JP3992541B2 - 可動屋根材を用いた屋根構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、可動屋根材を用いた屋根構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
屋根のけらば部や隅棟部、平棟部など、稜線が生じる部分には、屋根材と同質系の外観を備えた役物を施工するのが一般的である。
しかし、このような施工を行うには、例えば寄棟用、平棟用、剣先、三つ巴などの多数種の役物が必要となる。のみならず、屋根に付する屋根勾配は建物ごとに多種多様である。このようなことから、事前に準備しなければならない役物は極めて多種にのぼることになる。
【0003】
このような不具合を解消するため、本出願人は、平板状をした一対の棟瓦本体が屈曲自在に設けられて成る棟瓦を開発し、特許出願した(特開平5−171745号公報参照)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本出願人が先に特許出願した上記の棟瓦は、両側の棟瓦本体を互いに面一にさせた状態(180°)から、一方の棟瓦本体を屈曲させてゆくとき、これが他方の棟瓦本体との間で140°程度の開き角度を成す状態までしか、棟瓦本体相互を屈曲させることができなかった。
従って、この先願に係る棟瓦は使用できる箇所がある程度制限されることになっていた。
【0005】
このことがネックとなって、例えばけらば部等では別種の屋根材や役物を用いざるを得なくなっており、低コスト化をより推進させることが困難になっていた。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、屈曲角度の許容範囲を広くして汎用性を広げ、隅棟部や平棟部のみならず、けらば部などでの使用も可能とさせた可動屋根材を用い、隅棟部、平棟部及びけらば部を有する屋根構造として低コスト化が図れるようにした屋根構造を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明は次の手段を講じた。
即ち、本発明に係る屋根構造は、平板状をした一対の可動片がそれらの裏面に跨る状態で設けられるヒンジ部を介して互いに山折れ方向へ屈曲自在に連結されており、両可動片の屈曲角度範囲が少なくとも90°〜140°にわたって許容された可動屋根材を有している。
このように、両可動片が90°〜140°の角度範囲で屈曲を許容されているため、この可動屋根材は、隅棟部や平棟部のみならず、けらば部などでの使用も可能となる。
【0007】
なお、言うまでもなく140°〜180°の間でも、両可動片を屈曲自在なものとしておけばよい。
そして、上記可動屋根材を用い、けらば部、隅棟部及び平棟部に対して、それぞれ、それらの稜線に可動屋根材におけるヒンジ部を合致させつつ、その両側へ両可動片を振り分ける状態で施工してある。
このように、上記可動屋根材を用いることで、けらば部、隅棟部、平棟部の全てを施工できるものであり、屋根全体としての使用部品種を少なくでき、その分、低コスト化につなげることができる。
【0008】
また、前記可動屋根材のヒンジ部は、折曲げ可能な繋ぎ材と、該繋ぎ材を可動片に対して貼り付けるための貼着層とを有しており、繋ぎ材は、前記一対の可動片の突き合わせ部分に中心を合致させた状態でその長手方向の両端が先細り状として形成されており、貼着層は、前記長手方向の一方の端部から他方の端部までが前記繋ぎ材と同幅に形成されていることが好ましい。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づき説明する。
図1乃至図3は、本発明に係る可動屋根材1の一実施形態を示している。
この可動屋根材1は、平板状をした一対(2枚)の可動片2を有している。これら可動片2の裏面2aには、この両者間に跨る状態でヒンジ部3が設けられており、これによって両可動片2は連結されている。
そのため、両可動片2は、互いの表面2bが面一になる180°の開き角度を基準として、それらの裏面2aを内側に入れるようにしつつ互いに山折れ方向へ屈曲させることができるようになっている。
【0010】
両可動片2が180°の開き角度とされている状態では、両可動片2は突き合わされており、この突き合わせ部分に隙間は生じないものとされている。
各可動片2は、少なくともその表面2bがこの可動屋根材1を適用する屋根(図7及び図8中の符号100参照)において使用されている屋根材101と同質感を呈するような素材で形成するのが好適とされる。
なお、屋根材101には様々な質感、外観を呈する種類のものがあるが、これらの種類に応じて複数種の可動片2を製造準備しておけばよい。
【0011】
ヒンジ部3は、折り曲げが可能な繋ぎ材4と、この繋ぎ材4を各可動片2に対して貼り付けるための貼着層5とを有している。
繋ぎ材4には、例えば比較的容易に折り曲げることができる捨板金を用いることができる。また貼着層5には、両面テープ等を用いることができる。
なお、繋ぎ材4の材質として、可動片2の屈曲を、ある程度の回数は繰り返し行えるようなもの(例えばゴムシートやプラスチックシート、布など)を用いることもできる。
【0012】
繋ぎ材4の幅方向(図3の左右方向とおく)は、各可動片2の幅(同)に対してその1/2〜1/4程度を占めるような大きさに形成されている。また、この繋ぎ材4は、両可動片2が突き合わされている部分に中心を合致させた状態で、その長手方向(図3の上下方向とおく)の両端が先細り状に形成されている。そのため全体平面形として舟形を呈するようになっている。
なお、繋ぎ材4をこのような形状にすることは限定されるものではなく、例えば各可動片2における裏面2aの全面を占めるような大きさとしてもよい。
【0013】
