本発明は、2相ステッピングモータに関するものである。
回転軸を中心とする直径を小さくし、かつ、出力を高めたステッピングモータが本願出願人より提案されている(例えば、特許文献1)。図16にこの特許文献1に記載されたステッピングモータの分解斜視図を、図17にそのステッピングモータの軸方向断面図を、それぞれ示す。
これらの図において、201は円周方向に4分割して異なる極に交互に着磁された永久磁石からなるロータ、202はロータの軸方向に隣り合って配置された第1のコイル、203はロータの軸方向に隣り合って配置された第2のコイル、204は第1のコイルにより励磁され軟磁性材料からなる第1のステータ、205は第2のコイルにより励磁され軟磁性材料からなる第2のステータである。第1のステータ204はロータ201の外周面に隙間をあけて対向する第1の外側磁極204A,204B、ロータ201の内周面に隙間をあけて対向する第1の内側磁極204C,204Dを備え、第2のステータ205はロータ201の外周面に隙間をあけて対向する第2の外側磁極205A,205B、ロータ201の内周面に隙間をあけて対向する第2の内側磁極205C, 205Dを備えている。206は出力軸でロータ201が固着され、第1のステータ204の軸受け部204Eと第2のステータ205の軸受け部205Eに回転可能に保持されている。207は連結リングで非磁性材料からなり、第1のステータ204と前記第2のステータ205とを所定の間隔で保持するものである。
第1のコイル202、第2のコイル203への通電方向を切り換えて第1の外側磁極204A,204B、第1の内側磁極204C,204D、第2の外側磁極205A,205B、第2の内側磁極205C,205Dの極性を切り換えてロータを回転させていくものである。
上記構成のステッピングモータは、コイルに通電することで発生した磁束が外側磁極から対向する内側磁極へ、あるいは、内側磁極から対向する外側磁極へと流れ、外側磁極と内側磁極の間に位置するマグネットに効率的に作用する。また、外側磁極と内側磁極との距離を円筒形状のマグネットの厚さ程度とすることができるため、外側磁極と内側磁極とで構成される磁気回路の抵抗を小さくすることができる。磁気回路の抵抗が小さいほど、少ない電流で多くの磁束を発生させることができ、出力が向上する。
特開平9−331666号公報
図17のA−A断面を図18(a)に、B−B断面を図18(b)に、それぞれ示す。図18(a),(b)に示したモータは、第1のコイル202、第2のコイル203のどちらにも通電を行っていない状態である。図18(a),(b)に示した状態からコイルへの通電を行ってロータ201を動かすと、ロータ201とそれぞれの磁極との間に作用する吸引力が変化してコギングが生じる。このコギングによる影響が大きいと、各コイルに通電を行ってぞれぞれの磁極を励磁しても、モータを起動できなかったり、滑らかな回転が行えないという問題が生じてしまう。つまり、図17に示すモータのように互いに対向する外側磁極と内側磁極との距離を短くして磁気回路の抵抗を小さくしても、モータの出力を向上させるためにはコギングによる影響を小さく抑える必要があった。
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、外周面が周方向にN分割されて異なる極に交互に着磁された円筒形状のマグネットと、該マグネットの軸方向両側にそれぞれ配置される第1のコイル及び第2のコイルと、前記マグネットの外周面に対向し、前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、前記マグネットの内周面に対向し、前記第1のコイルにより励磁される第1の内側磁極部と、前記第1の外側磁極部とは異なる部位で前記マグネットの外周面に対向し、前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、前記第1の内側磁極部とは異なる部位で前記マグネットの内周面に対向し、前記第2のコイルにより励磁される第2の内側磁極部とを有するステッピングモータにおいて、前記第1の外側磁極部が前記マグネットの外周面に所定の角度θ1の範囲にて対向する第1の歯と前記マグネットの外周面に所定の角度θ2の範囲にて対向する第2の歯を具備し、前記第2の外側磁極部が前記マグネットの外周面に前記角度θ1の範囲にて対向する第3の歯と前記マグネットの外周面に前記角度θ2の範囲にて対向する第4の歯を具備し、前記角度θ1を前記マグネットに着磁された1極あたりの角度よりも小さい角度に設定し、前記角度θ2を前記マグネットに着磁された1極あたりの角度よりも大きい角度に設定し、前記角度θ1とθ2の関係を「θ1<θ2」に設定するとともに、前記第1の外側磁極部に対する前記第2の外側磁極部の前記マグネットを基準にした位相角αを「α=(720/N)±(180/N)」に設定するステッピングモータとするものである。
また、請求項2に記載の発明は、外周面が周方向にN分割されて異なる極に交互に着磁された円筒形状のマグネットと、該マグネットの軸方向両側にそれぞれ配置される第1のコイル及び第2のコイルと、前記マグネットの外周面に対向し、前記第1のコイルにより励磁される第1の外側磁極部と、前記第1の外側磁極部とは異なる部位で前記マグネットの外周面に対向し、前記第2のコイルにより励磁される第2の外側磁極部と、前記第1のコイルの内径部に挿入された状態で前記第1の外側磁極部に固定される軟磁性材料からなる第1の軸受けと、前記第2のコイルの内径部に挿入された状態で前記第2の外側磁極部に固定される軟磁性材料からなる第2の軸受けと、前記第1の軸受けと回転可能に嵌合しかつ前記マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる第1のロータ軸と、前記第2の軸受けと回転可能に嵌合しかつ前記マグネットの内径