JP3991463B2 - シート搬送装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に備えられるシート搬送装置に関し、詳しくは、積層されたシートを1枚ずつ分離して、搬送するためのシート搬送装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に備えられるシート供給装置としては、たとえば、図10に示すように、搬送ローラ1と、この搬送ローラ1に対向する分離パッド3とを備えて、積層されたシート2を1枚ずつ分離して搬送するもの等がよく知られている。図10において、分離パッド3は、分離パッドホルダ4のシート受け部5に形成された凹部に埋設されており、分離パッドホルダ4は、位置固定されたストッパ6と、分離パッドホルダ4のシート受け部5の下面との間に介挿されるばね7により、搬送ローラ1に向かって付勢されている。一方、搬送ローラ1は、シート2に接触して該シート2を搬送する円周面8と、円周面8が欠除されることによって形成される欠除面9とをもつ、断面概略D字形状の弾性体から構成されている。また、この搬送ローラ1の両側には、2つのころ10が回転可能に取付けられている。この2つのころ10は、円周面8の外径より小径として形成され、円周面8でのシート2の搬送時には、シート2には当接しないようにする一方、円周面8でのシート2の搬送が終了して、欠除面9がシート2および分離パッド3に対向したときには、2つのころ10の外周面をシート2に当接させることにより、分離パッド3の付勢力に抗して、欠除面9とシート2および分離パッド3との間に間隙を形成して、欠除面9がシート2に接触しないようにしている。
【0003】
そして、シート2の搬送時には、図10に示すように、搬送ローラ1の駆動によって円周面8でシート2を搬送し、円周面8におけるシート2の搬送が終了した後は、搬送ローラ1の上流側に位置する案内ローラ12および13によりシート2が搬送される。搬送ローラ1は、図には示さないが、1枚のシート2を送るごとに、欠除面9が2つのころ10によりシート2と所定の間隔を隔てて対向する位置でその駆動が停止されるようにする一方、案内ローラ12および13により搬送されるシート2上には、2つのころ10が回転しながら当接されるようにして、シート2が1枚ずつ搬送されるようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようにしてシート2を搬送する場合、2つのころ10の外径が、搬送ローラ1の円周面8の外径よりも小径に形成されているので、2つのころ10に接触していたシート2および分離パッド3が、搬送ローラ1の円周面8に接触する時、および、搬送ローラ1の円周面8に接触していたシート2および分離パッド3が、2つのころ10に接触する時には、円周面8の外径と2つのころ10の外径との差の分が段差となって、分離パッド3が若干上下動する。
【0005】
このような場合、段差が大きいと、2つのころ10に接触していたシート2および分離パッド3が搬送ローラ1の円周面8に接触する時には、外周面8がシート2および分離パッド3をその差の分だけ強く押すので、この瞬間に押圧力の変動が大きくなる。そのため、たとえば、薄いシートや軽いシートなどを用いたときには、複数枚のシート2が同時に円周面8と分離パッド3との間に入り込む、いわゆる重送を起こしやすくなる。一方、段差が小さいと、搬送ローラ1の円周面8がシート2および分離パッド3をあまり強く押すことはないが、シート2を搬送するための押圧力が弱いため、たとえば、厚いシートや重いシートなどを用いたときには、シート2を送れない、いわゆる空送を起こしやすくなる。
【0006】
したがって、円周面と欠除面とをもつ搬送ローラによってシートを搬送する構成では、段差が大きければ重送を起こしやすく、一方で、段差が小さければ空送を起こしやすいという相反する性質を有しており、シートの厚さや重さ等の種類を問わずにシートを良好に搬送できるような装置を設計することができず、設計上の自由度が低いという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、円周面と欠除面とをもつ搬送ローラによってシートを搬送する構成において、シートの厚さや重さ等の種類を問わずにシートを良好に搬送できるシート搬送装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、シートに接触して該シートを搬送する円周面、および前記円周面が欠除されることによって形成される欠除面をもつ搬送ローラと、前記搬送ローラと対向し、前記搬送ローラに向かって付勢される分離パッドと、前記搬送ローラの前記欠除面が、前記分離パッドに対向したときに、前記分離パッドに当接し、前記分離パッドの付勢力に抗して、前記欠除面と前記分離パッドとの間に間隙を形成する間隙形成部材とを備える、シート搬送装置において、前記間隙形成部材は、前記搬送ローラのローラ軸の周りに設けられており、前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離が、変更可能とされており、前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離を変更可能とするため、前記間隙形成部材と前記ローラ軸との間に挿脱自在のスペーサをさらに備えていることを特徴としている。
