JP4005407B2 - 濁水処理システム及びこれを搭載した濁水処理用自動車 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は濁水の処理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えばトンネル掘削や地盤強化工事時に発生する原水(濁水)の処理システムとしては、図4に示す濁水処理システムが知られている。図4において、1は例えばトンネル工事中に排出される濁水をトンネル外部に排出するポンプである。2はポンプから排出された濁水を貯留する貯水槽、3は凝集剤混合槽であり、濁水のpHを調整した後、ポリ塩化アルミニウム(以下PACという)が投入されて攪拌機(図示省略)などにより急速に攪拌される。この槽では比較的細かなフロックが形成される。
【0003】
4は凝集剤混合槽3の後段に配置された緩速攪拌槽で、この槽では急速攪拌槽3で生成された比較的細かなフロックを攪拌機(図示省略)などにより緩やかに攪拌し、前段の凝集剤混合槽3で成長したフロックを更に大きなフロックに成長させて沈殿させる。5は凝集槽であり、緩速攪拌槽4で十分にフロック化されなかった原水中の濁質に対して高分子凝集剤が注入される。
【0004】
6は沈殿分離槽で、前段で注入された高分子凝集剤により更に凝集/沈殿が促進される。そして法規制(200mg/L以下となった上澄み)を満足した水が河川などに放水される。なお、図では省略するが各槽には沈殿物の除去手段が付随され、沈殿した濁質は適宜除去される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えばトンネル工事の場合、貯水槽2に流入する濁水の量と濁度はトンネル掘削時に増大し、掘削が中断されると減少する。また、トンネル壁へのセメント吹き付け時にも増大する。
【0006】
更に、トンネルの床に飛び散ったセメントの固化防止のために行なわれる洗浄のための洗浄水の使用や、地層の変化による水質(pH)の変化があり、湧水量の増減等もある。
【0007】
ところで、従来のシステムにおいては濁水の浄化手段としてPACや高分子凝集剤を用いている。しかしながらPACによる凝集は凝集作用がpHや濁度の成分により凝集沈殿しないこともあり、たとえ凝集したとしても濁度が法規制(200mg/L以下)を満足することが難しいという問題があった。
【0008】
また、粘土質の細かな濁質やセメントの成分が流入した場合は凝集条件を見出すのが難しいという問題があった。更にPACに含まれるアルミニウム(Al)はアルツハイマー病の原因物質や農作物の生育阻害元素でもあり、極力環境中への放出は抑えたいと云う要求があった。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、濁水の量や濁質、pHに関係なく水の濁度改善が可能な濁水処理システムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、請求項1においては、
原水(濁水)に酸素を高濃度に溶解する酸素溶解装置と、酸素が溶解された原水に鉄イオンを供給する鉄電解装置と、この鉄電解装置で供給されたイオンと原水を攪拌し、原水に含まれる濁質をフロック化して沈降させる急速攪拌槽及び緩速攪拌槽と、この緩速攪拌槽からの処理水に凝集剤を注入しフロック化する凝集槽を含んで構成され、前記酸素溶解装置は、密閉タンクに原水を供給するポンプと、前記密閉タンクおよび/または前記原水に酸素を供給する酸素供給手段と、前記密閉タンク内に貯留された原水の水面下に配置した邪魔板とからなり、前記ポンプから前記密閉タンク内に供給される原水を前記邪魔板に向けて噴射し、著しく泡立たせることにより、気体と液体を混合・溶解するように構成したことを特徴としている。
【0011】
請求項2においては、請求項1記載の濁水処理システムにおいて、
酸素溶解装置は原水への酸素溶解能力が30mg/L以上であることを特徴としている。
【0012】
請求項3においては、請求項1または2記載の濁水処理システムにおいて、
凝集剤はアルギン酸ナトリウムであることを特徴としている。
【0016】
請求項4においては、請求項1乃至3のいずれかに記載の濁水処理システムにおいて、前記処理水の濁度を監視する監視手段を設け、濁度に応じて鉄の溶出量を調節するために電解電流量を制御するようにしたことを特徴としている。
【0017】
請求項5においては、請求項1乃至4のいずれかに記載の濁水処理システムにおいて、前記処理水の濁度を監視する監視手段を設け、濁度に応じて凝集剤の注入量を制御するようにしたことを特徴としている。
【0018】
請求項6においては、請求項1乃至5のいずれかに記載の濁水処理システムにおいて、原水の水素イオン濃度(pH)を調節するために原水に炭酸ガスを溶解させる手段を備えたことを特徴としている。
【0019】
請求項7においては、請求項6に記載の濁水処理システムにおいて、原水の水素イオン濃度(pH)を監視する監視手段を設け、pHを調節するために炭酸ガスの溶解量を制御するようにしたことを特徴としている。
【0020】
請求項8においては、請求項1乃至7のいずれかに記載の濁水処理システムにおいて、前記酸素溶解装置により溶存酸素濃度を上昇させた原水の水素イオン濃度(pH)を調節するために前記酸素溶解装置の後段に炭酸ガスを原水に溶解させる手段を備えたことを特徴としている。
