JP4006330B2 - ステッピングモータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、円筒形状のステッピングモータの改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
回転軸を中心とする直径を小さくし、かつ、出力を高めたステッピングモータが特許文献1にて開示されている。この特許文献1に記載されたステッピングモータの分解斜視図を図6に、該ステッピングモータの組み立て後の軸中心の断面図を図7に、それぞれ示す。
【0003】
これらの図において、201は円周方向に4分割して異なる極に交互に着磁された永久磁石(マグネット)からなる円筒形状のロータ、202は前記ロータ201の軸方向に隣り合って配置された第1のコイル、203は同じく前記ロータ201の軸方向に隣り合って配置された第2のコイル、204は前記第1のコイル202により励磁される軟磁性材料からなる第1のステータ、205は前記第2のコイル203により励磁される軟磁性材料からなる第2のステータである。
【0004】
前記第1のステータ204は、ロータ201の外周面に隙間を空けて対向する第1の外側磁極部204A,204Bと、ロータ201の内周面に隙間を空けて対向する第1の内側磁極部204C,204Dを備えており、前記第2のステータ205は、ロータ201の外周面に隙間を空けて対向する第2の外側磁極部205A,205Bと、ロータ201の内周面に隙間を空けて対向する第2の内側磁極部205C,205Dを備えている。
【0005】
206は出力軸であり、前記ロータ201が固着され、前記第1のステータ204の軸受け部204Eと前記第2のステータ205の軸受け部205Eに回転可能に保持されている。207は非磁性材料からなる連結リングであり、前記第1のステータ204と前記第2のステータ205とを所定の間隔で保持するものである。
【0006】
上記構成において、第1のコイル202および第2のコイル203への通電方向を切り換えて、第1の外側磁極部204A,204Bと第1の内側磁極部204C,204D、第2の外側磁極部205A,205Bと第2の内側磁極部205C,205Dの極性を切り換え、前記ロータ201を回転させていくものである。
【0007】
このステッピングモータは、コイルに通電することで発生した磁束が外側磁極部から対向する内側磁極部へ、あるいは、内側磁極部から対向する外側磁極部へと流れ、外側磁極部と内側磁極部の間に位置するロータをなすマグネットに効率的に作用する。また、外側磁極部と内側磁極部との距離を円筒形状のマグネットの厚さ程度とすることができるため、外側磁極部と内側磁極部とで構成される磁気回路の抵抗を小さくすることができる。磁気回路の抵抗が小さいほど、少ない電流で多くの磁束を発生させることができ、出力の向上につながる。
【0008】
また、上記ステッピングモータを更に改良したものとして、内側磁極部を円筒形状で構成し、その内側磁極部の内径部に挿入されている出力軸を軟磁性材料で構成すると共にステータ(内側磁極部と外側磁極部よりなる)に取り付け、該出力軸を回転可能に保持する軸受けを非磁性材料で構成したものが、特許文献2にて開示されている。この提案によれば、出力軸も磁気回路として利用できるため、モータの出力があがる。また、その際のステータと出力軸の磁気による吸着は軸受けを非磁性材料で構成することで防いでいる。
【0009】
【特許文献1】
特開平09−331666号公報
【特許文献2】
特開平10−229670号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献2で開示されたモータは、第1のコイルへの通電により発生する磁束が軟磁性材料の出力軸を介して第2のコイルおよび第2の外側磁極部、第2の内側磁極部に影響を及ぼし、第2のコイルへの通電により発生する磁束が軟磁性材料の出力軸を介して第1のコイルおよび第1の外側磁極部、第1の内側磁極部に影響を及ぼして、回転を不安定なものにしてしまう。
【0011】
上記特許文献1および特許文献2に開示されているものは共にマグネットの内径とそれに対向する内側磁極部との間には所定の間隔が必要であり、それを製造時に管理することはコストアップを招くことになる。また、ステータの形状としても円筒形状の内側磁極部と外側磁極部が必要であり、それらを一体的に構成するのは部品製造上難しい。また、それらを別体で製造し、後で一体的に組み立てる場合は部品点数が多くなり、コストアップを招いてしまう。