【0009】
このような構成によると、間隙形成部材は、ローラ軸の軸心から間隙形成部材と分離パッドとの当接部までの距離が変更可能とされているので、ローラ軸の軸心から当接部までの距離を長くすることにより、円周面の外径と間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離との差を小さくしたり、あるいは、ローラ軸の軸心から当接部までの距離を短くして、円周面の外径と間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離との差を大きくすることができる。そのため、たとえば、厚いシートや重いシートなどを搬送する場合には、円周面の外径と間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離との差を大きくして、間隙形成部材に接触していたシートおよび分離パッドが、搬送ローラの円周面に接触する時の段差を大きくすることにより、搬送ローラの円周面でシートおよび分離パッドを強く押圧してシートの搬送力を高めて、これら厚いシートや重いシートを空送りすることなく良好に搬送できるようになる。一方、薄いシートや軽いシートなどを搬送する場合には、円周面の外径と間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離との差を小さくして、間隙形成部材に接触していたシートおよび分離パッドが、搬送ローラの円周面に接触する時の段差を小さくすることにより、搬送ローラの円周面がシートおよび分離パッドを強く押圧しないようにして押圧力の変動を抑えることによって、複数枚のシートが同時に円周面と分離パッドとの間に入り込む、いわゆる重送を有効に防止できるようになる。
【0010】
また、このようなスペーサを備えて、スペーサを間隙形成部材とローラ軸との間に挿入することで、簡単に間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を長くでき、一方、スペーサを間隙形成部材とローラ軸との間から外すと、分離パッドからの付勢力が作用するため、簡単に間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を短くすることができる。
また、請求項2に記載の発明は、シートに接触して該シートを搬送する円周面、および前記円周面が欠除されることによって形成される欠除面をもつ搬送ローラと、前記搬送ローラと対向し、前記搬送ローラに向かって付勢される分離パッドと、前記搬送ローラの前記欠除面が、前記分離パッドに対向したときに、前記分離パッドに当接し、前記分離パッドの付勢力に抗して、前記欠除面と前記分離パッドとの間に間隙を形成する間隙形成部材とを備える、シート搬送装置において、前記間隙形成部材は、前記搬送ローラのローラ軸の周りに設けられており、前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離が、変更可能とされており、前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離を変更可能とするため、前記ローラ軸は、外径の大きさがそれぞれ異なり、前記間隙形成部材を支持できる、少なくとも2つの異径軸部分を有していることを特徴としている。
このような構成によると、間隙形成部材は、ローラ軸の軸心から間隙形成部材と分離パッドとの当接部までの距離が変更可能とされているので、ローラ軸の軸心から当接部までの距離を長くすることにより、円周面の外径と間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離との差を小さくしたり、あるいは、ローラ軸の軸心から当接部までの距離を短くして、円周面の外径と間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離との差を大きくすることができる。そのため、たとえば、厚いシートや重いシートなどを搬送する場合には、円周面の外径と間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離との差を大きくして、間隙形成部材に接触していたシートおよび分離パッドが、搬送ローラの円周面に接触する時の段差を大きくすることにより、搬送ローラの円周面でシートおよび分離パッドを強く押圧してシートの搬送力を高めて、これら厚いシートや重いシートを空送りすることなく良好に搬送できるようになる。一方、薄いシートや軽いシートなどを搬送する場合には、円周面の外径と間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離との差を小さくして、間隙形成部材に接触していたシートおよび分離パッドが、搬送ローラの円周面に接触する時の段差を小さくすることにより、搬送ローラの円周面がシートおよび分離パッドを強く押圧しないようにして押圧力の変動を抑えることによって、複数枚のシートが同時に円周面と分離パッドとの間に入り込む、いわゆる重送を有効に防止できるようになる。