【0021】
請求項9においては、請求項8に記載の濁水処理システムにおいて、前記酸素溶解装置により溶存酸素濃度を上昇させた原水の水素イオン濃度(pH)を監視する監視手段を設け、pHを調節するために炭酸ガスの溶解量を制御するようにしたことを特徴としている。
【0022】
請求項10においては、請求項1乃至9のいずれかに記載の濁水処理システムを搭載した濁水処理用自動車であることを特徴としている。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態の一例を図面に基づいて説明する。図1は本発明の実施形態の一例を示す濁水処理システムのブロック構成図である。なお、図4に示す従来例と同一要素には同一符号を付している。
【0024】
図1において、ポンプ1によって排出された原水(濁水)は貯水槽2に貯留される。この貯水槽2には溶存酸素濃度計10が配置されており、貯水槽中の溶存酸素濃度を監視している。11は酸素溶解装置であり、この酸素溶解装置11は例えば図2のようなものを使用する。
【0025】
図2の酸素溶解装置11について簡単に説明する。20は密閉タンクである。この密閉タンク20には原水貯水槽2からの濁水がポンプ26を介して送水され所定のレベルに貯留されている。21は密閉タンク20内の水位を測定するレベル計、22は調節弁であり、図では省略するが濁水の水位を所定のレベルに維持するように調節弁22の開閉若しくは絞りを調節するための制御手段を備えている。
【0026】
また、密閉タンク20の空間20aには酸素ボンベ23または、酸素発生装置24から所定圧力で酸素が供給されている。25はタンク20内の圧力を監視するための圧力計であり、図では省略するが圧力計25からの信号に基づいて酸素ボンベ23や酸素発生装置24の圧力を調節するための制御手段を備えている。27はタンク20の底に沈殿した泥などを排出するためのドレイン弁である。
【0027】
なお、ポンプ26を介して送水された濁水をタンク20に貯留された濁水の水面下に配置した邪魔板28に向けて噴射し、著しく泡立たせることにより、気体と液体が効率良く混合・溶解するように構成されており、酸素を30mg/L以上溶け込ませることができる。酸素を高濃度に溶解した濁水は調節弁22および流量計12を介して鉄電解装置13に送られる。
【0028】
また、酸素を溶け込ませる手段としては図2の一点鎖線で囲ったA部に示すようにノズルの先端をタンクの内壁近傍に配置し、ポンプから供給される原水がノズルより水面に向かって斜め方向から噴出するように配置して密閉タンク20内の原水が渦を巻くようにして気体と液体(原水)が効率良く混合・溶解するようにすることができる。
【0029】
更に、ポンプ26の後段に乱流発生部29を備えた配管を接続するとともに、ポンプ26や配管に気体を供給する気体供給手段(図示省略)を設けて、液体が配管内を移送される間に配管内の乱流により気体が原水に溶解するようにすることもできる。
【0030】
鉄電解装置13に供給する原水は、調節弁22を介して所定流量になるように制御され、また、タンク内の空間20aのガス圧が一定になるようにポンプ26の回転数をインバータ(図示省略)により制御することによってタンク内で溶けた溶存酸素濃度が一定になり、且つ電力消費を抑え、効率的な運転をすることができる。
【0031】
図3は鉄電解装置13の一例を示す要部構成図である。図において溶出槽30には鉄電極31,32が設けられ直流電源33により電圧が印加され、酸素が高濃度に溶解した濁水に鉄イオンFe2+が溶解して供給される。
【0032】
上述の装置において、酸素溶解装置11で高濃度の酸素を溶解した濁水が矢印イから送水されるとFe2+は溶存酸素を利用して酸化処理されてFe3+になりながら矢印ロで示す急速攪拌槽3へ流出する。
【0033】
図1に戻り、急速攪拌槽3から緩速攪拌槽4を経て濁質がフロック化されて沈殿し、浄化された処理水は凝集槽5へ流入するが、本発明ではここでアルギン酸ナトリウムを混入する。アルギン酸ナトリウムは従来水道水に混入され凝集効果は高分子凝集剤よりも凝集力は劣るものの、人と自然に対して安全な成分からなっている。
【0034】
凝集槽5でアルギン酸ナトリウムが混入された処理水は沈殿分離槽6に送出される。沈殿分離槽6には汚泥濃度(MLSS)計14が備えられて濁度を監視しており、その出力信号に応じてアルギン酸ナトリウムの混入量が増減される。
【0035】
なお、図1に示すように原水貯水槽2に炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス注入手段25と水素イオン(pH)測定手段26を設け、原水のpHを5程度に調節することにより、後段の鉄溶解装置の鉄電極の溶出を促進することができる(鉄の溶出は汚泥の凝縮効果を高める)。
【0036】
炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス注入手段25の設置箇所は原水貯水槽2に限ることなく鉄電解装置の前段であればよい。例えば、酸素溶解装置11の後段に設け、その後段(例えば急速攪拌槽3)にpH測定手段を設けてそのpH測定手段の測定信号に基づいて炭酸ガスの溶解量を調節するようにしてもよい。
【0037】
また、図では省略するが、図2に示す酸素溶解装置と図3に示す鉄電解装置及び凝集剤注入装置、炭酸ガス注入手段、これらの制御装置等をパッケージとして車両に搭載して、各作業所に移動可能とすることができる。