【0012】
(発明の目的)
本発明の目的は、小型化を損なうことなく、よりコストが安く、高出力のステッピングモータを提供しようとするものである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、円周方向に等分割され、異なる極が交互に着磁された円筒形状の永久磁石からなるマグネットリングと、前記マグネットリングと同心で、かつ該マグネットリングを軸方向に挟む位置に配置された円筒形状の第1のコイルおよび第2のコイルと、前記マグネットリングの前記第1のコイル側の外周面に間隔をあけて対向し、前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、前記マグネットリングの前記第2のコイル側の外周面に間隔をあけて対向し、前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、前記第1のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第1軸と、前記第2のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第2軸とを有するステッピングモータとするものである。
また、本発明は、円周方向に等分割され、異なる極が交互に着磁された円筒形状の永久磁石からなるマグネットリングと、前記マグネットリングと同心で、かつ該マグネットリングを軸方向に挟む位置に配置された円筒形状の第1のコイルおよび第2のコイルと、前記マグネットリングの前記第1のコイル側の外周面に間隔をあけて対向し、前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、前記マグネットリングの前記第2のコイル側の外周面に間隔をあけて対向し、前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、前記第1のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第1軸と、前記第2のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第2軸とを有するステッピングモータであって、前記第1のコイルが卷き回され、前記第1軸を回転可能に支持する軸受け部を具備する非磁性材料からなる第1のボビンと、前記第2のコイルが卷き回され、前記第2軸を回転可能に支持する軸受け部を具備する非磁性材料からなる第2のボビンとを具備するステッピングモータとするものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図示の実施の形態に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1乃至図4は本発明の実施の第1の形態に係る図であり、図1はステッピングモータの分解斜視図、図2は図1のステッピングモータの組み立て後の軸方向の断面図である。
【0016】
これらの図において、1はロータを構成する円筒形状のマグネットリング(以下、単にマグネットと記す)であり、このロータであるマグネット1は、その外周表面を円周方向に等間隔にn分割(nは偶数であって、本実施の形態では4)してS極、N極が交互に着磁された着磁部1A,1B,1C,1Dを有している。そして、着磁部1Aと1Cの外周面がS極、着磁部1Bと1Dの外周面がN極である。このマグネット1は射出成形で形成されたプラスチックマグネットで構成されており、簡単な形状であるために小さく、薄く構成することが容易である。また、圧入によって組み立てを行っても割れは発生しない。
【0017】
2は円筒形状の第1のコイルであり、3は同じく円筒形状の第2のコイルであって、共にその中心部はマグネット1の中心部と一致しており、軸方向に並んで前記マグネット1を挟む位置に配置されている。この第1、第2のコイル2,3の外径は前記マグネット1の外径とほぼ等しい。
【0018】
