JP3997744B2 - 内燃機関のオイルポンプ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、内燃機関のオイルポンプ、特にポンプハウジングにレギュレータバルブを一体に備えてなるオイルポンプの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関のオイルポンプとして、例えば、クランクシャフトによって駆動される内接歯車式のポンプ部をハウジング内部に備え、かつ該ハウジングに、レギュレータバルブが一体に設けられた構成のものが知られている。この種のオイルポンプは、一般に、内燃機関の前端部においてチェーン室内に配置されており、シリンダブロック下部のオイルパン内に貯留された潤滑油をオイルストレーナを介して吸い上げ、かつシリンダブロックのメインギャラリへ圧送するようになっている。そして、吐出側の油圧がレギュレータバルブの設定圧に達すると、該レギュレータバルブが押し開かれ、高圧油の一部が吸入側へ戻る。これにより、実際にメインギャラリへ供給される油圧が、設定圧に維持される。
【0003】
一方、特開平5−171912号公報には、オイルポンプにより加圧された潤滑油を、チェーン室内のタイミングチェーンへ向けて吹きかけるオイルジェットが開示されている。このオイルジェットは、オイルポンプから離れて設けられ、シリンダブロック内のオイルギャラリを介して潤滑油が供給されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなオイルポンプにあっては、内燃機関を長期間放置した場合に、オイルポンプ内から多少の潤滑油が流れ落ち、吐出ポートからレギュレータバルブへ至るリターン通路内にエア(空気)が溜まる、という問題がある。そして、この状態で内燃機関が始動されると、多量の気泡を含んだ潤滑油がレギュレータバルブ内に流れるため、レギュレータバルブの弁体が振動し、異音が発生する。
【0005】
また、上記公報のように独立したオイルジェットを設けると、それだけ構成の複雑化を伴う、という不具合がある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
そこで、この発明は、レギュレータバルブ上流側のリターン通路にエア抜き孔を設け、かつこのエア抜き孔を、オイルジェットとして利用するようにした。
【0007】
すなわち、本発明は、請求項1のように、内燃機関に取り付けられるハウジング内部にポンプ部を備えるとともに、上記ハウジングの一部にレギュレータバルブが取り付けられ、かつ上記ポンプ部の吐出側から上記レギュレータバルブを介して吸入側へ至るリターン通路が上記ハウジング内部に形成されてなる内燃機関のオイルポンプにおいて、上記リターン通路の上記レギュレータバルブよりも上流側の少なくとも一部が、上記レギュレータバルブよりも高位に位置しており、かつこの部分に、オイルポンプ外部の被潤滑部を指向するオイルジェットとなるエア抜き孔が開口形成され、中央の内接歯車式のポンプ部を挟んで左右に吐出ポートおよび吸入ポートが配置されているとともに、上記吸入ポートの上方に上記レギュレータバルブが位置し、かつ上記吐出ポートから上記ポンプ部の上方を通って上記レギュレータバルブに至るように円弧形に上記リターン通路が形成され、該リターン通路の上部に上記エア抜き孔が設けられ、上記吐出ポートの下部に吐出口が形成されていることを特徴としている。
【0008】
好ましくは、請求項2のように、上記エア抜き孔は、上記リターン通路の最上部に配置されている。
【0009】
上記構成では、例えば長期間の放置によりオイルポンプ内に侵入したエアは、リターン通路の上部に溜まるので、内燃機関の始動に伴ってオイルポンプが駆動されると、潤滑油に押し出されるようにしてエア抜き孔から外部へエアが排出される。また、エアが排出された後は、エア抜き孔から高圧の潤滑油が噴出し、潤滑が必要な被潤滑部へ吹きかけられる。このオイルジェットつまりエア抜き孔としては、ハウジングに例えばドリル加工等により貫通形成した小孔をそのまま用いるようにしてもよく、あるいは、吹き出し部となる別のオリフィス部材をハウジングに取り付けるようにしてもよい。前者の場合は、小孔自体が被潤滑部を指向するように貫通形成される。後者の場合は、オリフィス部材の吹き出し部の向きが被潤滑部を指向したものとなる。そして、円弧形をなすリターン通路の中央部が最上部となり、ここにエアが溜まることになるが、この最上部付近にエア抜き孔が配置されるので、確実にエアが排出される。
【0010】
より具体的な請求項3の発明では、上記ハウジングが内燃機関のチェーン室内に配置されているとともに、上記オイルジェットが、被潤滑部として、クランクスプロケットとタイミングチェーンとの噛み合い点へ向けて設けられている。
【0011】
