JP3996536B2 - 転炉におけるMn添加方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、転炉におけるMn添加方法に関するものであり、高Mn鋼を製造する場合でも、少量スラグ下で行う精錬操業に支障をきたすことなく、高いMn歩留りで溶鋼中のMn量を確保することのできる、有用なMn添加方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転炉操業工程で溶銑にMnを添加する方法として、精錬後にFe−Mn系合金を添加する方法が挙げられる。しかし該Fe−Mn系合金は高価であり、かつFe−Mn系合金の一部は、吹錬時に酸化されてスラグ中のMnOとなるためMn歩留りが悪く経済的でない。
【0003】
そこで、該Fe−Mn系合金の代わりに酸化マンガンを主成分とする安価なMn鉱石を用いることが提案されている。特許文献1には、酸化Mn(実施例ではMn鉱石)を投入した場合のMn歩留りを高め、且つ高価なMn系合金鉄の使用を抑えること等を目的として、微粉状の酸化Mnを吹き込み、目標Mn値に対して、溶銑中のMn量を−0.50〜+0.25%の範囲内に調整することが示されている。
【0004】
また特許文献2には、精錬時に安価なMn鉱石を添加する際に、高融点であるMn鉱石の還元反応を促進させるべく、生石灰、石灰石、ホタル石の1種または2種以上を混合させた粉体を添加し、Mn鉱石の融点を低下させることが提案されている。更に特許文献3には、Mn鉱石を精錬時に添加する際に、転炉での脱燐および脱炭精錬を支障なく行いつつ高いMn歩留りを達成するため、コークスを所定量吹き込み、酸素ポテンシャルの高いスラグ−メタル界面近傍をコークス粉で還元することにより、Mn鉱石の還元を促進する技術が示されている。
【0005】
上記技術では、Mn鉱石の還元により溶銑中のMn量を確保する方法や、該Mn鉱石の還元反応の際に生じる問題の解決を図っている。しかしこの様にMn鉱石のみ使用して溶銑中のMn量を調整する場合、該Mn量を高めるべくMn鉱石の添加量を増加させると、スラグ量が増加してMn歩留りが低下する他、該スラグの増加によりフォーミング等が生じて精錬操業に支障をきたすため、高いMn歩留りで溶鋼中のMn量を効率よく高めるには更なる改善が求められる。
【0006】
【特許文献1】
特開昭61−190011号公報
【特許文献2】
特開平10−130711号公報
【特許文献3】
特開平10−158713号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、高Mn鋼を製造する場合においても、転炉での少量スラグ下で行う精錬操業に支障をきたすことなく、高いMn歩留りで溶鋼中のMn量を調整することのできる、有用なMn添加方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る転炉におけるMn添加方法とは、吹錬開始後にMn酸化物を添加し、且つ該Mn酸化物の添加後にMn含有合金鉄を投入するところに特徴を有するものであり、特に、
(a)前記Mn酸化物を投入した後、酸素を8Nm3/t(tは溶鋼1トンあたりを意味する。以下同じ)供給するまでの間に前記Mn含有合金鉄を投入し、かつ
(b)Mn含有合金鉄の投入後に酸素を2〜10Nm3/t供給して吹錬を終了するのがよい。
【0009】
また、前記Mn酸化物の投入量は、Mn純分換算で、下記式(1)を満たすようにするのがよい。
【0010】
Mn酸化物の投入量(kg/t)=炉内スラグ量(kg/t)×1.29×BMnO …(1)
(但し、BMnOはスラグ中のMnO濃度の最適必要増加分(質量%)を示し、2〜15質量%の範囲内とする)
前記Mn酸化物としては、入手し易く安価であるMn鉱石を使用してもよく、また前記Mn含有合金鉄として、安価である低級品を用いてもよい。
【0011】