部に固定される軟磁性材料からなる第2のロータ軸とを有するステッピングモータにおいて、前記第1の外側磁極部が前記マグネットの外周面に所定の角度θ1の範囲にて対向する第1の歯と前記マグネットの外周面に所定の角度θ2の範囲にて対向する第2の歯を具備し、前記第2の外側磁極部が前記マグネットの外周面に角度θ1の範囲にて対向する第3の歯と前記マグネットの外周面に角度θ2の範囲にて対向する第4の歯を具備し、前記角度θ1を前記マグネットに着磁された1極あたりの角度によりも小さい角度に設定し、前記角度θ2を前記マグネットに着磁された1極あたりの角度よりも大きい角度に設定し、前記角度θ1とθ2の関係を「θ1<θ2」に設定するとともに、前記第1の外側磁極部に対する前記第2の外側磁極部の前記マグネットを基準にした位相角αを「α=(720/N)±(180/N)」に設定するステッピングモータとするものである。
本発明によれば、コギングトルクを最小に抑え、出力を向上させることができるとともに、回転精度も向上させることのできるステッピングモータを提供できるものである。
以下の実施例1および実施例2に示す通りである。
図1〜図9は本発明の実施例1に係るステッピングモータを示す図であり、そのうち、図1はステッピングモータの分解斜視図、図2は図1のステッピングモータの組み立て後の軸方向断面図,図3〜図6は図1のステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を各動作段階毎に示す断面図である。
図1〜図6において、1はロータを構成する円筒形状のマグネットであり、該マグネット1は、その外周表面を円周方向に等間隔にN分割(Nは偶数であって本実施例ではN=4)してS極、N極が交互に着磁された着磁部1a,1b,1c,1dを有している。図3等に示すように着磁部1aと1cがS極、1bと1dがN極である。マグネット1は射出成形で形成したプラスチックマグネットで構成されており、簡単な形状であるために小さく、薄く構成することが容易である。また、圧入によって組み立てを行っても割れは発生しない。
2は出力軸となるロータ軸であり、該ロータ軸2はマグネット1の内径の中心部に圧入や接着等により固定されている。3は円筒形状の第1コイルであり、該第1コイル3は第1ボビン4に巻き付けられている。第1コイル3及び第1ボビン4はその外径が後述のマグネット7の外径とほぼ同じ寸法となっている。5は円筒形状の第2コイルであり、該第2コイル5は第2ボビン6に巻き付けられている。第2コイル4及び第2ボビン6はその外径が後述のマグネット7の外径とほぼ同じ寸法となっている。第1コイル3及び第1ボビン4と第2コイル5及び第2ボビン6の中心部はマグネット1の中心部と一致しており、マグネット1を軸方向両端から挟む位置に所定の隙間を持って配置されている。
7は第1ステータ、8は第2ステータであり、ともに軟磁性材料で構成され、同一形状となっている。第1ステータ7、第2ステータ8はそれぞれ外筒部と内筒部を一端で連結した構成となっている。第1ステータ7の外筒部には軸方向に延出した櫛歯形状の外側磁極部7a,7bが形成されており、内筒部には円筒形状の内側磁極部7cが形成されている。同様に第2ステータ8の外筒部には軸方向に延出した櫛歯形状の外側磁極部8a,8bが形成されており、内筒部には円筒形状の内側磁極部8cが形成されている。外側磁極部7aと外側磁極部7bはそれぞれマグネット1に対向する歯幅角度が異なり、外側磁極部7aの歯幅角度をθ1とし、外側磁極部7bの歯幅角度をθ2とすると、θ1<θ2と設定される。同様に、外側磁極部8aと外側磁極部8bはそれぞれマグネット1に対向する歯幅角度が異なり、外側磁極部8aの歯幅角度をθ1とし、外側磁極部8bの歯幅角度をθ2とすると、θ1<θ2と設定される。この実施例1における歯幅角度θ1,θ2に関しては後述する。外側磁極部7aと外側磁極部7bは360/(N/2)度、すなわち180度ずれて形成され、外側磁極部8aと外側磁極部8bは360/(N/2)度、すなわち180度ずれて形成される。そして、第1ステータ7と第2ステータ8は互いの外側磁極部の先端が向かい合うように配置される。このとき、第1ステータ7と第2ステータ8とは互いの外側磁極部の位相角をα度とすると、α=(720/N)±(180/N)度、すなわち135度、或いは225度ずれて配置される(図3等に示す本実施例では135度)。
これは、第1ステータ7と第2ステータ8との間に発生する磁気干渉を抑えるとともに回転バランスを保つのに有効である。すなわち、この位相角α度を(180/N)度と設定すると、歯幅角度がθ1である外側磁極部7aと外側磁極部8aとが近接し、歯幅角度がθ2である外側磁極部7bと外側磁極部8bとが近接してしまうため、歯幅角度の大きい外側磁極部7bと外側磁極部8bとの磁気干渉が増えるとともに、回転バランスが悪化する。そこで、α=(720/N)±(180/N)度と設定すると、歯幅角度がθ1である外側磁極部7aと歯幅角度がθ2である外側磁極部8bとが近接し、歯幅角度がθ2である外側磁極部7bと歯幅角度がθ1である外側磁極部8aとが近接するので、一定方向に磁気干渉が偏ることなく、回転バランスが保たれる。
第1ステータ7は第1コイル3によって励磁され、第2ステータ8は第2コイル5によって励磁される。第1ステータ7の外筒部と内筒部の間であって、これらの連結部近傍に第1コイル3及び第1ボビン4が配置され、外側磁極部7a及び外側磁極部7bと内側磁極部7cとの間にマグネット1の一端側が挟み込まれるように配置される。また、第2ステータ8の外筒部と内筒部の間であって、これらの連結部近傍に第2コイル5及び第2ボビン6が配置され、外側磁極部8a及び外側磁極部8bと内側磁極部8cとの間に該マグネット1の他端側が挟み込まれるように配置される。つまり、外側磁極部7a、外側磁極部7b、外側磁極部8a、外側磁極部8bがマグネット1の外周面に所定の隙間を持って対向し、内側磁極部7c、内側磁極8cがマグネット1の内周面に所定の隙間を持って対向している。
