JP3997779B2 - 穿孔圧延用工具の製造方法 - Google Patents
穿孔圧延用工具の製造方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3997779B2 JP3997779B2 JP2001398190A JP2001398190A JP3997779B2 JP 3997779 B2 JP3997779 B2 JP 3997779B2 JP 2001398190 A JP2001398190 A JP 2001398190A JP 2001398190 A JP2001398190 A JP 2001398190A JP 3997779 B2 JP3997779 B2 JP 3997779B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- piercing
- tool
- rolling
- plug
- scale
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Heat Treatment Of Articles (AREA)
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、継目無鋼管の製造に係り、とくに継目無鋼管の穿孔圧延に使用するプラグ等の穿孔圧延用工具の耐久性改善に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、継目無鋼管の製造方法として、マンネスマン式製管法が広く実施されている。この方法は、所定の温度に加熱された圧延素材(丸鋼材)を、まず、穿孔圧延機による穿孔圧延工程を経て中空素材としたのち、エロンゲータ、プラグミル、またはマンドレルミル等の延伸圧延機により肉厚を減少し、さらに必要に応じ再加熱したのち、絞り圧延機あるいはその他の成形機により、主として外径を減じ所定の寸法の継目無鋼管を得る方法である。
【0003】
穿孔圧延機としては、2本の傾斜ロールと穿孔用プラグおよび2個のガイドシュウを組み合わせた、いわゆるマンネスマンピアサ、3本の傾斜ロールと穿孔用プラグを組み合わせた、いわゆる3ロールピアサ、あるいは2本の孔型ロールと穿孔用プラグを組み合わせた、いわゆるプレスロールピアサが知られている。
このような穿孔圧延機による穿孔圧延工程では、プラグは、高温の圧延素材や中空素材との絶え間ない接触により、高温、高負荷の環境下に長時間晒され、摩耗、溶損等を生じやすい。このため、従来から、穿孔用プラグに高温でのスケール処理を施し、プラグ表面に数十〜数百μm 厚の酸化スケール被膜を形成させて、プラグの損耗を防止していた。
【0004】
しかしながら、最近では、熱間変形抵抗が高く、しかも表面に酸化スケールが形成されにくい、13Cr鋼や、ステンレス鋼等の高合金鋼製継目無鋼管の需要が増加しており、これら高合金鋼の素材を穿孔圧延すると、プラグ表面の酸化スケール被膜の消耗が激しく、とくにプラグ先端部の変形や焼付きを伴う損傷が早期に多発し、プラグコストの増加や、生産性の低下等を招いていた。このため、プラグ組成の変更、あるいは酸化スケール被膜形成のための熱処理条件の改良等が提案されてきた。
【0005】
例えば、特公昭59-9628 号公報には、COガス5%未満を含む酸化性の炉内雰囲気中で、焼入れ処理、焼きなまし処理、または固溶体化処理を施す塑性加工装置用被摺動部品の熱処理方法が提案されている。この方法によれば、内部酸化被膜を厚くかつ均一にでき、酸化被膜と地金との密着性が向上するとしている。
また、特開昭59-9154 号公報には、C:0.20〜0.50%、Si:0.10〜2.0 %、Mn:0.30〜2.0 %、Cr:1.0 〜6.0 %、Ni:1.0 〜6.0 %、Mo:0.50〜5.0 %、 Nb:0.20〜1.5 %を含有する鋳造合金より成形後、酸化雰囲気中において、900 〜1250℃の温度範囲の加熱処理を施す継目無鋼管製造用工具材料の製造方法が提案されている。しかし、特開昭59-9154 号公報に記載された技術では、13Cr鋼のような高合金鋼を穿孔圧延すると早期に工具が損傷し焼付きが発生するという問題があった。
【0006】
また、特開昭61-163208 号公報には、25Cr-3Ni系合金鋼からなる熱間継目無鋼管圧延用工具を水蒸気濃度10%以上、O2 濃度0.2 〜5%以上の酸化雰囲気中で加熱保持する熱間継目無鋼管圧延用工具の熱処理方法が提案されている。特開昭61-163208 号公報に記載された技術によれば、母材に密着したスピネル酸化物を容易に形成でき、プラグ等の工具寿命が向上するとしている。
【0007】