尚、前記「Mn歩留り」とは、吹錬において転炉に装入されるMn分のうち、吹止時の溶鋼中に歩留るMn分、即ち[溶鋼中のMn(kg/チャージ)]/[(添加Mn合金鉄+添加Mn含有合金鉄+溶銑+スクラップ)に含まれるMn(kg/チャージ)]×100(%)をいうものとする(以下、同じ)。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、少量スラグ下で行う転炉精錬で、Mn含有物を添加して溶鋼中のMn量を調整するに際し、比較的Mn濃度の高い鋼を製造する場合でも該操業に支障をきたすことなく、高Mn歩留りで溶鋼中のMn量を調整することのできる方法を確立すべく様々な角度から検討を行った。
【0013】
その結果、特に、
▲1▼従来のようにMn酸化物のみまたはMn含有合金鉄のみを使用するのではなく、酸素吹き込み開始後に(好ましくは吹錬中期以降に)Mn酸化物を予め投入してスラグ中のMnO量を確保した上で、Mn含有合金鉄を投入することが重要であること、
▲2▼Mn歩留りを飛躍的に高めるには、これらMn酸化物とMn含有合金鉄の投入時期としてそれぞれ最適なタイミングが存在すること、具体的には、目標とするMn濃度に応じてスラグ中のMnO濃度を適正範囲まで高めた時点で、Mn含有合金鉄を投入するのがよいこと、
▲3▼Mn酸化物は、所定量を投入するのがよいこと、および
▲4▼Mn酸化物としてMn鉱石を用いる場合には、粉末状のMn鉱石を用いるのが好ましいこと
を見出し上記本発明に想到した。以下、本発明で上記要件を規定した理由について詳述する。
【0014】
本発明者らは、上述の通り、Mn酸化物とMn含有合金鉄を併用し、吹錬開始後に(好ましくは吹錬中期以降に)Mn酸化物を予め投入して、溶鋼の目標Mn量と熱平衡状態にあるスラグ中のMnO量を確保した上でMn含有合金鉄を投入すれば、精錬操業に支障をきたすことなく高Mn鋼を高Mn歩留りで製造できるとの知見を得た。
【0015】
特にMn歩留りを飛躍的に高めるには、これらMn酸化物とMn含有合金鉄の投入時期としてそれぞれ最適なタイミングが存在し、Mn酸化物およびMn含有合金鉄は、下記の条件を満たす時期に投入するのがよいことがわかった。
【0016】
(1)Mn含有合金鉄は、前記Mn酸化物を投入した後、酸素を8Nm3/t供給するまでの間に投入するのがよい。
【0017】
Mn酸化物を投入した後酸素を8Nm3/t供給するまでの間にMn含有合金鉄を投入するのは、該Mn酸化物を投入してスラグ中のMnO濃度を予め高めることで、その後にMn含有合金鉄を投入したときに該Mn含有合金鉄中のMnが酸化物になるのを抑制するためである。
【0018】
Mn酸化物として微粉末状(粒径約15mm以下、好ましくは10mm以下)のものを使用する場合には、Mn酸化物の投入直後にMn含有合金鉄を投入しても差し支えない。該微粉末状のMn酸化物であれば、すぐに溶解してスラグ中のMnO濃度を高めることができるからである。しかし粒径約15mmを超えるMn酸化物を投入する場合には、Mn酸化物の投入後に酸素を2Nm3/t以上吹き込み、該Mn酸化物を十分に溶融させてからMn含有合金鉄を投入するのがよい。
【0019】
一方、Mn酸化物の投入後、過度に長時間を経てからMn含有合金鉄を投入すると、Mn酸化物の投入に伴いスラグ中の酸素ポテンシャルが上昇し、それに応じて図1に示す様にスラグ中のT.Fe濃度(スラグ中のFeOおよびFe2O3等鉄酸化物の合計のFe純分換算濃度)も上昇し、その結果Mn歩留りが低下するといった問題が生じる。この様な問題が生じないようにするには、Mn酸化物の投入後酸素を8Nm3/t供給するまでの間に、Mn含有合金鉄を投入すればよいことが分かった。より好ましくは、Mn酸化物の投入後酸素を7Nm3/t供給するまでの間にMn含有合金鉄を投入する。
【0020】
(2)またMn含有合金鉄を投入した後、吹錬終了までの酸素供給量は2〜10Nm3/tの範囲とするのがよい。
【0021】
転炉精錬では、酸素を吹き込むことで脱炭処理が行われるが、Mn含有合金鉄を投入した後に、多量の酸素を供給すると、添加したMn含有合金鉄中のMnが酸化されてMnOとなりMn歩留りが低下するので好ましくない。
