JP3999468B2 - 摺動体及びその製造方法並びにメカニカルシール - Google Patents

摺動体及びその製造方法並びにメカニカルシール Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、メカニカルシールの密封環や軸受部材等に好適に使用される摺動体及びその製造方法並びに当該摺動体を密封環として使用したメカニカルシールに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、メカニカルシールとしては、図7に示す如く、シールケース2に固定保持された密封環(以下「固定環」という)1と、回転軸4に軸線方向移動可能に且つ相対回転不能に保持された密封環(以下「回転環」という)3と、回転軸4に固定されたスプリングリテーナ5と回転環3との間に介装されて回転環3を固定環1へと押圧附勢するスプリング6とからなり、両密封環1,3の対向端面たる密封端面1a,3aの相対回転摺接作用により、その相対回転摺接部分の外周側領域たる機内領域Aとその内周側領域たる機外大気領域Bとをシールするように構成した端面接触型のものが周知である。
【0003】
かかるメカニカルシールにあっては、従来から、両密封環1,3の一方又は両方を緻密質炭化珪素焼結材で構成しておくことが提案されている。しかし、かかる緻密質炭化珪素焼結材は硬質で耐摩耗性に優れるものであり、熱的,化学的,機械的特性にも優れたものであることから、密封環の構成材として好適するものであるが、カーボン等のような自己潤滑性を有しないものであり、相手密封環との摺動性(潤滑性)に劣るものであるから、相手密封環が緻密質炭化珪素焼結材等の硬質材製のものである場合には、密封端面間に所謂鳴きと称する騒音が生じたり密封端面同士の固着(焼付)現象が生じる虞れがある。また、相手密封環がカーボン等の軟質材製のものである場合には相手密封環が摩耗し易く、特にカーボン製のものである場合には、カーボン表面に摩擦熱によるブリスター現象(所謂火ぶくれ現象)が生じる虞れがある。
【0004】
そこで、近時、密封環1,3の少なくとも一方を、気孔を全体に亘って散点状に分散配置した多孔質炭化珪素焼結材で構成しておくことが提案されている。かかる多孔質炭化珪素焼結材からなる密封環を使用した場合には、その密封端面に存在する気孔によりシールすべき水等の液体(シール液)が保持されて、気孔が一種のオイルポットとして機能し(以下、かかる機能を「オイルポット機能」という)、密封端面間にシール流体による潤滑膜が形成されて、密封端面間の潤滑性が大幅に向上することになり、上記した問題の発生を可及的に抑制することができる。
【0005】
ところで、緻密質炭化珪素焼結材は、炭化珪素粉末に焼結助剤(ホウ素,アルミニウム,これらの化合物)及びカーボン源(カーボン粉,樹脂)等を添加した焼結原料を造粒,加圧成形(予備成形),焼成(焼結)することによって得られるが、上記した多孔質炭化珪素焼結材は、一般に、焼結助剤を含有しない焼結原料を使用することにより、焼結材の緻密化を阻害して粒子間に気孔を形成するようにしたもの(以下「第1多孔質材」という)と、焼結原料に焼失(熱分解,ガス化)しうる空隙形成用樹脂材(例えば、ポリスチレンビーズ等のポリマービーズ)を添加して、その焼失により生じた空隙を気孔となすようにしたもの(以下「第2多孔質材」という)とに大別される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、第1多孔質材は、焼結助剤を使用しないため焼結粒子間の結合力が弱く、密封環等の摺動体の構成材として使用しうるに十分な強度を確保できない。さらに、粒子間の結合状態にバラツキが生じて、気孔同士が連通し易く、独立気孔を得ることが困難である。気孔同士が連通したものは、密封端面からの浸透漏れを生じるため、メカニカルシールの密封環としては甚だ不適当である。
【0007】
また、第2多孔質材のように焼結原料に空隙形成用樹脂材を添加する場合には、当該樹脂材の焼失に伴う大量のガス発生により焼結材内部に亀裂を生じたり、当該樹脂材の偏析等により気孔径にバラツキが生じ易い。したがって、気孔が均一に分散せず、焼結材強度も低下する虞れがある。
【0008】
ところで、第1及び第2多孔質材の何れにおいても、気孔径を大きくしておくと、多孔質材全体の密度,強度が低下すると共に、摺動体の構成材とした場合には、気孔の周縁エッジ部で相手部材を損傷させる虞れがあり、相手部材との摺動による摩耗量が多くなる。一方、気孔径が小さいと、各気孔による水,油等のシール液や潤滑液を保持する能力つまり潤滑液保持能力が小さいため、摺動面(密封端面等)全体として十分なオイルポット機能が発揮されるためには、気孔率を必要以上に高くしておく(気孔数を必要以上に多くしておく)必要があるが、このようにすれば当然に多孔質材全体の密度,強度が低下することになる。このように、第1及第2多孔質材にあっては、気孔径の大小に拘わらず、オイルポット機能により潤滑性(摺動性)を向上させることと炭化珪素本来の特性を維持できるような密度,強度を確保することとは相反する要請であり、これらの要請を共に満足させることは困難であった。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、炭化珪素本来の特性を損なうことなく、オイルポット機能による潤滑性の向上を図り得て、上記した相反する要請を共に満足させることができる炭化珪素焼結材製の摺動体を提供すると共に、これを好適に製造しうる方法及びこれを密封環として使用することによって良好なシール機能を発揮しうるメカニカルシールを提供することを目的とするものである。
