阻害の原因を検証することができる
上述のように、従来の方法では、定量することが困難であった、ジチオカルバミン酸系キレート剤又はピペラジン系キレート剤の濃度が低濃度の測定対象液においても、本発明の測定方法(A)を適用することで、精度よく定量できる。
本発明の測定方法(A)では、測定対象液中のジチオカルバミン酸系キレート剤又はピペラジン系キレート剤の濃度が10mg/Lや5mg/L以下であっても、本発明の測定方法(A)を用いることで精度よく定量することができる。さらには、測定対象液中のジチオカルバミン酸系キレート剤又はピペラジン系キレート剤の濃度が3mg/Lや1mg/L以下であっても、本発明の測定方法(A)を用いることで精度よく定量することができる。
以下、図1〜図3を参照して、本発明の測定方法(A)の工程(A1)〜工程(A3)について説明する。
図1は、測定対象液として、DTC系キレート剤及びPIP系キレート剤を含む測定対象液(1)を用いた場合の本発明の測定方法(A−I)の測定フローの例である。測定対象液(1)として代表的なものは、浸出水である。
工程(A1)では、測定対象液(1)とCu2+イオン水溶液とを混合することにより、Cu−DTC系キレート錯体及びCu−PIP系キレート錯体を含む混合液(M1)が得られる。
測定対象物質の量は、通常、キレート剤量として100μg〜1,000μgである。測定対象物質の量は多すぎても、少なすぎても、工程(A2)での疎水性有機溶媒による抽出操作が行いにくくなり、Cu−DTC系キレート剤の有機層への回収が不十分になる場合がある。そのため、測定対象液の量としては、10mL以上が好ましく、50mL以上がより好ましく、100mL以上がさらに好ましい。また、測定対象液の量は、1L以下が好ましく、500mL以下がより好ましく、200mL以下がさらに好ましい。
なお、混合液(M1)の調製方法は特に限定されない。例えば、測定対象液に、Cu2+イオン水溶液を加えて撹拌することで、混合液(M1)が得られる。また、測定対象液に直接、硫酸銅などの銅塩を溶解させて、Cu2+イオンを発生させてもよい。調製や取り扱いのしやすさからは、Cu2+イオン水溶液として供給されることが好ましい。すなわち、測定対象液とCu2+イオン水溶液とを混合することが好ましい。また、測定対象液にCu2+イオン水溶液を加えても、Cu2+イオン水溶液に測定対象液を加えてもよい。
Cu2+イオン水溶液は、硫酸銅水溶液又は硝酸銅水溶液が好ましく、硫酸銅水溶液がより好ましい。また、不純物によってキレート剤との反応が阻害されないように、Cu2+イオンの純度が高いものが用いられる。このような水溶液としては、原子吸光分析、ICP発光分析、比色分析等による銅定量用標準品としての規格を満たすものが用いられる。
Cu2+イオンは、得られる混合液(M1)中に未反応のキレート剤が残らないように供給される。通常、浸出水のような測定対象液に含まれるキレート剤の含有量は、多くの場合、1〜20ppm程度以下であるので、未反応のキレート剤が残らないようにするためには、Cu2+の含有量が0.02〜0.15w/v%であるCu2+イオン水溶液を用いることが好ましい。より好ましくは、Cu2+の含有量が0.04〜0.1w/v%のCu2+イオン水溶液である。
Cu2+イオン水溶液の使用量は、Cu2+の含有量に応じて適宜決定されるが、Cu2+イオン水溶液の使用量が少なすぎると、キレート剤が未反応で残存しやすくなる。そのため、測定対象液に対するCu2+イオン水溶液の量(Cu2+イオン水溶液の容量(L)/測定対象液の容量(L))は、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。Cu2+イオン水溶液の使用量が多すぎると、測定対象液との混合等の操作が行いにくくなる。そのため、測定対象液に対するCu2+イオン水溶液の量は、0.5以下が好ましく、0.2以下がより好ましい。
工程(A2)では、得られた混合液(M1)に疎水性有機溶媒を加えて、混合液(S1)を調整した後、撹拌し、静置する。これにより、混合液(S1)が、Cu−DTC系キレート錯体を含む有機層(O1)と、Cu−PIP系キレート錯体を含む水層(W1)とに分離される。
疎水性有機溶媒としては、水と相溶せず、Cu−DTC系キレート錯体を溶解や分散することができるものであればよく、トルエン、キシレン、ベンゼン等の芳香族炭化水素類、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類、酢酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン類等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合で用いてもよい。中でも、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム及び四塩化炭素からなる群から選択されるいずれかであることが好ましく、トルエン、酢酸ブチル及びメチルイソブチルケトンからなる群から選択されるいずれかであることがより好ましく、トルエンであることがさらに好ましい。