【0022】
従って、Mn歩留りの向上という観点からは、Mn含有合金鉄投入後の酸素供給時間を短くするのがよく、吹錬末期に投入するのがよい。また、スラグ中のMnOからMnへの還元反応は吸熱反応であるため、溶鋼温度が高温となる吹錬末期に該還元反応は優位となる。従って、この吹錬末期にMn含有合金鉄を投入すれば、Mnの酸化ロスも抑えられるので、この様な観点からも、Mn含有合金鉄を吹錬末期に投入するのが好ましい。いずれにしても本発明では、Mn含有合金鉄を溶鋼に投入後、吹錬終了までの酸素供給量を10Nm3/t以下とするのがよい。Mn含有合金鉄の酸化を抑制して更にMn歩留りを高めるには、Mn含有合金鉄投入後、吹錬終了までの酸素供給量を8Nm3/t以下とするのがより好ましい。
【0023】
しかし、Mn含有合金鉄投入後の吹錬時間が極端に短い(即ち、吹錬終了までの酸素供給量が少ない)と、次の様な問題が生じる。
【0024】
(i)吹錬終了間際には、転炉ダイナミックコントロール、即ち、吹錬中にサブランスでC濃度と溶鋼温度(T)を直接測定し、数秒毎にC濃度と溶鋼温度(T)を逐次計算表示して吹錬終了の判断が行われるが、この際、吹錬終了直前にMn含有合金鉄を添加すると、吹錬終了の判断基準であるC濃度と溶鋼温度(T)が目標設定値から外れ易くなる。
【0025】
(ii)Mn含有合金鉄を投入した後に吹錬を十分行うことによって、不純物であるCが脱炭処理され、水分が蒸発し、またTi等の不純物がスラグに捕捉されて除去される。
【0026】
しかし、吹錬終了直前にMn含有合金鉄を添加すると、Mn含有合金鉄中に含まれるこれらの不純物(C、H2O、Ti等)が十分除去されず、溶鋼中に残存したままとなり、上述した様に吹錬終了時のC濃度が目標値から外れるといった不具合が生じる他、該不純物の除去処理を別途行う必要が生じてくる。例えば吹錬終了後に脱ガス工程等を設ける等の必要が生じ、連々鋳を実施する場合等に効率よく作業を進めることができない。
【0027】
(iii)Mn含有合金鉄が十分に攪拌・混合されない状態で吹錬を終了すると、添加したMn含有合金鉄の分散が不均一となって、成分バラツキ等が生じるおそれがある。
【0028】
従って、Mn含有合金鉄を投入した後は、少なくとも2Nm3/tの酸素を供給して吹錬を行い、Mn含有合金鉄中の不純物の除去や攪拌等を行うのがよい。該不純物の除去等や攪拌を十分に行うには、Mn含有合金鉄を投入したのち3Nm3/t以上の酸素を供給して吹錬を行うことがより好ましい。
【0029】
本発明では、この様な適正時期にMn酸化物およびMn含有合金鉄を投入することで、脱燐や脱炭等といった精錬操業に支障をきたすことなく高Mn歩留りで溶鋼中のMn量を確保することができる。
【0030】
図2は、Mn酸化物およびMn含有合金鉄のどちらも本発明で規定する時期に投入した場合(Mn酸化物の投入時期:精錬開始後,Mn含有合金鉄の投入時期:精錬中期以降)と、Mn含有合金鉄のみを規定の時期に投入し、Mn酸化物は精錬開始前に投入した場合(Mn酸化物の投入時期:精錬開始前,Mn含有合金鉄の投入時期:精錬中期以降)について、Mn含有合金鉄投入時のスラグ中のMnO濃度とMn歩留りとの関係を示している。この図2から、本発明で規定する時期にMn酸化物およびMn含有合金鉄を投入することで、高いMn歩留りを達成できることがわかる。
【0031】
Mn酸化物は、上記適正時期に投入することに加えて、Mn純分換算で下記式(1)を満たす量を投入するのがよい。
【0032】
Mn酸化物の投入量(kg/t)=炉内スラグ量(kg/t)×1.29×BMnO …(1)
(但し、BMnOはスラグ中のMnO濃度の最適必要増加分(質量%)を示し、2〜15質量%の範囲内とする)
上記Mn酸化物の投入量は、次の様にして求めることができる。通常行う操業下での溶鋼中のMn濃度[Mn]が0.5質量%、スラグ中のFe濃度(T.Fe)が8質量%、スラグ中のMnO濃度(MnO)が4質量%であり、目標値として溶鋼中のMn目標濃度[Mn]’を1.0質量%、スラグ中のFe目標濃度(T.Fe)’を10質量%にしようとするとき、スラグ中のMnO目標濃度(MnO)’は、平衡状態の関係から求まる下記式(2)より10質量%となる。
