JP4000780B2 - 廃棄物の埋立方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物の埋立方法に関し、特に山間地などの自然地形を利用して構築された大規模な廃棄物処分場における廃棄物の埋立方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
不定形の谷部に廃棄物処分場を構築し、順次埋立て施工を行うにあたって、従来より次の問題点が指摘されていた。
処分場直上の自然降雨が全て処分場内に入り込み、廃棄物に触れることで汚染水が多量に発生することになり、また、処分場底部の遮水工が不完全な時には地下水汚染の原因ともなる。
多量の汚染水を処理するために大規模な処理設備や、長期にわたる水処理のため、設備費および維持費などに多大な費用を割かなければならなかった。
また、多量の処理水を河川に放流するため、周辺住民が不安感などをもつ原因となっていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
以上の不具合を解決するためには、処分場内を全て屋根架構などで覆ってしまうことが考えられるが、山間地などの自然地形を利用して構築された大規模処分場においては、設備が極めて大がかりとなり、実際には実現不可能である。
【0004】
なお、自然降雨による処分場内への配水を全て絶ってしまった場合には、分解性微生物の増殖およびこれに伴う廃棄物の分解が停滞し、自然への還元が遅れる結果ともなるため、適度な配水も必要である。
【0005】
本発明は、以上の課題を解決するものであって、その目的は、自然降雨による過度な汚染水の発生を防止すること、および処分用地内の廃棄物の分解を促進できるようにした廃棄物の埋立方法を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1に係る発明は、廃棄物処分場用地を所定高さの複数の隔壁によって複数に区画し、該区画された一部の埋立作業位置に前記隔壁に沿って移動或いは移設可能に屋根架構を配置し、該屋根架構が配置された区画への廃棄物の埋立完了後、該区画の廃棄物の表面をある程度透水性を有する遮水材で覆い、この後に、前記屋根架構を次の区画の埋立作業位置に前記隔壁に沿って移動或いは移設可能に配置することを特徴とする。
本発明による廃棄物の埋立方法によれば、大規模な埋立用地であっても、埋立位置のみに屋根架構を配置すればよいため、屋根掛けの費用を安価にすることができる。また、埋立現場では、降雨による大量の水の滲出がないため、大規模な水処理設備を必要とせず、処理費用を安価にすることができる。さらに、廃棄物の表面をある程度透水性を有する遮水材で覆っているので、廃棄物の表面に降り注ぐ雨水の浸透調整を行った上で、余剰水を強制排出することができる。従って、廃棄物内部を適度な湿潤度合いに保持することができるので、分解性微生物の増殖およびこれに伴う廃棄物の分解を促進することができ、埋立完了後に早期に自然還元できる。
【0007】
また、本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の廃棄物の埋立方法であって、前記埋立作業は、処分用地の底部から高さ方向に複数層に分けて行われ、下層の埋立が完了する毎に前記屋根架構を上方に盛り替えることを特徴とする。
本発明による廃棄物の埋立方法によれば、一度に埋立てする場合に比べて、大きな土圧が隔壁に作用しないため、隔壁の厚みを薄くすることができる。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、請求項1又は2に記載の廃棄物の埋立方法であって、前記各区画の底部には、勾配方向に沿って所定高さの区画堤が立ち上げた状態に設けられていることを特徴とする。
本発明による廃棄物の埋立方法によれば、勾配に沿って区画堤が設けられているので、投棄された廃棄物の地滑りなどによる移動を防止でき、土圧などを均等に振り分けることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、添付図面を参照して詳細に説明する。図1〜図4は本発明方法の実施形態を示すもので、図1は平面図、図2は図1のA−A線における正断面図、図3は同B−B線における側断面図、図4は同B−B線における埋立進捗後の側断面図である。
【0010】
