JP3997745B2 - オゾン分解型ガス吸着剤の再生方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オゾン分解型ガス吸着剤の再生方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オゾンガスは極めて強い酸化力を示す気体であるため、オゾン脱臭機や殺菌目的等に利用されるケースもあるが、粘膜刺激性が強く、高濃度では呼吸器を侵し、また微量でも長時間吸入すると極めて有毒とされている。有害物質管理のための測定方法(労働科学研究所出版部(1969) P.178)によると、呼吸器への影響は1〜2ppmの低濃度から起こることが報告されている。このため、オゾンガスについては、種々の規制があり、作業環境における許容濃度としては日本産業衛生学会の勧告値で0.1ppm(0.2mg/m3)に定められている。また、UL(Underwriters Laboratories Inc.)規格ではオゾンを発生する機器については8時間のTWA(Time Weighted average)で0.1ppm、瞬時の濃度で0.3ppmを超えてはならないと定められている。
【0003】
このため、複写機やプリンター、電気集塵方式の空気清浄機など放電現象を利用した機器等については、オゾンガス対策が必要となる。
【0004】
従来、オゾンガスを除去するための分解除去剤としては、活性炭や酸化マンガン系触媒が知られている。このうち、活性炭は、吸着剤の中では最も大きな吸着比表面積を有し、広範なガスを効率良く吸着するものであるが、オゾンの除去においては、ガス吸着孔による吸着(van der Waals adsorption)というよりは、むしろ活性炭表面の炭素とオゾンガスとの直接分解反応によるものと考えられている。しかしながら、活性炭のオゾン除去性能の評価を行ってみると、活性炭が消滅してなくなるまでオゾンを分解し続けることはなく、活性炭が消滅する前にオゾン除去性能が失なわれる傾向が見られ、また一旦、オゾン分解性能が低下した活性炭は、水浸漬や100℃前後の加熱乾燥程度ではオゾン分解性能を回復することはできないという問題がある。
【0005】
一方、酸化マンガン系触媒は、触媒反応によりオゾンを分解するものであるが、大気中の不純物や酸化分解に伴う反応生成物等により、次第に被毒され、分解性能を失うという問題がある。失活した酸化マンガン系触媒に対して、高温下での加熱による賦活処理を行っても、被毒物質を完全に除去することはできないため、充分な再生効率は得られず、しかも触媒反応に伴う副生成ガスの発生が異臭発生の原因に繋がるという問題があり、更には、活性炭に対して吸着比表面積が著しく劣るため、オゾン以外の広範なガス成分の除去に対応できないという問題もある。
【0006】
ところで、近年、炭酸ガス削減による地球温暖化対策及び資源の有効活用といった見地から、フィルター分野においても、従来の使い捨て型からリサイクル,リユース,リデュース可能なフィルター材の開発が期待されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来の実状に鑑みてなされたものであって、オゾン分解型ガス吸着剤の再生方法を提供することを目的とする。
【0008】
より具体的には、本発明は、活性炭のような炭素原子を有する多孔質吸着物質のオゾン分解性能を高めると同時に、使用により性能が低下した後は容易に再生可能とすることを目的とするものであり、各種複写機やプリンター、電気集塵方式の空気清浄機用の他、半導体産業等で用いるスーパークリーンルーム用のフィルター材等として有効に適用可能な技術を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明のオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法は、炭素原子を含む多孔質吸着物質の表面及び/又は内部に、アルカリ金属の塩及びアルカリ金属の水酸化物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属化合物を添着してなるオゾン分解型ガス吸着剤を再生する方法であって、該多孔質吸着物質