JP4008596B2 - 光学フィルターおよびその製造方法 - Google Patents

光学フィルターおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光学フィルターおよびその製造方法に関するものであり、更に詳しくは、P−O−C結合のリン酸基を有する光学フィルターに比べて、近赤外領域の波長光を効率よくカットし、視感度補正に好適な光吸収特性を有し、耐熱性、耐加水分解性等が良好で、高湿度、高温雰囲気下のような苛酷な条件でもフィルターの諸物性の劣化がない光学フィルター及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、カメラの測光用フィルターや視感度補正用フィルターとして、銅イオンを含有するリン酸系ガラス製の光学フィルターが用いられてきた。ガラス製の光学フィルターは、重いうえに、成形、切削、研磨等の加工が難しい欠点を有しており、近年のカメラ、ビデオムービーなどの光学機器の小型軽量化の要望に応えられないという問題がある。そこで、従来のガラス製フィルターに代わって合成樹脂製フィルターが提案されている。例えば、特開平6−118228号公報には、下記一般式(2):
【0003】
【化2】
Figure 0004008596
【0004】
又は下記一般式(3):
【0005】
【化3】
Figure 0004008596
【0006】
で表されるリン酸基含有の単量体と、これと共重合可能な単量体よりなる混合単量体を共重合して得られる共重合体と、銅塩を主成分とする金属塩を含有する光学フィルターが提案されている。また、特開平6−345877号公報には、下記一般式(4):
【0007】
【化4】
Figure 0004008596
【0008】
(式中、Phはフェニル基、AはCH2=CX−COO−で表され、Xは水素原子であるアクリロイルオキシ基、またはメチル基であるメタクリロイルオキシ基である。)を示し、nは1又は2である。}
で表されるリン酸基含有の単量体と、これと共重合可能な単量体よりなる混合単量体を共重合して得られる共重合体と、銅塩を主成分とする金属塩を含有する光学フィルターが提案されている。
【0009】
しかしながら、これらのリン酸型の単量体は、リン酸エステル結合に由来するP−O−C結合を有しているので、耐候性、特に、耐熱性、耐加水分解がやや悪いという構造的な欠点を有している。このため高温高湿下で使用した場合、フィルター表面にブリードが発生し、表面白化現象(濁化現象)や、透明性の低下現象(失透現象)が起きやすいと言う欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、前記課題に鑑み、光学フィルター用の材料について鋭意研究を重ねた結果、前記一般式(1)で表される重合性アクリロイル基またはメタクリロイル基{以下、両者を総称する場合は(メタ)アクリロイル基という}を有するホスフィン酸化合物単量体をモノマーの1成分として重合させた樹脂からなる光学フィルターが、近赤外領域の光の吸収率が高く、視感度補正が良好な光吸収特性を有し、しかも、P−O−C結合を有するリン酸基をモノマー成分として含有する光学フィルターと比べて高温高湿雰囲気下と言う苛酷な条件で使用した場合でも光学フィルターとして良好な諸物性を有していることを知見し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明の目的は、近赤外領域の光の吸収率が高く、視感度補正が良好な光吸収特性を有し、高温高湿雰囲気下で使用した場合でも、透明性の低下現象が生じない光学フィルターおよびその製造方法を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明が、提供しようとする光学フィルターは、下記一般式(1):
【0012】
【化5】
Figure 0004008596
【0013】
(式中、R、Rは水素原子またはメチル基、A及びBは炭素数3〜10の直鎖または分岐状のアルキレンを表し、AとB同一であってもよく異なっていてもよい。)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物をモノマーの1成分として重合させた樹脂からなることを構成上の特徴とする。
【0014】
更に、本発明の光学フィルターは、前記一般式(1)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と、これと共重合可能な単量体とを、共重合させた共重合体及び銅塩を主成分とする金属塩とを含有することが好ましい。
【0015】
本発明はさらに、前記一般式(1)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と、これと共重合可能な単量体とを重合開始剤の存在下に共重合反応を行うことにより得られる共重合樹脂を成形加工することからなる、光学フィルターの製造方法を提供する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に係わる光学フィルターは、前記一般式(1)に示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体をモノマー成分として含有することが大きな特徴である。
