JP3559822B2 - 水処理方法および装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、上水処理や工業用水処理など、濁度を低下させる処理を行う水処理方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
上水処理や工業用水処理などでは、たとえば図2に示したように、原水を着水井1を経て急速混和池2に導入し、凝集剤3、pH調整剤4、塩素剤5を添加して急速攪拌したうえで、フロック形成池6に流入させて緩速攪拌することにより、原水中の濁質をフロック形成させて、沈殿池7において汚泥として沈殿させ、沈殿池7より流出する上澄水8を砂濾過池9で濾過して処理水としている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記したような処理において、凝集剤の添加は濁質を凝集させて沈殿除去することを目的とするものであるが、富栄養湖を水源とする場合などは、濁度が低くても藻類が多く、藻類による凝集阻害が起きやすいため、多量の凝集剤を添加することになる。しかるに、凝集剤としてアルミニウム系凝集剤を用いる時には多量の汚泥が発生し、汚泥の脱水性も悪くなるだけでなく、得られる浄水中の残留アルミニウム濃度も高くなる。
【0004】
このため、本出願人らは、特開平9−131598号において、上段側に中空状の濾材を充填し、下段側にセラミックからなる濾材を充填した生物接触濾過池を具備した装置を提案し、原水中の濁質あるいは微生物の一定量をまず上段側の中空状の濾材に担持させ、残りの濁質や微生物を下段側のセラミックからなる濾材に担持させ、なお残存する濁質や微生物のみを砂濾過や膜濾過で濾過するようにして、凝集剤の添加を不要、あるいは低減可能とした。しかし、高濁度の原水に対応するためには、上記した生物接触濾過池を2段直列に配列するのが望ましく、その場合は装置構成が複雑になり、建設コストが高くなってしまう。
【0005】
本発明は上記課題を解決するもので、凝集剤の添加量を低減しながら、高濁度の原水をも効率よく処理できる水処理方法および装置を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記問題を解決するために、本発明は、流入水を濾材層において生物濾過する生物接触濾過装置と、流入水中の懸濁質を凝集剤によって凝集沈殿させる凝集沈殿装置とを用いた水処理方法であって、原水の濁度が所定濁度以下の時には、原水を生物接触濾過装置にその最大処理流量で通水するとともに、残りの原水を凝集沈殿装置に通水し、原水の濁度が所定濁度より高い時には、原水を凝集沈殿装置にその最大処理流量で通水するとともに、残りの原水を、凝集沈殿装置より流出した凝集沈殿処理水の一部で希釈した後に、生物接触濾過装置に通水するようにした水処理方法を提供する。
【0007】
また本発明は、上記した水処理方法を実施する水処理装置であって、濾材層を内部に有し、流入水を生物濾過する生物接触濾過装置と、凝集剤を混和する急速混和槽とフロック形成槽と沈殿槽とを有し、流入水中の懸濁質を凝集沈殿させる凝集沈殿装置とを並列に配置し、原水の濁度に応じて原水を生物接触濾過装置と凝集沈殿装置とに所定量ずつ分配供給する原水供給手段を設け、前記原水の分配量に応じて、凝集沈殿装置より流出した凝集沈殿処理水のうちの所定量を生物接触濾過装置の流入部へ返送する返送手段を設けた水処理装置を提供する。
【0008】
生物接触濾過装置としては、上段側に多孔質中空状濾材を充填し、下段側にセラミックからなる多孔質粒状濾材を充填した固定層式複層型生物接触濾過装置などを使用できる。
【0009】
生物接触濾過装置の前段に、凝集剤を混和する別途の急速混和槽を配置するのが好ましい。
また生物接触濾過装置および凝集沈殿装置の後段に、生物濾過処理水および凝集沈殿処理水を濾過する砂濾過装置または膜濾過装置を配置するのが好ましい。
【0010】
上記した構成によれば、原水の濁度が低い時には、生物接触濾過装置に優先的に通水されるので、高い生物処理効果が得られる。冬期の原水のような、低濁度であってアンモニア性窒素濃度が高い原水が流入する場合には、この処理によってアンモニア性窒素が効果的に除去される。
【0011】
また原水の濁度が低い時には、凝集フロックが沈殿しにくく、そのために凝集剤の注入率が過剰になりがちであるが、生物接触濾過装置に優先的に通水されることで凝集沈殿装置への流入量が減少し、滞留時間が設計滞留時間よりも長くなるので、凝集沈殿処理効率が高くなり、凝集剤の注入量は少なくてすむ。
【0012】
一方、原水の濁度が高い時には、凝集沈殿装置に優先的に通水され、その残りが凝集沈殿処理水で希釈された後に生物接触濾過装置に通水されるので、生物接触濾過装置への流入水の濁度が小さくなり、濾材層への負荷が小さくなって、逆洗頻度が少なくなり、高い生物濾過効率が維持される。高濁度時(降雨時)に処理水の需要が最大になることはないので、このような運用方法が可能である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
