JP4003030B2 - タイミングチェーンの潤滑構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイミングチェーンの潤滑構造に関するもので、特に、タイミングチェーンを広範囲にわたり潤滑することができるタイミングチェーンの潤滑構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、DOHCエンジンでは、図5に示すように、クランクスプロケット1並びに吸気側カムスプロケット2及び排気側カムスプロケット3にタイミングチェーン7を巻回することにより、吸気側カムシャフト5及び排気側カムシャフト6をクランクシャフト4に連動して回転させている。このタイミングチェーン7は、チェーンラインの外側(図5中の右側)への膨らみがチェーンガイド8により規制されると共に、チェーンテンショナー9により予張力が付与されている。また、シリンダブロック18には、図示しないオイルポンプにより圧送されたオイルを噴射するオイルジェット10が、クランクスプロケット1近傍で、且つタイミングチェーン7で囲まれた位置に設けられており、該オイルジェット10から噴射するオイルをクランクスプロケット1に噛み込む直前のタイミングチェーン7に供給して、タイミングチェーン7を潤滑させている。
【0003】
しかしながら、従来のタイミングチェーン7の潤滑のみでは、エンジンの高回転域においてはオイルジェット10で供給されたオイルが遠心力によりタイミングチェーン7に留まらずに飛散してしまうので、潤滑が十分に行われず、タイミングチェーン7及びクランクスプロケット1の摩耗を早めて寿命を低下させてしまう恐れがあった。そこで、高強度材料の使用或いは熱処理変更等により、タイミングチェーン7及びクランクスプロケット1自体の強度を高めることが従来から考案されていたが、大幅なコスト増となり現実的な対策には至らなかった。また、近年、タイミングチェーン7に多く採用されているサイレントチェーンは、ピン11が貫通する各プレート12(供に図4参照)間の間隔が微小で、プレート12と該プレート12を連結するピン11との間隙にオイルが浸潤しにくいため、このようなサイレントチェーンを採用したタイミングチェーン7においてもオイルを十分に浸潤させることができるようなタイミングチェーン7の潤滑構造が要望されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、エンジンの高回転域或いはサイレントチェーンを用いた場合でも、十分にオイルを浸潤させることができるタイミングチェーンの潤滑構造を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、クランクシャフトと吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトに夫々、クランクスプロケットと吸気側カムスプロケットと排気側カムスプロケットを取付け、クランクスプロケットと吸気側カムスプロケット及び排気側カムスプロケットにタイミングチェーンを巻き掛け、このタイミングチェーンの内周形状をチェーンガイドに規制される張り側がチェーンテンショナーによって予張力が付与される緩み側より直線形状にしてクランクシャフトの回転を吸気側カムシャフト及び排気側カムシャフトに伝達し、タイミングチェーンを覆うチェーンカバーをシリンダブロックとシリンダヘッドとに取付け、吸気側カムシャフトに可変バルブタイミング機構のアクチュエータを取付け、このアクチュエータをオイル通路によってオイルポンプと連絡し、このオイル通路に設けたオイルコントロールバルブによってアクチュエータへのオイルの供給を制御して吸気側カムシャフトと吸気側カムスプロケットとの位相を変化させる一方、オイルポンプから圧送されるオイルによってタイミングチェーンを潤滑するタイミングチェーンの潤滑構造において、オイルコントロールバルブを、タイミングチェーンの内周部であってクランクシャフトの軸心方向から見た場合にアクチュエータの下方且つ吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトの中間よりタイミングチェーンの張り側寄りに配置し、タイミングチェーンをサイレントチェーンとし、オイル通路の途中にこのオイル通路より小径のオイルジェットをタイミングチェーンの内周部に向けて配設し、このオイルジェットから噴出するオイルをタイミングチェーンの張り側に向けて送ることを特徴とする。
【0006】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のタイミングチェーンの潤滑構造において、チェーンガイド及びチェーンテンショナーの上側をカムスプロケットの側方に延ばしたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明のタイミングチェーンの潤滑構造を図1ないし図4に基づいて説明する。なお、前述した従来のタイミングチェーンの潤滑構造と構成が同じ部分については、同じ名称及び符合を用いてその説明を省く。本タイミングチェーン7の潤滑構造は、可変バルブタイミング機構を駆動するアクチュエータ23と、該アクチュエータ23への作動油の供給を制御するオイルコントロールバルブ13とを連絡するオイル通路14に、チェーンガイド8の摺動面8aに指向したオイルジェット22を設け、該オイルジェット22からオイルを噴射してタイミングチェーン7にオイルを供給することにより、タイミングチェーン7にオイルを浸潤させる構造になっている。
【0008】
