JP3992092B2 - 試料研磨装置、試料研磨方法及び研磨パッド - Google Patents

試料研磨装置、試料研磨方法及び研磨パッド Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、半導体基板のような平板状の試料を研磨する試料研磨装置試料研磨方法及び研磨パッドに関し、特に、前記試料を保持する試料吸着パッド及び保持定盤の固定部分の構成に関する。
【0002】
【従来の技術】
Siウエハ,半導体デバイスウエハ等の均一平坦化研磨方法として、精密研磨装置,研磨スラリ,研磨パッド等を用いた絶縁膜平坦化法,キャパシタ形成法及びSTI(Shallow Trench Isolation)、並びにAl,Cu,W等によるプラグ又はメタル配線の形成に用いられているCMP(Chemical Mechanical Polishing )法が知られている。
【0003】
CMP法に使用されている試料研磨装置(CMP装置)は、その上面に研磨パッドを全面に亘って被着させた大径のプラテンと、該プラテンにその下面を対向せしめ、研磨対象となる半導体基板等の試料を該下面に保持する小径のチャックベース(保持定盤)とを備えて構成されている。前記チャックベース及びプラテンは共に厚肉円板状をなし、夫々の対向面と直交する各別の支軸により同軸的に支持され、これらの支軸の軸回りに回転駆動するようになしてある。また、プラテンのチャックベースと同側に、その下面をプラテンに対向せしめたダイヤモンド電着リングが配されている。チャックベースと電着リングとの間にはプラテンに臨ませてノズルが配されており、該ノズルからは研磨スラリがプラテン上に供給されるようになっている。
【0004】
チャックベースは、プラテン上での水平方向及び垂直方向の位置決めを行なうヘッドに連結されている。プラテンと対向するチャックベースの下面には、その全面に亘ってチャック(試料吸着パッド)が粘着層を介して接着されており、チャックに試料が固定される。またチャックの下面には、試料の飛び出し防止及び試料のエッジの過研磨防止のためのリテーナが設けられている。リテーナは、前記研磨スラリに対する耐薬品性,耐膨潤性、並びに研磨パッド及び研磨砥粒による耐摩耗性が要求されるためにセラミックまたはテフロン(登録商標)などの特殊樹脂で形成されている。
【0005】
このような装置を用いて研磨を行なう場合は、まず試料をチャックに固定し、ヘッドによりチャックベースをプラテン上部の所定の円周上に位置決めし、両者を回転させつつ相互に接近せしめ、試料の研磨面(下面)を前記研磨パッドに所定圧力で押し当てて、前記ノズルから供給される研磨スラリを介して摺接せしめる。また研磨レートを安定化させるために、所定数の試料研磨毎に前記ダイヤモンド電着リングにより研磨パッドのin-situ ドレスを行なう。
【0006】
上述した如く、Siウエハ及び半導体デバイスウエハの研磨加工時に研磨スラリが用いられる。研磨スラリの研磨液は、絶縁膜平坦化の場合は、シリカゲル(pH≒10.5 ),セリアゾル(pH≒6.5 )等が用いられる。シリカゾルは一般に緩衝溶液をベースにし、水酸化カリウム,アンモニア等を用いてpHをアルカリ側に固定している。このメリットとしては砥粒分散性が高くなることにより研磨レートが安定化すること、シリコン酸化膜の水和化により研磨レート性が向上することが挙げられる。またAl,Cu,W等を用いたメタル研磨においては、一般に、研磨砥粒としてアルミナを用い、メタル表面を例えば過酸化水素水のような酸化剤で酸化しながら砥粒で機械的に剥離する方法が用いられており、この場合の研磨スラリのpHは3.5 から中性までの範囲に固定されていることが多い。
【0007】
このようにアルカリ性又は酸性の研磨スラリが多く使用されることから、CMP装置に用いられるパーツの耐薬品性は研磨装置の安定性を高める上で重要である。特に半導体ウエハの研磨加工において、ウエハの均一性,平坦性に大きな影響をもたらすパーツとして、試料を保持するチャック構造が挙げられる。