これは特にオイルポンプがクランクシャフトによって駆動される場合に、ハウジングに隣接してタイミングチェーンが通過するので、好適である。
【0013】
【発明の効果】
この発明に係る内燃機関のオイルポンプにおいては、内部にエアが溜まっていた場合に、レギュレータバルブ上流側のリターン通路からエアが排出されるため、長期間の放置後の始動時に、レギュレータバルブの振動およびこれに伴う異音を発生することがない。また、エア抜き孔がオイルジェットとして利用されるため、独立したオイルジェットを設ける必要がなくなり、構成の簡素化が図れる。しかも、レギュレータバルブ上流側のリターン通路からオイルジェットとして潤滑油が供給されるので、潤滑油系統全体の油圧低下ならびに効率の上で、有利となる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好ましい実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1〜図3は、この発明に係る内燃機関のオイルポンプの一実施例を示しており、特に、内燃機関のクランクシャフト(図示せず)によって直接駆動される内接歯車式のオイルポンプのハウジングを示している。この実施例では、ハウジングが、図1および図3に示すポンプカバー1と、図2に示すポンプボディ2とに、いわゆる半割型に構成されており、これらが周囲のフランジ部11,12で互いに接合されることで、比較的薄型のハウジングが構成されるようになっている。そして、このハウジングは、内燃機関の前端部に配置されるフロントカバー(図示せず)の内側面に取り付けられ、かつ最終的な組立状態では、このフロントカバーとシリンダブロック前端面との間に配置される。換言すれば、このオイルポンプは、フロントカバーとシリンダブロック前端面との間のチェーン室内に配置されており、上記ポンプカバー1がシリンダブロック寄りに位置し、かつポンプボディ2がフロントカバー側に位置する。ハウジングつまりポンプカバー1とポンプボディ2は、例えばアルミニウムダイキャストによって形成されている。
【0016】
図1は、ポンプカバー1の外形状を示し、かつ図3は、ポンプボディ2に組み合わされる内側面を示している。図2は、ポンプカバー1と組み合わされるポンプボディ2の内側面を示している。これらの図に示すように、ハウジング中央部にクランクシャフト貫通孔3が形成されており、かつハウジング内には、このクランクシャフト貫通孔3を囲むように、ポンプ部収容部4が円形に形成されている。このポンプ部収容部4には、内接歯車式のポンプ部を構成する図示せぬ円環状のアウタギヤおよびインナギヤが収容される。そして、このポンプ部収容部4の左右に、吸入ポート5および吐出ポート6が、ポンプ部収容部4を挟んで互いに対向するように設けられている。吸入ポート5は、横方向へ長く延びており、図示せぬオイルストレーナが接続される吸入口7に達している。また、吐出ポート6は、下部の吐出口8に連通している。この吐出口8に並んで設けられた第2入口9は、ハウジングの吐出ポート6側の側部に独立して形成された通路部10に連通し、かつこの通路部10上端部に、シリンダブロック側へ向かう潤滑油出口15が設けられている。この潤滑油出口15は、周囲のフランジ部16によってシリンダブロックの図示せぬメインギャラリに接続される。上記吐出口8および上記第2入口9は、図示せぬオイルパン側に設けられた潤滑油通路を介して、オイルフィルタの入口および出口にそれぞれ連通する。
【0017】
従って、潤滑油の全体的な流れとしては、図示せぬオイルストレーナを介して吸い上げられた潤滑油が、吸入ポート5から中央のポンプ部によって吐出ポート6へと吐出され、かつ吐出口8を通して図外のオイルフィルタへと送られる。そして、濾過された後、第2入口9へと戻り、かつ通路部10を流れて、潤滑油出口15からメインギャラリへと送られる。
【0018】
上記吸入ポート5の上方には、潤滑油圧を設定圧に調圧するレギュレータバルブ17が設けられている。このレギュレータバルブ17は、図2に仮想線で示すように、略水平方向に形成されたシリンダ部18内に、コイルスプリング19によって付勢された弁体20が収容されているものであって、弁体20が油圧により後退すると、シリンダ部18側面の調圧ポート21(図3参照)が開放され、シリンダ部18先端のレギュレータ入口部22から調圧ポート21を通して吸入ポート5へと潤滑油が逃がされるようになっている。
【0019】
なお、この実施例では、上記の吸入口7、吐出口8、第2入口9、およびレギュレータバルブ17は、いずれもポンプカバー1側に形成されている。
【0020】
ハウジングの内部には、さらに、上記吐出ポート6の上面から上記レギュレータ入口部22へ至るリターン通路23が形成されている。このリターン通路23は、中央のポンプ部収容部4からは独立しており、かつ、該ポンプ部収容部4の外周に沿うように、これと同心な円弧形をなしている。従って、このリターン通路23の大部分は、レギュレータバルブ17のレギュレータ入口部22よりも高位に位置している。