【0033】
(MnO)'={(T.Fe)'/(T.Fe)}×{[Mn]'/[Mn]}×(MnO)…(2)
従ってBMnO(スラグ中のMnO濃度の最適必要増加分)は、
BMnO=(MnO)’−(MnO)=6(質量%)となる。
【0034】
よって、この場合のMn酸化物の投入量は、[炉内スラグ量(kg/t)×1.29×6] (kg/t)とするのが最適であることがわかる。尚、スラグ中のMnO濃度の最適必要増加分(質量%)は、この様に操業条件に応じて適宜設定することができるが、Mn酸化物を過剰に添加するとスラグが酸化性になりやすいので、Mn歩留りの低下の抑制を考慮すると2〜15質量%の範囲内とするのがよい。
【0035】
この様にMn酸化物を適正量投入して、スラグ中のMnO濃度を最適濃度にした状態でMn含有合金鉄を投入することによって、より高いMn歩留りを達成することができる。
【0036】
尚、Mn酸化物の投入量が上記式(1)で規定した量を下回る場合には、スラグ中のMnO濃度を、平衡時のMnO濃度まで十分に高めることができず、Mn含有合金鉄を投入したときに、該Mn含有合金鉄中のMnの酸化反応が進行し易くMn歩留りを高めることが難しい。好ましくは前記Mn酸化物を少なくとも2kg/t以上投入するのがよい。
【0037】
一方、Mn酸化物の投入量が上記式(1)で規定した量を上回る場合には、スラグ中のMnO量が過度に増加し、該MnO濃度の増加に伴い前記図1に示すようにスラグ中のT.Fe濃度(スラグ中のFe酸化物であるFeOとFe2O3の合計中の鉄純分濃度)も増大しスラグが高酸化性となる。一旦、高酸化性のスラグが形成されると、該スラグを低酸化性に迅速に戻すのは、酸素を供給しつつ精錬する酸化精錬では非常に困難である。従ってこの様な状態になると、Mn歩留りが低下するばかりか溶鋼中のMn濃度を十分に高めることもできないので好ましくない。よって前記Mn酸化物の投入量は15kg/t以下とするのが好ましい。
【0038】
前記Mn酸化物としては、MnOを主成分とするMn鉱石を用いることができる他、Mn濃度の高い鋼種を溶製したときに生じるMnO濃度の高いスラグをリサイクルして使用することができる。
【0039】
尚、Mn酸化物としてMn鉱石を用いる場合には、粉砕された粉末状のMn鉱石(粒径約0.5〜5.0mm)が安価であり、かつ下記の様な問題点も生じないので好ましい。
【0040】
即ち、塊状のMn鉱石を使用すると、転炉上部から添加した時に大部分がスラグ層を突き破って溶鋼内に直接入り、下記化学式(3)に示す反応が溶鋼中で生じ、必要以上の脱炭が生じたり、スラグ中のMnO濃度を目標とするレベルまで上昇できず、引き続いて投入するMn含有合金鉄のMn歩留りを低下させることとなる。
【0041】
[C]+(MnO)⇔[Mn]+CO …(3)
{上記化学式(3)中、[C]は溶鋼中の炭素を示し、(MnO)はスラグ中のMnOを示し、[Mn]は溶鋼中のMnを示し、⇔は反応が平衡状態にあることを示す}
これに対し、粉末状のMn鉱石を転炉上部から添加すると、溶鋼まで到達せずスラグ中に留まるので、塊鉱石の場合より効率的にスラグ中のMnO濃度を高めることができる。
【0042】
Mn含有合金鉄については、特にその投入量を限定するものでなく、目標Mn値に併せて適量添加することができる。またMn含有合金鉄としては、Fe−Mn系合金を用いる他、鋼種に応じてMn−N等を用いることができ、本発明では、投入するMn含有合金鉄中の不純物も精錬時に十分除去できるので、該Mn含有合金鉄として、比較的不純物を多く含むFe−Mn系合金の低級品を使用しても差し支えない。
【0043】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0044】
<実施例1>