混合液(M1)と疎水性有機溶媒との混合比は、混合液(S1)を有機層(O1)と水層(W1)とに分離させることができる範囲であれば特に限定されない。混合液(M1)の容量に対する疎水性有機溶媒の容量((疎水性有機溶媒の容量(L))/(混合液(M1)の容量(L)))は、通常、0.02〜1である。工程(A1)において生成されるCu−DTC系キレート錯体は少量であるので、混合液(M1)よりも少ない量の疎水性有機溶媒を用いても、Cu−DTC系キレート錯体を抽出でき、疎水性有機溶媒の量が多すぎると、混合するために激しく撹拌等する必要がありエマルションが発生しやすくなる。そのため、混合液(M1)の容量に対する疎水性有機溶媒の容量は、0.05以上が好ましく、0.1以上がより好ましい。また、混合液(M1)の容量に対する疎水性有機溶媒の容量は、0.5以下が好ましく、0.2以下がより好ましい。
また、疎水性有機溶媒の量が少なすぎると、Cu−DTC系キレート錯体を1回の抽出操作で抽出することが困難な場合がある。Cu−DTC系キレート錯体の有機層への回収率をさらに向上させるために、抽出操作を2回以上繰り返してもよい。すなわち、工程(A2)の後に、工程(A2)で得られた水層に疎水性有機溶媒を混合し、再度、有機層と水層に分離してもよい。生成したCu−DTC系キレート錯体の量が多い場合でも、工程(A2)を2回以上繰り返すことで、Cu−DTC系キレート錯体の有機層への回収率が向上し、より正確に各錯体の濃度を測定できる。
また、混合液(M1)と疎水性有機溶媒との混合は、エマルジョンが発生しない程度で撹拌することが好ましい。混合を激しく行うと、エマルジョンが発生しやすくなり、測定の精度が下がる傾向にある。エマルジョンの発生を抑制するために、例えば、振とう機を用いて、撹拌速度20〜200rpmや20〜100rpm、20〜50rpmの緩速で撹拌すればよい。また、撹拌時間は1〜10分や1〜5分程度である。
得られた有機層(O1)は、水(精製水、蒸留水、純水等)で洗浄することが好ましい。有機層を水で洗浄することにより、工程(A3a)で得られる固形物(D1)中に含まれる不純物を減らすことができる。
工程(A3)では、工程(A2)で分離した有機層(O1)に含まれるCu−DTC系キレート錯体の濃度の算出(工程(A3a))及び/又は工程(A2)で分離した水層(W1)に含まれるCu−PIP系キレート錯体の濃度の算出(工程(A3b))を行う。
工程(A3a)では、まず、有機層(O1)を乾燥させ固形物(D1)を得る。固形物(D1)には、Cu−DTC系キレート錯体が含まれる。固形物(D1)を得るための乾燥方法としては、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥、N2ガス吹き付けによる乾燥等が挙げられる。加熱乾燥させる場合、その温度は、150℃〜250℃や180℃〜220℃とすることができる。乾燥時間は、1〜4時間や、1〜2時間、2〜4時間とすることができる。
また、有機層(O1)をろ過して、ろ物として固形物(D1)を回収してもよい。フィルターの溶解等による不純物の混入を抑制するためには、有機層(O1)を乾燥させて固形物(D1)を得ることが好ましい。
次いで、固形物(D1)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)、誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP−MS)、原子吸光分析装置(AA)及びフレームレス原子吸光分析装置(FL−AAS)からなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定する。なお、図1の測定フローでは、ICP−AESを用いて銅の量を測定しているが、ICP−MS、AA又はFL−AASを用いることもできる。
通常は、得られた固形物(D1)を酸で分解し、測定用溶液を調整した後、この測定用溶液を測定することで、固形物(D1)に含まれる銅の量を測定することができる。測定用溶液の調製法としては、従来公知の方法を使用できる。
測定用溶液を調製するための酸としては、硝酸、塩酸、過塩素酸等を用いることができる。使用する酸の濃度や量は、適宜決定できる。
また、酸での分解では、通常、加熱が行われる。加熱温度は、150〜200℃程度である。また、加熱時間は、1〜4時間程度である。加熱方法としては、サンドバスやホットプレート等を用いることができる。
