JP4007778B2 - 窒化物半導体レーザ素子及び窒化物半導体レーザ素子の駆動方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体レーザ素子及びその駆動方法に関するもので、特に、光ディスクや光磁気ディスクなどの駆動装置において、光源として用いられる半導体レーザ素子及びその駆動方法に関する。更に、本発明は、窒化物半導体レーザ素子のように、自励発振状態を満足させる構成とすることが困難な半導体レーザ素子及びその駆動方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体レーザ素子は、単色性が良く強い光が放射されるので、レーザ出射光を集光したときのスポットサイズを小さくすることができ、光ディスクや光磁気ディスクなどの光が照射されて記録及び再生が行われる記録メディアの駆動装置において、光ピックアップに設けられる光源として用いられる。特に、波長が短く且つ光出力が得られる窒化物半導体レーザ素子は、DVDなどの高密度記録メディアの駆動装置用として用いられるよう、赤色半導体レーザ素子に代わる光ピックアップ素子として開発が推進されている。
【0003】
このように、データの記録及び再生が行われる駆動装置内の光ピックアップに、半導体レーザ素子が設けられる際、データの読み出しを行うために、低雑音化を図ることが課題となる。即ち、光ピックアップの光源に半導体レーザ素子が用いられるとき、光ピックアップに構成される光学系や記録メディアであるディスクなどからの反射光とレーザ出射光が互いに干渉し合って雑音を生じることがある。よって、優れた低雑音特性を得るため、この反射光による過剰雑音を防ぐことに、重点が置かれている。このとき、この過剰雑音を防ぐために、半導体レーザ素子からの出力をパルス状にして、レーザ出射光の可干渉性を低減させる。
【0004】
このように、半導体レーザ素子からの出力をパルス状にすることが最適とされ、このことを実現するために、自励発振(パルセーション)を起こす技術が一般的に使用されている。この自励発振は、半導体レーザ素子を特別な構造で構成することで発生させることができる。即ち、活性層において、光増幅領域と呼ばれる利得領域の周囲に、可飽和吸収領域と呼ばれる光吸収効果を持つ領域を形成することによって、自励発振状態とすることができる。この可飽和吸収層のQスイッチ効果(Qスイッチ:共鳴の鋭さを表すQ値を急速に変化させるためのスイッチ動作)と光増幅領域の光と発振光が協同して自励発振が引き起こされる。このような自励発振を行う半導体レーザ素子が、特開平8−204282号公報において提案されている。
【0005】
特開平8−204282号公報で示される半導体レーザ素子は、図11のような構成とされる。図11の半導体レーザ素子は、n型電極61に、n型GaAs基板62、n型AlGaInPクラッド層63、n型AlGaInP可飽和吸収層64、n型AlGaInPクラッド層65、AlGaInP活性層66、p型AlGaInPクラッド層67、p型AlGaInP可飽和吸収層68を順に備え、更に、リッジ構造をもつ凸型のp型AlGaInPクラッド層69と、n型GaAs電流ブロック層70、p型GaAsコンタクト層71、p型電極72を順に備えている。
【0006】
このような構成の半導体レーザ素子は、その内部に、光吸収領域としての可飽和吸収層64,68を有し、この可飽和吸収層64,68の光と光増幅領域である活性層66の光と発振光が協同して自励発振が引き起こされる。よって、この半導体レーザ素子には、高周波で変調した電流を注入する必要がなく、直流電流を活性層66に注入するようにすることでパルス状の光出力を得ることができる。
【0007】
このように、可飽和吸収領域と光増幅領域とを予め設けずに、活性層の電流非注入領域を可飽和吸収領域として作用させて、自励発振状態とすることができる窒化物半導体レーザ素子が、特開2000−286504号公報において提案されている。特開2000−286504号公報で示される窒化物半導体レーザ素子は、図12のような構成とされる。図12の窒化物半導体レーザ素子は、サファイア基板101上に、n型コンタクト層102、n型クラッド層103、活性層104、p型クラッド層105、n型電流狭窄層106,107、p型コンタクト層108が積層されて構成される。
【0008】
p型クラッド層105が、活性層104の表面を覆って形成された平坦部105aと、該平坦部105aの中央部に上向きに突設された幅W2の下段ストライプ部105bと、下段ストライプ部105bの中央部に更に突設された幅W1の上段ストライプ部105cとで構成され、幅W1が幅W2より狭くなるように下段ストライプ部105b及び上段ストライプ部105cが設けられる。又、n型コンタクト層102上にn型電極109が設けられるとともに、p型コンタクト層108上に端子110が設けられる。
【0009】
このような構成の窒化物半導体レーザ素子は、上段ストライプ部105cの幅W1によって規制され、p型クラッド層105から活性層104へ流れる電流が横方向へ広がらないように抑制される。従って、活性層104の中央に、上段ストライプ部105cの幅W1に応じた大きさの電流注入領域が形成される。又、下段ストライプ部105bの幅がW2となり、上段ストライプ部105cの幅W1より広がっているので、発光スポット幅が下段ストライプ部105bに応じた大きさとなり、電流注入領域の周囲に可飽和吸収領域が形成されることとなる。よって、活性層104において、電流注入領域と可飽和吸収領域が相互に作用して、パルス状の光出力を得ることができる。
【0010】
又、上述の自励発振状態を用いるもの以外でも、高周波によって変調された電流が注入されてパルス状の光出力を得ることのできる半導体レーザ素子が特開昭60−35344号公報で提案されている。特開昭60−35344号公報で示される半導体レーザ素子の動作は、図13のような特性に基づいて動作を行う。図13(a)は、横軸が注入される電流量を示すとともに縦軸が光出力を示す半導体レーザ素子の電流−光出力特性を表し、図13(b)は、注入される変調電流の時間変化の様子を表し、図13(c)は、変調電流の注入によって得られる光出力の時間変化の様子を表す。