【0008】
チャック構造には、ワックスにより試料を高精度平面プレートへ貼付する方式、真空吸着により試料を高精度平面プレートへ吸着固定する方式、及び軟質の人工皮革で形成された不織布であるバッキングフィルムに試料を貼付するテンプレート方式が知られている。ワックスによる貼付方式は、ワックスの塗布ムラが試料の研磨均一性に大きく影響すること、また加熱及び冷却による着脱工程が必要という問題がある。またバッキングフィルムによるテンプレート方式は、バッキングフィルムとウエハとの間の凝集砥粒の混入,又はウエハ吸着時の気泡の混入によりディンプルが発生し、これにより均一性が劣化するという問題がある。これらの点から真空吸着方式の採用が多くなっており、また真空吸着方式は他方式と比べて研磨工程数が少なく、工程管理が簡便であり、ウエハ表面のディンプルを低減できる点からも有利である。
【0009】
上述したCMP装置を真空吸着方式で構成した場合は、下面が高精度平面に形成されたセラミック製のチャックベースが使用され、このチャックベースには全面に亘って直径0.1 mm程度のピンホールが数ミリ間隔で設けられている。また合成樹脂製のチャックはウエハの吸着面に溝加工が施されており、真空吸着面積が増加するようになっている。特に、半導体ウエハのようなマクロなウネリを有する試料についてはこのような通気性を有するチャックベースと通気性及び弾性を有する不織布,ゴム,樹脂,人工皮革などで形成されたチャックとを組み合わせることにより真空吸着と表面基準研磨とを有効にすることができる。このようなチャック構造を本出願人は特開平8−181092号公報にて提案している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
前述した如く、チャックは粘着層を介してチャックベースに接着固定されており、該粘着層は市販のアクリル系接着両面テープ,エポキシ樹脂,光硬化剤などの樹脂系接着剤により形成されている。しかしながら、アクリル系接着両面テープを用いてチャックをチャックベースに固定した場合は、接着両面テープが酸性及びアルカリ性の研磨スラリに曝されて、接着両面テープの外周縁でアクリル樹脂が変質したり、吸湿により膨潤して前記外周縁がチャックベースから剥離するという問題がある。これはアクリル系接着両面テープの骨格であるアクリル酸エステル(R1 −COO−R2 )が酸性又はアルカリ性のスラリ中において加水分解され粘着性が劣化するためである。
【0011】
また、樹脂系接着剤を用いてチャックをチャックベースに固定した場合は、接着両面テープに比べて弾性が劣るために研磨擦動時の押圧ショックを緩和できず、また樹脂系接着剤が研磨スラリに浸されて膨潤するために、チャック4のエッジ部が接着剤から剥離するという問題がある。このようにチャックのエッジ部が剥離することにより、ウエハを安定して固定できなくなり、ウエハの研磨均一性が低下するという問題があった。
【0012】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、粘着層が洗浄液,薬液などに曝されても変質せず、試料接着パッドの剥離を防止でき、試料の研磨均一性を向上させる試料研磨装置試料研磨方法及び研磨パッドを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
発明に係る試料研磨装置は、保持定盤に粘着層を介して貼着された試料吸着パッドに試料を吸着保持し、該試料の表面を研磨パッドに摺接させて研磨する試料研磨装置において、前記粘着層としてゴム系粘着材を用いてあり、前記ゴム系粘着材の外周縁をシーリング層で覆ってあることを特徴とする。
【0014】
発明にあっては、ゴム系粘着材を用いて試料保持パッドを保持定盤に接着固定している。ゴム系粘着材はアクリル系接着材と比較して耐薬品性,耐膨潤性,耐温度性,粘着性及び剥離強度に優れているので、試料保持パッドと保持定盤との接着部分が酸性又はアルカリ性の研磨スラリ及び洗浄液に曝されても試料保持パッドのエッジ剥離が生じない。その結果、試料研磨の均一性が向上する。
