JP4003351B2 - Ig処理法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、DRAM等のLSI作製に適するシリコンウェーハを得るために、シリコンウェーハを加熱してイントリンシックゲッタリング(intrinsic gettering、以下、IGという。)処理する方法に関する。更に詳しくはチョクラルスキー法(以下、CZ法という。)により引上げられたシリコン単結晶インゴット、及びこのインゴットから切出されたシリコンウェーハを950℃以下の低温でIG処理する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、メガビットメモリの量産化に基づいてDRAM等の半導体素子の高集積化が要求され、シリコンウェーハについてもより一層の高品質化が要望されている。
この要望に応えるための1つの方法として、IG処理法がある。この処理法はシリコンウェーハの内部に予め欠陥を作るか、或いは不純物を故意に添加しておき、その後のプロセス途上で発生する汚染を予め作った欠陥の周辺に吸収し、デバイスを作るウェーハ表面の近傍領域に欠陥や汚染が発生するのを防ぐ処理法である。
一方、近年のデバイスの高集積化によりデバイス工程における熱処理温度が1000℃以下の低温化傾向にあり、この低温化に伴って前工程であるIG処理においても低温化が強く望まれている。
【0003】
このため、本出願人らは、シリコン単結晶インゴットから切出された、研削研磨した直後のシリコンウェーハを500〜800℃で0.5〜20時間保持してウェーハ内に酸素析出核を導入する工程と、この酸素析出核を含むシリコンウェーハを室温から800〜1000℃まで急速加熱して0.5〜20分間保持する工程と、急速加熱して0.5〜20分間保持したシリコンウェーハを更に室温まで放冷する工程と、放冷したシリコンウェーハを500〜700℃から2〜10℃/分の速度で800〜1100℃まで加熱しその温度で2〜48時間保持する工程とを含むIG処理法について提案した(特開平8−45945)。
【0004】
この処理法では、上記温度条件で急速加熱すると、ウェーハ表面は勿論、ウェーハ内部も一時的に熱平衡濃度以下になり、格子間シリコン原子が欠乏状態になり、酸素析出核が安定に成長し易い環境になる。同時にこの欠乏した格子間シリコン原子を補って安定状態になるために、ウェーハ表面では格子間シリコン原子の生成が起こり、生成した格子間シリコン原子はウェーハ内部に拡散し始める。格子間シリコン原子の欠乏状態にあったウェーハ表面付近は格子間シリコン原子の生成ですぐに飽和状態になり、酸素析出核は消滅を始める。しかし、ウェーハ表面で生成した格子間シリコン原子がウェーハ内部にまで拡散するにはある程度の時間を要するため、ウェーハ表面から内部に深く入るほど酸素析出核が成長し易い環境が長く続く。従って、ウェーハ表面に近いほど酸素析出核の密度は低く、またこの熱処理時間(0.5〜20分)が長いほど酸素析出物の形成されない層(以下、ZD層という。)の厚さは大きくなる。また800〜1000℃の範囲で温度が高いほど、格子間シリコン原子の拡散係数が大きく、短時間でZD層の厚さは大きくなる。
急速加熱し、室温に放冷した後で800〜1100℃まで再び加熱すると、急速加熱で生き残ったウェーハ内部の酸素析出核が成長して酸素析出物となり、安定なIG源となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記IG処理法は、IG源を生成するための前処理として、研削研磨した直後のシリコンウェーハを500〜800℃で0.5〜20時間保持してウェーハ内に酸素析出核を導入する工程を必要とし、更に急速加熱を行った後でウェーハ内部の酸素析出核を酸素析出物に成長させるための熱処理を必要とした。このため、ウェーハの状態での熱処理回数が多い不具合があった。
本発明の目的は、シリコンウェーハの状態での熱処理回数が少なくて済み、950℃以下の熱処理で所望のIG効果を奏するIG処理法を提供することにある。 本発明の別の目的は、この処理法で作られたIG能力の高いIGウェーハを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本願発明のIG処理法は、シリコン単結晶インゴットの引上げ速度をV(mm/分)、インゴット−シリコン融液の接触面の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、温度勾配に対する引上げ速度の比(V/G(mm2/分・℃))を格子間シリコン型点欠陥の凝集体の発生を防止する第1臨界比((V/G)1)以上であって、空孔型点欠陥の凝集体をインゴットの中央にある空孔型点欠陥が支配的に存在する領域内に制限する第2臨界比((V/G)2)以下に維持することにより、結晶に起因したパーティクルも侵入型転位も発生せず、シリコンウェーハの状態で熱酸化処理した際にウェーハ中心部にウェーハ総面積の80%の広さを有するディスク状の酸化誘起積層欠陥が顕在化するように、前記インゴットを引上げる工程と、前記インゴットから切出された研削研磨した直後のシリコンウェーハを室温から700〜950℃まで30℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5〜30分間保持する工程と、前記急速加熱して保持したシリコンウェーハを室温まで放冷し、これによりウェーハ表面から1〜100μmの深さにわたってDZ層(酸素析出物の形成されない層)が形成され、このDZ層より深い部分の酸素析出物密度が1×10 7 〜3×107個/cm3であって、転位発生を伴わないシリコンウェーハを得る工程とを有する。このIG処理法により、上記課題を解決した。
ウェーハの状態で熱酸化処理をした際にウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにシリコン融液から引上げられ、かつ転位発生を伴わないインゴットを用い、このインゴットから切出された研削研磨した直後のウェーハを上記条件で急速加熱することにより、従来のウェーハ内に酸素析出核を導入する前熱処理工程及び酸素析出核の成長工程が不要となり、インゴットから切出された研削研磨した直後のウェーハを上記条件で急速加熱する高いIG効果を奏する。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のシリコンウェーハは、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からインゴットをボロンコフ(Voronkov)の理論に基づいた所定の引上げ速度プロファイルで引上げた後、このインゴットをスライスして作製される。
一般的に、CZ法によりホットゾーン炉内のシリコン融液からシリコン単結晶のインゴットを引上げたときには、シリコン単結晶における欠陥として、点欠陥(point defect)と点欠陥の凝集体(agglomerates:三次元欠陥)が発生する。点欠陥は空孔型点欠陥と格子間シリコン型点欠陥という二つの一般的な形態がある。空孔型点欠陥は一つのシリコン原子がシリコン結晶格子で正常的な位置の一つから離脱したものである。このような空孔が空孔型点欠陥になる。一方、原子がシリコン結晶の格子点以外の位置(インタースチシャルサイト)で発見されるとこれが格子間シリコン点欠陥になる。
【0009】
点欠陥は一般的にシリコン融液(溶融シリコン)とインゴット(固状シリコン)の間の接触面で形成される。しかし、インゴットを継続的に引上げることによって接触面であった部分は引上げとともに冷却し始める。冷却の間、空孔型点欠陥又は格子間シリコン型点欠陥は拡散により互いに合併して、空孔型点欠陥の凝集体(vacancy agglomerates)又は格子間シリコン型点欠陥の凝集体(interstitial agglomerates)が形成される。言い換えれば、凝集体は点欠陥の合併に起因して発生する三次元構造である。
空孔型点欠陥の凝集体は、COP(Crystal Originated Particle)、LSTD(Laser Scattering Tomograph Defects)又はFPD(Flow Pattern Defects)と呼ばれる欠陥を含み、格子間シリコン型点欠陥の凝集体はLD(Interstitial-type Large Dislocation)と呼ばれる欠陥を含む。COPとは、鏡面研磨後のシリコンウェーハをアンモニアと過酸化水素の混合液で洗浄すると、ウェーハ表面に形成される結晶に起因したピットである。このピットもウェーハをパーティクルカウンタで測定すると、本来のパーティクルとともにパーティクルとして検出される。LSTDとは、シリコン単結晶内に赤外線を照射したときにシリコンとは異なる屈折率を有し散乱光を発生する源であり、FPDとは、インゴットをスライスして作製されたシリコンウェーハを30分間セコ(Secco)エッチング液で化学エッチングしたときに現れる特異なフローパターンを呈する痕跡の源である。またLDは、侵入型転位であって、転位クラスタとも呼ばれたり、或いはこの欠陥を生じたシリコンウェーハをフッ酸を主成分とする選択エッチング液に浸漬するとピットを生じることから転位ピットとも呼ばれる。
【0010】
ボロンコフの理論は、欠陥の数が少ない高純度インゴットを成長させるために、インゴットの引上げ速度をV(mm/分)、ホットゾーン構造でインゴット−シリコン融液の接触面の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、V/G(mm2/分・℃)を制御することである。この理論では、図1に示すように、V/Gは関数として空孔濃度及び格子間シリコン濃度を図式的に表現し、ウェーハで空孔/格子間シリコン領域の境界がV/Gによって決定されることを説明している。より詳しくは、V/G比が臨界点以上では空孔型点欠陥が支配的に存在するインゴットが形成される反面、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン型点欠陥が支配的に存在するインゴットが形成される。