【0011】
図13(b)のように、変調電流として、閾値Ith以下の電流値と、閾値Ith以上の電流値との間で変調される電流を注入することで、図13(c)のようなパルス状の光出力を得ることができる。この場合、注入する電流値を高く設定しても、パルス状の発振を維持することができ、高出力を得ることができる。又、自励発振を用いないので、可飽和吸収領域と光増幅領域とを構成する必要がない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開2000−286504号公報及び特開平8−204282号公報で提供される自励発振型の半導体レーザ素子では、パルス状の光出力を得るには、作成時の組成や構造を限定する必要がある。特に、特開平8−204282号公報のように、作成時の組成によって可飽和吸収領域と光増幅領域とを設ける場合、可飽和吸収領域と光増幅領域とのキャリア寿命の比及び微分利得の比を調整する必要がある。しかしながら、自励発振状態を満足させるためのパラメータ範囲が狭いため、作成の自由度が低くなってしまう。
【0013】
更に、窒化物半導体レーザ素子とした場合、窒化物の特性より微分利得の値を大きく変化させることができない。よって、窒化物半導体レーザ素子では、可飽和吸収領域と光増幅領域とによって自励発振状態とするような構成にするためのパラメータ範囲で、キャリア寿命と微分利得を設定することが物理的に困難である。
【0014】
又、半導体レーザ素子が自励発振状態となるか、又は、双安定状態となるかは、光増幅領域と可飽和吸収領域それぞれのキャリア濃度の釣り合いによって決定される。よって、光増幅領域と可飽和吸収領域それぞれの領域幅の長さの比や、キャリア寿命の比や、微分利得の比によって、その状態を調整することができる。そして、自励発振状態となる半導体レーザ素子とするには、キャリア寿命については、光増幅領域の方が長くなるように設定し、又、微分利得については、光増幅領域の方が小さくなるように設定する必要がある。更に、このように設定されたそれぞれの領域のキャリア寿命の比及び微分利得の比は、特定の範囲内になければならない。
【0015】
これは、可飽和吸収領域の内部におけるキャリア濃度の強い振動が光吸収効果の振動を促して、キャリア密度を変化させるためである。即ち、可飽和吸収領域において、微分利得に相当するキャリア密度に対する利得特性曲線の傾きが大きいほど、少ない光の吸収でキャリア密度を変化させることが可能となり、結果的にキャリア濃度の振動が生じやすくなる。よって、可飽和吸収領域と光増幅領域とで、微分利得の差が大きいほど自励発振が容易に得られる。
【0016】
この可飽和吸収領域及び光増幅領域で設定される微分利得の値は、半導体レーザ素子を構成する半導体の特性によって異なる。特に、窒化物半導体レーザ素子では、GaAs系などの赤色半導体レーザ素子に比べて、各領域の微分利得の比をより大きくする必要がある。しかしながら、図14に示すように、赤色半導体レーザ素子の利得特性が実線のようになり、可飽和吸収領域及び光増幅領域それぞれでの利得特性の傾きの差が大きくなるのに対して、GaN材料を用いる窒化物半導体レーザ素子については、その利得特性が点線のようになり、可飽和吸収領域及び光増幅領域それぞれでの利得特性の傾きの差が小さい。
【0017】
よって、窒化物半導体レーザ素子では、可飽和吸収領域及び光増幅領域それぞれでの利得特性の傾きを表す微分利得の比がほぼ1となり、自励発振状態を満たすことが困難である。更に、赤色半導体レーザ素子に比べて、窒化物半導体レーザ素子では、不純物の添加によって微分利得を変化させることも困難である。
【0018】
又、特開2000−286504号公報のように、半導体レーザ素子内にリッジを形成して、活性層に、注入される電流量の異なる可飽和吸収領域と電流注入領域とを設ける場合、そのリッジの幅と厚さ、リッジ境界部分の多層膜の膜厚、クラッド層の厚さ、エッチング条件などの多数で且つ微細な構造条件を最適化する必要がある。そして、この得られた条件に従って精度良く半導体レーザ素子を作製しなければならないため、多くの条件を確定する作業が必要であり、又、その条件が得られたとしても歩留まりが低いという問題がある。
【0019】
又、特開昭60−35344号公報で提供される高周波重畳型の半導体レーザ素子では、変調電流は、半導体レーザ素子の緩和振動周波数の1/2以上の周波数にしなければならない。よって、半導体レーザ素子の緩和振動周波数が略2GHz前後であるため、光出力をパルス状に発振させるためには、1GHz以上の高周波の変調電流としなければ、雑音の低減光が得られず、変調電流を発生する変調回路に大きな負担がかかる。
【0020】
このような問題を鑑みて、本発明は、素子の作成が容易で、且つ、変調電流を与える変調回路の負担を軽減することができる窒化物半導体レーザ素子及びその駆動方法を提供することを目的とする。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の窒化物半導体レーザ素子は、注入される電流を増幅して光を発生する光増幅領域と光増幅領域で発生した光を吸収する可飽和吸収領域より成るとともにレーザ出射光を発生する活性層を有する窒化物半導体レーザ素子において、前記光増幅領域と前記可飽和吸収領域とが、供給される電流の流れる方向に対して略垂直な方向に隣接し、前記光増幅領域に注入される、直流の動作電流に高周波電流が重畳された第1変調電流が与えられる第1電極と、前記可飽和吸収領域に注入される、直流の動作電流に高周波電流が重畳された第2変調電流が与えられる第2電極と、を有し、前記光増幅領域へ供給される電流値に対して出力するレーザ出射光の出力を表す電流−光出力特性がヒステリシス又は不連続性を有することを特徴とする。
【0022】
このような窒化物半導体レーザ素子において、光増幅領域に第1変調電流が注入されることによって光増幅効果が変動するとともに、可飽和吸収領域に第2変調電流が注入されることによって光吸収効果が変動する。このように、光増幅効果と光吸収効果との差が激しく変動するため、パルス状の高い光出力を得ることができる。
