JP3994965B2 - 鋼板の製造方法 - Google Patents
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(1) ΔT>f、であるときは、
ΔT≦f となるように、誘導加熱装置により鋼板を加熱したうえで、鋼板を形状矯正装置の前まで逆送し、その後、形状矯正装置により鋼板の形状を矯正し、
(2) ΔT≦f、であるときは、
誘導加熱装置により鋼板を加熱することなく、形状矯正装置により鋼板の形状を矯正する、鋼板の製造方法により、上記課題を解決しようとするものである。
ΔTの値が一定値以下であれば鋼板の平坦度悪化を防止可能であるという特性を利用して、ΔTの値が一定値を超える鋼板に限り、この値を一定値以下とする加熱を行うため、上記の本発明によれば、加熱コストを抑制しつつ平坦度が良好な鋼板を製造することが可能となる。
かかるコイルは発熱効率が高いため、鋼板を効率良く加熱することが可能となる。
1.製造方法の概要
本発明における鋼板の製造方法において使用する鋼板の製造ライン100の形態例を図1に示す。鋼板の製造ライン100は、冷却装置10と、形状矯正装置20と、誘導加熱装置30とが、この順で設置され、鋼板1は図の左から右方向へとライン中を送られる。ここで、形状矯正装置20により形状を矯正された鋼板1の板幅と板厚は、それぞれW(mm)とt(mm)であり、この鋼板は、ΔT(℃)の温度ムラとを有しているとする。この時、鋼板1は、「Wの値とtの値とを下記(式1)に代入して得られるfの値と、ΔTの値との間における大小関係」により、以下に示す2通りの方法により、その形状を矯正される。
f=0.004×(W/t)2−1.8×(W/t)+220 (式1)
すなわち、
ケースA:形状矯正装置20による形状矯正後の鋼板1が、「ΔT>f」である場合、鋼板1は、誘導加熱装置30による加熱によってΔT≦fとしてから、形状矯正装置20の前まで逆送され、引き続き、形状矯正装置20により、その形状を矯正された後、次工程へと送られる。
ケースB:形状矯正装置20による形状矯正後の鋼板1が、「ΔT≦f」である場合、鋼板1は、誘導加熱装置30により加熱されることなく、次工程へと送られる。
本発明の鋼板の製造方法において、製造方法選択の判断基準となる温度ムラΔTにつき、以下に定義する。
温度ムラΔTは、鋼板のエッジ部各々20mm及び鋼板の先後端1mを除いた部分の鋼板面における、最高温度と最低温度との差とした。鋼板のエッジ部及び鋼板の先後端を除くのは、かかる部分は過冷却され特異値となるためである。
ここで、温度ムラΔTは、冷却装置の出側にスキャン温度計を設置して測定しても良いし、CCDカメラ、赤外線サーモグラフィー等の画像解析により温度ムラΔTを算出しても良い。
本発明者らは、鋼板に平坦度不良が起こる温度ムラΔTの限界値を、板幅と板厚とで整理したところ、「平坦度不良を起こす温度ムラΔTの限界値」と「板幅/板厚」との間に、一定の関係があることを見出した。図2に、鋼板内温度ムラと鋼板の平坦度との関係を示す。図2の各測定点では、製造現場における実際の各種サイズの鋼板を用いて調査した。図2の縦軸である「加速冷却後の温度ムラΔT」は、冷却装置により冷却した直後における鋼板の温度ムラである。冷却装置における鋼板出側に鋼板の幅方向における温度差を測定可能な放射温度計を設置し、この温度計により、0.2秒毎に鋼板幅方向の温度差を鋼板のほぼ全長に渡って測定した。
上記温度ムラは、この測定結果から、最大温度差を計算することにより特定した。一方、図2における鋼板の平坦度は、製造現場の最終検査場において、製造ライン側面に平坦度測定目盛りを設置し、かかる目盛りを目視で確認することにより特定した。ここで、「平坦度良好」とは、鋼板のうねり高さが10mm以下である場合を指し、「平坦度不良」とは、うねり高さが10mmを超える場合を指す。