8は第1のステータであり、9は第2のステータであって、共に軟磁性材料で構成され、円筒形状の外筒部がある。前記第1のステータ8には、前記マグネット1の外周面に所定の隙間をもって対向する櫛歯形状の第1外側磁極部8A,8Bが形成されている。この第1外側磁極部8A,8Bは、円筒形状の第1のステータ8の外筒部の先端を切り欠くことで周方向に複数に分割され、それぞれが軸方向に延出した櫛歯形状の磁極が形成されている。この第1外側磁極部8A,8Bは360/(n/2)度、すなわち180度ずれて形成されている。前記第2のステータ9には、同じく前記マグネット1の外周面に所定の隙間をもって対向する櫛歯形状の第2外側磁極部9A,9Bが形成されている。この第2外側磁極部9A,9Bは、円筒形状の第2のステータ9の外筒部の先端を切り欠くことで周方向に複数に分割され、それぞれが軸方向に延出した櫛歯形状の磁極が形成されている。この第2外側磁極部9A,9Bも360/(n/2)度、すなわち180度ずれて形成されている。
【0019】
前記ステータ8の第1外側磁極部8A,8Bおよび前記第2のステータ9の第2外側磁極部9A,9Bは、共に切欠き穴と軸と平行方向に延出する歯により構成されている。この構成により、ステッピングモータの直径を最小限にしつつ、磁極部の形成が可能となる。つまり、もし外側磁極部を半径方向に延びる凹凸で形成するとその分該モータの直径は大きくなってしまうのであるが、本実施の形態では、切欠き穴と軸と平行方向に延出する歯により外側磁極部を構成しているので、該モータの直径を最小限に抑えることができる。
【0020】
前記第1のステータ8の第1外側磁極部8A,8Bと前記第2のステータ9の第2外側磁極部9A,9Bとは同一形状であって、互いの櫛歯形状の磁極部の先端が対向するように向かい合って配置される。また、前記第1のステータ8と前記第2のステータ9とは互いの櫛歯形状の磁極部の位相が180/n度、すなわち45°ずれて配置されている。そして、前記第1のステータ8は第1のコイル2によって励磁され、前記第2のステータ9は第2のコイル3によって励磁される。
【0021】
10は出力軸となる軟磁性材料からなる第1軸であり、この第1軸10は前記第1のコイル2の内径部に挿入され、かつ前記マグネット1の内径部に固定されている。そして、マグネット1に対向している第1のステータ8の第1外側磁極部8A,8Bと対向して該マグネット1を挟む位置に、第1内側磁極部10Aを形成してある。この第1軸10の第1内側磁極部10Aは第1のコイル2によって第1のステータ8の第1外側磁極部8A,8Bとは反対の極に励磁される。
【0022】
前記第1軸10の第1内側磁極部10Aの軸と垂直方向の断面形状は、図3に示すように円柱形状である。
【0023】
11は出力軸となる軟磁性材料からなる第2軸であり、この第2軸11は前記第2のコイル3の内径部に挿入され、かつマグネット1の内径部に固定されている。そして、マグネット1に対向している第2のステータ9の第2外側磁極部9A,9Bと対向して該マグネット1を挟む位置に、第2の内側磁極部11Aを形成してある。前記第1軸10の第1内側磁極部10A側の端面とこの第2軸11の第2内側磁極部11A側の端面とは、図2に示すように、向き合って配置されており、直接接触しない。
【0024】
前記第2軸11の第2内側磁極部11Aは、第2のコイル3によって第2のステータ9の第2外側磁極部9A,9Bとは反対の極に励磁される。また、第2軸11の第2内側磁極部11Aの軸と垂直方向の断面形状は、第1軸10の第1内側磁極部10Aと同様に円柱形状である。
【0025】
前記第1軸10と前記第2軸11とは、マグネット1を介して固定されているが、該マグネット1は軟磁性材料ではないため、第1のコイル2により第1軸10を励磁したとしても、それにより第2軸11が励磁されることはない。また逆に、第2のコイル3により第2軸11を励磁したとしても、それにより第1軸10が励磁されることはない。
【0026】