また、特開昭63-69948号公報には、C:0.26〜0.35%、Si:0.10〜1.0 %、Mn:0.20〜2.00%、Cr:2.00〜4.00%、Ni:0.50〜2.00%、Nb:0.10〜0.50%、さらに、W:0.50〜2.00%、Co:0.50〜2.00%、V:0.10〜0.50%のうちの1種または2種以上を含有する鋳造合金に、酸化雰囲気中において、800 〜1100℃の温度範囲の加熱保持後、450 ℃まで30℃/h以下の速度で冷却する熱処理を施す継目無鋼管製造用工具材料の製造方法が提案されている。しかし、特開昭63-69948号公報に記載された技術では、13Cr鋼のような高合金鋼を圧延すると早期に工具が損傷し焼付きが発生し、工具寿命が短いという問題があった。
【0008】
また、特開平8-193241号公報には、加熱炉の炉内酸素分圧を工具の加熱温度との関係で所定の低い範囲内に調整した雰囲気内で、900 〜1050℃で2〜15時間保持し、その後800 〜500 ℃まで冷却し空冷するウスタイト生成処理を1回以上行い、さらに400 〜500 ℃で1時間以上保持するマグネタイト生成処理を行う、熱間加工用工具の製造方法が提案されている。しかし、特開平8-193241号公報に記載された技術では、一定レベルの寿命向上効果は得られるが、炉内酸素分圧を10-17 〜10 -12atm に調整するという厳しい雰囲気制御が必要であり、プラグ製造コストの増加とプラグ生産性が低下するうえ、13Cr鋼のような高合金鋼を圧延すると、早期に工具が損傷し、工具寿命が短いという問題があった。
【0009】
また、特開平10-5821 号公報には、低合金鋼で形成されたプラグ素材を酸化性雰囲気中で、1050〜1250℃に加熱した後、同じ酸化性雰囲気中で素材のAc3変態温度とAc1変態温度の間の温度で保持する継目無鋼管製造用プラグの熱処理方法が提案されている。これにより、プラグ表面に、素材との境界部に内部酸化により生成したスケールが存在するスケール層が形成され、穿孔時のプラグ寿命が向上するとしている。しかし、この方法で製造されたプラグを、13Cr鋼のような高合金鋼を圧延する過酷な圧延に供すると、スケール層が早期に剥離し、工具が損傷し工具寿命が短いという問題があった。特開平10-5821 号公報に記載された技術では、実際にプラグ寿命の大幅向上に寄与する、スケールを安定的に成長させることは困難であった。
【0010】
また、特開平11-179407 号公報には、C:0.1 〜0.4 %、Si:0.1 〜3 %、Mn:0.20〜2 %、Cr:0.5 〜5 %、Ni:0.5 〜10%、Cu:0.05〜5 %、Mo:0.5 〜5 %、W:0.5 〜5 %、Co:0.5 〜5 %、Ti:0.015 〜1%、sol.Al:0.01〜0.1 %を含有し、かつ{7(Co%)−10(C%)−(Ni%)}が0〜18を満足する範囲とする組成を有し、スケール付け熱処理を施されてなる継目無鋼管製造用工具が提案されている。しかし、特開平11-179407 号公報に記載された工具によっても、最近の過酷な13Cr鋼穿孔圧延においては十分なプラグ寿命を確保できなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
最近では、13Cr鋼やステンレス鋼等の高合金鋼製継目無鋼管の需要増加に伴い、更なるプラグ等穿孔圧延用工具の長寿命化が要望されている。
本発明は、このような状況に鑑み、プラグ等の継目無鋼管穿孔圧延用工具の更なる工具寿命延長を安定して可能とする、穿孔圧延用工具の製造方法を提案することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、穿孔圧延用工具寿命の向上には、母材(地鉄)側に深く伸びた根状の選択酸化スケール(いわゆる、「根」が生えたような形状のスケール)を形成させることが有効であるとの考えのもとに、地鉄との界面で選択酸化スケールを安定的に生成させる手段について、鋭意検討した。その結果、本発明者らは、工具表面にSを含有する化合物を塗布し熱処理するという簡単な方法で、いわゆる、「根」が生えたような形状のスケール、選択酸化スケールが容易にしかも安定して成長するという現象を発見した。
【0013】
本発明は、このような知見に基づき、さらに検討を加えて完成されたものである。すなわち、本発明の要旨は、つぎのとおりである。
(1)鋼製穿孔圧延用工具を素材とし、該素材の表面にイオウまたはイオウ化合物をS換算で 0.1質量%以上含む塗布剤を塗布したのち、 850〜1100℃の範囲の温度に加熱し、 保持する熱処理を施し、表層にスケール層を形成することを特徴とする耐久性に優れた穿孔圧延用工具の製造方法。
(2)(1)において、前記イオウ化合物が、硫酸塩、硫化物、イオウ含有鉱物および硫黄温泉華のうちから選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする穿孔圧延用工具の製造方法。
