JP2007045679A - 低重金属の高純度苛性カリおよびその製造方法。 - Google Patents
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Abstract
本発明の課題は、鉄含有量50ppb以下でクロム含有量20ppb以下の高純度苛性カリを得ることができる製造方法を提供することである。
【解決手段】
苛性カリ水溶液を高温状態で濃縮して苛性カリの一水塩結晶を含むスラリーを析出させ、当該スラリーから結晶分と母液とを分離し、この結晶分を水または苛性カリ水溶液でリンスすることを特徴とする鉄含有量50ppb以下でクロム含有量20ppb以下の高純度苛性カリを提供できることを見出した。
【選択図】 なし
Description
このような苛性カリの高純度化要求に対して、電解室を工夫したものや晶出による水酸化カリウムの精製方法が開示されている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。また、電気分解をおこなう前の塩化カリウムの精製を行い高純度の苛性カリを得る方法も開示されている(例えば、特許文献3)。しかし、電気分解で苛性カリを得る方法では、低ナトリウムの塩化カリウムを原料とすることにより低ナトリウム苛性カリが得られるが、低ナトリウムの塩化カリウムを大量に得る必要がある。このことから、電気分解で苛性カリを得る方法は、晶析での精製に比べコスト的に不利である。また、冷却による晶析では、母液の濃縮と冷却を考慮すると、高温状態での晶析に比べコスト的に不利である。
また、溶解度差等を利用した精製方法として、晶析器を直列に配置し多段で晶析操作を繰り返すことにより、塩化アルミニウムの純度を高める方法が開示されている(例えば、特許文献4)。この場合の精製コストは、精製方法の特性によるもの他、精製物の収率によっても大きく異なる。
鉄分やニッケル等の金属分はシリコンウエーハをエッチングするとき、シリコンウエーハ表面に残存し電気特性を変化させることが知られている。このことから、これらの含有量が低いものが望まれている。このことから、活性炭をプレコートした濾過装置によりニッケルの0.05ppm以下にするものが開示されている(例えば、特許文献5)。また、硝酸に浸漬処理して賦活した活性炭に苛性ソーダを接触させて、鉄分を200ppb以下に、ニッケル分を20ppb以下にするものが開示されている(例えば、特許文献6)。
即ち、本発明は、
(1)共存する不純物が苛性カリ48%を基準として、鉄含有量50ppb以下でクロム含有量20ppb以下の高純度苛性カリ、
(2)ナトリウムが10mg/kg以下で塩素が塩化カリウム換算で1mg/kg以下である(1)の高純度苛性カリ、
(3)苛性カリ水溶液を高温状態で濃縮して苛性カリの一水塩結晶を析出させ、当該一水塩結晶を含むスラリーから結晶分と母液とを分離し、この結晶分を水または苛性カリ水溶液でリンスすることを特徴とする(1)または(2)にそれぞれ記載の高純度苛性カリの製造方法、
(4)高温状態が70℃超であり150℃以下であることを特徴とする(3)に記載の高純度苛性カリの製造方法、
(5)晶析器内の母液中の苛性カリ濃度が57〜70%であることを特徴とする(3)または(4)にそれぞれ記載の高純度苛性カリの製造方法、
(6)結晶分の1/3〜1/200倍の液量でリンスすることを特徴とする(3)〜(5)にそれぞれ記載の高純度苛性カリの製造方法、
(7)母液および/またはリンス洗液の苛性カリ濃度を49〜65%に調整して、再度利用することを特徴とする(3)〜(6)にそれぞれ記載の高純度苛性カリの製造方法、
である。
