JP4006495B2 - 車両用シート構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、車両用シート構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、車両用のシートは、図6に示される如く、乗員の臀部を支持するシートクッション1と、乗員の背部を支持するシートバック2とによって構成されており、前記シートクッション1には、シートの骨格をなす強度部材としてのシートクッションフレーム3が内蔵されている。又、車両衝突時や急制動時等の衝撃発生時には、シートベルトによって拘束されている乗員がシートベルトの下部から前方へ滑り出す、いわゆるサブマリン現象が発生する虞があるため、従来においては、シートクッション1の前部に、車両幅方向ヘ延びるビームとしてのサブマリンパイプ4を内設し、該サブマリンパイプ4により乗員の腿の裏側を押え、臀部が前に滑り出すのを防ぐことにより、衝撃発生時における乗員の沈み込みを阻止しようとするものがあった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のような車両用のシートに対し、図7(A)に示される如く、チャイルドシート5を、シートバック2下部に配置されたロアアンカ6にコネクタ7を係止させることによって設置した場合、車両衝突時や急制動時等に、チャイルドシート5に対して前方へ過大な荷重Fが作用すると、図7(B)に示される如く、チャイルドシート5がロアアンカ6を支点として下方に回転する形となり、これにより、シートクッション1前部に下向きの荷重が加わり、サブマリンパイプ4が変形し、チャイルドシート5の移動量が大きくなってしまうことがあった。尚、図7中、8はシートクッション1が設置されるフロアである。
【0004】
このため、従来においては、ビームとしてのサブマリンパイプ4やシートクッションフレーム3の板厚・径を増加させたり、二重管化したり、或いは材質を高強度のものに変更したりする等の補強対策を施す必要があり、質量並びにコストの増加を招いていた。
【0005】
本発明は、斯かる実情に鑑み、ビームやシートクッションフレームの板厚・径を増加させたり、二重管化したり、或いは材質を高強度のものに変更したりする等の補強対策を施すことなく、シートクッションの剛性を高めることができ、質量並びにコストの増加を抑制し得、更に、シートクッション上にチャイルドシートを設置するような場合には、衝撃発生時におけるチャイルドシートの移動量を規制し得、チャイルドシート装着状態の安定化を図り得る車両用シート構造を提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、シートクッションフレームが内蔵されたシートクッションの前部に、車両幅方向ヘ延びるビームを内設してなり、且つチャイルドシートの後部から張り出すコネクタをシート側に配置されたロアアンカに係止させることによって前記シートクッション上にチャイルドシートを設置させる車両用シート構造において、
シートクッション前部への下方へ向かう荷重作用時におけるビームの変形時に他の部位としてのフロアとの接触によりビームの変形を規制する変形規制部を、ビームの下部に側面形状が末広がりとなってフロアに対峙する面が平面となる櫓状の脚部材を取り付けることにより形成したことを特徴とする車両用シート構造にかかるものである。
【0007】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0008】
車両衝突時や急制動時等に、シートクッション前部に下方へ向かう荷重が作用すると、ビームが変形するが、該ビームに形成された変形規制部である脚部材の下部がフロアと接触することにより、ビームの変形が規制される形となり、ビームやシートクッションフレームの板厚・径を増加させたり、二重管化したり、或いは材質を高強度のものに変更したりする等の補強対策を施すことなく、シートクッションの剛性を高めることが可能となり、これにより、シートクッション上にチャイルドシートを設置するような場合には、衝撃発生時におけるチャイルドシートの移動量を規制することが可能となる。
【0009】
しかも、ビームの下部に櫓状の脚部材を取り付けることにより、変形規制部を形成しているため、脚部材の配置及び形状自体の自由度が大きく、又、フロア側には変更を加える必要がないため、シートの車両への通常の組付性も阻害しない。
【0010】
又、本発明は、シートクッションフレームが内蔵されたシートクッションの前部に、車両幅方向ヘ延びるビームを内設してなり、且つチャイルドシートの後部から張り出すコネクタをシート側に配置されたロアアンカに係止させることによって前記シートクッション上にチャイルドシートを設置させる車両用シート構造において、
シートクッション前部への下方へ向かう荷重作用時におけるビームの変形時に他の部位としての、シートクッションの下部に設置される引出し式の物入れ或いはカップホルダの上板との接触によりビームの変形を規制する変形規制部を、ビームに下方へ突出する屈曲部を設けることにより形成したことを特徴とする車両用シート構造にかかるものである。