【0038】
本発明の以上の説明は、説明および例示を目的として特定の好適な実施例を示したに過ぎない。したがって本発明はその本質から逸脱せずに多くの変更、変形をなし得ることは当業者に明らかである。例えば酸素溶解装置や鉄電解装置の構成は実施例に限るものではない。
特許請求の範囲の欄の記載により定義される本発明の範囲は、その範囲内の変更、変形を包含するものとする。
【0039】
【発明の効果】
請求項1乃至3の発明によれば、原水(濁水)に酸素を高濃度に溶解し、この原水に鉄イオンを供給する鉄電解装置を備えている。このためPACを混入する従来の装置に比較して比重が大きく沈殿速度の速い密なフロックを形成することができる。そのため、濁水の処理効率が良く、後段での処理に人や自然に対して有害な高分子凝集剤を使用する必要がない。また、邪魔板に原水を衝突させることにより気体と液体を効率良く混合・溶解させることができる。
【0041】
請求項4または5の発明によれば、処理水の汚れの程度を監視する監視手段を設け、汚れの程度に応じて凝集剤の注入を制御するようにしたので、高価な凝集剤を最適な分量だけ混入すれば良いのでランニングコストの安い濁水処理システムを実現することができる。
【0042】
請求項6乃至9の発明によれば、原水のpHを調整するために炭酸ガス注入手段を設けたり、原水のpHを監視して炭酸ガスの注入を制御したりするようにしたので、鉄溶解装置の鉄電極の溶出を促進して汚泥の凝縮効果を高めることができる。
【0043】
請求項10の発明によれば、酸素溶解装置、鉄電解装置及び凝集剤注入制御手段をパッケージとして車載可能としたので、全国の工事現場で使用されている多くの濁水処理システムに容易に適用することができ迅速な据え付け撤去が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態の一例を示す濁水処理システムのブロック構成図である。
【図2】酸素溶解装置の一例を示す構成図である。
【図3】鉄電解装置の一例を示す構成図である。
【図4】従来の濁水処理システムの一例を示すブロック構成図である。
【符号の説明】
1 ポンプ
2 原水(濁水)貯水槽
3 急速攪拌槽
4 緩速攪拌槽
5 凝集槽
6 沈殿分離槽
10 溶存酸素計
11 酸素溶解装置
12 流量計
13 鉄電解装置
14 汚泥濃度(MLSS)計
22 調節弁
25 炭酸ガス注入装置
26 水素イオン(pH)測定装置
Claims (10)
- 原水(濁水)に酸素を高濃度に溶解する酸素溶解装置と、酸素が溶解された原水に鉄イオンを供給する鉄電解装置と、この鉄電解装置で供給されたイオンと原水を攪拌し、原水に含まれる濁質をフロック化して沈降させる急速攪拌槽及び緩速攪拌槽と、この緩速攪拌槽からの処理水に凝集剤を注入しフロック化する凝集槽を含んで構成され、前記酸素溶解装置は、密閉タンクに原水を供給するポンプと、前記密閉タンクおよび/または前記原水に酸素を供給する酸素供給手段と、前記密閉タンク内に貯留された原水の水面下に配置した邪魔板とからなり、前記ポンプから前記密閉タンク内に供給される原水を前記邪魔板に向けて噴射し、著しく泡立たせることにより、気体と液体を混合・溶解するように構成したことを特徴とする濁水処理システム。
- 酸素溶解装置は原水への酸素溶解能力が30mg/L以上であることを特徴とする請求項1に記載の濁水処理システム。
- 凝集剤はアルギン酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1又は2に記載の濁水処理システム。
- 前記処理水の濁度を監視する監視手段を設け、濁度に応じて鉄の溶出量を調節するために電解電流量を制御するようにしたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の濁水処理システム。
- 前記処理水の濁度を監視する監視手段を設け、濁度に応じて凝集剤の注入量を制御するようにしたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の濁水処理システム。
- 原水の水素イオン濃度を調節するために原水に炭酸ガスを溶解させる炭酸ガス注入手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の濁水処理システム。
- 原水の水素イオン濃度を監視する監視手段を設け、水素イオン濃度を調節するために炭酸ガスの溶解量を制御するようにしたことを特徴とする請求項6記載の濁水処理システム。
- 前記酸素溶解装置により溶存酸素濃度を上昇させた原水の水素イオン濃度を調節するために前記酸素溶解装置の後段に炭酸ガスを原水に溶解させる炭酸ガス注入手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の濁水処理システム。
- 前記酸素溶解装置により溶存酸素濃度を上昇させた原水の水素イオン濃度を監視する監視手段を設け、水素イオン濃度を調節するために炭酸ガスの溶解量を制御するようにしたことを特徴とする請求項8記載の濁水処理システム。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載の濁水処理システムを搭載したことを特徴とする濁水処理用自動車。
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