JP4008339B2 - 無機系繊維シート及び無機系繊維シートの製造方法 - Google Patents
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- C03B37/011—Manufacture of glass fibres or filaments starting from a liquid phase reaction process, e.g. through a gel phase
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は無機系繊維シート及び無機系繊維シートの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、無機系短繊維(例えば、ガラス短繊維)からなる無機系短繊維シートは、濾過性能や分離性能等に優れているため、濾過材や鉛蓄電池用のセパレータなどとして好適に使用されている。
【0003】
このような無機系短繊維シートは、例えば、無機系短繊維を湿式法によりシート化することにより製造していた。このように製造した無機系短繊維シートは、無機系短繊維シートを構成する無機系短繊維が脱落する恐れがあるため、接着剤により無機系短繊維を接着するのが好ましい。しかしながら、接着剤を使用すると、接着剤が溶出したり、接着剤の種類によって無機系短繊維シートの用途が限定される、という問題があった。
【0004】
無機系短繊維については、例えば、直径10μmで、長さが最高で20mmの短繊維が得られることが公知である(非特許文献1)。しかしながら、このような短繊維から製造された繊維シートの場合、短繊維であるために繊維脱落のおそれがあり、これを防ぐために接着剤を使用すると、接着剤の溶出や、用途が限定されるという問題があった。
【0005】
例えば、無機系短繊維シートをクリーンルーム用フィルタの濾過材として使用した場合、接着剤からの溶出物がシリコンウエハやガラス基板表面に付着してしまう可能性があり、無機系短繊維シートを耐熱フィルタの濾過材として使用した場合、接着剤に耐熱性がないため、使用できない場合があった。
【0006】
また、このような無機系短繊維は繊維径が大きく、柔軟性のないものであった。
【0007】
【非特許文献1】
作花済夫著,「ゾル−ゲル法の科学」,第1版、株式会社アグネ承風社,1988年7月5日,p.78−79
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、(1)無機成分を主体とするゾル溶液を形成する工程、(2)前記ゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより細くして、無機系ゲル状細繊維を形成し、支持体上に無機系ゲル状細繊維を集積させる工程、及び(3)前記集積させた無機系ゲル状細繊維を乾燥して、無機系乾燥ゲル状細繊維を含む無機系構造体を形成する工程、を含む方法により、平均繊維径が2μm以下で、無機成分を主体とする無機系極細長繊維を含む無機系構造体を製造できることを発明し、特許出願した(特願2002−168500号)。
【0009】
この方法によれば、前記無機系構造体を製造できたが、実際に各種用途に適用するために取り扱おうとすると、機械的強度が低く、取り扱い性の悪いものであった。
【0010】
本発明は上記問題を解決するためになされたものであり、機械的強度に優れ、取り扱い性の優れる無機系繊維シート、及び無機系繊維シートの製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1にかかる発明は、「無機成分を主体とする無機系繊維を主体とする無機系繊維シートであり、前記無機系繊維はゾル溶液に電界を作用させることにより繊維化して形成した無機系ゲル状繊維に由来する平均繊維径が2μm以下の繊維であり、前記無機系繊維シートの下記により定義される繊維配向の標準偏差値が30以下であることを特徴とする、無機系繊維シート。
記
無機系繊維シートの電子顕微鏡写真上に直線を引いた場合に形成される、無機系繊維と前記直線とのなす角度(同じ回転方向にて測定)を100点について測定し、その測定の結果得られる角度の標準偏差値を「繊維配向の標準偏差値」とする」である。このように本発明は、繊維配向の標準偏差値が30以下である、つまり繊維配向が揃っていることによって、その繊維の配向した方向における機械的強度が高い結果、無機系繊維シートの取り扱い性が向上することを見出したものである。また、無機系繊維の平均繊維径が小さいことによって、濾過性能や分離性能等の各種性能に優れる無機系繊維シートであることができる。
【0012】
本発明の請求項2にかかる発明は、「無機成分を主体とする無機系繊維を主体とする無機系繊維シートであり、前記無機系繊維はゾル溶液に電界を作用させることにより繊維化して形成した無機系ゲル状繊維に由来する平均繊維径が2μm以下の繊維であり、前記無機系繊維シートの長手方向における、目付あたりの破断強度が400mN/cm以上であることを特徴とする、無機系繊維シート」である。このように、別の本発明は、無機系繊維シートの長手方向における破断強度が高いことによって、無機系繊維シートの取り扱い性が向上することを見出したものである。また、無機系繊維の平均繊維径が小さいことによって、濾過性能や分離性能等の各種性能に優れる無機系繊維シートであることができる。
【0013】