(3)(1)または(2)において、前記鋼製穿孔圧延用工具が、質量%で、C:0.1 〜0.7 %、Si:0.1 〜2.0 %、Mn:0.1 〜2.0 %、Cr:0.1 〜10%、Ni:0.5 〜5%、Al:0.01〜0.1 %を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする穿孔圧延用工具の製造方法。
(4)(3)において、前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo: 0.1〜5%、W: 0.1〜5%、Co: 0.5〜5%、Nb: 0.1〜1.5 %、V: 0.1〜1.5 %、Ti:0.05〜0.5 %のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする穿孔圧延用工具の製造方法。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明では、素材とする穿孔圧延用工具の表面に、塗布剤を塗布し、熱処理を施して表面層にスケール層を形成する。本発明では、塗布剤として、イオウまたはイオウ化合物を含む塗布剤を使用することに特徴がある。イオウまたはイオウ化合物を含む塗布剤を塗布して、熱処理することにより、図1に示すような、母材(地鉄)側に深く伸び、「根」が生えたような形状のスケール、すなわち、選択酸化スケールが容易に、 しかも安定して形成できる。選択酸化スケールの生成により、スケール層の地鉄との密着性が顕著に向上する。
【0015】
本発明では、溶剤にイオウまたはイオウ化合物をS換算で、 0.1質量%以上含有させた塗布剤を用いる。塗布剤中のイオウまたはイオウ化合物の含有量が、S換算で 0.1質量%未満では、選択酸化スケールの生成量が不安定となり、所望の効果が得られない。塗布剤に含有されるイオウまたはイオウ化合物の含有量上限はとくに限定されないが、発火防止等の安全性を考慮するとS換算で50質量%以下とすることが好ましい。
【0016】
また、溶剤は、水またはアルコールとすることが好ましい。イオウまたはイオウ化合物は顆粒または粉末状とし、溶剤中に懸濁あるいは溶解させて、塗布剤とすることが好ましい。なお、塗布剤は、粘性や融点の調整のため、酸化物、珪酸酸塩、鉱物類、酸化鉄あるいはベントナイトやモンモリナイトを混合したスラリー状としてもよい。
【0017】
イオウ化合物としては、硫酸塩、硫化物、イオウ含有鉱物および硫黄温泉華のうちから選ばれた1種または2種以上とすることが好ましい。なお、硫酸塩としては、硫化バリウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化マグネシウム等が例示される。また、鉱石類は、重晶石、石膏、明ばん石等が例示される。
なお、塗布剤の塗布方法は特に限定する必要がないが、ハケ塗り、スプレー等により塗布することが好ましい。塗布剤は、素材である穿孔圧延用工具の表面全体あるいは、ほぼ表面全体に塗布されればよく、塗布厚さ、塗布量を限定する必要はない。
【0018】
表面にイオウまたはイオウ化合物を含む塗布剤を塗布された穿孔圧延用工具は、好ましくは乾燥され、ついで、熱処理を施される。本発明では、熱処理は、 850〜1100℃の範囲の温度に加熱し、 保持する熱処理とする。熱処理の加熱温度が、850 ℃未満では、スケール層の成長が不十分で、所望の効果が得られない。一方、熱処理の加熱温度が、1100℃を超えると、スケールが異常成長し、かえって工具寿命が低下する。なお、保持時間は2〜12hとすることが好ましい。2h未満では、生成するスケール層の厚さが薄く、所望の効果を得ることができない。一方、12hを超えると、スケール層が厚くなりすぎて、地鉄との密着性が低下する。
【0019】
本発明では、Sを含有する塗布剤を工具表面に塗布し、 表面層に母材(地鉄)側に深く伸び、「根」が生えたような形状のスケール(選択酸化スケール)を形成し、工具寿命を改善するため、工具の組成をとくに限定する必要はないが、工具寿命に好ましい影響を与える組成範囲はある。
次に、工具寿命に好ましい影響を与える組成について説明する。なお、組成に係る質量%は、 単に%で記す。
【0020】
C:0.1 〜0.7 %、
Cは、固溶して材料の強度を増加させ、あるいは炭化物を形成して材料の高温強度の低下を抑制する元素であり、本発明では0.1 %以上の含有を必要とする。一方、0.7 %を超えて含有すると、高温強度の低下が著しくなるとともに、またスケール層中に気泡が増加しスケール密着性が低下する。このため、Cは0.1 〜0.7 %の範囲に限定することが好ましい。なお、より好ましくは 0.1〜 0.5%である。