【0010】
本発明は、第1に、上記の目的を達成すべく、微細な気孔を有する多孔質炭化珪素組織が、独立して、緻密質炭化珪素組織中に分散配置されている炭化珪素焼結材で構成された摺動体であって、(1)〜(5)の多孔質構造をなす摺動体を提案する。
(1)多孔質炭化珪素組織に存在する気孔の気孔径が0.5〜3μmであること。
(2)各多孔質炭化珪素組織における気孔率(後述するように「局部気孔率」と略称する)が10〜80%であること。
(3)各多孔質炭化珪素組織部分の径(後述するように「多孔質部分径」と略称する)が20〜100μmであること。
(4)全ての多孔質炭化珪素組織の占める割合(後述するように「多孔質部分割合」と略称する)が9.1〜33.3%であること、
(5)全体の気孔率(後述するように「全体気孔率」と略称する)が1.5〜3.2%であること。
【0011】
かかる摺動体にあって、気孔個々の大きさは微細である(気孔径:0.5〜3μm)が、多数の気孔が多孔質炭化珪素組織部分に集中している形態は、潤滑液保持能力(潤滑液保持容量)の面からみれば、当該多孔質炭化珪素組織部分に1個の大きな気孔が形成されている形態と同一視できる。そして、多孔質炭化珪素組織部分が分散する摺動面形態は、摺動面に大きな気孔つまり大きなオイルポットが分散して存在する形態とみなすことができる。したがって、摺動体ないし炭化珪素焼結材全体の気孔率を必要以上に高くしておかずとも、摺動面全体としてのオイルポット機能が十分に発揮され、相手部材との摺動特性(潤滑性)を大幅に向上させることができる。勿論、気孔は微細なものであるから、気孔の周縁エッジ部により相手部材を損傷させるといった問題も全く生じない。
【0012】
また、多孔質炭化珪素組織部分においては、冒頭で述べた第1多孔質材における場合と同様に、炭化珪素粒子間の結合力(焼結力)が頗る弱い。しかし、摺動体(炭化珪素焼結材)全体が多孔質炭化珪素組織となっている訳ではなく、その所々に存在しているにすぎず、多孔質炭化珪素組織は緻密質炭化珪素組織に囲繞されていることと、緻密質炭化珪素組織部分は焼結時において大きく収縮する(一般に、炭化珪素は加圧することなく焼結させる場合において、焼結時に約1/2程度の容積減となる)ことから、多孔質炭化珪素組織部分はこれを囲繞する緻密質炭化珪素組織部分の収縮力によって強力に圧縮されることになる。その結果、多孔質炭化珪素組織部分における粒子間結合力は、焼結による結合力自体は弱くとも、上記した緻密質炭化珪素組織部分の収縮による外周側からの圧縮作用によって大幅に増大することになる。また、多孔質炭化珪素組織と緻密質炭化珪素組織との境界部分においては、炭化珪素粒子同士の焼結による結合作用と上記圧縮作用による結合力増大作用とによって、緻密質炭化珪素組織におけると同等の粒子間結合力が確保されることになる。したがって、緻密質炭化珪素組織部分における粒子間結合力は勿論、多孔質炭化珪素組織部分における粒子間結合力及び両組織部分間の結合力が高くなり、その結果、炭化珪素焼結材全体の焼結密度,強度が大幅に向上する。しかも、多孔質炭化珪素組織部分がこれを囲繞する緻密質炭化珪素組織部分によって圧縮されていると共に、両組織部分の境界における結合力が高く且つその結合力が両組織部分の境界で極端に変化することがない(結合力の面からは、両組織部分間に明瞭な境界は存在しない)ため、相手部材との摺動によって、多孔質炭化珪素組織部分及びこれと緻密質炭化珪素組織部分との境界部分において脱粒現象が生じるような虞れもない。
【0013】
このように、本発明の摺動体は、炭化珪素本来の特性を損なうことなく、オイルポット機能による潤滑性を大幅に向上させ得るものである。
【0014】
ところで、本発明の摺動体にあって、多孔質炭化珪素組織における気孔の気孔径が0.5μm未満である場合、各多孔質炭化珪素組織における気孔率(以下「局部気孔率」という)が10%未満である場合又は各多孔質炭化珪素組織部分の大きさ(以下「多孔質部分径」という)が10μm未満である場合には、多孔質炭化珪素組織部分がオイルポットとして有効に機能せず、オイルポット機能が十分に発揮されない。多孔質部分径については、これが20μm以上である場合においてオイルポット機能がより効果的に発揮される。一方、気孔径が10μmを超える場合、局部気孔率が80%を超える場合又は多孔質部分径が500μmを超える場合には、緻密質炭化珪素組織部分の収縮による多孔質炭化珪素組織部分又は境界部分における結合力向上が十分に期待できない。気孔径ないし多孔質部分径については、気孔径≦3μm又は多孔質部分径≦100μmである場合に、上記した結合力向上効果がより顕著に発揮される。これらの点から、気孔径は0.5〜10μm(より好ましくは0.5〜3μm)であることが好ましく、局部気孔率は10〜80%であることが好ましく、多孔質部分径は10〜500μm(より好ましくは20〜100μm)であることが好ましい。