【0011】
前記車両用シート構造においては、ビームに下方へ突出する屈曲部を設けることにより、変形規制部を形成することができ、このようにすると、ビームの形状を変更するだけで、ビームの変形を規制可能となり、補強のための追加部品等も全く必要なく、質量並びにコストの増加が抑えられ、又、フロア側には変更を加える必要がないため、シートの車両への通常の組付性も阻害しない。
一方、シートクッションが設置されるフロアを他の部位とし、該フロアに設けた凸部を変形規制部とすることもでき、この場合、特に、ビーム側にも変形規制部を形成してあれば、フロア側並びにビーム側における双方の変形規制部の突出量を相互に小さくすることが可能となり、加工性がよく且つ剛性の確保にも有利となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0013】
図1(A),(B)及び図2は本発明を実施する形態の一例であって、図中、図6及び図7(A),(B)と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、基本的な構成は図6及び図7(A),(B)に示す従来のものと同様であるが、本図示例の特徴とするところは、図1(A),(B)及び図2に示す如く、シートクッション1前部への下方へ向かう荷重作用時におけるビームとしてのサブマリンパイプ4の変形時に他の部位としてのフロア8との接触によりサブマリンパイプ4の変形を規制する変形規制部9を、サブマリンパイプ4の下部に櫓状の脚部材9bを取り付けることにより形成した点にある。
【0014】
本図示例の場合、前記変形規制部9としての櫓状の脚部材9bは、図1及び図2に示す如く、側面形状が末広がりとなってフロア8に対峙する面が平面となるようにしてある。
【0015】
【0016】
次に、上記図示例の作動を説明する。
【0017】
車両衝突時や急制動時等に、シートクッション1前部に下方へ向かう荷重が作用すると、ビームとしてのサブマリンパイプ4が変形するが、該サブマリンパイプ4に形成された変形規制部9である脚部材9bの下部がフロア8と接触することにより、サブマリンパイプ4の変形が規制される形となり、ビームとしてのサブマリンパイプ4やシートクッションフレーム3の板厚・径を増加させたり、二重管化したり、或いは材質を高強度のものに変更したりする等の補強対策を施すことなく、シートクッション1の剛性を高めることが可能となり、これにより、図1(A)に示すように、シートクッション1上にチャイルドシート5を設置するような場合には、図1(B)に示すように、衝撃発生時におけるチャイルドシート5の移動量を規制することが可能となる。
【0018】
しかも、本図示例においては、サブマリンパイプ4の下部に櫓状の脚部材9bを取り付けることにより、変形規制部9を形成しているため、脚部材9bの配置及び形状自体の自由度が大きく、又、フロア8側には変更を加える必要がないため、シートの車両への通常の組付性も阻害しない。
【0019】
こうして、ビームとしてのサブマリンパイプ4やシートクッションフレーム3の板厚・径を増加させたり、二重管化したり、或いは材質を高強度のものに変更したりする等の補強対策を施すことなく、シートクッション1の剛性を高めることができ、質量並びにコストの増加を抑制し得、更に、シートクッション1上にチャイルドシート5を設置するような場合には、衝撃発生時におけるチャイルドシート5の移動量を規制し得、チャイルドシート5装着状態の安定化を図り得る。
【0020】
図3(A),(B)及び図4は本発明を実施する形態の他の例であって、図中、図6及び図7(A),(B)と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、シートクッション1前部への下方へ向かう荷重作用時におけるビームとしてのサブマリンパイプ4の変形時に他の部位との接触によりサブマリンパイプ4の変形を規制する変形規制部9を、サブマリンパイプ4の所要箇所に下方へ突出する屈曲部9aを設けることにより形成すると共に、シートクッション1の下部に設置される引出し式の物入れ11(或いはカップホルダ11’)の上板12を前記他の部位とし、前記ビームとしてのサブマリンパイプ4の変形を受けるようにしたものである。
【0021】
図3(A),(B)及び図4においては、車両衝突時や急制動時等に、シートクッション1前部に下方へ向かう荷重が作用し、ビームとしてのサブマリンパイプ4が変形した場合、該サブマリンパイプ4に形成された変形規制部9である屈曲部9aの下部が、他の部 位としてのシートクッション1の下部に設置される引出し式の物入れ11(或いはカップホルダ11’)の上板12と接触することにより、サブマリンパイプ4の変形が規制される形となり、前述と同様、ビームとしてのサブマリンパイプ4やシートクッションフレーム3の板厚・径を増加させたり、二重管化したり、或いは材質を高強度のものに変更したりする等の補強対策を施すことなく、シートクッション1の剛性を高めることが可能となり、これにより、図3(A)に示すように、シートクッション1上にチャイルドシート5を設置するような場合には、図3(B)に示すように、衝撃発生時におけるチャイルドシート5の移動量を規制することが可能となる。