また、このような異径軸部分を備えることで、間隙形成部材を各異径軸部分において支持するようにすれば、間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を、各異径軸部分の外径に対応したそれぞれの距離に変更することができる。
【0011】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の発明において、前記異径軸部分は、大径軸部分と小径軸部分とを備え、前記間隙形成部材は、大径軸部分に嵌まり合う大径軸嵌合位置と、小径軸部分に嵌まり合う小径軸嵌合位置とにスライド自在とされていることを特徴としている。このような構成によると、間隙形成部材をスライドさせるのみで、大径軸部分に嵌め込んで間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を長くすることができ、また、小径軸部分に嵌め込んで間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を短くすることができる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項2または3に記載の発明において、前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離を変更可能とするため、前記間隙形成部材と前記ローラ軸との間に挿脱自在のスペーサをさらに備えていることを特徴としている。このようなスペーサを備えて、スペーサを間隙形成部材とローラ軸との間に挿入することで、簡単に間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を長くでき、一方、スペーサを間隙形成部材とローラ軸との間から外すと、分離パッドからの付勢力が作用するため、簡単に間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を短くすることができる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1または4に記載の発明において、前記スペーサは、前記ローラ軸の周りに設けられており、前記間隙形成部材と前記ローラ軸との間に挿入される挿入位置と、前記間隙形成部材と前記ローラ軸との間に挿入されない非挿入位置とにスライド自在とされていることを特徴としている。このような構成にすると、スペーサをスライドさせるのみで、間隙形成部材とローラ軸との間に簡単に挿入することができ、あるいは、間隙形成部材とローラ軸との間から外すことができるので、簡易かつ確実な挿脱操作を確保することができる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の発明において、前記間隙形成部材が、前記搬送ローラの両側に取付けられていることを特徴としている。このような構成によると、円周面でのシートの搬送が終了して、欠除面が分離パッドに対向し、間隙形成部材が分離パッドに当接するときには、搬送ローラの両側に取付けられる間隙形成部材が、分離パッドの付勢力に抗して、欠除面と分離パッドとの間に、確実に間隙を形成することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のシート搬送装置を備える、レーザプリンタの一実施形態を示す要部側断面図である。図1において、レーザプリンタ22のプリンタ本体23の下部には、用紙やOHPなどのシート27を積層状に収納するための、第1カセット25および第2カセット26をそれぞれ収納する第1カセット収納部19および第2カセット収納部20が形成されている。そして、第1カセット収納部19および第2カセット収納部20には、矢印24に示す前後方向にスライド自由となした、第1カセット25および第2カセット26がそれぞれ上下に収納されている。また、プリンタ本体23の上部には、トナー画像を形成してシート27に転写するための画像形成ユニット28と、シート27に転写されたトナーを定着させるための定着ユニット33とを備えている。画像形成ユニット28は、図示しないトナーカートリッジおよび帯電装置等を備え、また、その下部には、感光体ドラム29と、この感光体ドラム29に対設される転写ローラ30とを備えている。また、定着ユニット33は、加熱ローラ31と、この加熱ローラ31に対設する押圧ローラ32とを備えている。