9は非磁性材料からなる第1軸受けであり、10は同じく非磁性材料からなる第2軸受けである。第1軸受け9及び第2軸受け10はそれぞれ第1ステータ7及び第2ステータ8に固定されて、ロータ軸2を回転可能に支持する。11は円筒形状の連結リングであり、連結リング11に第1ステータ7と第2ステータ8を固定することで、第1ステータ7と第2ステータ8を所望の位置、位相で配置することができるようになっている。また、連結リング11は非磁性材料で構成されており、第1ステータ7と第2ステータ8との間の磁気回路を分断でき、お互いの磁極の影響が出にくい構成となっている。
図3乃至図6は前述したように図2に示すステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を示す断面図で、各図とも(a)は図2のA−A断面図、(b)は図2のB−B断面図であり、以下これらを用いてステッピングモータの回転駆動について説明する。
図3の状態は、第1コイル3に対して正通電することにより、第1ステータ7の外側磁極部7a,7bをN極とし、内側磁極部7cをS極とし、同時に第2コイル5に対して正通電することにより、第2ステータ8の外側磁極部8a,8bをN極とし、内側磁極部8cをS極とした場合を示す。マグネット1の外周表面のS極に着磁された着磁部が第1ステータ7の外側磁極部7a,7bの中心に向かう回転力が発生する(図3(a)の反時計方向)とともに、マグネット1の外周表面のS極に着磁された着磁部が第2ステータ8の外側磁極部8a,8bの中心に向かう回転力が発生し(図3(b)の時計方向)、図3の状態でバランスを保って静止する。
次に、図3の状態から、第1コイル3への正通電を維持しながら、すなわち第1ステータ7の外側磁極部7a,7bをN極とし、内側磁極部7cをS極としながら第2コイル5への通電を逆通電に切り換えると、第2ステータ8の外側磁極部8a,8bはS極に励磁され、内側磁極部8cはN極に励磁され、マグネット1は外周表面のN極に着磁された着磁部が第2ステータ8の外側磁極部8a,8bの中心に向かう回転力が発生し、図中反時計方向に回転を始める。そして、図4に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は、図3の状態からマグネット1が時計方向に45度回転した状態である。
次に、図4の状態から、第2コイル5への逆通電を維持しながら、すなわち第2ステータ8の外側磁極部8a,8bをS極とし、内側磁極部8cをN極としながら第1コイル3への通電を逆通電に切り換えると、第1ステータ7の外側磁極部7a,7bはS極に励磁され、内側磁極部7cはN極に励磁され、マグネット1は外周表面のN極に着磁された着磁部が第1ステータ7の外側磁極部7a,7bの中心に向かう回転力が発生し、図中反時計方向に回転を始める。そして、図5に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は、図4の状態からマグネット1が時計方向に45度回転した状態である。
次に、図5の状態から、第1コイル3への逆通電を維持しながら、すなわち第1ステータ7の外側磁極部7a,7bをS極とし、内側磁極部7cをN極としながら第2コイル5への通電を正通電に切り換えると、第2ステータ8の外側磁極部8a,8bはN極に励磁され、内側磁極部8cはS極に励磁され、マグネット1は外周表面のS極に着磁された着磁部が第2ステータ8の外側磁極部8a,8bの中心に向かう回転力が発生し、図中反時計方向に回転を始める。そして、図6に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は、図5の状態からマグネット1が時計方向に45度回転した状態である。
上記のように第1コイル3及び第2コイル5への通電方向を順次切り換えていくことにより、ロータであるマグネット1は通電位相に応じた位置へと順次回転することになる。
次に、第1ステータ7の外側磁極部7a,7b及び第2ステータ8の外側磁極部8a,8bの形状について詳細に説明する。本実施例における第1ステータ7の外側磁極部7a,7b及び第2ステータ8の外側磁極部8a,8bはマグネット1に対向する角度が異なる2種類の歯幅をもつものによって構成されている。この理由を図7から図9を用いて説明する。
第1コイル3及び第2コイル5に通電が行われていないときは、第1ステータ7、第2ステータ8とマグネット1との間に作用する吸引力が安定する位置に該マグネット1が保持される。この吸引力とマグネットの回転位置との関係を図7に示す。図7は第1ステータ7とマグネット1の関係を示したものであるが、第2ステータ8とマグネット1との関係も同様である。実際には、第1ステータ7と第2ステータ8とは(720/N)±(180/N)度位相がずれており、これらを合成した磁力がマグネット1に作用する。
図7の横軸は第1ステータ7に対するマグネット1の位置、つまり回転位相を示しており、縦軸は第1ステータ7とマグネット1との間に作用する磁力を示す。E1点、E2点で示される位置は正回転しようとするとマイナスの力が働いて元の位置に戻ろうとし、逆回転しようとするとプラスの力が働いて元の位置に戻ろうとする位置である。つまり、マグネット1と第1ステータ7との間に作用する磁力によって、マグネット1がE1点或いはE2点に安定して位置決めされるコギング位置である。F1点、F2点、F3点で示される位置はマグネット1の回転位相が少しでもずれると前後のE1点或いはE2点の位置に回転しようとする力が作用する不安定な均衡状態にある位置である。
