JP3992428B2 - 燃料電池システムとその運転方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、燃料電池システムとその運転方法に関し、特に燃料改質装置で改質された改質ガス中に混入した触媒又は吸着剤の粉体を簡単な除去手段により除去できるようにしたものに関する。
【0002】
【従来の技術】
天然ガスやナフサ等の炭化水素系の原燃料を用いた燃料電池があり、この燃料電池を含む燃料電池システム(発電システム)においては、通常図4のように原燃料中の硫黄分を除去する脱硫器A、水素リッチガスに改質するための改質器B、改質ガスを変成して燃料電池にとって有害なCO濃度を低減させるCO変成器C、及び改質ガス中のCOを数百〜数PPMの濃度にまで除去するCO除去器Dを備えている。
【0003】
これらはいずれも容器内に触媒又は吸着剤が充填されたものが使用されており、起動時及び運転中に温度差によって触媒又は吸着剤に圧壊が生じて粉化することがある。これを防止するため、従来例えば改質器においては燃焼空気の供給量を調整することにより触媒層の温度差を無くし、触媒の圧壊を防止する方法が行われていた(特開平8−152115号公報)。
【0004】
ところで、図3に示すような従来の燃料電池システムにおいては、起動時に改質器1は触媒層の温度が十分に反応が行える温度に達して安定するまでの間は、原燃料を十分に改質することができず、改質ガス中には多量の水蒸気と電池反応にとって有害な一酸化炭素が多く含まれている。このため、改質器1の触媒温度が所定の温度になるまでの間は改質ガスを電池本体2に供給せず、改質器1のバーナー3(燃焼手段)の燃料として使用したり、他に設けたバーナーの燃料として使用してその熱によって改質器1中の触媒を昇温し、或は電池への循環水の昇温を行ったりしていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記のように改質器等に充填された触媒、脱硫器に充填された吸着剤が熱変化により圧壊して粉化すると、改質ガス中に混入し、バーナー燃料供給弁4及び電池燃料供給弁5内に流入し、弁のシール部に堆積してシート漏れ等の弁障害が生じる問題があった。又、粉化した触媒又は吸着剤等の粉体が加湿器6内に堆積すると、冷却水循環用のポンプ10に流入して故障を招くことがあった。一方、起動時には前記のように改質ガスがバーナー燃料供給弁4を介して改質器1のバーナー3に供給されるが、その際バーナー3に通じる配管が冷えているため、改質ガス中の水蒸気が配管内で結露し、脈動やバーナー失火の原因になる問題もあった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされ、粉化した触媒又は吸着剤等の粉体がバーナー燃料供給弁4及び電池燃料供給弁5に流入することで生じる弁障害、及びポンプに流入することで生じる故障と、起動時におけるバーナー3に通じる配管内で改質ガス中の水蒸気が結露することで生じる脈動やバーナー失火を防止できるようにした燃料電池システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための手段として、本発明は、燃料改質装置を備えた燃料電池システムであって、改質ガス中に混入する粉体を液体と接触させることによって除去する除去手段を備え、この除去手段が電池本体に供給する改質ガスを加湿する加湿器であることを特徴とする燃料電池システムを要旨とする。
この燃料電池システムにおいて、前記液体が水、エチレングリコール、グリセリン、シリコンオイル等の油脂又は水溶液であること、
前記加湿器内にノズル等の加湿促進手段が設けられ、この加湿促進手段の開口部が下向きに設けられていること、
前記加湿器の下流側に電池燃料供給弁及びバーナー燃料供給弁を設けたこと、
前記改質ガスを燃焼させるバーナー等の燃焼手段を備え、起動時にこの燃焼手段に前記バーナー燃料供給弁から改質ガスが供給されること、
前記加湿器の水がポンプを介して電池本体に送り込まれ、電池本体冷却後に熱交換器を介して加湿器に戻されるように構成され、前記電池本体及び熱交換器が加湿器に設けられた排水弁より高い位置に配置されたこと、
前記ポンプが加湿器の排水弁より高い位置で、且つ運転時の加湿器の水面より低い位置に配置されたこと、
前記ポンプが呼び水操作を不要とする自給機構を備えたこと、を特徴とするものである。