【0023】
又、本発明の窒化物半導体レーザ素子は、第1導電型の第1クラッド層と、第2導電型の第2クラッド層と、前記第1及び第2クラッド層の間に形成されるとともに注入される電流に対してレーザ出射光を発生する活性層とを有する窒化物半導体レーザ素子において、前記第1クラッド層及び前記活性層及び第2クラッド層が順に積層され、前記活性層が、前記第1クラッド層及び前記活性層及び第2クラッド層が積層される方向に対して略垂直な方向に隣接した、注入される電流を増幅して光を発生する光増幅領域と、光増幅領域で発生した光を吸収する可飽和吸収領域とを備え、前記光増幅領域に対応した位置で、且つ、前記第1クラッド層の表面に設けられ、前記光増幅領域に注入される、直流の動作電流に高周波電流が重畳された第1変調電流が与えられる第1電極と、前記可飽和吸収領域に対応した位置で、且つ、前記第1クラッド層の表面に設けられ、前記可飽和吸収領域に注入される、直流の動作電流に高周波電流が重畳された第2変調電流が与えられる第2電極と、を有し、前記光増幅領域へ供給される電流値に対して出力するレーザ出射光の出力を表す電流−光出力特性がヒステリシス又は不連続性を有することを特徴とする。
【0024】
このような電流−光出力特性にヒステリシス又は不連続性を有する窒化物半導体レーザ素子において、光増幅領域及び可飽和吸収領域のそれぞれに、第1変調電流及び第2変調電流を、第1電極及び第2電極を通じて与えることによって、光増幅効果と光吸収効果との差を激しく変動させることができる。よって、高出力のパルス状の光出力を得ることができる。
【0025】
前記活性層において、前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域が複数設けられ、前記第1電極が前記光増幅領域の数に応じて設けられるとともに、前記第2電極が前記可飽和吸収領域の数に応じて設けられるようにしても構わない。
【0026】
更に、前記可飽和吸収領域の周囲に、複数の前記光増幅領域が設けられ、前記光増幅領域それぞれからレーザ出射光を発生するようにしても構わない。このとき、例えば、可飽和吸収領域の両側に第1及び第2光増幅領域を設け、可飽和吸収領域と第1及び第2光増幅領域のそれぞれに変調電流を与えたとき、第1及び第2光増幅領域のそれぞれから、レーザ出射光が発生する。そして、第1光増幅領域から発生したレーザ出射光の出力をモニターして、変調電流をフィードバック制御することで、第2光増幅領域のレーザ出射光の出力を所望する値とすることができる。
【0027】
又、前記光増幅領域に対応した位置で、且つ、前記第2クラッド層の表面に設けられ、前記光増幅領域に注入される第1変調電流が流出される第3電極と、前記可飽和吸収領域に対応した位置で、且つ、前記第2クラッド層の表面に設けられ、前記可飽和吸収領域に注入される第2変調電流が流出される第4電極と、を有し、前記第2クラッド層において、前記光増幅領域と前記可飽和吸収領域の境界線上に当たる位置に、溝が設けられるようにして、前記活性層において、前記第1変調電流及び前記第2変調電流が、相互に影響し合うことを防ぐようにしても構わない。
【0028】
又、前記第2クラッド層の表面全体を覆うように設けられるとともに、前記光増幅領域に注入される第1変調電流と前記可飽和吸収領域に注入される第2変調電流とが、共通して流出される第5電極を有するようにして、素子の作成手順が簡略化されるようにしても構わない。
【0029】
又、本発明の窒化物半導体レーザ素子の駆動方法は、注入される電流を増幅して光を発生する光増幅領域と光増幅領域で発生した光を吸収する可飽和吸収領域とより成るとともにレーザ出射光を発生する活性層を有し、前記光増幅領域へ供給される電流値に対して出力するレーザ出射光の出力を表す電流−光出力特性がヒステリシス又は不連続性を有するレーザ出射光を発生する窒化物半導体レーザ素子の駆動方法において、前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域それぞれに、直流の動作電流に高周波電流が重畳される変調電流が注入されることを特徴とする。
【0030】
このようにすることで、電流−光出力特性にヒステリシス又は不連続な光出力変化が現れる半導体レーザ素子において、光増幅領域及び可飽和吸収領域のそれぞれに、変調電流を与えることによって、光増幅効果と光吸収効果との差を激しく変動させることができる。よって、半導体レーザ素子より、高出力のパルス状の光出力を得ることができる。
【0031】
又、前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域それぞれに注入される前記変調電流が、前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域毎に独立に制御されて注入されるようにすることで、前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域毎にキャリア濃度の釣り合いを好適に調整できるため、光出力を向上させることができる。
【0032】
又、前記可飽和吸収領域に注入される前記変調電流の位相が、前記光増幅領域に注入される前記変調電流の位相に対して、同相となるように調整されるようにすることで、光出力の振動を促す効果があるとともに、位相の制御が容易となる。
【0033】
更に、前記変調電流を、300MHz以上の高周波電流が重畳されたものとすることで、レーザ出射光の可干渉性を下げ、雑音特性を向上することができる。
【0034】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0035】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について、図面を参照して説明する。図1は、本実施形態におけるn型GaN基板上に設けられた窒化物半導体レーザ素子の基本構成を示す断面図である。