本発明の請求項3にかかる発明は、「前記無機系繊維シートの幅方向における破断強度Scの、前記無機系繊維シートの長手方向における破断強度Smに対する比(Sm/Sc)が1.5以上であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の無機系繊維シート」である。このように、無機系繊維シートの幅方向と長手方向に破断強度の差があることによって、繊維配向が揃っている可能性が高いため、繊維の配向した方向における機械的強度が高く、無機系繊維シートの取り扱い性により優れるものである。
【0015】
本発明の請求項5にかかる発明は、「前記無機系繊維の平均繊維径Daの、繊維径の標準偏差Ddに対する比(Dd/Da)が0.8以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の無機系繊維シート」である。このように、比(Dd/Da)の値が小さいということは、繊維径が揃っていることを意味するため、濾過性能や分離性能等の各種性能にバラツキのない無機系繊維シートであることができる。
【0016】
本発明の請求項7にかかる発明は、「(1)無機成分を主体とするゾル溶液を形成するゾル溶液調製工程、(2)前記ゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより繊維化して、無機系ゲル状繊維を形成し、支持体上に無機系ゲル状繊維を集積させて無機系ゲル状繊維シートを形成する集積工程、(3)前記無機系ゲル状繊維シートを乾燥して無機系乾燥ゲル状繊維シートを形成する乾燥工程、を含む無機系繊維シートの製造方法であり、前記(2)集積工程における支持体を200m/min.以上の速さで移動させることを特徴とする、無機系繊維シートの製造方法」である。この製造方法によれば、前記無機系繊維シートを製造することができる。
【0017】
本発明の請求項8にかかる発明は、「前記無機系ゲル状繊維シート又は無機系乾燥ゲル状繊維シートを焼結する工程を更に含むことを特徴とする、請求項7記載の無機系繊維シートの製造方法」である。このように焼結することによって、強度及び耐熱性に優れる無機系繊維シートとすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の1つの無機系繊維シート(第1無機系繊維シート)は、繊維配向の標準偏差値が30以下であるため、繊維配向が揃っていることにより、その繊維の配向した方向における機械的強度が高く、第1無機系繊維シートの取り扱い性に優れるものである。この繊維配向の標準偏差値が小さければ小さい程、前記傾向が強く、第1無機系繊維シートの取り扱い性に優れるため、好ましい繊維配向の標準偏差値は28以下である。なお、繊維配向の標準偏差値の下限は無機系繊維全部が同じ方向に配向している0である。
【0019】
この「繊維配向の標準偏差値」は、第1無機系繊維シートの電子顕微鏡写真上に直線を引いた場合に形成される、無機系繊維と前記直線とのなす角度(同じ回転方向にて測定)を100点について測定し、その測定の結果得られる角度の標準偏差値をいう。なお、第1無機系繊維シートの電子顕微鏡写真は1000倍の倍率で撮影したものを使用するのが好ましい。また、写真は任意の方向に対して引くことができ、特に限定するものではない。なお、1本の直線で100点の角度を確保できない場合には、1本目の直線と平行に直線を引いて角度を測定する。また、角度の標準偏差値は次の式から得られる値をいう。
標準偏差値={(nΣA2−(ΣA)2)/n(n−1)}1/2
ここで、Aは各々の角度(°)を意味し、nは測定点数である100を意味する。
【0020】
本発明の別の無機系繊維シート(第2無機系繊維シート)は、長手方向における、目付あたりの破断強度が400mN/cm以上と、破断強度が高いことによって、第2無機系繊維シートの取り扱い性に優れている。この目付あたりの破断強度が高ければ高いほど、第2無機系繊維シートの取り扱い性に優れるため、好ましい目付あたりの破断強度は500mN/cm以上であり、更に好ましい目付あたりの破断強度は600mN/cm以上である。なお、目付あたりの破断強度は特に限定するものではない。
【0021】
この「目付あたりの破断強度」は、第2無機系繊維シートの長手方向における破断強度Sl(mN/cm)を、第2無機系繊維シートの目付M(g/m2)で除した値をいう。つまり、次の式により算出される値をいう。
目付あたりの破断強度=Sl/M
なお、「破断強度」は幅0.5cm、長さ3cm短冊状に調整した第2無機系繊維シートを、小型引張試験機(サーチ社製、TSM−01)を用いて測定した値をいい、「目付」は10cm角に裁断した第2無機系繊維シートの質量を測定し、1m2あたりの質量に換算した値をいう。また、第2無機系繊維シートの長手方向とは第2無機系繊維シートの生産方向を意味する。
【0022】
本発明の無機系繊維シート(以下、単に「無機系繊維シート」と表記する場合は第1無機系繊維シートと第2無機系繊維シートの両方を指す)は、無機系繊維シートの幅方向における破断強度Scの、無機系繊維シートの長手方向における破断強度Smに対する比(Sm/Sc)が1.5以上であるのが好ましい。このように、比(Sm/Sc)が1.5以上であると、無機系繊維が無機系繊維シートの長手方向により配向しているため、長手方向における機械的強度が高く、取り扱い性により優れているためである。前記比(Sm/Sc)の値が大きければ大きい程この傾向は強くなるため、比(Sm/Sc)は2以上であるのがより好ましく、2.5以上であるのが更に好ましい。なお、比(Sm/Sc)の上限は特に限定するものではない。この「破断強度」は前述の第2無機系繊維シートと同様に測定して得られる値であり、無機系繊維シートの長手方向は前述の通り、無機系繊維シートの生産方向であり、無機系繊維シートの幅方向は前記長手方向に直交する方向をいう。