【0022】
又、図3(A),(B)及び図4に示す如く、サブマリンパイプ4に下方へ突出する屈曲部9a(或いは図1(A),(B)及び図2に示すような脚部材9b)を設けることにより、変形規制部9を形成する場合、ビームとしてのサブマリンパイプ4の屈曲量が少なくて済み、加工費の増加が抑えられ、又、剛性も確保しやすくなる一方、シートクッション1の下部に設置される物入れ11(或いはカップホルダ11’)の上板12は、通常、板厚の厚い板金製或いは樹脂製の剛性が高い部材で形成されるため、特別な変形防止対策等を施す必要はなく、且つ形状を変更する必要もない。尚、前記変形規制部9としての屈曲部9aは、図5に示す如く、乗員の膝の間、或いは乗員同士の間等、サブマリン現象防止性能に影響の出ない乗員との位置関係を配慮した配置とすることが望ましい。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【0030】
尚、本発明の車両用シート構造は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0031】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明の車両用シート構造によれば、ビームやシートクッションフレームの板厚・径を増加させたり、二重管化したり、或いは材質を高強度のものに変更したりする等の補強対策を施すことなく、シートクッションの剛性を高めることができ、質量並びにコストの増加を抑制し得、更に、シートクッション上にチャイルドシートを設置するような場合には、衝撃発生時におけるチャイルドシートの移動量を規制し得、チャイルドシート装着状態の安定化を図り得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施する形態の一例の一部切断側面図であって、(A)は荷重付加前の状態を表わし、(B)は荷重付加後の状態を表わすものである。
【図2】 本発明を実施する形態の一例における脚部材が取り付けられたビームとしてのサブマリンパイプとシートクッションフレームとを表わす斜視図である。
【図3】 本発明を実施する形態の他の例の一部切断側面図であって、ビームとしてのサブマリンパイプに下方へ突出する屈曲部を設けることにより変形規制部を形成し、シートクッションの下部に設置される物入れ或いはカップホルダの上板を他の部位とした例の一部切断側面図であり、(A)は荷重付加前の状態を表わし、(B)は荷重付加後の状態を表わすものである。
【図4】 図3に示す他の例におけるビームとしてのサブマリンパイプとシートクッションフレームとを表わす斜視図である。
【図5】 図3に示す他の例における屈曲部の形成箇所を示す平面図である。
【図6】 従来の車両用シートの一例を、その外観と内部構造を部分的に透視して示した斜視図である。
【図7】 従来の車両用シートにチャイルドシートを設置した例の一部切断側面図であって、(A)は荷重付加前の状態を表わし、(B)は荷重付加後の状態を表わすものである。
【符号の説明】
1 シートクッション
3 シートクッションフレーム(他の部位)
4 サブマリンパイプ(ビーム)
5 チャイルドシート
8 フロア(他の部位)
9 変形規制部
9a 屈曲部
9b 脚部材
11 物入れ(他の部位)
11’ カップホルダ(他の部位)
12 上板
Claims (2)
- シートクッションフレームが内蔵されたシートクッションの前部に、車両幅方向ヘ延びるビームを内設してなり、且つチャイルドシートの後部から張り出すコネクタをシート側に配置されたロアアンカに係止させることによって前記シートクッション上にチャイルドシートを設置させる車両用シート構造において、
シートクッション前部への下方へ向かう荷重作用時におけるビームの変形時に他の部位としてのフロアとの接触によりビームの変形を規制する変形規制部を、ビームの下部に側面形状が末広がりとなってフロアに対峙する面が平面となる櫓状の脚部材を取り付けることにより形成したことを特徴とする車両用シート構造。 - シートクッションフレームが内蔵されたシートクッションの前部に、車両幅方向ヘ延びるビームを内設してなり、且つチャイルドシートの後部から張り出すコネクタをシート側に配置されたロアアンカに係止させることによって前記シートクッション上にチャイルドシートを設置させる車両用シート構造において、
シートクッション前部への下方へ向かう荷重作用時におけるビームの変形時に他の部位としての、シートクッションの下部に設置される引出し式の物入れ或いはカップホルダの上板との接触によりビームの変形を規制する変形規制部を、ビームに下方へ突出する屈曲部を設けることにより形成したことを特徴とする車両用シート構造。
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