更に、本発明は、上記燃料電池システムであって、前記液体を除去手段から排出することで触媒又は吸着剤を除去することを特徴とする燃料電池システムの運転方法を要旨とする。
この燃料電池システムの運転方法において、起動時に前記除去手段に室温以下の液体を供給し、除去手段内の液体の温度を下げること、
停止時又は運転中定期的に前記液体を除去手段から排出すること、を特徴とするものである。
【0008】
本発明は、圧壊により粉化し改質ガス中に混入した触媒又は吸着剤等の粉体を、水等の液体と接触させる除去手段(加湿器)で除去し、除去手段の下流側に設けられた電池燃料供給弁及びバーナー燃料供給弁内への流入を防ぐことで弁障害を防止することができる。停止時又は運転中定期的に除去手段の液体を排出することにより粉化した触媒又は吸着剤等の粉体の堆積を防ぎ、ポンプ内への流入を防ぐことで故障を防止することができる。又、起動時に室温以下の液体を除去手段に供給し、液温を低くすることにより改質ガスを冷却して露点を下げ、バーナー燃料供給弁からバーナーに至る配管内での改質ガス中の水蒸気の結露を防ぐことで脈動又はバーナー失火を防止することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る燃料電池システムとその運転方法の実施形態を添付図面に基づいて(従来例に対応する部材は同一符号で)説明する。
図1は、本発明の燃料電池システムフロー図であり、改質器1には燃料(天然ガス等の原燃料)と水が供給され、この改質器1に設けられたバーナー3の燃焼によって改質器1内に充填された触媒を所定の温度に達して安定するまで加熱する。図1では省略してあるが、改質器1と示されているところには前記脱硫器A、CO変成器C、CO除去器Dがそれぞれ設置されている。
【0010】
改質器1で改質された改質ガスは、加湿器6(除去手段)内に流入し、ノズル等の加湿促進手段7から液体中にバブリング放出される。この場合、加湿器6内の液体は水が用いられているが、水の他に例えばエチレングリコール、グリセリン、シリコンオイル等の油脂又は水溶液等であっても良い。前記加湿促進手段7は開口部が下向きに設けられており、バブリングされた改質ガス中の触媒又は吸着剤が開口部から排出され易いようにしてある。
【0011】
前記加湿促進手段7は、改質ガスを細かな気泡にして水との接触面積を大きくし、効率良く加湿するためのものであるが、ノズルを使用する場合は通常、金属、ガラス、樹脂を焼結させたものやパイプに細かな孔をあけたものが用いられる。本発明の構成でこのようなノズルを用いると、ノズル内部に粉化した触媒又は吸着剤が堆積してノズルを詰まらせ、改質ガスの流れが悪くなることがある。このため、本発明においては、厚み1mmのステンレス板で四角形の箱を作製し、その下部に直径3mm程度の孔を複数個あけたものを使用する。この形態にすることで、改質器1から排出される粉化した触媒等がノズル内部に堆積することなく排出される。
【0012】
前記のように改質ガス中には圧壊により粉化した触媒又は吸着剤等の粉体が混入しているが、加湿器6における水との接触により粉体が改質ガス中から分離して加湿器6の底部に落下する。つまり、改質ガス中から粉化した触媒又は吸着剤等の粉体が除去される。
【0013】
バブリングにより粉体が除去された改質ガスは、水中から出て加湿器6の上部に設けられた吐出口6aからバーナー燃料供給弁4に流入する。前記のように起動時に改質器1が所定の温度まで昇温しない段階では、改質ガスを電池本体2に供給せず改質器1のバーナー3に送り込むため、バーナー燃料供給弁4を開き、電池燃料供給弁5は閉となっている。本発明では、バーナー燃料供給弁4及び電池燃料供給弁5は加湿器6の下流側に設けられており、従来のように改質器1からの改質ガスが直接流入しないようになっている。
【0014】
一方、起動時において給水弁8を開けて加湿器6内に水を供給する操作を行う。この操作により、起動時において加湿器6内の水温を低くすることができ、改質ガスをバブリングさせることにより温度を下げることができる。このため、改質ガスの露点が下がり、バーナー3に至る配管及びバーナー3内で改質ガス中の水蒸気が結露することはなく、脈動やバーナー失火或は燃焼状態が不安定となるのを防止することができる。但し、加湿器6に供給する水の温度は十分低い温度(室温以下)でなければならない。
【0015】