本発明に係わる前記一般式(1)の重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体において、式中で表されるAおよびBは、炭素数3〜10のアルキレンを示し、具体例としては、プロピレン、ブチレン、へキシレン、オクチレン、デシレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン等が挙げられる。また、R、R2は、水素原子またはメチル基が挙げられる。
【0017】
前記一般式(1)で表される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体の具体的な化合物は、例えば、
ビス(3−アクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸、
ビス(4−アクリロイルオキシブチル)ホスフィン酸、
ビス(5−アクリロイルオキシペンチル)ホスフィン酸、
ビス(6−アクリロイルオキシへキシル)ホスフィン酸、
ビス(7−アクリロイルオキシへプチル)ホスフィン酸、
ビス(8−アクリロイルオキシオクチル)ホスフィン酸、
ビス(9−アクリロイルオキシノニル)ホスフィン酸、
ビス(10−アクリロイルオキシデシル)ホスフィン酸、
ビス(4−アクリロイルオキシ−2−メチルブチル)ホスフィン酸、
(3−アクリロイルオキシプロピル)(4−アクリロイルオキシ−2−メチルブチル)ホスフィン酸、
(3−アクリロイルオキシプロピル)(10−アクリロイルオキシデシル)ホスフィン酸、
ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸、
ビス(4−メタクリロイルオキシブチル)ホスフィン酸、
ビス(5−メタクリロイルオキシペンチル)ホスフィン酸、
ビス(6−メタクリロイルオキシへキシル)ホスフィン酸、
ビス(7−メタクリロイルオキシへプチル)ホスフィン酸、
ビス(8−メタクリロイルオキシオクチル)ホスフィン酸、
ビス(9−メタクリロイルオキシノニル)ホスフィン酸、
ビス(10−メタクリロイルオキシデシル)ホスフィン酸、
ビス(4−メタクリロイルオキシ−2−メチルブチル)ホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)(4−メタクリロイルオキシ−2−メチルブチル)ホスフィン酸、
(3−メタクリロイルオキシプロピル)(10−メタクリロイルオキシデシル)ホスフィン酸等が挙げられ、これらのホスフィン酸は1種又は2種以上で用いられる。
【0018】
かかる前記一般式(1)で表される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体の製造方法は、特に限定はなく、公知の製造方法により製造することが出来る。例えば、次亜リン酸または次亜リン酸塩と不飽和アルコール化合物とをアルコール溶媒中でラジカル開始剤の存在下で反応させて、下記一般式(5):
【0019】
【化6】
Figure 0004008596
【0020】
(式中、Aは前記と同義。)で表されるヒドロキシアルキルホスフィン酸化合物を得、次いで、該生成物と不飽和アルコール化合物をラジカル重合開始剤の存在下で反応させて、下記一般式(6):
【0021】
【化7】
Figure 0004008596
【0022】
(式中、A、Bは前記と同義。)で表されるビス(ヒドロキシアルキル)ホスフィン酸化合物を得、次いで、該生成物と(メタ)アクリル酸ハロゲン化物と反応させることにより、容易に製造することができる。
【0023】
本発明の光学フィルターは、前記一般式(1)で表される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体とこれと共重合可能な単量体からなる共重合体、及び銅塩から構成される樹脂組成物より得られるものが好ましい。
前記一般式(1)で表される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体に共重合させる単量体としては、前記一般式(1)で表される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と均一に溶解混合し、ラジカル共重合性が良好で、得られた共重合体が光学的に透明である等の条件を満足するものであれば特に限定はない。
【0024】
これらの中には、例えば次のようなものが挙げられる:メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜8の低級アルキルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレートなどのアルキル基の炭素数が1〜8の低級アルキルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジルアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールメタクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリトリットトリメタクリレート、ペンタエリトリットテトラメタクリレートなどの多官能(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸などの不飽和カルボン酸、スチレン、α−メチルスチレン、ハロゲン化スチレン、ジビニルスチレンなどの芳香族ビニル化合物を挙げることができる。これらの単量体は、単独で、あるいは2種以上混合して共重合性単量体とすることができる。
【0025】