第1コイル3に通電が行われていないときは、マグネット1はF1点、F2点、F3点に停止していることはなく、E1点あるいはE2点の位置で停止する。E1点、E2点のようなコギングに対してマグネットが安定する点は、マグネットの着磁数をNとすると、(360/N)度の周期で存在し、その中間位置であるF1点、F2点、F3点はマグネットが不安定な点となる。
本実施例1における構造において、有限要素法による数値シミュレーションの結果、マグネットの1極あたりの角度と外側磁極部がマグネットの外周面に対向する角度との比率により、コイルへの通電がなされていない状態での外側磁極部とマグネットとの吸引状態が変化することが明らかになった。外側磁極部の歯幅角度(マグネット対向角度)が所定値よりも小さい場合には、マグネットの着磁部、つまり、極の中心が外側磁極部の中心に対向する位置でマグネットが安定的に保持される。これは図7のE1点、E2点が、マグネットの極の中心が外側磁極部の中心部と対向する位置となる。逆に、外側磁極部の歯幅角度(マグネット対向角度)が所定値よりも大きい場合には、マグネットの着磁部の境界部、つまり、極と極との境界部が外側磁極部の中心に対向する位置でマグネットが安定的に保持される。これは図7のE1点、E2点が、マグネットの極と極の境界部が外側磁極の中心部と対向する位置となる。
図8はステータ歯幅の違いによるコギングトルク(マグネットが外側磁極部に吸引されるトルク)の様子を表すシミュレーション結果の図であり、図9はステータ歯幅の違いによる3V通電時のトルクの様子を表すシミュレーション結果の図である。図8及び図9の黒丸印を結ぶ線は第1ステータ7の外側磁極部7a,7b及び第2ステータ8の外側磁極部8a,8bがマグネット1の外周面に対向する角度がすべてθ1になるように構成した場合で、図8及び図9の黒三角印を結ぶ線は第1ステータ7の外側磁極部7a,7b及び該第2ステータ8の外側磁極部8a,8bがマグネット1の外周面に対向する角度がすべてθ2になるように構成した場合で、図8及び図9の黒四角印を結ぶ線は本実施例である第1ステータ7の外側磁極部7a及び第2ステータ8の外側磁極部8aがマグネット1の外周面に対向する角度をθ1とし、第1ステータ7の外側磁極部7b及び第2ステータ8の外側磁極部8bがマグネット1の外周面に対向する角度をθ2となるように構成した場合である。図8及び図9において、縦軸はトルクを示し、横軸はマグネットの回転位相を示す。ここで、θ1はマグネット1の1極あたりの角度に対して所定値よりも小さい割合の角度に設定され、θ2はマグネット1の1極あたりの角度に対して所定値よりも大きい割合の角度に設定され、θ1<θ2となっている。
図8を見ても明らかなように、外側磁極部のマグネットに対向する角度の違いによって、コギングトルク曲線は大幅に変化している。第1ステータ7の外側磁極部7a,7b及び第2ステータ8の外側磁極部8a,8bがマグネット1の外周面に対向する角度がすべてθ1になるように構成した場合のコギングトルクと、第1ステータ7の外側磁極部7a,7b及び第2ステータ8の外側磁極部8a,8bがマグネット1の外周面に対向する角度がすべてθ2になるように構成した場合のコギングトルクとでは位相がほぼ反転しているのがわかる。また、本実施例である第1ステータ7の外側磁極部7a及び第2ステータ8の外側磁極部8aがマグネット1の外周面に対向する角度をθ1とし、第1ステータ7の外側磁極部7b及び第2ステータ8の外側磁極部8bがマグネット1の外周面に対向する角度をθ2となるように構成した場合のコギングトルクはそれら(θ1のみ及びθ2のみ)を合成した値にほぼ近いものとなり、コギングトルクがかなり小さくなっている。また、図9を見ても明らかなように、本実施例である第1ステータ7の外側磁極部7a及び第2ステータ8の外側磁極部8aがマグネット1の外周面に対向する角度をθ1とし、第1ステータ7の外側磁極部7b及び第2ステータ8の外側磁極部8bがマグネット1の外周面に対向する角度をθ2となるように構成した場合の通電トルクも、θ1のみ或いはθ2のみの場合の通電トルクに比べて向上している。
すなわち、ステータの外側磁極部にコギングトルクの位相が反転するとともに最大値が近似している大小2つの歯幅角度を組み合わせることで、コギングトルクが大幅に低減でき、通電トルクが向上し、これにより回転精度も向上する。
ここで、外側磁極部の歯幅形状が一定ではなく、例えば軸方向に徐々に歯幅角度が変化するテーパー形状である場合などは、外側磁極部のマグネットと対向する部分の平均的な対向角度が上記条件を満たしていればよい。また、マグネット1の外周面を周方向に分割してなる着磁層を軸方向に2つ設け、第1ステータ7と対向する一方の着磁層と、第2ステータ8と対向する他方の着磁層の位相を互いに(180/N)度ずらし、第1ステータ7と第2ステータ8の位相を(720/N)度ずらす構成としてもよい。また、第1ステータ7の内側磁極部7c、第2ステータ8の内側磁極部8cは外側磁極部と同様の櫛歯形状であっても構わない。また、マグネット1の外周面だけではなくマグネット1の内周面も円周方向に分割して着磁すれば、モータの出力を更に高めることができる。
図10〜図15は本発明の実施例2に係るステッピングモータを示す図であり、詳しくは、図10はステッピングモータの分解斜視図、図11は図10のステッピングモータの組み立て後の軸方向断面図、図12〜図15は図10のステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を各動作段階毎に示す断面図である。