【0015】
また、摺動体ないし摺動面において全多孔質炭化珪素組織の占める割合(以下「多孔質部分割合」という)が4.5%未満である場合又は摺動体ないし摺動面全体の気孔率(以下「全体気孔率」という)が1.3%未満である場合には、摺動面全体としてのオイルポット機能が十分でなく、摺動特性をさほど向上させ得ない。特に、多孔質部分割合が9%以上である場合又は全体気孔率が1.5%以上である場合には、オイルポット機能による摺動特性の向上が著しい。一方、多孔質部分割合が75%を超え又は全体気孔率が9%を超えると、緻密質炭化珪素組織部分の収縮による多孔質炭化珪素組織部分又は境界部分の結合力向上が十分に期待できず、摺動体の密度,強度の向上がさほど期待できない。特に、かかる密度,強度の向上は、多孔質部分割合が50%以下である場合又は全体気孔率が5.5%以下である場合において、特に顕著となる。したがって、多孔質部分割合は4.5〜75%(より好ましくは9〜50%)であることが好ましく、全体気孔率は1.3〜9%(より好ましくは1.5〜5.5%)であることが好ましい。なお、摺動体ないし炭化珪素焼結材の全体気孔率は、当該摺動体ないし炭化珪素焼結材の測定密度(一般に水置換法によって測定される)と炭化珪素の理論密度(気孔率の計算上、3.2g/cm2とする)とから算出されるもので、気孔率=(1−(測定密度)/(理論密度))×100で与えられるものである。
【0016】
また、本発明は、第2に、上記した摺動体を好適に製造するための方法を提案する。すなわち、焼結助剤を含有しない多孔質用炭化珪素焼結原料を造粒してなる予備造粒材10〜50gを、焼結助剤を含有する緻密質用炭化珪素焼結原料305.5gと混合し、その混合スラリを造粒して得られる本造粒材を加圧成形することにより所定形状の予備成形体を得た上、その予備成形体を加圧することなく焼成処理することにより、微細な気孔を有する多孔質炭化珪素組織が、独立して、緻密質炭化珪素組織中に分散配置されている炭化珪素焼結材であって、前記(1)〜(5)の多孔質構造をなす摺動体を構成する炭化珪素焼結材を得るようにしたことを特徴とする摺動体の製造方法を提案する。
【0017】
かかる方法によれば、本造粒材の一部に含まれる予備造粒材により、多孔質炭化珪素組織が形成される。すなわち、予備造粒材は、焼結助剤を含有しない多孔質用炭化珪素焼結原料を造粒してなるものであるから、予備造粒材で構成される予備成形体部分は、第1多孔質材と同様に、焼成処理によって多孔質炭化珪素組織となる。そして、上記した気孔径,局部気孔率,多孔質部分径は、主として、多孔質用炭化珪素焼結原料における炭化珪素濃度及び予備造粒材径によって容易に制御するを調整することができ、上記した多孔質部分割合,全体気孔率は、主として、緻密質用炭化珪素焼結原料への予備造粒材の配合量ないし配合比によって容易に制御することができる。
【0018】
ところで、焼結助剤を含有しない予備造粒材によって形成される多孔質炭化珪素組織部分においては、冒頭の第1多孔質材と同様に、一部の気孔同士が連通する場合がある。しかし、多孔質炭化珪素組織部分は上記した如く緻密質炭化珪素組織部分に囲繞されていることから、仮令、一部の気孔同士が連通していたとしても、かかる連通気孔は緻密質炭化珪素組織部分によって閉塞された独立気孔となる。したがって、メカニカルシールの密封環として使用した場合にも、密封端面からの浸透漏れを生じる虞れはない。
【0019】
なお、予備造粒材は多孔質炭化珪素組織を形成するためのものであるから、緻密質炭化珪素焼結原料との混合時において当該予備造粒材の顆粒形態(造粒形態)が破壊されると、独立した形態の多孔質炭化珪素組織を適正に形成することができない。したがって、予備造粒材を調整するために多孔質炭化珪素焼結原料に含有されるポリマ助剤としては、緻密質炭化珪素焼結原料に含有される溶剤に溶解しないものを使用することが必要である。例えば、上記混合スラリを調整する際に使用される溶剤として水が使用される場合は、予備造粒材を調整するためのポリマ助剤としてポリビニルブチラールを使用する。
【0020】
また、本発明は、第3に、2つの密封環が相対回転摺接するように構成されたメカニカルシールにおいて、少なくとも一方の密封環を上記した摺動体で構成したことを特徴とするメカニカルシールを提案する。かかるメカニカルシールによれば、当該摺動体が上記した如く炭化珪素本来の特性を損なうことなく摺動特性(自己潤滑性)を向上させ得たものものであることから、相手密封環の構成材をシール条件に応じて適宜に選択しておくことにより、如何なるシール条件下においても良好なシール機能を発揮させることができる。特に、両密封環を本発明の摺動体で構成した場合には、スラリを扱う場合等の過酷な条件下でも良好なシール機能を発揮させることができる。
【0021】
【実施例】