【0014】
そして、各カセット25および26から搬送されるシート27は、画像形成ユニット28における感光体ドラム29と転写ローラ30との間に送られて、トナー画像が転写され、その後、定着ユニット33における加熱ローラ31と押圧ローラ32との間に送られて、転写されたトナー画像が定着され、排出ローラ34から排出トレイ35上に排出される。
【0015】
一方、下部の各収納部19および20に収納される各カセット25および26には、シート27を積層状に受ける受け板40が設けられている。受け板40の後端部は、各カセット25および26の底部近傍において回転可能に支持される一方、前端部は、揺動アーム41によって支持されている。この揺動アーム41の一端は、受け板40の前端部の下面に回転可能に枢支される一方、他端は、各カセット25および26のフレーム下部位置に回転可能に支持されている。また、揺動アーム41におけるフレーム支持側端部には、一端が各カセット25および26のフレーム上部位置に固定される付勢ばね42が固定されている。そして、付勢ばね42により、揺動アーム41が上向きに回転されるように付勢されることによって、受け板40上に積層されるシート27が、後述する搬送ローラ36に向かって付勢されるように構成され、これら受け板40、揺動アーム41および付勢ばね42によりシート付勢手段38が構成されるようにしている。
【0016】
また、各収納部19および20における受け板40の前端部の前方側には、搬送ローラ36と、この搬送ローラ36に対向する分離パッド37とを配設して、各カセット25および26内に積層されたシート27を、画像形成ユニット28側に搬送するようにしている。
【0017】
図2は、搬送ローラの断面図、図3は、図2とは異なる状態にある搬送ローラの断面図、図4ないし図7は、搬送ローラによりシートを搬送する状態を説明する説明図である。以下、これら図2ないし図7を用いて、搬送ローラおよび分離パッドによるシートの搬送を説明する。
【0018】
図2ないし図7に示すように、搬送ローラ36は、摩擦係数の比較的大きいゴムなどの弾性体からなるローラ本体44とローラ軸43とにより構成されている。ローラ本体44は、シート27に接触して該シート27を搬送する円周面45と、円周面45が欠除されることによって形成される欠除面46とを有する断面概略D字形状の筒状をなしている。円周面45は、シート搬送時において、シート27と最初に接触する入口側接触部55と、シート27と最後に接触する出口側接触部56とを有している。搬送ローラ36の両側においては、2つのころ48がローラ軸43の周りに回転可能にそれぞれ設けられている。このころ48は、中空孔64をもつ中空円形体からなり、ローラ軸43と中空孔64との間に、後述するスペーサ67が挿入されるための遊びを保ちながら、ローラ軸43に遊嵌されている。このころ48は、搬送ローラ36の欠除面46が分離パッド37に対向したときに、分離パッド37に当接して欠除面46と分離パッド37との間に間隙を形成するための間隙形成部材として作用する。
【0019】
また、搬送ローラ36と対向する位置には、分離パッド37が配設されている。この分離パッド37は、搬送ローラ36のローラ本体44よりも若干小さい摩擦係数を有する弾性体で構成され、分離パッドホルダ49のシート受け部50の上面に形成された凹部に埋設されている。分離パッドホルダ49は、各収容部19および20において位置固定されたストッパ51と、分離パッドホルダ49のシート受け部50の下面との間に介挿されるばね52により、搬送ローラ36に向かって付勢されており、このばね52と、分離パッドホルダ49およびストッパ51により、分離パッド37を搬送ローラ36に向かって付勢する、分離パッド付勢手段39が構成されている。
【0020】
さらに、搬送ローラ36の下流側近傍には、搬送ローラ36により搬送されるシート27を画像形成ユニット28側へ送るための、2つの案内ローラ53および54が配設されている。搬送ローラ36により送られるシート27は、この2つの案内ローラ53および54の間に入り、案内ローラ53および54の回転駆動により、画像形成ユニット28側へ送られる。
【0021】