【0015】
ここでゴム系粘着材は、クロロプレンゴム,ニトリルブタジエンゴム,アクリルゴム,スチレンブタジエンゴム,スチレンイソプレンスチレン,スチレンブタジエンスチレン,スチレンエチレンブタジエンスチレン,ブチルゴム,ポリイソブチレンゴム,天然ゴム,ポリイソプレンゴムなどの粘着ゴムの一又は複数に、フェノール系樹脂,変性フェノール樹脂,ケトン樹脂,アルキッド樹脂,ロジン系樹脂,クマロン樹脂,スチレン系樹脂,石油樹脂,塩化ビニル系樹脂などの粘着付与材の一又は複数を配合したものが有効である。
【0017】
発明にあっては、ゴム系粘着材を用いて試料保持パッドを保持定盤に接着固定し、さらに粘着層であるゴム系粘着材の外周縁をシーリング層で覆っているので、試料研磨の均一性がさらに向上する。
【0018】
発明に係る試料研磨装置は、前記ゴム系粘着材は接着両面テープであることを特徴とする。
【0019】
発明にあっては、試料保持パッドを保持定盤に固定するためにゴム系接着両面テープを用いている。ゴム系接着両面テープは、合成樹脂フィルムを基材としてその両面にゴム系粘着材が熱圧着固定されたものである。基材を有する接着両面テープを用いることにより、粘着層は研摩擦動時の押圧衝撃に耐えることができ、また粘着層の貼り変えが容易になる。接着両面テープの基材としてポリエステル,ポリエチレン,ポリ塩化ビニル,不織布などが用いられるが、特に、吸湿性が小さなポリエステル系の合成樹脂が好ましい。
【0020】
発明に係る試料研磨装置は、前記ゴム系粘着材は剪断接着強度が略1MPa以上を有することを特徴とする。
【0021】
発明にあっては、ゴム系粘着材は略1MPa(10kgf/cm2 )以上の剪断接着強度を有する。粘着強度は粘着材の性状並びに被着体の材質及び表面性状によって大きく異なり、さらに使用環境が湿潤であり、且つ繰り返し負荷を受けることから定量的な値の設定は困難であるが、試料保持パッド及び保持定盤が合成樹脂又はステンレス鋼でその被着面が鏡面仕上げである場合は、4.9 kPa(50gf/cm2 )〜58.8kPa(600 gf/cm2 )の範囲の研磨圧力で発生する剪断応力は略 2.45 kPa(25gf/cm2 )〜29.4kPa(300 gf/cm2 )である。このとき、研摩擦動による初動時の衝撃及び繰り返し応力により生じるエッジ剥離を回避できる剪断接着強度は0.98MPa(10kgf/cm2 )以上、即ち、四捨五入して略1MPa以上であることが判った。なお、アクリル系接着両面テープを用いた場合は剪断接着強度が 392kPa(4kg/cm2 )程度であり、この程度の剪断接着強度では研摩擦動による初動時の衝撃及び繰り返し応力に耐えられずにエッジ剥離を発生する。
【0022】
発明に係る試料研磨装置は、保持定盤に粘着層を介して貼着された試料吸着パッドに試料を吸着保持し、該試料の表面を研磨パッドに摺接させて研磨する試料研磨装置において、前記粘着層の外周縁をシーリング層で覆ってあることを特徴とする。
【0023】
発明にあっては、試料保持パッドと保持定盤とを固定している粘着層の外周縁をシーリング層で覆っている。耐湿性のシーリング材を粘着層の外周縁に例えば塗布することにより形成されたシーリング層により、粘着層が洗浄液又は研磨スラリから遮断され、粘着層の変質及び膨潤を防止できる。その結果、試料研磨の均一性が向上する。
【0024】
発明に係る試料研磨装置は、前記シーリング層は弾性型シーリング材で形成されていることを特徴とする。
【0025】