前記第1軸10と前記第2軸11とは、直接接触せずかつ軟磁性体を介して接続する構造、別言すれば直接接触しないもしくは軟磁性材料を介して接続しない構造にして、これら第1軸10と第2軸11との間で磁束の行き来がないように構成されている。また、第1軸10と第2軸11にはお互いに対向する第1内側磁極部10Aと第2内側磁極部11Aの端面に、凹部10B,11Bが形成され、これら第1軸10と第2軸11の間の磁気抵抗を大きくするようになっている。しかもこの場合でも、第1軸10の第1内側磁極部10Aとステータ8の第1外側磁極部8A,8Bとの対向面積は小さくならず、第1軸10の第1内側磁極部10Aとステータ8の第1外側磁極部8A,8Bとの磁気抵抗が大きくならないようになっている。同じく第2軸11の第2内側磁極部11Aとステータ9の第2外側磁極部9A,9Bとの対向面積は小さくならず、第2軸11の第2内側磁極部11Aとステータ9の第2外側磁極部9A,9Bとの磁気抵抗が大きくならないようになっている。
【0027】
上記凹部10B,11Bの形状は、磁気抵抗の条件(磁気抵抗を大きくすること)を確保するためには円錐形状が望ましく、本実施の形態では円錐形状になっている。この円錐形状の凹部10B,11Bに接着剤を注入して、マグネット1と第1軸10と第2軸11を固定する方法をとると接着剤の量も十分に使用できるので、固定強度が高まる。また、円錐形状であるので、接着剤が流れ出し、例えばステータやコイルに接触し、不良となることも防ぐことができ、組み立てが容易になる。
【0028】
12は非磁性材料からなる第1軸受けであり、前記第1のステータ8に固定され、第1軸10を回転可能に保持している。13は同じく非磁性材料からなる第2軸受けであり、前記第2のステータ9に固定され、第2軸11を回転可能に保持している。これら第1軸受け12、第2軸受け13は共に非磁性材料であるので、第1のステータ8と第1軸10との間に発生する磁力による吸着および第2のステータ9と第2軸11との間に発生する磁力による吸着を防ぎ、回転特性および耐久性を高めることができる。
【0029】
なお、前記第1軸受け12、第2軸受け13は軟磁性材料であってもかまわない。その場合は磁気回路の磁気抵抗が小さくなるので発生するトルク自体は大きくなる。もちろん第1軸受け12と第1軸10との間或いは第2軸受け13と第2軸11との間では吸着力が発生し摩擦力によるトルク損失が生じたり、摺動面の耐久性を損なう可能性はあるが、第1軸受け12或いは第1軸10或いは第2軸受け13或いは第2軸11の表面に潤滑材の塗布、潤滑塗装(フッ素系潤滑塗装・グラファイト系潤滑塗装・二流化モリブデン系潤滑塗装)、潤滑メッキ(例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を含有した無電解ニッケルメッキやテフロン(登録商標)潤滑無電解ニッケルメッキなど)等を施すことにより摺動面の摩擦によるトルク損失を抑制したり、摺動面の耐久性を損なうことを防いだりでき、出力トルクの大きいモータとすることが出来る。
【0030】
前記第1のステータ8の外筒部と第1軸10の間であって、第1軸受け12を介したこれらの連結部近傍に、第1のコイル2を配置し、第1のステータ8の第1外側磁極部8A,8Bと第1軸10の第1内側磁極部10Aとの間に、マグネット1の一端側(前記第1のコイル2側)を挟む。また、第2のステータ9の外筒部と第2軸11の間であって、第2軸受け13を介したこれらの連結部近傍に、第2のコイル3を配置し、第2のステータ9の第2外側磁極部9A,9Bと第2軸11の第2内側磁極部11Aとの間に、マグネット1の他端側(前記第2のコイル3側)を挟む。つまり、外側磁極部8A,8B,9A,9Bがマグネット1の外周表面と対向し、内側磁極部10A,10Bがマグネット1の内周表面に位置し、そして、前記第1の外側磁極部8A,8Bと第1の内側磁極部10Aが対向し、第2の外側磁極部9A,9Bと第2の内側磁極部10Bが対向している。
【0031】
14は円筒形状の連結リングであり、この連結リング14の内側の一端側には溝14A,14Bが形成され、他端側には溝14C,14Dが形成されており、溝14C,14Dは溝14A,14Bに対して位相が180/n度、すなわち45度位相がずれている。これら溝14A,14Bと溝14C,14Dとは軸方向にも所定距離を空けて形成されており、溝14A,14Bに前記第1の外側磁極部8A,8Bが嵌合され、溝14C,14Dに前記第2の外側磁極部9A,9Bが嵌合され、接着剤で固定される。
【0032】
上記の連結リング14に、上記のようにして第1のステータ8と第2のステータ9を固定することで、これら第1のステータ8と第2のステータ9を所望の位置および位相で配置することができる。また、連結リング14は非磁性材料で構成されており、第1のステータ8と第2のステータ9との間の磁気回路を分断でき、お互いの磁極の影響が出にくい構成となっている。