【0036】
図1に示す窒化物半導体レーザ素子は、2つの端子1a,1bと、2つの端子2a,2bと、端子1a,1bのそれぞれと電気的に接続されたp型電極3a,3bと、端子2a,2bのそれぞれと電気的に接続されたn型電極4a,4bと、p型電極3a,3bが表面に設けられるp型クラッド層5と、n型電極4a,4bが表面に設けられるn型クラッド層6と、p型クラッド層5とn型クラッド層6の間に設けられた活性層7とから構成される。
【0037】
このような窒化物半導体レーザ素子において、活性層7が、図1の共振器方向に、光増幅領域7aと可飽和吸収領域7bとが構成される。このとき、可飽和吸収領域7bは、窒化物半導体レーザ素子の共振器方向における活性層7の長さ全体に対して、10%となるように構成する。そして、本発明の窒化物半導体レーザ素子が双安定状態となるように、光増幅領域7a及び可飽和吸収領域7bそれぞれの共振器方向の長さとキャリア寿命と微分利得とが設定される。又、可飽和吸収領域7bにおいては、キャリア寿命を調整するために不純物が添加されている。ここでは、Siを1×1019cm-3添加した。
【0038】
この双安定状態とされる場合は、自励発振状態の場合に比べ、光増幅領域7a及び可飽和吸収領域7bそれぞれの微分利得の比を大きくする必要がない。又、この双安定条件を満たす条件においては、キャリア寿命の比と微分利得の比との積が一定以下であればよいので、キャリア寿命と微分利得のパラメータ設定を広くとることができ、更に、微分利得の比の調整が不可能でも、キャリア寿命の比を好適に調整することができる。そのため、窒化物半導体レーザ素子においても、双安定状態とすることによって、光増幅領域7a及び可飽和吸収領域7bに対するパラメータ設定が容易となる。
【0039】
又、n型クラッド層6には、n型電極4a,4bを寸断するように、共振器方向に対して垂直な方向に、溝8が設けられる。このように、溝8を設けることによって、光増幅領域7aと可飽和吸収領域7bそれぞれへの注入電流を独立的に制御しやすくなるとともに、光増幅領域7aと可飽和吸収領域7bそれぞれへ流れ込む電流が相互に干渉するという悪影響を回避させることができる。
【0040】
又、p型クラッド層5の表面上において、p型電極3aが光増幅領域7aに対応した位置に設けられるとともに、p型電極3bが可飽和吸収領域7bに対応した位置に設けられる。更に、n型クラッド層6の表面上において、n型電極4aが光増幅領域7aに対応した位置に設けられるとともに、n型電極4bが可飽和吸収領域7bに対応した位置に設けられる。
【0041】
更に、p型クラッド層5とn型クラッド層6と活性層7とは、Al、Ga、InなどのIII族元素と、V族元素であるNとの化合物で構成される窒化物系半導体層で構成される。又、n型クラッド層6の下側がn型GaN基板であり、その上面にn型クラッド層が形成されるが、説明を簡単にするために、n型GaN基板部分も含めて、n型クラッド層6とする。
【0042】
このように構成される窒化物半導体レーザ素子に対して、端子1a,1bそれぞれに、直流の動作電流に正弦波状の高周波電流を重畳した変調電流I0、Iabsが与えられて、光増幅領域7aと可飽和吸収領域7bそれぞれに注入される。尚、本実施形態では、図2(a)、(b)のように、端子1a,1bそれぞれに与える変調電流I0、Iabsについて、ともに正弦波で変調し、その周波数を100MHzとした。そして、変調電流Iabsの位相を、変調電流I0の位相に対して、π/4遅延するように調整した。更に、レーザの発振閾値が30mAであったため、端子1aへの変調電流I0の値を最大38mA、最小18mA、端子1bへの変調電流Iabsの値を最大1.0mA、最小0.5mAとした。
【0043】
よって、図2(a)の変調電流I0が、I2=28mAを中心として、I1=18mAとI3=38mAの間で発振する。又、図2(b)の変調電流Iabsが、0.75mAを中心として、0.5mAと1.0mAの間で発振する。このとき、図1の構成の窒化物半導体レーザ素子の電流−光出力特性は、図3(a)のように、変調電流Iabsの値が、Iabs1、Iabs2それぞれで、異なる。即ち、電流−光出力特性が、Iabsの値によって変化する。更に、図3(b)に、位相が変調電流Iabsの位相よりπ/4進んだ変調電流I0を示す。
【0044】
又、窒化物半導体レーザ素子を双安定状態で駆動させたとき、その電流−光出力特性はヒステリシスを持つ。即ち、変調電流IabsがIabs1のとき、変調電流I0の値がIbからIaに増加したとき、レーザ出射光の出力がP1からP2へと急峻に増大し、変調電流I0の値がIaからIbに減少したとき、レーザ出射光の出力がP3からP4へと急峻に減少する。
【0045】
図1の窒化物半導体レーザ素子において、図3のような特性が得られるとき、この半導体レーザ素子における活性層7が、次のような動作を行う。
【0046】
変調電流IabsがIabs1からIabs2に変化するとき、可飽和吸収領域7bにおいて、光増幅領域7aで発生した光の吸収量が減少し、電流−光出力特性が、電流I0の低電流値側に遷移する。このとき、位相π/4遅れの変調電流I0が、I2からI3に増加している。このように、変調電流I0が増加している間に、光出力がP1からP2に急峻に増加する。よって、電流−光出力特性において、光出力の高い領域で安定状態に遷移し、光増幅領域7aの光の増幅量が増加する。その後、変調電流I0がI3からI1に減少しようとする。この間、電流−光出力特性において、光増幅領域7aが、光出力の高い領域での電流−光出力特性に従った状態となる。
【0047】
逆に、変調電流IabsがIabs2からIabs1に変化するとき、可飽和吸収領域7bにおいて、光増幅領域7aで発生した光の吸収量が増加する。このとき、変調電流I0が、I3からI1に減少している。このように、変調電流I0が減少している間に、光出力がP3からP4に急峻に減少する。よって、電流−光出力特性において、光出力の低い領域で安定状態に遷移し、光増幅領域7aの光の増幅量が減少する。その後、変調電流I0がI1からI3に増加しようとする。この間、光増幅領域7aが、光出力の低い領域での電流−光出力特性に従った状態となる。