発明にあっては、弾性型のシーリング材を用いて粘着層の外周縁を覆っているので、研摩擦動時に粘着層が受ける押圧衝撃の影響を緩和する。ここで弾性型シーリング材は、1成分系ではシリコーン系,変性シリコーン系,ポリサルファイド系,ポリウレタン系,アクリル系,ブチルゴム系,スチレンブタジエンゴム系などであり、2成分系ではシリコーン系,変性シリコーン系,ポリサルファイド系,ポリウレタン系,エポキシ系などである。特に、試料保持パッド及び保持定盤への接着性及び耐湿性の点から、1成分若しくは2成分のシリコーン系又は2成分のポリサルファイド系が好ましい。
【0026】
発明に係る試料研磨装置は、前記保持定盤の前記粘着層との被着面、及び/又は、前記試料吸着パッドの前記粘着層との被着面は粗面加工を施してあり、平均粗さが0.5μm〜5.0μmであることを特徴とする。
【0027】
発明にあっては、保持定盤及び試料吸着パッド夫々の粘着層との被着面に粗面加工を施してある。被着面の粗面化により粘着層とのぬれ性が向上してアンカー効果が生じ、またスケールが除去されて粘着性が向上するので試料吸着パッドのエッジ剥離がさらに防止される。被着面の粗さは平均粗さが0.5 μm〜5.0μmが好ましい。平均粗さが0.5 μmよりも小さい場合は主に粘着層とのぬれ性が不十分となり、剪断接着強度が低下する虞がある。また、平均粗さが5.0 μmを超えた場合は粗面の凹部に空気が入り込み、空隙を生じてぬれ性が低下する。また空隙が応力集中の原因となり、剪断接着強度が低下する虞がある。
【0028】
発明に係る試料研磨装置は、前記粘着層は、酸性又はアルカリ性の研磨スラリに曝されても貼着された試料吸着パッドのエッジ剥離を防止できる材質であることを特徴とする。
発明に係る試料研磨方法は、上述のいずれか一つに記載の試料研磨装置を用いて試料を研磨する試料研磨方法であって、試料吸着パッドに試料を吸着させる過程と、該試料を研磨パッドに摺接させて研磨する過程とを有することを特徴とする。
本発明に係る研磨パッドは、試料を研磨する研磨パッドにおいて、保持定盤に外周縁をシーリング層で覆ってある粘着層を介して貼着された試料吸着パッドに試料が吸着保持されており、該試料の表面を摺接により研磨することを特徴とする。
【0029】
発明にあっては、酸性又はアルカリ性の研磨スラリを供給しつつ試料を研磨する際に、試料保持パッドと保持定盤とを接着しているゴム系粘着材が研磨スラリによる変性を生じないので、試料保持パッドのエッジ剥離が起こらない。また、シーリング層により試料保持パッドと保持定盤との接着層が研磨スラリと非接触になるので粘着層が膨潤せず、試料保持パッドのエッジ剥離が生じない。その結果、試料研磨の均一性が向上する。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。
図1は本発明に係る試料研磨装置の要部の構成を示す模式図である。図に示すように、試料研磨装置はその上面に研磨パッド1を全面に亘って被着させた大径厚肉円板状のプラテン2と、該プラテン2にその下面を対向せしめ、研磨対象となる半導体基板等の試料Wを該下面に保持する小径厚肉円板状のチャックベース(保持定盤)3とを備えて構成されている。チャックベース3は例えばアルミニウム合金又はステンレス鋼で形成されている。前記プラテン2及び前記チャックベース3は、夫々の対向面と直交する各別の支軸2a,3aにより同軸的に支持され、これらの支軸2a,3aの軸回りに回転駆動するようになしてある。また、プラテン2のチャックベース3と同側には、その下面をプラテン2に対向せしめ、所定間隔で研磨パッドのin-situ ドレスを行なうダイヤモンド電着リング7が配されている。チャックベース3と電着リング7との間にはプラテン2に臨ませてノズル8が配されており、該ノズル8からは研磨スラリがプラテン2上に供給されるようになっている。
【0031】