が、石油ピッチ系活性炭、椰子柄活性炭、活性炭繊維、石炭系活性炭、木質系活性炭、古タイヤ再生活性炭及び骨炭よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、その形状が、破砕状、粉末状、ペレット状、球状、楕円球状、及び繊維状よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、該オゾン分解型ガス吸着剤に、アルカリ金属の塩及びアルカリ金属の水酸化物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属化合物を添着させることを特徴とする。
【0010】
本発明者は、前述の従来技術における問題点を克服するために、活性炭の特徴である極めて大きな吸着比表面積とそれに付随する広範なガス成分の吸着性能、及び触媒反応のような反応副生成ガスの問題がないことに注目し、活性炭の持つガス吸着性能を維持した状態でオゾン分解性能を高める方法と、その安全かつ簡便な再生方法を開発すべく、オゾン分解性能の低下要因として考えられる表面酸化物の生成に注目し、表面酸化物の生成を遅延させる方法と直接分解反応を促進させる方法、更にはオゾン暴露により生成された表面酸化物を除去することにより活性炭表面を再活性させる方法について鋭意研究を行った結果、炭素原子を有する吸着剤にアルカリ金属の塩やアルカリ金属の水酸化物を添着せしめることにより、飛躍的にオゾン分解性能を向上させることができること、またオゾン暴露により一旦オゾン分解性能が失われた活性炭にアルカリ洗浄措置を施した上で、アルカリ金属の塩又はアルカリ金属の水酸化物を添着することにより、オゾン分解性能を効率的に再生することができることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
即ち、本発明者は、種々の吸着剤や触媒におけるオゾン分解除去に関する研究を行う中で、石油ピッチ系のビーズ状の活性炭が天然椰子殻活性炭に比べて、極めて低いオゾン分解性能しか有していないことに着目した。石油ピッチ系のビーズ状活性炭は乳鉢で粉砕処理を施すと、ある程度良好なオゾン分解性能を示すが、ビーズ状の形態では平均粒子径400μm程度の比較的小さな粒子径のものでさえ、低レベルのオゾン除去性能しか有さないと言った問題があった。
【0012】
本発明者が、この原因について活性炭の表面状態と含有元素の状態について検証すべく走査型電子顕微鏡や蛍光X線を用いて分析評価を行った結果、天然の椰子殻活性炭にはカリウムや塩素が含有されているのに対し、石油ピッチ系のビーズ状活性炭には、これらの元素が殆ど含まれていないことが判明した。
【0013】
また、天然の椰子殻活性炭の表面状態はかなりいびつで荒れた状態であるのに対し、石油ピッチ系のビーズ状活性炭は非常に滑らかな状態であった。
【0014】
本発明者は、両者の物理的吸着性能の違いについて検証するため、無極性炭化水素の代表であるベンゼンの吸着性能の評価を行った結果、石油ピッチ系のビーズ状活性炭におけるベンゼン吸着性能はBET比表面積1500m2/g以上を有する高賦活の天然椰子殻活性炭に対して、7〜8割程度の吸着容量を有していることが確認され、成形活性炭としては、そこそこ高い物理的吸着性能を示していることが判明した。
【0015】
前述の如く、活性炭によるオゾン分解のメカニズムは、活性炭表面の炭素とオゾンの直接分解反応とであり、下式のようなメカニズムが存在していると考えられるが、同一測定条件下でのオゾン分解性能評価にて、天然の椰子殻活性炭と石油ピッチ系のビーズ状活性炭との間ではかなり大きな分解性性能上の差異が生じる。このことから、炭素とオゾンの直接分解反応以外の要素がオゾン分解のメカニズムの中に存在しているのではないかとの予測から、本発明者は石油ピッチ系のビーズ状活性炭自体には殆ど存在しないカリウムや塩素を含む化合物の添着を試みた。
CxOy(solid)+O3 → CxOy+1(solid)+O2
CxOy(solid)+O3 → Cx -1Oy+1(solid)+CO2
【0016】