同図において、廃棄物処分場1は、例えば、山間などのV字形に切立った大規模な地形を利用し、この地形における地山Eの上部および下部を大型擁壁2で仕切り、その内部を処分場1として造成したもので、図2に示すように、深さ方向に向けて略逆台形状断面であって、境界部3を設けて複数段(本実施の形態では二段)に整形掘削し、底部から一層目4(下層)を先ず第一次埋立用地とし、その上部の二層目5を二次埋立用地として利用できるようにしている。
【0011】
また、処分場1の周囲および境界部3に沿って排水用の側溝6を配置し、さらには処分場1の周囲に廃棄物搬送用の道路7を周回状に造成している。処分場1の底部中心には勾配方向に向けて多目的底部排水トンネル8が造成されている。この排水トンネル8は自然地下水の下流側への放流と、前記側溝6に流入する雨水などを集水して排水するもので、各側溝5にパイプ9を介して連通している。
【0012】
排水トンネル8の上面は底版コンクリート10で覆われ、その周囲には、所定高さを有するコンクリート擁壁11を形成するとともに、必要な遮水工により斜面を覆うことで、処分場1の内外を水密に遮断している。
【0013】
なお、図示を省略するが、処分場1の内底面には、滲出水を集排水するための多孔管などが配置され、この多孔管は処分場1の下流側に設けた水処理設備などに連通している。
【0014】
さらに、処分場1内はその勾配方向に直交する横方向に複数の隔壁、すなわち仕切り堰12が造成され、各仕切り堰12によって仕切られた区画毎に廃棄物Xを埋立投棄できるようにしている。また、底版コンクリート10上には勾配方向に沿って、所定高さの区画堤14が立上げた状態に造成され、投棄された廃棄物Xの地滑りなどによる移動を防止し、土圧などを均等に振分けている。
【0015】
前記仕切り堰12は、図3に示すように、第一層目4が完全に埋め尽されるまでは、第一層目4までの高さに構築される下部12aと、第二層目5の埋立が開始される前に図4に示すように、下部12aに連続して上部12bが継足される構造となっており、これによって仕切り堰12の壁厚を薄くしている。
【0016】
以上の構成において、処分場施設の構築後、一層目4の埋立を行うにあたり、埋立現場は各仕切り堰12で区画された内部のうち、上り勾配に沿って下流側区画から順に行われる。この埋立現場では、埋立に先立って移動式屋根架構15が仕切り堰12間を跨ぐようにして架設され、この屋根架構15の内部を埋立位置としている。
【0017】
屋根架構15は、仕切り堰12間に設置される屋根支持壁15aと支持壁15a上に屋根掛けされた蒲鉾型の屋根部15bとからなるもので、仕切り堰12に沿って横移動或いは横移設可能となっている。また、両支持壁15aの高さは各仕切り堰12の段差に応じて調整可能となっている。
【0018】
そして、屋根架構15の内部でダンプトラックなどによる廃棄物Xの搬入および投棄とバックホウなどによる敷き均し、覆土および整地作業が交互になされることになる。覆土に用いられる土砂は粒土分布などが管理され、敷き均し整地時に適度な締固め度合に管理されることにより、透水係数が管理調整されたものが用いられ、これによって埋立内部に適度な水分および空気を含ませることによって内部における分解菌を発育させ、廃棄物Xの分解を促進する。
【0019】
屋根架構15で囲われた内部が全て埋め尽され、整地が完了すると、屋根架構15を図2の矢印に示すように、区画内の別の場所に横に平行移動させ、この直下で新たな埋立作業がなされる。
【0020】
この作業と平行して埋立終了位置の地表面は、遮水シートまたはアスファルト等の遮水材16で覆われる。この遮水材16は、全面遮水ではなく適度な透水係数を持ったシートまたはアスファルトを選択することが望ましい。つまり、自然降雨による過大な水分が表面に供給された場合には、その余剰水は遮水材16の表面を溢流し勾配に沿って系外に流出させることによって、埋立内部を適度な湿潤度合に保持し、廃棄物の分解促進を図っている。
【0021】
このようにして一区画全てが廃棄物Xで埋立てられると、屋根架構15を次の区画にクローラクレーンなどで吊上げ、水平方向に隣接する他の区画位置に盛り替える。また、仕切り堰12の上縁に沿って走行レールを配設するとともに、屋根架構15の下部に該走行レール上を走行可能な車輪を設けるか、走行レール上を摺接するスライド板を設けることにより、車輪の駆動又はウインチ等を用いて引っ張ることにより盛り替えることもできる。また、これと平行して埋立て済の場所では、遮水材16で全面覆われる作業が、区画毎に繰返される。
