JP3992487B2 - 半導体ウエハの包装方法 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
半導体ウエハーの保管・輸送中の品質低下を防止する包装方法および包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体ウエハが保管・輸送中に酸化等の品質劣化を起こさないように,非酸化性雰囲気に維持された容器内にウエハを収容することが一般的に行われている。例えば,ウエハの製造工程を終了したウエハ製品は,まずウエハが落ち着きよく収まる収容空間をもった剛性の樹脂製ウエハ容器(ウエハトレイとも呼ばれる)に収納され,ついで,この容器全体をガスバリア性の高い柔軟な包装袋の中に非酸化性状態で入れて保管,輸送することが行われている。剛性のウエハ容器はポリプロピレン製のものが通常であり,これを包み込むガスバリア性の包装袋としては,PVS,PTS,アルミラミネート製等のものが知られている。
【0003】
ウエハを収納したウエハ容器をガスバリア性の包装袋に非酸化性状態を保持した状態で密封するには,ウエハを収容したウエハ容器を該袋の中に入れ,ガス置換式の包装機を用いて袋内の大気を脱気するか,あるいは乾燥窒素等の不活性ガスで置換したうえ,袋の開口を加熱溶着などで密封する方法が採用されている。
【0004】
ガス置換式の包装機はノズル方式とチャンバー方式がある。ノズル方式は,真空排気とガス導入を行うノズルを袋内に個別に挿入して,各袋内ごとに脱気・ガス置換して密封するものであり,チャンバー方式は袋を真空チャンバーに入れ,チャンバー内の空間全体を脱気・ガス置換することによって袋内も脱気・ガス置換し,その状態で密封するものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように,ウエハを収納したウエハ容器を非酸化性状態の包装袋に封入する場合に,包装機を使用した従来の方法では,ノズル方式またはチャンバー方式を問わず袋内の脱気→ガス充填→密封までを短時間で実施しているが,ウエハを収容している剛性の容器とその蓋との隙間が僅かであるため,短時間のガス置換動作の間に蓋の閉められたウエハ容器の内部まで十分に脱気,置換することは難しい。したがって,ウエハ容器内部の酸素,水分等の濃度が十分に下げられず,保管,輸送中にウエハ表面の酸化が進行する危険があった。
【0006】
他方,ガス置換した包装袋の中に,ウエハを収容したウエハ容器に加えて,脱酸素・脱水剤などの薬剤を同封することも提案されている。しかし,このような薬剤をウエハ容器と同じ袋内に同封しておくと輸送中の振動等によって薬剤からの粉塵の発生や,薬剤自身からの発生ガス(特に輸送中に昇温したさいなど)によって逆にウエハが汚染される危険もある。
【0007】
本発明はこのような問題を解決することを課題としてなされたもので,半導体ウエハの保管,輸送中でのウエハ表面の酸化を防止する簡易且つ取り扱い易い包装手段を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば,前記の課題を解決するための包装方法として,半導体ウエハを収容したウエハ容器と脱酸素・脱水剤をガスバリア性の袋に入れて該袋の開口を密封し,ウエハ容器内および袋内の酸素および水分が該脱酸素・脱水剤に吸収されるに十分な時間この密封状態を保持したあと,該袋内にウエハ容器が存在する帯域と脱酸素・脱水剤が存在する帯域とに該密封状態を保持したまま封鎖仕切りで隔離する半導体ウエハの包装方法,さらには,前記方法において両帯域を該封鎖仕切りで隔離したあと,該封鎖仕切りをそのまま袋に残した状態で脱酸素・脱水剤が存在する帯域を開口または切断して脱酸素・脱水剤を袋から除去する半導体ウエハの包装方法を提供する。
【0009】
また本発明よれば,ガスバリア性の1個の包装袋の中に,半導体ウエハを収容したウエハ容器と脱酸素・脱水剤とが密閉状態で封入され,且つこの1個の包装袋内でウエハ容器の存在する帯域と脱酸素・脱水剤の存在する帯域とが密封状態を保持したまま封鎖仕切りで互いに隔離されている半導体ウエハの包装体を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明においては,前記の課題を解決するために,ガスバリア性の高い包装袋にウエハ収納容器と脱酸素・脱水剤を一緒に入れて密封し,ウエハ容器と脱酸素・脱水剤とを互いに隔離したうえ,脱酸素・脱水剤を取り外すという手段を採用する。