そして、本発明者は、LiCl、NaCl、KCl、LiOH、NaOH、KOH、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3等のアルカリ金属の塩又は水酸化物の単体のみではオゾン分解性能を有さないこと、また、ゼオライトのような無機の多孔質吸着物質に対して、これらのアルカリ金属化合物を添着してもオゾン分解性能が発揮できないことより、これらのアルカリ金属化合物を添着する多孔質吸着物質としては炭素原子の存在が非常に重要であることをつきとめた。
【0017】
本発明に係るオゾン分解型ガス吸着剤は、アルカリ金属化合物の添着により著しく優れたオゾン分解性能を示し、また、多孔質吸着物質本来のガス吸着性能により、他の成分の吸着除去にも好適である。
【0018】
このようなオゾン分解型ガス吸着剤は、オゾンガスや臭気との暴露によりオゾン分解性能やガス吸着性能が低下した後は、本発明のオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法に従って、アルカリ金属化合物を添着することにより、或いは、アルカリ性の洗浄液で洗浄した後、アルカリ金属化合物を添着することにより、容易に再生することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0021】
本発明に係るオゾン分解型ガス吸着剤において、炭素原子を含む多孔質吸着物質は、石油ピッチ系活性炭、椰子柄活性炭、活性炭繊維、石炭系活性炭、木質系活性炭、古タイヤ再生活性炭、骨炭であるが、オゾンとの接触効率や吸着物質との吸着効率といった面から、吸着比表面積の高い椰子柄活性炭や活性炭繊維、石油ピッチ系活性炭が好適である。
【0022】
また、多孔質吸着物質の形状は、破砕状、粉末状、ペレット状、球状、楕円球状、繊維状であり、フィルター加工した際の圧力損失の低減や吸着剤の付着量の確保及びオゾンや他のガス成分との接触効率や吸着効率を高めるといった点から球状、又は破砕状のものが好適に使用できる。
【0023】
多孔質吸着物質の吸着比表面積としては特に限定するものではないが、BET法による測定で500m2/g以上、特に1000m2/g以上、とりわけ、オゾンとの接触効率や吸着物質との吸着効率及び取り扱い性等の面から、1000〜2000m2/gの吸着比表面積を有するものを選択するとよい。また、吸着剤の平均粒子径は、オゾンとの接触効率や吸着物質との吸着効率及び取り扱い性等の面から5〜5000μmであることが好ましい。なお、多孔質吸着物質が繊維状等の異形状の場合、平均粒子径は、繊維長等の長辺の長さを示すものとする。
【0024】
更に、再生による繰り返し使用の面から、多孔質吸着物質に求められる特性としては、できるだけ硬度の高い多孔質吸着物質が好ましく、80重量%以上、好ましくは90重量%以上のJIS K1474−4・7硬度を有するものが再生による破損が少なく、好ましい。なお、このJIS K1474−4・7硬度とは、鋼球振とう法により測定される硬度である。
【0025】
このような炭素原子を含む多孔質吸着物質の製法についても、特に限定するものではないが、オゾン暴露時の吸着剤表面の酸化物生成を遅延又は抑制させるといった点から、ノーバインダー製法で作られたものが好ましい。
【0026】
なお、本発明に係るオゾン分解型ガス吸着剤においては、多孔質吸着物質は、材料、形状、製法、その他の特性の異なるものを2種以上組み合わせて用いても良い。
【0027】
このような炭素原子を含む多孔質吸着物質に添着させるアルカリ金属の塩、アルカリ金属の水酸化物についても特に限定させるものではないが、添着加工を施す際の水への溶解性の面から、アルカリ金属の塩としては、炭酸塩又は塩酸塩が好ましく、より具体的には、LiCl、NaCl、KCl、LiOH、NaOH、KOH、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3が好適に使用できる。これらのアルカリ金属化合物を、1種を単独で添着するか、2種類以上を混合して添着するかについては、特に限定するものではないが、処理対象とするガス成分の種類や濃度もしくは使用条件及び添着する多孔質吸着物質の種類等により、配合割合も含め適宜選択することができる。
【0028】