【0033】
本実施の第1の形態では、マグネット1の内径部は第1軸10や第2軸11によって埋められているので、上記の特許文献1や特許文献2で提案されているものに比べ、マグネットの機械的強度がおおきく、また、第1軸10や第2軸11はマグネットの内径部に現れるS極、N極との間の磁気抵抗を小さくするいわゆるバックメタルとして作用するので、磁気回路のパーミアンス係数は高く設定されることになり、高温下の環境で使用されても減磁による磁気的劣化も少ない。
【0034】
前記第1のステータ8と第2のステータ9は一端面が開口した円筒形状であり、該端面の筒部分に切り欠きを設けたという単純な形状であるから、製造が容易である。もしも従来例で述べた特許文献1や特許文献2に示す構造であると、第1のステータあるいは第2のステータはそれぞれ内側磁極部を外側磁極部と一体的に構成しなければならず、内側磁極部と外側磁極部を同一の部品で構成する場合は製造が難しい。例えばメタルインジェクションモールドにより成型するのはコストが高くなり、プレスにより一体的に製造するのは外側磁極部を構成する部品を製造するのに比較し、部品が細かくなればなるほど困難になる。また、内側磁極部と外側磁極部を別々に製造してからカシメや溶接あるいは接着等により一体的に固着する場合はコストが高くなる。
【0035】
すなわち、特許文献1や特許文献2に開示された従来のモータは、コイル2個、マグネット1個、出力軸1個、第1ステータ(外側磁極部を構成する部品と内側磁極部を構成する部品の2部品)、第2ステータ(外側磁極部を構成する部品と内側磁極部を構成する部品の2部品)、連結リングの、合計9部品が最低限必要であったのに対し、本実施の形態では、コイル2個、マグネット1個、出力軸2個、第1ステータ(外側磁極部を構成する部品)、第2ステータ(外側磁極部を構成する部品)、連結リングの、合計8部品で構成することが可能となり、コストが安くなり、製造もし易くなる。
【0036】
さらに、特許文献1や特許文献2で提案されているモータは、マグネットの外径部と外側磁極部の隙間を精度良く保って組み立てる必要があるほかに、マグネットの内径部に対向する位置にある内側磁極部はマグネットに対し所定の隙間を設けて配置する必要があり、部品精度のばらつきや組み立て精度が悪い事によりこの隙間を確保できず、内側磁極部がマグネットに接触してしまうなどの不良が生じる可能性が高いのに対し、本実施の形態では、マグネットの外径部のみの隙間を管理するだけでよいので組み立てが容易になる。
【0037】
更には、上記特許文献1や特許文献2では、内側磁極部はマグネットと出力軸をつなぐ部分に接触しないように構成しなければならず、これにより内側磁極部とマグネットとが対向する軸方向の長さ(図7のL1)は十分に長く出来ないのに対し、本実施の形態では、図2のL2で示すように、内側磁極部とマグネットとが対向する軸方向の長さを容易に長く確保でき、これにより外側磁極部とマグネットを有効に利用することができモータの出力を高めることができる。
【0038】
図4は、図2のA−A断面およびB−B断面を示す図であり、これを用いてステッピングモータの回転駆動について説明する。
【0039】
図4(a)と(e)とが同時点の断面図であり、図4(b)と(f)とが同時点の断面図であり、図4(c)と(g)とが同時点の断面図であり、図4(d)と(h)とが同時点の断面図である。
【0040】
図4(a)と(e)の状態から、第1のコイル2および第2のコイル3に通電して、第1のステータ8の外側磁極部8A,8BをN極に励磁し、第2のステータ9の外側磁極部9A,9BをS極に励磁すると、ロータであるマグネット1は反時計方向に45度回転し、図4(b)と(f)に示す状態になる。次に、第1のコイル2への通電を反転させ、第1のステータ8の外側磁極部8A,8BをS極に励磁し、第2のステータ9の外側磁極部9A,9BをS極に励磁すると、ロータであるマグネット1は更に反時計方向に45度回転し、図4(c)と(g)に示す状態になる。次に、第2のコイル3への通電を反転させ、第1のステータ8の外側磁極部8A,8BをS極に励磁し、第2のステータ9の外側磁極部9A,9BをN極に励磁すると、ロータであるマグネット1は更に反時計方向に45度回転し、図4(d)と(h)に示す状態になる。