実施例として、図7に示す構成のメカニカルシール(以下「当該メカニカルシール」という)の固定環1として使用しうる本発明の摺動体A2,A3,A4,B2,B3,B4及び回転環3として使用しうる本発明の摺動体A7,B7を製作すると共に、当該メカニカルシールであって、両密封環1,3の一方又は両方として上記摺動体A2,A3,A4,A7,B2,B3,B4,B7を使用した本発明のメカニカルシールM2,M3,M4,M,N2,N3,N4,N7を組み立てた。また、比較例として、当該メカニカルシールの固定環1として使用しうる摺動体A1,A5,A6,B1,B5,B6を製作すると共に、当該メカニカルシールであって、固定環1として上記摺動体A1,A5,A6,B1,B5,B6を使用したメカニカルシールM1,M5,M6,N1,N5,N6を組み立てた。
【0022】
すなわち、摺動体A1は、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により得られたものである。
【0023】
予備造粒工程: 平均粒子径0.5μmのβ型炭化珪素(β−SiC)粉末100gと、ポリビニルブチラール2gをメタノール200gに溶解させた溶解液とをボールミルによって24時間混合し、その混合液たる多孔質用炭化珪素焼結原料をスプレードライヤーにより60〜80℃で噴霧乾燥することによって造粒し、径30〜100μmの球形状の予備造粒材(顆粒)を得た。
【0024】
焼結原料混合工程: 平均粒子径0.7μmのα型炭化珪素(α−SiC)粉末100gと、焼結助剤としての炭化ホウ素(B4 C)粉末0.5gと、カーボン源たるカーボン粉2gと、成形助剤としての平均分子量6000のポリエチレングリコール(PEG#6000)2g及び平均分子量1000のポリビニルアルコール(PVA#1000)1gを水200gに溶解させた溶解液と、をボールミルにより24時間混合して、緻密質用炭化珪素焼結原料(混合液)を得た。
【0025】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた緻密質用炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、予備造粒工程で得られた予備造粒材5gを添加した上で1時間攪拌混合し、その混合スラリをスプレードライヤーにより130〜150℃で噴霧乾燥することによって造粒して、径30〜100μmの球形状の本造粒材(顆粒)を得た。
【0026】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を固定環製作用金型に充填した上、100MPaで冷間プレス成形して、固定環1に対応する環状形態をなす予備成形体を得た。なお、予備成形体の形状は、焼結時における収縮を考慮して設定される。
【0027】
焼成工程: 予備成形工程で得た予備成形体を、加圧することなく、2150℃のアルゴン雰囲気中で焼成して、固定環1に相当する密封環形状をなす炭化珪素焼結体を得た。
【0028】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた炭化珪素体の一端面をRa=0.05の鏡面に表面研磨(ラップ)する等により、固定環1として使用しうる摺動体A1を得た。この摺動体A1の鏡面部分は、これを固定環1として使用した場合における密封端面1aとして機能するものである。
【0029】
摺動体A2は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を10gとした点を除いて、摺動体A1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体A1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。
【0030】
摺動体A3は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を25gとした点を除いて、摺動体A1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体A1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。なお、摺動体A3は後述するメカニカルシールM3,M7に使用するため2個製作した。
【0031】
摺動体A4は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を50gとした点を除いて、摺動体A1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体A1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。
【0032】
摺動体A5は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を100gとした点を除いて、摺動体A1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体A1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。