このようなアルカリ金属化合物を多孔質吸着物質に添着する方法としては特に制限はないが、予めアルカリ金属化合物の水溶液を調製しておき、このアルカリ金属化合物の水溶液(以下、「アルカリ金属化合物添着水溶液」と称す場合がある。)中に多孔質吸着物質を浸漬する方法、或いは、多孔質吸着物質にアルカリ金属化合物の水溶液を噴霧する方法が挙げられ、添着方法は、多孔質吸着物質の種類や得られる吸着剤の使用条件、加工条件等により適宜選択することができる。アルカリ金属化合物添着水溶液中に多孔質吸着物質を浸漬してアルカリ金属化合物を添着する場合、多孔質吸着物質を静置浸漬しても良く、水溶液に超音波振動を付与した状態で浸漬しても良く、特に超音波振動を付与することにより添着効率を高めることができる。
【0029】
このアルカリ金属化合物添着水溶液中のアルカリ金属化合物濃度は、多孔質吸着物質の種類や吸着剤の使用条件等により適宜設定され、特に限定するものではないが、0.1〜10mol/L、特に0.5〜3.0mol/Lとするのが好ましい。この濃度が0.1mol/L未満では添着による物理的吸着性能への影響は少ないが、十分な添着量が稼げないため、添着によるオゾン分解性能の向上効果を十分に得ることができない。また、10mol/Lを超える濃度では、多孔質吸着物質の吸着表面積が失われてくるため、物理的吸着性能が阻害され、また、オゾンと炭素との接触状態が阻害されることにより、オゾン分解性能が低下するおそれがある。
【0030】
なお、このアルカリ金属化合物添着水溶液は、乾燥後のアルカリ金属化合物の飛散防止のために、ラテックス、ホットメルトパウダー、及び水分散型エマルジョンよりなる群から選ばれる1種又は2種以上のバインダー成分を含んでいても良く、この場合、このようなバインダー成分の水溶液中の含有量は1〜30重量%であることが好ましい。
【0031】
また、このアルカリ金属化合物添着水溶液は、得られる吸着剤にオゾン分解性能を損なわずにアルデヒド類や塩基性ガスに対してもガス吸着性能や再生性能を付与させることが可能な薬剤である、アミノフェニル酢酸、2−アミノエタン−1−スルホン酸及びリンゴ酸よりなる群から選ばれる1種又は2種以上を含んでいても良く、この場合、このような薬剤の水溶液中の含有量は0.1〜30重量%であることが好ましい。
【0032】
また、このアルカリ金属化合物添着水溶液は、得られる吸着剤に難燃性を付与するために、水酸化アルミニウム、臭化アンモニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、第2リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、ホウ酸等の無機系難燃剤を含んでいても良く、この場合、このような無機系難燃剤の水溶液中の含有量は1〜30重量%であることが好ましい。
【0033】
なお、本発明に係るオゾン分解型ガス吸着剤は、多孔質吸着物質に対して、前記アルカリ金属化合物が0.1〜30重量%添着されていることが好ましく、添着量は、アルカリ金属化合物添着水溶液のアルカリ金属化合物濃度や添着方法を適宜選択することにより調整することができる。この添着量が0.1重量%未満では、添着によるオゾン分解性能の改善効果が十分ではなく、30重量%を超えると、多孔質吸着物質の吸着表面積が失われてくるため、物理的吸着性能が阻害され、また、オゾンと炭素との接触状態が阻害されることにより、オゾン分解性能が低下するおそれがある。
【0034】
本発明のオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法は、このようなオゾン分解型ガス吸着剤をオゾン分解処理又はガス吸着処理等に使用することにより、オゾン分解性能やガス吸着性能が低下したものを再生する方法であり、使用済吸着剤を好ましくはアルカリ性の水溶液で洗浄してオゾン分解により吸着剤に生成した表面酸化物を除去した後、前述の本発明に係るオゾン分解型ガス吸着剤を製造する際のアルカリ金属化合物の添着方法に従ってアルカリ金属化合物を添着する。
【0035】