【0021】
Si:0.1 〜2.0 %
Siは、脱酸剤として作用するとともに、固溶して基地を強化し、さらに選択酸化を助長し密着性に富む酸化スケールの生成を促進させる元素であり、本発明では、0.1 %以上の含有を必要とするが、2.0 %を超えて含有すると、スケール層を脆弱にしスケール層の密着性を低下させ、工具寿命を劣化させる。なお、Si含有量が0.1 %未満では、スケール層中に気泡が増加し、スケール層の密着性が低下する。このため、Siは0.1 〜2.0 %に限定することが好ましい。
【0022】
Mn:0.1 〜2.0 %
Mnは、高温強度を増加させる元素であり、本発明では0.1 %以上の含有が望ましいが、2.0 %を超えて含有すると、スケール層が脆弱となり密着性が低下する。このため、Mnは0.1 〜2.0 %に限定することが好ましい。
Cr:0.1 〜10%
Crは、基地中に固溶し、また炭化物を形成して高温強度を増加させる。また、Crは、選択酸化を促進し、スケール層の密着性を向上させる。このような効果を得るためには、Crを0.1 %以上含有することが好ましい。一方、10%を超えて含有すると、Feの選択酸化を抑制し、選択酸化スケールの成長を阻害する。このため、Crは0.1 〜10%に限定することが好ましい。なお、より好ましくは 0.1〜8%である。
【0023】
Ni:0.5 〜5%
Niは、固溶して材料の強度、靭性を向上させるとともに、Feより酸化しにくいため選択酸化部近傍の地鉄に濃化し、選択酸化スケールの成長を促進し、スケールの密着性を向上する効果を有する元素であり、0.5 %以上含有することが好ましい。一方、5%を超えて含有しても、効果が飽和し、経済的に不利となる。このため、Niは0.5 〜5%の範囲に限定することが好ましい。
【0024】
Al:0.01〜0.1 %
Alは、脱酸剤として作用する。このような効果は0.01%以上の含有で認められるが、0.1 %を超えて含有すると、酸化物系介在物が増加し清浄度が低下する。このため、Alは0.01〜0.1 %の範囲に限定することが好ましい。
Mo: 0.1〜5%、W: 0.1〜5%、Co: 0.5〜5%、Nb: 0.1〜1.5 %、V: 0.1〜1.5 %、Ti:0.05〜0.5 %のうちから選ばれた1種または2種以上
Mo、W、Co、Nb、V、Tiは、いずれも高温強度を増加させる作用を有し、必要に応じ選択して含有することができる。
【0025】
Mo、Wは、固溶強化、あるいはさらに炭窒化物を形成して高温強度を増加させる。このような効果は、Mo、Wのそれぞれ0.1 %以上の含有で認められるが、Mo:3%、W:3%を超えて含有すると、融点が低下し工具寿命が低下する。このため、含有する場合には、Mo: 0.1〜5%、W: 0.1〜5%の範囲に限定することが好ましい。
【0026】
Coは、固溶して材料の靭性を向上させるとともに、高温強度を増加させる。このような効果は、Co:0.5 %以上の含有で認められるが、5%を超えて含有しても、効果が飽和し、経済的に不利となる。このため、含有する場合には、Coは 0.5〜5%の範囲に限定することが好ましい。
Nb、V、Tiはいずれも、炭化物、窒化物あるいは炭窒化物を形成し、高温強度を増加させる元素である。このような効果は、それぞれ、Nb:0.1 %以上、V:0.1 %以上、Ti:0.05%以上の含有で認められる。 一方、Nb:1.5 %、V:1.5 %、Ti:0.5 %を超えて含有すると、靭性が劣化し、工具の割損が起こりやすくなる。このため、含有する場合には、Nb:0.1 〜1.5 %、V:0.1 〜1.5 %、Ti:0.05〜0.5 %の範囲にそれぞれ限定することが好ましい。
【0027】
上記した成分以外に、粒界強度の増加を目的として、B:0.7 %以下を含有できる。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、P:0.05%以下、S:0.03%以下、Cu: 0.5%以下が許容できる。
【0028】
【実施例】
表1に示す組成の鋼を溶製し、鋳型に鋳造したのち、一部を機械研削で仕上げ加工して、鋼製穿孔圧延用工具(ピアサプラグ:最大外径 154mm)とした。このピアサプラグを素材として、該素材に、表2に示す組成の塗布剤を、ハケ塗りし、乾燥したのち、汎用の大気雰囲気炉を使用して、表3、図2に示す条件で熱処理を行い、素材表面層にスケール層を生成(スケール付け)した。
【0029】
得られたピアサプラグについて、断面の組織観察を行い、選択酸化スケール生成の有無を確認した。なお、ここでいう「選択酸化スケール」とは、図1に示すような、母材(地鉄)側に深く伸び、「根」が生えたような形状のスケールをいうものとする。