【0033】
摺動体A6は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を150gとした点を除いて、摺動体A1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体A1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。
【0034】
摺動体A7は、外観形態(回転環3として使用しうる形態)が異なるものの、摺動体A3と同質のものである。すなわち、摺動体A7は、予備成形工程において固定環製作用金型に代えて回転環製作用金型を使用した点を除いて、摺動体A3と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、回転環3として使用しうるものに製作されている。
【0035】
摺動体B1は、予備造粒工程でα−SiC粉末を使用した点を除いて、摺動体A1と同一の製作工程により得られたものである。すなわち、摺動体B1は、次のような予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により得られたものである。
【0036】
予備造粒工程: 平均粒子径0.7μmのα−SiC)粉末100gと、ポリビニルブチラール2gをメタノール200gに溶解させた溶解液とをボールミルによって24時間混合し、その混合液たる多孔質用炭化珪素焼結原料をスプレードライヤーにより60〜80℃で噴霧乾燥することによって造粒し、径30〜100μmの球形状の予備造粒材(顆粒)を得た。
【0037】
焼結原料混合工程: 平均粒子径0.7μmのα型炭化珪素(α−SiC)粉末100gとB4 C粉末0.5gとカーボン粉2gとPEG(#6000)2g及びPVA(#1000)1gを水200gに溶解させた溶解液とをボールミルにより24時間混合して、緻密質用炭化珪素焼結原料(混合液)を得た。
【0038】
本造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた緻密質用炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、予備造粒工程で得られた予備造粒材5gを添加した上で1時間攪拌混合し、その混合スラリをスプレードライヤーにより130〜150℃で噴霧乾燥することによって造粒して、径30〜100μmの球形状の本造粒材(顆粒)を得た。
【0039】
予備成形工程: 本造粒工程で得られた本造粒材を固定環製作用金型に充填した上、100MPaで冷間プレス成形して、固定環1に対応する環状形態をなす予備成形体を得た。なお、予備成形体の形状は、焼結時における収縮を考慮して設定される。
【0040】
焼成工程: 予備成形工程で得た予備成形体を、加圧することなく、2150℃のアルゴン雰囲気中で焼成して、固定環1に相当する密封環形状をなす炭化珪素焼結体を得た。
【0041】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた炭化珪素体の一端面をRa=0.05の鏡面に表面研磨(ラップ)する等により、固定環1として使用しうる摺動体B1を得た。この摺動体B1の鏡面部分は、これを固定環1として使用した場合における密封端面1aとして機能するものである。
【0042】
摺動体B2は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を10gとした点を除いて、摺動体B1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体B1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。
【0043】
摺動体B3は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を25gとした点を除いて、摺動体B1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体B1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。なお、摺動体B3は後述するメカニカルシールN3,N7に使用するため2個製作した。
【0044】
摺動体B4は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を50gとした点を除いて、摺動体B1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体B1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。
【0045】
摺動体B5は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を100gとした点を除いて、摺動体B1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体B1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。