【0011】
その要部を図面に従って説明すると,図1(A)は,ガスバリア性の高い軟質材料からなる包装袋1内に,半導体ウエハを収納したウエハ容器2と脱酸素・脱水剤3を入れ,袋の開口端を加熱溶着層4によって封入した状態を平面的に示したものである。袋1は二枚のシートの重ね合わせて構成された厚みの薄いものであり,加熱溶着される開口端以外の3辺は熱封止されているか,または折り畳み部からなる。図1(A)の状態では加熱溶着層4によってウエハ容器2と脱酸素・脱水剤3が袋1内に密封されているので,この状態を常温で所定時間保持することによって,袋1の内部空間およびウエハ容器2内の酸化性ガス例えば酸素および水分は脱酸素・脱水剤に吸収除去される。
【0012】
図1(B)は,前記(A)の密封状態を常温で所定時間保持したあと,ウエハ容器2が存在する帯域(イ)と脱酸素・脱水剤3が存在する帯域(ロ)とに密封状態を保持したまま封鎖仕切り5で隔離した状態を示している。すなわち,前記(A)の状態において,ウエハ容器2と脱酸素・脱水剤3の袋内の位置を互いに距離をもって離した状態で,袋1をイとロの二つの帯域に二分するように,袋1の外側から熱シールで封鎖仕切り5を形成する。これによって,ウエハ容器2が存在する帯域(イ)と脱酸素・脱水剤3が存在する帯域(ロ)は互い分離した独立の密閉空間となる。したがって,この状態で保管・輸送しても,ウエハ容器2は脱酸素・脱水剤3からの粉塵発生やガス発生の影響を受けて汚染されることはない。そして帯域(イ)内は,図1(A)の状態で所定の時間保持された間に酸素や水分等の酸化性ガスが除去されており,その状態が図(B)の状態でも維持されるから,ウエハ容器2内のウエハは非酸化性雰囲気下に置かれることになり,酸化が防止される。
【0013】
図1(C)は,前記(B)の状態から,脱酸素・脱水剤3を除去した態様を示している。図示の例では,ウエハ容器2が存在する帯域(イ)の側に熱シールされた封鎖仕切り5を残し,帯域(ロ)の側の袋1に封鎖仕切り5に沿った切り口6が生ずるように袋1を切断したものであり,この切断により封鎖仕切り5によって封鎖された密閉帯域(イ)内にウエハ容器2が存在した状態の小さな袋になる。(C)の状態では,帯域(ロ)の切除時も切除後も封鎖仕切り5の存在によって外部から酸化性ガスが入り込むことはない。このため,図1(C)の状態でも(A)や(B)と同じ非酸化性雰囲気に維持されることになり,ウエハの酸化が防止される。加えて,酸化性ガス除去に使用した脱酸素・脱水剤はすでに除去されているので,保管・輸送にさいしては,図1(B)の状態よりも取り扱いが一層容易となる。
【0014】
このような本発明法に使用するガスバリア性の袋体1としては,ガスバリア性が高く,酸素や水分等を透過し難いものであればその材料は問わないが,好ましいものとしては,PVS,PTS,アルミラミネート製のものが挙げられる。このうちでもガス透過度,透湿度が最も小さいアルミラミネート袋が望ましい。
【0015】
袋の形状については三方シールタイプ,ガゼットタイプ,背貼りタイプ等が挙げられるが,シールの安定性や耐ピンホール性から三方シールタイプが望ましい。実際には,ガスバリア性の樹脂製の四辺形のシートを2枚合わせして3辺を接合するか,その二倍の大きさをもつシートを折り曲げて重ね合わせたうえ2辺を接合して,図1のように,加熱溶着層4を後に形成する辺だけを開口した状態の四辺形の薄い袋1を製作するのがよい。その大きさは,入れるウエハ容器の大きさや数量と金属脱酸素・脱水剤の大きさに合わせればよく,特に限定されない。
【0016】
ウエハ容器2としては,各種のウエハトレイが市販されており,特に制限なく使用することができ,代表的なものとしてはポリプロピレン製のウエハトレイが汎用化されている。
【0017】