図10〜図15において、21はロータを構成する円筒形状のマグネットであり、該マグネット21は、その外周表面を円周方向に等間隔にN分割(Nは偶数であって本実施例ではN=4)してS極、N極が交互に着磁された着磁部21a,21b,21c,21dを有している。着磁部21aと21cがS極、21bと21dがN極である。22は第1ロータ軸であり、該第1ロータ軸22は円柱部と軸部とで構成され、円柱部がマグネット21の内径部に接着固定される。23は第2ロータ軸であり、該第2ロータ軸23は円柱部と軸部とで構成され、円柱部がマグネット21の内径部に接着固定される。第1ロータ軸22の軸部は第2ロータ軸23の軸部よりも軸方向長さが長く、出力軸として機能する。すなわち第1ロータ軸22の軸部の先端にギアやレバー、スクリュウねじ等を固定することで、回転出力が得られる。24は非磁性材料からなるスペーサーであり、第1ロータ軸22及び第2ロータ軸23がマグネット21に固定される際に中間に配置される。第1ロータ軸22の軸部とスペーサー24と第2ロータ軸23の軸部とが軸方向に密着した状態でマグネット21の内径部に接着固定される。そして、マグネット21と第1ロータ軸22と第2ロータ軸23とスペーサー24とでロータが構成される。
25は円筒形状の第1コイルであり、該第1コイル25は第1ボビン26に巻き付けられている。第1コイル25及び第1ボビン26はその外径が後述のマグネット21の外径とほぼ同じ寸法となっている。27は円筒形状の第2コイルであり、該第2コイル27は第2ボビン28に巻き付けられている。第2コイル27及び第2ボビン28はその外径が後述のマグネット21の外径とほぼ同じ寸法となっている。第1コイル25及び第1ボビン26と第2コイル27及び第2ボビン28の中心部はマグネット21の中心部と一致しており、マグネット21を軸方向両端から挟む位置に所定の隙間を持って配置されている。
29は第1ステータ、30は第2ステータであり、ともに軟磁性材料で構成され、同一形状となっている。第1ステータ29、第2ステータ30はそれぞれ中央に穴部を持つ一端が閉じた外筒部で構成されている。第1ステータ29の外筒部には軸方向に延出した櫛歯形状の外側磁極部29a、29bが形成されている。同様に第2ステータ30の外筒部には軸方向に延出した櫛歯形状の外側磁極部30a,30bが形成されている。外側磁極部29aと外側磁極部29bはそれぞれマグネット21に対向する歯幅角度が異なり、外側磁極部29aの歯幅角度をθ1とし、外側磁極部29bの歯幅角度をθ2とすると、θ1<θ2と設定される。同様に外側磁極部30aと外側磁極部30bはそれぞれマグネット21に対向する歯幅角度が異なり、外側磁極部30aの歯幅角度をθ1とし、外側磁極部30bの歯幅角度をθ2とすると、θ1<θ2と設定される。外側磁極部29aと外側磁極部29bは360/(N/2)度、すなわち180度ずれて形成され、外側磁極部30aと該外側磁極部30bは360/(N/2)度、すなわち180度ずれて形成される。そして、第1ステータ29と第2ステータ30は互いの外側磁極部の先端が向かい合うように配置される。このとき、第1ステータ29と第2ステータ30とは互いの外側磁極部の位相角をα度とすると、α=(720/N)±(180/N)度、すなわち135度、或いは225度ずれて配置される(図12等に示すように本実施例では135度)。
これは、第1ステータ29と第2ステータ30との間に発生する磁気干渉を抑えるとともに回転バランスを保つのに有効である。すなわち、この位相角α度を(180/N)度と設定すると、歯幅角度がθ1である外側磁極部29aと外側磁極部30aとが近接し、歯幅角度がθ2である外側磁極部29bと外側磁極部30bとが近接してしまうため、歯幅角度の大きい外側磁極部29bと外側磁極部30bとの磁気干渉が増えるとともに、回転バランスが悪化する。そこで、α=(720/N)±(180/N)度と設定すると、歯幅角度がθ1である外側磁極部29aと歯幅角度がθ2である外側磁極部30bとが近接し、歯幅角度がθ2である外側磁極部29bと歯幅角度がθ1である外側磁極部30aとが近接するので、一定方向に磁気干渉が偏ることなく、回転バランスが保たれる。
第1ステータ29の外筒内側端部に第1コイル25及び第1ボビン26が配置され、外側磁極部29a及び外側磁極部29bと第1ロータ軸22との間にマグネット21の一端側が挟み込まれるように配置される。また、第2ステータ30の外筒内側端部に第2コイル27及び第2ボビン28が配置され、外側磁極部30a及び外側磁極部30bと第2ロータ軸23との間にマグネット21の他端側が挟み込まれるように配置される。つまり、外側磁極部29a、外側磁極部29b、外側磁極部30a、外側磁極部30bがマグネット21の外周面に所定の隙間を持って対向している。
31は軟磁性材料からなる第1軸受けであり、該第1軸受け31は第1ステータ29に固定され、第1ロータ軸22を回転可能に支持する。また、第1軸受け31は第1ボビン26の内径部に嵌合する。すなわち、第1コイル25の内径部には軟磁性材料からなる第1軸受け31と、同じく軟磁性材料からなる第1ロータ軸22の軸部とが挿入された状態となる。32は軟磁性材料からなる第2軸受けであり、該第2軸受け32は第2ステータ30に固定され、第2ロータ軸23を回転可能に支持する。また、第2軸受け32は第2ボビン28の内径部に嵌合する。すなわち、第2コイル27の内径部には軟磁性材料からなる第2軸受け32と、同じく軟磁性材料からなる第2ロータ軸23の軸部とが挿入された状態となる。33は円筒形状の連結リングであり、該連結リング33に第1ステータ29と第2ステータ30を固定することで、第1ステータ29と第2ステータ30を所望の位置、位相で配置することができるようになっている。また、連結リング33は非磁性材料で構成されており、第1ステータ29と第2ステータ30との間の磁気回路を分断でき、お互いの磁極の影響が出にくい構成となっている。