このような構成において、本実施形態では、ころ48におけるローラ軸43の軸心からころ48と分離パッド37との当接部、すなわち、ころ48の外周面61までの距離を変更可能とするために、ころ48とローラ軸43との間に挿脱自在のスペーサ67が設けられている。このスペーサ67は、フランジ部68をもつ筒体をなし、2つのころ48の両側において、ローラ軸43に挿入することによって、ローラ軸43の周りにそれぞれ設けられている。このスペーサ67は、ローラ軸43に沿ってスライド自在とされており、2つのスペーサ67をそれぞれ軸方向内方にスライドさせることにより、ころ48の中空孔64の内周面とローラ軸43の外周面との間に挿入され、また、挿入された2つのスペーサ67をそれぞれ軸方向外方にスライドさせることにより、ころ48の中空孔64の内周面とローラ軸43の外周面との間から外されるようにしている。また、スペーサ67には、ころ48とローラ軸43との間に挿入される挿入位置と、ころ48とローラ軸43との間から外された挿入されない非挿入位置との各位置において位置固定するために、フランジ部68をローラ軸43に向かって延長した環状の係止突起69が形成されている。一方、ローラ軸43には、挿入位置において係止突起69を嵌め込むことができる環状の挿入位置固定溝70と、この挿入位置固定溝70の軸方向外方の非挿入位置において係止突起69を嵌め込むことができる環状の非挿入位置固定溝71とをそれぞれ設けている。そして、図2に示すように、スペーサ67をころ48とローラ軸43との間に挿入するとともに、係止突起69を挿入位置固定溝70に嵌め込むことにより、挿入位置においてスペーサ67を位置固定し、また、図3に示すように、スペーサ67をころ48とローラ軸43との間から外すとともに、係止突起69を非挿入位置固定溝71に嵌め込むことにより、非挿入位置においてスペーサ67を位置固定できるようにしている。
【0022】
このように構成された搬送ローラ36、ころ48、スペーサ67および分離パッド37を備えるシート搬送装置21によって、正確かつ確実なシート27の搬送を達成している。以下、図4ないし図7を用いて、このシート搬送装置21によるシート27の搬送について説明する。
【0023】
図4は、シート27が搬送ローラ36に侵入する状態を示す説明図である。図4において、各カセット25および26内に積層されたシート27は、シート付勢手段38により、搬送ローラ36の下方上流側近傍に位置され、搬送ローラ36の回転駆動により、搬送ローラ36と分離パッド37との間に侵入する。
【0024】
侵入したシート27は、円周面45における入口側接触部55に接触する。このとき、つまり、シート27が入口側接触部55に接触する瞬間には、それまで2つのころ48に接触していた分離パッド37が、搬送ローラ36の円周面45に接触することになる。
【0025】
この場合に、たとえば、厚いシートや重いシートなどを搬送するときには、スペーサ67をころ48とローラ軸43との間から外して非挿入位置で位置固定しておく(図3における状態)。そうすると、ころ48の中空孔64の内周面とローラ軸43の外周面との間には、スペーサ67の厚み分の遊びが形成されるが、一方、ころ48は分離パッド37から押圧されているため、ローラ軸43の外周面下側ところ48の中空孔64の内周面が接触して、円周面45の外径とローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離との差が、スペーサ67を挿入した場合に比べて大きくなるので、分離パッド37の接触がころ48から搬送ローラ36に移行する際の段差が大きくなる。その結果、搬送ローラ36の円周面45が分離パッド37を強く押圧するようになるので、シート27の搬送力が高められる。したがって、厚いシートや重いシートでも、空送りすることなく良好に搬送することができる。
【0026】
一方、薄いシートや軽いシートなどを搬送するときには、スペーサ67をころ48とローラ軸43との間に挿入して挿入位置で位置固定しておく(図2における状態)。そうすると、円周面45の外径とローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離との差が、スペーサ67を挿入しない場合に比べて小さくなるので、分離パッド37の接触がころ48から搬送ローラ36に移行する際の段差が小さくなる。その結果、搬送ローラ36の円周面45が分離パッド37を強く押圧するようなことはなく、押圧力の変動によって複数枚のシートが同時に円周面と分離パッドとの間に入り込む、いわゆる重送を有効に防止でき、薄いシートや軽いシートでも良好に搬送することができる。
【0027】
そして、図5に示すように、シート27は、搬送ローラ36の円周面45に接触しながら、下流側の案内ローラ53および54に送られる。
【0028】
図6は、搬送ローラ36からシート27が離れる状態を示す説明図である。図6において、シート27が搬送ローラ36の出口側接触部56から離れる瞬間には、それまで、円周面45に接触していたシート27が、2つのころ48に接触するようになる。
【0029】
この場合に、スペーサ67を非挿入位置において位置固定していると、シート27の接触が搬送ローラ36からころ48に移行する際の段差が大きくなるため、分離パッド37からの押圧力がこの段差に追従できず、瞬間的に搬送されるシート27に押圧力が加わらない状態が発生し、この瞬間に次に送られるシート27が複数枚一緒に伴われて搬送されるという連れ重送を生じやすい状態がもたらされる。しかし、スペーサ67を非挿入位置で位置固定する場合は、主として厚いシートや重いシートを搬送する場合であるため、これら厚いシートや重いシートは容易に伴われることはないため、連れ重送は起こりにくい。