【0041】
以後、このように第1のコイル2および第2のコイル3への通電方向を順次切り換えていくことによって、ロータであるマグネット1は通電位相に応じた位置へと順に回転する。
【0042】
また、マグネット1の外周面を周方向に分割してなる着磁層を軸方向に二つ設け、第1のステータ8と対向する一方の着磁層と、第2のステータ9と対向する他方の着磁層の位相を互いに180/n度ずらし、第1のステータ8と第2のステータ9の位相を同じものとしてもよい。
【0043】
上記の実施の第1の形態では、上記特許文献1や特許文献2で提案されているものと同様に、コイルに通電により発生する磁束を直接マグネットに作用させ、ステッピングモータを高出力なものにするとともに、非常に小型化可能なものとしている。つまり、このモータの径はマグネットの径にステータの磁極を対向させるだけの大きさがあればよく、また、ステッピングモータの長さはマグネットの長さに第1のコイルと第2のコイルの長さを加えただけの長さがあれば良いことになる。このため、ステッピングモータの大きさは、マグネットおよびコイルの径と長さによって決まるもので、マグネットおよびコイルの径と長さをそれぞれ非常に小さくすればステッピングモータを超小型にすることができるものである。
【0044】
この時、マグネットおよびコイルの径と長さをそれぞれ非常に小さくすると、ステッピングモータとしての精度を維持する事が難しくなるが、これはマグネットを中空の円筒形状に形成し、この中空の円筒形状に形成されたマグネットの外周面および内周面に第1、第2のステータの外側磁極部および内側磁極部を対向させる単純な構造によりステッピングモータの精度の問題を解決している。さらに上記の説明で述べたように、低コストで高出力なものに出来る。
【0045】
(実施の第2の形態)
図5は本発明の実施の第2の形態に係るステッピングモータを示す断面図であり、上記実施の第1の形態と同じ構成要素については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0046】
同図において、15は第1のボビンであり、第1のコイル2が卷き回されている。この第1のボビン15は非磁性材料で非導電材料からなり、第1のコイル2と第1のステータ8が不用意に導通しないようにしている。この第1のボビン15は第1のステータ8に固定され、孔15Aで第1軸10を回転可能に保持し、上記実施の第1の形態における第1軸受け12と同様な機能を果たす。
【0047】
16は第2のボビンであり、第2のコイル3が卷き回されている。この第2のボビン16も非磁性材料で非導電材料からなり、第2のコイル3と第2のステータ9が不用意に導通しないようにしている。この第2のボビン16は第2のステータ9に固定され、孔16Aで第2軸11を回転可能に保持し、上記実施の第1の形態における第2軸受け13と同様な機能を果たす。
【0048】
本実施の第2の形態では、第1コイル2と第1のステータ8との不用意な導通を防ぐと同時に、第1ステータ8と第1軸10の吸着を防ぐ部材を一つの部品、すなわち第1のボビン15で構成したので、組み立てが容易でかつコストの安く、安定した動作を行うことができる構成とすることができる。同じく、第2コイル3と第2のステータ9との不用意な導通を防ぐと同時に、第2ステータ9と第2軸11の吸着を防ぐ部材を一つの部品、すなわち第2のボビン16で構成したので、組み立てが容易でかつコストの安く、安定した動作を行うことができる構成とすることができる。
【0049】
以上の実施の第1および第2の形態によれば、第1外側磁極部8A,8Bと対向し、マグネット1の内周面に固定された第1軸10の一部分を第1内側磁極部10Aと呼ぶとすると、第1のコイル2により発生する磁束は、マグネット1の外周面に対向する第1外側磁極部8A,8Bとマグネット1の内周面に固定された前記第1内側磁極部10Aとの間を通過するので、効果的にマグネット1に作用する。その際に、マグネット1の内周面に対向する前記第1内側磁極部10Aはマグネット1の内周面との間に空隙を設ける必要がないので、上記引用文献1や引用文献2に比べ、外側磁極部8A,8Bと内側磁極部10Aの距離を狭くでき、磁気抵抗を小さくすることができる、出力を高めることができる。
【0050】
