JP3991721B2 - ステンシルマスク及びそのパターン転写方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子線やイオンビームなどの荷電粒子線露光に用いられるステンシルマスク及びパターン転写方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、半導体素子の微細化が急速に進んでいる。そのような微細パターンを有する素子の製造技術として、様々な露光技術が開発されてきた。例えば、電子線部分一括露光や電子線ステッパー露光のような電子線を用いる露光法、イオンを用いる露光法、真空紫外域の光を用いる露光法、極紫外域の光を用いる露光法等がある。
【0003】
これらのうち、電子線を用いる露光法として、電子線を用いて等倍露光を行う方法が、特許第2951947号公報において提案されている。この方法は、従来の電子線を用いる露光法に比べ、加速電圧が20分の1程度であるという特徴を有する。
【0004】
また、この露光法は、転写パターンを有するマスクと、パターンを転写されるレジストを塗ったウェハとの距離が約50μmという特徴がある。
【0005】
このようにパターン転写時にマスクとウェハとが近接している場合は、ウェハから生じる異物が付着することによってマスクが汚れやすく、その結果マスクの寿命が著しく短くなってしまうという問題点がある。
【0006】
異物付着の原理は、電子線を用いたパターン転写において、マスクに付着する異物は主にレジスト由来のものだということが知られている。パターンを転写されるウェハ上のレジストに電子線があたると一部の分子がスパッタされ、あるいは熱的に蒸発し、極微粒子となって、真空雰囲気中のチャンバー内に飛散する。この前記極微粒子が特定の場所、例えばマスクの開口部等に付着することによって、マスクの汚染が起こる。我々はマスクの電子線が照射される部分に異物がより多く付着することを突き止めた。
【0007】
また、透過孔パターンは、基体側からマスク母体側へ荷電粒子線を透過させ、該透過孔パターンの開口で荷電粒子線の光束を形成して、ウエハ上のレジストに転写するものであり、前記開口は設計値に対して精度良く形成されていなければならない。上記転写時は、電子線が照射される方向、すなわち、電子線が入射する側のマスク母体の表面、及び透過孔パターンの開口の側壁(テーパー面)に電子線が直接に照射されるため、チャージアップや、テーパー面での反射のために、転写時間の累積と共に前記開口の寸法精度や、形状に変化が起きて、転写パターンの精度が維持できないことによる問題も発生している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、電子線を用いて等倍露光を行う場合に、従来と比べパターン転写時の異物の付着の影響が少なく、より長寿命のステンシルマスクを提供と、又転写精度の良い転写方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1記載に係る発明は、開口部を設けた基体と、この基体の片側に、基体より支持されたマスク母体を具備し、該マスク母体に開口部を形成してなる近接露光に用いるステンシルマスクにおいて、前記基体側からマスク母体側へ荷電粒子線が透過する前記マスク母体の開口部に、テーパー角が90°より小さい透過孔パターンを有し、該テーパー角は荷電粒子線の入射方向へ広がることを特徴とするステンシルマスクである。
【0010】
本発明の請求項2記載に係る発明は、前記透過孔パターンのテーパー角が、87°〜90°であることを特徴とする請求項1記載のステンシルマスクである。
【0011】
本発明の請求項3記載に係る発明は、前記マスク母体の厚みが、0.1〜2μmであることを特徴とする請求項1、又は請求項2記載のステンシルマスク。
である。
【0012】
本発明の請求項4記載に係る発明は、被加工層を表面に形成した基板上の全面に、レジスト層を設けた後、マスクを介して荷電粒子線を照射し、該レジスト層にパターンを転写する方法において、請求項1、乃至請求項3のいずれか1項記載のステンシルマスクを介して、荷電粒子線を照射し、レジスト層にパターンを転写することを特徴とするパターン転写方法である。
【0013】
【作用】
本発明のステンシルマスク1は、より異物の付着の影響が小さいマスクであり、ウェハ側の透過孔パターン3の開口が設計値よりも大きくなっており、電子線が入射する側において設計値通りの開口10になっている。これより、図1に示すように、転写されるパターンは電子線が入射する側の開口10によって規定され、透過孔パターン3の開口に異物9が付着してもパターン転写に対する影響は小さい。
【0014】