アルカリ洗浄に用いる洗浄液中のアルカリ物質の種類及びその水溶液濃度は、処理する吸着剤又はフィルター材のオゾン暴露雰囲気や劣化の状態により異なり、特に限定するものではないが、水への溶解性の面から、アルカリ物質としてはLiCl、NaCl、KCl、LiOH、NaOH、KOH、Li2CO3、Na2CO3、K2CO3を好適に使用することができ、なかでもアルカリ性の強いNaOH、KOHが少量で良好な洗浄効果を示すため、好ましい。洗浄液中には、アルカリ物質の1種が含まれていても良く、2種以上が含まれていても良い。また、洗浄液中のこれらのアルカリ物質の濃度としては、前述のアルカリ金属化合物添着水溶液の濃度よりは低めに調整することが望ましく、0.001〜1.0mol/L、特に0.01〜0.1mol/Lに調整するのが好ましい。
【0036】
このアルカリ洗浄は、アルカリ性の水溶液に超音波振動を付与した状態で吸着剤を浸漬洗浄することにより行うことが、洗浄効果の面で好ましい。
【0037】
【実施例】
以下に参考例、実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0038】
以下においては、炭素原子を有する多孔質吸着物質のアルカリ金属化合物による添着効果を見極めるために、活性炭の中ではオゾン分解性能の低くカリウムやナトリウムなどの不純物が殆ど含有されていない石油ピッチ系ビーズ状活性炭を多孔質吸着物質の添着担持体として選択し、この吸着物質をベースにアルカリ金属化合物を添着することによるオゾン分解性能への影響を調べた。
【0039】
参考例1
1mol/Lの塩化カリウム水溶液100mL中に平均粒子径400μmの呉羽化学工業(株)製の石油ピッチ系ビーズ状活性炭(商品名BAC−SPタイプ,吸着比表面積1100m2/g,JIS K1474−4・7硬度97重量%,平均粒子径400μm)10gを投入し、30分間静置浸漬した後、減圧吸引濾過器を用いて脱水し、更に110℃のオーブンにて15分間乾燥させる事により、塩化カリウム添着活性炭サンプルを得、オゾン分解性能の測定を行い、結果を表1に示した。
【0040】
図1は、このオゾン分解性能の測定に用いた装置の概略構成を示す系統図である。
【0041】
1はオゾン発生器であり、このオゾン発生器では、乾燥空気を放電管に供給し、無声放電方式によってオゾンを生成させ、NOX除去槽を通過した希釈空気で希釈して送給した。オゾンガス濃度の調整は放電管の印可電圧を調整することによって行い、希釈空気で試験カラム(内径30mmφ)内に流速1m/secが得られるように流量計1Aで流量調整した。
【0042】
塩化カリウム添着活性炭サンプル2を0.7g秤取り、上下が、目付60g/m2のポリプロピレン繊維不織布で覆われた内径30mmφのアクリル製サンプル容器に充填した後、ガス流通径30mmφ×600mm長のアクリル製カラム4の中央部(裏面部から300mm)にセットし、18ppmのオゾンガスを流速1m/secの条件で通気させ、カラム4の入口と出口のオゾン濃度を測定し、通気1時間後のオゾン除去率を求めた。
【0043】
カラム4入口及び出口のオゾン濃度の測定は、オゾン濃度測定器5により、Beerの法則に基づき、低圧水銀ランプ6を光源とする253.7nm波長域でのオゾンによる紫外線吸収量(光電流)を光電流検出器8で計測することにより行った。なお、オゾン濃度を測定するために、ポンプPにより紫外線吸収セル7内に送り込んだオゾンガスの流量は3L/minであり、カラム4のサンプル容器3の上流側のオゾンガス流と、下流側のオゾンガス流とをタイマーと電磁弁V1,V2の操作により交互に切り替えることにより、経時毎の入口オゾン濃度と出口オゾン濃度を測定した。
【0044】
オゾン除去率の算出は、オゾン濃度測定器5の測定結果をCPU9に入力し、入口ガス濃度と出口ガス濃度を下式に代入することによって求めた。なお、測定結果は、光量変動分を補正した後、演算を行った。
【0045】
【数1】
【0046】
なお、得られたサンプルの活性炭に対する塩化カリウム添着量は表1に示す通りであった。
【0047】
参考例2
1mol/Lの塩化ナトリウム水溶液100mL中に平均粒子径400μmの呉羽化学工業(株)製の石油ピッチ系ビーズ状活性炭(商品名BAC−SPタイプ)を10g投入し、30分間静置浸漬した後、減圧吸引濾過器を用いて脱水し、更に110℃のオーブンにて15分間乾燥させることにより塩化ナトリウム添着活性炭サンプルを得た。
【0048】