また、加圧を行ってもよい。加圧や加熱ができる装置としては、マイクロウェーブ等を用いることができる。
測定された銅の量は、Cu−DTC系キレート錯体中の銅の量に対応するため、測定された銅の量からの測定対象液におけるDTC系キレート剤の濃度を算出することができる。キレート剤の濃度の算出は、予め準備された検量線を用いて行うことができる。検量線の作成方法については、実施例にて後述する。
工程(A3b)では、先ず、工程(A2)で得られた水層(W1)をろ過して固形物(P1)を得る。固形物(P1)には、Cu−PIP系キレート錯体が含まれる。工程(A2)で得られた水層(W1)には、Cu−PIP系キレート錯体と、キレート剤と未反応のCu2+イオンが含まれ、Cu−PIP系キレート錯体は分散して存在する。ろ過後は、ろ液には未反応のCu2+イオンが含まれ、Cu−PIP系キレート錯体はろ物(固形物(P1))に含まれる。そのため、固形物(P1)中に含まれる銅の量からCu−PIP系キレート錯体の量を求めることができる。
固形物(P1)を得るためのろ過は、常圧で行う自然ろ過であっても、減圧ろ過であっても、加圧ろ過であっても、遠心ろ過であってもよい。
メンブレンフィルターを用いてろ過を行う場合、メンブレンフィルターの孔径は、0.2〜1μm程度である。好ましくは、0.3〜0.65μmのメンブレンフィルターを用いることができる。孔径が大きすぎると、キレート錯体がフィルターを通過してしまうため、測定精度が低下する。孔径が小さすぎると、ろ過に時間を要したり、完全に水をろ過することが困難な場合がある。
固形物(P1)は、さらに、水(精製水、蒸留水、純水等)で洗浄されることが好ましい。これにより、未反応のCu2+イオンが残存しにくくなる。
ろ過により得られた固形物(P1)は、乾燥を行ってもよい。乾燥方法としては、風乾、加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。
次いで、固形物(P1)中の銅の量を、ICP−AES、ICP−MS、AA、FL−AASからなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定する。なお、図1の測定フローでは、ICP−AESを用いて銅の量を測定しているが、ICP−MS、AA又はFL−AASを用いることもできる。
測定は、工程(A3a)と同様に、固形物(P1)を酸で分解後、測定用溶液を調整して、固形物(P1)中の銅の量を測定できる。この銅の量は、Cu−PIP系キレート錯体中の銅の量に対応するため、予め準備された検量線を用いて、測定対象液におけるPIP系キレート剤の濃度を算出できる。
また、通常、得られる固形物(P1)は少量であるため、固形物(P1)に含まれる銅の量をより正確に定量するためには、固形物(P1)とろ紙とを分離させず、固形物(P1)が付着したろ紙を酸加熱分解し、測定用溶液を調整することが好ましい。固形物(P1)とろ紙とを分離させることで、固形物(P1)を損失し、測定精度が低下する可能性がある。
このように、工程(3a)と工程(3b)で、有機層と水層のそれぞれを分析することで、DTC系キレート剤及びPIP系キレート剤のそれぞれの錯体の濃度が算出できる。
また、測定対象液は、DTC系キレート剤及びPIP系キレート剤を含む測定対象液(1)に限定されない。測定対象液が、DTC系キレート剤やPIP系キレート剤を含まない場合もありうる。測定対象液が、PIP系キレート剤が含まれなければ、Cu−PIP系キレート錯体は生成しない。また、測定対象液が、DTC系キレート剤を含まなければ、Cu−DTC系キレート錯体は生成しない。そのため、工程(A3a)を行い、銅が検出されなければ、測定対象液にDTC系キレート剤が含まれていないと判定できる。また、工程(A3b)を行い、銅が検出されなければ、測定対象液にPIP系キレート剤が含まれていないと判定できる。
測定対象液がPIP系キレート剤を含まないことが予め分かっている場合やDTC系キレート剤の濃度のみ測定すれば良い場合は、工程(A3a)(有機層についての測定)を行えば、工程(A3b)(水層についての測定)は行わなくてもよい。また、測定対象液がDTC系キレート剤を含まないことが予め分かっている場合やPIP系キレート剤の濃度のみ測定すれば良い場合は、工程(A3b)(水層についての測定)を行えば、工程(A3a)(有機層についての測定)は行わなくてもよい。
例えば、図2は、測定対象液として、DTC系キレート剤を含み、PIP系キレート剤を含まない測定対象液(2)を用いる場合の例である。図2に示す本発明の測定方法(A−II)の測定フローは、工程(A3b)を行わない以外は、図1の測定フローと同様である。