同じく第1外側磁極部9A,9Bと対向し、マグネット1の内周面に固定された第2軸11の一部分を第2内側磁極部11Aと呼ぶとすると、第2のコイル2により発生する磁束は、マグネット1の外周面に対向する第2外側磁極部9A,9Bとマグネット1の内周面に固定された前記第1内側磁極部11Aとの間を通過するので、効果的にマグネット1に作用する。その際に、マグネット1の内周面に対向する前記第2内側磁極部11Aはマグネット1の内周面との間に空隙を設ける必要がないので、上記引用文献1や引用文献2に比べ、外側磁極部9A,9Bと内側磁極部11Aの距離を狭くでき、磁気抵抗を小さくすることができるので、出力を高めることができる。
【0051】
また、前記第1内側磁極部10Aを第1軸10で構成し、前記第2内側磁極部11Aを第2軸11で構成してあるので、上記引用文献1や引用文献2に示される外側磁極部と内側磁極部を接続あるいは一体的に製造する場合に比べ、容易に製造でき、コストが安くなる。
【0052】
さらに、マグネット1は内径部に第1軸10および第2軸11が固定されるので、強度において優れたものとなる。
【0053】
つまり、構成する部品の数が少なく、かつ、製造の容易な部品で構成できるモータとすることができる。また、内側磁極部10A,11Aを長く構成できるので、外側磁極部8A,8B,9A,9Bとマグネット1を有効に利用することができ、ステッピングモータの出力を高めることができる。さらに、マグネット1の外径部と外側磁極部8A,8B,9A,9Bとの隙間を管理するだけでよいので、組み立てが容易になる。又、マグネット1の機械的強度が増し、バックメタルとして第1軸10や第2軸11は作用するので、マグネットの磁気的劣化も少ない。
【0054】
更に、第1コイル2と第2コイル3は、マグネット1とほぼ同径で、かつ該マグネット1を軸方向に関して挟む位置に配置されているため、ステッピングモータの外径寸法を小さくしている。
【0055】
最後に、本発明の実施の態様を以下に列挙する。
【0056】
(実施態様1) 円周方向に等分割され、異なる極が交互に着磁された円筒形状の永久磁石からなるマグネットリングと、前記マグネットリングと同心で、かつ該マグネットリングを軸方向に挟む位置に配置された円筒形状の第1コイルと第2コイルと、前記マグネットリングの前記第1のコイル側の外周面に所定の間隔をもって対向し、前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、前記マグネットリングの前記第2のコイル側の外周面に所定の間隔をもって対向し、前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、前記第1のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第1軸と、前記第2のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第2軸とを有するステッピングモータであって、前記第1のコイルが卷き回され、前記第1軸を回転可能に嵌合する軸受け部を具備する非磁性材料からなる第1のボビンと、前記第2のコイルが卷き回され、前記第2軸を回転可能に嵌合する軸受け部を具備する非磁性材料からなる第2のボビンを具備することを特徴とするステッピングモータ。
【0057】
(実施態様2) 前記第1軸は、出力軸であることを特徴とする実施態様1に記載のステッピングモータ。
【0058】
(実施態様3) 前記第1軸は、前記第1外側磁極部に固定される第1軸受けにより回転可能に保持され、前記第2軸は、前記第2外側磁極部に固定される第2軸受けにより回転可能に保持されることを特徴とする実施態様1又2に記載のステッピングモータ。
【0059】
(実施態様4) 前記第1および第2のボビンは、前記第1軸受けおよび第2軸受けを兼用することを特徴とする実施態様1乃至3に記載のステッピングモータ。
【0060】