まず、本発明で定める如くMn酸化物とMn含有合金鉄を併用し、Mn酸化物を予め投入してスラグ中のMnO量を確保した上でMn含有合金鉄を投入する方法として、Mn酸化物としてMn鉱石を酸素供給積算量が31.3Nm3/tの時期に投入後、2.4Nm3/tの酸素を供給してから、Mn含有合金鉄としてFe−Mn系合金を投入し、該Fe−Mn系合金の投入後に5.6Nm3/tの酸素を供給して吹錬を終了した。
【0045】
またMn酸化物としてMn鉱石のみ用いて溶鋼中のMn量を調整する従来法として、Mn鉱石を酸素供給積算量が5.3Nm3/tの時期に投入後、34.0Nm3/tの酸素を供給して吹錬を終了した。それぞれの方法について、投入するMn鉱石またはFe−Mn系合金量を変化させて、溶鋼中のMn濃度を調整したときのMn歩留りを求めた。いずれの方法もその他の操業条件は下記の通りとした。
この様に夫々の方法でMn量を調整したときの、Mn投入量(投入したMn鉱石またはFe−Mn系合金量のMn純分換算量)とMn歩留りとの関係を図3に示す。
【0046】
この図3から、Mn酸化物のみ用いて溶鋼中Mn量を調整する場合には、Mn投入量を増加させるにつれてMn歩留りが低下するのに対し、本発明の方法によれば、Mn投入量に関係なく高いMn歩留りを達成できることがわかる。
【0047】
<実施例2>
本発明で規定する時期にMn含有合金鉄を投入した場合(本発明例)と、規定を外れる時期にMn含有合金鉄を投入した場合(比較例)でMn歩留りに相違が生じることを確認する実験を行った。実験では、Mn酸化物とMn含有合金鉄の投入を表1に示す時期に行った以外は、いずれの場合も前記実施例1と同様の操業条件で行い、それぞれ複数回操業を行った。そのときの各操業におけるMn歩留りの結果を図4に示す。
【0048】
【表1】
【0049】
前記図4から、転炉において本発明で規定する時期にMnを添加した場合には、Mn歩留りが相対的に高くなっていることがわかる。
【0050】
<実施例3>
Mn酸化物とMn含有合金鉄の投入時期の関係がMn歩留りに及ぼす影響について調べた。
【0051】
操業条件は、Mn酸化物(Mn鉱石)の投入時からMn含有合金鉄(Fe−Mn系合金)の投入までの酸素供給量を1〜12Nm3/tの範囲内で変化させ、Mn含有合金鉄投入後は酸素を6Nm3/t供給して吹錬を終了した以外は、上記実施例1と同様の条件で操業を行った。この様にして操業したときの、Mn酸化物の投入時からMn含有合金鉄の投入までの酸素供給量とMn歩留りとの関係を図5に示す。
【0052】
前記図5から、Mn酸化物投入後の酸素供給量が8Nm3/tを超えた時点でMn含有合金鉄を投入した場合には、Mn歩留りが低下しており、Mn含有合金鉄の投入は、前記Mn酸化物の投入後酸素を8Nm3/t供給するまでの間に行うのがよいことがわかる。
【0053】
<実施例4>
Mn含有合金鉄を投入後の酸素供給量を変化させて、Mn歩留りおよび残存不純物量に与える影響を調べた。
【0054】
操業条件は、Mn含有合金鉄(Fe−Mn系合金)投入後の酸素供給量(Fe−Mn系合金投入後吹錬終了までの酸素供給量)を0〜12Nm3/tの範囲で変化させ、Mn酸化物(Mn鉱石)の投入した後Mn含有合金鉄を投入するまでの酸素供給量を2〜6Nm3/tとする以外は、上記実施例1と同様の条件で操業した。この様にして操業したときの、Mn含有合金鉄投入後吹錬終了までの酸素供給量とMn歩留りの関係を図6に示す。また、Mn含有合金鉄投入後吹錬終了までの酸素供給量と溶鋼中の残存不純物量との関係として、図7にMn含有合金鉄投入後吹錬終了までの酸素供給量と吹錬終了時の溶鋼中のH(水素)濃度との関係を示し、図8にMn含有合金鉄投入後吹錬終了までの酸素供給量と吹錬終了時の溶鋼中のC(炭素)濃度との関係を示す。
【0055】
図6から、Mn含有合金鉄を投入後に多量の酸素を供給すると、Mn歩留りが低下することが分かる。Mn歩留りを少なくとも75%確保するには、Mn含有合金鉄を投入後の酸素供給量を10Nm3/t以下に抑える、換言すれば、酸素供給量が10Nm3/tを超えないうちに吹錬操業を終了するのがよいことがわかる。また図7から、特に安価なMn含有合金鉄に多く含まれている水分を十分除去して溶鋼中のH濃度を低減するには、Mn含有合金鉄を投入後、吹錬終了までに少なくとも2Nm3/t以上の酸素を供給して吹錬処理を行うのがよいことがわかる。