図2は図1の試料研磨装置の試料保持機構の構成を示す拡大断面図である。図2に示すように、チャックベース3は、プラテン2上での水平方向及び垂直方向の位置決めを行なうヘッド5に連結されている。またチャックベース3の略中心には軸方向に沿う吸引路3bが形成されており、該吸引路3bは図示しないポンプに連結されて試料Wを後述するチャック4に真空吸引するようになっている。チャックベース3の下面3cには、その全面に亘って樹脂製のチャック(試料吸着パッド)4がゴム系接着両面テープ(粘着層)10で接着固定されている。ゴム系接着両面テープ10は1.96MPa(20kgf/cm2 )の剪断接着強度を有している。ゴム系接着両面テープ10の外周縁及びそれに連なるチャックベース3及びチャック4の外周面の一部はシーリング層11で覆われ、ゴム系接着両面テープ10の外部との接触が遮断されている。なお、チャック4は前述した如く試料Wの吸着面にピンホール又は溝が形成されていても良い。
【0032】
チャック4の下面には、試料Wの飛び出し防止及び試料周縁部の過研磨防止のための環状のリテーナ6が設けられており、該リテーナ6はチャック4の下面に吸着固定された試料Wの外側面から周縁部を覆っている。なおチャック4は上述した如く樹脂で形成されているので、ピンホール,溝などを形成する加工性に富む。また、チャック4は軟性材であるのでウエハなどの試料Wのうねりに対応して研磨均一性を向上させ、また研磨時の試料損傷を防止する。またリテーナ6は、前記研磨スラリに対する耐薬品性,耐膨潤性、並びに研磨パッド1及び研磨砥粒による耐摩耗性が要求されるためにセラミックまたはテフロン(登録商標)などの特殊樹脂で形成されている。
【0033】
以下に本発明の特徴となるチャックベース3及びチャック4の接着部分について詳述する。
チャックベース3及びチャック4はゴム系接着両面テープ10により接着されている。ゴム系接着両面テープ10は0.1mm程度の厚みを有しており、図中破線で示す25μm程度の合成樹脂製の基材10aとその両面に熱圧着固定されたゴム系粘着材とで構成されている。ここでゴム系粘着材とは、クロロプレンゴム,ニトリルブタジエンゴム,アクリルゴム,スチレンブタジエンゴム,スチレンイソプレンスチレン,スチレンブタジエンスチレン,スチレンエチレンブタジエンスチレン,ブチルゴム,ポリイソブチレンゴム,天然ゴム,ポリイソプレンゴムなどの粘着ゴムの一又は複数に、フェノール系樹脂,変性フェノール樹脂,ケトン樹脂,アルキッド樹脂,ロジン系樹脂,クマロン樹脂,スチレン系樹脂,石油樹脂,塩化ビニル系樹脂などの粘着付与材の一又は複数を配合したものである。このゴム系粘着材は、酸性又はアルカリ性の薬液中で加水分解をほとんど発生せず、粘着寿命が長いことが特徴である。
【0034】
また接着両面テープ10の基材10aには、ポリエステル,ポリエチレン,ポリ塩化ビニル,不織布などが用いられ、特に、吸湿性が小さなポリエステル系の合成樹脂が好ましい。また、基材10aは単一層に限らず、2層以上の多層ラミネート構造を有していても良い。
【0035】
ゴム系接着両面テープ10が貼付されるチャックベース3の下面3c及びチャック4の上面4aは粗面加工が施されている。粗面加工は次の手順で行なわれる。上述した如きアルミニウム合金製又はステンレス鋼製のチャックベース3については、その下面3cを研磨紙で光沢が無くなるまで粗し、トリクロルエチレンで十分に洗浄し、乾燥させる。一方、樹脂製のチャック4については、ゴム系接着両面テープ10を被着すべき上面4aを、メチルアルコールを湿らせた清浄な綿布で3回ほど拭き取り、完全に乾燥させる。その後、研磨紙で上面4aを表面光沢が無くなるまで粗し、上面4aに残った粒子をメチルアルコールで拭き取り乾燥させる。
【0036】
なお、チャックベース3の下面3c及びチャック4の上面4aの平均粗さRaは0.5μm〜5.0μmが好ましい。平均粗さRaが0.5 μmよりも小さい場合は粘着層とのぬれ性が不十分となり、剪断接着強度が低下する虞がある。また、平均粗さRaが5.0 μmを超えた場合は粗面の凹部に空気が入り込み、空隙を生じてぬれ性が低下する。また空隙が集中応力の原因となり、剪断接着強度が低下する虞がある。
【0037】