【0021】
そして、このリターン通路23の最上部付近に、エア抜き孔25が貫通形成されている。このエア抜き孔25は、ポンプカバー1にドリル加工されており、オイルジェットとして機能する程度に小径に形成されている。この実施例では、図1に示すように、タイミングチェーン26とクランクスプロケット(図示せず)との噛み合い点(図1に符号Aで示す部位)に向けて潤滑油を吹きかけるようになっており、上記エア抜き孔25は、この噛み合い点を指向するように、斜めにドリル加工されている。
【0022】
上記のように構成されたオイルポンプにおいては、長期間の放置により潤滑油が漏洩して内部にエアが侵入した際に、リターン通路23の最上部から徐々にエアが溜まっていくことになる。そして、内燃機関の始動に伴ってオイルポンプが駆動されると、吐出ポート6の圧力上昇によりエア抜き孔25を通してエアが押し出される。レギュレータバルブ17のレギュレータ入口部22は、エア抜き孔25よりも低い位置にあるので、油圧が設定圧に達してレギュレータバルブ17が開く前に、エアがほぼ完全に排出されることになり、エアの混入によるレギュレータバルブ17の振動は確実に回避される。
【0023】
またエア排出後は、エア抜き孔25がオイルジェットとして機能し、タイミングチェーン26の噛み合い点へ向けて潤滑油が供給される。このとき、潤滑油は、レギュレータバルブ17上流のリターン通路23から取り出されるので、実質的にはリターン流量の一部がオイルジェットとして利用されることになり、メインギャラリからオイルジェットへ潤滑油を供給する構成に比べて、潤滑油系統全体の油圧低下に対する影響が最小になるとともに、ポンプ効率の上で有利となる。
【0024】
図4は、オイルジェットとなるエア抜き孔25の異なる実施例を示すもので、この実施例では、ポンプカバー1に開口したエア抜き孔25の出口側に、潤滑油の吹き出し部となるオリフィス部材27が取り付けられている。このオリフィス部材27を備えた構成では、オリフィス部材27の通路28の形成方向によって、潤滑油噴霧の方向をより自由に設定することが可能となる。
【0025】
なお、上記実施例では、内接歯車式のポンプ部がクランクシャフトにより直接に駆動される構成となっているが、この発明はこれに限定されるものではなく、他の形式のポンプ部を備えたオイルポンプ、あるいはクランクシャフト以外の駆動軸により駆動されるオイルポンプ、にも適用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係るオイルポンプのポンプカバーの外観を示す正面図。
【図2】ポンプボディの内側面を示す正面図。
【図3】ポンプカバーの内側面を示す背面図。
【図4】オリフィス部材を備えた実施例を示す要部の断面図。
【符号の説明】
1…ポンプカバー
2…ポンプボディ
4…ポンプ部収容部
5…吸入ポート
6…吐出ポート
17…レギュレータバルブ
23…リターン通路
25…エア抜き孔
27…オリフィス部材
Claims (3)
- 内燃機関に取り付けられるハウジング内部にポンプ部を備えるとともに、上記ハウジングの一部にレギュレータバルブが取り付けられ、かつ上記ポンプ部の吐出側から上記レギュレータバルブを介して吸入側へ至るリターン通路が上記ハウジング内部に形成されてなる内燃機関のオイルポンプにおいて、
上記リターン通路の上記レギュレータバルブよりも上流側の少なくとも一部が、上記レギュレータバルブよりも高位に位置しており、かつこの部分に、オイルポンプ外部の被潤滑部を指向するオイルジェットとなるエア抜き孔が開口形成され、
中央の内接歯車式のポンプ部を挟んで左右に吐出ポートおよび吸入ポートが配置されているとともに、上記吸入ポートの上方に上記レギュレータバルブが位置し、かつ上記吐出ポートから上記ポンプ部の上方を通って上記レギュレータバルブに至るように円弧形に上記リターン通路が形成され、該リターン通路の上部に上記エア抜き孔が設けられ、上記吐出ポートの下部に吐出口が形成されていることを特徴とする内燃機関のオイルポンプ。 - 上記エア抜き孔は、上記リターン通路の最上部に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関のオイルポンプ。
- 上記ハウジングが内燃機関のチェーン室内に配置されているとともに、上記オイルジェットが、被潤滑部として、クランクスプロケットとタイミングチェーンとの噛み合い点へ向けて設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の内燃機関のオイルポンプ。
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