図1は、本発明における高純度苛性カリの製造方法の工程を示した模式図である。攪拌機付き晶析器4に苛性カリ水溶液(原料2)を導入するにあたり、市販で入手しやすい48%品を原料とする場合は、効率アップ等を目的にしてプレ濃縮器1を使用することが好ましい。即ち、48%品を原料2としてプレ濃縮器1に導入する。プレ濃縮器1は、スチーム3により加熱し、減圧ラインを通じて水を蒸発させる。ここで濃縮したもの(濃縮1)は、攪拌機付き晶析器4に導入する。攪拌機付き晶析器4は、スチーム3により加熱し、減圧ラインを通じて、当該濃縮1から水を蒸発させ、濃縮する。そして、晶析器4内で苛性カリの一水塩結晶(例えば、粒径1〜2mm程度)を析出させ、適当なスラリー濃度になるまで濃縮する。そして、当該スラリーは、遠心分離器5に抜き出す。この遠心分離器5により結晶7と母液8とに分離させる。当該遠心分離器5中の結晶は、リンス液6でリンスを行い、結晶周囲に付着した母液を洗浄する。この洗液は、母液とともに再利用することができる。リンス後の結晶7は、高純度苛性カリ結晶溶解槽9にて適宜必要な濃度に溶解しても良く、結晶品として使用しても良い。苛性カリの溶解濃度は、市場に流通している48〜49%に希釈する場合がほとんどであるが、用途によりこれより高濃度とする場合や、更なる精製を行うため49〜57%程度に溶解する場合がある。なお、更なる精製を行う場合は、特に結晶化防止の加温処置を行いさらに57〜65%の範囲で供給することも可能である。
図1の11〜18は、減圧を発生させる装置である。晶析器4より発生した水蒸気は、蒸気凝縮器12にて低温冷却水11と接触させ凝縮させる。この凝縮した水は、低温冷却水受槽13に入れ、そして冷凍機等を用いて低温冷水11として循環再利用を行うことができる。
母液またはリンス液の不純物濃度が所定値以下であれば原料2に混入し、再利用することができる。
なお、ナトリウムはナトリウムイオン(即ち、NaOHやNaCl等の形態)として存在し、塩素は塩化物イオン(即ちKClやNaCl等の形態)として存在しているものと考えられる。このことから、本発明においてこれらは、ナトリウム(即ちナトリウム原子として換算)と塩化カリウムとに換算した値を用いた。即ち、Naが10mg/kg、KClが1mg/kg、苛性カリ濃度が48%のものと、Naが20mg/kg、KClが2mg/kg、苛性カリ濃度が96%のものとは、苛性カリの濃度が異なるが同じものである。
即ち、本発明の高純度苛性カリは、鉄含有量が50ppb以下でクロム含有量が20ppb以下であり;ニッケル含有量が10ppb以下、銅含有量が10ppb以下、および/または亜鉛含有量が20ppb以下が好ましいものである。
プレ濃縮器の運転は、スラリーが発生しない条件で行うことが好ましい。即ち、プレ濃縮器内において、過度な揮発状態であると気相部分の内壁に不溶物が付着し、この付着物が溶液内に落下し、スラリーに混入することにより、得られる苛性カリの純度が低下することがあるので好ましくない。また同様に、減圧ライン内に物が付着して閉塞を招くことがあるので好ましくない。プレ濃縮器内において、揮発状態が弱いと、濃縮が遅くなることから、運転効率が低下するため好ましくない。また、晶析器の負荷が大きくないため、運転効率が低下することがあるため好ましくない。
本発明の製造方法では、スチーム式のエゼクターや真空ポンプが適用でき、濃縮中の苛性カリミストによる装置へのダメージや長期使用蓄積によるミストでの配管閉塞等のトラブルをあまり受けない構造とすることができる。
なお、リンスすることにより得られる苛性カリの品質は向上するが、リンスする液量が多すぎると収量が低下するため好ましくない。リンスする水の量は、得られた結晶の1/3〜1/200倍の量が好ましく、より好ましくは1/3〜1/100倍であり、更に好ましくは1/10〜1/30倍である。リンスする量が1/3倍超では、結晶の溶解によるロスが大きく好ましくない。リンスする量が1/200倍未満では、リンス効果が得られないことがあるので好ましくない。
以下、実施例と比較例を挙げて更に詳しく本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