逆に、従来の技術のステンシルマスク1は、より異物の付着の影響が大きいマスクであり、ウェハ側の透過孔パターン3の開口が設計値通りの開口10なっており、電子線が入射する側において設計値よりも大きくなっている。これより図4に示すように、転写される電子線の光束はウェハ側の開口10によって規定され、透過孔パターン3の開口に異物が付着するとパターン転写に対する影響は大きく、異物9が付着することにより電子線の光束を規定する部分の開口10が容易に狭まってしまう。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の一態様に係るステンシルマスクについて説明する。
【0016】
図2は、本発明の一態様に係るステンシルマスクを示す断面図である。図2において、ステンシルマスク1は、枠型基体2上に、90°より小さいテーパー角の所定の透過孔パターン3を有するマスク母体4を形成することにより構成されている。
【0017】
枠型基体2の材料としては単結晶Si、SiC、Ge、GaAsなどの化合物半導体を含む半導体、Au、Cu等の合金を含む金属、石英等の絶縁体のいずれでも構わないが、好ましくは堅牢で熱膨張によるマスクの変形を抑えるために熱膨張係数の小さなものが良い。
【0018】
マスク母体4の材料としては、Si、C、SiC、酸化珪素、窒化珪素、Cr、Ta、W、Auなどが挙げられるがこの限りではない。
【0019】
透過孔パターン3は90°より小さなテーパー角を有する。透過孔パターン3のテーパー角は、ドライエッチングの条件や、透過孔パターンの開口サイズに依存するため、所望のパターンの開口サイズにおいて90°より小さなテーパー角になるようなドライエッチングの条件をあらかじめ知っておく必要がある。具体的には、ドライエッチング時の基板温度、使用ガス、ガス圧力、高周波印加出力等の条件を変えることにより所望のテーパー角を実現できる。
【0020】
また、透過孔パターン3は、枠型基体側からマスク母体側へ電子線を透過させ、該透過孔パターンの開口で電子線の光束を形成して、ウエハ上のレジストに転写するもので、前記開口は設計値に対して精度良く形成されていなければならない。上記転写時は、電子線が照射される方向、すなわち、電子線が入射する側のマスク母体の表面、及び透過孔パターンの開口の側壁(テーパー面)に電子線が照射されるため、前記テーパー面のチャージアップや、反射を防止するために、前記テーパー角を90°より小さい角度で形成した。
【0021】
前記透過孔パターンのテーパー角が87°より小さい角度では、形成する透過孔パターンを微細化する場合に、例えば透過孔パターンの寸法幅が100nmレベルでは、密集して形成した場合隣り合う透過孔パターンが干渉する問題がある。又別の問題として、テーパー角が87°より小さい角度では、形成する透過孔パターンの開口の寸法精度が不安定となり、基板温度、使用ガス、ガス圧力、高周波印加出力等の条件維持が困難となる場合がある。本発明では透過孔パターンのテーパー角が87°〜90°の範囲に制限した。
【0022】
マスク母体4の膜厚が2μm以上の場合は、透過孔パターンの加工精度が悪くなる上、微細パターンを密集して形成した場合隣り合う透過孔パターンが干渉する恐れがある。逆に、前記膜厚が0.1μm以下の場合は、十分に電子線を遮蔽することができなくなる上、機械的強度が弱くなるという問題もある。本発明ではマスク母体4の膜厚が2μm〜0.1μmの範囲に制限した。
【0023】
次に、被加工層を表面に形成した基板上の全面に、レジスト層を設けた後、マスクを介して荷電粒子線を照射し、前記レジスト層の表面に、本発明のステンシルマスクを介して、荷電粒子線を照射し、レジスト層にパターンを転写するパターン転写方法である。前記パターン転写方法は前述の等倍露光方式に準じて行う方法が一般的に採用されている。
【0024】
【実施例】
以下に、具体的な実施例により本発明を説明する。尚、本発明は後述する実施例に何ら限定されるものではない。
【0025】
<実施例1>
以下に、図3を用いて、本実施例におけるステンシルマスクの作製手順を示す。
【0026】
マスク母体、及び基体として市販のSOI(Silicon On Insurator)基板5を用いた。SOI基板5は一般的に、単結晶シリコンからなる支持基板6上に順に、酸化珪素からなる中間酸化膜層7、単結晶シリコンからなる活性層8を積層した構造になっている。本実施例では、活性層8をマスク母体として、支持基板6を基体として用いた。尚、本実施例で用いたSOI基板5において、支持基板6、中間酸化膜層7、活性層8の厚みはそれぞれ順に、525μm、0.5μm、0.5μmであった(図3(a))。
【0027】
次に、LPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)装置を用いて、SOI基板5全面にシリコン窒化膜からなる保護膜(図示せず)を形成した後、レジストをマスクとして、プラズマエッチング装置を用い、エッチャントとしてCF4を用い、シリコン窒化膜をドライエッチングして、支持基板6上に開口部形成領域上の保護膜を開口除去した。