【0046】
摺動体B6は、本造粒工程における予備造粒材の添加量を150gとした点を除いて、摺動体B1と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、摺動体B1と同一形状をなすもの(固定環1として使用しうるもの)である。
【0047】
摺動体B7は、外観形態(回転環3として使用しうる形態)が異なるものの、摺動体B3と同質のものである。すなわち、摺動体B7は、予備成形工程において固定環製作用金型に代えて回転環製作用金型を使用した点を除いて、摺動体B3と同一の製作工程(予備造粒工程,焼結原料混合工程,本造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程)により得られたものであり、回転環3として使用しうるものに製作されている。
【0048】
以上のようにして得られた摺動体A1〜A7,B1〜B7は、図1及び図2に例示する如く、微細な気孔の集合をなす多孔質炭化珪素組織(同図において黒色をなす部分)が独立して緻密炭化珪素組織中に分散した形態をなしている。多孔質炭化珪素組織は本造粒工程で添加される予備造粒材によって形成されたものであり、当該多孔質炭化珪素組織における気孔形状は炭化珪素の結晶型によって異なっている。すなわち、多孔質炭化珪素組織がβ−SiCで構成されている場合には、図3に例示する如く、気孔(同図における黒色部分)が長孔状になっており、気孔が格子状をなして集合している。一方、α−SiCで構成されている場合には、図4に例示する如く、気孔(同図における黒色部分)が円孔状をなしており、気孔が散点状に集合している。なお、図1は摺動体A2の鏡面を100倍に拡大した顕微鏡写真であり、図3は当該鏡面を200倍に拡大した顕微鏡写真である。また図2は摺動体B2の鏡面を100倍に拡大した顕微鏡写真であり、図4は当該鏡面を200倍に拡大した顕微鏡写真である。
【0049】
而して、摺動体A1〜A7,B1〜B7における多孔質部分割合,密度(測定密度),全体気孔率,曲げ強度は、表1に示す通りであった。密度は水置換法により測定した測定密度であり、全体気孔率は理論密度を3.2g/cm2として測定密度との関係から算出したものである(全体気孔率=(1−(測定密度)/(理論密度))×100)。なお、摺動体A1〜A7,B1〜B7の何れにおいても、気孔は気孔径0.5〜3μmの微細なものであり、局部気孔率は10〜80%であり、多孔質部分径は20〜100μmであった。
【0050】
また、メカニカルシールM1は、当該メカニカルシールの固定環1として摺動体A1を使用すると共に回転環3として周知の緻密質炭化珪素焼結材製のものを使用したものである。なお、緻密質炭化珪素焼結材製の回転環3は、摺動体A7,B7を製作する場合に使用する回転環製作用金型によって予備成形体を得るようにした点を除いて、後述する摺動体C2と同一の製作工程により得られたもので、これと同質(密度:3.160g/cm3 )のものである。
【0051】
また、メカニカルシールM2,M3,M4,M5,M6は、夫々、固定環1として摺動体A2,A3,A4,A5,A6を使用した点を除いて、メカニカルシールM1と同一構成をなすものであり、メカニカルシールN1,N2,N3,N4,N5,N6は、夫々、固定環1として摺動体B1,B2,B3,B4,B5,B6を使用した点を除いて、メカニカルシールM1と同一構成をなすものであり、メカニカルシールM7又はN7は、夫々、両密封環1,3として同質の摺動体A3,A7又は同質の摺動体B3,B7を使用した点を除いて、メカニカルシールM1と同一構成をなすものである。
【0052】
そして、これらのメカニカルシールM1〜M7,N1〜N7を使用して、シール試験を行った。すなわち、このシール試験は、各メカニカルシールM1〜M7,N1〜N7を、シール液(機内領域Aのシールすべき液体):工業用水,シール液圧力:2MPa,回転軸4の周速:8.7m/sとする高PV値条件下で100時間継続運転し、運転中において密封端面1a,3a間から機外大気領域Bへの漏れ量、つまり100時間当りの漏れ量(cc/100hr)を測定した。さらに、運転終了後、固定環1及び回転環3の摩耗量、つまり100時間当りの摺動面摩耗量(μm/100hr)を測定した。その結果は、表2に示す通りであった。
【0053】
また、第2の比較例として、冒頭で述べた第2多孔質材製の摺動体C1及び緻密質炭化珪素焼結材製の摺動体C2を製作する共にこれらを固定環1として使用したメカニカルシールP1,P2を組み立て、上記と同一のシール条件でシール試験を行った。
【0054】
すなわち、摺動体C1は、次のような焼結原料混合工程,造粒工程,予備成形工程,焼成工程,仕上げ工程により得られたものである。
【0055】
焼結原料混合工程: 平均粒子径0.7μmのα−SiC粉末100gとB4 C粉末0.5gとカーボン粉2gとPEG(#6000)2g及びPVA(#1000)1gを水200gに溶解させた溶解液とをボールミルにより24時間混合して、炭化珪素焼結原料(混合液)を得た。
【0056】