【0048】
このように、可飽和吸収領域7bに変調電流Iabsを注入して、可飽和吸収領域7bのキャリア濃度を振動させることで、光吸収効果の大きさを変動させて、図3(a)のように、活性層7の電流−光出力特性を変動させることができる。従って、光増幅領域7aへの変調電流I0の注入による光出力の振動と、可飽和吸収領域7bへの変調電流Iabsの注入によるレーザ出射光の発振閾値の振動との相乗効果によって、レーザ出射光の出力の変動を大きくすることができる。よって、窒化物半導体レーザ素子から出力されるレーザ出射光の出力が、図4のようなパルス状となり、雑音の低減を図ることができる。
【0049】
このように、双安定状態の窒化物半導体レーザ素子を利用することによって、そのパラメータ条件を広く設定できるため、自励発振状態のものに比べて、その作製が容易であり、歩留まりを良くすることができる。又、変調電流Iabs、I0の周波数が100MHzであるため、変調電流Iabs、I0を生成する変調回路の負担を減少させることができる。
【0050】
<第2の実施形態>
本発明の第2の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本実施形態において用いられる窒化物半導体レーザ素子は、第1の実施形態と同様、図1のような構成の窒化物半導体レーザ素子である。
【0051】
本実施形態では、図1のように構成される窒化物半導体レーザ素子に対して、端子1a,1bそれぞれに、第1の実施形態と同様、直流の動作電流に正弦波状の高周波電流を重畳した周波数100MHzの変調電流I0、Iabsが与えられて、光増幅領域7aと可飽和吸収領域7bそれぞれに注入される。このとき、変調電流I0、Iabsの位相が、図5のように、同相とされる。尚、図5における変調電流I0の値は、第1の実施形態と同様であり、変調電流Iabsの値は、Iabs3=0.5mA、Iabs4=0.75mA、Iabs5=1.0mAとした。
【0052】
このように、光増幅領域7aへ注入される変調電流I0と可飽和吸収領域7bへ注入される変調電流Iabsとの位相を同相とすることによって、レーザ出射光の発振閾値の時間変化の位相を変調電流I0の位相に対して逆相とすることができる。即ち、活性層7は、変調電流I0がI1となるとき、変調電流IabsがIabs3の電流−光出力特性に基づいた状態となるとともに、変調電流I0がI3となるとき、変調電流IabsがIabs5の電流−光出力特性に基づいた状態となる。
【0053】
従って、第1の実施形態と比べて、光増幅領域7aの光の増幅量と可飽和吸収領域7bの光の吸収量との差の変動が激しくなる。よって、図6のように、窒化物半導体レーザ素子の光出力の振動が激しくなり、第1の実施形態と比べて、レーザ出射光の出力が高くなるとともに、鋭いピーク波形を得ることができる。このように、本実施形態によれば、雑音特性だけでなく、光出力特性にもすぐれたレーザ出射光を発生させることができる。又、変調電流I0、Iabsの位相を同相とすることによって、変調電流I0、Iabsの制御を容易とすることができる。
【0054】
尚、本実施形態において、光増幅領域に注入する変調電流と可飽和吸収領域に注入する変調電流とが同位相となるようにしたが、可飽和吸収領域に注入する変調電流の位相が、光増幅領域に注入する変調電流の位相に対して、±π/2以内でずれるものであっても構わない。この範囲内のずれでも、同位相の時に対して若干低くなるが、ほぼ同程度の光出力を得ることができ、雑音の低減に対しても同様の効果を得ることができる。
【0055】
又、第1及び第2実施形態において、窒化物半導体レーザ素子に与える変調電流の周波数を100MHzとしたが、100MHz以上であれば、その値を限るものではない。又、窒化物半導体レーザ素子に与える変調電流の波形についても、正弦波に限らず、正弦波以外の波形としても構わない。
【0056】
<第3の実施形態>
本発明の第3の実施形態について、図面を参照して説明する。尚、本実施形態において用いられる窒化物半導体レーザ素子は、第1の実施形態と同様、図1のような構成の窒化物半導体レーザ素子である。
【0057】
本実施形態では、図1のように構成される窒化物半導体レーザ素子に対して、端子1a,1bそれぞれに、第2の実施形態と同様、直流の動作電流に正弦波状の高周波電流を重畳した同位相の変調電流I0、Iabsが与えられて、光増幅領域7aと可飽和吸収領域7bそれぞれに注入される。このとき、変調電流I0、Iabsの周波数が300MHzとされる。尚、変調電流I0、Iabsの値は、それぞれ、第2の実施形態と同様である。
【0058】
このように、変調電流I0、Iabsの周波数を300MHzにしたとき、第2の実施形態と比べて、光吸収効果及び光増幅効果それぞれの変動が激しくなる。即ち、光吸収効果と光増幅効果との変動が大きくなって互いに作用するために、可飽和吸収領域7bが飽和しやすくなるので、光増幅効果が高いときにレーザ出射光が発生し、図7のように、大きい出力を得ることができる。又、図6の変調電流I0、Iabsの周波数を100MHzにしたときのレーザ出射光の出力と比べて、その雑音の低減効果が増大する。
【0059】
更に、相対雑音強度(RIN)の、変調電流の周波数に対する依存性を示すためのグラフを、図8に示す。図8において、実線が、本発明の窒化物半導体レーザ素子における相対雑音強度の関係を示すグラフであり、点線が、従来例の窒化物半導体レーザ素子における変調電流における相対雑音強度の関係を示すグラフである。このグラフよりわかるように、従来の窒化物半導体レーザ素子に比べて、本発明の窒化物半導体レーザ素子の相対雑音強度が相対的に低く、特に、変調電流の周波数が300MHz以上において、光ディスクなどの記録メディアに対応可能となる−130dB/Hz以下の値が得られる。よって、光ディスクなどの記録メディアの光ピックアップに用いる際、注入する変調電流の周波数を、300MHz以上とすることが好ましいことがわかる。