これら得られたピアサプラグ (以下、プラグともいう)を用いて、13%Cr鋼製ビレット(直径 175mmφ×長さ2m)の穿孔圧延を行った。ビレット1本を穿孔圧延する毎にプラグの表面検査を行った。溶損や焼付きあるいはえぐれ等が発生して寿命と判定されるまでに圧延した圧延本数をプラグ寿命として、プラグの耐久性を評価した。なお、同一水準各4個のプラグについて、各々のプラグ寿命を求め、それらの平均値を算出し、小数点以下を四捨五入して整数値に丸めた値を、各プラグのプラグ寿命とした。
【0030】
得られた結果を表3に示す。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
【表3】
【0034】
本発明例は、いずれも選択酸化スケールの生成が認められ、厳しい穿孔圧延条件となる13Cr鋼継目無鋼管の穿孔圧延においても、圧延本数:5〜8本とプラグ寿命が長寿命化していることがわかる。なお、素材の組成が、本発明の好適範囲を外れる本発明例(プラグNo.14)では、選択酸化スケールの生成が若干少なく、プラグ寿命は若干短寿命化している。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、圧延本数:1〜2本とプラグ寿命が低下している。
【0035】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明によれば、プラグ等の継目無鋼管穿孔圧延用工具の更なる工具寿命延長が安定して可能となり、継目無鋼管の内面性状が向上するとともに、高合金鋼やステンレス鋼などの熱間変形抵抗が高く、焼付きが生じやすい材料の穿孔圧延の生産性が顕著に向上し、産業上格段の効果を奏する。また、本発明によれば、雰囲気調整の必要がなく、汎用の熱処理炉を使用でき、製造性が向上し、製造コストが低減するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の穿孔圧延用工具におけるスケール層と地鉄との界面形状の一例を示す光学顕微鏡組織写真(倍率:100 倍)である。
【図2】実施例に用いた熱処理条件 (熱処理パターン)を示す説明図である。
Claims (4)
- 鋼製穿孔圧延用工具を素材とし、該素材の表面にイオウまたはイオウ化合物をS換算で 0.1質量%以上含む塗布剤を塗布したのち、 850〜1100℃の範囲の温度に加熱し、 保持する熱処理を施し、表層にスケール層を形成することを特徴とする耐久性に優れた穿孔圧延用工具の製造方法。
- 前記イオウ化合物が、硫酸塩、硫化物、イオウ含有鉱物および硫黄温泉華のうちから選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項1に記載の穿孔圧延用工具の製造方法。
- 前記鋼製穿孔圧延用工具が、質量%で、C:0.1 〜0.7 %、Si:0.1 〜2.0 %、Mn:0.1 〜2.0 %、Cr:0.1 〜10%、Ni:0.5 〜5%、Al:0.01〜0.1 %を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有することを特徴とする請求項1または2に記載の穿孔圧延用工具の製造方法。
- 前記組成に加えてさらに、質量%で、Mo: 0.1〜5%、W: 0.1〜5%、Co: 0.5〜5%、Nb: 0.1〜1.5 %、V: 0.1〜1.5 %、Ti:0.05〜0.5 %のうちから選ばれた1種または2種以上を含有する組成とすることを特徴とする請求項3に記載の穿孔圧延用工具の製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001398190A JP3997779B2 (ja) | 2001-12-27 | 2001-12-27 | 穿孔圧延用工具の製造方法 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001398190A JP3997779B2 (ja) | 2001-12-27 | 2001-12-27 | 穿孔圧延用工具の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2003200207A JP2003200207A (ja) | 2003-07-15 |
JP3997779B2 true JP3997779B2 (ja) | 2007-10-24 |
Family
ID=27639628
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2001398190A Expired - Fee Related JP3997779B2 (ja) | 2001-12-27 | 2001-12-27 | 穿孔圧延用工具の製造方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3997779B2 (ja) |