【0022】
図3は一層目4が全て埋立てられた状態を示すものであり、埋立完了段階で各区画の下流には仕切り堰12に沿って前記側溝6に連通する側溝17が造成され、多量の降雨があると遮水材16の表面雨水を溢流させ、溢流した雨水をこの側溝17或は両側の側溝6を通じて前記排水トンネル8側に放流する。
【0023】
二層目5の埋立作業を行う前に、図4に示すように、仕切り堰12の上部12bを下部12bに継足し施工する。この施工は、一区画の埋立を完了する毎に漸次行っても良いし、全ての区画の一層目4の完了後に一括して行っても良い。前者の場合には、埋立作業を連続して行えるため投棄用地の連続確保に好適である。これに対して後者の場合には、工事が集中するため、施工性が良い上に、埋立休止期間を取れるため、埋立地の養生にも好適である。従って、その得失に応じて施工方法を選択すればよい。
【0024】
その後、前記と同様に、クローラクレーンなどを用いて吊上げることにより、屋根架構15を埋立位置となる区画に盛り替え配設し、前記一層目4と同様の埋立作業を繰返せば、全ての埋立作業が完了することになる。
【0025】
図4は、一括施工の場合であって、最上流区画に屋根架構15を配置して二層目5の埋立てを再開しているが、前述のごとく、漸次施工であっても良いし、下流側区画から順に埋立を行っても良い。施工にあたっては、屋根架構15の内部において一層目4の表面を覆っている遮水材16が遮水シートである場合は、これを一端撤去した後、埋立作業を行い、完了後、同遮水シートを転用することもできるし、遮水材16はある程度透水性があることから、残置したままその上部に埋立を行い、新たな遮水材材を埋立て済の面に敷設することも出来る。
【0026】
なお、以上の実施形態では、埋立を深さ方向に二段階に分けて行っているが、それ以上の複数段に分割して行うことも可能である。また、実施形態では1つの屋根架構15を各区各毎に移設しながら埋立を行ったが、廃棄物Xの搬入量が多い場合には、複数の屋根架構とし、各区画毎に屋根架構15の位置で投棄および埋立作業を行うようにもできる。
【0027】
【発明の効果】
以上の説明により明らかなように、本発明の廃棄物の埋立方法によれば、大規模な廃棄物処分場であっても、屋根架構の設置位置で埋立作業を行うことにより、自然降雨による過度な汚染水の発生を防止できる。
また、埋立完了後の廃棄物の表面をある程度透水性を有する遮水材で覆っているので、廃棄物内部を適度な湿潤度合に保持することができる。従って、廃棄物の分解を促進できるので、埋立後の廃棄物の自然還元を早期に行うことができる。
さらに、勾配に沿って区画堤を設けているので、投棄された廃棄物の地滑りなどによる移動を防止でき、土圧などを均等に振り分けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した廃棄物処分場の平面図である。
【図2】図1のA−A線における正断面図である。
【図3】図1のB−B線における側断面図である。
【図4】図1のB−B線における埋立進捗状態を示す側断面図である。
【符号の説明】
1 廃棄物処分場
4 一層目
5 二層目
12 仕切り堰(隔壁)
12a 仕切り堰下部
12b 仕切り堰上部
15 屋根架構
16 遮水シート
Claims (3)
- 廃棄物処分場用地を所定高さの複数の隔壁によって複数に区画し、該区画された一部の埋立作業位置に前記隔壁に沿って移動或いは移設可能に屋根架構を配置し、該屋根架構が配置された区画への廃棄物の埋立完了後、該区画の廃棄物の表面をある程度透水性を有する遮水材で覆い、この後に、前記屋根架構を次の区画の埋立作業位置に前記隔壁に沿って移動或いは移設可能に配置することを特徴とする廃棄物の埋立方法。
- 前記埋立作業は、処分場用地の底部から高さ方向に複数層に分けて行われ、下層の埋立が完了する毎に前記屋根架構を上方に盛り替えることを特徴とする請求項1に記載の廃棄物の埋立方法。
- 前記各区画の底部には、勾配方向に沿って所定高さの区画堤が立ち上げた状態に設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の廃棄物の埋立方法。
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