前記一般式(1)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と、前記した共重合単量体の共重合割合は、5:95〜90:10(wt/wt%)の範囲にあることが好ましく、さらに詳しくいえば30:70〜80:20(wt/wt%)が好ましい。ホスフィン酸化合物単量体が5重量%よりも少ない場合は、光学フィルターとして好適な特性が得られず、また90重量%より多い場合には、得られた樹脂の機械的、化学的な特性が損なわれる。
【0026】
本発明の光学フィルターにおいて、もう一つの成分である銅塩を主成分とする金属塩とは、金属化合物に含まれる全てのイオン性金属成分における銅イオンの占める割合が80重量%以上を意味する。
かかる銅塩を主成分とする金属塩としては、例えば酢酸銅、蟻酸銅、安息香酸銅、ステアリン酸銅、オレイン酸銅、エチルアセト酢酸銅、ピロリン酸銅、ナフテン酸銅、クエン酸銅、フタル酸銅、4−シクロヘキシル酪酸銅、グルコン酸銅、シュウ酸銅などの有機酸銅、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、リン酸銅、二リン酸銅などの無機酸銅の無水物または水和物を挙げることができるが、特にこれらの銅塩に限定されるものではない。また、金属塩を構成する金属は、銅を主成分とするものであれば、特に限定されるものではなく、他の金属としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄、マンガン、コバルト、マグネシウム、ニッケルなどの混合金属塩を用いることができる。
【0027】
銅塩を主成分とする金属塩の含有割合は、共重合体100重量部に対してCuとして、0.1〜20重量部である。この理由は、0.1重量部未満では、近赤外領域の光の吸収が低くなる傾向があり、一方、20重量部より大きくなっても、銅イオンの効果は、飽和するばかりで、また、フィルターの諸物性が劣化する傾向があることから好ましくない。
【0028】
上記3成分の他の成分として、緑色乃至青緑色領域の光(450nm〜600nm)を選択的に吸収することができるコバルト等の金属イオン、キノン系、キノリン系、イミダゾール系、オキサゾリン系、フルギド系、ポリエン系、アゾ系、インジコ系、ジフェニルメタン系、ポリメチン系、ナフトキノン系等の染料および有機色素、重合開始剤、酸化防止剤、熱安定剤、離型剤、及びその他の補助資材等が配合されていても差し支えない。
【0029】
次いで、本発明の光学フィルターの製造方法について説明する。
本発明の光学フィルターの製造方法は、前記一般式(1)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と、これと共重合可能な単量体とを重合開始剤の存在下に反応させて得られる樹脂を成形加工して得るところに特徴がある。
前記一般式(1)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と、これと共重合可能な単量体は、5:95〜90:10(wt/wt%)の範囲で反応させることが好ましく、さらに詳しくいえば30:70〜80:20(wt/wt%)が好ましい。
【0030】
重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が用いられ、半減期が反応温度に適したものを使用するのが好ましく、例えばアセチルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類、ジイソプロピルパーオキシジカルボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカルボネート等のパーオキシジカルボネート類、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーピバレート等のパーオキシエステル類、2、2'−アゾビス(2−メチルプロピルニトリル)、2、2'−アゾビス(2−メチルプロピオネイト)等のアゾビス類等が挙げられる。ラジカル開始剤の使用量は、混合単量体に対して、0.1〜20重量%、好ましくは1〜10重量%が適当である。
【0031】
重合方法は、特に限定されるものではなく、注型(キャスト)重合法、懸濁重合法、乳化重合法、溶液重合法などの公知の方法を用いることができる。
本発明において、重合条件は、重合開始剤の種類により異なるが、重合温度は、30〜200℃、好ましくは40〜100℃、反応時間は、1〜72時間、好ましくは10〜48時間である。
【0032】
銅イオンを含有させた共重合体を得る方法としては、特に限定はないが、ラジカル重合させる前に混合単量体に前記した銅塩を主成分とする金属塩を添加して、必要に応じて加熱することにより、均一な単量体混合物を調整することが好ましい。また、混合単量体をラジカル重合して得られた共重合体を加熱溶融させて銅塩を主成分とする金属塩を添加して、共重合体に銅塩を主成分とする金属塩を均一に含有させる方法、又は共重合体を有機溶媒に溶解させ、この溶液に銅塩を主成分とする金属塩を添加混合する方法等の手段を用いてもよい。
【0033】
銅塩を主成分とする金属塩の含有割合は、共重合体100重量部に対して、0.1〜50重量部が好ましく、更に好ましくは0.1〜20重量部である。
得られた、銅イオンを含有する共重合体を目的、用途に応じて、板状、円柱状、レンズ状等の形状に成形、研磨して光学フィルターを得る。
【0034】
また、添加された銅塩を主成分とする金属塩中の銅イオンは、混合単量体中または共重合体中のリガンドとして、ホスフィン酸基と結合し、酸成分として銅イオンのカウンターイオンは排出されることから、本発明では、必要に応じて、このカウンターイオンを除去することができる。