このように粗面加工が施されたチャックベース3及びチャック4をゴム系接着両面テープ10で固定する手順は、まず、チャック4の上面4aにゴム系接着両面テープ10の一面を気泡が入らないように貼り付ける。次に、ゴム系接着両面テープ10が貼付されたチャック4をチャックベース3の下面3cに圧着する。圧着後はハンドプレス等により室温で養生させる。これにより、粗面加工された下面3cの凹凸部分にゴム系接着両面テープ10の粘着材が流入し、剪断接着強度が安定する。
【0038】
上述した如く、チャックベース3及びチャック4の接着部分は、ゴム系接着両面テープ10の外周縁がシーリング層11で覆われている。このシーリング層11は耐湿性のシーリング材で形成されており、ヘラなどを用いて前記接着部分の外周面に形成される。このとき、ゴム系接着両面テープ10の外周縁を含んでチャックベース3及びチャック4の外周面にかかる領域にシーリング材を均一に塗布する。チャック4の下面には付着しないようにする。チャックベース3及びチャック4の材質が異なる場合に1種類のシーリング材でシーリング層11を形成するときは、適切な中間層又は下塗剤を選定し、これを予め塗布しておくことが好ましい。シーリング材の塗布後は室温で養生を行なう。
【0039】
シーリング材は弾性型と非弾性型とに分類されるが、本発明のシーリング層11として弾性型シーリング材を使用することにより、研摩擦動時の押圧衝撃の影響を緩和できる。弾性型のシーリング材は1成分系ではシリコーン系,変性シリコーン系,ポリサルファイド系,ポリウレタン系,アクリル系,ブチルゴム系,スチレンブタジエンゴム系などであり、2成分系ではシリコーン系,変性シリコーン系,ポリサルファイド系,ポリウレタン系,エポキシ系などである。特に、チャック4及びチャックベース3への接着性及び耐湿性の点から、1成分若しくは2成分のシリコーン系又は2成分のポリサルファイド系が好ましい。また、非弾性型のシーリング材として、ガラスパテ,油性コーキング材,アスファルト系シーリング材などの高硬度シーリング材が用いられる。
【0040】
以上の如き試料研磨装置による研磨は、ゴム系接着両面テープ10を介してチャックベース3に接着固定されているチャック4に試料Wを吸引保持し、前記チャックベース3と研磨パッド1が貼着されたプラテン2とを夫々の支軸3a,2a回りに回転させつつ、いずれか一方又は両方の昇降により接近させて、前記試料Wの下面(研磨面)を研磨パッド1の表面に押し付け、プラテン2の上部中央に臨ませたノズル8から供給される研磨スラリを介してこれらを摺接させて行なわれる。
【0041】
上述した試料研磨装置にあっては、チャックベース3とチャック4とがゴム系接着両面テープ10により接着固定されているので、接着部分が酸性又はアルカリ性の研磨スラリに曝されても加水分解をほとんど発生せず、チャック4の剥離を防止できる。その結果、試料Wの研磨均一性が向上する。また、前記接着部分の外周をシーリング層11で覆っているので接着部分が研磨スラリと接触せず、チャック4の剥離をさらに防止できる。さらに、ゴム系接着両面テープ10を被着させるチャックベース3の下面3c及びチャック4の上面4aを粗面加工しているので、粘着層とのぬれ性が向上してアンカー効果が生じ、またスケールが除去されて粘着性が向上し、試料吸着パッドのエッジ剥離をさらに防止できる。
【0042】
なお、上述した実施の形態では粘着層としてゴム系接着両面テープ10を用いた場合を説明しているが、ゴム系粘着材を使用していれば接着両面テープには限らず、基材がなく粘着材のみで構成される粘着テープ、所謂基材レス貼着テープを用いても良い。但し、この基材レス粘着テープは貼付時のハンドリングが比較的困難であり、チャック4の貼り替え時に粘着材が局所的に残り易いので、粘着層としては基材を有する接着両面テープが好ましい。また、ゴム系片面テープとゴム系粘着剤とを用いてチャック4とチャックベース3とを接着しても良いし、上述したような合成樹脂製の基材とゴム系粘着材とを個別に用いて接着しても良い。
【0043】
【実施例】
実施例1〜3.