【0030】
一方、薄いシートや軽いシートは連れ重送を起こしやすいが、これら薄いシートや軽いシートを搬送する場合には、スペーサ67を挿入位置において位置固定するため、シート27の接触が搬送ローラ36からころ48に移行する際の段差は小さく、分離パッド37からの押圧力がこの段差に追従できないということは生じにくく、連れ重送は起こりにくい。
【0031】
図7は、搬送ローラ36によるシート搬送が終了し、次のシート搬送を待機している状態を示す説明図である。図7において、搬送ローラ36は、欠除面46が分離パッド37と所定の間隔を隔てて対向するような状態で停止しており、搬送ローラ36により搬送されたシート27は、案内ローラ53および54の回転駆動により、画像形成ユニット28側に搬送される。このとき、分離パッド37によってシート27は押圧されるが、シート27上には、2つのころ48の外周面61が回転しながら接触しているので、シート27と欠除面46との間は、所定の間隔が確実に隔てられ、案内ローラ53および54によって、良好にシート27が送られる。なお、図7において、仮想線48は、スペーサ67を非挿入位置において位置固定したときのころ48の状態を、やや強調して示したものである。
【0032】
以上述べたように、スペーサ67をスライドさせて挿脱するという簡易な操作によって、簡単かつ確実にローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離を変更して、重送あるいは空送を選択的に防止できるので、シートの厚さや重さ等の種類を問わずに良好にシート搬送を行なうことができ、シート搬送の信頼性を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態では、図1に示すように、プリンタ本体23の側方に手差し用のトレイ58が設けられ、この手差し用のトレイ58の先端部近傍にも、搬送ローラ36と分離パッド37とが配設されている。手差しによる場合には、使用者の手作業によってシート27をセットするので、たとえば、シート27の先端が搬送ローラ36で搬送できる位置まで十分に挿入されていない状態を生じることがあり、そのために空送りを生じることがある。このような場合には、スペーサ67をころ48とローラ軸43との間から外して非挿入位置で位置固定して、分離パッド37の接触がころ48から搬送ローラ36に移行する際の段差を大きくしておく。そうすると、搬送ローラ36の円周面45が分離パッド37を強く押圧するようになるので、シート27の搬送力が高められ、手差しによりシート27の先端が搬送ローラ36で搬送できる位置まで十分に挿入されていない場合であっても、空送りを生じにくくでき良好に搬送することができる。
【0034】
また、図8および図9は、他の実施形態を示す搬送ローラの断面図である。図8および図9に示すように、この実施形態では、前述したスペーサ67に代えて、ローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離を変更可能とするために、ローラ軸43に、外径の大きさがそれぞれ異なり、ころ48を支持できる少なくとも2つの異径軸部分を設けている。この異径軸部分は、ローラ本体44の両側に設けられており、ローラ本体44により近い側に大径軸部分72が、遠い側に小径軸部分73がそれぞれ形成されている。2つのころ48の中空孔64は、大径軸部分72の外径にほぼ等しい孔径を有しており、この中空孔64の周りには、軸方向外方に延びる筒部74がそれぞれ形成されている。この筒部74には、ローラ軸43に向かって突出する環状の係止突起75が形成されている。また、ローラ軸43には、2つのころ48の中空孔64が大径軸部分72に嵌まり合う大径軸嵌合位置において、係止突起75を嵌め込むことができる環状の大径軸位置固定溝76と、この大径軸位置固定溝76より軸方向外方であって、2つのころ48の中空孔64が小径軸部分73に嵌まり合う小径軸嵌合位置において、係止突起75を嵌め込むことができる環状の小径軸位置固定溝77とがそれぞれ形成されている。そして、ころ48は、ローラ軸43に沿ってスライド自在とされており、図8に示すように、2つのころ48の中空孔64を大径軸部分72に嵌めるとともに係止突起75を大径軸位置固定溝76嵌め込むことにより、大径軸部分72で位置固定でき、また、小径軸部分73に嵌めるとともに係止突起75を小径軸位置固定溝77嵌め込むことにより、小径軸部分73で位置固定できるようにされている。
【0035】