第1ステータ29は第1コイル25によって励磁され、第2ステータ30は第2コイル27によって励磁される。第1ステータ29の外側磁極部29a,29bと対向してマグネット21を挟む位置に第1ロータ軸22の円柱部が配置される。第1コイル25の内径部に配置される第1ロータ軸22及び第1軸受け31は第1コイル25によって第1ステータ29の外側磁極部29a,29bとは反対の極に励磁され、第1の内側磁極部として機能する。第2ステータ30の外側磁極部30a,30bと対向してマグネット21を挟む位置に第2ロータ軸23の円柱部が配置される。第2コイル27の内径部に配置される第2ロータ軸23及び第2軸受け32は第2コイル27によって第2ステータ30の外側磁極部30a,30bとは反対の極に励磁され、第2の内側磁極部として機能する。
第1コイル25により発生する磁束はマグネット21の外周面に対向する第1ステータ29の外側磁極部とマグネット21の内周面に固定され第1の内側磁極部を構成する第1ロータ軸22の円柱部との間を通過するので、効果的にマグネットに作用する。その際、第1の内側磁極部を構成する第1ロータ軸22の円柱部はマグネット21の内周面との間に空隙を設ける必要がない。同様に第2コイル27により発生する磁束はマグネット21の外周面に対向する第2ステータ30の外側磁極部とマグネット21の内周面に固定され第2の内側磁極部を構成する第2ロータ軸23の円柱部との間を通過するので、効果的にマグネット21に作用する。その際、第2の内側磁極部を構成する第2ロータ軸23の円柱部はマグネット21の内周面との間に空隙を設ける必要がない。外側磁極部と内側磁極部の距離を小さく構成することが可能となり、これにより磁気抵抗を減少させ、出力を高めることができる。
また、第1軸受け31を軟磁性材料で形成することにより、第1ロータ軸22と共に第1の内側磁極部として作用し、第2軸受け32を軟磁性材料で形成することにより、第2ロータ軸23と共に第2の内側磁極部として作用して、第1コイル25及び第2コイル27により発生する磁束が流れやすくなり、よりいっそう出力を高めることが可能となる。ここで、第1軸受け31とマグネット21が固定される第1ロータ軸22との間、及び第2軸受け32とマグネット21が固定される第2ロータ軸23との間には吸着力が発生し摩擦力によるトルク損失が生じたり、摺動面の耐久性を損なう可能性はあるが、マグネット21を薄くて小径の円筒形状で構成することで吸着力はごくわずかしか発生しなく、磁気回路の磁気抵抗が減少することによる効率向上の方がより有効に働き、発生するトルク自体は大きくなる。また、第1軸受け31或いは第1ロータ軸22或いは第2軸受け32或いは該第2ロータ軸23の表面に潤滑材の塗布、潤滑塗装(フッ素系潤滑塗装・グラファイト系潤滑塗装・二流化モリブデン系潤滑塗装)、潤滑メッキ(例えばPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)粒子を含有した無電解ニッケルメッキやテフロン(登録商標)潤滑無電解ニッケルメッキなど)等を施すことにより、摺動面の摩擦によるトルク損失を抑制したり、摺動面の耐久性を損なうことを防いで出力トルクを向上させることも可能である。
上記特許文献1では、出力軸が軟磁性材料で構成され、軸受けは非磁性材料で構成されているが、本実施例の構成ではコイルの内径部には出力軸のみが配置されることになり、例えば出力軸の外径を大きくすることで磁束が流れやすくなるものの、コイルとの接触を避けるためコイルと出力軸との間に所定の隙間を持たせる必要があり、その分コイルの内径に対する出力軸の外径、すなわち内側磁極部径は小さくなる。しかも実際にはコイルとステータが不用意に導通しないようにコイルはボビンに巻き回す必要があり、出力軸はボビンとの接触を避けるためボビン内径と所定の隙間を持たせる必要がある。これに対し、本実施例ではコイルの内径部に軟磁性材料の軸受けと軟磁性材料のロータ軸を配置しており、軸受けはボビン内径部と嵌合しており、ロータ軸と軸受けも回転嵌合してしているため、コイルの内径に対する内側磁極部の割合を増やすことが可能となり、これにより磁気回路の磁気抵抗が減少して発生トルクが向上する。或いは内側磁極部を小径化してその分コイルの占有率を増すことで、発生トルクを向上させることも可能である。
第1ロータ軸22の円柱部の端面と第2ロータ軸23の円柱部の端面とは向き合って配置されているが、間にスペーサ24が配置されるため、直接接触しない。また、第1ロータ軸22と第2ロータ軸23とはマグネット21を介して固定されているが、マグネット21は軟磁性材料ではないため、第1コイル25により第1ロータ軸22を励磁したとしても、それにより第2ロータ軸23が励磁されることはない。同様に第2コイル27により第2ロータ軸23を励磁したとしても、それにより第1ロータ軸22が励磁されることはない。すなわち、第1ロータ軸22と第2ロータ軸23との間に磁束の行き来がないように構成されている。
第1ロータ軸22と第2ロータ軸23にはお互いに向き合う円柱部の端面にそれぞれ凹部が形成され、第1ロータ軸22と第2ロータ軸23との間の磁気抵抗を大きくするような形状になっている。しかもこの場合でも、第1ロータ軸22の円柱部と第1ステータ29の外側磁極部29a,29bとの対向面積は小さくならず、第1ロータ軸22の円柱部と第1ステータ1の外側磁極部29a,29bとの磁気抵抗が大きくならないようになっている。同様に第2ロータ軸23の円柱部と第2ステータ30の外側磁極部30a,30bとの対向面積は小さくならず、第2ロータ軸23の円柱部と第2ステータ30の外側磁極部30a,30bとの磁気抵抗が大きくならないようになっている。凹部の形状は上記磁気抵抗の条件を確保するためには円錐形状が望ましく、本実施例では円錐形状になっている。該凹部に接着剤を注入してマグネット21と第1ロータ軸22と第2ロータ軸23と該スペーサ24を固定する方法をとることで、接着剤の量も十分に使用できるので、接着強度が高まる。また、接着剤の流れ出しによる不良等を防ぐこともでき、組み立てが容易になる。また、マグネット21の内径部は第1ロータ軸22と第2ロータ軸23及びスペーサ24によって埋められているので、上記特許文献1で提案されているものに比べ、マグネットの機械的強度が大きい。