なお、図2の工程(A2)で得られる水層(W2)には、Cu−PIP系キレート錯体は含まれていない。そのため、工程(A2)で得られる水層(W2)をろ過しても固形物は得られない、又は、得られる固形物を測定しても実質的に銅は観察されない。
図3は、測定対象液として、PIP系キレート剤を含み、DTC系キレート剤を含まない測定対象液(3)を用いる場合の例である。図3に示す本発明の測定方法(A−III)の測定フローは、工程(A3a)を行わない以外は、図1の測定フローと同様である。
なお、図3の工程(A2)で得られる有機層(O3)には、Cu−DTC系キレート錯体は含まれていない。そのため、工程(A2)で得られる有機層(O3)を乾燥又はろ過しても固形物は得られない、又は、得られる固形物を測定しても実質的にCuは観察されない。
また、本発明は、測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及びピペラジン系キレート剤の濃度を測定する方法であって、下記工程(B1)〜工程(B3)を有する測定方法(以下、「本発明の測定方法(B)」と記載する場合がある。)に関する。
工程(B1):測定対象液と銅イオンとを混合し、混合液(M)を得る工程
工程(B2):前記混合液(M)をろ過して固形物(DP)を得る工程
工程(B3):前記固形物中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置からなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、前記固形物(DP)中の銅の量からジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を算出する工程
本発明の測定方法(B)は、測定対象液と銅イオンとを混合して得られた混合液(M)を、疎水性有機溶媒を用いて有機層と水層とに分離することなしに、混合液(M)をそのままろ過し、得られた固形物(DP)中に含まれるキレート剤の濃度を算出するものである。本発明の測定方法(B)では、DTC系キレート剤及びPIP系キレート剤の総量を測定することができる。
本発明の測定方法(B)は、本発明の測定方法(A)と同様に、キレート剤の定量のために、キレート剤とCu2+との反応により生じる錯体中の銅の量を利用するものである。このような方法とすることで、キレート剤の濃度が低濃度であっても精度よく定量することができる。
測定対象液は、本発明の測定方法(A)の測定対象液と同じである。また、工程(B1)は、本発明の測定方法(A)に対応し、工程(A1)と同様の方法で行うことができ、好ましい態様も同様である。工程(B2)及び工程(B3)は、疎水性有機溶媒と混合後に分離された水層ではなく、測定対象液と銅イオンとを混合して得られた混合液(M)をそのまま用いること以外は、工程(A3)と同様であり、好ましい態様も同様である。
上述のように従来のキレート剤の定量方法では、定量下限が10mg/L程度であった。一方、本発明の測定方法(本発明の測定方法(A)及び本発明の測定方法(B))は、定量下限としてより低い値を達成できる。本発明の測定方法は、測定対象液を10mL〜1L(特に、50〜200mL)用いた場合であっても、定量下限値が3mg/L以下や1mg/L以下を達成することができる。
また、本発明の測定方法は、測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度が、3mg/L以下であるか否かを判定する方法とすることもできる。特に、本発明の測定方法を、測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度が、1mg/L以下であるか否かを判定する方法として用いることで、例えば、硝化阻害等の原因を検証できる。
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
本発明の測定方法(A)を用いて、実施例1〜実施例3を行った。
<実施例1>
(1−1)検量線の作成
ジチオカルバミン酸系キレート剤の濃度(DTC濃度)が、0.5mg/L、1mg/L、2mg/L、3mg/Lとなるように、純水100mLに、ジチオカルバミン酸系キレート剤(栗田工業(株)社製、製品番号S814)をそれぞれ50μg、100μg、200μg、300μg添加した検量線作成用の溶液を調整した。
各検量線作成用の溶液(試料)について、図4に示す測定フローに従い、Cu−DTC系キレート錯体に由来する銅を定量した。
先ず、各検量線作成用の溶液を分液ロートにとり、次に0.04w/v%硫酸銅溶液(富士フィルム和光純薬工業(株)社製、製品番号7758−99−8)10mLを加えた。1分間振とうした後、5分間静置し、Cu-DTC系キレート錯体を形成させた。
