JP3839753B2 - 鋼板の評価方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、残留応力分布等の特性が一定の範囲内となるように制御された鋼板に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的な鋼板の製造方法では、例えばスラブを1000〜1200℃程度に加熱し、所定の寸法になるまで熱間圧延(粗圧延及び仕上げ圧延)を行う。さらに、TMCP(Thermo-Mechanical Control Process)鋼板の場合、加速冷却又は直接焼き入れを実施した後、熱間矯正により鋼板を平坦化し、ガス切断、プラズマ切断、レーザ切断又はシャー切断により所定寸法に切断される。
【0003】
上記各工程における様々な製造条件のばらつきにより、鋼板に不均一な残留応力が発生する。例えば、加熱時の温度不均一(加熱ムラ)、圧延時の平坦度不良(波や反り)や板厚偏差、表面のスケール性状(スケールの成分や厚み)の不均一に起因する水冷時の冷却ムラ、加速冷却やデスケーリング時の不均一冷却(特に鋼板四周部)、熱間矯正時の零点のズレやロール撓み、空冷時の不均一冷却、熱切断時の熱影響による残留応力及び組織変化・硬化、シャー切断時の切断歪、冷間矯正時の零点のズレやロール撓み、熱処理における表面性状の違い(手入れやショットブラスとの有無)等がその原因である。
【0004】
従来、需要家における加工情報、例えば加工条件、加工方法、加工形状及び加工精度の許容値等に応じて、鋼板の残留歪、残留応力、変位又はこれらから演算されるパラメータ等の特性が制御された鋼板というものは存在していなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、上記残留応力を有する従来の鋼板を需要家において切断した場合、切断により残留応力が解放され、鋼板に伸張、収縮、横曲がり、反り等が発生する。残留応力の解放による鋼板の変形が大きい場合、切断された鋼板の形状や寸法が許容誤差範囲を逸脱する可能性がある。その結果、需要家における鋼板の切断及び組立時の生産性が低下するという問題点を有していた。また、鋼板の変形及び変形のばらつきを考慮した設計をしなければならず、設計上の制約が大きいという問題点を有していた。
【0006】
本発明は、上記従来例の問題点を解決するためになされたものであり、残留応力等の特性が制御された鋼板を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の鋼板の評価方法は、切断前の鋼板の残留応力分布と切断情報とから以下の式で定義される応力パラメータηを演算し、予め求められた切断後の鋼板の所定長さ当たりの変形量と応力パラメータηとの関係に基づいて、鋼板を切断することなく、切断後の鋼板の収縮又は伸長の変形量を予測する鋼板の評価方法であることを特徴としている。
【数3】
Figure 0003839753
但し、鋼板全体の面積をS、微少領域の面積をs、微少領域での鋼板の長手方向残留応力値又は幅方向残留応力値をσ、補正総切断領域をΩとする。
【0008】
また、本発明の別の鋼板の評価方法は、切断前の鋼板の残留応力分布と切断情報とから以下の式で定義される変形パラメータδを演算し、予め求められた切断後の鋼板の所定長さ当たりの変形量と変形パラメータδとの関係に基づいて、鋼板を切断することなく、切断後の鋼板の収縮又は伸長の変形量を予測する鋼板の評価方法であることを特徴としている。
【数4】
Figure 0003839753
但し、鋼板全体の面積をS、微少領域での鋼板の長手方向変位、長手方向変形量、幅方向変位又は幅方向変形量をΔ、補正総切断領域をΩとする。
【0011】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
本発明の鋼板、鋼板製造装置及び鋼板製造方法に関する第1の実施形態について説明する。第1の実施形態は、鋼板の残留応力分布から応力パラメータηの値を演算により求め、応力パラメータηの値が所定範囲内になるように制御するものである。
【0012】
第1の実施形態における鋼板製造装置の構成を図1に示す。まず、加熱炉1によりスラブを1000〜1200℃程度に加熱し、第1圧延装置2により板厚が第1所定寸法になるまで粗圧延を行う。次に、冷却装置3により、例えば40キロ鋼板の場合800〜1100℃、TMCP鋼板の場合700〜1100℃程度に冷却し、第2圧延装置4により板厚が第2所定寸法になるまで仕上圧延を行う。さらに、加速冷却装置5により400〜650℃程度に急速冷却した後、熱間矯正装置6により鋼板の形状を平坦化する。
【0013】
熱間矯正装置6の上部には、搬送されてくる鋼板の先端を検出し、一定間隔でパルス信号を発生するパルス発生装置(以下、PLG(Pulse Length Generator)と称する)11が設けられている。PLG11からのパルス信号をカウントし、カウントしたパルス数に一定の長さ(1パルスを発生する間の鋼板の移動量)をかけることにより、鋼板の先端からの現在位置がわかる。
【0014】
また、熱間矯正装置6の下流側には、例えばサーモビュアや走査型の放射温度計等の温度計7が設けられている。PLG11と温度計7の距離を固定し、鋼板8の搬送速度を一定とすることにより、熱間矯正された鋼板8の表面の温度分布を測定することができる。
【0015】
温度計7による温度測定データ及びPLG11による鋼板の長手方向の位置情報は、それぞれディジタルダイレクトコントローラ(以下、DDCと称する)12及びプロセスコンピュータ13を介してサーバコンピュータ15に転送される。
【0016】
一方、鋼板8の圧延サイズ、製品サイズ、製品採取位置、条切断幅、鋼板グレード等の情報がホストコンピュータ19から入力され、ラインコンピュータ14及びプロセスコンピュータ13を介してサーバコンピュータ15に転送される。これらの情報は、サーバコンピュータ15から、さらにキャンバ(横曲がり)予測コンピュータ16、座屈予測コンピュータ17、変形予測コンピュータ18に転送される。
【0017】
キャンバ予測コンピュータ16では、温度測定データ及び位置情報を用いて、例えば本出願人による特公平4−8128号公報に記載された演算方法等により鋼板8の残留応力分布を演算する。演算された残留応力分布データは、サーバコンピュータ15を経由して、座屈予測コンピュータ17及び変形予測コンピュータ18に転送される。これらのコンピュータ16〜18により、それぞれ条切断後のキャンバ予測値、座屈予測値、切断時の変形予測値が演算される。なお、キャンバ予測値と座屈予測値の演算方法の詳細に関しては、例えば本出願人による特開平10−56500号公報に記載されているので、ここでは省略する。
【0018】
切断時の変形予測値の一例として、鋼板サイズ、材質、残留応力分布の演算値、需要家での切断形状や切断方法等にもとづいて、変形予測コンピュータ18により、鋼板の特性(残留応力分布等)の不均一さを表すパラメータを演算し、パラメータが所定の許容範囲内にあるか否かを判断する。
【0019】
広義のパラメータとしては、鋼板自体の残留応力や残留歪み、鋼板を切断した場合の変位や変形量等の最大値、最小値、平均値、総和、偏差、絶対値及び分布等が挙げられる。さらに、狭義のパラメータとしては、残留応力分布から演算により求めた応力パラメータη、変位又は変形量から演算により求めた変形パラメータδ、残留歪み分布から演算により求めた歪みパラメータγ等が考えられる。
【0020】
第1の実施形態では、パラメータとして、以下の式(1)で表される応力パラメータηを演算する。但し、鋼板全体の面積をS、微少領域の面積をs、微少領域での長手方向残留応力値又は幅方向残留応力値をσ、補正総切断領域をΩとする。
【0021】
【数5】
Figure 0003839753
【0022】
応力パラメータηと需要家の要求精度qにより決定される許容値ηc(q)との間には、最小許容値をηc min(q)、最大許容値をηc max(q)として、ηc min(q)≦η≦ηc max(q)が成り立つ。