なお、鋼板の平坦度については、板厚が15〜30mm、板幅が2000〜4000mmである鋼板において反りが発生したものを選び、データを採取した。また、鋼板の平坦度不良は、鋼板の長手方向にも生じるが、水冷された鋼板においては、特に鋼板の幅方向における平坦度が悪いため、かかる方向の平坦度を測定した。
f=0.004×(W/t)2−1.8×(W/t)+220
鋼板温度ムラΔTが当該許容値の範囲内である場合、すなわち、ΔTの値が上記fの値以下である場合には、次工程(冷却床)における放冷過程において平坦度不良が発生しないため、鋼板の平坦度不良抑制を目的とした加熱は不要である。一方で、鋼板温度ムラが当該許容値の範囲外である場合、すなわち、ΔTの値が上記fの値を超える場合には、ΔTの値をfの値以下とする加熱をすれば次工程における放冷過程において鋼板の平坦度不良を抑制することが可能であるため、従来のように、鋼板内の温度ムラがほとんどなくなるまでの加熱は不要となる。
(1)ケースA
形状矯正装置20による形状矯正後の鋼板1が、「ΔT>f」である場合、鋼板1は、誘導加熱装置30による加熱によってΔT≦fとしてから、形状矯正装置20の前まで製造ラインを逆送され、引き続き、形状矯正装置20によりその形状を矯正された後、次の工程へと送られる。
この場合は、形状矯正装置による形状矯正後における鋼板の温度ムラが「ΔT>f」であるため、このまま次の工程へと送られると、鋼板の放冷過程において、温度ムラに起因する平坦度不良が発生する。したがって、かかる平坦度不良を防止するため、本ケースの場合には、誘導加熱装置30により、温度ムラが「ΔT≦f」の条件を満たすような加熱が行われる。
ここで、誘導加熱装置30による加熱は、鋼板1の温度ムラが「ΔT≦f」の条件を満たす程度の加熱であれば、その後の放冷過程において平坦度不良が発生しないため十分であり、ΔT<<fの条件を満たす程の加熱は必要とされない。
また、誘導加熱装置における誘導加熱方式には、トランスバース型とソレノイド型とが存在するが、ソレノイド型の加熱方式の方が、他方の加熱方式よりも加熱効率の点で優れているため、本発明において、誘導加熱装置30による加熱は、ソレノイド型の誘導加熱コイルを用いて行うことが好ましい。
さらに、図1に示す鋼板の製造ライン100では、一台の誘導加熱装置30のみを図示しているが、鋼板1の板厚が大きい場合、鋼板1の搬送速度が大きい場合、及び誘導加熱装置30による鋼板1の温度上昇量を大きくする場合等においては、当該加熱装置30を、二台以上設置することが好ましい。
なお、鋼板1を逆送させる場合には、形状矯正装置20を素通りさせても良いし、形状矯正装置20により形状を矯正しても良いが、より良好な平坦度を有する鋼板1を希望する場合には、形状矯正装置20により鋼板形状を矯正することが好ましい。
形状矯正装置20による形状矯正後の鋼板1が、「ΔT≦f」である場合、鋼板1は、誘導加熱装置30により加熱されることなく、次工程へと送られる。
この場合は、「ΔT≦f」であるため、次工程における放冷過程において、鋼板1の温度ムラに起因する平坦度不良は発生しない。したがって、誘導加熱装置30による加熱は不要である。
なお、形状矯正装置20による形状矯正後の鋼板1の平坦度が良好ではない場合には、形状矯正装置20を用いて、複数回に渡って矯正することにより、良好な平坦度を有する鋼板1を得ることが可能であるが、形状矯正装置による形状矯正を4回以上行うと、生産性が低下するため、鋼板1の形状矯正は3回以内に止めることが好ましい。
本発明の実施例及び比較例のシミュレーションにおいて用いた鋼板は、JIS SM490A相当材とした。鋼板サイズは、板厚23mm×板幅3200mm×長さ37mとし、鋼板製造ラインにおける冷却装置入り側の鋼板温度は780℃、冷却装置出側の鋼板温度は400℃とした。ここで、鋼板の板厚23mmと、同板幅3200mmとから、fは、
f=0.004×(3200/23)2−1.8×(3200/23)+220≒47