【0060】
尚、本実施形態において、光増幅領域に注入する変調電流と可飽和吸収領域に注入する変調電流とが同位相となるようにしたが、可飽和吸収領域に注入する変調電流の位相が、光増幅領域に注入する変調電流の位相に対して、±π/2以内でずれるものであっても構わない。又、光増幅領域及び可飽和吸収領域それぞれに注入する変調電流の波形についても、正弦波に限らず、矩形波などの正弦波以外の波形としても構わない。
【0061】
又、第1〜第3の実施形態で使用される図1の構成の窒化物半導体レーザ素子において、可飽和吸収領域7bの共振器方向における長さを、活性層7の共振器方向における長さの10%としたが、10%以外でも、窒化物半導体レーザ素子からの光出力の波形は変化せず、パルス状の発振が得られる。しかしながら、可飽和吸収領域7bの活性層7に占める割合が高くなると、注入する変調電流の電流値を高くする必要があるため、可飽和吸収領域7bの占める割合を50%以下であることが好ましい。更に、電極を2つ設けた場合について説明したが、電極の数はこれに限られるものでなく、2つ以上の電極を有する窒化物半導体レーザ素子としても構わない。
【0062】
<第4の実施形態>
本発明の第4の実施形態について、図面を参照して説明する。図9は、本実施形態における窒化物半導体レーザ素子の構成を示す断面図で、図1の窒化物半導体レーザ素子と同一部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0063】
図9に示す窒化物半導体レーザ素子は、端子1a,1bと、端子2と、p型電極3a,3bと、端子2と電気的に接続されたn型電極4と、p型クラッド層5と、n型電極4が表面に設けられるn型クラッド層6aと、光増幅領域7aと可飽和吸収領域7bとが設けられた活性層7とから構成される。図9の窒化物半導体レーザ素子は、図1の窒化物半導体レーザ素子と異なり、n型クラッド層6aに溝が設けられていない。このような窒化物半導体レーザ素子において、図1の半導体レーザ素子と同様に、可飽和吸収領域7bを、半導体レーザ素子の共振器方向における活性層7の長さ全体に対して、10%となるように構成する。
【0064】
又、本実施形態では、第2の実施形態と同様に、図9のように構成される窒化物半導体レーザ素子に対して、端子1a,1bそれぞれに、直流の動作電流に正弦波状の高周波電流を重畳した変調電流I0、Iabsが与えられて、光増幅領域7aと可飽和吸収領域7bそれぞれに注入される。尚、本実施形態では、端子1a,1bそれぞれに与える変調電流I0、Iabsについて、ともに正弦波で変調するとともに位相を同相とし、その周波数を400MHzとした。更に、レーザの発振閾値が30mAであったため、端子1aへの変調電流I0の値を最大38mA、最小18mA、端子1bへの変調電流Iabsの値を最大1.0mA、最小0.5mAとした。
【0065】
このとき、第2の実施形態と同様、レーザ出射光の発振閾値の時間変化の位相を変調電流I0の位相に対して逆相とすることができるため、光吸収効果及び光増幅効果それぞれの変動が激しくなる。よって、窒化物半導体レーザ素子の光出力の振動が激しくなり、レーザ出射光の出力が高くなるとともに、鋭いピーク波形を得ることができる。
【0066】
本実施形態では、第2の実施形態と異なり、図9の窒化物半導体レーザ素子の端子2が共通とされるため、端子1aより光増幅領域7aに注入される変調電流I0と、端子1bより可飽和吸収領域7bに注入される変調電流Iabsとが、素子内部で相互に影響しあう可能性がある。よって、相対雑音強度が−130dB/Hz以下となるのは、変調電流の周波数が320MHz以上となるときである。このように、第2の実施形態に比べて、変調電流の周波数が高くなるが、端子2及びn型電極4が共通とされるので、素子の作成手順が簡略化されて、歩留まりが良くなる。
【0067】
尚、本実施形態において、光増幅領域に注入する変調電流と可飽和吸収領域に注入する変調電流とが同位相となるようにしたが、可飽和吸収領域に注入する変調電流の位相が、光増幅領域に注入する変調電流の位相に対して、±π/2以内でずれるものであっても構わない。又、光増幅領域及び可飽和吸収領域それぞれに注入する変調電流の波形についても、正弦波に限らず、矩形波などの正弦波以外の波形としても構わない。
【0068】
又、本実施形態において、図9の構成の窒化物半導体レーザ素子の可飽和吸収領域7bの共振器方向における長さを、活性層7の共振器方向における長さの10%としたが、10%以外でも、50%以下であれば、窒化物半導体レーザ素子からの光出力の波形は変化せず、パルス状の発振が得られる。又、電極を2つ設けた場合について説明したが、電極の数はこれに限られるものでなく、2つ以上の電極を有する窒化物半導体レーザ素子としても構わない。
【0069】
<第5の実施形態>
本発明の第5の実施形態について、図面を参照して説明する。図10は、本実施形態における窒化物半導体レーザ素子の構成を示す断面図で、図9の窒化物半導体レーザ素子と同一部分については、同一の符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0070】
図10に示す窒化物半導体レーザ素子は、端子1c,1d,1eと、端子2と、端子1c,1d,1eそれぞれと電気的に接続されたp型電極3c,3d,3eと、n型電極4と、p型クラッド層5と、n型クラッド層6aと、p型クラッド層5とn型クラッド層6aの間に設けられた活性層10とから構成される。
【0071】
このような窒化物半導体レーザ素子において、活性層10が、図10の共振器方向に、光増幅領域10bと可飽和吸収領域10aと光増幅領域10cが順に構成される。このとき、可飽和吸収領域10aは、窒化物半導体レーザ素子の共振器方向における活性層10の長さ全体に対して、10%となるように構成する。又、p型クラッド層5の表面上において、p型電極3cが可飽和吸収領域10aに対応した位置に、p型電極3dが光増幅領域10bに対応した位置に、p型電極3eが光増幅領域10cに対応した位置に、それぞれ設けられる。