(実施態様5) 前記第1軸は、前記第1外側磁極部に固定され軟磁性材料からなる第1軸受けにより回転可能に保持され、前記第2軸は、前記第2外側磁極部に固定され軟磁性材料からなる第2軸受けにより回転可能に保持され、前記第1軸或いは前記第1軸受け或いは前記第2軸或いは前記第2軸受けのいずれかに摺動面に潤滑塗装或いは潤滑メッキ或いは摺動部に潤滑材の塗布がなされていることを特徴とする実施態様1又2に記載のステッピングモータ。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、小型化を損なうことなく、よりコストが安く、高出力のステッピングモータを提供できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1の形態に係るステッピングモータを示す分解斜視図である。
【図2】図1に示すステッピングモータの組み立て完成状態の断面図である。
【図3】図2に示すステッピングモータのロータの軸と垂直な方向より見た断面図である。
【図4】本発明の実施の第1の形態に係るステッピングモータのロータの回転動作説明図である。
【図5】本発明の実施の第2の形態に係るステッピングモータを示す分解斜視図である。
【図6】従来のステッピングモータを示す分解斜視図である。
【図7】図6のステッピングモータの組み立て完成状態の断面図である。
【符号の説明】
1 マグネット(マグネットリング)
2 第1のコイル
3 第2のコイル
8 第1のステータ
8A,8B 第1外側磁極部(第1の外側磁極部)
9 第2のステータ
9A,9B 第2外側磁極部(第2の外側磁極部)
10 第1軸
10A 第1内側磁極部(第1の内側磁極部)
11 第2軸
11A 第2内側磁極部(第2の内側磁極部)
12 第1軸受け
13 第2軸受け
14 連結リング
15 第1のボビン
16 第2のボビン
Claims (4)
- 円周方向に等分割され、異なる極が交互に着磁された円筒形状の永久磁石からなるマグネットリングと、
前記マグネットリングと同心で、かつ該マグネットリングを軸方向に挟む位置に配置された円筒形状の第1のコイルおよび第2のコイルと、
前記マグネットリングの前記第1のコイル側の外周面に間隔をあけて対向し、前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、
前記マグネットリングの前記第2のコイル側の外周面に間隔をあけて対向し、前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、
前記第1のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第1軸と、
前記第2のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第2軸とを有することを特徴とするステッピングモータ。 - 円周方向に等分割され、異なる極が交互に着磁された円筒形状の永久磁石からなるマグネットリングと、
前記マグネットリングと同心で、かつ該マグネットリングを軸方向に挟む位置に配置された円筒形状の第1のコイルおよび第2のコイルと、
前記マグネットリングの前記第1のコイル側の外周面に間隔をあけて対向し、前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、
前記マグネットリングの前記第2のコイル側の外周面に間隔をあけて対向し、前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、
前記第1のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第1軸と、
前記第2のコイルの内径部に挿入され、かつ前記マグネットリングの内径部に固定された軟磁性材料からなる第2軸とを有するステッピングモータであって、
前記第1のコイルが卷き回され、前記第1軸を回転可能に支持する軸受け部を具備する非磁性材料からなる第1のボビンと、
前記第2のコイルが卷き回され、前記第2軸を回転可能に支持する軸受け部を具備する非磁性材料からなる第2のボビンとを具備することを特徴とするステッピングモータ。 - 前記第1軸は、出力軸であることを特徴とする請求項1または2に記載のステッピングモータ。
- 前記第1軸は、前記第1の外側磁極部に固定される第1の軸受けにより回転可能に支持され、前記第2軸は、前記第2の外側磁極部に固定される第2の軸受けにより回転可能に支持されることを特徴とする請求項1に記載のステッピングモータ。
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