得られたサンプルについて、参考例1と同様にして経時1時間後のオゾン分解性能を調べ、結果を表1に示した。表1には、得られたサンプルの活性炭に対する塩化ナトリウム添着量を併記した。
【0049】
参考例3
1mol/Lの水酸化カリウム水溶液100mL中に平均粒子径400μmの呉羽化学工業(株)製の石油ピッチ系ビーズ状活性炭(商品名BAC−SPタイプ)を10g投入し、30分間静置浸漬した後、減圧吸引濾過器を用いて脱水し更に110℃のオーブンにて15分間乾燥させることにより水酸化カリウム添着活性炭サンプルを得た。
【0050】
得られたサンプルについて、参考例1と同様にして経時1時間後のオゾン分解性能を調べ、結果を表1に示した。表1には、得られたサンプルの活性炭に対する水酸化カリウム添着量を併記した。
【0051】
参考例4
1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液100mL中に平均粒子径400μmの呉羽化学工業(株)製の石油ピッチ系ビーズ状活性炭(商品名BAC−SPタイプ)を10g投入し、30分間静置浸漬した後、減圧吸引濾過器を用いて脱水し、更に110℃のオーブンにて15分間乾燥させることにより、水酸化ナトリウム添着活性炭サンプルを得た。
【0052】
得られたサンプルについて、参考例1と同様にして経時1時間後のオゾン分解性能を調べ、結果を表1に示した。表1には、得られたサンプルの活性炭に対する水酸化ナトリウム添着量を併記した。
【0053】
参考例5
1mol/Lの炭酸カリウム水溶液100mL中に平均粒子径400μmの呉羽化学工業(株)製の石油ピッチ系ビーズ状活性炭(商品名BAC−SPタイプ)を10g投入し、30分間静置浸漬した後、減圧吸引濾過器を用いて脱水し、更に110℃のオーブンにて15分間乾燥させることにより、炭酸カリウム添着活性炭サンプルを得た。
【0054】
得られたサンプルについて、参考例1と同様にして経時1時間後のオゾン分解性能を調べ、結果を表1に示した。表1には、得られたサンプルの活性炭に対する炭酸カリウム添着量を併記した。
【0055】
参考例6
1mol/Lの炭酸ナトリウム水溶液100mL中に平均粒子径400μmの呉羽化学工業(株)製の石油ピッチ系ビーズ状活性炭(商品名BAC−SPタイプ)を10g投入し、30分間静置浸漬した後、減圧吸引濾過器を用いて脱水し、更に110℃のオーブンにて15分間乾燥させる事により、炭酸ナトリウム添着活性炭サンプルを得た。
【0056】
得られたサンプルについて、参考例1と同様にして経時1時間後のオゾン分解性能を調べ、結果を表1に示した。表1には、得られたサンプルの活性炭に対する炭酸ナトリウム添着量を併記した。
【0057】
比較例1
炭素原子を有さない多孔質吸着物質とアルカリ金属化合物との関係を把握するために、合成ゼオライトを吸着剤の添着担持体として用い、参考例1と同様にして添着加工を行った。
【0058】
即ち、1mol/Lの塩化カリウム水溶液100mL中に、東ソー(株)製の合成ゼオライト(商品名A−5)を10g投入し、30分間静置浸漬した後、減圧吸引濾過器を用いて脱水し、更に110℃のオーブンにて15分間乾燥させることにより、塩化カリウム添着ゼオライトを得た。
【0059】
得られたサンプルについて、参考例1と同様にして経時1時間後のオゾン分解性能を調べ、結果を表1に示した。表1には、得られたサンプルのゼオライトに対する塩化カリウム添着量を併記した。
【0060】
比較例2
参考例1〜6で添着担持体として用いた呉羽化学工業(株)製の石油ピッチ系ビーズ状活性炭(商品名BAC−SPタイプ)の未処理非添着状態での潜在的オゾン分解性能を調べるために、本サンプルをそのまま0.7g秤取り、参考例1と同様にして経時1時間後のオゾン分解性能を調べ、結果を表1に示した。
【0061】
【表1】
【0062】
参考例7
オゾン暴露による繰り返し再生効果を調べるため、参考例1〜6のサンプルのうち、最もオゾン分解性能の高かった塩化カリウム添着活性炭サンプルを用い、再添着による再生実験を行った。
【0063】