次いで、前記分液ロートに、トルエン(富士フィルム和光純薬工業(株)社製、製品番号108−88−3、特級)10mLを加え、撹拌速度100rpmで撹拌し、Cu−DTC系キレート錯体をトルエン層に抽出した。さらに、トルエンでの抽出を2回繰り返した。抽出したトルエン層を合わせて、トルエン層を純水10mLで3回洗浄し、Cu-DTC系キレート錯体を含有するトルエン層を得た。
得られたトルエン層をホットプレート(150℃)上で加熱し、トルエンを蒸発乾固した。この乾固したものに硝酸5mL、過塩素酸2mLを加え、残存する有機物を分解した。加熱分解後の内容物を、少量の純水で内容物を10mLメスフラスコに移し入れ、純水にて10mLとした。この溶液を測定用溶液とした。ICP−AES(SHIMAZU社製、ICPS2000)を用いて、224.70nmの測定波長で、前記測定用溶液に含まれる銅を定量した。得られた結果から、銅濃度(Cu濃度)とDTC系キレート剤の量との関係式を作成した。
図5は、各検量線作成用の溶液のDTC系キレート剤の量(DTC量[mg])に対する測定により得られた銅の量(Cu[mg/L])をプロットしたものである。直線性R2は、0.9938であった。なお、繰り返し試験を実施した直線性R2は、0.9627〜0.9938といずれも良好な結果を示した。
(1−2)ジチオカルバミン酸系キレート剤の濃度の算出
ジチオカルバミン酸系キレート剤100μgと純水100mLを混合して、試料1−2〜1−6を調製した。試料1−2〜1−6を、図4に示す測定フローに従い測定を行った。測定は、いずれも2回ずつ測定を行った。
また、純水100mLをブランク(試料1−1)として同様に測定を行った。
結果を図6に示す。前記(1−1)で作成した検量線より求めたDTC系キレート剤の量(DTC量)は、75〜92μgであった。
また、図6に示すように、この方法により求められた標準偏差(σ)は6.8μgであった。試料を100mL採取した場合、定量下限値(10σ)は68μgなり、目標定量下限値1mg/Lを満足するものであった。
<実施例2>
検量線作成用の溶液の濃度を、0.1mg/L、0.2mg/L、0.3mg/L、0.5mg/L、1mg/Lとし、ICP−AESに代えて原子吸光装置((株)日立ハイテクノロジーズ社製、ZA3000)を用いて、324.8nmの測定波長で測定した以外は、実施例1と同様にして、検量線を作成した。作成した検量線を図7に示す。
さらに、ICP−AESに代えて原子吸光装置を用いて324.8nmの測定波長で測定した以外は、実施例1と同様にして、1mg/Lのジチオカルバミン酸系キレート剤を定量したところ、同様に目標定量下限値1mg/Lを満足するものであった。
<実施例3>
図8の測定フローに従い、ジチオカルバミン酸系キレート剤(栗田工業(株)社製、製品番号S814)とピペラジン系キレート剤(栗田工業(株)社製、製品番号S803)のそれぞれの検量線を作成した。
また、ピペラジン系キレート剤100μgと、ジチオカルバミン酸系キレート剤100μgと、純水100mLを混合して試料3−1を調製し、図8の測定フローに従い、ジチオカルバミン酸系キレート剤とピペラジン系キレート剤を定量したところ、それぞれのキレート剤において目標定量下限値1mg/Lを満足するものであった。
本発明の測定方法(B)を用いて、実施例4、実施例5を行った。
<実施例4>
(4−1)検量線の作成
ピペラジン系キレート剤の濃度(PIP濃度)が、0.5mg/L、1mg/L、1.5mg/L、2mg/L、3mg/Lとなるように、純水100mLに、ピペラジン系キレート剤(栗田工業(株)社製、製品番号S803)をそれぞれ50μg、100μg、150μg、200μg、300μgを添加した検量線作成用の溶液を調整した。
各検量線作成用の溶液(試料)について、図9に示す測定フローに従い、Cu−PIP系キレート錯体に由来する銅の量を定量した。
先ず、各検量線作成用の溶液を共栓付きガラス瓶にとり、次に0.04w/v%硫酸銅溶液10mLを加えた。1分間振とうした後、5分間静置して、Cu−PIP系キレート錯体を形成させた。
この溶液全量をろ紙(0.45μmメンブレンフィルター)でろ過し、ろ紙上の残渣物を少量の純水で3回洗浄した。
洗浄したろ紙をガラス製ビーカーに取り、硝酸1mL及び塩酸2mLを加え、ホットプレート上で加熱分解した。分解後、ビーカー内を少量の純水で内容物を25mLメスフラスコに移し入れ、純水にて25mlとした。これを測定用溶液とした。ICP−AESを用いて、224.70nmの測定波長で、調整した測定用溶液に含まれる銅の量を定量し、銅濃度(Cu濃度)とPIP系キレート剤の量との関係式を作成した。