貼着層5は繋ぎ材4と同幅とされている。ただ、繋ぎ材4とは異なって長手方向両端部は先細り状とはなっておらず、可動片2の両端部まで及ぶようになっている。
そのため、この貼着層5は繋ぎ材4における先細り部分の両側で、この繋ぎ材4からはみ出す部分を有していることになるが、このはみ出し部分には、当初、リケイ紙7(図4参照)が貼り付けられ、これにより、このはみ出し部分においても貼着層5としての貼着作用が劣化しないようになっている。
【0014】
このようなヒンジ部3によって屈曲を許容される両可動片2間の屈曲角度は、少なくとも90°〜140°の範囲を含んでいる。また両可動片2は140°〜180°の間でも屈曲できるものとなっている。
このような可動屋根材1では、両可動片2を140°前後の角度で屈曲させることによって、図8に示すような屋根100に対してその隅棟部102や平棟部103へ使用できる。
また、この可動屋根材1では、両可動片2を90°程度の角度で屈曲させることによって、けらば部104に対しても使用可能となる。
【0015】
なお、図2及び図3に示したように、各可動片2には釘孔10を設けておくのが好適である。これら釘穴10は、ヒンジ部3、とりわけ繋ぎ材4が金属である場合にはこの繋ぎ材4と干渉しない位置へ設けておくのが好適とされる。
図7は、本発明に係る可動屋根材1を用いて隅棟部102を施工する状況を示している。
この施工手順としては、まず隅棟部102の剣先部分へ取り付ける可動屋根材1として、この剣先角度θに合わせたものを準備する必要がある。そこで、図4に示すように、予め、ヒンジ部3における長手方向一端側のリケイ紙7を剥がし、次に、図5に示すように上記剣先角度θに合わせて各可動片2を切断する。
【0016】
なお、この説明から明らかなように、この各可動片2の切断を容易とさせるために、ヒンジ部3の繋ぎ材4は先細り状に形成されているものである。従って、この繋ぎ材4を先細りにさせるための角度として、ある程度、種々の使用場面下での切断角度を予定したものとして設定しておく(45°又はそれより小さくするなど)のが好ましい。
各可動片2を切断した場合、切断した部分によって釘孔10が失われることがあるので、必要に応じて釘孔11を追加形成させる。
【0017】
このようにして恰も野球のホームベース形を呈した可動屋根材1を形成することができたら、この可動屋根材1を140°などの所定角度に屈曲させながら、図7に示すように、隅棟部102の稜線105に可動屋根材1のヒンジ部3(両可動片2の突き合わせ部分)を合致させ、その両側へ両可動片2を振り分ける状態にしたうえで、この可動屋根材1を隅棟部102の剣先部分へ釘打ち固定する。
ここで、両可動片2の突き合わせ部分には屈曲によって隅角状の溝隙間が生じることになるので、図6に示すように(なお、この図6は両可動片2を90°に屈曲させた状態として描いてある)この溝隙間をコーキング12で埋めるようにする。
【0018】
そして、この固定後の可動屋根材1に対して所定の重ね代を設けながら次々に可動屋根材1を葺き上げてゆく。
このようにして隅棟部102を施工することができる。同様にして平棟部103やけらば部104も施工すればよく、これによって隅棟部102、平棟部103、けらば部104の全てを本発明に係る可動屋根材1によって施工した屋根構造を得ることができる。
ところで、本発明は、上記各実施形態に限定されるものではなく、実施の形態に応じて適宜変更可能である。
【0019】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明に係る可動屋根材では、可動片相互における屈曲角度の許容範囲が広なっており、もって、その汎用性が広がり、隅棟部や平棟部のみならず、けらば部などでの使用も可能となっている。
また本発明に係る屋根構造では、隅棟部や平棟部のみならず、けらば部も含めて同じ可動屋根材で仕上げることができるので低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図2の可動屋根材の屈曲状況を示した側面図である。
【図2】 本発明に係る可動屋根材の一実施形態を示した斜視図である。
【図3】 図2の可動屋根材における背面(裏面)図である。
【図4】 図3の状態からリケイ紙を剥離する状況を説明した図である。
【図5】 図3の状態から両可動片を剣先角度に合わせて切断した状態を示した背面(裏面)図である。
【図6】 両可動片を屈曲後にコーキングした状態を示した側面図である。
【図7】 隅棟部に対して可動屋根材を施工する状況を示した斜視図である。
【図8】 本発明に係る屋根構造を具備した建物の一例を示した斜視図である。
【符号の説明】
1 可動屋根材。
2 可動片
3 ヒンジ部
102 隅棟部
103 平棟部
104 けらば部
105 稜線
Claims (1)
- 平板状をした一対の可動片(2)がそれらの裏面に跨る状態で設けられるヒンジ部(3)を介して互いに山折れ方向へ屈曲自在に連結されており、両可動片(2)の屈曲角度範囲が少なくとも90°〜140°にわたって許容されている可動屋根材(1)を備え、
けらば部(104)、隅棟部(102)及び平棟部(103)に対してそれらの稜線(105)に前記可動屋根材(1)におけるヒンジ部(3)を合致させつつその両側へ両可動片(2)を振り分ける状態でこの可動屋根材(1)を施工してあり、
前記可動屋根材(1)のヒンジ部(3)は、折曲げ可能な繋ぎ材(4)と、該繋ぎ材(4)を可動片(2)に対して貼り付けるための貼着層(5)とを有しており、繋ぎ材(4)は、前記一対の可動片(2)の突き合わせ部分に中心を合致させた状態でその長手方向の両端が先細り状として形成されており、貼着層(5)は、前記長手方向の一方の端部から他方の端部までが前記繋ぎ材(4)と同幅に形成されていることを特徴とする可動屋根材を用いた屋根構造。
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