【0011】
本発明の所定の引上げ速度プロファイルは、インゴットがホットゾーン炉内のシリコン溶融物から引上げられる時、温度勾配に対する引上げ速度の比(V/G)が格子間シリコン型点欠陥の凝集体の発生を防止する第1臨界比((V/G)1)以上であって、空孔型点欠陥の凝集体をインゴットの中央にある空孔型点欠陥が支配的に存在する領域内に制限する第2臨界比((V/G)2)以下に維持されるように決められる。
【0012】
この引上げ速度のプロファイルは、実験的に基準インゴットを軸方向にスライスすることで、シミュレーションによって上記ボロンコフの理論に基づき決定される。即ち、この決定は、シミュレーションの後、インゴットの軸方向スライス及びスライスされたウェーハの確認を行い、更にシミュレーションを繰り返すことによりなされる。シミュレーションのために複数種類の引上げ速度が所定の範囲で決められ、複数個の基準インゴットが成長される。図2に示すように、シミュレーションのための引上げ速度プロファイルは1.2mm/分のような高い引上げ速度(a)から0.5mm/分の低い引上げ速度(c)及び再び高い引上げ速度(d)に調整される。上記低い引上げ速度は0.4mm/分又はそれ以下であることもあってもよく、引上げ速度(b)及び(d)での変化は線形的なものが望ましい。
【0013】
異なった速度で引上げられ複数個の基準インゴットは各別に軸方向にスライスされる。最適のV/Gが軸方向のスライス、ウェーハの確認及びシミュレーションの結果の相関関係から決定され、続いて最適な引上げ速度プロファイルが決定され、そのプロファイルでインゴットが製造される。実際の引上げ速度プロファイルは所望のインゴットの直径、使用される特定のホットゾーン炉及びシリコン融液の品質等を含めてこれに限定されない多くの変数に依存する。
【0014】
引上げ速度を徐々に低下させてV/Gを連続的に低下させたときのインゴットの断面図を描いてみると、図3に示される事実が分かる。図3には、インゴット内での空孔型点欠陥が支配的に存在する豊富領域が[V]、格子間シリコン型点欠陥が支配的に存在する領域が[I]、及び空孔型点欠陥の凝集体及び格子間シリコン型点欠陥の凝集体が存在しないパーフェクト領域が[P]としてそれぞれ示される。図3に示すように、インゴットの軸方向位置P1は、中央に空孔型点欠陥が支配的に存在する領域を含む。位置P2は位置P1に比べて中央に小さい空孔型点欠陥が支配的に存在する領域を含む。位置P4は格子間シリコン型点欠陥が支配的に存在するリング領域及び中央のパーフェクト領域を含む。また位置P3は中央に空孔型点欠陥もなく、縁部分に格子間シリコン型点欠陥もないので全てパーフェクト領域である。
【0015】
図3から明らかなように、位置P1に対応したウェーハW1は、中央に空孔型点欠陥が支配的に存在する領域を含む。位置P4に対応したウェーハW4は、格子間シリコン型点欠陥が支配的に存在するリング及び中央のパーフェクト領域を含む。また位置P3に対応したウェーハW3は中央に空孔型点欠陥もないし、縁部分に格子間シリコン型点欠陥もないので全てパーフェクト領域である。位置P2に対応したウェーハW2は、ウェーハW1に比べて中央にウェーハ総面積の1/2の面積(50%で空孔型点欠陥が支配的に存在する領域を含む。
【0016】
この空孔型点欠陥が支配的に存在する領域のパーフェクト領域に接する僅かな領域は、ウェーハ面内でCOPもLDも発生していない領域である。しかしこのシリコンウェーハに対して、従来のOSF顕在化熱処理に従った、酸素雰囲気下、1000℃±30℃の温度で2〜5時間熱処理し、引続き1130℃±30℃の温度で1〜16時間熱処理すると、OSFを生じる。図4に示すように、ウェーハW1ではウェーハの周縁付近にOSFリングが発生する。このOSFリングで囲まれた空孔型点欠陥が支配的に存在する領域はCOPが出現する傾向がある。これに対して、ウェーハW2ではOSFはリング状にならずに、ウェーハの中心部にディスク状に発生する。本発明で用いられるシリコンウェーハは、このウェーハW2であって、ウェーハ総面積の25%以上にOSFが発生する。OSFがウェーハ総面積の25%未満では、酸素析出物(以下、BMD(Bulk Micro Defect)という。)の発生領域が狭く、十分なIG効果を得にくい。好ましくは50〜80%である。
【0017】
本発明のシリコンウェーハW2は、図5に示すようにOSFがリング状でなく、中心部に顕在化するように選定して決められた引上げ速度プロファイルで成長したインゴットをスライスして作製される。図6はその平面図である。このシリコンウェーハW2ではOSFがリング状を形成しないため、COPフリーである。またLD(侵入型転位)の発生もない。本発明のシリコンウェーハW2を作り出すインゴットは、転位発生を伴わない酸素析出物を1×10 5 〜3×107個/cm3の割合で含む。このため、特開平8−45945号公報に示されるように急速加熱の前にウェーハの状態で500〜800℃の比較的低温で0.5〜20時間保持して、ウェーハ内に高密度に酸素析出核を導入しなくてもよい。BMD密度が1×10 5 個/cm3未満では、ウェーハ状態で急速加熱を行ったときに十分なIG効果を得にくい。また3×107個/cm3はOSF領域に発生し得る最大のBMD密度である。