となり、本発明の実施例及び比較例において使用した鋼板の限界温度ムラは47℃であった。
「鋼板A」は、ΔT=60より、「ΔT>f」であるため、上記ケースAに該当する。
また、「鋼板B」は、ΔT=30より、「ΔT≦f」であるため、上記ケースBに該当する。
本実施例では、表1に示す鋼板製造ライン1を使用した。誘導加熱装置内における鋼板の搬送速度、当該加熱装置が各鋼板に熱量を与えた時間、及び当該装置が各鋼板に与えた熱量は、それぞれ、毎分10m、6秒間、及び400℃の鋼板温度が500℃となる熱量とし、かかる加熱を1回行うことにより、各鋼板の温度ムラを47℃以下とした。
本実施例において、鋼板Aは、上記ケースAに該当するため、誘導加熱装置による加熱により温度ムラΔTの値を47以下としたうえで、当該鋼板を形状矯正装置の前まで逆送し、その後、形状矯正装置によりその形状を矯正した。
また、本実施例の鋼板Bは、上記ケースBに該当するため、誘導加熱装置により加熱することなく、次工程へと送った。
なお、本実施例において、誘導加熱装置による加熱後に行う形状矯正装置による鋼板形状の矯正は、1回のみとしたが、鋼板の平坦度に応じて、かかる矯正を複数回行っても良い。
また、本実施例において、誘導加熱装置による加熱が必要である場合、その回数は1回のみとしたが、加熱後の鋼板の温度ムラに応じて、かかる加熱を複数回行うことにより、温度ムラをfの値以下としても良い。
本比較例では、表1に示す鋼板製造ライン1を使用した。誘導加熱装置内における鋼板の搬送速度、当該加熱装置が各鋼板に熱量を与えた時間、及び当該装置が各鋼板に与えた熱量は、それぞれ、毎分5m、12秒間、及び400℃の鋼板温度が500℃となる熱量とし、かかる加熱を3回行うことにより、各鋼板の温度ムラを10℃以下とした。
本比較例において、鋼板Aは、上記ケースAに該当するため、誘導加熱装置により鋼板の温度ムラが10℃以下となる加熱を行った以外は、実施例1における鋼板Aの形状矯正と同様の処理を行った。
また、本比較例の鋼板Bは、上記ケースBに該当するため、誘導加熱装置により鋼板の温度ムラが10℃以下となる加熱を行った以外は、実施例1における鋼板Bの形状矯正と同様の処理を行った。
本比較例では、表1に示す鋼板製造ライン2を使用した。鋼板製造ライン2は、誘導加熱装置を有さず、加速冷却装置以外には形状矯正装置のみを有する製造ラインであるため、鋼板Aと鋼板Bとの両方において、加速冷却装置による冷却後に、引き続き、形状矯正装置によりその形状を矯正した。
本比較例における鋼板A並びに鋼板Bの製造工程及び鋼板形状の矯正結果を表6にあわせて示す。表6より、本比較例における鋼板の平坦度は、鋼板Aにおいて、不良となった。したがって、鋼板の製造ラインにおいては、誘導加熱装置を配置することが重要であるという結果が得られた。
10 冷却装置
20 形状矯正装置
30 誘導加熱装置
100 鋼板の製造ライン
Claims (2)
- 冷却装置と、形状矯正装置と、誘導加熱装置とがこの順で設置されている鋼板の製造ラインにおいて、
前記鋼板の板幅W(mm)と板厚t(mm)とにより与えられる下記(式1)の値をf、
f=0.004×(W/t) 2 −1.8×(W/t)+220 (式1)
前記鋼板を前記冷却装置で冷却した後の前記鋼板表面の最高温度と最低温度との差をΔT(℃)とするとき、
(1) ΔT>f、であるときは、
ΔT≦f となるように、前記誘導加熱装置により前記鋼板を加熱したうえで、前記鋼板を前記形状矯正装置の前まで逆送し、その後、前記形状矯正装置により前記鋼板の形状を矯正し、
(2) ΔT≦f、であるときは、
前記誘導加熱装置により前記鋼板を加熱することなく、前記形状矯正装置により前記鋼板の形状を矯正する、鋼板の製造方法。 - 前記誘導加熱装置による加熱を、ソレノイド型の誘導加熱コイルを用いて行うことを特徴とする、請求項1に記載の鋼板の製造方法。
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