図1において、原水11が流入する着水井12の下流に、凝集沈殿装置13と生物接触濾過装置14とが並列に配置されており、生物接触濾過装置14の流入部側に急速混和槽15が設けられ、凝集沈殿装置13と生物接触濾過装置14のさらに下流に砂濾過装置16が設けられている。
【0014】
着水井12より凝集沈殿装置13と生物接触濾過装置14とに向けて原水を供給する原水供給管17は途中で分岐していて、各原水供給分岐管17a,17bの端部において凝集沈殿装置13と急速混和槽15とに連通している。各原水供給分岐管17a,17bの途中には流量調整弁18,19が介装されている。20は着水井12内の原水の濁度を測定する濁度計である。
【0015】
凝集沈殿装置13は、急速混和槽21とフロック形成槽22,23と沈殿槽24とを上流側から順に配列したものであり、通常の原水流入量より小さい最大処理量Q1となるように設計されている。沈殿槽24の下流端に設けられた処理水導出管25は、砂濾過装置16に導かれるとともに途中で分岐しており、その処理水導出分岐管26は返送ポンプ27と流量調整弁28とを介装し、流量調整弁19と急速混和槽15との間の原水供給分岐管17bに連通している。
【0016】
生物接触濾過装置14は、急速混和槽15からの送水管29が上部に連通した槽30の内部に、上段側に合成樹脂製の多孔質中空状濾材31を充填し、下段側にセラミック製の多孔質球状濾材32を充填したものであり、通常の原水流入量より小さい最大処理量Q2となるように設計されている。槽下部に連通して設けられた処理水導出管33は、砂濾過装置16に導かれている。
【0017】
上記した構成における作用を説明する。
原水11を着水井12に流入させ、原水供給管17を通じて定流量Q0で流出させる状態において、着水井12内の原水11の濁度を濁度計20によって測定する。
【0018】
そして、測定された濁度値が所定濁度D0以下の時には、流量調整弁18,19,28を適当開度に調整して、原水供給管17内の原水を原水供給分岐管17b側に、生物接触濾過装置14の最大処理量に等しい流量Q2で流入させ、原水供給分岐管17a側に流量(Q0−Q2)で流入させる。
【0019】
原水供給分岐管17b側の流量Q2の原水は、急速混和槽15において凝集剤34,pH調整剤35を添加し、急速攪拌したうえで、送水管29を通じて生物接触濾過装置14の槽30内へ流入させ、ある程度凝集した濁質や微生物の一部を上段側の中空状濾材31に担持させ、この中空状濾材31に担持されなかった濁質や微生物を下段側の球状濾材32に担持させる。槽30より流出する生物濾過処理水は処理水導出管33を通じて砂濾過装置16に流入させ、濾過して処理水36とする。
【0020】
また原水供給分岐管17a側の流量(Q0−Q2)の原水は、凝集沈殿装置13の急速混和槽21とフロック形成槽22,23と沈殿槽24に順次流入させ、その際に、急速混和槽21の流入部近傍で凝集剤37,pH調整剤38を添加して急速攪拌し、フロック形成槽22,23で緩速攪拌することにより、原水中の濁質や微生物を凝集させてフロックを形成させ、沈殿槽24で汚泥として沈殿させる。そして沈殿槽24よりオーバーフローする上澄水を処理水導出管25を通じて砂濾過装置16へ導き、濾過して処理水36とする。
【0021】
このようにして、生物接触濾過装置14に優先的に通水するようにしたことにより、高い生物処理効果を得ることができ、特に冬期の、低濁度であってアンモニア性窒素濃度が高い原水の処理に有利である。
【0022】
また、生物接触濾過装置14に優先的に通水されることで、凝集沈殿装置13への流入量が減少し、滞留時間が設計滞留時間よりも長くなるので、低濁度時には沈殿しにくいフロックも確実に沈殿させることができ、効率よく凝集沈殿処理を行えるとともに、凝集剤37の注入量を低減できる。
【0023】
一方、測定された濁度値が所定濁度D0より高い時には、流量調整弁18,19を適当開度に調整して、原水を原水供給分岐管17a側に、凝集沈殿装置13の最大処理量に等しい流量Q1で流入させ、原水供給分岐管17b側に流量(Q0−Q1)で流入させる。
【0024】
原水供給分岐管17a側の流量Q1の原水は、上記と同様にして凝集沈殿装置13で処理し、沈殿槽24よりオーバーフローする上澄水を処理水導出管25によって導出する。その際に、流量調整弁28を適当開度に調整し、返送ポンプ27を駆動することによって、処理水導出管25内の上澄水を処理水導出分岐管26側に流量Qpで流入させ、残りの流量Q1−Qpの上澄水を砂濾過装置16へ導き、濾過して処理水36とする。ただし、流量Qpは、次の式:Q0−Q1+Qp=Q2 を満足する流量として設定する。
【0025】
原水供給分岐管17b側の流量(Q0−Q1)の原水は、処理水導出分岐管26からの流量Qpの上澄水と合することで、生物接触濾過装置14の最大処理量に等しい流量Q2としたうえで、上記と同様にして、急速混和槽15と生物接触濾過装置14とにおいて処理し、生物接触濾過装置14より流出する処理水を処理水導出管33を通じて砂濾過装置16に流入させ、濾過して処理水36とする。
【0026】