まず、3mol/Lの塩化カリウム水溶液100mL中に平均粒子径400μmの呉羽化学工業(株)製の石油ピッチ系ビーズ状活性炭(商品名BAC−SPタイプ)を10g投入し、30分間静置浸漬した後、減圧吸引濾過器を用いて脱水し、更に110℃のオーブンにて15分間乾燥させることにより、塩化カリウム添着活性炭サンプルを得た。
【0064】
得られたサンプルを0.7g秤取り、参考例1と同様の方法でオゾン分解性能の評価を行って、オゾン通気開始から5分後の初期オゾン除去率を調べ、結果を表2に示した。
【0065】
その後、サンプルが完全に破過するまで(入口オゾン濃度と出口オゾン濃度が同一になるまで)、18ppmのオゾンガスを通気させたところ、破過に到るまでの通気時間は55時間であった。
【0066】
実施例1
参考例7のオゾン通気実験による破過後のサンプルを取り出し、サンプル全量を、0.1Nの水酸化カリウム水溶液に投入し、この水酸化カリウム水溶液が完全に透明になるまで浸漬排水を繰り返すことにより洗浄した後、1mol/Lの塩化カリウム水溶液に30分間浸漬することにより、再添着処理を行い、減圧吸引濾過器により脱水し、その後110℃オーブンにて15分間乾燥させることにより再生サンプルを得た。
【0067】
得られた再生サンプルについて、参考例7と同様にしてオゾン通気開始から5分後の初期オゾン除去率を調べ、結果を表2に示した。
【0068】
また、この再生サンプルについても、参考例7と同様にサンプルが完全に破過するまで18ppmのオゾンガスを通気させ、破過に到るまでの通気時間を調べ、結果を表2に示した。
【0069】
また、参考例7の通気開始5分後の初期オゾン除去率に対する、本再生サンプルの通気開始5分後の初期オゾン除去率の割合(百分率)を求め、これを再生効率として、結果を表2に示した。
【0070】
比較例3
実施例1において、オゾン暴露により破過させた後のサンプルを用い、水浸漬のみによる再生効率の確認を行った。100mLのイオン交換水に実施例1の実験により、完全に破過されたサンプルを全量投入し、1時間浸漬した後、サンプルが全量回収できるように注意してイオン交換水で流水洗浄させながら、減圧吸引濾過器にて本サンプルを濾過した後、110℃のオーブンにて15分間乾燥させることにより、再生サンプルを得た。
【0071】
得られた再生サンプルについて、参考例7と同様にしてオゾン通気開始から5分後の初期オゾン除去率を調べ、結果を表2に示した。
【0072】
また、この再生サンプルについても、参考例7と同様にサンプルが完全に破過するまで、18ppmのオゾンガスを通気させ、破過に到るまでの通気時間を調べ、結果を表2に示した。
【0073】
また、参考例7の通気開始5分後の初期オゾン除去率に対する、本再生サンプルの通気開始5分後の初期オゾン除去率の割合(百分率)を求め、これを再生効率として、結果を表2に示した。
【0074】
実施例2
比較例3のオゾン暴露により破過した後のサンプルを用い、超音波洗浄による再生効果について実験を行った。まず、超音波洗浄機に0.1Nの水酸化カリウム水溶液を満たし、この中に比較例3の実験により完全に破過されたサンプルを全量投入し、本水溶液が完全に透明になるまで繰り返し超音波洗浄を施した。次に、洗浄に用いた0.1Nの水酸化カリウム水溶液を完全に取り除き、1mol/Lの塩化カリウム水溶液が満たされた超音波洗浄機に本洗浄済みサンプルを投入し、5分間超音波下で浸漬添着させた後、減圧吸引濾過器を用いて脱水した。その後、110℃オーブンにて15分間乾燥させることにより再生サンプルを得た。
【0075】
得られた再生サンプルについて、参考例7と同様にしてオゾン通気開始から5分後の初期オゾン除去率を調べ、結果を表2に示した。
【0076】
また、この再生サンプルについても、参考例7と同様にサンプルが完全に破過するまで、18ppmのオゾンガスを通気させ、破過に到るまでの通気時間を調べ、結果を表2に示した。
【0077】
また、参考例7の通気開始5分後の初期オゾン除去率に対する、本再生サンプルの通気開始5分後の初期オゾン除去率の割合(百分率)を求め、これを再生効率として、結果を表2に示した。
【0078】
【表2】
【0079】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本発明によれば、オゾンガス分解性能及びガス吸着性能に優れ、しかも再生により繰り返し使用可能なオゾン分解型ガス吸着剤を使用後、高い再生効率で再生して、繰り返し使用することが可能となる。