【0018】
本発明の急速加熱の方法は、転位発生を伴わない酸素析出物を上記割合で含む室温のシリコンウェーハを700〜950℃の温度に加熱した炉に素早く入れる方法が好ましいが、転位発生を伴わない酸素析出物を上記割合で含む室温のシリコンウェーハを高熱発生可能なランプを用いた高速加熱炉内に配置し、ランプスイッチを入れて熱射を開始し急速に700〜950℃の温度に加熱させる方法でもよい。ここで急速加熱とは、30℃/分以上の昇温速度で熱処理することをいう。ランプ光照射で急速加熱する場合にはウェーハを均一に加熱できるため、予め加熱した炉に入れる場合と比較してウェーハがより反りにくいという利点がある。急速加熱して到達する最終温度が、700℃未満ではウェーハ表面近傍における酸素析出物の消滅が不十分でDZ層を十分に確保できない。また950℃を越えると、ウェーハ表面近傍の酸素析出物が消滅する前に転位が発生し、DZ層を十分に確保できない。好ましくは800〜900℃である。また保持時間が0.5分未満ではウェーハ表面における酸素析出物を縮小させる時間が短すぎ、ウェーハ表面での酸素析出物の消滅が不十分でDZ層を十分に確保できない。また30分を越えると、必要以上の厚さのDZ層が得られ、しかも生産性に悪影響を及ぼす。このため、保持時間は0.5〜30分に決められる。好ましくは10〜30分である。急速加熱は窒素雰囲気中、酸素雰囲気中又は大気中で行われる。好ましくは窒素雰囲気中である。
この急速加熱の後、シリコンウェーハを室温まで放冷すれば、ウェーハ表面から1〜100μmの深さにわたってDZ層が形成され、このDZ層より深い部分のBMD密度が1×10 7 〜3×107個/cm3のIGウェーハが得られる。
【0019】
【実施例】
次に本発明の実施例を比較例とともに説明する。
参考例1
ウェーハの状態で酸素雰囲気下、1000℃で2時間熱処理し、引続き1100℃の温度で12時間熱処理をした際にウェーハ総面積の25%にOSFが発生するように、図1に示したV/Gが臨界点以上の(V/G)1以上(V/G)2以下の領域でシリコン融液からシリコン単結晶インゴットを引上げた。このインゴットはその全長が図3に示した位置P2に対応する。引上げられたインゴットからスライスされたシリコンウェーハをラッピングし、面取り加工を施した後、化学エッチング処理によりウェーハ表面のダメージを除去して鏡面ウェーハを得た。
この鏡面ウェーハを昇温速度30℃/分で室温から850℃まで昇温し、5分間保持した後、室温まで放冷した。
【0020】
参考例2
ウェーハ総面積の50%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた以外、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で850℃、5分間加熱した。
<実施例
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で850℃、0.5分間加熱した。
<実施例
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で850℃、5分間加熱した。
【0021】
<実施例
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で850℃、10分間加熱した。
<実施例
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で850℃、20分間加熱した。
<実施例
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で850℃、30分間加熱した。
【0022】
<実施例
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で700℃、5分間加熱した。
<実施例
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で800℃、5分間加熱した。
<実施例
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で950℃、5分間加熱した。
【0023】
<比較例1>
ウェーハ総面積の15%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で850℃、5分間加熱した。
<比較例2>
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で650℃、5分間加熱した。
<比較例3>