【0072】
このように構成される窒化物半導体レーザ素子に対して、端子1c,1d,1eそれぞれに、直流の動作電流に正弦波状の高周波電流を重畳した変調電流Iabs、I0a、I0bが与えられて、可飽和吸収領域10a及び光増幅領域10b,10cそれぞれに注入される。尚、本実施形態では、第4の実施形態と同様に、窒化物半導体レーザ素子に与える変調電流I0a、I0b、Iabsについて、ともに正弦波で変調するとともに位相を同相とし、その周波数を300MHzとした。更に、レーザの発振閾値が30mAであったため、端子1d,1eへの変調電流I0a、I0bの合計値を最大38mA、最小18mA、端子1cへの変調電流Iabsの値を最大1.0mA、最小0.5mAとした。
【0073】
このとき、第4の実施形態と同様、レーザ出射光の発振閾値の時間変化の位相を変調電流I0a、I0bの位相に対して逆相とすることができるため、光吸収効果及び光増幅効果それぞれの変動が激しくなる。よって、窒化物半導体レーザ素子の光出力の振動が激しくなり、レーザ出射光の出力が高くなるとともに、鋭いピーク波形を得ることができる。
【0074】
このような高出力となるパルス状のレーザ出射光が発生するとき、図10のように、光増幅領域10b,10cがそれぞれ、レーザ出射面11a,11bを有しているので、レーザ出射面11a,11bそれぞれからレーザ出射光が発生する。即ち、図10の窒化物半導体レーザ素子の両側より、レーザ出射光が発生する。このとき、レーザ出射面11aから発生されるレーザ出射光の出力状態をモニターすることで、レーザ出射面11bから発生されるレーザ出射光の出力状態を調整することができる。
【0075】
即ち、温度変化などの外部要因によるレーザ出射光の出力の揺らぎを、レーザ出射面11aから発生されるレーザ出射光の出力状態より認識し、この出力状態を用いて、レーザ出射面11bから発生されるレーザ出射光の出力状態が一定となるように、注入する変調電流Iabs、I0a、I0bを調整して、フィードバック制御を行うことができる。
【0076】
よって、従来のように、ビームスプリッタなどを用いて、出力されるレーザ出射光の一部をモニター用のレーザ出射光として分ける必要なく、素子単体で、例えば光ピックアップ用のレーザ出射光とモニター用のレーザ出射光とを得ることができる。そのため、窒化物半導体レーザ素子の構成を簡単なものとすることができるとともに、光ピックアップ用のレーザ出射光を100%利用することができる。
【0077】
尚、本実施形態において、光増幅領域に注入する変調電流と可飽和吸収領域に注入する変調電流とが同位相となるようにしたが、可飽和吸収領域に注入する変調電流の位相が、光増幅領域に注入する変調電流の位相に対して、±π/2以内でずれるものであっても構わない。又、光増幅領域及び可飽和吸収領域それぞれに注入する変調電流の波形についても、正弦波に限らず、矩形波などの正弦波以外の波形としても構わない。又、本実施形態において、窒化物半導体レーザ素子に与える変調電流の周波数を300MHzとしたが、300MHz以上であれば相対雑音強度を−130dB/Hz以下とすることができるので、300MHz以上であればその値を限るものではない。
【0078】
尚、本実施形態において、図10の構成の窒化物半導体レーザ素子の可飽和吸収領域7bの共振器方向における長さを、活性層7の共振器方向における長さの10%としたが、10%以外でも、50%以下であれば、半導体レーザ素子からの光出力の波形は変化せず、パルス状の発振が得られる。又、電極を3つ設けた場合について説明したが、電極の数はこれに限られるものでなく、3つ以上の電極を有する窒化物半導体レーザ素子としても構わない。
【0079】
尚、第1〜第5の実施形態において、変調電流Iabsの値を最大1.0mA、最小0.5mAとしたが、これに限るものではない。又、第1〜第4の実施形態における変調電流I0の値、及び、第5の実施形態における変調電流I0a、I0bの合計値がそれぞれ、最大38mA、最小18mAとなるようにしたが、これに限るものではなく、その最小値が半導体レーザ素子の光出力−電流特性において不連続な光出力変化が現れる閾値より小さく、且つ、その最大値がこの閾値より大きくなるようにすれば構わない。
【0080】
尚、第1〜第5の実施形態において使用される窒化物半導体レーザ素子は、その注入電流と光出力との関係において、ヒステリシス又は不連続な光出力変化が現れる半導体レーザ素子であればよく、上述のような特性の窒化物半導体レーザ素子に限られるものではない。
【0081】
【発明の効果】
本発明によると、窒化物半導体レーザ素子を注入電流対光出力の関係においてヒステリシス又は不連続な光出力変化が現れる状態とするとともに、可飽和吸収領域及び光増幅領域のそれぞれに変調電流が注入されるようにすることで、光吸収効果と光増幅効果との差を時間的に激しく変動させることができる。よって、光出力の振動を激しくすることができるため、高出力でパルス状となるレーザ出射光を得ることができる。又、このレーザ出射光は、可干渉性が低いため、雑音の低減を実現することができる。更に、窒化物半導体レーザ素子を注入電流対光出力の関係においてヒステリシス又は不連続な光出力変化が現れる状態とするため、素子の構成を決定する各パラメータの設計が容易となるため、その作製が容易となる。又、窒化物半導体レーザ素子に与える変調電流の周波数を300MHz以上と低い周波数から用いることができるので、変調電流を生成する変調回路への負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1〜第3の実施形態における窒化物半導体レーザ素子の構成を示す断面図。
【図2】第1の実施形態の窒化物半導体レーザ素子に与える変調電流の時間的変化を示す図。
【図3】窒化物半導体レーザ素子の電流−光出力特性を示す図。
【図4】第1の実施形態の窒化物半導体レーザ素子の光出力の時間変化を示す図。
【図5】第2の実施形態の窒化物半導体レーザ素子に与える変調電流の時間的変化を示す図。