【0023】
応力パラメータηを演算すると、変形予測コンピュータ18は、ホストコンピュータ19から転送されてきた需要家や用途に応じてあらかじめ決められた許容範囲の上限値及び下限値との大小比較を行う。比較の結果、応力パラメータηが許容範囲内にない場合、矯正装置(ローラレベラ)10や熱処理炉9により鋼板8の残留応力を低減するための矯正条件を設定する。なお、ローラレベラによる矯正の残留応力低減効果は、例えば本出願人による特開平9−57348号公報に記載されているので、参照されたい。また、矯正条件の設定については後述する。
【0024】
通常は、設定された矯正条件に従って、矯正装置(ローラレベラ)10のインターメッシュを調節して矯正(冷間矯正)を行う。また、矯正装置10の能力から決定される最大矯正条件で矯正したと仮定した場合における鋼板の残留応力分布から演算される応力パラメータηが許容値を超える場合は、熱処理後の残留応力分布から演算される応力パラメータηが許容値を満たす必要最小限の熱処理条件(熱処理温度及び時間)を設定し、矯正の前処理として熱処理炉9を用いて残留応力の低減を行い、その後矯正装置10による矯正を行う。熱処理による残留応力の低減については、例えば本出願人による特開平9−78145号公報に記載されているので、参照されたい。
【0025】
なお、熱処理条件の設定に際し、熱処理により鋼板の強度や降伏応力等の材質が変化するので、材質変化を考慮した上で、熱処理の可否についてあらかじめ決定しておく必要がある。本実施形態の鋼板製造装置では、変形予測コンピュータ18のメモリ等に、鋼板のグレードに応じたクリープ係数や熱処理可否のテーブルを設けている。変形予測コンピュータ18は、各鋼板8について、それぞれ以下のような矯正コードを付与する。例えば、応力パラメータηが所定値以下の場合、矯正不要であるので、合格を表す矯正コードK=0を付与する。また、矯正装置10による軽圧下矯正の場合、矯正コードK=1を付与する。同様に、中圧下矯正の場合、矯正コードK=2を付与する。強圧下矯正の場合、矯正コードK=3を付与する。また、熱処理を実施する場合、矯正コードK=4を付与する。
【0026】
さらに、矯正や熱処理によっても応力パラメータηが所定値以下になる見込みがない場合は、不良を表す矯正コードK=5を付与する。
【0027】
変形予測コンピュータ18による演算結果及び判定結果(応力パラメータ、矯正コード)は、サーバコンピュータ15に転送され、保存される。さらに、上位のプロセスコンピュータ13やラインコンピュータ14にも転送される。ラインコンピュータ14は、矯正コードにもとづいて次工程を決定する。例えば、矯正コードK=0の場合、矯正及び熱処理を行わずそのまま出荷する。一方、矯正コードK=1〜3の場合、鋼板8を矯正装置10に搬送し、設定された矯正コードに従って矯正を行う。さらに、矯正コードK=4の場合、まず鋼板8を熱処理炉9に搬送して熱処理を行った後、さらに鋼板8を矯正装置10に搬送し、強圧下で矯正を行う。なお、矯正コードK=5の場合、製造工程から除去する。
【0028】
これと並行して、ラインコンピュータ14は、当該鋼板8の矯正及び熱処理条件(演算矯正条件及び演算熱処理条件)を矯正装置10及び熱処理炉9にそれぞれ転送する。矯正装置10及び熱処理炉9は、ラインコンピュータ14からの条件に従って矯正及び熱処理を実施し、実施した矯正及び熱処理の条件(実績矯正条件及び実績熱処理条件)をラインコンピュータ14に転送する。
【0029】
変形予測値(例えば応力パラメータηの値)、矯正コード、熱処理コード、演算矯正条件、演算熱処理条件、実績矯正条件、実績熱処理条件、平坦度測定結果等は、ラインコンピュータ14からホストコンピュータ19に転送され、品質解析システムに蓄積される。このようにして、鋼板8の残留応力分布が一定範囲内に制御され、需要家での切断加工時の変形が許容範囲内であることが保証される。
【0030】
次に、変形予測コンピュータ18による矯正条件設定プログラムについて、図2及び図3に示すフローチャートを参照しつつ説明する。矯正条件の設定を開始すると、キャンバ予測コンピュータ16は、温度測定データ及び位置情報を用いて鋼板の残留応力を演算する(ステップ#100)。演算された残留応力データは変形予測コンピュータ18に転送され、これを用いて応力パラメータηの初期値η0が演算される(ステップ#105)。さらに、変形予測コンピュータ18は、演算した応力パラメータη0が所定の範囲内(ηminとηmaxの間)にあるか否かを判断する(ステップ#110)。
【0031】
応力パラメータη0が所定の範囲内にある場合(ηmin≦η0≦ηmax:ステップ#110でYES)、当該鋼板8は残留応力が十分に小さく、矯正処理を行う必要がない。そこで、変形予測コンピュータ18は、矯正コードK=0及び応力パラメータη=η0を設定する(ステップ#115)。
【0032】
一方、応力パラメータη0が所定の範囲内にない場合(η0<ηmin又はηmax<η0:ステップ#110でNO)、当該鋼板8は残留応力が大きく、矯正処理を必要とする。そこで、変形予測コンピュータ18は、矯正条件1、すなわち矯正装置10により軽圧条件下で矯正を行ったと仮定した場合の残留応力を演算する(ステップ#120)。さらに、変形予測コンピュータ18は、矯正後の残留応力を用いて応力パラメータη1の演算を行い(ステップ#125)、演算した応力パラメータη1が所定の範囲内(ηminとηmaxの間)にあるか否かを判断する(ステップ#130)。
【0033】
応力パラメータη1が所定の範囲内にある場合(ηmin≦η1≦ηmax:ステップ#130でYES)、当該鋼板8は、矯正条件1により矯正することにより残留応力を所定範囲内に低減可能である。そこで、変形予測コンピュータ18は、矯正コードK=1及び応力パラメータη=η1を設定する(ステップ#135)。
【0034】
応力パラメータη1が所定の範囲内にない場合(η1<ηmin又はηmax<η1:ステップ#130でNO)、当該鋼板8は矯正条件1で矯正してもなお残留応力が大きく、さらに強力な矯正処理を必要とする。そこで、変形予測コンピュータ18は、矯正条件2、すなわち矯正装置10により中圧条件下で矯正を行ったと仮定した場合の残留応力を演算する(ステップ#140)。さらに、変形予測コンピュータ18は、矯正後の残留応力を用いて応力パラメータη2の演算を行い(ステップ#145)、演算した応力パラメータη2が所定の範囲内(ηminとηmaxの間)にあるか否かを判断する(ステップ#150)。
【0035】
応力パラメータη2が所定の範囲内にある場合(ηmin≦η2≦ηmax:ステップ#150でYES)、当該鋼板8は、矯正条件2により矯正することにより残留応力を所定範囲内に低減可能である。そこで、変形予測コンピュータ18は、矯正コードK=2及び応力パラメータη=η2を設定する(ステップ#155)。
【0036】
応力パラメータη2が所定の範囲内にない場合(η2<ηmin又はηmax<η2:ステップ#150でNO)、当該鋼板8は矯正条件2で矯正してもなお残留応力が大きく、矯正装置10の有する能力を最大にして矯正処理する必要がある。そこで、変形予測コンピュータ18は、矯正条件3、すなわち矯正装置10により強圧下条件下で矯正を行ったと仮定した場合の残留応力を演算する(ステップ#160)。さらに、変形予測コンピュータ18は、矯正後の残留応力を用いて応力パラメータη3の演算を行い(ステップ#165)、演算した応力パラメータη3が所定の範囲内(ηminとηmaxの間)にあるか否かを判断する(ステップ#170)。
【0037】
応力パラメータη3が所定の範囲内にある場合(ηmin≦η3≦ηmax:ステップ#170でYES)、当該鋼板8は、矯正条件3により矯正することにより残留応力を所定範囲内に低減可能である。そこで、変形予測コンピュータ18は、矯正コードK=3及び応力パラメータη=η3を設定する(ステップ#175)。
【0038】
応力パラメータη3が所定の範囲内にない場合(η3<ηmin又はηmax<η3:ステップ#170でNO)、当該鋼板8の残留応力が大きく、矯正装置10の能力を最大にしても矯正不十分である。
【0039】
前述のように、鋼板8の材質変化を考慮した上で、熱処理の可否についてあらかじめ決定されている。そこで、変形予測コンピュータ18は、鋼板8の熱処理可否のテーブルを検索し、当該鋼板8が熱処理可能なものか否かを判断する(ステップ#180)。
【0040】
鋼板8が熱処理不可能である場合(ステップ#180でNO)、当該鋼板8は矯正装置10の能力を持ってしても、その残留応力を所定範囲内に低減できないので、変形予測コンピュータ18は、不良品を表す矯正コードK=5及び応力パラメータη=η3を設定する(ステップ#185)。
【0041】
鋼板8が熱処理可能な場合(ステップ#180でYES)、変形予測コンピュータ18は、熱処理炉9で熱処理を行った後、さらに矯正条件3、すなわち矯正装置10により強圧下条件下で矯正を行ったと仮定した場合の残留応力を演算する(ステップ#190)。さらに、変形予測コンピュータ18は、矯正後の残留応力を用いて応力パラメータη4の演算を行い(ステップ#195)、演算した応力パラメータη4が所定の範囲内(ηminとηmaxの間)にあるか否かを判断する(ステップ#200)。
【0042】
応力パラメータη4が所定の範囲内にない場合(η4<ηmin又はηmax<η4:ステップ#200でNO)、当該鋼板8の残留応力が大きく、熱処理炉9により熱処理を行い、かつ矯正装置10の能力を最大にしても矯正不十分である。そこで、変形予測コンピュータ18は、不良品を表す矯正コードK=5及び応力パラメータη=η4を設定する(ステップ#205)。
【0043】
応力パラメータη4が所定の範囲内にある場合(ηmin≦η4≦ηmax:ステップ#200でYES)、当該鋼板8は、熱処理後、矯正条件3により矯正することにより残留応力を所定範囲内に低減可能である。そこで、変形予測コンピュータ18は、熱処理を表す矯正コードK=4及び応力パラメータη=η4を設定し(ステップ#210)、矯正条件設定プログラムを終了する。
【0044】
次に、上記鋼板製造装置又は鋼板製造方法により製造された鋼板の評価方法について説明する。
【0045】
従来の鋼板製造方法により製造された鋼板は、残留応力分布が制御されておらず、また測定もされていない。従って鋼板の残留応力が大きい場合、需要家において当該鋼板を切断すると、許容値を超えて鋼板が伸長したり、収縮したり、横曲がりが発生したり、あるいは反りが発生する可能性がある。
【0046】
そこで、本発明者らは、切断加工時に変形の少ない鋼板を開発すべく、鋼板の残留応力や残留歪みに関して鋭意研究を重ねた。その過程において、上記式(1)で表される応力パラメータηの値を制御することにより、鋼板の切断後の変形量を予測できるとの知見を得た。様々な鋼板サイズ、残留応力分布、切断形状の鋼板について、有限要素法(以下、FEM:Finite Element Methodと称する)解析を行い、切断後の鋼板の変形量と応力パラメータηの関係を求めた結果を図4に示す。図4において、横軸は応力パラメータηの値(単位kg/mm2)を表し、縦軸は所定長さ当たりの変形量(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。
【0047】
このように、あらかじめ切断形状、切断方法、切断サイズ、鋼板全体における切断位置等の切断情報が与えられれば、実際に鋼板を切断することなしに、鋼板の残留応力分布と切断情報から、切断時の変形を予測することができる。さらに、応力パラメータηを制御することにより、目標とする許容値以内に変形量を制御することも可能である。
【0048】
近年、鋼板切断時の変形に関する要求が厳格化しており、切断時における鋼板の収縮や伸長等の変形が長さ10,000mm当たり1.5mm以下の鋼板が求められている。この要求を満足するため、図4から、応力パラメータηの値の絶対値を0.3kg/mm2以下に制御することが好ましい。
【0049】
なお、上記式(1)における補正切断領域Ωとは、切断される部位のすべての領域を意味する。また、図5(a)に示すように切断領域の形状がT字型の場合、T字の縦線部分の周りに残された材料は変形後の曲げ、収縮(引っ張り)に寄与しないため、図5(b)に示す切断領域の形状が矩形の場合と同等と考えられる。
【0050】
上記式(1)における残留応力値σは、板厚方向における平均値(板厚方向における複数の位置で測定し又は解析した値の平均値)である。しかしながら、実際に鋼板の板厚方向における複数の位置で残留応力値を測定したり、あるいは解析することは非常に複雑かつ困難である。そこで、鋼板の表面の残留応力値を測定し、板厚方向における平均値に補正することができれば、残留応力値の測定又は解析が簡単かつ容易になる。
【0051】
一般に、鋼板表面での残留応力値は、必ずしも板厚方向における平均値とは一致せず、鋼板の板厚、グレード、製造方法等によって大きく異なる。長手方向残留応力の板厚方向の平均値が零である鋼板について、長手方向残留応力の板厚方向の分布を図6に示す。また、この鋼板の詳細を表1に示す。
【0052】
【表1】
Figure 0003839753
【0053】
図6において、横軸は板厚方向における測定点の位置(全体に対する割合:単位は無次元)を表し、縦軸は各測定点における鋼板の長手方向残留応力値(単位kg/mm2)を表す。図6から明らかなように、鋼板の表面及び裏面では、残留応力値が圧縮であり、平均値から大きくずれている。また、鋼板の板厚方向の中央部近傍では、残留応力値が引張であり、また平均値から大きくずれている。一方、鋼板の板厚方向の表面又は裏面から板厚の1/4の位置近傍では、残留応力値が平均値に比較的近い値を示している。すなわち、鋼板表面の残留応力値は板厚方向の平均値とは一致していない。そこで、鋼板表面の残留応力が板厚方向の平均値とほぼ等しくなるように、板厚、グレード又は製造方法に応じて換算又は補正を行うことが好ましい。
【0054】
次に、長手方向残留応力の板厚方向の平均値が零である鋼板(圧延したままの40kg/mm2鋼板)について、板厚と鋼板表面の長手方向残留応力の関係を図7に示す。図7において、横軸はサンプルとした各鋼板の板厚(単位mm)を表し、縦軸は鋼板の表面における残留応力値(単位kg/mm2)を表す。図7から明らかなように、板厚が厚くなるに応じて、鋼板表面の残留応力の絶対値が大きくなる。従って、鋼板表面の残留応力の測定値から、板厚に応じて図7から求まる値を減じることにより、板厚方向平均値へ補正することができる。
【0055】
さらに、板厚と製造方法及び鋼板のグレードに応じた表面の残留応力の補正値の関係を図8に示す。図8において、横軸はサンプルとした各鋼板の板厚(単位mm)を表し、縦軸は鋼板の表面における残留応力の補正値(単位kg/mm2)を表す。また、図中「▲」は圧延したままの鋼板の値を表し、「●」は加速冷却型鋼板の値を示し、「◆」は熱処理及び/又は矯正処理した鋼板の値を表す。図8から明らかなように、熱処理や矯正を施したグレードの高い鋼板は、圧延したままの鋼板や加速冷却した鋼板に比べて、板厚方向残留応力の変化が小さく、板厚による補正値の変化は小さい。また、圧延したままの鋼板と加速冷却した鋼板のように製造方法の違いによっても、板厚方向残留応力の変化が異なる。従って、これら鋼板の製造方法やグレード等の条件に応じて、それぞれ異なった補正値を用いて表面の残留応力測定値から板厚方向の平均値への補正を行うことが好ましい。
【0056】
次に、鋼板の表面の温度分布の測定時点について検討する。図1に示す鋼板製造装置では、熱間矯正装置6による熱間矯正後に、温度計7により鋼板8の表面の温度分布を測定するように構成しているが、これに限定されるものではなく、第2圧延装置4による圧延後や、加速冷却装置5による加速冷却後に測定してもよいが、計測値の補正の要否を考慮すると、熱間矯正後の測定が望ましい。
【0057】
幅方向における端部近傍に過冷却された温度分布(長手方向の温度分布は一様とする)を有する鋼板(製品長さを20mとする)に対して、FEM解析により冷却後の長手方向残留応力を演算し、その鋼板から様々なサイズ(例えば、長さ3m及び8m)の試験片を切断した場合の残留応力分布の変化を解析した。鋼板の詳細を表2に示す。また、試験片の長手方向における中央位置近傍でかつ幅方向における複数の位置で測定した長手方向残留応力分布を図9に示す。
【0058】
【表2】
Figure 0003839753
【0059】
図9において、横軸は、鋼板の幅方向における測定点の位置を表し(幅3000mmの対する位置:単位mm)、縦軸は各測定点における鋼板の長手方向残留応力の値(単位kg/mm2)を表す。図9から明らかなように、試験片長さに応じて鋼板の拘束状態が異なり、長手方向残留応力の分布が変化していることがわかる。すなわち、長さ3mの試験片に着目すると、切断前は同一の残留応力分布であったにもかかわらず、切断された試験片の長手方向残留応力が変化している。しかも、鋼板の側部近傍では残留応力の値が増加し、鋼板の中央部近傍では残留応力の値は低減している。これに対して、長さ8mの試験片の場合、長手方向残留応力分布が切断前の製品(長さ20mm)のそれとほぼ一致している。このことから、試験片の長さが短い場合には、測定した残留応力の値を、需要家で加工される長さに補正して、応力パラメータηを演算する必要がある。逆に、試験片の長さが少なくとも8m以上となるよう切断することにより、試験片の長さによる影響を受けないことがわかる。
【0060】
以上のことから、試験片が短い場合は、測定した残留応力の補正が必要となる。試験片長さと残留応力の補正係数の関係を図10に示す。図10において、横軸は鋼板(例えば長さ20mの製品)を切断した試験片の長さ(単位m)を表し、縦軸は補正係数を表す。また、「▲」は鋼板の幅方向における中央部近傍での残留応力の補正計数(単位無次元)を表し、「●」は鋼板の幅方向における端部近傍での残留応力の補正値を表す。なお、補正係数は、切断前の鋼板の幅方向における中央部及び端部から所定の位置での残留応力値に対する切断後の試験片の幅方向における同じ位置での残留応力値の割合(比)である。図9及び図10から明らかなように、試験片長さが短い場合には、幅方向における端部近傍や幅方向における中央近傍のいずれの位置でも補正が必要となり、しかも補正量が異なる。従って、試験片長さに応じて、図10から求めた補正係数の逆数を乗じることにより残留応力の補正を行うことが好ましい。
【0061】
周知のように、切断加工時の切断方法により鋼板が変形する場合がある。例えば、ガス切断、プラズマ切断、レーザー切断といった熱切断においては、切断時の入熱により鋼板の変形量が異なる。板厚16mmの鋼板を切断した場合における切断方法による変形量の違いを熱弾塑性FEMにより解析した結果を図11に示す。図11において、横軸は切断方法を表し、縦軸は切断時の収縮量(単位mm)を表す。なお、図11では、シャー切断の場合も表示している。
【0062】
図11から明らかなように、切断方法により切断入熱量が異なり、切断後の変形量が異なるので、変形量が許容範囲内となるように、切断方法及び切断入熱に応じて鋼板の応力パラメータηを補正することが好ましい。応力パラメータηの補正値を図12に示す。図12において、横軸は切断方法を表し、縦軸は応力パラメータηの補正値(単位kg/mm2)を表す。具体的には、応力パラメータηの値から、切断方法に応じて図12から求めた補正値を減算して補正する。なお、この補正値は、例えば図13に示す形状に鋼板を切断する場合の値であるが、補正値は切断形状及び板厚により異なるので、切断形状や板厚に応じて数水準用意しておくことが好ましい。
【0063】
このように、第1の実施形態によれば、需要家における加工情報、例えば加工条件、加工方法、加工形状又は加工精度の許容値に応じて、加工後における残留応力による変形量が所定の許容値以下となるように、未加工状態での残留応力分布が制御された鋼板が得られる。
【0064】
また、鋼板の表面の温度分布から鋼板表面の残留応力値又は残留応力分布を演算し、残留応力から応力パラメータηの値を演算し、応力パラメータηの値が所定範囲内にあるか否かを判断することにより、実際に鋼板を切断加工するまでもなく、切断加工後の鋼板の変形量を予測することができる。
【0065】
また、鋼板の表面を測定して求めた残留応力の値を板厚方向の平均値に換算又は補正することにより、残留応力の測定又は解析が容易になる。さらに、鋼板の板厚、グレード、製造方法に応じて補正することにより、鋼板の表面の残留応力から換算又は補正した板厚方向の平均値の値をより正確に求めることが可能となる。さらに、鋼板の幅方向における測定位置に応じて残留応力値を補正することにより、測定データが少ない場合であっても、より正確に板厚方向における残留応力の平均値を求めることが可能となる。さらに、鋼板(製品)から切断した試験片の大きさに応じて、残留応力の値を補正することにより、小さな試験片からでもより正確に板厚方向における残留応力の平均値を求めることが可能となる。あるいは、試験片を一定以上の大きさ(例えば長さ8m以上)とすることにより、試験片の大きさや測定位置による残留応力値の変化をなくすことが可能となり、補正が不要となる。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、本発明の鋼板、鋼板製造方法及び鋼板製造装置に関する第2の実施形態ついて説明する。第2の実施形態は、基本的に上記第1の実施形態の場合と同様であり、応力パラメータηの代わりに、残留応力値が一定の範囲内となるように制御されている。
【0067】
残留応力値σと需要家の要求精度qにより決定される許容値σc(q)との間に、残留応力の最大値をσmax、残留応力の最小値をσmin、許容値の上限をσc max、許容値の下限をσc min、残留応力値の板内偏差の許容値をσc devとして、σc min(q)≦σ≦σc max(q)及びσmax−σmin≦σc dev(q)の少なくともいずれかの関係が成り立つ。
【0068】
図1における変形予測コンピュータ18は、残留応力の最大値、最小値、平均値、総和、偏差、絶対値又は分布が一定の範囲内となるように制御する。その他、特に記載しない部分は上記第1の実施形態の場合と同様である。
【0069】
上記応力パラメータηと同様に、残留応力値自体も切断加工時の変形に影響を及ぼす。鋼板の残留応力値と切断加工時の変形の関係を弾性解析により求めた結果を図14に示す。図14において、横軸は鋼板の長手方向残留応力値の絶対値(単位kg/mm2)を表し、縦軸は所定長さの鋼板を切断した後の変形量の絶対値(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。
【0070】
ここでの残留応力値は、100mm×100mmの略正方形の領域での長手方向残留応力の平均値である。切断条件として、鋼板切断時の変形の絶対値が最大となる条件を想定して解析した。残留応力値の絶対値が大きくなると、鋼板を切断した時の変形の絶対値も大きくなるので、変形量が目標値となるように残留応力値を制御する必要がある。
【0071】
図14から明らかなように、一般的には、残留応力値の絶対値が4kg/mm2以下程度であればよい。特に、切断後の変形の絶対値が長さ10,000mm当たり1.5mm以下とする場合、残留応力値の絶対値は3.14kg/mm2以下が好ましい。
【0072】
また、様々なサイズ及び残留応力分布の鋼板に対して、任意の100mm×100mmの正方形領域の残留応力偏差(最大値−最小値)と切断後の変形量の関係を図15に示す。板厚方向の平均値を考えた場合、板面内の残留応力値の偏差は11kg/mm2以下、より好ましくは10.5kg/mm2以下に規制することが好ましい。
【0073】
また、第1の実施形態と同様に、残留応力値の絶対値、最大値、最小値、平均値、偏差等についても、鋼板の板厚、グレード、切断方法等に応じた補正を加えることが好ましい。切断方法に応じた残留応力値の補正値を図16に示す。図16において、横軸は切断方法を表し、縦軸は残留応力値の補正値(単位kg/mm2)を表す。具体的には、残留応力値から、切断方法に応じて図12から求めた補正値を減算して補正する。この補正値も、例えば図13に示す形状に鋼板を切断する場合の値であり、切断形状に応じて数水準用意しておくことが好ましい。
【0074】
(第3の実施形態)
次に、本発明の鋼板、鋼板製造方法及び鋼板製造装置に関する第3の実施形態ついて説明する。第3の実施形態は、基本的に上記第1又は第2の実施形態の場合と同様であり、応力パラメータηの代わりに、鋼板の切断部の形状及び鋼板の長手方向変位又は長手方向変形量から求まる変形パラメータδの値が一定の範囲内となるように制御されたものである。図1における変形予測コンピュータ18は、以下の式(2)で表される変形パラメータδの値が所定の範囲内となるように制御する。その他、特に記載しない部分は上記第1又は第2の実施形態の場合と同様である。
【0075】
【数6】
Figure 0003839753
【0076】
但し、鋼板全体の面積をS、微少領域での長手方向変位、長手方向変形量、幅方向変位又は幅方向変形量をΔ、補正総切断領域をΩとする。
【0077】
変形パラメータδと需要家の要求精度qにより決定される許容値δc(q)との間には、最小許容値をδc min(q)、最大許容値をδc max(q)として、
δc min(q)≦δ≦δc max(q)の関係が成り立つ。
【0078】
第1の実施形態の場合と同様に、様々な鋼板サイズ、残留応力分布、切断形状の鋼板について、FEM解析を行い、切断後の鋼板の変形量と変形パラメータδの関係を求めた結果を図17に示す。図17において、横軸は変形パラメータδの値(単位無次元)を表し、縦軸は所定長さ当たりの変形量(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。変形パラメータδの値を制御することにより、鋼板の切断後の変形量を予測することができる。
【0079】
図17から明らかなように、切断時における鋼板の収縮や伸長等の変形量が長さ10,000mm当たり1.5mm以下の要求を満足するため、変形パラメータδの値の絶対値を1.6以下に制御することが好ましい。
【0080】
実際に変形パラメータδを求める方法としては、第1の実施形態の場合と同様に、加速冷却後の鋼板表面温度分布から長手方向残留応力を演算し、需要家での加工情報及び当該残留応力から変形パラメータδを演算する。
【0081】
上記図1に示す鋼板製造装置では、製造途中の鋼板を全数検査するためにPLG11等を用いたが、本実施形態では、製造された鋼板を抜き取り、試験片を切断して検査する。切断時の切断部位の変形量の測定については、長さ10,000mmの鋼板に対しての0.1mm単位の変位又は変形量Δの測定精度が必要であり、測定には高度な技術が必要である。そのため、本実施形態では、鋼板の裏面にマグネットで治具をとりつけ、テーブルにつけた渦流距離計により相対的な変位を測定した。また、CCDカメラ(ディジタルカメラやビデオカメラでの代用可)を3台用意し、それぞれ鋼板の長手方法トップ、ミドル、ボトムのターゲットを測定し、画像処理により変位を演算した。そのほか、レーザー距離計やエンコーダ等を用いて変位又は変形量を測定してもよい。
【0082】
また、切断方法による変形量の違いを補正するための変形パラメータδの補正値を図18に示す。図18において、横軸は切断方法を表し、縦軸は変形パラメータδの補正値(単位無次元)を表す。具体的には、変形パラメータδの値から、切断方法に応じて図18から求めた補正値を減算して補正する。なお、この補正値は、例えば図13に示す形状に鋼板を切断する場合の値であるが、補正値は切断形状により異なるので、切断形状に応じて数水準用意しておくことが好ましい。
【0083】
(第4の実施形態)
次に、本発明の鋼板、鋼板製造方法及び鋼板製造装置に関する第4の実施形態ついて説明する。第4の実施形態は、基本的に上記第1から第3の実施形態の場合と同様であり、変形パラメータδの代わりに、変形歪み値が一定の範囲内となるように制御されている。図1における変形予測コンピュータ18は、変形歪みの最大値、最小値、平均値、総和、偏差、絶対値又は分布が一定の範囲内となるように制御する。その他、特に記載しない部分は上記第1から第3の実施形態の場合と同様である。
【0084】
切断部位の歪み値Δεと需要家の要求精度qにより決定される許容値Δcε(q)との間には、最小許容値をΔcε-min(q)、最大許容値をΔcε-max(q)として、Δcε-min(q)≦Δε≦Δcε-max(q)の関係が成り立つ。
【0085】
本実施形態では、鋼板(好ましくは長さ8m以上)から、複数のさらに小さい試験片(500mm×500mmの略正方形の試験片)を切断し、切断部位の長手方向変位を測定した。試験片の採取位置としては、図19に示すように、鋼板の長手方向における中央部で、幅方向における両端部近傍及び中央部の3カ所である。また、鋼板の詳細を表3に示す。
【0086】
【表3】
Figure 0003839753
【0087】
鋼板の幅方向における端部近傍から試験片(試験片A、B)を切断した場合の切断部位の長手方向歪み(横軸)と変位の最大値(縦軸)との関係を図20に示す。また、鋼板の幅方向における中央部近傍から試験片(試験片C)を切断した場合の切断部位の長手方向歪み(横軸)と変位の最大値(縦軸)との関係を図21に示す。ここで、長手方向変位の最大値とは、切断時の変形の絶対値が最大となる条件で切断した場合の変形量である。また、切断部位の歪εは、ε=(L'−L)/Lで定義される。但し、Lは500mm×500mmの試験片の切断部位の幅方向の中央部での切断前の長手方向の長さであり、L'は同切断後の長手方向の長さである。
【0088】
図20及び図21において、横軸は切断部位の歪み(単位mm/mm、すなわち無次元)を表し、縦軸は長手方向変位の最大値(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。図20から明らかなように、鋼板の長手方向における中央部近傍でかつ幅方向における端部近傍から試験片を切断した場合、切断部位の変形歪が−0.005以上0.005以下の範囲内であることが好ましい。また、図21から明らかなように、鋼板の長手方向における中央部近傍でかつ幅方向における中央部近傍の位置から試験片を切断した場合、切断部位の変形歪が−0.0007以上0.0007以下の範囲内であることが好ましい。
【0089】
なお、鋼板の幅方向の端部近傍から試験片を切断する場合、図19に示すように、長手方向の同じ位置において、幅方向の両端部から試験片A及びBをそれぞれ切断する。その際、切断部位の歪及び変位(変形量)は、2つの試験片A及びBの平均値とする。この理由として、幅方向の片側の端部近傍からのみ試験片A又はBを切断したのでは、鋼板に横曲がりが発生して切断部位の歪及び変位が正確に測定できない場合もあるためである。
【0090】
図20又は図21に示すような切断部位ごとの長手方向歪みと変位の最大値との関係を求めておけば、任意の鋼板から500mm×500mmの略正方形の試験片を切断し、切断部位の変形歪を測定することにより、切断後の鋼板の変形を予測することが可能となる。ここでの鋼板の変形は、切断時に最も変形の絶対値が大きくなる条件で切断した場合を想定しているが、図22に示すように、需要家の切断形状に応じて、あらかじめ変形の水準を数種類用意しておいてもよい。図22においても同様に、横軸は切断部位の歪み(単位mm/mm、すなわち無次元)を表し、縦軸は長手方向変位の最大値(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。
【0091】
なお、鋼板から試験片を切断する場合における試験片の変形量は、試験片採取位置により異なる。例えば、長手方向残留応力の幅方向の分布が長手方向に一様である表2に示す鋼板を用いて、幅方向における中央でかつ長手方向における複数の位置からそれぞれ500mm×500mmの略正方形の試験片を切断し、切断部位の変形量を弾塑性FEM解析により演算した。
【0092】
試験片採取位置と切断部位の変形量の関係を図23に示す。図23において、横軸は長手方向における試験片採取位置の先端からの距離(単位m)を表し、縦軸は長手方向変位の最大値(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。図23から明らかなように、同一の鋼板であっても試験片採取位置により、切断部位の変形量が異なる。従って、試験片の採取位置により補正が必要となる。
【0093】
試験片の長手方向における試験片採取位置と切断部位の変形の補正係数の関係を図24に示す。図24において、横軸は長手方向における試験片採取位置の先端からの距離(単位m)を表し、縦軸は補正係数(単位無次元)を表す。また、「●」は鋼板の幅方向の端部近傍から採取した試験片によるデータを表し、「▲」は幅方向の中央部近傍から採取した試験片によるデータを表す。図24から明らかなように、鋼板の幅方向における採取位置によっても変形量が異なり、試験片採取位置に応じた補正係数が必要である。具体的には、図24から求まる補正係数の逆数を乗じることにより切断部位の変形の補正を行うことが好ましい。
【0094】
また、図23から明らかなように、試験片を鋼板の長手方向の中央部近傍から採取する場合であっても、鋼板の長さが短い場合には補正が必要である。また、試験片採取位置が鋼板の長手方向の先端から4m以上の離れている場合、切断部位の変形量がほぼ一定であることから、少なくとも8m以上の長さを有する鋼板をその長さ方向の先端から4m以上離れた位置で試験片を切断すれば、鋼板の長さによる影響はほとんどなくなる。
【0095】
さらに、図24から明らかなように、試験片採取位置が鋼板の長手方向の先端から4m以上の離れている場合、鋼板の幅方向における端部近傍から試験片を採取した場合も、幅方向の中央部近傍から試験片を採取した場合も、補正係数の値、すなわち切断部位の変形量がほぼ一致していることがわかる。すなわち、少なくとも8m以上の長さを有する鋼板をその長さ方向の先端から4m以上離れた位置で試験片を切断すれば、鋼板の幅方向における試験片の採取位置に関わらず、鋼板の長さによる影響はほとんどなくなる。
【0096】
さらに、切断方法の違いによる切断部位の変形量を補正する場合、切断方法に応じて鋼板の変形歪み値を補正することが好ましい。鋼板の長手方向における変形歪みの補正値を図25に示す。図25において、横軸は切断方法を表し、縦軸は変形歪みの補正値(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。具体的には、変形歪みの値から、切断方法に応じて図25から求めた補正値を減算して補正する。なお、この補正値は、例えば図13に示す形状に鋼板を切断する場合の値であるが、補正値は切断形状により異なるので、切断形状に応じて数水準用意しておくことが好ましい。
【0097】
このように、第4の実施形態によれば、鋼板から試験片を切断し、試験片から変形歪みを実測し、変形歪みの値が所定範囲内にあるか否かを判断するので、少なくとも試験片を採取した部分は無駄になるが、切断加工後の鋼板の変形量を予測することができる。
【0098】
(第5の実施形態)
次に、本発明の鋼板、鋼板製造方法及び鋼板製造装置に関する第5の実施形態ついて説明する。第5の実施形態は、基本的に上記第4の実施形態の場合と同様であり、変形歪みの代わりに、変形量が一定の範囲内となるように制御されている。図1における変形予測コンピュータ18は、変形量の最大値、最小値、平均値、総和、偏差、絶対値又は分布が一定の範囲内となるように制御する。その他、特に記載しない部分は上記第1から第4の実施形態の場合と同様である。
【0099】
切断部位の変形量Δdと需要家の要求精度qにより決定される許容値Δc d(q)との間には、最小許容値をΔc d-min(q)、最大許容値をΔc d-max(q)として、Δc d-min(q)≦Δd≦Δc d-max(q)の関係が成り立つ。
【0100】
上記第4の実施形態と同様に、本実施形態でも、鋼板(好ましくは長さ8m以上)から、複数のさらに小さい試験片(500mm×500mmの略正方形の試験片)を切断し、切断部位の長手方向変形量を測定した。試験片の採取位置としては、図19に示すように、鋼板の長手方向における中央部で、幅方向における両端部近傍及び中央部の3カ所である。また、鋼板の詳細は表3に示すものと同様である。
【0101】
鋼板の幅方向における端部近傍から試験片(試験片A、B)を切断した場合の切断部位の長手方向の変形量(横軸)と変位の最大値(縦軸)との関係を図26に示す。また、鋼板の幅方向における中央部近傍から試験片(試験片C)を切断した場合の切断部位の長手方向の変形量(横軸)と変位の最大値(縦軸)との関係を図27に示す。ここで、長手方向変位の最大値とは、切断時の変形の絶対値が最大となる条件で切断した場合の変形量である。また、切断部位の変形量Δは、Δ=L'−Lで定義される。但し、Lは500mm×500mmの試験片の切断部位の幅方向の中央部での切断前の長手方向の長さであり、L'は同切断後の長手方向の長さである。
【0102】
図26及び図27において、横軸は切断部位の歪み(単位mm/mm、すなわち無次元)を表し、縦軸は長手方向の変位の最大値(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。図26から明らかなように、鋼板の長手方向における中央部近傍でかつ幅方向における端部近傍から試験片を切断した場合、切断部位の変形量Δが−2.0mm以上2.0mm以下の範囲内であることが好ましい。また、図27から明らかなように、鋼板の長手方向における中央部近傍でかつ幅方向における中央部近傍から試験片を切断した場合、切断部位の変形量Δが−0.4mm以上0.4mm以下の範囲内であることが好ましい。
【0103】
図26又は図27に示すような切断部位ごとの長手方向の変形量と変位の最大値との関係を求めておけば、任意の鋼板から500mm×500mmの略正方形の試験片を切断し、切断部位の変形量を測定することにより、切断後の鋼板の変形を予測することが可能となる。ここでの鋼板の変形は、切断時に最も変形の絶対値が大きくなる条件で切断した場合を想定しているが、上記第4の実施形態の場合と同様に、需要家の切断形状に応じて、あらかじめ変形の水準を数種類用意しておいてもよい。また、試験片切断位置による補正及び切断方法による補正は、上記第4の実施形態の場合と同様である。
【0104】
(第6の実施形態)
次に、本発明の鋼板、鋼板製造方法及び鋼板製造装置に関する第6の実施形態ついて説明する。第6の実施形態は、基本的に上記第1又は第3の実施形態の場合と同様であり、応力パラメータηや変形パラメータδの代わりに、鋼板の切断部の形状及び鋼板の長手方向残留歪み分布から求まる歪みパラメータγの値が一定の範囲内となるように制御されたものである。図1における変形予測コンピュータ18は、以下の式(3)で表される歪みパラメータγの値が所定の範囲内となるように制御する。その他、特に記載しない部分は上記第1又は第3の実施形態の場合と同様である。
【0105】
【数3】
Figure 0003839753
【0106】
但し、鋼板全体の面積をS、微少領域の面積をs、微少領域での長手方向残留歪み値又は幅方向残留歪み値をε、補正総切断領域をΩとする。
【0107】
歪みパラメータγと需要家の要求精度qにより決定される許容値γc(q)との間には、最小許容値をγc min(q)、最大許容値をγc max(q)として、
γc min(q)≦γ≦γc max(q)の関係が成り立つ。
【0108】
第1又は第3の実施形態の場合と同様に、様々な鋼板サイズ、残留応力分布、切断形状の鋼板について、FEM解析を行い、切断後の鋼板の変形量と歪みパラメータγの関係を求めた結果を図28に示す。歪みパラメータγの値を変化させることにより、鋼板の切断後の変形量を制御できる。
【0109】
図28において、横軸は歪みパラメータγの値(単位無次元)を表し、縦軸は所定長さ当たりの変形量(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。図28から明らかなように、切断時における鋼板の収縮や伸長等の変形量が長さ10,000mm当たり1.5mm以下の要求を満足するためには、歪みパラメータγの絶対値が1.5×10-12以下に制御することが好ましい。
【0110】
さらに、板厚と製造方法及び鋼板のグレードに応じた表面の残留歪みの補正値の関係を図29に示す。図29において、横軸はサンプルとした各鋼板の板厚(単位mm)を表し、縦軸は鋼板の表面における残留歪みの補正値(単位kg/mm2)を表す。また、図中「▲」は圧延したままの鋼板の値を表し、「●」は加速冷却型鋼板の値を示し、「◆」は熱処理及び/又は矯正処理した鋼板の値を表す。図29から明らかなように、熱処理や矯正を施したグレードの高い鋼板は、圧延したままの鋼板や加速冷却した鋼板に比べて、板厚方向における残留歪みの変化が小さく、板厚による補正値の変化は小さい。また、圧延したままの鋼板と加速冷却した鋼板のように製造方法の違いによっても、板厚方向における残留歪みの変化が異なる。従って、これら鋼板の製造方法やグレード等の条件に応じて、それぞれ異なった補正値を用いて表面の残留歪み測定値から板厚方向の平均値への補正を行うことが好ましい。
【0111】
試験片が短い場合は、測定又は解析した残留歪みの補正が必要となる。試験片長さと残留歪みの補正係数の関係を図30に示す。図30において、横軸は鋼板(例えば長さ20mの製品)を切断した試験片の長さ(単位m)を表し、縦軸は補正係数を表す。また、「▲」は鋼板の幅方向における中央部近傍での残留歪みの補正計数(単位無次元)を表し、「●」は鋼板の幅方向における端部近傍での残留歪みの補正値を表す。なお、補正係数は、切断前の鋼板の幅方向における中央部及び端部から所定の位置での残留歪み値に対する切断後の試験片の幅方向における同じ位置での残留歪み値の割合(比)である。図29及び図30から明らかなように、試験片長さが短い場合には、幅方向における端部近傍や幅方向における中央近傍のいずれの位置でも補正が必要となり、しかも補正量が異なる。従って、試験片長さに応じて、図30から求めた補正係数の逆数を乗じることにより残留歪みの補正を行うことが好ましい。
【0112】
また、切断方法による残留歪みの違いを補正するための歪みパラメータγの補正値を図31に示す。図31において、横軸は切断方法を表し、縦軸は切断時の歪みパラメータ補正量(単位無次元)を表す。具体的には、歪みパラメータγの値から、切断方法に応じて図31から求めた補正値を減算して補正する。なお、この補正値は、例えば図13に示す形状に鋼板を切断する場合の値であるが、補正値は切断形状により異なるので、切断形状に応じて数水準用意しておくことが好ましい。
【0113】
なお、残留歪みの測定については、残留応力の測定の場合と同様に、鋼板の表面の温度分布から残留歪みを求めることができる。また、穿孔法、X線による方法、中性子回折による方法等を用いてもよい。穿孔法による場合、試験片サイズ及び鋼板サイズ等の拘束状態の違いにより鋼板の残留歪みが異なるため、理想的には、需要家で加工されるサイズの鋼板から残留歪みを測定することにより歪みパラメータγを演算することが望ましい。
【0114】
(第7の実施形態)
次に、本発明の鋼板、鋼板製造方法及び鋼板製造装置に関する第7の実施形態ついて説明する。第7の実施形態は、基本的に上記第6の実施形態の場合と同様であり、歪みパラメータγの代わりに、残留歪み値が一定の範囲内となるように制御されている。図1における変形予測コンピュータ18は、残留歪みの最大値、最小値、平均値、総和、偏差、絶対値又は分布が一定の範囲内となるように制御する。その他、特に記載しない部分は上記第1から第6の実施形態の場合と同様である。
【0115】
残留歪みεと需要家の要求精度qにより決定される許容値εc(q)との間には、残留歪みの最大値をεmax、残留歪みの最小値をεmin、許容値の上限をεc max、許容値の下限をεc min、残留歪みの板内偏差の許容値をεc devとして、
εc min(q)≦ε≦εc max(q)及びεmax−εmin≦εc dev(q)の少なくともいずれかの関係が成り立つ。
【0116】
上記歪みパラメータγと同様に、残留歪み自体も切断加工時の変形に影響を及ぼす。鋼板の残留歪みと切断加工時の変形の関係を弾性解析により求めた結果を図32に示す。図32において、横軸は鋼板の長手方向の残留歪みの絶対値(単位無次元)を表し、縦軸は鋼板切断後の変形量の絶対値(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。ここでの残留歪み値は、100mm×100mmの略正方形の領域での長手方向残留歪み値の平均値である。切断条件として、切断時の変形の絶対値が最大となる条件を想定して解析した。残留歪み値の絶対値が大きくなると切断時の変形の絶対値も大きくなるので、変形量が目標値となるように残留歪み値を制御する必要がある。
【0117】
図32から明らかなように、一般的には、残留歪み値の絶対値が2.0×10-4以下程度であればよい。特に、切断後の変形の絶対値が長さ10,000mm当たり1.5mm以下とする場合、残留歪み値の絶対値は1.5×10-4以下が好ましい。
【0118】
また、様々なサイズ及び残留歪み分布の鋼板に対して、任意の100mm×100mmの略正方形領域の残留歪み偏差(最大値−最小値)と切断後の変形量の関係を図33に示す。板面内の残留歪み偏差は5.0×10-4以下に規制することが好ましい。
【0119】
また、残留歪み値の絶対値、最大値、最小値、平均値、偏差等についても、鋼板の板厚、グレード、切断方法等に応じた補正を加えることが好ましい。切断方法に応じた残留歪み値の補正値を図34に示す。図34において、横軸は切断方法を表し、縦軸は残留歪み値の補正値(単位無次元)を表す。具体的には、残留歪みの値から、切断方法に応じて図34から求めた補正値を減算して補正する。なお、この補正値は、例えば図13に示す形状に鋼板を切断する場合の値であるが、補正値は切断形状により異なるので、切断形状に応じて数水準用意しておくことが好ましい。
【0120】
(その他の実施形態)
なお、上記各実施形態では、需要家ごとに切断方法や切断手段を考慮した変形予測値の演算を行うように設定したが、これに限定されるものではなく、データ転送量低減及び処理速度向上の観点から、切断条件及び切断方法を最も厳しい条件に固定してもよい。ここで、最も厳しい切断条件とは、切断時のスリットの形状が想定されるもののうち最大のものをいう。また、最も厳しい切断方法は、鋼板の収縮に対しては切断入熱による影響が大きいガス切断の場合をいい、伸長する鋼板に対しては切断入熱による影響がない切断方法を想定して設定すればよい。さらに、変形の許容値を最も厳しい条件に固定しても良い。
【0121】
また、応力パラメータηを制御する方法として、上記実施形態では、鋼板を切断した後、矯正装置(ローラレベラ)10により残留応力を直接制御する機械的方法、及び必要に応じて熱処理炉9により熱処理により残留応力を直接制御する熱的方法を用いたが、これに限定されるものではなく、加熱、圧延、加速冷却等の工程を厳密に管理する間接的方法によっても応力パラメータηを制御することが可能である。
【0122】
さらに、上記各実施形態では、鋼板の幅方向の複数の位置で、鋼板の長手方向の残留応力や残留歪み等を測定したが、これに限定されるものではなく、鋼板の長手方向の複数の位置での鋼板の幅方向の残留応力や残留歪み等を測定しても同様の効果が得られる。すなわち、鋼板の長手方向と幅方向とを置き換えたと考えればよい。さらに、鋼板の厚さ方向残留応力や厚さ方向残留歪み等を測定又は解析してもよい。
【0123】
(実験例)
次に、上記鋼板製造方法により製造した鋼板と、従来の方法により製造した鋼板を実際に切断し、その変形量を比較する実験を行った。実験材の詳細を表4に示す。