図1に示すように、エンジン16の一側にはクランクスプロケット1、吸気側カムスプロケット2及び排気側カムスプロケット3にタイミングチェーン7が巻回されており、シリンダヘッド17とシリンダブロック18とに、該タイミングチェーン7を覆うように設けられたチェーンカバー19(図3参照)が締結されている。
【0009】
また、本エンジン16には上記可変バルブタイミング機構が採用されており、チェーンカバー19の外側に配設されたオイルコントロールバルブ13によりシリンダヘッド17の所定位置に設けられたアクチュエータ23への作動油の供給を制御して、吸気側カムシャフト5と吸気側カムスプロケット2との位相を変移させている。そして、上記オイルコントロールバルブ13は、図1によく示されるように、シリンダヘッド17とシリンダブロック18との境界で、且つタイミングチェーン7により囲まれるような位置に設置されている。また、チェーンカバー19には、該内側に、オイルコントロールバルブ13とアクチュエータ23とを連絡するオイル通路としての進角側オイル通路14と遅角側オイル通路15とが、図1のシリンダヘッド右側に位置するチェーンの内側に沿うようにして形成されており、オイル通路14及び15は、それぞれ進角側オイルパイプ24及び遅角側オイルパイプ25を介してアクチュエータ23に連通されている。また、チェーンカバー19には、該外側に、一方がオイルコントロールバルブ13の作動油圧供給ポート(図示せず)に接続されると共に、他方がタイミングチェーン7のチェーンラインを跨いでオイルポンプに連絡するオイルパイプ20が設けられており、該オイルパイプ20を介してオイルポンプにより圧送されたオイルがオイルコントロールバルブ13に供給されている。そして、図示しないコントロールユニットの信号に基づいてソレノイドバルブ21を駆動することによりオイルコントロールバルブ13のポートの開閉を制御して、オイルコントロールバルブ13の供給ポートと進角側ポートとを連通すると共に、オイルコントロールバルブ13の供給ポートと遅角側ポートとを連通する。これにより、エンジン16の低回転及び中回転時には遅角側オイル通路15を介してオイルコントロールバルブ13から吸気側カムシャフト5に取付けられたアクチュエータ23にオイルが供給され、高回転時には進角側オイル通路14を介してオイルコントロールバルブ13から吸気側カムシャフト5に取付けられたアクチュエータ23にオイルが供給される。そして、このエンジン高回転時に進角側オイル通路14を介してアクチュエータ23にオイルが供給されることにより、可変バルブタイミング機構はバルブタイミングを進角側に変移させる。
【0010】
また、進角側オイル通路14には、この進角側オイル通路14の略中間部位、即ち気側カムスプロケット近傍に、チェーンガイド8の摺動面8a上側に指向させたオイルジェット22が設けられており、該オイルジェット22は、進角側オイル通路14に作動油圧が負荷されることにより、オイルをチェーンガイド8の摺動面8a上側に向けて噴射して、タイミングチェーン7を潤滑する構造になっている。したがって、進角側オイル通路14には、タイミングチェーン7の潤滑に多量のオイルが必要となる高回転時にオイルが供給されるため、タイミングチェーン7の潤滑に多量のオイルが必要なときに進角側オイル通路14に設けたオイルジェット22からタイミングチェーン7にオイルを噴射することができる。なお、本タイミングチェーン7の潤滑構造においても、オイルジェット10によりオイルをクランクスプロケット1に噛み込む直前のチェーンに供給して、タイミングチェーン7及びクランクスプロケット1を潤滑する構造になっている。
【0011】
なお、本タイミングチェーン7の潤滑構造では、オイルジェット22を可変バルブタイミング機構のアクチュエータ23とオイルコントロールバルブ13とを連絡する進角側オイル通路14に設けたが、可変バルブタイミング機構を備えていないエンジンにおいては、該チェーンカバーに進角側オイル通路14に相当する位置にオイル通路14を形成し、該オイル通路14にオイルジェット22をチェーンガイド8の摺動面8a上側に指向するよう設け、また、チェーンラインを跨ぐオイルパイプ20をチェーンカバー19の外側に設けることにより、オイルポンプにより圧送されたオイルをオイルジェット22から噴射するよう構成してもよい。
【0012】
このような構成において、本タイミングチェーン7の潤滑構造の作用を説明する。前述したように、タイミングチェーン7は、シリンダブロック18の所定位置に設けられたオイルジェット10から図示しないオイルポンプで圧送されたオイルがクランクスプロケット1に噛み込む直前のチェーンに噴射され、常時潤滑されている。また、エンジン16が設定された所定の回転数に到達することで、コントロールユニットの信号に基づいてソレノイドバルブ21が駆動されてオイルコントロールバルブ13の供給ポートと進角側ポートとが連通し、進角側オイル通路14に作動油圧が負荷される。これにより、オイルジェット22からもオイルが噴射され、該オイルジェット22から噴射されたオイルは、チェーンガイド8の摺動面8a上側を通過するチェーンに塗布されて、タイミングチェーン7を潤滑する。また、オイルジェット22から噴射されたオイルは、直接タイミングチェーン7に塗布されると共にチェーンガイド8の摺動面8aに受け止められて摺動面8aに摺動するチェーンにも流れて供給され、タイミングチェーン7を広範囲にわたり潤滑することができる。
【0013】