このカウンターイオンを除去する方法としては、得られた光学フィルター材料を水や各種の有機溶媒に浸漬させることにより、抽出除去することができる。また、重合反応の前に前記の銅塩を主成分とする金属塩を加える方法においては、重合前の銅イオンを含有する単量体混合物について、濾過、加熱、真空吸引処理等を施すことによりカウンターイオンを除去することができる。
【0035】
かくして得られる光学フィルターは、近赤外領域の光の吸収率が高く、視感度補正が良好な光吸収特性を有し、しかも、P−O−C結合を有するリン酸基をモノマー成分として含有する光学フィルターと比べて、高温高湿雰囲気下と言う苛酷な条件で使用した場合でも、透明性の低下現象が生じないと言う極めて良好な諸物性を有する光学フィルターである。
【0036】
なお、本発明の光学フィルターにおいて、所望により耐湿性を更に高める目的で、該フィルター基材の表面に、多官能アクリル系樹脂でコート層を形成させることができる。
このアクリル系樹脂よりなるコート層は、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート等のラジカル重合性のアクリロイル基またはメタアクリロイル基を有する単量体成分と、光重合開始剤と、有機溶媒からなるコート層形成液をフィルター表面に塗布し、この塗布膜を紫外線照射等により容易に形成させることができる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって更に説明するが、これらに限定されるものではない。
<ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸の調製>
撹拌機、温度計、滴下ロート、コンデンサーを備えた1000mLの四つ口フラスコに、次亜リン酸ナトリウム・1水塩106.0g(1.0モル)と純水30mL、エタノール300mLを仕込み、ラジカル開始剤tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート3.50gをアリルアルコール58.1g(1.0モル)に溶解させた溶液を、約4時間かけてエタノール還流下に、滴下反応させた。滴下終了後、同温度で2時間熟成させ、室温まで冷却した。
【0038】
この反応液に(1+1)塩酸水溶液をpH1の酸性となるまで添加したところ塩化ナトリウムが析出してきた。液量を1/2まで濃縮し、生成した塩化ナトリウムを濾別除去し、エバポレーターで濃縮することにより3−ヒドロキシプロピルホスフィン酸126.6g(純度93.7%、収率97.1%)を得た。
次いで、得られた3−ヒドロキシプロピルホスフィン酸105.9g(0.8モル)を500mL四つ口フラスコに仕込み、窒素気流下、100℃に昇温した。次いで、滴下ロートに仕込んだラジカル開始剤ジ−tert−ブチルパーオキサイド3.17gをアリルアルコール55.7g(0.96モル)に溶解した溶液を、約4時間かけて滴下した。滴下終了後、同温度で2時間熟成した。冷却後、過剰のアリルアルコールを真空ポンプで完全に留去させ、ビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン酸147.0g(純度96.8%、収率97.7%)を得た。
【0039】
次いで、撹拌機、温度計、および蒸留ラインを備えた500mLの四つ口フラスコに、得られたビス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフィン酸18.2g(0.1モル)、アセトニトリル200mLを仕込み、常圧にて撹拌しながら加熱して、アセトニトリルを80mL留出させた。冷却後、重合禁止剤としてハイドロキノンモノメチルエーテル0.5gを添加した。木下式ボールフィルターで窒素ガスを系内に絶えず導入しながら、滴下ロートからメタクリロイルクロライド20.9g(0.2モル)を室温にて30分かけて滴下した。反応温度は、ほとんど上昇しなかった。さらに、同温度にて3時間熟成した。
反応液を濃縮しさらに真空ポンプで乾燥してビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸30.0g(純度95.2%、収率94.3%)を得た。
【0040】
・ビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸の同定データ
H−NMR(CDCL3,δ)
0.88(t,J=6.8Hz,3H)、1.73−2.06(m,8H)、
4.20−4.24(m,4H)、5.51(d,J=1.8Hz,1H)、
6.08(d,J=1.8Hz,1H)、9.28(s,1H)
FT−IR(液膜,cm−1
3420(ν−OH)、2950,2880(ν−CH)、2310(ν−PH)、1732(ν−C=O)、1155(ν−P=0)、945(ν−P−O(H))
【0041】
実施例1
上記で調製したビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸20.3部、メチルメタクリレート61.6部、ジエチレングリコールジメタクリレート20.8部、α−メチルスチレン1.6部をよく混合し、この混合単量体に無水安息香酸銅5.0部(混合単量体100部に対して銅金属1.0部含有)を添加して、60℃で撹拌混合することにより、均一な青色混合溶液を得た。この混合溶液に、ラジカル開始剤tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート3.4部を添加し、グラスフィルターで濾過した。