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で1000℃、5分間加熱した。
【0024】
<比較例4>
ウェーハ総面積の80%にOSFが発生するようにインゴットを引上げた後、参考例1と同様に加工したウェーハを参考例1と同じ昇温速度で850℃、40分間加熱した。
<比較評価>
参考例1〜2、実施例1〜及び比較例1〜4の各シリコンウェーハを劈開し、更にウェーハ表面をライト(Wright)エッチング液で選択エッチングを行い、光学顕微鏡の観察により、DZ層の幅と、ウェーハ表面から深さ250μmにおける酸素析出物(BMD)密度を測定した。これらの結果を表1に示す。また実施例の急速加熱後のウェーハ内のBMDを50,000倍に拡大した顕微鏡写真を図7に示す。
【0025】
【表1】
Figure 0004003351
【0026】
表1から明らかなように、IG熱処理後に、比較例1ではOSF領域が15%と少な過ぎたため、BMD密度がIG効果を発揮するとされる106/cm3台にならなかった。また比較例2では熱処理温度が650℃と低過ぎるため、ウェーハ表面にDZ層を形成できなかった。また比較例3では熱処理温度が1000℃と高過ぎたため、必要以上に幅広いDZ層が形成された。更に比較例4では熱処理時間が40分と長過ぎたため、やはり必要以上に幅広いDZ層が形成された。これらに対して、参考例1〜2及び実施例1〜のシリコンウェーハでは、BMD密度が16〜107/cm3台を示した。特にOSF領域が80%の実施例〜8では、IG効果があるとされるBMD密度は107/cm3台であり、そのうち熱処理時間が10〜30分の実施例3〜5及び熱処理温度が950℃の実施例では、45〜85μmの幅広いDZ層が得られた。
また図7の顕微鏡写真より、急速加熱処理後のウェーハ中に存在する酸素析出物は転位を伴っていることが判る。
【0027】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、ウェーハの状態で熱酸化処理をした際にウェーハ総面積の80%に酸化誘起積層欠陥(OSF)が発生するようにシリコン融液から引上げられ、かつ転位発生を伴わないインゴットを用いて、このインゴットから切出されたウェーハを700〜950℃の比較的低温で急速加熱することにより、酸素析出物を1×10 7 〜3×107個/cm3含むことができ、従来のウェーハ内に酸素析出核を導入する前熱処理工程及び酸素析出核の成長工程が不要となり、インゴットから切出された研削研磨した直後のウェーハを少ない熱処理回数でIG能力の高いウェーハにすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ボロンコフの理論を基づいた、V/G比が臨界点以上では空孔豊富インゴットが形成され、V/G比が臨界点以下では格子間シリコン豊富インゴットが形成されることを示す図。
【図2】所望の引上げ速度プロファイルを決定するための引上げ速度の変化を示す特性図。
【図3】本発明による基準インゴットの空孔豊富領域、格子間シリコン豊富領域及びパーフェクト領域を示すX線トポグラフィの概略図。
【図4】図3の位置P1に対応するシリコンウェーハW1にOSFリングが出現する状況を示す図。
【図5】図3の位置P1に対応するインゴットの軸中心を通って軸方向にスライスした断面図。
【図6】図3の位置P2に対応するシリコンウェーハW2の中心部にOSFが出現する状況を示す図。
【図7】実施例4の急速加熱後のウェーハ内の酸素析出物の状況を示す顕微鏡写真図。

Claims (1)

  1. シリコン単結晶インゴットの引上げ速度をV(mm/分)、インゴット−シリコン融液の接触面の温度勾配をG(℃/mm)とするときに、温度勾配に対する引上げ速度の比(V/G (mm2/分・℃))を格子間シリコン型点欠陥の凝集体の発生を防止する第1臨界比((V/G)1)以上であって、空孔型点欠陥の凝集体をインゴットの中央にある空孔型点欠陥が支配的に存在する領域内に制限する第2臨界比((V/G)2)以下に維持することにより、結晶に起因したパーティクルも侵入型転位も発生せず、シリコンウェーハの状態で熱酸化処理した際にウェーハ中心部にウェーハ総面積の80%の広さを有するディスク状の酸化誘起積層欠陥が顕在化するように、前記インゴットを引上げる工程と、
    前記インゴットから切出された研削研磨した直後のシリコンウェーハを室温から700〜950℃まで30℃/分以上の昇温速度で急速加熱して0.5〜30分間保持する工程と、
    前記急速加熱して保持したシリコンウェーハを室温まで放冷し、これによりウェーハ表面から1〜100μmの深さにわたってDZ層が形成され、このDZ層より深い部分の酸素析出物密度が1×10 7 〜3×107個/cm3であって、転位発生を伴わないシリコンウェーハを得る工程と
    を有するIG処理法。
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