各分析は次の方法にて測定を実施した。塩素は、チオシアン酸水銀(II)との錯体形成後、吸光光度分析にて測定し、塩化カリウムに換算した。Na濃度は、超純水で希釈した後ICP発光分析により測定した。水酸化カリウム濃度は、塩酸を用いた中和滴定法(指示薬としてメチルレッド・メチルブルー混合指示薬を使用)で求た。クロム、ニッケル、銅、および亜鉛の濃度は、ジエチルジチオカルバミン酸にて各金属錯体形成後、酢酸nブチルエステルを用いてこれらを抽出し、ICP−MSにより測定した。また、鉄濃度は、バソフェナンスロリンとの錯体形成後、イソアミルアルコール抽出による吸光光度分析にて実施した。
この結果、48.5%の高純度苛性カリ水溶液は、650g(収率65%)得た。この溶液についてナトリウムと塩素の分析を行い、これらの結果を表1に示した。また、鉄イオン量(Fe)、銅イオン量(Cu)、ニッケルイオン量(Ni)、クロムイオン量(Cr)、および亜鉛イオン量(Zn)の分析を行い、これらの結果を表2に示した。なお、表1、表2ともに、苛性カリ濃度を48.0%に換算した値で示した。
ナトリウムを70ppm及び塩素を塩化カリウム換算で1.2ppmを含有する、48.5%の苛性カリ水溶液(原料)1000gを濃縮して56%の苛性カリ水溶液とした。この苛性カリ水溶液の温度が0℃になるまで冷却し、縦型二重冷却管内に苛性カリ結晶を析出させた。そして、母液を抜き出し後、二重冷却管を30℃になるまで加温し、発汗により溶出してきた苛性カリ水溶液を除去し結晶のリンスを実施した。残った結晶は、超純水を加えて48.5%の苛性カリ水溶液とした。この結果、48.5%の苛性カリ水溶液を504g(収率50%)得た。そして、この溶液について実施例1と同じ分析を行い、これらの結果を表1に示した。
ナトリウムを860ppmおよび塩素を塩化カリウム換算で29ppmを含有する、48.5%の苛性カリ水溶液(原料)1000gを60%に濃縮し、実施例1記載と同様のタンクに入れ、80℃で沸騰状態になるように圧力を調節して濃縮し、苛性カリの結晶を含むスラリーを析出させた。このスラリーは、遠心分離により不溶部を取り出し、この不溶部量の1/100量の超純水を用いて洗浄し、苛性カリを得た。この苛性カリの分析を行い、この結果を表1に記載した。
2 原料(苛性カリ水溶液)
3 スチーム
4 攪拌機付き晶析器
5 遠心分離機
6 リンス液
7 高純度苛性カリ結晶
8 母液
9 高純度苛性カリ結晶溶解槽
10 母液受槽
11 低温冷却水
12 蒸気凝縮器
13 低温冷却水受槽
14 スチーム
15 エジェクター
16 冷却水
17 エジェクター混合機
18 真空ポンプ
Claims (7)
- 共存する不純物が苛性カリ48%を基準として、鉄含有量50ppb以下でクロム含有量20ppb以下の高純度苛性カリ。
- ナトリウムが10mg/kg以下で塩素が塩化カリウム換算で1mg/kg以下である請求項1の高純度苛性カリ。
- 苛性カリ水溶液を高温状態で濃縮して苛性カリの一水塩結晶を析出させ、当該一水塩結晶を含有するスラリーから結晶分と母液とを分離し、この結晶分を水または苛性カリ水溶液でリンスすることを特徴とする請求項1または2にそれぞれ記載の高純度苛性カリの製造方法。
- 高温状態が70℃超であり150℃以下であることを特徴とする請求項3に記載の高純度苛性カリの製造方法。
- 晶析器内の母液中の苛性カリ濃度が57〜70%であることを特徴とする請求項3または4にそれぞれ記載の高純度苛性カリの製造方法。
- 結晶分の1/3〜1/200倍の液量でリンスすることを特徴とする請求項3〜5にそれぞれ記載の高純度苛性カリの製造方法。
- 母液および/またはリンス洗液の苛性カリ濃度を49〜65%に調整して、再度利用することを特徴とする請求項3〜6にそれぞれ記載の高純度苛性カリの製造方法。
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