Families Citing this family (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP6322300B1 (ja) * | 2017-01-06 | 2018-05-09 | 株式会社エーアイ | 白金加工品の製造方法 |
CN114774782B (zh) * | 2022-03-29 | 2023-07-14 | 中钢集团邢台机械轧辊有限公司 | 一种穿孔辊及其制备方法 |
CN114959474B (zh) * | 2022-05-27 | 2024-02-20 | 鞍钢股份有限公司 | 一种无缝管穿孔顶头及其制备方法 |
CN117987746B (zh) * | 2024-03-27 | 2024-10-15 | 南通市嘉业机械制造有限公司 | 一种耐磨无缝钢管穿孔顶头及其制备方法 |
-
2001
- 2001-12-27 JP JP2001398190A patent/JP3997779B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP2003200207A (ja) | 2003-07-15 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
CN107012308A (zh) | 钢线材的制造方法及钢线材 | |
JP4462452B1 (ja) | 高合金管の製造方法 | |
JP5435184B1 (ja) | 穿孔プラグ | |
WO2013080528A1 (ja) | 穿孔圧延用工具 | |
JP3997779B2 (ja) | 穿孔圧延用工具の製造方法 | |
JP3292122B2 (ja) | 継目無鋼管製造用工具 | |
JP3797192B2 (ja) | 穿孔圧延用工具 | |
JP4165058B2 (ja) | 穿孔圧延用工具およびその製造方法 | |
JPH0760314A (ja) | 熱間製管用工具及びその製造方法 | |
JPH08193241A (ja) | 熱間加工用工具及びその製造方法 | |
JPH048498B2 (ja) | ||
JP2778140B2 (ja) | Ni基合金製熱間工具及びその熱間工具の後処理方法 | |
JP4197364B2 (ja) | 継目無鋼管製造用プラグミルプラグ | |
JP6070005B2 (ja) | 穿孔圧延用工具の使用方法 | |
JPH10291008A (ja) | 熱間製管用工具及びその製造方法 | |
JP4388676B2 (ja) | 継目無管製造用工具及びその製造方法 | |
JP6919493B2 (ja) | 継目無鋼管の製造方法 | |
JP3635531B2 (ja) | 継目無管製造用工具及びその製造方法 | |
JP3487234B2 (ja) | 継目無鋼管用高炭素鋼片の製造方法 | |
JPH0787930B2 (ja) | 継目無鋼管製造用プラグ | |
JP5900241B2 (ja) | 使用済み穿孔圧延用工具の再生方法 | |
CN116043067B (zh) | 一种高温合金材料及其成型方法 | |
JPH08206709A (ja) | 熱間製管工具およびその製造方法 | |
JPH11197717A (ja) | 継目無鋼管製造用プラグミルプラグ | |
JP2683861C (ja) |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20040224 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20041025 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20060718 |
|
A521 | Written amendment |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20060915 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20070717 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20070730 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100817 Year of fee payment: 3 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |