JP3993762B2 - 難燃性ポリエステル系繊維及びそれを用いた人工毛髪 - Google Patents

難燃性ポリエステル系繊維及びそれを用いた人工毛髪 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリアリレート及び非ハロゲン系難燃剤を含むポリエステル系組成物から形成された難燃性ポリエステル系繊維及びそれを用いた人工毛髪に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエチレンテレフタレート又はポリエチレンテレフタレートを主体とするポリエステルからなる繊維は、高融点、高弾性率で優れた耐熱性、耐薬品性を有していることから、カーテン、敷物、衣料、毛布、シーツ地、テーブルクロス、椅子張り地、壁装材、人工毛髪、自動車内装資材、屋外用補強材、安全ネットなどに広く使用されている。
【0003】
かつら、ヘアーウィッグ、付け毛、ヘアーバンド、ドールヘアーなどの頭髪製品においては、従来、人毛、人工毛髪としてモダクリル、ポリ塩化ビニルなどが使用されてきた。人毛の提供は困難になってきており、人工毛髪の重要性が高まってきている。人工毛髪素材として、難燃性の特長を生かしてモダクリルが多く使用されてきたが、耐熱温度の点では不十分であった。近年になり、耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルを主成分とする繊維を用いた人工毛髪繊維が提案されるようになってきた。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートを代表とするポリエステル繊維は、可燃性素材であるため、難燃性が不十分であった。
【0004】
従来より、ポリエステル繊維の難燃性を向上させようとする試みは種々なされており、一般的には、ポリエステル系繊維にハロゲン系難燃剤を単独あるいはアンチモン化合物などと併用して添加することにより、難燃化する方法が知られている。例えば、特公平3−57990号公報には、微粒子のハロゲン化シクロアルカン化合物をポリエステル繊維に含有させる方法、また、特公平1−24913号公報には、臭素原子含有アルキルシクロヘキサンを含有させる方法などが提案されている。しかし、ハロゲン系難燃剤においては、燃焼分解時にダイオキシン系化合物を多量に発生する場合があり、環境問題上好ましくない。さらに、十分な難燃性を得るために、含有処理温度を150℃以上の高温にすることが必要であったり、含有処理時間を長時間にする必要があったり、又は大量の難燃剤を使用しなければならないといった課題があり、繊維物性の低下や生産性の低下、製造コストアップなどの問題があった。
【0005】
一方、非ハロゲン系難燃剤であるリン系化合物などを使用し、難燃化する方法として、ポリエステル樹脂にリン原子を含有する難燃モノマーを共重合する方法や、ポリエステル系繊維に難燃剤を含有させる方法などがある。前者の難燃モノマーを共重合する方法としては、例えば、特公昭55−41610号公報には、リン原子が環員子となっていて熱安定性の良好なリン化合物を共重合する方法、また、特公昭53−13479号公報には、カルボキシホスフィン酸を共重合する方法、特開平11−124732号公報には、ポリアリレートを少量含むポリエステルにリン化合物を配合又は共重合する方法が提案されている。
【0006】
また、これらの難燃化技術を人工毛髪に適用したものとしては、例えば、特開平3−27105号公報、特開平5−339805号公報などに、リン化合物を共重合したポリエステル繊維が提案されている。しかしながら、人工毛髪には高い難燃性が要求されるため、これらの共重合ポリエステルを人工毛髪に使用するためにはリン系難燃剤の共重合量を多くしなければならず、その結果、ポリエステルの耐熱性が大幅に低下し、溶融紡糸が困難になったり、火炎が接近した場合、着火し燃焼はしないものの、溶融しドリップするという重大な問題が発生する。
【0007】
以上のように、難燃性とセット性がともに優れた人工毛髪はいまだ得られていないのが現状である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、通常のポリエステル繊維の耐熱性、強伸度など繊維物性を維持し、難燃性、セット性、そして特に耐ドリップ性に優れた難燃性ポリエステル系繊維及びそれを用いた人工毛髪を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決するため、鋭意検討を重ねた結果、ポリエステル、ポリアリレート、非ハロゲン系難燃剤を特定の比率で混合した組成物を溶融紡糸し、難燃性と熱収縮性を持たせることで、通常のポリエステル系繊維の物性を損なうことなく、難燃性、耐ドリップ性、セット性を付与できることを見出し、本発明に到達した。
【0010】
すなわち本発明のポリエステル系繊維は、ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルから選ばれる少なくとも1種からなるポリエステル(A)85〜60重量%とポリアリレート(B)15〜40重量%からなる樹脂成分100重量部に対して、リン系難燃剤、シリコーン化合物、ボロシロキサン化合物、メラミンシアヌレート化合物、及び、低融点ガラスよりなる群より選択された少なくとも1種の化合物からなる非ハロゲン系難燃剤(C)を5〜10重量部添加した樹脂組成物から形成される難燃性ポリエステル系繊維に関する。
【0011】
その好ましい実施態様としては、(A)成分が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートよりなる群から選択された少なくとも1種のポリマーである上記難燃性ポリエステル系繊維に関し、また(B)が、テレフタル酸又はその誘導体とイソフタル酸又はその誘導体の混合物と、下記一般式(1):
【0012】
【化2】
Figure 0003993762
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、カルボニル基、スルホニル基、1,3−フェニレンジイソプロピリデン基または1,4−フェニレンジイソプロピリデン基を示す。)で表されるビスフェノール化合物とから得られるポリアリレートである上記難燃性ポリエステル系繊維に関する
【0013】
更に別の好ましい実施態様としては、上記難燃性ポリエステル系繊維が、200℃以上で最大収縮率15%以上を示す難燃性ポリエステル系繊維に関する。
【0014】
また本発明は、上記難燃性ポリエステル系繊維を用いてなる人工毛髪に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0016】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維は、ポリアルキレンテレフタレート又はポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルの1種以上からなるポリエステル(A)85〜60重量%とポリアリレート(B)15〜40重量%からなる組成物に、非ハロゲン系難燃剤(C)を添加または共重合させて得られるポリエステル系繊維である。
【0017】
本発明において、ポリエステル(A)は、繊維形成のベースポリマーとして使用される成分であり、ポリアリレート(B)は、耐ドリップ性改善および難燃性向上のために使用される成分であり、非ハロゲン系難燃剤(C)は、難燃性付与のために使用される成分である。
【0018】
本発明で用いられるポリエステル(A)に含まれるポリアルキレンテレフタレート又はポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート又は、これらのポリアルキレンテレフタレートを主体とし少量の共重合成分を含有する共重合ポリエステルが挙げられる。ここで主体とするとは、80モル%以上含有することをいう。
【0019】
上記共重合成分としては、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スぺリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びその誘導体、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、4−ヒドロキシ安息香酸、ε−カプロラクトンなどが挙げられる。
【0020】
前記共重合ポリエステルは、通常、主体となるポリアルキレンテレフタレートの主鎖中及び/又は側鎖に前記共重合成分を公知の方法により重縮合すればよい。
【0021】
前記共重合ポリエステルの具体例としては、例えばポリエチレンテレフタレートを主体とし、ビスフェノールAのエチレングリコールエーテルを共重合したポリエステル、1,4−シクロヘキサンジメタノールを共重合したポリエステル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルを共重合したポリエステルなどが挙げられる。
【0022】
本発明において(A)成分は、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、及びそれらを主体とした共重合ポリエステルよりなる群から選択される少なくとも1種のポリエステルが好ましく、それを単独で用いてもよいし、2種以上混合して使用してもよい。
【0023】
前記(A)成分の固有粘度は、0.4〜1.0の範囲が好ましく、0.5〜0.9の範囲がより好ましい。固有粘度が0.4未満では、溶融粘度が低くなりすぎるため、溶融紡糸が困難になったり、延伸、熱処理の過程又は製品加工時に単繊維間の融着が発生する。逆に固有粘度が1.0を超えると、溶融粘度が高くなりすぎ、溶融紡糸が困難になる傾向がある。
【0024】
本発明で用いられるポリアリレート(B)は、芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジオール成分とからなる全芳香族ポリエステルを意味し、界面重合法、溶液重合法及び溶融重合法のいずれの方法で製造したものでもよい。
【0025】
前記(B)成分の芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルトフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、パラフェニレンジカルボン酸などの多価カルボン酸及びそれらの誘導体、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸ジヒドロキシエチルなどのスルホン酸塩を含むジカルボン酸及びその誘導体などが挙げられる。
【0026】
前記(B)成分の芳香族ジオール成分としては、一般式(1):
【0027】
【化3】
Figure 0003993762
(式中、R1は水素原子または炭素数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、カルボニル基、スルホニル基、1,3−フェニレンジイソプロピリデン基または1,4−フェニレンジイソプロピリデン基を示す。)
で表される二価フェノール類、レゾルシノール、ハイドロキノン、ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシルフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフォン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシルビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−ジフェニルチオエーテルなどを挙げることができる。
【0028】
前記(B)成分としては、イソフタル酸又はその誘導体とテレフタル酸又はその誘導体の混合物と、一般式(1)で表される化合物とから得られるポリアリレートであるのが好ましい。
【0029】
前記(B)成分の固有粘度は、0.4〜1.4の範囲が好ましく、0.6〜1.3の範囲がより好ましい。固有粘度が0.4未満では、十分な熱収縮率が得られない。固有粘度が1.4を超えると、(A)成分のポリエステルとの混合性が悪くなり、延伸、熱処理時の糸切れ、繊維物性の低下などを招く傾向にある。
【0030】
本発明で用いられる非ハロゲン系難燃剤(C)は、リン系難燃剤、シリコーン化合物、ボロシロキサン化合物、含窒素化合物、低融点ガラスよりなる群より選択される少なくとも1種の化合物である。
【0031】
(C)成分として用いられるリン系難燃剤にはとくに限定はなく、一般に用いられているリン系難燃剤であれば使用することができ、例えば、ホスフェート系化合物、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィナイト系化合物、ホスフィン系化合物、一般式(2):
【0032】
【化4】
Figure 0003993762
(式中、R2は1価の芳香族炭化水素基または脂肪族炭化水素基であり、それらはそれぞれ同一であってもよく異なっていてもよい、R3は2価の芳香族炭化水素基であり、2個以上含まれる場合、それらは同一であってもよく異なっていてもよい、nは0〜15を示す)
で表わされる縮合リン酸エステル系化合物などがあげられる。これらは1種で使用してもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらのうちでは一般式(2)で表わされる縮合リン酸エステル系化合物が好ましい。
【0033】
リン系難燃剤の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフェート、トリス(フェニルフェニル)ホスフェート、トリネフチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリフェニルホスフィンオキサイド、トリクレジルホスフィンオキサイド、メタンホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチルなどのほか、レゾルシノールポリフェニルホスフェート、レゾルシノールポリ(ジ−2,6−キシリル)ホスフェート、ビスフェノールAポリクレジルホスフェート、ハイドロキノンポリ(2,6−キシリル)ホスフェートなどや、式:
【0034】
【化5】
Figure 0003993762
【0035】
【化6】
Figure 0003993762
【0036】
【化7】
Figure 0003993762
【0037】
【化8】
Figure 0003993762
【0038】
【化9】
Figure 0003993762
【0039】
【化10】
Figure 0003993762
で表わされる化合物を含む一般式(2)で表わされる縮合リン酸エステル系化合物があげられる。
【0040】
(C)成分としてリン系難燃剤を使用する場合、その添加量は、(A)、(B)両成分の合計100重量部に対して、リン原子量換算で0.05〜15重量部添加するのが好ましく、0.1〜12重量部添加するのがより好ましい。リン系難燃剤の添加量が0.05重量部未満では、難燃効果が得られ難くなり、15重量部より多いと機械的特性が損なわれる傾向にある。
【0041】
(C)成分として用いられるシリコーン化合物は、広義のポリオルガノシロキサンのことをさし、具体的には、ジメチルシロキサン、フェニルメチルシロキサン等の(ポリ)ジオルガノシロキサン化合物;メチルシルセスキオキサン、フェニルシルセスキオキサン等の(ポリ)オルガノシルセスキオキサン化合物;トリメチルシルヘミオキサン、トリフェニルシルヘミオキサン等の(ポリ)トリオルガノシルヘミオキサン化合物;これらを重合して得られる共重合体;ポリジメチルシロキサン、ポリフェニルメチルシロキサン等が挙げられる。ポリオルガノシロキサンである場合には、分子末端がエポキシ基、水酸基、カルボキシル基、メルカプト基、アミノ基、エーテル基等により置換された変性シリコーンも有用である。シリコーンの形状には特に制限はなく、オイル状、ガム状、ワニス状、粉体状、ペレット状など任意のものが利用可能である。
【0042】
(C)成分としてシリコーン化合物を使用する場合、その添加量は、(A)、(B)両成分の合計100重量部に対して、0.05〜15重量部添加するのが好ましく、0.1〜12重量部添加するのがより好ましい。シリコーン化合物の添加量が0.05重量部未満では、難燃効果が得られ難くなり、15重量部より多いと機械的特性が損なわれる傾向がある。
【0043】
(C)成分として用いられるボロシロキサン化合物は、必須の成分としてケイ素、ホウ素及び酸素からなり、実質的にケイ素−酸素結合及びホウ素−酸素結合から形成される骨格を有し、かつ、分子内に芳香環を有する重合体(以下「難燃剤重合体」ともいう)である。すなわち、上記難燃剤重合体の骨格を形成する結合のうち、80%以上、好ましくは90%以上を、ケイ素−酸素結合及びホウ素−酸素結合が占めるが、これら以外に、ケイ素−ケイ素結合、ホウ素−ホウ素結合、酸素−酸素結合、ケイ素と2価の有機基との結合、ホウ素と2価の有機基との結合、などが含まれていても良い。なお本明細書では、骨格という場合、ケイ素またはホウ素と1価の有機基との結合は、骨格を形成する結合から除外して考える。
【0044】
好ましくは、上記難燃剤重合体は、ケイ素原子又はホウ素原子が酸素原子を介して他のケイ素原子やホウ素原子と結合してなる骨格を有する。この場合、難燃剤重合体の骨格はSi−O−B結合、Si−O−Si結合、及びB−O−B結合からなる。すなわち、上記難燃剤重合体の骨格は、Si−O−B結合のみから形成されるものでも良いし、実質的にSi−O−B結合から形成され、わずかにSi−O−Si結合及び/又はB−O−B結合を含むものでも良い。またSi−O−B結合、Si−O−Si結合、及びB−O−B結合をランダムに含むような骨格でも良い。さらに、実質的にSi−O−Si結合及びB−O−B結合からなり、わずかにSi−O−B結合を含むような骨格でも良い。この場合、上記難燃剤重合体は、ほぼケイ素のみからなる部分と、ほぼホウ素のみからなる部分とが分子中で分割されたような骨格を持つ。上記難燃剤重合体の骨格は、線状骨格であっても良いし、三次元架橋構造であっても良いが、難燃性の観点から、三次元架橋構造が好ましい。
【0045】
(C)成分としてボロシロキサン化合物を使用する場合、その添加量は、(A)、(B)両成分の合計100重量部に対して、0.05〜12重量部添加するのが好ましく、0.1〜8重量部添加するのがより好ましい。ボロシロキサン化合物の添加量が0.05重量部未満では、難燃効果が得られ難くなり、12重量部より多いと機械的特性が損なわれる傾向がある。
【0046】
(C)成分として用いられる含窒素化合物は、アミン類、例えば、尿素類、グアニジン類、トリアジン系化合物(例えば、メラミン、メラム、メレム、アンメリン、メラミンホルムアルデヒド樹脂、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンなど)、トリアジン系化合物とシアヌール酸又はイソシアヌール酸との塩(前者:後者(モル比)=1:1〜1:2程度の塩、例えば、メラミンシアヌレート、グアナミンシアヌレート、アセトグアナミンシアヌレート、ベンゾグアナミンシアヌレートなど)などが挙げられるが、低揮発性の観点から特にメラミンシアヌレートが好ましい。
【0047】
(C)成分として含窒素化合物を用いる場合、その添加量は、(A)、(B)両成分の合計100重量部に対して、0.05〜12重量部添加するのが好ましく、0.1〜10重量部添加するのがより好ましい。含窒素化合物の添加量が0.05重量部未満では、難燃効果が得られ難くなり、12重量部より多いと機械的特性が損なわれる傾向がある。
【0048】
(C)成分としてで用いられる低融点ガラスとは、700℃以下、好ましくは600℃以下、より好ましくは500℃以下で軟化又は溶融するガラスのことをいい、軟化点が450〜700℃の範囲にあるものであり、軟化点がその範囲にあるものであれば、組成については特に限定されない。軟化点が450℃より低い場合には、燃焼時に樹脂火種が滴下したりすることにより難燃性が低下する場合がある。また、軟化点が700℃より高い場合も、難燃性が十分でない。
【0049】
前記低融点ガラスの種類としては特に限定されないが、鉛けい酸塩、ほう酸塩、リン酸塩、ゲルマン酸塩、タリウム酸塩、モリブデン酸塩、テルル酸塩、バナジウム酸塩、カルコゲナイド及びオキシカルコゲナイドからなる群より選択される少なくとも1種の化合物から形成されるものが好ましい。
【0050】
また、耐水性、安定性及び原料の入手性を考慮した場合、鉛けい酸塩、ほう酸塩、リン酸塩、ゲルマン酸塩、タリウム酸塩、モリブデン酸塩、テルル酸塩及びバナジウム酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物からなるものがより好ましい。
【0051】
更には、上記低融点ガラスは、SiO2 、B23 、Al23 、PbO、Tl2 O、Bi23 、CdO、ZnO、BaO、Li2 O、Na2 O、K2 O、V25 、TiO2 、ZrO2 、FeO、及びCuOからなる群より選択される少なくとも1種の金属酸化物を構成要素とするものが好ましい。特に好ましくは、SiO2 、B23 、Al23 、PbO、K2 O、Na2 O及びBaOからなる群より選択される少なくとも1種を構成要素とするものである。
【0052】
(C)成分として低融点ガラスを用いる場合、その添加量は、(A)、(B)両成分の合計100重量部に対して、0.05〜10重量部添加するのが好ましく、0.1〜 8重量部添加するのがより好ましい。低融点ガラスの添加量が0.05重量部未満では、難燃効果が得られ難くなり、10重量部より多いと機械的特性が損なわれる傾向がある。
【0053】
本発明においては、(C)成分として、上記に示した非ハロゲン系難燃剤のなかでも特にリン系難燃剤を使用するのが好ましい。理由として、シリコン化合物、ボロシロキサン化合物ではコストが高く、窒素化合物、低融点ガラスではリン系難燃剤と同等レベルの難燃性を発現させるにはその添加量が多くなり繊維の機械的物性が低下する傾向がある。
【0054】
本発明において(C)成分は、(A)成分と(B)成分を含有する組成物に添加または共重合して用いられる。(C)成分を添加する場合、例えば(A)成分と(B)成分と(C)成分の所定量を混合したものを溶融混練し、それを溶融紡糸してもよいし、(A)成分と(B)成分を溶融混練した混合物に、(C)成分を添加して溶融紡糸してもよい。また(C)成分をあらかじめ(A)成分又は(B)成分に添加あるいは共重合させたのち、これを他成分と混合してもよい。(C)成分を共重合させる場合においては、(C)成分として反応型リン系難燃剤を使用するのが好ましく、またその場合(A)成分と共重合させるのが好ましい。
【0055】
本発明のポリエステル系繊維は、通常の溶融紡糸法で製造することができる。すなわち、まず、押し出し機、ギアポンプ、口金などの温度を270〜310℃とし溶融紡糸し、紡出糸条を加熱筒を通過させた後、ガラス転移点以下に冷却し、50〜5000m/分の速度で引き取り紡出糸が得られる。また、紡出糸条を冷却用の水を入れた水槽で冷却し、繊度のコントロールを行なうことも可能である。加熱筒の温度や長さ、冷却風の温度や吹き付け量、冷却水槽の温度、冷却時間、引き取り速度は、吐出量及び口金の孔数によって適宜調整することができる。
【0056】
得られた紡出糸は熱延伸するが、延伸は紡出糸を一旦巻き取ってから延伸する2工程法及び巻き取ることなく連続して延伸する直接紡糸延伸法のいずれの方法によってもよい。熱延伸は、一段延伸、多段延伸のいずれの方法で行ってもよい。熱延伸における加熱手段としては、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置、温水槽などを使用することができ、これらを適宜併用することができる。
【0057】
得られた延伸糸は、加熱ローラ、ヒートプレート、スチームジェット装置などを用いて、200℃以上で15%以上の熱収縮性を示すように熱処理される。
【0058】
上記方法によって得られる本発明の難燃性ポリエステル系繊維は、(C)成分として非ハロゲン系難燃剤を含有することにより、限界酸素指数が高くなり、難燃性を示し、炎が接近してきても着火しにくくなる。さらに(B)成分としてポリアリレートを15〜40重量%含有することにより、フィラメントに炎が接近するに伴い、フィラメントが加熱され、その時にフィラメントが収縮することで炎から遠ざかり着火しにくくなるとともに、ドリップしにくくなる。
【0059】
本発明でいう熱収縮率とは、30℃〜280℃における熱収縮率を意味するものであり、具体的には、熱機械分析(Thermo Mechanical Analysis)により測定した値をいう。
【0060】
本発明において、難燃性ポリエステル系繊維の熱収縮性は、200℃以上において最大収縮率15%以上であることが好ましく、20%以上であることがより好ましい。
【0061】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維を人工毛髪用途で使用する場合には、高温でのセット性を維持するため、200℃以下の熱収縮率は小さく、かつ、200℃以上の熱収縮率が大きくなるように加工することが好ましい。特に、200℃未満の熱収縮率は10%以下にするのがより好ましい。
【0062】
さらに、ヘアーアイロンを用いてカールセットを行う場合には、最大収縮温度が200℃以上になるよう、熱処理温度を設定するのが好ましい。
【0063】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維を人工毛髪として使用する場合には、モダアクリル、ポリ塩化ビニル、ナイロンなど他の人工毛髪素材と併用してもよい。
【0064】
また、本発明のポリエステル系繊維には、必要に応じて、アルカリ減量処理などのつや消し処理を施すことができる。
【0065】
本発明の難燃性ポリエステル系繊維の加工条件は、特に限定されるものではなく、通常のポリエステル繊維と同様に加工することができるが、使用する顔料、染料や助剤などは耐候性及び難燃性のよいものを使用することが好ましい。
【0066】
なお、本発明の難燃性ポリエステル系繊維には、必要に応じて、難燃剤、耐熱剤、光安定剤、蛍光剤、酸化防止剤、艶消剤、静電防止剤、顔料、可塑剤、潤滑剤などの各種添加剤を含有させることができる。
【0067】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0068】
尚、特性値の測定法は、以下のとおりである。
【0069】
(ポリエステルの固有粘度)
フェノールとテトラクロロエタンとの等重量混合物を溶媒とし、濃度0.5g/dlの溶液についてウベローデ型粘度管を用いて25℃における相対粘度を測定し、下記式により固有粘度を算出した。
【0070】
【数1】
Figure 0003993762
(式中、ηは溶液の粘度、η0は溶媒の粘度、ηrelは相対粘度、ηspは比粘度、[η]は固有粘度、Cは溶液の濃度である。)
(ポリアリレートの固有粘度)
フェノールとテトラクロロエタンとの重量比6/4の混合物を溶媒とし、濃度1.0g/dlの溶液についてウベローデ型粘度管を用いて25℃における相対粘度を測定し、ポリエステルの場合と同様にして、固有粘度を算出した。
(強度及び伸度)
(株)インテスコ製のINTESCO Model 201型を用いて、フィラメントの引張強伸度を測定した。長さ40mmのフィラメント1本をとり、フィラメントの両端10mmを接着剤を糊付けした両面テープを貼り付けた台紙(薄紙)で挟み、一晩風乾して、長さ20mmの試料を作製する。試験機に試料を装着し、温度24℃、湿度80%以下、荷重1/30gf×繊度(デニール)、引張速度20mm/分で試験を行ない、強伸度を測定した。同じ条件で試験を10回繰り返し、平均値をフィラメントの強伸度とした。
【0071】
(熱収縮性)
セイコー電子工業(株)製SSC5200H熱分析TMA/SS150Cを用いて、フィラメントの熱収縮率を測定した。長さ10mmのフィラメント10本をとり、5.55mg/dtexの荷重をかけ、昇温速度3℃/分で30〜280℃の範囲での熱収縮率を測定した。
(限界酸素指数)
16cm/0.25gのフィラメントを秤量し、端を軽く両面テープでまとめ、懸撚器で挟み撚りをかける。十分に撚りがかかったら、試料の真中を二つに折り2本を撚り合わせる。端を粘着テープで止め、全長7cmになるようにする。105℃で60分間前乾燥を行ない、さらにデシケーターで30分以上乾燥する。乾燥したサンプルを所定の酸素濃度に調整し、40秒後8〜12mmに絞った点火器で上部より着火し、着火後点火器を離す。5cm以上燃えるか、3分以上燃え続けた酸素濃度を調べ、同じ条件で試験を3回繰り返し、限界酸素指数とする。
(ドリップ性)
繊度約50dtexのフィラメント100本を束ねて、一方の端をクランプで挟んでスタンドに固定して垂直に垂らす。固定したフィラメントに20mmの炎を接近させ、長さ100mmを燃焼させ、そのときのドリップ数をカウントし、ドリップ数が5以下を○、6〜10を△、11以上を×として評価する。
【0072】
(コールドセット性)
160mmのフィラメントを真っ直ぐに伸ばし、両端をテープで固定して、100℃で40分間加熱する。室温まで冷却した後に、85mmにカットし、二つ折りにして両端をミシン糸で結び、Φ4m/mの棒に釣り下げ、荷重が6.7mg/dtexになるように錘を付け、30℃、60%RHで24時間保持する。錘を外し、5分間静置した後に80mmにカットし、フィラメントの曲がり具合(角度)を測定する。これを低温での癖の付きやすさの指標とし、真っ直ぐ(180℃)に回復するのが最も好ましい。