改質器1中の触媒の温度が所定の温度にまで達して安定すると、バーナー燃料供給弁4が閉、電池燃料供給弁5が開となって加湿器6の吐出口6aから吐出された改質ガスは電池本体2のアノードに供給される。バーナー燃料供給弁4及び電池燃料供給弁5には、既に加湿器6内で粉体が除去されて清浄となった改質ガスが流入するため、これら弁のシール部には粉化した触媒又は吸着剤等の粉体が堆積することはなく、シート漏れや弁障害を未然に防止することができる。
【0016】
又、改質ガスは前記のように加湿器6で冷却されるため、耐熱仕様の弁を使用しなくても良い。改質器1から供給される改質ガスは通常80〜700℃の高温であるため、従来のように加湿器6の上流側にバーナー燃料供給弁4及び電池燃料供給弁5が設けられた場合には、耐熱仕様の弁を使用するか、又は別途に熱交換器等を設置して改質ガスの温度を下げる必要がある。本発明ではバーナー燃料供給弁4及び電池燃料供給弁5を加湿器6の下流側に配置し、加湿器6内で冷却された改質ガスが流入するようにしたので、耐熱仕様の弁は不要であり、別途に熱交換器等を設置する必要もなくなる。
【0017】
電池本体2のカソードには送風機9により取り込まれた空気が供給され、この空気中の酸素ガスと前記アノードに供給された改質ガス中の水素ガスとで、固体高分子膜を介して電気化学反応が生じ、起電力が得られると同時に水が生成される。固体高分子膜は、改質ガス中の水分によって湿潤され、その導電性を十分発揮することができる。
【0018】
電池本体2の運転時には、ポンプ10により加湿器6内の水を電池本体2の冷却水通路内に供給し、電気化学反応に伴う発熱を冷却して電池本体2をほぼ一定の温度に保持し、正常運転が継続できるようにする。電池本体2内を通過した冷却水は熱交換器11で熱交換された後に加湿器6内に戻される。即ち、冷却水は加湿器6と電池本体2との間を循環使用される。加湿器6内の水は次第に消費されるため、前記給水弁8により適宜給水して水面がほぼ一定レベルになるように保持される。
【0019】
前記のように加湿器6内で除去されて底部に堆積する粉化した触媒又は吸着剤等の粉体は、排水弁12により加湿器6内の水を排出することで、水と一緒に外部に排出される。運転中においては、加湿器6内部の水を大量に排出すると、改質ガスの加湿が適正に行えなかったり、前記ポンプ10に空気が混入(エアー噛み)してしまうため、粉体の堆積量に応じて加湿器6内の水を運転に差し支えない程度の最小限に留め、排出操作を適宜定期的に行うことが望ましい。
【0020】
運転停止時においては、前記排水弁12を開けて加湿器6及び加湿器6に通じる配管内の水を全て排出して、堆積した粉体を外部に排出させる操作を行う。この排出操作を行うことにより外気温が氷点下を下回る環境下において放置した場合においても、内部の水が凍結して加湿器6、配管及びポンプ10の弁等を破壊することがなくなる。
【0021】
又、電池本体2と熱交換器11とを排水弁12より高い位置に設置することで、停止時における加湿器6の排水操作を行う際に、これらの内部の水も排水されるのでこれらの凍結を防止できる。
【0022】
一方、前記ポンプ10は内部の水が無くなると、ポンプ起動時において呼び水操作を行う必要が生じる。このため、ポンプ10は自給機構(呼び水操作を不要とする機構)を備えたものを使用するか、又は運転時の加湿器6の水面より低く、且つ排水弁12より高い位置に設置することが望ましい。
【0023】
[実験]
上記実施形態のシステムフローによる燃料電池システムを用いて上記の方法により運転試験を行ったところ、次のような結果が得られた。
▲1▼ 圧壊して粉化した触媒又は吸着剤等の粉体が、加湿器6の下流側に設けられたバーナー燃料供給弁4及び電池燃料供給弁5のシール部に堆積せず、シート漏れや弁障害が生じることがなくなった。又、ポンプ10の故障も生じなくなった。
▲2▼ 起動時において、バーナー3に通じる配管内で水蒸気が結露せず、脈動やバーナー3の失火が生じなくなった。
▲3▼ 外気温が氷点下を下回る環境下に放置した場合においても、電池本体2、熱交換器11、加湿器6、配管、弁等が凍結せず、破壊することがなくなった。
【0024】
上記実施形態で、ノズル等の加湿促進手段は、十分な加湿が行われる構造の加湿器であれば特に設置する必要はなく、配管をそのまま加湿器に取り付けた構造等を用いても良い。又、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内での変更形態で実施することができるものである。