このようにして、凝集沈殿装置13に優先的に通水し、その残りを凝集沈殿処理水で希釈して生物接触濾過装置14に通水するようにしたことにより、原水11の濁度が高いにもかかわらず、生物接触濾過装置14への流入水の濁度が小さくなり、中空状濾材31や球状濾材32への負荷が小さくなるので、逆洗頻度を低減し、高い処理効率を維持できる。
【0027】
なお、原水流入量が小さい場合には、凝集沈殿装置13と生物接触濾過装置14の一方のみに原水を供給することも起こり得るが、処理に支障はない。
また、上記においては、急速混和槽15で凝集剤34を混和することによって、原水11中の濁質や微生物をある程度凝集させるようにしたが、原水の濁度が低い場合は凝集剤の混和は不要であり、急速混和槽15の設置を省略することも可能である。
【0028】
また生物接触濾過装置14として、上段側に合成樹脂製の中空状濾材31を充填し、下段側にセラミック製の球状濾材32を充填したものを例示したが、この構成に限定されるものではない。しかし、全体に中空状濾材31を充填した場合には、懸濁質の担持量が許容範囲を超えた時に濁度が一気に上昇するおそれがあり、また全体にセラミック製濾材32を充填した場合には、濾過抵抗が大きくなり、逆洗頻度が多くなるので、上記したような構成が望ましい。
【0029】
中空状濾材31としては、ポリプロピレン、ポリエチレンなどの合成樹脂、あるいはセラミックなどの他の素材のものを使用することができ、コスト等を考慮して選択すればよい。形状も、円筒状、角筒状など、中空状であればよく、外径4mm、縦寸5mmの円筒状のもので良好な結果が得られたが、これに限定されない。
【0030】
セラミック製濾材32としては、焼成ケイソウ土などの種々の素材のものを使用可能である。形状、粒径も限定されないが、濾過性能の観点からは粒径1.0〜2.0mm程度であるのが好ましい。
【0031】
上記した砂濾過装置16に代えて膜濾過装置を設けてもよい。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、生物接触濾過装置と凝集沈殿装置とを並列に設置し、原水濁度が低い時には、生物接触濾過装置に優先的に通水し、残りを凝集沈殿装置に通水するようにしたので、高い生物処理効果が得られるとともに、より確実に凝集沈殿処理することができ、凝集剤の注入量も低減できる。また原水濁度が高い時には、凝集沈殿装置に優先的に通水し、残りを凝集沈殿処理水で希釈したうえで生物接触濾過装置に通水するようにしたので、生物接触濾過装置の濾材層への負荷が小さくなり、高い処理効率を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態における水処理装置の概略全体構成を示した説明図である。
【図2】従来の水処理方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
13 凝集沈殿装置
14 生物接触濾過装置
15 急速混和槽
16 砂濾過装置
17a,17b 原水供給分岐管
18,19 流量調整弁
20 濁度計
26 処理水導出分岐管
28 流量調整弁
31 多孔質中空状濾材
32 多孔質粒状濾材

Claims (5)

  1. 流入水を濾材層において生物濾過する生物接触濾過装置と、流入水中の懸濁質を凝集剤によって凝集沈殿させる凝集沈殿装置とを用いた水処理方法であって、原水の濁度が所定濁度以下の時には、原水を生物接触濾過装置にその最大処理流量で通水するとともに、残りの原水を凝集沈殿装置に通水し、原水の濁度が所定濁度より高い時には、原水を凝集沈殿装置にその最大処理流量で通水するとともに、残りの原水を、凝集沈殿装置より流出した凝集沈殿処理水の一部で希釈した後に、生物接触濾過装置に通水することを特徴とする水処理方法。
  2. 濾材層を内部に有し、流入水を生物濾過する生物接触濾過装置と、凝集剤を混和する急速混和槽とフロック形成槽と沈殿槽とを有し、流入水中の懸濁質を凝集沈殿させる凝集沈殿装置とを並列に配置し、原水の濁度に応じて原水を生物接触濾過装置と凝集沈殿装置とに所定量ずつ分配供給する原水供給手段を設け、前記原水の分配量に応じて、凝集沈殿装置より流出した凝集沈殿処理水のうちの所定量を生物接触濾過装置の流入部へ返送する返送手段を設けたことを特徴とする水処理装置。
  3. 生物接触濾過装置が、上段側に多孔質中空状濾材を充填し、下段側にセラミックからなる多孔質粒状濾材を充填した固定層式複層型生物接触濾過装置であることを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
  4. 生物接触濾過装置の前段に、凝集剤を混和する別途の急速混和槽を配置したことを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
  5. 生物接触濾過装置および凝集沈殿装置の後段に、生物濾過処理水および凝集沈殿処理水を濾過する砂濾過装置または膜濾過装置を配置したことを特徴とする請求項2記載の水処理装置。
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