造粒工程: 焼結原料混合工程で得られた炭化珪素焼結原料を攪拌容器に採って、径50〜60μmのポリスチレンビーズを10g添加した上で1時間攪拌混合し、その混合スラリをスプレードライヤーにより130〜150℃で噴霧乾燥することによって造粒して、造粒材(顆粒)を得た。
【0057】
予備成形工程: 造粒工程で得られた造粒材を固定環製作用金型に充填した上、100MPaで冷間プレス成形して、固定環1に対応する環状形態をなす予備成形体を得た。
【0058】
焼成工程: 予備成形工程で得た予備成形体を、加圧することなく、2150℃のアルゴン雰囲気中で焼成して、固定環1に相当する密封環形状をなす炭化珪素焼結体を得た。
【0059】
仕上げ工程: 焼成工程で得られた炭化珪素体の一端面をRa=0.05の鏡面に表面研磨(ラップ)する等により、固定環1として使用しうる摺動体C1を得た。
【0060】
このようにして得られた摺動体C1は、図5に示す如く、比較的大きな気孔(平均気孔径:60μm)が、均一な分散形態でないが、摺動体全体に分散されている。すなわち、摺動体全体が多孔質炭化珪素組織をなしており、その密度,気孔率,曲げ強度は表1に示す通りであった。なお、密度は水置換法によって測定したものであり、気孔率(表1では全体気孔率として表示されている)は上記したように理論密度,測定密度から算出したものである。
【0061】
摺動体C2は、一般的な緻密質炭化珪素焼結材と同様の工程により得られたものである。すなわち、平均粒子径0.6μmのβ−SiC粉末100gに、焼結助剤としてのB4 C粉末0.5g及びカーボン源としてのフェノール樹脂(レゾール型)4gを添加し、さらに成形助剤としてPEG(#6000)29g及びステアリン酸1gを添加して、これらをメタノールと共にボールミルで24時間混合し、その混合スラリをスプレードライヤーにより噴霧乾燥することによって造粒して、径30〜100μmの球形状の造粒材を得た。そして、この造粒材を固定環製作用金型に充填して100MPaで冷間プレス成形した上、その成形物たる予備成形体を、加圧することなく、2150℃のアルゴン雰囲気中で焼成して、固定環1に相当する密封環形状をなす炭化珪素焼結体を得た。さらに、この炭化珪素焼結体の一端面をRa=0.05の鏡面に表面研磨(ラップ)する等により、固定環1として使用しうる摺動体C2を得た。この摺動体C2は、図6に示す如く、一般的な緻密質炭化珪素焼結材と同様の緻密質をなすものであり、その密度(水置換法による測定密度)及び曲げ強度は表1に示す通りであった。なお、メカニカルシールM1に使用した回転環の密度,曲げ強度は、摺動体C2と同一である。
【0062】
また、メカニカルシールP1は、固定環1として摺動体C1を使用した点を除いて、メカニカルシールM1と同一構成をなすものであり、メカニカルシールP2は、固定環1として摺動体C2を使用した点を除いて、メカニカルシールM1と同一構成をなすものである。
【0063】
これらのメカニカルシールP1,P2についても、上記したと同一のシール条件によりシール試験を行い、漏れ量(cc/100hr)及び密封環1,3の摩耗量(μm/100hr)を測定した。その結果は、表2に示す通りであった。
【0064】
而して、表1から明らかなように、摺動体A1〜A7,B1〜B7の密度,曲げ強度は、多孔質部分割合が高くなるに従い小さくなっているが、摺動体全体が多孔質組織をなしている比較例の摺動体C1に比しては高くなっている。一方、表2から明らかなように、密封環の少なくとも一方(固定環)に本発明の摺動体A2〜A4,B2〜B4を使用したメカニカルシールM2〜M4,N2〜N4では、オイルポットを有しない緻密質の摺動体C2を使用したメカニカルシールC2に比しては勿論、摺動体A2〜A4,B2〜B4より気孔率(全体気孔率)の高い摺動体C1を使用したメカニカルシールP1に比しても、漏れ量及び密封環の摩耗量が大幅に低減されている。これは、次のような理由によると考えられる。
【0065】
すなわち、第1に、本発明の摺動体A2〜A4,A7,B2〜B4,B7にあっては、個々の気孔は摺動体C1の気孔(平均気孔径:60μm)に比して微細(気孔径:0.5〜μm)であるが、多数の気孔が多孔質炭化珪素組織部分(多孔質部分径:20〜100μm)に集中した形態で形成されていることから、多孔質炭化珪素組織部分における潤滑液保持能力(潤滑液保持容量)は、この多孔質炭化珪素組織部分に相当する領域に1〜2個の気孔が形成されているにすぎない摺動体C1に比して、大きくなっている。したがって、大きな気孔を全体に分散させた場合に比して、全体としての気孔率(全体気孔率)が低くとも、摺動体全体としてのオイルポット機能による摺動特性は大幅に向上することになる。第2に、多孔質炭化珪素焼結体である摺動体C1と同様に、多孔質炭化珪素組織部分における焼結による粒子間結合力自体は弱いものであるが、その結合力及びは緻密質炭化珪素組織との結合力は、当該多孔質炭化珪素部分を囲繞する緻密質炭化珪素組織の焼結時における収縮によって増大されることになり、全体としての焼結密度,強度は摺動体C1に比して大幅に向上することになる。これらのことから、摺動体A2〜A4,B2〜B4を一方の密封環として使用することによって、多孔質の摺動体C1や緻密質の摺動体C2を使用した場合に比して、メカニカルシール機能を大幅に向上させ得るのである。