したがって、オイルジェット10によりクランクスプロケット1に噛み込まれる直前のチェーンにオイルを供給すると共に、オイルジェット22によりチェーンガイド8の摺動面8a上側に向けてオイルを噴射することで、タイミングチェーン7を広範囲にわたり潤滑してにオイルを完全に浸潤させることができ、タイミングチェーン7及びクランクスプロケット1の寿命を向上させることができる。また、オイルジェット22をチェーンカバー19の内側に形成された既存の可変バルブタイミング機構の進角側オイル通路14に設けたので、簡単な構造でオイルジェット22を追加することができ、コストの増大を抑制することができる。さらに、オイルジェット22をエンジン16の高回転域において、より多くのオイルをタイミングチェーン7に供給することができる。
【0014】
また、本タイミングチェーン7の潤滑構造を可変バルブタイミング機構が採用されていないエンジンに用いた場合には、シリンダヘッド17に対向するオイル通路14をチェーンカバー19の余剰領域を利用して形成することができ、また、チェーンラインを跨ぐ部分のオイルパイプ20をチェーンカバー19の外側に設けたので、オイル通路14を形成するためにチェーンカバー19の厚みを増やす必要がなく、チェーンカバー19を薄く形成することができ、エンジン16の全長の増加を抑えることができる。
【0015】
【発明の効果】
タイミングチェーンの潤滑構造によれば、オイル通路に設けたオイルジェットにより、タイミングチェーンにオイルを直接噴射してタイミングチェーンを潤滑して、タイミングチェーン及びクランクスプロケットの寿命を向上させることができる。
【0016】
また、本タイミングチェーンの潤滑構造によれば、オイル通路に設けられたオイルジェットによりシリンダヘッド側のチェーンにオイルが供給されると共に、オイルが下方に流れてシリンダブロック側のチェーンにも供給され、タイミングチェーンを広範囲にわたり潤滑することができ、タイミングチェーン及びクランクスプロケットの寿命を向上させることができる。
【0017】
また、本タイミングチェーンの潤滑構造によれば、オイルジェットから噴射されたオイルが直接チェーンに供給されるばかりでなく、チェーンガイドの摺動面で受け止められたオイルが該摺動面に摺動するチェーンにも供給され、エンジンの高回転領域或いはオイルが浸潤しにくいサイレントチェーンを用いた場合であっても、オイルを完全に浸潤させることができ、コストの増大を抑制してタイミングチェーン及びクランクスプロケットの寿命を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本タイミングチェーンの潤滑構造を示す説明図で、チェーンカバーを透視した図である。
【図2】 本タイミングチェーンの潤滑構造を示す説明図で、図1の一部を拡大した図である。
【図3】 本タイミングチェーンの潤滑構造を示す説明図で、特に、チェーンカバーが取付けられた状態を示す図である。
【図4】 図1のX−X断面図で、ピンの軸線を含むタイミングチェーンの軸断面図である。
【図5】 従来のタイミングチェーンの潤滑構造を示す説明図である。
【符号の説明】
1 クランクスプロケット
2 吸気側カムスプロケット(カムスプロケット)
3 排気側カムスプロケット(カムスプロケット)
7 タイミングチェーン
8 チェーンガイド
8a 摺動面
14 進角側オイル通路(オイル通路)
17 シリンダヘッド
18 シリンダブロック
19 チェーンカバー
22 オイルジェット
24 進角側オイルパイプ(オイルパイプ)

Claims (2)

  1. クランクシャフトと吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトに夫々、クランクスプロケットと吸気側カムスプロケットと排気側カムスプロケットを取付け、クランクスプロケットと吸気側カムスプロケット及び排気側カムスプロケットにタイミングチェーンを巻き掛け、このタイミングチェーンの内周形状をチェーンガイドに規制される張り側がチェーンテンショナーによって予張力が付与される緩み側より直線形状にして前記クランクシャフトの回転を吸気側カムシャフト及び排気側カムシャフトに伝達し、前記タイミングチェーンを覆うチェーンカバーをシリンダブロックとシリンダヘッドとに取付け、吸気側カムシャフトに可変バルブタイミング機構のアクチュエータを取付け、このアクチュエータをオイル通路によってオイルポンプと連絡し、このオイル通路に設けたオイルコントロールバルブによって前記アクチュエータへのオイルの供給を制御して前記吸気側カムシャフトと前記吸気側カムスプロケットとの位相を変化させる一方、オイルポンプから圧送されるオイルによって前記タイミングチェーンを潤滑するタイミングチェーンの潤滑構造において、
    前記オイルコントロールバルブを、前記タイミングチェーンの内周部であってクランクシャフトの軸心方向から見た場合に前記アクチュエータの下方且つ前記吸気側カムシャフトと排気側カムシャフトの中間より前記タイミングチェーンの張り側寄りに配置し、前記タイミングチェーンをサイレントチェーンとし、前記オイル通路の途中にこのオイル通路より小径のオイルジェットを前記タイミングチェーンの内周部に向けて配設し、このオイルジェットから噴出するオイルをタイミングチェーンの張り側に向けて送ることを特徴とするタイミングチェーンの潤滑構造。
  2. 前記チェーンガイド及び前記チェーンテンショナーの上側をカムスプロケットの側方に延ばしたことを特徴とする請求項1に記載のタイミングチェーンの潤滑構造。
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