JP4004802B2 - 押出加工用ダイス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば各種のアルミニウム製熱交換器に用いられる扁平多穴チューブ、特にマイクロチューブと呼ばれる超小形の扁平多穴チューブを押出加工する際に用いて好適な押出加工用ダイスに関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、各種電気機器や自動車等の機械部品を製造するに際しては、各種金属による押出加工が用いられている。このうち、特にカーエアコン用エバポレータ一、コンデンサー、ラジエーター等の熱交換器に用いられる各種のアルミニウム製熱交換用チューブを製造するにあたっては、素材であるアルミニウムの熱間加工性がよいことから上述の押出加工が広く用いられる。
【0003】
図5は、このような押出加工によって成形される、カーエアコン用エバポレーター、コンデンサー、ラジエーター等のアルミニウム製熱交換器に用いられる扁平多穴チューブ101の一例を示す。この図に示すように、扁平多穴チューブ101は、複数の穴102,…がそれぞれ隔壁103,…を介して所定間隔をあけて並列に並べられてなるものである。そして、この扁平多穴チューブ101は、例えば、幅Waが約13mm、厚さTが1mm、穴102の径Wbが0.6mm、穴数が15〜19程度の超小形の、いわゆるマイクロチューブと呼ばれるものである。
【0004】
また、図6には、この扁平多穴チューブ101を押出加工する際に用いられる加工用ダイスの一例を示す。この押出加工用ダイス105は、外観略長方形の板状をなすオスダイス106と外観略円柱状をなすメスダイス107からなる。
なお、図6では、オスダイス106とメスダイス107のそれぞれの一部しか示していない。
【0005】
この押出加工用ダイスは、オスダイス106の先端に形成した複数の突起部108をメスダイス107の型穴109内に位置させた状態で、オスダイス106とメスダイス107を図示せぬ互いの嵌合部を嵌合させて連結し、この連結したオス・メスダイスを押出装置(図示略)に装着する。そして、アルミニウム等の素材を、型穴109と突起部108,…との間に形成される隙間から押し出すことによって、前述した扁平多穴チューブ101を得るのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上記の押出加工用ダイスでは、該ダイスにアルミニウム等の素材が流れ込むときに、図6に示すオスダイス106の突起部108に高圧高温状態の素材が流れ込んで過大な圧力が作用することとなり、同突起部108の摩耗が速く進行してしまう。このため、オスダイス106の頻繁な交換が必要になって、金型費高騰を招くという問題を有していた。この問題は、特に、穴の数が多い図5の扁平多穴チューブ101を形成する場合、使用するオスダイス106の突起部108の肉厚が薄くなって摩耗に対する抗力が弱くなることから、顕著に表れる。
【0007】
このような問題に対処すべく、最近では、図7中鎖線に示すように、オスダイス106の先端の突起部108を含むコア部分を別体とし、このコア部分(以下、中子106aと呼ぶ)を摩耗に強い超硬合金等で作り、他の部分(以下、ボディ106bと呼ぶ)を通常のダイス鋼で作ったものも開発されている(例えば、特開平9−155438号公報参照)。
【0008】
ところで、上記のようにボディ106bと中子106aとを別体とし、中子106aを耐摩耗性に優れる超硬合金又はハイスピード鋼等で作ったオスダイス106の場合、それを用いた総加工時間が長くなると、図8に示すように、ボディ106bの後端面106bbに突き当たる、中子106aの後端部の左右に張り出すストッパ部分110に、クラックCが生じるおそれがあることが判明した。
【0009】
本発明者らがこの原因について検討したところ以下のことがわかった。
すなわち、押出成形開始時に、素材がオスダイス106の後端側から先端に向けて流れ込むのに伴い、オスダイス106の後端面には、図7中Faで示すように、素材押出方向へ強い衝撃力が加わる。ここで、ボディ106bは前端面の左右が図示せぬメスダイスの嵌合部分に嵌合して、前方(素材押出方向)への移動を規制されている。このため、この前方への移動を規制されたボディ106bにより、図8に示すように、中子106aの後端部の左右のストッパ部分110にはボディ106bから後方側へ反力Fbを受ける。この結果、ストッパ部分110には衝撃力Faと反力Fbによる強い剪断力が作用し、この剪断力によって同ストッパ部分110にクラックCが生じることがわかった。
【0010】
なお、オスダイス106が素材により押出方向に衝撃力を受けるのは、押出成形開始時に限らず、その後の押出成形時においても脈動の形で衝撃力を受ける。以上のことを考慮すると、オスダイス106の中子106aには素材押出方向に繰り返し衝撃力が加わることとなり、このことも上記クラックCが生じる一つの要因と推定された。
しかも、中子106は前述したように耐摩耗性をあげるため、超硬合金又はハイスピード鋼等の脆性材料を使用しており、このこともクラックCが生じる大きな要因の一つと推定された。
【0011】
また、前述したオスダイス106にあっては、押出加工後において、押出加工装置に残る素材を切断するときに、押出加工中とは逆方向の衝撃力がオスダイス106に加わるが、図7に示すオスダイスでは、中子106aの素材押出方向への移動を規制しているものの、その逆方向への中子106aの移動は規制しておらず、中子106aのボディ106bへの嵌合が緩い場合には、中子106aが抜け出る不具合が発生するおそれもあった。
【0012】
本発明は、上記事情に鑑みて成されたものであって、その目的とするところは、オスダイスのボディ内に挿入配置される中子が損傷されるのを未然に防止でき、しかも、中子がボディから抜け出るおそれもない、押出加工用ダイスを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の点を特徴としている。すなわち、請求項1記載の押出加工用ダイスは、互いに所定間隔をあけて配される複数の突起部を有するオスダイスと、前記突起部が挿入される型穴を有するメスダイスとを備え、これらオスダイスとメスダイスを嵌合させて連結した状態で押出装置に装着され、素材が前記型穴と前記突起部との間に形成される隙間から押し出されることによって、扁平多穴チューブの押出成形が行われる押出加工用ダイスにおいて、前記オスダイスは、ボディと、該ボディの略中央に形成された貫通孔に挿入される中子とからなり、前記中子の後端部に、該中子を前記ボディの貫通孔に挿入した状態において前記ボディの貫通孔から外部に突出されて前記ボディの後端面に突き当たるストッパ部分が形成され、前記中子とボディとの間には、前記貫通孔の両側の内側部に位置するように前記ボディを個々に貫通し、前記貫通孔に挿入された中子の両側に形成されている凹部状の外側部に挿入されて前記中子の前記貫通孔からの抜け止めを果たす抜止用ピンが挿入されていることを特徴としている。
【0014】
請求項2にかかる発明では、請求項1記載の押出加工用ダイスにおいて、前記ボディがハイスピード鋼あるいはダイス鋼からなり、前記中子が超硬合金からなることを特徴としている。
【0015】
請求項3にかかる発明では、請求項1または2記載の押出加工用ダイスにおいて、前記抜止用ピンは、断面円状であって、該断面の半分を前記中子の凹部型の外側部に挿入して前記ボディの貫通孔の内側部との中間位置に配置されてなることを特徴としている。
【0016】
本発明の押出加工用ダイスによれば、中子とボディとの間に、中子の抜け止めを果たす抜止用ピンを挿入しており、これら抜止用ピンは、必要に応じてそれらの本数並びに配置個所を任意に設定することができるから、押出成形開始時等に中子に素材押出方向へ強い衝撃力が作用する場合でも、中子が損傷するのを未然に防止でき、同時に中子がボディから抜け出るのも防止できる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1は、上述した図5に示す扁平多穴チューブ101を成形する際に好適に用いられる押出加工用ダイスのうちのオスダイス1を示している。なお、メスダイスの構造については、前記従来例で説明したものと同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0018】
オスダイス1は、ボディ2と、このボディ2に形成された貫通孔21に背面側から挿入される中子3からなっている。
ボディ2は、例えばハイスピード鋼あるいは熱間ダイス鋼等の材料からなっていて、その前端面22の中央部左右には、これから突出する左右の段部23,23が形成されている。そして、これら段部23,23の中央部には、中子3の前端に形成された櫛歯状の突起部31,…が、前記貫通孔21を貫通して前方へ露出した状態で配置される。
【0019】
また、ボディ2の上記前端面22を挟む両側面24には、それぞれ上記突起部31側に向けて漸次板厚が薄くなる流れ込み部25が形成されている。そして、この流れ込み部25の両側に位置する側面24が均一な板厚を有して、メスダイスの図示せぬ嵌合部に嵌合する嵌合張出部26、26とされている。
【0020】
前記中子3は、ボディ2と同程度かそれよりも硬い材料、例えば、超硬合金またはハイスピード鋼によって作られる。中子3は、前端部の幅寸法が先端に向かうに従い漸次小さくなっていて、その先端には前記櫛歯状の突起部31が中子3を構成する他の部分と一体に形成されている。また、中子3の後端部には左右に張り出すストッパ部分32、32が形成され、このストッパ部分32,32は、中子3をボディ2の貫通孔21内に挿入セットするとき、ボディ2の後端面2aに突き当たるようになっている。
【0021】
中子3の前端に形成される突起部31,…の形成方法としては、例えば、前加工として、ワイヤー放電加工により中子の前端面の突起部31,…が形成される予定箇所の間にそれぞれスリットを形成し、後加工に、凹状の円弧面が多数並列的に並べられてなる全体が櫛歯状の電極加工板を2個、前述のスリットが形成されてなる中子の前端面に凹状の円弧面を対向させて、それら端面を上下両側から挟み込むように配置し、これらクシ状の電極加工板を同中子構成体本体の端面に近づけながら、両者間に高電圧をかけて放電加工を行う方法がある。
【0022】
また、他の方法として、突起部31,…に対応する多数の孔を予め形成した電極加工板を、直接、中子3の前端面に近づけ、それら電極加工板と中子3との間に高電圧をかけて放電加工を行う方法等もある。
【0023】
図1、図2に示すように、前記オスダイス1を構成するボディ2と中子3との間には、中子3の抜け止めを果たす抜止用ピン4が挿入されている。抜止用ピン4は、左右一対それぞれ中子3の外側部3aとボディ2の貫通孔21の内側部21aとの間に挿入配置されている。
抜止用ピン4は、ここでは断面円状のものを用いているが、これに限られることなく、断面楕円状、あるいは断面4角形状または6角形状等の角形のものを用いても良い。
【0024】
上述した構成のオスダイス1を用いて図5に示す扁平多穴チューブ101を得るには、オスダイス1の先端に配置される複数の突起部31,…を図6に示すようなメスダイス107の型穴109内に位置させた状態で、オスダイス1とメスダイスを互いの嵌合部を嵌合させて連結し、この連結したオス・メスダイスを押出装置に装着する。そして、アルミニウム等の素材を、メスダイスの型穴とオスダイス1の突起部31,…との間に形成される隙間から押し出すことによって、前述の扁平多穴チューブ101を得る。
【0025】
ここで、中子3とボディ2との間には、中子3の抜け止めを果たす抜止用ピン4を挿入しており、これら抜止用ピンは、必要に応じてそれらの本数並びに配置個所を任意に設定することができる。したがって、押出成形開始時等に中子3に素材押出に伴う強い衝撃力が作用する場合でも、その衝撃力に中子3の抜止用ピン4との接触部分3aが対抗することとなり、したがって、図8に示したような中子の後端部の左右に張り出すストッパ部分32、32の基端部にクラックCが生じる等の中子3が損傷されるのを未然に防止できる。
【0026】
なお、上述の実施の形態はあくまで本発明の例示であり、本発明は要旨を逸脱しない範囲で適宜設計変更可能である。
【0027】
例えば、図1、図2に示す実施の形態の押出加工ダイスでは、中子3の前端に設ける突起部31,…を、中子3を構成する他の部分と一体に形成しているが、これに限られることなく、図3,図4に示すように、中子構成体35に多数の貫通孔36,…を所定間隔をあけて並列に形成し、これら各貫通孔36,…に後面側から棒状体37,…を、その後端が中子構成体35の後面と面一になるよう、締まり嵌めにより挿入セットする中子も考えられる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、中子の後端部にボディの貫通孔から外部に突出されてボディの後端面に突き当たるストッパ部分が形成された上に、中子とボディとの間であって、前記貫通孔の両側の内側部に位置するように前記ボディを個々に貫通し、前記貫通孔に挿入された中子の両側に形成されている凹部状の外側部に挿入されて前記中子の前記貫通孔からの抜け止めを果たす抜止用ピンが挿入されていて、これら抜止用ピンは、必要に応じてそれらの本数並びに中子の両側において配置個所を任意に設定することができるから、押出成形開始時等に中子に素材押出方向へ強い衝撃力が作用する場合でも、中子のストッパ部分が損傷するのを未然に防止でき、同時に中子がボディの貫通孔から抜け出るのも防止できる。
【0029】
また、抜止用ピンを左右一対挿入配置するので、中子をボディから抜け出ないよう左右バランス良く中子の移動規制力を働かせることができ、全体として、比較的小さな規制力で中子の移動並びに抜け止めを果たすことができる。
【0030】
さらに、抜止用ピンとして断面円状のものを用いる場合には、ピンと中子やボディとの接触部分の一部に荷重が集中することがなく、中子の移動規制力を、ピンとの接触部分全体に幅広く分散することができ、この点においても、中子の損傷をより一層防止できる。また、抜止用ピンを中子の外側部とボディの貫通孔の内側部との間に挿入配置する場合には、中子全体の強度低下を防ぎ、もって中子の損傷をより一層防止することができる。ちなみに、中子の幅方向中央部分に抜止用ピン挿通用の孔を設ける場合には、中子の全体としての強度が低下し、押出加工時に中子に剪断力等が働く場合に、挿通用孔から端を発してクラックが生じるおそれがでてくる。
また、本発明においてボディをハイスピード鋼あるいはダイス鋼から形成し、中子を超硬合金から形成する場合、中子の耐摩耗性を高めることができる反面、中子が脆性材料からなるので、押出加工時の衝撃による中子でのクラック発生の危険も有するが、前記ストッパ部材に加え、抜止用ピンをボディ両側の凹部状の外側部に挿入して中子の抜け止めをなすことにより、押出加工時の衝撃をストッパ部材に加えて抜止用ピンでも受けることができるので、中子の損傷を未然に防止しながら中子の抜け出しを防止できる押出加工用ダイスを提供することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態の押出加工用ダイスのオスダイスを示す斜視図である。
【図2】 本発明の実施形態の押出加工用ダイスのオスダイスの中子を示す斜視図である。
【図3】 本発明の他の実施形態の押出加工用ダイスのオスダイスを示す斜視図である。
【図4】 本発明の他の実施形態の押出加工用ダイスのオスダイスの中子を示す斜視図である。
【図5】 扁平多穴チューブを示す斜視図である。
【図6】 従来の押出加工用ダイスを示す一部の分解斜視図である。
【図7】 従来の押出加工用ダイスのオスダイスを示す斜視図である。
【図8】 従来の押出加工用ダイスのオスダイスの中子を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 オスダイス
2 ボディ
3 中子
21 貫通孔
3a 中子の外側部
21a ボディの貫通孔の内側部

Claims (3)

  1. 互いに所定間隔をあけて配される複数の突起部を有するオスダイスと、前記突起部が挿入される型穴を有するメスダイスとを備え、これらオスダイスとメスダイスを嵌合させて連結した状態で押出装置に装着され、素材が前記型穴と前記突起部との間に形成される隙間から押し出されることによって、扁平多穴チューブの押出成形が行われる押出加工用ダイスにおいて、前記オスダイスは、ボディと、該ボディの略中央に形成された貫通孔に挿入される中子とからなり、前記中子の後端部に、該中子を前記ボディの貫通孔に挿入した状態において前記ボディの貫通孔から外部に突出されて前記ボディの後端面に突き当たるストッパ部分が形成され、前記中子とボディとの間には、前記貫通孔の両側の内側部に位置するように前記ボディを個々に貫通し、前記貫通孔に挿入された中子の両側に形成されている凹部状の外側部に挿入されて前記中子の前記貫通孔からの抜け止めを果たす抜止用ピンが挿入されていることを特徴とする押出加工用ダイス。
  2. 前記ボディがハイスピード鋼あるいはダイス鋼からなり、前記中子が超硬合金からなることを特徴とする請求項1に記載の押出加工用ダイス。
  3. 請求項1または2記載の押出加工用ダイスにおいて、前記抜止用ピンは、断面円状であって、該断面の半分を前記中子の凹部型の外側部に挿入して前記ボディの貫通孔の内側部との中間位置に配置されてなることを特徴とする押出加工用ダイス。
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