【0023】
本発明の無機系繊維シートは、無機成分を主体とする無機系繊維を主体としている。
【0024】
この無機系繊維の平均繊維径が2μm以下であると、柔軟性に優れており、また表面積が広いことによって各種機能(例えば、濾過性能、機能性物質による機能発揮性能など)が優れている。より好ましい平均繊維径は1μm以下であり、更に好ましい平均繊維径は0.6μm以下である。他方、無機系繊維の平均繊維径の下限は特に限定するものではないが、0.01μm程度が適当である。
【0025】
本発明における「繊維径」は、繊維横断面形状が円形である場合は、その直径をいい、繊維横断面形状が非円形である場合は、その断面積と同じ面積を有する円の直径を繊維径とみなす。また、「平均繊維径」は繊維100点における繊維径の平均値をいう。
【0026】
なお、無機系繊維はどの点においても繊維径が2μm以下であるのが好ましく、1μm以下であるのがより好ましく、0.6μm以下であるのが更に好ましい。
【0027】
また、無機系繊維の平均繊維径Daの、繊維径の標準偏差Ddに対する比(Dd/Da)が0.8以下であるのが好ましい。このように、比(Dd/Da)の値が小さいと、繊維径が揃っており、濾過性能や分離性能等の各種性能にバラツキのない無機系繊維シートであることができるためである。この比(Dd/Da)の値が小さければ小さい程、前記性能に優れているため、好ましい比(Dd/Da)は0.6以下であり、更に好ましい比(Dd/Da)は0.4以下である。他方、比(Dd/Da)の下限は特に限定するものではないが、理論上全部同じ繊維径の場合の0である。なお、繊維径の標準偏差値Ddは次の式から得られる値をいう。
Dd={(nΣD2−(ΣD)2)/n(n−1)}1/2
ここで、Dは個々の無機系繊維の繊維径(μm)を意味し、nは測定点数である100を意味する。
【0028】
更に、本発明の無機系繊維は実質的に連続した長繊維であるのが好ましい。このように長繊維であることによって、繊維が脱落しにくい無機系繊維シートであることができるためである。
【0029】
本発明の無機系繊維シートに含まれる無機系繊維は、無機成分を主体としている。つまり、無機系成分が50mass%以上を占めており、好ましくは60mass%以上、より好ましくは75mass%以上を占めている。
【0030】
この無機成分を構成する元素は特に限定するものではないが、例えば、リチウム、ベリリウム、ホウ素、炭素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、硫黄、カリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ゲルマニウム、ヒ素、セレン、ルビジウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、カドミウム、インジウム、スズ、アンチモン、テルル、セシウム、バリウム、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、水銀、タリウム、鉛、ビスマス、セリウム、プラセオジム、ネオジム、プロメチウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム、又はルテチウムなどを挙げることができる。
【0031】
また、前記元素を含む化合物として前記元素の酸化物を挙げることができ、具体的には、SiO2、Al2O3、B2O3、TiO2、ZrO2、CeO2、FeO、Fe3O4、Fe2O3、VO2、V2O5、SnO2、CdO、LiO2、WO3、Nb2O5、Ta2O5、In2O3、GeO2、PbTi4O9、LiNbO3、 BaTiO3、PbZrO3、KTaO3、Li2B4O7、NiFe2O4、SrTiO3などを挙げることができる。前記の無機成分は、一成分の酸化物から構成されていても、二成分以上の酸化物から構成されていても良い。例えば、SiO2−Al2O3のニ成分から構成することができる。
【0032】
本発明の無機系繊維シートを構成する無機系繊維は、上述のような無機成分以外に、有機成分を含んでいることができる。この有機成分として、例えば、シランカップリング剤、染料などの有機低分子化合物、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子化合物、などを挙げることができる。
【0033】
また、本発明の無機系繊維は繊維内に、無機系又は有機系の微粒子を含んでいても良い。この無機系微粒子としては、例えば、酸化チタン、二酸化マンガン、酸化銅、二酸化珪素、活性炭、金属(白金など)を挙げることができ、有機系微粒子として、色素又は顔料などを挙げることができる。また、微粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが、好ましくは0.001〜1μm、より好ましくは0.002〜0.1μmである。このような微粒子を含んでいることによって、光学機能、多孔性、触媒機能、吸着機能、或いはイオン交換機能などを付与することができる。