【0124】
【表4】
Figure 0003839753
【0125】
元の圧延サイズは16tx2600Wx22,000L(単位mm)であり、そこから16tx2500Wx10,000L(単位mm)の製品を切断した。加熱炉1による加熱温度は1200℃であり、圧延完了時の温度は780℃であった。圧延後の形状はフラットであった。
【0126】
加速冷却装置5による加速冷却条件は、冷却前温度760℃、冷却後温度550℃、冷却速度7℃/sであった。さらに、熱間矯正装置6による矯正条件は、圧下設定量が入側12.0mm、出側15.0mmであった。また、矯正温度は540℃であった。熱間矯正後の平坦度もフラットであった。平坦度判定方法は、ローラテーブル上と角棒上でのストレッチャーによる平坦度測定を行った。
【0127】
切断した形状を図35に示す。切断方法は、図13に示すようなレーザを用いた一筆書きによるスリット切断である。また、変形量の測定は、切断の前後における基準点の変位量を測定した。
【0128】
従来例による鋼板は、冷却及び製品切断後のテーブルローラ上の形状は平坦であった。一方、本発明による鋼板は、上記実施形態による応力パラメータηは0.35であり、矯正コードは3であった。
【0129】
矯正装置(ローラレベラ)10の詳細は、最大矯正荷重5000トン、矯正ロール径360mm×胴長4800mm、矯正ロールの本数は上下各4本及び下の一本は矯正ロールル径300mm×胴長4800mmであった。矯正条件は、インターメッシュ量が1パス目9.0mm、2パス目7.0mm、3パス目5.0mmであり、矯正速度は20rpmであった。また、矯正後のテーブルローラ上の形状は平坦であった。
【0130】
切断実験の結果を図36に示す。図36において、横軸は鋼板の長手方向における先端からの距離(単位mm)を表し、縦軸は鋼板の長手方向における各測定点での変形量(単位mm/mm、すなわち無次元)を表す。図36から明らかなように、本発明による鋼板は、切断後にほとんど変形が発生しなかったのに対し、従来の鋼板は大きな変形が発生した。
【0131】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の鋼板によれば、需要家における加工情報、例えば加工条件、加工方法、加工形状及び加工精度の許容値に応じて、鋼板の特性、例えば鋼板の残留歪、残留応力、変位又は変形量の最大値、最小値、平均値、総和、偏差、絶対値又は分布、又はこれらから演算されるパラメータの値が一定の許容範囲内となるように制御されているので、需要家における切断加工後の変形を予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態における鋼板製造装置の構成を示す図である。
【図2】 上記鋼板製造装置における矯正条件設定プログラムを示すフローチャートである。
【図3】 図2のフローチャートの続きである。
【図4】 切断後の鋼板の変形量と応力パラメータηの関係を求めた結果を示す図である。
【図5】 (a)は切断領域の形状がT字型の場合、(b)は切断領域の形状が矩形の場合を示す図である。
【図6】 長手方向残留応力の板厚方向の平均値が零である鋼板についての、長手方向残留応力の板厚方向の分布を示す図である。
【図7】 長手方向残留応力の板厚方向の平均値が零である鋼板についての、板厚と鋼板表面の長手方向残留応力の関係を示す図である。
【図8】 板厚と製造方法及び鋼板のグレードに応じた表面の残留応力の補正値の関係を示す図である。
【図9】 試験片の長手方向における中央位置近傍でかつ幅方向における複数の位置で測定した長手方向残留応力分布を示す図である。
【図10】 試験片長さと残留応力の補正係数の関係を示す図である。
【図11】 切断方法による変形量の違いを熱弾塑性FEMにより解析した結果を示す図である。
【図12】 切断方法に応じた応力パラメータηを補正値を示す図である。
【図13】 鋼板の切断形状の一例を示す図である。
【図14】 鋼板の残留応力値と切断加工時の変形の関係を弾性解析により求めた結果を示す図である。
【図15】 鋼板の残留応力偏差(最大値−最小値)と切断後の変形量の関係を示す図である。
【図16】 切断方法に応じた残留応力値の補正値を示す図である。
【図17】 切断後の鋼板の変形量と変形パラメータδの関係を求めた結果を示す図である。
【図18】 切断方法に応じた変形パラメータδの補正値を示す図である。
【図19】 試験片の採取位置を示す図である。
【図20】 鋼板の幅方向における端部近傍から試験片を切断した場合の切断部位の長手方向残留歪みと変位の最大値との関係を示す図である。
【図21】 鋼板の幅方向における中央部近傍から試験片を切断した場合の切断部位の長手方向残留歪みと変位の最大値との関係を示す図である。
【図22】 需要家の切断形状に応じた切断部位ごとの長手方向残留歪みと変位の最大値との関係の複数の水準を示す図である。
【図23】 試験片採取位置と切断部位の変形量の関係を示す図である。
【図24】 試験片の長手方向における試験片採取位置と切断部位の変形の補正係数の関係を示す図である。
【図25】 切断方法に応じた変形残留歪みの補正値を示す図である。
【図26】 鋼板の幅方向における端部近傍から試験片を切断した場合の切断部位の長手方向変形量と変位の最大値との関係を示す図である。
【図27】 鋼板の幅方向における中央部近傍から試験片を切断した場合の切断部位の長手方向変形量と変位の最大値との関係を示す図である。
【図28】 切断後の鋼板の変形量と歪みパラメータγの関係を求めた結果を示す図である。
【図29】 板厚と製造方法及び鋼板のグレードに応じた表面の残留応力の補正値の関係を示す図である。
【図30】 試験片長さと残留歪みの補正係数の関係を示す図である。
【図31】 切断方法に応じた歪みパラメータγの補正値を示す図である。
【図32】 鋼板の残留歪みと切断加工時の変形の関係を弾性解析により求めた結果を示す図である。
【図33】 鋼板の残留歪み偏差(最大値−最小値)と切断後の変形量の関係を示す図である。
【図34】 切断方法に応じた残留歪み値の補正値を示す図である。
【図35】 本発明による鋼板と従来の鋼板を比較した際における鋼板の切断形状を示す図である。
【図36】 上記切断実験の結果を示す図である。
【符号の説明】
1:加熱炉
2:第1圧延装置
3:冷却装置
4:第2圧延装置
5:加速冷却装置
6:熱間矯正装置
7:温度計
8:鋼板
9:熱処理炉
10:矯正装置(ローラレベラ)
11:パルス発生装置(PLG)
12:ディジタルダイレクトコントローラ(DDC)
13:プロセスコンピュータ
14:ラインコンピュータ
15:サーバコンピュータ
16:キャンバ予測コンピュータ
17:座屈予測コンピュータ
18:変形予測コンピュータ

Claims (2)

  1. 切断前の鋼板の残留応力分布と切断情報とから以下の式で定義される応力パラメータηを演算し、予め求められた切断後の鋼板の所定長さ当たりの変形量と応力パラメータηとの関係に基づいて、鋼板を切断することなく、切断後の鋼板の収縮又は伸長の変形量を予測する鋼板の評価方法。
    Figure 0003839753
    但し、鋼板全体の面積をS、微少領域の面積をs、微少領域での鋼板の長手方向残留応力値又は幅方向残留応力値をσ、補正総切断領域をΩとする。
  2. 切断前の鋼板の残留応力分布と切断情報とから以下の式で定義される変形パラメータδを演算し、予め求められた切断後の鋼板の所定長さ当たりの変形量と変形パラメータδとの関係に基づいて、鋼板を切断することなく、切断後の鋼板の収縮又は伸長の変形量を予測する鋼板の評価方法。
    Figure 0003839753
    但し、鋼板全体の面積をS、微少領域での鋼板の長手方向変位、長手方向変形量、幅方向変位又は幅方向変形量をΔ、補正総切断領域をΩとする。
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