本実施例2では、第1の内側磁極部を第1ロータ軸22と第1軸受け31で構成し、第2の内側磁極部を第2ロータ軸23と第2軸受け32で構成して、第1ステータ29と第2ステータ30は中央に穴部を持つ一端が閉じた外筒部分に切り欠きを設けたという単純な形状で構成されることから製造が容易であり、コストが安くなる。すなわち、ロータ軸と軸受けが内側磁極部を兼ねていることで、コストを安くしている。従来例で述べた特許文献1に示す構造の場合、第1のステータ及び第2のステータはそれぞれ内側磁極部を外側磁極部と一体的に構成しなければならないが、内側磁極部を外側磁極部と同一部品で構成することは製造上難しい。例えばメタルインジェクションモールドにより成型することは可能であるがコスト高となり、プレスにより一体的に製造することは外側磁極部のみを構成する部品を製造する場合と比較して部品が小さくなればなるほど困難になる。また、内側磁極部と外側磁極部とを別々に製造してからカシメや溶接或いは接着等により一体的に固着する場合もコストが高くなる。
また、上記特許文献1にて提案されているものは、マグネットの外径部と外側磁極部との隙間を精度良く保って組み立てる必要のほかに、マグネットの内径部に対向する位置にある内側磁極部もマグネットに対し所定の隙間を設けて配置する必要があり、部品精度のばらつきや組み立て精度が悪い場合にこの隙間を確保出来ず、内側磁極部がマグネットに接触してしまう等の不良が生じてしまうが、本実施例ではマグネットの外径部のみの隙間を管理するだけで良いので、組み立てが容易になる。さらに、上記従来例では内側磁極部はマグネットと出力軸をつなぐ部分に接触しないように構成しなければならず、これにより内側磁極部とマグネットとが対向する軸方向の長さを十分に長く出来ないのに対し、本実施例では内側磁極部とマグネットとが対向する軸方向の長さを長く確保でき、これにより外側磁極部とマグネットを有効に利用することができ、モータの出力が高まる。
本実施例2では上記特許文献1にて提案されているものと同様に、コイルの通電により発生する磁束を直接マグネットに作用させ、モータを高出力なものにするとともに、非常に小型化可能なものとしている。つまり、このステッピングモータの外径はマグネットの外径にステータの磁極を対向させるだけの大きさがあればよく、また、ステッピングモータの長さはマグネットの長さに第1コイルと第2コイルの長さを加えた程度の長さがあれば良いことになる。このためステッピングモータの大きさは、マグネットおよびコイルの外径と長さによって決まるもので、マグネット及びコイルの外径と長さをそれぞれ非常に小さくすればステッピングモータを超小型にすることができるものである。その際、マグネット及びコイルの外径と長さをそれぞれ非常に小さくすると、ステッピングモータとしての精度を維持することが難しくなるが、これはマグネットを中空の円筒形状に形成し、この中空の円筒形状に形成されたマグネットの外周面及び内周面に第1、第2のステータの外側磁極部及び内側磁極部を対向させるという単純な構造により、ステッピングモータの精度の問題を解決している。また、上記の説明で述べたように、さらに低コストで高出力なものになる。
図12乃至図15は前述したように図10に示すステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を示す断面図で、各図とも(a)は図10のA−A断面、(b)は図10のB−B断面であり、以下これらを用いてステッピングモータの回転駆動について説明する。
図12の状態は、第1コイル25に対して正通電することにより、第1ステータ29の外側磁極部29a,29bをN極とし、第1ロータ軸22の円柱部をS極とし、同時に第2コイル27に対して正通電することにより、第2ステータ30の外側磁極部30a,30bをN極とし、第2ロータ軸23の円柱部をS極とした場合を示す。マグネット21の外周表面のS極に着磁された着磁部が第1ステータ29の外側磁極部29a,29bの中心に向かう回転力が発生する(図12(a)の反時計方向)とともに、マグネット21の外周表面のS極に着磁された着磁部が第2ステータ30の外側磁極部30a,30bの中心に向かう回転力が発生し(図12(b)の時計方向)、図12の状態でバランスを保って静止する。
次に、図12の状態から、第1コイル25への正通電を維持しながら、すなわち第1ステータ29の外側磁極部29a,29bをN極とし、第1ロータ軸22の円柱部をS極としながら、第2コイル27への通電を逆通電に切り換えると、第2ステータ30の外側磁極部30a,30bはS極に励磁され、第2ロータ軸23の円柱部はN極に励磁され、マグネット21は外周表面のN極に着磁された着磁部が第2ステータ30の外側磁極部30a,30bの中心に向かう回転力が発生し、図中反時計方向に回転を始める。そして、図13に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は、図12の状態からマグネット1が時計方向に45度回転した状態である。
次に、図13の状態から、第2コイル27への逆通電を維持しながら、すなわち第2ステータ30の外側磁極部30a,30bをS極とし、第2ロータ軸23の円柱部をN極としながら第1コイル25への通電を逆通電に切り換えると、第1ステータ29の外側磁極部29a,29bはS極に励磁され、第1ロータ軸22の円柱部はN極に励磁され、マグネット21は外周表面のN極に着磁された着磁部が該第1ステータ29の外側磁極部29a,29bの中心に向かう回転力が発生し、図中反時計方向に回転を始める。そして、図14に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は、図13の状態からマグネット1が時計方向に45度回転した状態である。