【0025】
【発明の効果】
以上説明した本発明の燃料電池システムとその運転方法によれば、圧壊により粉化し改質ガス中に混入した触媒又は吸着剤等の粉体を、水等の液体と接触させる除去手段(加湿器)により簡単に除去することができ、除去手段の下流側に設けられた電池燃料供給弁及びバーナー燃料供給弁への流入を防いで弁障害等を防止する効果を奏する。又、起動時に室温以下の水等の液体を除去手段に供給することで、除去手段内の液温を低くし、改質ガスを冷却して露点を下げることにより、バーナー燃料供給弁からバーナーに至る配管内での水蒸気の結露を防いで脈動又はバーナー失火を未然に防止する効果を奏する。
更に、本発明によれば次のような優れた効果も奏することができる。
▲1▼ 改質ガスが除去手段内で冷却されるため、電池燃料供給弁及びバーナー燃料供給弁の耐熱温度を下げることができる。
▲2▼ 排水弁により水を排出することにより、除去手段内に堆積する粉化した触媒又は吸着剤等の粉体を水と一緒に外部に排出するため、ポンプに流入せず故障を防止することができる。
▲3▼ 停止時において、排水弁を開けて除去手段及び配管内の水を全て排出することにより、外気温が氷点下を下回る環境下において放置した場合においても、内部の水が凍結して電池本体、熱交換器、加湿器、配管、弁、ポンプ等の破壊を防止することができる。
▲4▼ 除去手段に設けられたノズル等の加湿促進手段の開口部が下向きに設けられているため、改質ガスに混入している粉化した触媒又は吸着剤が排出され易くなる。
▲5▼ 電池本体に冷却水を送り込むポンプが自給機構を備えているので、起動時に呼び水操作が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る燃料電池システムのフロー図
【図2】除去手段(加湿器)の概略拡大図
【図3】従来の燃料電池システムのフロー図
【図4】炭化水素系の原燃料を用いた燃料電池システムのフロー図
【符号の説明】
1…改質器
2…電池本体
3…バーナー(燃焼手段)
4…バーナー燃料供給弁
5…電池燃料供給弁
6…加湿器(除去手段)
7…加湿促進手段
8…給水弁
9…送風機
10…ポンプ
11…熱交換器
12…排水弁

Claims (11)

  1. 燃料改質装置を備えた燃料電池システムであって、改質ガス中に混入する粉体を液体と接触させることによって除去する除去手段を備え、この除去手段が電池本体に供給する改質ガスを加湿する加湿器であることを特徴とする燃料電池システム。
  2. 前記液体が水、エチレングリコール、グリセリン、シリコンオイル等の油脂又は水溶液である請求項1記載の燃料電池システム。
  3. 前記加湿器内にノズル等の加湿促進手段が設けられ、この加湿促進手段の開口部が下向きに設けられている請求項記載の燃料電池システム。
  4. 前記加湿器の下流側に電池燃料供給弁及びバーナー燃料供給弁を設けた請求項1又は3記載の燃料電池システム。
  5. 前記改質ガスを燃焼させるバーナー等の燃焼手段を備え、起動時にこの燃焼手段に前記バーナー燃料供給弁から改質ガスが供給される請求項記載の燃料電池システム。
  6. 前記加湿器の水がポンプを介して電池本体に送り込まれ、電池本体冷却後に熱交換器を介して加湿器に戻されるように構成され、前記電池本体及び熱交換器が加湿器に設けられた排水弁より高い位置に配置された請求項1又は3又は4に記載の燃料電池システム。
  7. 前記ポンプが加湿器の排水弁より高い位置で、且つ運転時の加湿器の水面より低い位置に配置された請求項記載の燃料電池システム。
  8. 前記ポンプが呼び水操作を不要とする自給機構を備えた請求項6又は7記載の燃料電池システム。
  9. 請求項1記載の燃料電池システムにおいて、前記液体を除去手段から排出することで触媒又は吸着剤を除去することを特徴とする燃料電池システムの運転方法。
  10. 起動時に前記除去手段に室温以下の液体を供給し、除去手段内の液体の温度を下げる請求項記載の燃料電池システムの運転方法。
  11. 停止時又は運転中定期的に前記液体を除去手段から排出する請求項記載の燃料電池システムの運転方法。
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