上述した試料研磨装置を用いて、6インチシリコン熱酸化膜シートウエハ(2μmSiO2 /Si)と、スパッタで作製された6インチCu膜シートウエハ(2μmCu/0.3μmTaN/0.1μmSiO2 /Si)とを用いて、各100バッチの連続研磨試験を行ない、両ウエハの研磨均一性とチャック4のエッジ剥離量とを測定した。200バッチの結果を平均して表1に示した。チャック4の接着には、テープ厚みが0.11mm(ポリエステル基材の厚み25μm),剪断接着強度が1.96MPa(20kgf/cm2 )のゴム系接着両面テープ10を用い、チャック4の圧着後24時間の室温養生を行なった。またシーリング層11として、市販の非弾性型シーリング材の油性コーキング剤を均一塗布し、24時間の室温養生を行なった。
【0044】
Figure 0003992092
【0045】
以上の構成部具を使用し、研磨条件は研磨時間が2分,研磨圧力は29.4kPa(300 gf/cm2 )であり、研磨後のウエハに純水スクラブ洗浄を行い、窒素ガス乾燥した。なお、表中の「粗加工」とはチャック4及びチャックベース3の接着両面テープ被着面に粗面加工を施しているか否かを示している。
【0046】
実施例2,3として、異なる剪断接着強度のゴム系接着両面テープ10を用いて実施例1と同様の測定を行なった。実施例2は剪断接着強度が0.784MPa(8kgf/cm2 ),実施例3は剪断接着強度が0.98MPa(10kgf/cm2 )である。その他の構成及び研磨条件は実施例1と同様である。これらの結果も表1に合わせて示す。なお、アクリル系接着両面テープを用いてチャックベースとチャックとを接着した従来例についても同様に測定した。アクリル系接着両面テープのテープの厚みは0.125mm(ポリエステル基材の厚み25μm),剪断接着強度が0.784MPa(8kgf/cm2 )(従来例1),1.176MPa(12kgf/cm2 )(従来例2)である。従来例はシーリング層は形成されておらず、またチャックベース及びチャックのテープ被着面の粗面加工も施していない。これら従来例1,2の結果についても表1に示した。
【0047】
なお「均一性」は、研磨後の膜厚をウエハの周縁から5mmのエッジ部分を除く全面に亘って140 点(2mmピッチ)において測定し、これらの測定値の平均及び標準偏差を求め、前者に対する後者の比率をパーセント表示(均一性σ=(標準偏差/平均)×100)したものである。一般に均一性σは5%程度が目安である。また「判定」の欄は、研磨均一性(%)に基づいて4段階評価とした。
【0048】
【表1】
Figure 0003992092
【0049】
表1から明らかなように、従来例1,2と比較して、実施例1〜3はチャックの剥離量が1.2mm,2.3mm,1.3mmと小さく、ウエハの研磨均一性も6.9%,8.1%,7.0%と高いことが判る。また、テープの剪断接着強度が0.98MPa以上である実施例1及び実施例3は、研磨均一性が特に優れていた。実施例2は判定が‘△’であるが、研磨均一性の8.1 %は実用可能なレベルである。
【0050】
実施例4.
シーリング層に弾性型シーリング材を用い、他の構成は実施例1と同様の試料研磨装置を用いて、実施例1と同様の測定を行なった。結果を表2に示す。表2から明らかなように、チャックの剥離量が0mmであり、ウエハの研磨均一性も5.1%であり、高い均一性を示した。
【0051】
【表2】
Figure 0003992092
【0052】
実施例5〜10.