45℃で16時間、60℃で8時間、90℃で3時間と昇温加熱して、キャスト重合させた。得られた重合体を厚さ1mmの板状に切削し、表面を研磨して光学フィルターを製作した。光学フィルターの比重は、1.17で、屈折率は1.52であった。
【0042】
得られた光学フィルターを25℃の純水に24時間浸漬させ、吸水率を求めた。吸水率は、0.38重量%で、浸漬後の表面のブリードは認められず、失透、白濁もみられなかった。この光学フィルターの可視領域から近赤外領域(400〜1000nm)の透過率を測定した。結果を表1に記載した。
また、高温高湿度雰囲気下(温度70℃、相対湿度80%)で、耐候性試験を行い、1、2、5日毎の光学フィルターの曇度(HAZE)を求めた。試験方法は、プラスチック透明材料の全光線透過率の試験方法(JIS K7361)に従い、ヘーズメーター(日本電色社製、NDH−2000型)を用いた。その結果を表2に記載した。
【0043】
比較例1
実施例1のビス(3−メタクリロイルオキシプロピル)ホスフィン酸の代わりに、ビス(2−メタクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート20.6部を用いた以外同様にして、共重合体を合成し、切削、研磨して光学フィルターを得た。光学フィルターの比重は1.24で、屈折率は1.50であった。
得られた光学フィルターを25℃の純水に24時間浸漬させ、吸水率を求めた。吸水率は、1.0重量%であった。この光学フィルターの可視領域から近赤外領域(400〜1000nm)の透過率を測定した。結果を表1に記載した。
また、高温高湿度雰囲気下での曇度(HAZE)を実施例1と同様な操作でで行い、その結果を2に記載した。
【0044】
実施例2
実施例1の無水安息香酸銅の代わりに、無水酢酸銅3.0部を用いた以外同様にして、共重合体を合成し、切削、研磨して光学フィルターを得た。光学フィルターの比重は1.18で、屈折率は1.52であった。
得られた光学フィルターを25℃の純水に24時間浸漬させ、吸水率を求めた。吸水率は、0.35重量%で、浸漬後の表面のブリードは認められず、失透、白濁もみられなかった。この光学フィルターの可視領域から近赤外領域(400〜1000nm)の透過率を測定した。結果を表1に記載した。
また、高温高湿度雰囲気下での曇度(HAZE)を実施例1と同様な操作でで行い、その結果を2に記載した。
【0045】
実施例3
実施例1のジエチレングリコールジメタクリレートの替わりに1,3−ブタンジオールジメタクリレート27.0部を用いた以外同様にして、共重合体を合成し、切削、研磨して光学フィルターを得た。光学フィルターの比重は1.20で、屈折率は1.51であった。
得られた光学フィルターを25℃の純水に24時間浸漬させ、吸水率を求めた。吸水率は、0.40重量%で、浸漬後の表面のブリードは認められず、失透、白濁もみられなかった。この光学フィルターの可視領域から近赤外領域(400〜1000nm)の透過率を測定した。結果を表1に記載した。
また、高温高湿度雰囲気下での曇度(HAZE)を実施例1と同様な操作でで行い、その結果を2に記載した。
【0046】
【表1】
Figure 0004008596
【0047】
【表2】
Figure 0004008596
【0048】
【発明の効果】
上記したとおり、本発明の光学フィルターは、近赤外領域の光の吸収率が高く、視感度補正が良好な光吸収特性を有し、しかも、P−O−C結合を有するリン酸基をモノマー成分として含有する光学フィルターと比べて、高温高湿雰囲気下と言う苛酷な条件で使用した場合でも、透明性の低下現象が生じないと言う極めて良好な諸物性を有する光学フィルターである。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1):
    Figure 0004008596
    (式中、R、Rは水素原子またはメチル基、A及びBは炭素数3〜10の直鎖または分岐状のアルキレンを表し、AとB同一であってもよく異なっていてもよい。)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物をモノマーの1成分として重合させた樹脂からなることを特徴とする光学フィルター。
  2. 前記一般式(1)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と、これと共重合可能な単量体とを、共重合させた共重合体及び銅塩を主成分とする金属塩とを含有する樹脂組成物からなる請求項1記載の光学フィルター。
  3. 金属塩の含有割合が共重合体100重量部に対してCuとして0.1〜20重量部である、請求項2記載の光学フィルター。
  4. 前記一般式(1)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と、これと共重合可能な単量体とを重合開始剤の存在下に共重合反応を行うことにより得られる共重合樹脂を成形加工することからなる、請求項1記載の光学フィルターの製造方法。
  5. 前記一般式(1)で示される重合性(メタ)アクリロイル基を有するホスフィン酸化合物単量体と、これと共重合可能な単量体との割合が、5:95〜90:10(wt/wt%)である請求項4記載の光学フィルターの製造方法。
  6. 共重合反応を銅塩を主成分とする金属塩の存在下に行う、請求項4または5記載の光学フィルターの製造方法。
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