【0034】
本発明の無機系繊維シートは上述のような無機系繊維を主体とする、つまり、無機系繊維が無機系繊維シートの50mass%以上を占めており、好ましくは60mass%以上、より好ましくは75mass%以上を占めている。
【0035】
なお、本発明の無機系繊維シートを構成する無機系繊維同士が絡むことによってその形態を維持していると、接着剤が存在していないことによって、汚染物質の発生を抑えることができるという効果を奏する。
【0036】
また、本発明の無機系繊維シートを構成する無機系繊維は、例えば、ゲルを乾燥した状態にあっても、ゲルを不完全に焼結した状態にあっても、或いはゲルを完全に焼結した状態にあっても良い。
【0037】
更に、本発明の無機系繊維シートは、無機系繊維以外に、有機系繊維及び/又は機能性粉体を含んでいることができる。有機系繊維を含んでいることによって機械的強度を向上させることができ、機能性粉体を含んでいることによって機能性粉体の機能を発揮することができる。
【0038】
このような有機系繊維として、ポリオレフィン系繊維、ポリアミド系繊維、ポリエステル系繊維などの合成繊維、レーヨン繊維などの再生繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、綿、羊毛などの天然繊維を挙げることができる。
【0039】
他方、機能性粉体として、例えば、酸化チタン、二酸化マンガン、酸化銅、二酸化珪素、活性炭、金属(白金など)の無機系粉体や、イオン交換樹脂、色素、顔料、薬剤などの有機系粉体を挙げることができる。この機能性粉体の平均粒径は特に限定するものではないが、好ましくは0.01〜100μmであり、より好ましくは0.05〜10μmである。このような機能性粉体を含んでいることによって、触媒機能、研磨機能、吸着機能、或いはイオン交換機能などを付与することができる。
【0040】
本発明の無機系繊維シートは機械的強度に優れ、取り扱い易いものであるため、各種用途に適用することができ、例えば、HEPAフィルタ用濾過材、ULPAフィルタ用濾過材、クリーンルームフィルタ用濾過材、純水フィルタ用濾過材、耐熱フィルター用濾過材、排気ガスフィルタ用濾過材、液体フィルタ用濾過材、光触媒担持用基材、電池用セパレータ、プリント基板用基材、触媒シート、電気機械変換素子、微細気泡発生シート、触媒燃焼シート、太陽電池用カバー材、断熱材、又は液晶用スペーサー材などの用途に好適に使用することができる。
【0041】
このような本発明の無機系繊維シートは、例えば、次のようにして製造することができる。
【0042】
まず、(1)無機成分を主体とするゾル溶液を形成するゾル溶液調製工程を実施する。このゾル溶液は、本発明の製造方法で最終的に得られる無機系繊維シートを構成する無機系繊維、つまり無機系乾燥ゲル状繊維又は無機系焼結繊維を構成する元素を含む化合物を含む溶液(原料溶液)を、約100℃以下程度の温度で加水分解させ、縮重合させることによって得ることができる。前記原料溶液の溶媒は、例えば、有機溶媒(例えばアルコール)又は水である。
【0043】
この化合物を構成する元素は特に限定するものではないが、前述の無機系繊維を構成することのできる元素として列挙した元素を挙げることができ、この元素を含む化合物(特には酸化物)としても、前述の無機系繊維を構成することのできる化合物として列挙した化合物(特に酸化物)を挙げることができる。
【0044】
前記のゾル溶液は、前記原料溶液に対して、前記化合物を縮重合させる処理を行うことにより得られ、主として無機成分からなる。すなわち、無機成分が50mass%以上を占めており、好ましくは60mass%以上、より好ましくは75mass%以上を占めている。
【0045】
前記のゾル溶液は、後述する集積工程においてノズルからの紡糸が可能となる粘度を有していることが必要である。その粘度は、紡糸可能な粘度である限り特に限定されるものではないが、好ましくは0.1〜100ポイズ、より好ましくは0.5〜20ポイズ、特に好ましくは1〜10ポイズ、最も好ましくは1〜5ポイズである。粘度が100ポイズを超えると細繊維化が困難となり、0.1ポイズ未満になると繊維形状が得られなくなる傾向があるためである。なお、ノズル先端部分における雰囲気を原料溶液と同様の溶媒ガス雰囲気とする場合には、100ポイズを超えるゾル溶液であっても紡糸可能な場合がある。
【0046】
本発明で用いるゾル溶液は、上述のような無機成分以外に、有機成分を含んでいることができ、この有機成分として、例えば、シランカップリング剤、染料などの有機低分子化合物、ポリメチルメタクリレートなどの有機高分子化合物、などを挙げることができる。より具体的には、前記原料溶液に含まれる化合物がシラン系化合物である場合には、メチル基やエポキシ基で有機修飾されたシラン系化合物が縮重合したものを含んでいることができる。
【0047】
前記原料溶液は、前記原料溶液に含まれる化合物を安定化する溶媒(例えば、有機溶媒(例えば、エタノールなどのアルコール類、ジメチルホルムアミド)又は水)、前記原料溶液に含まれる化合物を加水分解するための水、及び加水分解反応を円滑に進行させる触媒(例えば、塩酸、硝酸など)を含んでいることができる。また、前記原料溶液に含まれる、例えば、化合物を安定化させるキレート剤、前記化合物の安定化のためのシランカップリング剤、圧電性などの各種機能を付与することができる化合物、接着性改善、柔軟性、硬度(もろさ)調整のための有機化合物(例えば、ポリメチルメタクリレート)、あるいは染料などの添加剤を含んでいることができる。なお、これらの添加剤は、加水分解を行う前、加水分解を行う際、或いは加水分解後に添加することができる。更に、前記原料溶液は、前述のような無機系又は有機系の微粒子を含んでいることができる。