チャックベース及びチャックのテープ被着面の表面粗さを変え、他の構成は実施例1と同様の試料研磨装置を用いて、実施例1と同様の測定を行なった。平均粗さ(Ra)が0.3μm(実施例5),0.5μm(実施例6),1.0μm(実施例7),4.0μm(実施例8),5.0μm(実施例9)及び7.0μm(実施例10)になるように夫々粗面加工した。結果を表3に示す。
【0053】
【表3】
Figure 0003992092
【0054】
表3から明らかなように、実施例5〜10はいずれもチャックの剥離量が少なく、ウエハの研磨均一性が高いことが判る。また、チャックベース及びチャックのテープ被着面の平均粗さ(Ra)が0.5μm〜5.0μmである実施例7〜実施例9は、チャック剥離量が0mmであり、研磨均一性も5.0%,5.1%,5.2%,5.2%と特に優れていた。
【0055】
以上、実施例1〜10の研磨均一性の測定結果より、ゴム系接着テープは0.98MPa(10kgf/cm2 )以上、即ち、略1MPa以上の剪断接着強度を有するものが好ましいことが判った。また、本発明の実施の形態の試料研磨装置における上述した効果を確認できた。なお、ゴム系接着テープの剪断接着強度の上限は、接着テープの貼り変えが可能な値までである。
【0056】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、アクリル系接着材と比較して耐薬品性,耐膨潤性,耐温度性,粘着性及び剥離強度に優れるゴム系粘着材を用いて試料保持パッドを保持定盤に接着固定しているので、この接着部分が酸性又はアルカリ性の研磨スラリ及び洗浄液に曝されても試料保持パッドのエッジ剥離が生じず、試料研磨の均一性が向上する。また、耐湿性のシーリング材で粘着層の外周縁を覆っているので、粘着層が洗浄液又は研磨スラリから遮断され、粘着層の変質及び膨潤を防止して試料研磨の均一性が向上するなど、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る試料研磨装置の要部の構成を示す模式図である。
【図2】図1の試料研磨装置の試料保持機構の構成を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
2 研磨パッド
3 チャックベース(保持定盤)
4 チャック(試料吸着パッド)
10 ゴム系接着両面テープ(粘着層)
10a 基材
11 シーリング層
W 試料

Claims (9)

  1. 保持定盤に粘着層を介して貼着された試料吸着パッドに試料を吸着保持し、該試料の表面を研磨パッドに摺接させて研磨する試料研磨装置において、前記粘着層としてゴム系粘着材を用いてあり、
    前記ゴム系粘着材の外周縁をシーリング層で覆ってあることを特徴とする試料研磨装置。
  2. 前記ゴム系粘着材は接着両面テープである請求項1記載の試料研磨装置。
  3. 前記ゴム系粘着材は剪断接着強度が略1MPa以上を有する請求項1または2に記載の試料研磨装置。
  4. 保持定盤に粘着層を介して貼着された試料吸着パッドに試料を吸着保持し、該試料の表面を研磨パッドに摺接させて研磨する試料研磨装置において、前記粘着層の外周縁をシーリング層で覆ってあることを特徴とする試料研磨装置。
  5. 前記シーリング層は弾性型シーリング材で形成されている請求項2乃至のいずれか一つに記載の試料研磨装置。
  6. 前記保持定盤の前記粘着層との被着面、及び/又は、前記試料吸着パッドの前記粘着層との被着面は粗面加工を施してあり、平均粗さが0.5μm〜5.0μmである請求項1乃至のいずれか一つに記載の試料研磨装置。
  7. 記粘着層は、酸性又はアルカリ性の研磨スラリに曝されても貼着された試料吸着パッドのエッジ剥離を防止できる材質であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一つに記載の試料研磨装置。
  8. 請求項1乃至のいずれか一つに記載の試料研磨装置を用いて試料を研磨する試料研磨方法であって、
    試料吸着パッドに試料を吸着させる過程と、
    該試料を研磨パッドに摺接させて研磨する過程と
    を有することを特徴とする試料研磨方法。
  9. 試料を研磨する研磨パッドにおいて、
    保持定盤に外周縁をシーリング層で覆ってある粘着層を介して貼着された試料吸着パッドに試料が吸着保持されており、該試料の表面を摺接により研磨することを特徴とする研磨パッド。
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