【図6】第2の実施形態の窒化物半導体レーザ素子の光出力の時間変化を示す図。
【図7】第3の実施形態の窒化物半導体レーザ素子の光出力の時間変化を示す図。
【図8】変調電流における相対雑音強度の関係を示すグラフ。
【図9】第4の実施形態における窒化物半導体レーザ素子の構成を示す断面図。
【図10】第5の実施形態における窒化物半導体レーザ素子の構成を示す断面図。
【図11】従来の半導体レーザ素子の構成を示す断面図。
【図12】従来の半導体レーザ素子の構成を示す断面図。
【図13】従来の半導体レーザ素子の特性を示す図。
【図14】キャリア密度に対する半導体レーザ素子の利得特性を表すグラフ。
【符号の説明】
1a〜1e,2,2a,2b 端子
3a〜3e p型電極
4,4a,4b n型電極
5 p型クラッド層
6,6a n型クラッド層
7 活性層
7a 光増幅領域
7b 可飽和吸収領域
8 溝
10 活性層
10a 可飽和吸収領域
10b,10c 光増幅領域
11a,11b レーザ出射面
Claims (10)
- 注入される電流を増幅して光を発生する光増幅領域と光増幅領域で発生した光を吸収する可飽和吸収領域より成るとともにレーザ出射光を発生する活性層を有する窒化物半導体レーザ素子において、
前記光増幅領域と前記可飽和吸収領域とが、供給される電流の流れる方向に対して略垂直な方向に隣接し、
前記光増幅領域に注入される、直流の動作電流に高周波電流が重畳された第1変調電流が与えられる第1電極と、
前記可飽和吸収領域に注入される、直流の動作電流に高周波電流が重畳された第2変調電流が与えられる第2電極と、
を有し、
前記光増幅領域へ供給される電流値に対して出力するレーザ出射光の出力を表す電流−光出力特性がヒステリシス又は不連続性を有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。 - 第1導電型の第1クラッド層と、第2導電型の第2クラッド層と、前記第1及び第2クラッド層の間に形成されるとともに注入される電流に対してレーザ出射光を発生する活性層とを有する窒化物半導体レーザ素子において、
前記第1クラッド層及び前記活性層及び第2クラッド層が順に積層され、
前記活性層が、前記第1クラッド層及び前記活性層及び第2クラッド層が積層される方向に対して略垂直な方向に隣接した、注入される電流を増幅して光を発生する光増幅領域と、光増幅領域で発生した光を吸収する可飽和吸収領域とを備え、
前記光増幅領域に対応した位置で、且つ、前記第1クラッド層の表面に設けられ、前記光増幅領域に注入される、直流の動作電流に高周波電流が重畳された第1変調電流が与えられる第1電極と、
前記可飽和吸収領域に対応した位置で、且つ、前記第1クラッド層の表面に設けられ、前記可飽和吸収領域に注入される、直流の動作電流に高周波電流が重畳された第2変調電流が与えられる第2電極と、
を有し、
前記光増幅領域へ供給される電流値に対して出力するレーザ出射光の出力を表す電流−光出力特性がヒステリシス又は不連続性を有することを特徴とする窒化物半導体レーザ素子。 - 前記活性層において、前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域が複数設けられ、
前記第1電極が前記光増幅領域の数に応じて設けられるとともに、前記第2電極が前記可飽和吸収領域の数に応じて設けられることを特徴とする請求項2に記載の窒化物半導体レーザ素子。 - 前記可飽和吸収領域の周囲に、複数の前記光増幅領域が設けられ、
前記光増幅領域それぞれからレーザ出射光を発生することを特徴とする請求項3に記載の窒化物半導体レーザ素子。 - 前記光増幅領域に対応した位置で、且つ、前記第2クラッド層の表面に設けられ、前記光増幅領域に注入される第1変調電流が流出される第3電極と、
前記可飽和吸収領域に対応した位置で、且つ、前記第2クラッド層の表面に設けられ、前記可飽和吸収領域に注入される第2変調電流が流出される第4電極とを有し、
前記第2クラッド層において、前記光増幅領域と前記可飽和吸収領域の境界線上に当たる位置に、溝が設けられることを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子。 - 前記第2クラッド層の表面全体を覆うように設けられるとともに、前記光増幅領域に注入される第1変調電流と前記可飽和吸収領域に注入される第2変調電流とが、共通して流出される第5電極を有することを特徴とする請求項2〜請求項4のいずれかに記載の窒化物半導体レーザー素子。
- 注入される電流を増幅して光を発生する光増幅領域と光増幅領域で発生した光を吸収する可飽和吸収領域とより成るとともにレーザ出射光を発生する活性層を有し、前記光増幅領域へ供給される電流値に対して出力するレーザ出射光の出力を表す電流−光出力特性がヒステリシス又は不連続性を有するレーザ出射光を発生する窒化物半導体レーザ素子の駆動方法において、
前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域それぞれに、直流の動作電流に高周波電流が重畳される変調電流が注入されることを特徴とする窒化物半導体レーザ素子の駆動方法。 - 前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域それぞれに注入される前記変調電流が、前記光増幅領域及び前記可飽和吸収領域毎に独立に制御されて注入されることを特徴とする請求項7に記載の窒化物半導体レーザ素子の駆動方法。
- 前記可飽和吸収領域に注入される前記変調電流の位相が、前記光増幅領域に注入される前記変調電流の位相に対して、同相となるように調整されることを特徴する請求項7又は請求項8に記載の窒化物半導体レーザ素子の駆動方法。
- 前記変調電流が、300MHz以上の高周波電流が重畳されたものであることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載の窒化物半導体レーザ素子の駆動方法。
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