【0048】
テトラエトキシシランの場合、水の量がアルコキシドの4倍(モル比)を超えると曳糸性のゾル溶液を得ることが困難になるため、アルコキシドの4倍以下であるのが好ましい。
【0049】
触媒として塩基を使用すると、曳糸性のゾル溶液を得ることが困難になるため、塩基を使用しないのが好ましい。
【0050】
反応温度は使用溶媒の沸点以下であれば良いが、低い方が適度に反応速度が遅く、曳糸性のゾル溶液を形成しやすい。あまり低すぎても反応が進行しにくいため、10℃以上であるのが好ましい。
【0051】
次いで、(2)前記ゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより繊維化して、無機系ゲル状繊維を形成し、支持体上に無機系ゲル状繊維を集積させて、無機系ゲル状繊維シートを形成する集積工程を実施する。
【0052】
このゾル溶液の押し出し方向は特に限定するものではないが、ゾル溶液の滴下が生じにくいように、ノズルからの押し出し方向と重力の作用方向とが一致しないのが好ましい。特には、重力の作用方向と反対方向又は重力の作用方向と直角方向にゾル溶液を押し出すのが好ましい。
【0053】
このゾル溶液を押し出すノズルの直径は、無機系繊維(無機系乾燥ゲル状繊維又は無機系焼結繊維)の繊維径によって変化する。例えば、無機系繊維の繊維径が2μm以下の場合には、ノズルの直径が0.1〜3mm程度であるのが好ましい。
【0054】
また、ノズルは金属製であっても、非金属製であっても良い。ノズルが金属製であればノズルを1つの電極として使用することができ、ノズルが非金属製である場合には、ノズル内に電極を設置することにより、押し出したゾル溶液に電界を作用させることができる。
【0055】
このようなノズルからゾル溶液を押し出した後、押出物に電界を作用させることにより延伸して繊維化し、無機系ゲル状繊維を形成する。この電界は、目的とする無機系繊維(無機系乾燥ゲル状繊維又は無機系焼結繊維)の繊維径、ノズルと支持体との距離、原料溶液の溶媒、ゾル溶液の粘度などによって変化するため、特に限定するものではないが、例えば、無機系繊維の繊維径を3μm以下程度とする場合には、0.5〜5kV/cmであるのが好ましい。印加する電界が大きければ、その電界値の増加に応じて無機系ゲル状繊維の繊維径が細くなるが、5kV/cmを超えると、空気の絶縁破壊が生じやすいので好ましくない。また、0.5kV/cm未満になると、繊維形状となりにくい。
【0056】
電界を印加することにより、ゾル溶液に静電荷が蓄積され、支持体側の電極によって電気的に引張られ、引き伸ばされて繊維化する。電気的に引き伸ばしているため、無機系ゲル状繊維が支持体に近づくにしたがって、電界により繊維の速度が加速され、より細い繊維となる。また、溶媒の蒸発によって細くなり、静電気密度が高まり、その電気的反発力によって分裂し、更に細径の無機系ゲル状繊維になると考えている。
【0057】
このような電界は、例えば、ノズル(金属製ノズルの場合にはノズル自体、非金属製ノズルの場合にはノズル内の電極)と支持体との間に電位差を設けることによって、作用させることができる。例えば、ノズルに電圧を印加するとともに支持体をアースすることによって電位差を設けることができるし、逆に、支持体に電圧を印加するとともにノズルをアースすることによって電位差を設けることもできる。
【0058】
このように電界を作用させ、繊維化した無機系ゲル状繊維を支持体上に集積させる。支持体は特に限定されるものではないが、例えば、円筒状ドラム、長尺状ベルトなどを挙げることができる。なお、これら支持体は集積した無機系ゲル状繊維を剥がしやすいように、支持体の集積面表面が凹凸構造を有するのが好ましい。
【0059】
前述のように支持体を電極の1つとして使用する場合には、支持体は体積抵抗が109Ω以下の導電性材料(例えば、金属製)からなるのが好ましい。一方、ノズル側から見て、支持体よりも後方に対向電極として導電性材料を配置する場合には、支持体は必ずしも導電性材料である必要はない。後者のように、支持体よりも後方に対向電極を配置する場合、支持体と対向電極とは直接接触していても良いし、離間していても良い。
【0060】
なお、支持体上に、有機系繊維及び/又は機能性粉体を配置しておき、これら材料の上に無機系ゲル状繊維を集積させて複合することもできる。
【0061】
また、ノズルから押し出され、電界を作用させて繊維化された無機系ゲル状繊維が支持体に到着する前に、その無機系ゲル状繊維に対して、有機系繊維及び/又は機能性粉体をエアガン等によって吹き付けることができ、この方法によれば、これら吹き付けた有機繊維及び/又は機能性粉体と無機系ゲル状繊維とが混合した状態で、支持体に集積させることができる。このような有機繊維及び/又は機能性粉体の吹き付けは、無機系ゲル状繊維が支持体へ向かう方向に対して任意の方向から実施することができ、例えば、無機系ゲル状繊維が支持体へ向かう方向に対して直角方向や斜め方向から吹き付けることができる。
【0062】