脱酸素・脱水剤3は,少なくとも空気中の酸素・水分を吸収除去できる機能を有するもので,酸素・水分に加えて,硫化水素,亜硫酸ガス,塩化水素,アンモニア等のウエハに有害に作用するガス成分を吸収除去できる機能を有するものであることもできる。代表的な脱酸素・脱水剤3として,市販の脱酸素剤,乾燥剤または金属酸化防止剤等を単独または併用して使用することができる。脱酸素剤は酸素を化学反応によって取り除くものであり,市販品としては例えば食品用の商品名「エージレス」がある。乾燥剤は物理吸着によって水分を取り除くものであり,例えば商品名シリカゲルがある。金属酸化防止剤は,金属を酸化・腐食させる酸素,水分および酸化性ガスを同時に除去するものであり,市販品としては三菱ガス化学製の商品名「RP剤」がある。RP剤は主に有機系の酸素吸収剤と無機系の水分吸収剤からなり,いずれも化学反応によって酸素および水分を吸収除去する機能を有している。
【0018】
半導体ウエハ表面の酸化を完全に防ぐには酸素と共に水分を同時に除去する必要がある。脱酸素剤は鉄の酸化反応を利用して酸素を吸収するため水分の存在が必要である。乾燥剤は脱水作用が主で酸素は吸収できないし,水分の吸収は物理吸着であるため温度が上昇すると吸収した水分を再放出してしまうので,これ単独で脱酸素・脱水剤とするのは好ましくはない。一方,金属酸化防止剤は系内の酸素と水分等の酸化性物質を同時に吸収・除去する機能を有し且つ不可逆的な化学反応によって酸化性ガスを吸収するため,一旦吸収したガスを再放出することもない。したがって,ウエハ表面の酸化を防止する上では,脱酸素・脱水剤3として金属酸化防止が最も望ましい。
【0019】
これらの脱酸素・脱水剤3の使用量については袋1と内容物の容積から袋内の空気量を計算し,これに応じて必要な脱酸素・脱水剤のサイズと個数を決定すればよい。
【0020】
図1(A)のように,ウエハを収納したウエハ容器2と脱酸素・脱水剤3を袋1内に入れたあと,その開口端を加熱溶着して加熱溶着層4を形成するが,場合によっては,この加熱溶着に代えてクリップ圧着方式やチャック方式その他の方式で開口端を封鎖することも可能である。しかし,加熱溶着方式が最も簡便で且つ確実である。袋1内にウエハ容器2と脱酸素・脱水剤3を密封したまま,所定の時間常温で保持しておくと,袋内の酸化性ガスは脱酸素・脱水剤3に吸収され,実質的に非酸化性状態になる。通常は,24時間で非酸化性状態になるように,脱酸素・脱水剤の種類と量を調整しておくと作業性がよい。脱酸素・脱水剤として前述の商品名RP剤を適量使用すると,24時間で袋内の酸素濃度を0.02%以下,水分は1%RH以下にすることが可能である。
【0021】
また,製品ウエハをウエハ容器2に収納する工程,このウエハを収納したウエハ容器2と脱酸素・脱水剤3を袋1内に入れる工程,および加熱溶着層4を形成する工程を,非酸化性雰囲気内例えば窒素雰囲気中で実施することもでき,この場合には,ウエハが空気に触れる機会がないので,一層,ウエハ表面の酸化による劣化が防止できる。
【0022】
図1(A)の状態で保管や輸送も可能であるが,脱酸素・脱水剤からの発生ガスや振動による発塵等によってウエハ表面が汚染される恐れがある。そこで包装袋内の酸素,水分等を除去するための保管時間は例えば72時間までとし,その後は,図1(B)のように,袋1内でウエハ容器2と脱酸素・脱水剤3を適当に離し,両者の間で袋1を加熱溶着して封鎖仕切り5を形成し,両者を隔離した後,脱酸素・脱水剤3が入った部分を切除し,図1(C)のようにウエハ容器2だけが密封された状態とする。切断方法は封鎖仕切り5や包装の密閉性を阻害する方法でなければ特に制限はなく,刃物のによる切断方法で十分である。
【0023】
図1(C)の状態では,容器2内の酸素,水分等の濃度が十分に下がった状態でその雰囲気が維持されるため,ウエハ表面の酸化の進行が防げられると共に脱酸素・脱水剤がもはや同封されていないため,長期間の保管や輸送を行っても脱酸素・脱水剤からの発塵や発生ガスによってウエハが汚染されることがない。
【0024】
【実施例】
〔実施例1〕
直径3インチのGaAsウエハを次亜塩素酸系の研磨液とポリウレタン系のポリッシュパッドを用いて鏡面状態にポリッシュした後,アンモニアと過酸化水素からなるエッチング液を用いたスピンエッチングを実施して,表面の汚染層および酸化膜を除去した。エッチング終了から2時間以内に該ウエハを市販のウエハトレイ(ポリプロピレン製のウエハ容器)に収容し,ガスバリア性の極めて高いアルミラミネート袋(三方シールタイプ,130mm×200mm)に入れ,更に脱酸素・脱水剤として,三菱ガス化学社製の商品名「RP−3A」の金属酸化防止剤を一袋入れた。そして,該袋の開口部を市販のシーラーを用いて加熱溶着して密封し,このまま常温で24時間保管した。