【0028】
次いで、約90℃に加熱したKOH水溶液のエッチング液に浸漬し、保護膜をマスクとして、前記開口部形成領域をエッチングすることにより支持基板6に開口部を形成し、基体2が出来上がった。次に、前記SOI基板5全面にシリコン窒化膜からなる保護膜を約170℃の熱リン酸でエッチング除去した。その後、前記枠型基体2の開口部をマスクとして、緩衝フッ酸のエッチング液に浸漬し、不必要な部分の中間酸化膜層7を除去した(図3−(b))。
【0029】
この後、活性層8上に電子線レジストを0.5μmの厚さに塗布し、これに加速電圧50kVの電子線描画機を用いて描画し、その後現像を行いレジストパターン(図示せず)を形成した。
【0030】
そのレジストパターンをマスクとして用いて、プラズマエッチング装置を用い、エッチャントとしてSiCl4/N2混合ガスを用いて、活性層8をドライエッチングして透過孔パターン3の開口を形成した。
【0031】
酸素プラズマ装置を用いて、最後に残ったレジストをアッシング除去して、次に、基体2によって支持されたマスク母体4に透過孔パターン3の開口を形成してなる転写マスク1を得た(図3−(c))。
【0032】
得られた転写マスクの透過孔パターン3のテーパー角を調べたところ、いずれの開口部も88.0°から89.5°の範囲にあることが確認できた。
【0033】
本発明の効果を調べるために、本発明の方法で得られたマスク(以下マスクAとする)、及び従来の90°以上のテーパー角を有するマスク(以下マスクBとする)を用いて、幅100nmのパターンを転写する実験を行った。マスクA、及びマスクBの幅100nmの開口におけるテーパー角はそれぞれ、88.3°、90.5°であった。
【0034】
パターン転写を繰り返すとマスクに異物が付着し、徐々にマスクの透過孔パターン3の開口が狭まる。これにより、転写されるレジストパターンの寸法が徐々に設計値より小さくなる。
【0035】
そこでマスクA、Bそれぞれについて繰り返し転写を行い、転写されたレジストパターンの幅が95nm以下になった時点での積算照射時間を比較したところ、マスクAの方がマスクBよりも10倍以上長かった。これより、マスクAがマスクBに比べより長寿命であることが確認できた。
【0036】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように本発明によれば、従来と比べ、パターン転写時の異物の付着の影響が少なく、より長寿命のステンシルマスクを提供できる。更に、本発明のパターン転写方法によると、基板上に形成されたレジストに対し、精度良くパターン転写が可能となり、更に長寿命のステンシルマスクため、電子線の照射が長期間可能となり、その結果、高能率で、高歩留の半導体の製造が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のステンシルマスクに付着する異物の影響を説明する側断面図。
【図2】本発明の一態様に係るステンシルマスクを示す側断面図。
【図3】(a)〜(b)は、本発明の一態様に係るステンシルマスクの製造プロセスを示す側断面図。
【図4】従来のステンシルマスクに付着する異物の影響を説明する側断面図。
【符号の説明】
1…ステンシルマスク
2…枠型基体
3…透過孔パターン
4…マスク母体
5…SOI基板
6…(SOI基板の)支持基板
7…(SOI基板の)中間酸化膜
8…(SOI基板の)活性層
9…(付着した)異物
10…開口部
Claims (4)
- 開口部を設けた基体と、
この基体の片側に、基体より支持されたマスク母体を具備し、
該マスク母体に開口部を形成してなる近接露光に用いるステンシルマスクにおいて、
前記基体側からマスク母体側へ荷電粒子線が透過する前記マスク母体の開口部に、
テーパー角が90°より小さい透過孔パターンを有し、
該テーパー角は荷電粒子線の入射方向へ広がること
を特徴とするステンシルマスク。 - 前記透過孔パターンのテーパー角が、87°〜90°であることを特徴とする請求項1記載のステンシルマスク。
- 前記マスク母体の厚みが、0.1〜2μmであることを特徴とする請求項1、又は請求項2記載のステンシルマスク。
- 被加工層を表面に形成した基板上の全面に、レジスト層を設けた後、マスクを介して荷電粒子線を照射し、該レジスト層にパターンを転写する方法において、請求項1、乃至請求項3のいずれか1項記載のステンシルマスクを介して、荷電粒子線を照射し、レジスト層にパターンを転写することを特徴とするパターン転写方法。
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