本発明においては、無機系ゲル状繊維を支持体で集積させる際に、支持体を200m/min.以上の速さで移動させることが重要である。このように、支持体を高速で移動させることにより、無機系繊維である無機系乾燥ゲル状繊維又は無機系焼結繊維の配向方向を無機系繊維シートの長手方向と近似させることによって、前述のような繊維配向の標準偏差値をもつ第1無機系繊維シートや、前述のような目付あたりの破断強度を有する第2無機系繊維シートを製造することが可能となった。また、このように支持体を移動させることにより、前述のような比(Sm/Sc)をもつ無機系繊維シートとすることも可能となった。
【0063】
支持体の移動速度が200m/min.以上であれば、前述のような無機系繊維シートとしやすいが、支持体の移動速度が速ければ速いほど、この傾向は強くなるため、支持体の移動速度は300m/min.以上であるのが好ましく、400m/min.以上であるのが更に好ましい。なお、支持体の移動速度の上限は特に限定するものではない。
【0064】
次いで、(3)前記無機系ゲル状繊維シートを乾燥して無機系乾燥ゲル状繊維シートを形成する乾燥工程を実施する。この乾燥工程によって、無機系乾燥ゲル状繊維を含む無機系繊維シートを製造することができる。
【0065】
この乾燥温度は無機系ゲル状繊維を構成成分によって変化するため特に限定するものではないが、有機成分の分解温度未満の温度、例えば、200℃以下程度の温度で実施するのが好ましい。この乾燥はオーブンなどで加熱することによって実施することができるし、凍結乾燥或いは超臨界乾燥によっても実施することができる。
【0066】
この乾燥工程においては、各種用途に適用するのに必要な取り扱い強度を有するまで、例えば、前述のような破断強度を有するまで乾燥する。なお、無機系乾燥ゲル状繊維は相互に絡み合っており、部分的には溶媒の揮発による接着によって結合している。
【0067】
本発明においては、無機系ゲル状繊維シート又は無機系乾燥ゲル状繊維シートを焼結することによって、無機系焼結繊維からなる無機系焼結繊維シートを製造することができる。この無機系焼結繊維シートは強度及び耐熱性に優れている。
【0068】
まず、無機系乾燥ゲル状繊維シートを焼結する場合について説明する。
【0069】
この焼結温度は無機系乾燥ゲル状繊維を構成する無機成分によって変化するため、特に限定されるものではないが、例えば、無機成分と有機成分とを含む無機系乾燥ゲル状繊維を、温度約200℃以上、有機成分の分解温度未満で焼結すれば、有機成分が残留した無機系焼結繊維シートを製造することができ、この無機系焼結繊維シートは残留した有機成分の機能(例えば、接着性改善、柔軟性、硬さ(もろさ)調整、色素などの光学機能、撥水性)を発揮することができる。また、有機成分の分解温度以上で焼結すれば、無機成分のみからなり、強度及び耐熱性の優れる無機系焼結繊維を含有する無機系焼結繊維シートを製造することができる。
【0070】
より具体的には、無機系乾燥ゲル状繊維が有機成分を含むシリカ成分からなる場合、200〜400℃程度の温度で焼結すれば、有機成分の残留したシリカ焼結繊維を含み、接着性改善、柔軟性、硬さ(もろさ)調整、色素などの光学機能、撥水性の機能を有する無機系焼結繊維シートを製造することができ、800℃以上の温度で焼結すれば、有機成分を含まないシリカ焼結繊維を含む無機系焼結繊維シートを製造することができる。
【0071】
無機系ゲル状繊維シートを乾燥することなく、直接焼結する場合、無機系乾燥ゲル状繊維シートを焼結する方法と全く同様にして焼結を実施することができる。但し、いきなり焼結温度で焼結すると、無機系ゲル状繊維シートが急激に収縮して損傷する場合があるため、焼結温度まで徐々に昇温して焼結するのが好ましい。
【0072】
なお、このようにして製造した無機系繊維シートを構成する無機系繊維(無機系乾燥ゲル状繊維又は無機系焼結繊維)は、基本的に連続した長繊維である。そのため、脱落が生じにくいという効果も奏する。
【0073】
また、無機系繊維の平均繊維径が2μm以下である無機系繊維シートは、電界強度、ノズルからのゾル溶液の吐出量、ゾル溶液中における溶媒量、及び吐出部における雰囲気(ゾル溶液と同様の溶媒ガス雰囲気となっているかどうか)を調節することによって製造することができる。
【0074】
無機系繊維の平均繊維径Daの、繊維径の標準偏差Ddに対する比(Dd/Da)が0.8以下である無機系繊維シートは、ゾル溶液の吐出と電界の釣り合いのバランスを保たせることにより製造することができる。なお、このようにゾル溶液の吐出と電界の釣り合いのバランスを保たせることにより、ショットのない無機系繊維シートを製造できる。
【0075】
本発明の無機系繊維シートの製造方法を、製造装置の概念図である図1をもとに説明する。
【0076】
まず、前述のようにして調製されたゾル溶液は、ゾル溶液貯留部(図示せず)から定量ポンプ等(図示せず)によって、金属製のノズル1へと供給される。このノズル1への供給量は特に限定されるものではないが、ノズル1本あたり0.01mL/時間〜100mL/時間で変化させることができる。なお、図1においては、1本のノズルを備えているが、無機系繊維シートの幅等に応じて適宜設定することができ、2本以上であっても良い。
【0077】