【0066】
このように、本発明の摺動体によれば、炭化珪素本来の特性を損なうことなく、オイルポット機能による十分な潤滑性を発揮させることが理解される。また、表1及び表2から明らかなように、前記(4)(5)の条件を満たす(多孔質部分割合が9.1〜33.3%であり且つ全体気孔率が1.5〜3.2%である)本発明の摺動体A2〜A4,B2〜B4を使用したメカニカルシールM2〜M4,N2〜N4では、漏れ量が生じず摩耗量が激減しており(メカニカルシールM2以外では摩耗は全く生じていない)、両密封環に本発明の摺動体A3,A7,B3,B7を使用したメカニカルシールM7,N7では、漏れ量及び摩耗量が全く生じていない。一方、本発明の摺動体A2〜A4,A7,B2〜B4,B7と同様に前記(1)〜(3)の条件を満たすものの(4)(5)の条件を満たさない比較例の摺動体A1,A5,A6,B1,B5,B6を使用したメカニカルシールM1,M5,M6,N1,N5,N6では、何れも漏れが生じている。これらのことから、オイルポット機能の向上及び密度,強度の向上といった相反する要請を共に満足させるためには、微細な気孔を有する多孔質炭化珪素組織が、独立して、緻密質炭化珪素組織中に分散配置されている炭化珪素焼結材で構成された摺動体であって、前記(1)〜(3)に加えて(4)(5)の条件を満たす摺動体を少なくとも一方の密封環として使用しておくことが必要であることが理解され、また両密封環の何れをも本発明の摺動体で構成しておくことによって、メカニカルシール機能の飛躍的な向上を図りうることが理解される。
【0067】
【表1】
Figure 0003999468
【0068】
【表2】
Figure 0003999468
【0069】
【発明の効果】
以上の説明から容易に理解されるように、本発明の摺動体は、耐摩耗性,硬質性等の炭化珪素本来の特性を損なうことなく、潤滑性を大幅に向上させ得るものであり、メカニカルシールの密封環や軸受部材等として好適に使用することができるものである。
【0070】
また、本発明の製造方法によれば、かかる摺動体を容易に製造することができる。
【0071】
また、本発明のメカニカルシールによれば、シール条件に応じて両密封環又はその一方を上記の摺動体で構成しておくことにより、如何なるシール条件下においても良好なシール機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摺動体A2の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図2】摺動体B2の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図3】摺動体A2の鏡面を200倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図4】摺動体B2の鏡面を200倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図5】多孔質摺動体C1の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図6】摺動体C2の鏡面を100倍に拡大して示す顕微鏡写真である。
【図7】端面接触型メカニカルシールの一例を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
1…固定環、1a…固定環の密封端面、3…回転環(摺動体)、3a…回転環の密封端面。

Claims (3)

  1. 微細な気孔を有する多孔質炭化珪素組織が、独立して、緻密質炭化珪素組織中に分散配置されている炭化珪素焼結材で構成された摺動体であって、多孔質炭化珪素組織に存在する気孔の気孔径が0.5〜3μmであり、各多孔質炭化珪素組織における気孔率が10〜80%であり、各多孔質炭化珪素組織部分の径が20〜100μmであり、全ての多孔質炭化珪素組織の占める割合が9.1〜33.3%であり且つ全体の気孔率が1.5〜3.2%であることを特徴とする摺動体。
  2. 焼結助剤を含有しない多孔質用炭化珪素焼結原料を造粒してなる予備造粒材10〜50gを、焼結助剤を含有する緻密質用炭化珪素焼結原料305.5gと混合し、その混合スラリを造粒して得られる本造粒材を加圧成形することにより所定形状の予備成形体を得た上、その予備成形体を加圧することなく焼成処理することにより、微細な気孔を有する多孔質炭化珪素組織が、独立して、緻密質炭化珪素組織中に分散配置されている炭化珪素焼結材であって、請求項1に記載する摺動体を構成する炭化珪素焼結材を得るようにしたことを特徴とする摺動体の製造方法。
  3. 2つの密封環が相対回転摺接するように構成されたメカニカルシールにおいて、少なくとも一方の密封環を請求項1に記載する摺動体で構成したことを特徴とするメカニカルシール。
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