次に、図14の状態から、第1コイル25への逆通電を維持しながら、すなわち第1ステータ29の外側磁極部29a,29bをS極とし、第1ロータ軸22の円柱部をN極としながら第2コイル27への通電を正通電に切り換えると、第2ステータ30の外側磁極部30a,30bはN極に励磁され、第2ロータ軸23の円柱部はS極に励磁され、マグネット21は外周表面のS極に着磁された着磁部が第2ステータ30の外側磁極部30a,30bの中心に向かう回転力が発生し、図中反時計方向に回転を始める。そして、図15に示す状態でバランスを保って静止する。この状態は、図14の状態からマグネット1が時計方向に45度回転した状態である。
上記のように第1コイル3及び第2コイル5への通電方向を順次切り換えていくことにより、ロータであるマグネット1は通電位相に応じた位置へと順次回転することになる。
本実施例2における第1ステータ29の外側磁極部29a,29b及び第2ステータ30の外側磁極部30a,30bはマグネット21に対向する角度が異なる2種類の歯幅をもつものによって構成されている。この理由は上記実施例1と同様であるのでその説明は省略する。
本実施例2も前記実施例1と同様に、ステータの外側磁極部にコギングトルクの位相が反転するとともに最大値が近似している大小2つの歯幅角度を組み合わせることで、コギングトルクが大幅に低減でき、通電トルクも向上する。これにより、回転精度も向上する。
ここで、外側磁極部の歯幅形状が一定ではなく、例えば軸方向に徐々に歯幅角度が変化するテーパ形状である場合などは、外側磁極部のマグネットと対向する部分の平均的な対向角度が上記条件を満たしていればよい。また、マグネット21の外周面を周方向に分割してなる着磁層を軸方向に2つ設け、第1ステータ29と対向する一方の着磁層と、第2ステータ30と対向する他方の着磁層の位相を互いに(180/N)度ずらし、第1ステータ29と第2ステータ30の位相を(720/N)度ずらす構成としてもよい。また、マグネット21の外周面だけではなく該マグネット21の内周面も円周方向に分割して着磁すれば、モータの出力を更に高めることができる。
以上の実施例1及び2によれば、第1の外側磁極部7,29はマグネット1,21の外周面に所定の角度θ1の範囲に対向する第1の歯(外側磁極部7a,29a)と所定の角度θ2の範囲に対向する第2の歯(外側磁極部7b,29b)を具備し、第2の外側磁極部8,30はマグネット1,21の外周面に所定の角度θ1の範囲に対向する第3の歯(外側磁極部8a,30a)と所定の角度θ2の範囲に対向する第4の歯(外側磁極部8b,30b)を具備し、前記角度θ1とθ2の関係を「 θ1< θ2」に設定するとともに、第1の外側磁極部7,29の第1の歯もしくは第2の歯と第2の外側磁極部8,30の第4の歯もしくは第3の歯が近接するように、第1の外側磁極部7,29に対する第2の外側磁極部8,30のマグネットを基準にした軸回りの位相角αを「α=(720/N)±(180/N)(実施例では、α=135度)」に設定するようにしている。
よって、歯幅角度がθ1である外側磁極部7aと歯幅角度がθ2である外側磁極部8bとが近接し、歯幅角度がθ2である外側磁極部7bと歯幅角度がθ1である外側磁極部8aとが近接することになり、一定方向に磁気干渉が偏ることなく、回転バランスが保たれることになる。つまり、コギングトルクを最小に抑えて出力を向上させることができるとともに、回転精度も向上させることができる。
本発明のステッピングモータは、光量調節装置や撮影装置などの小型の機器に有用である。
本発明の実施例1に係るステッピングモータを示す分解斜視図である。
本発明の実施例1に係るステッピングモータの組み立て完成状態の軸方向断面図である。
図2に示すステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を示す断面図であり、(a)は図2のA−A断面、(b)は図2のB−B断面である。
図3の状態からコイル通電を切り換えてマグネットを45度回転させた状態を示す断面図である。
図4の状態からコイル通電を切り換えてマグネットをさらに45度回転させた状態を示す断面図である。
図5の状態からコイル通電を切り換えてマグネットをさらに45度回転させた状態を示す断面図である。
ステータとマグネットとの間に発生する吸引力とマグネットの回転位置との関係を示す図である。
ステータ歯幅の違いによるコギングトルクの様子を示す図である。
ステータ歯幅の違いによる通電トルクの様子を示す図である。
本発明の実施例2に係るステッピングモータを示す分解斜視図である。
本発明の実施例2に係るステッピングモータの組み立て完成状態の軸方向断面図である。
図11に示すステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を示す断面図であり、(a)は図11のA−A断面、(b)は図11のB−B断面である。
図12の状態からコイル通電を切り換えてマグネットを45度回転させた状態を示す断面図である。
図13の状態からコイル通電を切り換えてマグネットをさらに45度回転させた状態を示す断面図である。
図14の状態からコイル通電を切り換えてマグネットをさらに45度回転させた状態を示す断面図である。
従来のステッピングモータを示す分解斜視図である。
従来のステッピングモータの組み立て完成状態の軸方向断面図である。
図17に示すステッピングモータのマグネットとステータの位相関係を示す断面図であり、(a)は図17のA−A断面、(b)は図17のB−B断面である。
符号の説明
1 マグネット
2 ロータ軸
3 第1コイル
5 第2コイル
7 第1ステータ
8 第2ステータ
9 第1軸受け
10 第2軸受け
21 マグネット
22 第1ロータ軸
23 第2ロータ軸
25 第1コイル
27 第2コイル
29 第1ステータ
30 第2ステータ
31 第1軸受け
32 第2軸受け