このようにノズル1へ供給されたゾル溶液は、ノズル1から押し出される。一方、前記ノズル1に対して電圧が印加され、支持体である円筒状ドラム2はアースされているため、ノズル1と円筒状ドラム2との間には電界が形成され、この電界によって押し出されたゾル溶液は延伸されて繊維化し、無機系ゲル状繊維が形成される。なお、電界強度を0.5〜5kV/cmに調整できるように、ノズル1と円筒状ドラム2との距離を10〜500mm程度、好ましくは50〜300mm程度に設定できるように、ノズル1の位置を変えることができるのが好ましい。また、前記方法とは逆に、ノズル1をアースし、円筒状ドラム2に電圧を印加しても良い。
【0078】
なお、円筒状ドラム2はワイヤー等を介して駆動モーター3と接続されており、駆動モーター3の設定を調節することにより、円筒状ドラム2の表面速度を200m/min.以上に設定できるようになっている。そのため、無機系ゲル状繊維を無機系ゲル状繊維シートの長手方向に配向させることができる。なお、円筒状ドラム2に替えて、長尺状ベルトを使用することができる。
【0079】
また、図示していないが、ノズル1の先端部分が乾燥すると、ゾル溶液が硬化しやすいため、ノズル1の先端部分における雰囲気を原料溶液と同様の溶媒ガス雰囲気としたり、ゾル溶液中に沸点が100℃以上の高沸点溶媒(例えば、ブタノールなど)を添加して、ノズル1の先端部分における乾燥を防止するのが好ましい。
【0080】
ノズル1から押し出されたゾル溶液を延伸して繊維化された無機系ゲル状繊維は、円筒状ドラム2上に集積され、無機系ゲル状繊維シートを形成する。この円筒状ドラム2は矢印aの方向へ200m/min.以上の表面速度で回転するため、無機系ゲル状繊維を無機系ゲル状繊維シートの長手方向に配向させながら集積する。この集積量は円筒状ドラム2の表面速度、ノズルからの押し出し量、ノズル数などによって、調節することができる。
【0081】
この円筒状ドラム2上に集積した無機系ゲル状繊維シートは、所望集積量(目付)となった後に円筒状ドラムから剥がされ、ヒーター(図示せず)へと供給され、ヒーターの熱によって乾燥され、無機系乾燥ゲル状繊維を含む無機系乾燥ゲル状繊維シートとなる。又は、無機系ゲル状繊維シートは円筒状ドラムから剥がされ、焼結炉(例えば、電気炉)へと供給され、焼結炉の熱によって焼結され、無機系焼結繊維を含む無機系焼結繊維シートとなる。或いは、前記無機系乾燥ゲル状繊維シートを焼結炉によって焼結して、無機系焼結繊維シートとなる。
【0082】
このように無機系繊維シート(無機系乾燥ゲル状繊維シート又は無機系焼結繊維シート)を製造する際には、ゾル溶液を押し出すノズル1からは原料溶液中の溶媒が揮発するため、ノズル1及び円筒状ドラム2を含む紡糸室4は前記溶媒による影響を受けない材料から構成されているのが好ましい。また、紡糸室4は揮発した溶剤を排気しやすいように、気体供給部6と排気部5を備えているのが好ましい。
【0083】
また、紡糸室4の内部雰囲気は、安定した紡糸を実施できるように、温度及び湿度が調節されているのが好ましい。より具体的には、温度は40℃以下に設定されているのが好ましく、特には25℃前後に設定されているのが好ましい。他方、相対湿度は60%以下に設定されているのが好ましく、50%以下に設定されているのがより好ましい。
【0084】
このような本発明の無機系繊維シート(無機系乾燥ゲル状繊維シート又は無機系焼結繊維シート)の製造方法によれば、無機系繊維(無機系乾燥ゲル状繊維又は無機系焼結繊維)の絡合によって形態を維持した無機系繊維シートを製造できるため、接着剤を使用することによる弊害のない無機系繊維シートを製造することができる。
【0085】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
【実施例】
(実施例1)
(1)ゾル溶液調製工程
金属化合物としてテトラエトキシシラン、溶媒としてエタノール、加水分解のための水、及び触媒として1規定の塩酸を、1:5:2:0.003のモル比で混合し、温度78℃で、10時間の還流操作を行い、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターにより除去して濃縮した後、温度60℃に加温して、粘度が2ポイズのゾル溶液を形成した。
【0087】
(2)集積工程
次いで、1本のステンレス製ノズル(内径:0.6mm)から1mL/時間の割合でゾル溶液を、重力の作用方向と反対方向へ押し出すとともに、ノズルに電圧(−20kV)を印加し、支持体であるステンレス製円筒状ドラム(集積表面に凹凸構造を有する)をアースして、前記押し出したゾル溶液に電界(2kV/cm)を作用させることによって繊維化し、無機系ゲル状長繊維を形成して、回転するステンレス製円筒状ドラム上に集積させ、無機系ゲル状長繊維シートを形成した。なお、ノズルとステンレス製円筒状ドラムとの距離は10cmとし、ステンレス製円筒状ドラムの表面速度を210m/min.とした。また、この集積工程は温度23℃、相対湿度45%に設定された紡糸室内で実施した。
【0088】
(3)乾燥工程
次いで、前記無機系ゲル状長繊維シートを温度150℃に設定されたヒーターにより乾燥して、無機系乾燥ゲル状長繊維(SiO2からなる)からなる無機系乾燥ゲル状長繊維シートを製造した。
【0089】
(4)焼結工程
次いで、この無機系乾燥ゲル状長繊維シートを温度800℃で1時間焼成し、完全にガラス化させて、石英ガラス焼結長繊維からなる石英ガラス焼結長繊維シート(目付:4.2g/m2、厚さ:19μm)を製造した。この石英ガラス焼結長繊維シートは石英ガラス焼結長繊維同士が絡んでおり、一部接着した状態が観察された。