【0056】
また低C濃度の鋼種を製造する場合に、吹錬終了直前に投入するMn含有合金鉄に含まれるC量が多いと、吹錬終了時のC濃度が目標値より高くなるといった不具合が生じる。
【0057】
従って、図8に示す様に溶鋼中のC量を低減すべく、酸素を供給して吹錬処理を行うのがよいことがわかる。
【0058】
【発明の効果】
本発明は上記のように構成されており、本発明の方法で転炉にMnを添加すれば、高Mn鋼を製造する場合であっても脱炭や脱燐等といった精錬操業に支障をきたすことなく高Mn歩留りで溶鋼中のMn量を調整することができる。
【0059】
この様な方法を実施することで、Fe−Mn系合金等の高価なMn含有合金鉄を使用する場合であっても高いMn歩留りを達成することができる。また該Mn含有合金鉄として、C、H2O等の不純物量の多いFe−Mn系合金等の低級品を使用した場合でも、脱ガス等の工程をあらためて設ける必要なく効率良くMn量を調整することができる。更に、Mn酸化物として安価なMn鉱石等を使用できるので経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】スラグ中のMnO濃度とスラグ中のT.Fe濃度の関係を示したグラフである。
【図2】Mn含有合金鉄投入時のスラグ中のMnO濃度とMn歩留りとの関係を、Mn酸化物の投入時期別に示したグラフである。
【図3】本発明法または従来法で溶鋼中Mn量を調整した場合の、Mn投入量とMn歩留りの関係を示したグラフである。
【図4】実施例2における各条件で操業した場合のMn歩留りを示すグラフである。
【図5】Mn酸化物(Mn鉱石)投入後からMn含有合金鉄(Fe−Mn系合金)投入までの酸素供給量とMn歩留りとの関係を示したグラフである。
【図6】Mn含有合金鉄(Fe−Mn系合金)投入後吹錬終了までの酸素供給量とMn歩留りとの関係を示したグラフである。
【図7】Mn含有合金鉄(Fe−Mn系合金)投入後吹錬終了までの酸素供給量と吹錬終了時の溶鋼中のH(水素)濃度との関係を示したグラフである。
【図8】Mn含有合金鉄(Fe−Mn系合金)投入後吹錬終了までの酸素供給量と吹錬終了時の溶鋼中のC(炭素)濃度との関係を示したグラフである。
Claims (3)
- 転炉で精錬を行うに際し、吹錬開始後にMn酸化物を添加し、且つ該Mn酸化物の添加後にMn含有合金鉄を投入するMn添加方法であって、
前記Mn酸化物を投入した後、酸素を8Nm 3 /t(tは溶鋼1トンあたりを意味する。以下同じ)供給するまでの間に前記Mn含有合金鉄を投入し、かつ、該Mn含有合金鉄の投入後に酸素を2〜10Nm 3 /t供給して吹錬を終了することを特徴とする転炉におけるMn添加方法。 - 前記Mn酸化物の投入量を、Mn純分換算で下記式(1)を満たすようにする請求項1に記載の転炉におけるMn添加方法。
Mn酸化物の投入量(kg/t)=炉内スラグ量(kg/t)×1.29×BMnO …(1)
(但し、BMnOは下記式(A)より求められるスラグ中のMnO濃度の最適必要増加分(質量%)を示し、2〜15質量%の範囲内とする)
B MnO =[{ (T.Fe)' / (T.Fe) }×{ [ Mn ]' / [ Mn ]} −1]×(MnO ) …(A )
[式(A)において、B MnO はスラグ中のMnO濃度の最適必要増加分(質量%)、( T.Fe)' はスラグ中のFe目標濃度、( T.Fe )はスラグ中のFe濃度、[Mn ]' は溶鋼中のMn目標濃度、[Mn]は溶鋼中のMn濃度、(MnO)はスラグ中のMnO濃度を示す] - 前記Mn酸化物として、Mn鉱石を使用する請求項1または2に記載の転炉におけるMn添加方法。
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