図10は、各検量線作成用の溶液のPIP系キレート剤の量(PIP量[mg])に対する測定により得られた銅の濃度(Cu濃度[mg/L])をプロットしたものである。直線性R2は、0.9874であった。なお、繰り返し試験を実施した直線性R2は、0.9672〜0.9874といずれも良好な結果を示した。
(4−2)ピペラジン系キレート剤の濃度の算出
ピペラジン系キレート剤100μgと純水100mLを混合して試料4−2〜4−6を調製した。試料4−2〜4−6を、図9に示す測定フローに従い測定を行った。測定は、いずれも2回ずつ測定を行った。
また、純水100mLをブランク(試料4−1)として同様に測定を行った。
結果を図11に示す。前記(4−1)で作成した検量線より求めたPIP系キレート剤の量(PIP量)は、110〜130μgであった。
また、図11に示すように、この方法により求められた標準偏差(σ)は6.6μgであった。試料を100mL採取した場合、定量下限値(10σ)は66μgとなり、目標定量下限値1mg/Lを満足するものであった。
<実施例5>
検量線作成用の溶液の濃度を、0.1mg/L、0.2mg/L、0.3mg/L、0.5mg/L、1mg/Lとし、ICP−AESに代えて原子吸光装置を用いて324.8nmの測定波長で測定した以外は、実施例4と同様にして、検量線を作成した。作成した検量線を図12に示す。
さらに、ICP−AESに代えて原子吸光装置を用いて324.8nmの測定波長で測定した以外は、実施例4と同様にして、1mg/Lのピペラジン系キレート剤を定量したところ、同様に目標定量下限値1mg/Lを満足するものであった。
本発明によれば、測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度について、これまで定量が困難であった低濃度まで精度よく測定できる。

Claims (7)

  1. 測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度を測定する方法であって、下記工程(A1)〜工程(A3)を有する測定方法。
    工程(A1):
    測定対象液とCu2+イオンとを混合し、混合液(M)を得る工程
    工程(A2):
    前記混合液(M)と疎水性有機溶媒とを混合し混合液(S)とした後、前記混合液(S)を有機層と水層とに分離させる工程
    工程(A3):
    前記有機層を乾燥及び/又はろ過して得られる固形物(D)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置からなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、前記固形物(D)の銅の量からジチオカルバミン酸系キレート剤の濃度を算出する工程(3a)
    及び/又は
    前記水層をろ過して得られる固形物(P)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置からなる群から選択されるいずれかの装置を用いて測定し、前記固形物(P)中の銅の量からピペラジン系キレート剤の濃度を算出する工程(3b)
  2. 定量下限値が3mg/L以下である請求項1に記載の測定方法。
  3. 前記測定対象液中のジチオカルバミン酸系キレート剤及び/又はピペラジン系キレート剤の濃度が、10mg/L以下である請求項1又は2に記載の測定方法。
  4. 前記Cu2+イオンは、硫酸銅水溶液又は硝酸銅水溶液中のCu2+イオンである請求項1から3のいずれかに記載の測定方法。
  5. 前記疎水性有機溶媒は、トルエン、キシレン、ベンゼン、ヘキサン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、ジクロロメタン、クロロホルム及び四塩化炭素からなる群から選択されるいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の測定方法。
  6. 前記測定対象液は、浸出水である請求項1から5のいずれかに記載の測定方法。
  7. 測定対象液に含まれるジチオカルバミン酸系キレート剤及びピペラジン系キレート剤の濃度を測定する方法であって、下記工程(B1)〜工程(B3)を有する測定方法。
    工程(B1):測定対象液とCu2+イオンとを混合し、混合液(M)を得る工程
    工程(B2):前記混合液(M)をろ過して固形物(DP)を得る工程
    工程(B3):前記固形物(DP)中の銅の量を、誘導結合プラズマ発光分析装置、誘導結合プラズマ質量分析装置、原子吸光分析装置及びフレームレス原子吸光分析装置を用いて測定し、前記固形物(DP)中の銅の量からジチオカルバミン酸系キレート剤及びピペラジン系キレート剤の濃度を算出する工程
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