【0090】
(実施例2)
実施例1の集積工程におけるステンレス製円筒状ドラムの表面速度を420m/min.としたこと以外は実施例1と全く同様にして、石英ガラス焼結長繊維からなる石英ガラス焼結長繊維シート(目付:2.7g/m2、厚さ:12μm)を製造した。この石英ガラス焼結長繊維シートは石英ガラス焼結長繊維同士が絡んでおり、一部接着した状態が観察された。
【0091】
(比較例1)
実施例1の集積工程におけるステンレス製円筒状ドラムの表面速度を6m/min.としたこと以外は実施例1と全く同様にして、石英ガラス焼結長繊維からなる石英ガラス焼結長繊維シート(目付:5.5g/m2、厚さ:25μm)を製造した。この石英ガラス焼結長繊維シートは石英ガラス焼結長繊維同士が絡んでおり、一部接着した状態が観察された。
【0092】
(比較例2)
実施例1の集積工程におけるステンレス製円筒状ドラムの表面速度を60m/min.としたこと以外は実施例1と全く同様にして、石英ガラス焼結長繊維からなる石英ガラス焼結長繊維シート(目付:3.9g/m2、厚さ:18μm)を製造した。この石英ガラス焼結長繊維シートは石英ガラス焼結長繊維同士が絡んでおり、一部接着した状態が観察された。
【0093】
(各種物性の測定)
実施例1〜2及び比較例1〜2の石英ガラス焼結長繊維シートの「繊維配向の標準偏差値」、「長手方向における目付あたりの破断強度」、「比(Sm/Sc)」、「平均繊維径」及び「比(Dd/Da)」を前述の方法により測定した。また、実際の取り扱い性について、優れているものを○、扱いにくいものを×と評価した。これらの結果は表1に示す通りであった。
【0094】
【表1】
【0095】
この表1から明らかなように、繊維配向の標準偏差値が30以下である本発明の無機系繊維シート、長手方向における目付あたりの破断強度が400mN/cm以上である本発明の無機系繊維シート、及び比(Sm/Sc)が1.5以上である本発明の無機系繊維シートは取り扱い性に優れるものであった。
【0096】
【発明の効果】
本発明の無機系繊維シートは、機械的強度に優れ、取り扱い性の優れるものである。
【0097】
本発明の無機系繊維シートの製造方法によれば、機械的強度に優れ、取り扱い性の優れる無機系繊維シートを製造することができる。
【0098】
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の無機系繊維シートを製造できる装置の概念図
【符号の説明】
1 ノズル
2 円筒状ドラム
3 駆動モーター
4 紡糸室
5 排気部
6 気体供給部
Claims (8)
- 無機成分を主体とする無機系繊維を主体とする無機系繊維シートであり、前記無機系繊維はゾル溶液に電界を作用させることにより繊維化して形成した無機系ゲル状繊維に由来する平均繊維径が2μm以下の繊維であり、前記無機系繊維シートの下記により定義される繊維配向の標準偏差値が30以下であることを特徴とする、無機系繊維シート。
記
無機系繊維シートの電子顕微鏡写真上に直線を引いた場合に形成される、無機系繊維と前記直線とのなす角度(同じ回転方向にて測定)を100点について測定し、その測定の結果得られる角度の標準偏差値を「繊維配向の標準偏差値」とする。 - 無機成分を主体とする無機系繊維を主体とする無機系繊維シートであり、前記無機系繊維はゾル溶液に電界を作用させることにより繊維化して形成した無機系ゲル状繊維に由来する平均繊維径が2μm以下の繊維であり、前記無機系繊維シートの長手方向における、目付あたりの破断強度が400mN/cm以上であることを特徴とする、無機系繊維シート。
- 前記無機系繊維シートの幅方向における破断強度Scの、前記無機系繊維シートの長手方向における破断強度Smに対する比(Sm/Sc)が1.5以上であることを特徴とする、請求項1又は請求項2記載の無機系繊維シート。
- 前記無機系繊維が長繊維であることを特徴とする、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の無機系繊維シート。
- 前記無機系繊維の平均繊維径Daの、繊維径の標準偏差Ddに対する比(Dd/Da)が0.8以下であることを特徴とする、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の無機系繊維シート。
- 前記無機系繊維同士が絡んでいることを特徴とする、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の無機系繊維シート。
- (1)無機成分を主体とするゾル溶液を形成するゾル溶液調製工程、
(2)前記ゾル溶液をノズルから押し出すとともに、押し出したゾル溶液に電界を作用させることにより繊維化して、無機系ゲル状繊維を形成し、支持体上に無機系ゲル状繊維を集積させて無機系ゲル状繊維シートを形成する集積工程、
(3)前記無機系ゲル状繊維シートを乾燥して無機系乾燥ゲル状繊維シートを形成する乾燥工程、
を含む無機系繊維シートの製造方法であり、前記(2)集積工程における支持体を200m/min.以上の速さで移動させることを特徴とする、無機系繊維シートの製造方法。 - 前記無機系ゲル状繊維シート又は無機系乾燥ゲル状繊維シートを焼結する工程を更に含むことを特徴とする、請求項7記載の無機系繊維シートの製造方法。
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