【0080】
本発明は、複写機やプリンター、電気集塵方式の空気清浄機用の他、半導体産業等で用いるスーパークリーンルーム用のフィルター材等の広範な分野に有効であり、オゾン分解型ガス吸着剤の再生により、リサイクル,リユース,リデュースの面で多彩な活用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例及び比較例で用いたオゾン分解性能の測定装置の概略構成を示す系統図である。
【符号の説明】
1 オゾン発生器
2 サンプル
3 サンプル容器
4 カラム
5 オゾン濃度測定器
6 低圧水銀ランプ
7 紫外線吸収セル
8 光電流検出器
9 CPU
Claims (10)
- 炭素原子を含む多孔質吸着物質の表面及び/又は内部に、アルカリ金属の塩及びアルカリ金属の水酸化物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属化合物を添着してなるオゾン分解型ガス吸着剤を再生する方法であって、
該多孔質吸着物質が、石油ピッチ系活性炭、椰子柄活性炭、活性炭繊維、石炭系活性炭、木質系活性炭、古タイヤ再生活性炭及び骨炭よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、その形状が、破砕状、粉末状、ペレット状、球状、楕円球状、及び繊維状よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であり、
該オゾン分解型ガス吸着剤に、アルカリ金属の塩及びアルカリ金属の水酸化物よりなる群から選ばれる1種又は2種以上のアルカリ金属化合物を添着させることを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。 - 請求項1において、該アルカリ金属化合物がLiCl、NaCl、KCl、LiOH、NaOH、KOH、Li2CO3、Na2CO3、及びK2CO3よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
- 請求項1又は2において、該多孔質吸着物質の平均粒子径が5〜5000μmであることを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項において、該アルカリ金属の添着量が、該多孔質吸着物質に対して0.1〜30重量%であることを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、該多孔質吸着物質の吸着比表面積が500g/m2以上であることを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、該多孔質吸着物質が80重量%以上のJIS K1474−4・7硬度を有することを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
- 請求項1ないし6のいずれか1項において、該オゾン分解型ガス吸着剤をアルカリ性の洗浄液で洗浄した後、該アルカリ金属化合物を添着することを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
- 請求項7において、該アルカリ性の洗浄液中に含まれるアルカリ物質が、LiCl、NaCl、KCl、LiOH、NaOH、KOH、Li2CO3、Na2CO3、及びK2CO3よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
- 請求項7又は8において、該アルカリ性の洗浄液中に含まれるアルカリ物質の濃度が0.001〜1.0mol/Lであることを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
- 請求項7ないし9のいずれか1項において、アルカリ性の洗浄液を超音波により振動させて、該オゾン分解型ガス吸着剤を洗浄することを特徴とするオゾン分解型ガス吸着剤の再生方法。
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