【0025】
なお,ウエハの代わりに,三菱ガス化学社製の酸素インジケータをウエハトレイ内に入れた以外は,前記と同様に金属酸化防止剤と共に密封して24時間保管した。そして24時間後のトレイ内部の酸素濃度を調べたところ,0.1%以下であることを確認した。
【0026】
ついで,ウエハトレイと金属酸化防止を袋内で密封二分するように袋を加熱溶着して封鎖仕切りを形成して両者を個別に密封状態とした後,金属酸化防止剤が入った部分を切除した。この後,ウエハトレイが密封された部分を30日間常温で保管した後,包装袋を開封してウエハを取り出し,ウエハ表面の酸化膜量とカーボン量をESCA法により分析した。その結果ウエハ表面の酸化はほとんど進行しておらず,また有機物汚染も見られなかった。
【0027】
〔比較例〕
直径3インチのGaAsウエハを次亜塩素酸系の研磨液とポリウレタン系のポリッシュパッドを用いて鏡面状態にポリッシュした後,アンモニアと過酸化水素からなるエッチング液を用いたスピンエッチングを実施して,表面の汚染層および酸化膜を除去した。エッチング終了から2時間以内に該ウエハを実施例1と同じウエハトレイに収容し,実施例と同様のガスバリア性の極めて高いアルミラミネート袋(三方シールタイプ,130mm×150mm)に入れ,ノズル挿入式のガス置換式包装機を用いて包装袋内を窒素ガス置換した後,開口部を加熱溶着して密封した。
【0028】
次いで窒素ガス充填のサイクルを2回繰り返した後,包装袋の開口部を加熱溶着し,密封した。ウエハの代わりに市販の酸素インジケータ(三菱ガス化学社製)を入れ,密封から24時間後のトレイ内部の酸素濃度を確認したところ≧0.5 %であった。
【0029】
この密封状態で30日間常温で保管した後,包装袋を開封してウエハを取り出し,ウエハ表面の酸化膜量とカーボン量をESCA法により分析したところウエハ表面の酸化が進行していることが確認された。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように,本発明によれば,半導体ウエハの保管,輸送中でのウエハ表面の酸化が防止され,これによって,ウエハの製造歩留まりが向上し,後工程での製品不良率も減少するという効果を奏する。また本発明による半導体ウエハの包装体では非酸化性に維持するための手段が,真空脱気・ガス置換方式に比べて非常に簡易でありながらその酸化性ガス除去効果が大きく,しかもその包装体の取り扱いも容易化し,保管運搬にかかるコストも削減できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に従う半導体ウエハの包装方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ガスバリア性の包装袋
2 ウエハ容器(ウエハトレイ)
3 脱酸素・脱水剤
4 加熱溶着層
5 封鎖仕切り
6 切り口
Claims (4)
- 半導体ウエハを収容したウエハ容器と脱酸素・脱水剤をガスバリア性の袋に入れて該袋の開口を密封し、ウエハ容器内および袋内の酸素および水分が該脱酸素・脱水剤に吸収されるに十分な時間この密封状態を保持したあと、該袋内にウエハ容器が存在する帯域と脱酸素・脱水剤が存在する帯域とに該密封状態を保持したまま封鎖仕切りで隔離する半導体ウエハの包装方法。
- 半導体ウエハを収容したウエハ容器と脱酸素・脱水剤をガスバリア性の袋に入れて該袋の開口を密封し、ウエハ容器内および袋内の酸素および水分が該脱酸素・脱水剤に吸収されるに十分な時間この密封状態を保持したあと、該袋内にウエハ容器が存在する帯域と脱酸素・脱水剤が存在する帯域とに該密封状態を保持したまま封鎖仕切りで隔離し、該封鎖仕切りをそのまま袋に残した状態で脱酸素・脱水剤が存在する帯域を開口または切断して脱酸素・脱水剤を袋から除去する半導体ウエハの包装方法。
- 脱酸素・脱水剤は、酸素と水分を吸収除去する機能を有する請求項1または2に記載の半導体ウエハの包装方法。
- ガスバリア性の袋は、アルミラミネート袋である請求項1または2に記載の半導体ウエハの包装方法。
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