【0073】
(カール保持力)
蓑毛にしたフィラメントをΦ32m/mのパイプに捲きつけ、100℃で60分間カールセットし、室温で60分間エイジングした後に、カールしたフィラメントの一端を固定し釣り下げ、初期のフィラメント長、7日後までのフィラメント長の経時変化を調べる。これをカールの付きやすさ、保持性の指標とし、初期長は短い方がよく、7日後の伸長率は低い方が好ましい。
【0074】
(アイロンセット性)
ヘアーアイロンによるカールセットのしやすさ、カール形状の保持性の指標である。フィラメントをヘアーアイロンにかるく挟み、3回扱き予熱する。この時のフィラメント間の融着、櫛通り、フィラメントの縮れ、糸切れを目視評価する。次に、予熱したフィラメントをヘアーアイロンに捲きつけ、10秒間保持し、アイロンを引き抜く。この時の抜きやすさ(ロッドアウト性)、抜いた時のカールの保持性を目視評価する。
製造例 1 (ボロシロキサンの合成)
ホウ酸(100g、1.62mol)を含むピリジン溶液(1L)に、氷冷下、フェニルトリクロロシラン(342.7g、1.62mol)を滴下し、滴下終了後5時間加熱し、環流下反応を行った。その後、トリメチルクロロシラン(176g、1.62mol)を加えてさらに3時間環流して反応を終了した。反応混合物を2N−塩酸で中和し、ジエチルエーテル(500mL)で抽出した。得られた溶液を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、真空下溶剤を留去することにより目的の化合物を得た。分子量はGPC分析の結果、数平均分子量2500、重量平均分子量3000(ポリスチレン換算、UV検出器、トルエン溶媒)であった。得られた化合物は、IR分析の結果、1360cm-1付近にB−O結合由来のピークを示し、1430cm-1付近にSi−Ph結合由来のピークを示した。NMRによる分析の結果、ケイ素原子全数中、Me3 −Si−O1/2結合が17モル%、Ph−Si−O3/2 結合が83モル%であった。
製造例 2 (低融点ガラスの調整)
低融点ガラスとして、Na2O25〜45重量%、BaO5〜15重量%、SiO210〜32重量%、PbO50〜80重量%、B237〜40重量%、Al232〜6重量%、CuO10〜30%をこれら範囲内の調合によりガラス焼成し、熱的特性を制御した。得られたガラス組成物はボールミルで粉砕し100メッシュ以下の粒径として用いた。
(低融点ガラスの軟化点測定)
低融点ガラスの軟化点はJIS−R3104(ガラスの軟化点試験法)に従い、0.55〜0.75mmの均一直径を持つ23.5cmの長さのガラスファイバーをその上部10cmを1分間に約5℃の速度で温度上昇させた場合、自重で1分間1mmの速さで伸びる温度として求めた。製造例2で調整した低融点ガラスの軟化点は、602℃であった。
(実施例1)
(A)成分として水分量100ppm以下に乾燥させた固有粘度0.61のポリエチレンテレフタレート(ベルペットEFG−10、カネボウ合繊(株)製)4000gと、(B)成分としてモル比が50/50のイソフタル酸とテレフタル酸の混合物とビスフェノールAからなる固有粘度0.60のポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ(株)製)1000gと、(C)成分としてリン系難燃剤(PX−200、大八化学(株)製)500gをドライブレンドし、エクストルーダーに供給し、300℃で溶融混練し、ペレット化した後に、水分量100ppm以下に乾燥した。次いで、ノズル径0.5mmの丸断面ノズル孔を有する紡糸口金を用いて溶融ポリマーを吐出し、口金下25cmの位置に設置した水温30℃の水浴中で冷却し、100m/分の速度で巻き取って未延伸糸を得た。得られた未延伸糸を80℃の温水浴中で一段目の延伸を行い、続いて100℃の温水浴中で二段目の延伸を行って、5倍延伸糸とし、200℃に加熱したヒートロールを用いて、100m/分の速度で巻き取り、熱処理を行い、単繊維繊度が50dtexの難燃性ポリエステル系繊維(マルチフィラメント)を得た。
(実施例2)
(A)成分をポリエチレンテレフタレート(ベルペットEFG−10、カネボウ合繊(株)製)3500gに、(B)成分をポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ(株)製)1500gに変更した以外は、実施例1と同様にして難燃性ポリエステル系繊維を得た。
(実施例3)
(C)成分を製造例1で合成したボロシロキサン化合物250gに変更した以外は、実施例1と同様にして難燃性ポリエステル系繊維を得た。
(実施例4)
(C)成分ををメラミンシアヌレート(MC610、日産化学(株)製)250gに変更した以外は、実施例1と同様にして難燃性ポリエステル系繊維を得た。
(実施例5)
(C)成分ををシリコーン系難燃剤(XC−99B5664、東芝シリコーン(株)製)250gに変更した以外は、実施例1と同様にして難燃性ポリエステル系繊維を得た。
(実施例6)
(C)成分をを製造例2で合成した軟化点が602℃の低融点ガラス250gに変更した以外は、実施例1と同様にして難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0075】
(比較例1)
(B)成分を使用しなかった以外は、実施例1と同様にして難燃性ポリエステル系繊維を得た。
(比較例2)
(C)成分をを使用しなかった以外は実施例1と同様にしてポリエステル系繊維を得た。
【0076】
(比較例3)
(A)成分をポリエチレンテレフタレート(ベルペットEFG−10、カネボウ合繊(株)製)4500gに、(B)成分をポリアリレート(UポリマーU−100、ユニチカ(株)製)500gに変更した以外は、実施例1と同様にして難燃性ポリエステル系繊維を得た。
【0077】
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた繊維について、強伸度、熱収縮率、限界酸素濃度、ドリップ性を測定した結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
Figure 0003993762
実施例のごとく、(A)成分としてポリアルキレンテレフタレートと(B)成分としてポリアリレートを所定量使用し、(C)成分として非ハロゲン系難燃剤を添加して得られる本発明の難燃性ポリエステル系繊維は、耐熱性、強伸度など繊維物性を維持し、かつ難燃性、耐ドリップ防止に優れていることが判る。それに対し、(C)成分として非ハロゲン系難燃剤を使用しなかった比較例2では難燃性に、(B)成分としてポリアリレートを使用しなかった比較例1およびその使用量が少なかった比較例3では耐ドリップ性に問題があることが判る。
【0079】
【発明の効果】
本発明により、通常のポリエステル系繊維の耐熱性、強伸度など繊維物性を維持し、難燃性、ドリップ防止性、セット性に優れた難燃性ポリエステル繊維及びそれを用いた人工毛髪が得られる。

Claims (8)

  1. ポリアルキレンテレフタレート及びポリアルキレンテレフタレートを主体とした共重合ポリエステルから選ばれる少なくとも1種からなるポリエステル(A)85〜60重量%とポリアリレート(B)15〜40重量%からなる樹脂成分100重量部に対して
    リン系難燃剤、シリコーン化合物、ボロシロキサン化合物、メラミンシアヌレート化合物、及び、低融点ガラスよりなる群より選択された少なくとも1種の化合物からなる非ハロゲン系難燃剤(C)を5〜10重量部添加した樹脂組成物から形成されることを特徴とする難燃性ポリエステル系繊維。
  2. (A)成分が、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートよりなる群から選択された少なくとも1種のポリマーであることを特徴とする請求項1記載の難燃性ポリエステル系繊維。
  3. (B)成分が、テレフタル酸又はその誘導体とイソフタル酸又はその誘導体の混合物と一般式(1):
    Figure 0003993762
    (式中、R1は水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基、Xはメチレン基、エチリデン基、イソプロピリデン基、カルボニル基、スルホニル基、1,3−フェニレンジイソプロピリデン基又は1,4−フェニレンジイソプロピリデン基を示す。)で表されるビスフェノール化合物とから得られるポリアリレートであることを特徴とする請求項1又は2記載の難燃性ポリエステル系繊維。
  4. (C)成分が、ホスフェート系化合物、ホスホネート系化合物、ホスフィネート系化合物、ホスフィンオキサイド系化合物、ホスホナイト系化合物、ホスフィナイト系化合物、ホスフィン系化合物および縮合リン酸エステル化合物よりなる群から選択された少なくとも1種のリン系難燃剤である請求項1〜3の何れか1項に記載の難燃性ポリエステル系繊維。
  5. 前記難燃性ポリエステル系繊維が、200℃以上で最大収縮率15%以上を示す収縮性繊維であることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の難燃性ポリエステル系繊維。
  6. 前記難燃性ポリエステル系繊維が、非捲縮生糸状である請求項1〜5の何れか1項に記載の難燃性ポリエステル系繊維。
  7. 前記難燃性ポリエステル系繊維が、人工毛髪用糸である請求項1〜6の何れか1項に記載の難燃性ポリエステル系繊維。
  8. 請求項1〜7の何れか1項に記載の難燃性ポリエステル系繊維を用いた人工毛髪。
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