このような異径軸部分を備えることで、ころ48を各異径軸部分において支持すれば、ローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離を、支持された各異径軸部分の外径に対応したそれぞれの距離に変更することができる。つまり、ころ48を大径軸部分72に嵌め込むことにより、ローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離を長くすることができ、また、小径軸部分73に嵌め込むことにより、分離パッド37から押圧によって、ローラ軸43の外周面下側ところ48の中空孔64の内周面が接触して、ローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離を短くすることができる。したがって、ころ48を軸方向にスライドさせて大径軸部分72または小径軸部分73に嵌め込むのみの簡単な操作により、ローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離を、簡単かつ確実に変更することができる。よって、シート搬送においては、前述したスペーサ67を備えた構成と同様の作用および効果を得ることができる。
【0036】
なお、本実施形態では、ローラ軸43の軸心からころ48の外周面61までの距離を、2つの距離において変更可能としたが、たとえば、図2および図3に示したスペーサ67を備えた実施形態と、図8および図9に示した異径軸部分を備えた実施形態とを組み合わせて、3つ以上の距離において変更可能としてもよく、また、図8および図9に示した構成において、異径軸部分を3つ以上としてもよく、さらには、ローラ軸43をテーパ状にするなどして連続的に変更できるようにしてもよい。
【0037】
【発明の効果】
以上述べたように、請求項1に記載の発明によれば、間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を変更できるようにされているので、重送、連れ重送および空送を有効に防止でき、よって、シートの厚さや重さ等の種類を問わずに良好なシート搬送を行なえて、シート搬送の信頼性を高めることができる。また、間隙形成部材とローラ軸との間に挿脱自在のスペーサを備えるのみの簡易な構成により、間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を、簡単かつ確実に変更することができる。
【0038】
請求項2に記載の発明によれば、間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を変更できるようにされているので、重送、連れ重送および空送を有効に防止でき、よって、シートの厚さや重さ等の種類を問わずに良好なシート搬送を行なえて、シート搬送の信頼性を高めることができる。また、ローラ軸に少なくとも2つの異径軸部分を備えるのみの簡易な構成により、間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を、簡単かつ確実に変更することができる。
【0039】
請求項3に記載の発明によれば、間隙形成部材をスライドさせて、大径軸部分または小径軸部分に嵌め込むのみの簡単な操作により、簡易かつ確実に間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を変更することができる。
【0040】
請求項4に記載の発明によれば、間隙形成部材とローラ軸との間に挿脱自在のスペーサを備えるのみの簡易な構成により、間隙形成部材におけるローラ軸の軸心から当接部までの距離を、簡単かつ確実に変更することができる。
【0041】
請求項5に記載の発明によれば、スペーサをスライドさせるのみの簡単な操作により、簡易かつ確実なスペーサの挿脱操作を確保できる。
【0042】
請求項6に記載の発明によれば、搬送ローラの両側に取付けられる間隙形成部材が、分離パッドの付勢力に抗して、欠除面と分離パッドとの間に、確実に間隙を形成することができるので、良好なシート搬送を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシート搬送装置を備える、レーザプリンタの一実施形態を示す要部側断面図である。
【図2】図1に示す搬送ローラの断面図であり、スペーサの挿入状態を示している。
【図3】図1に示す搬送ローラの断面図であり、スペーサの非挿入状態を示している。
【図4】図1に示す搬送ローラにシートが侵入する状態を示す説明図である。
【図5】図1に示す搬送ローラによりシートが搬送される状態を示す説明図である。
【図6】図1に示す搬送ローラからシートが離れる状態を示す説明図である。
【図7】図1に示す搬送ローラによるシート搬送が終了し、次のシート搬送を待機している状態を示す説明図である。
【図8】他の実施形態を示す、図2に対応する断面図である。
【図9】他の実施形態を示す、図3に対応する断面図である。
【図10】従来例を示す、図5に対応する斜視図である。
【符号の説明】
21 シート搬送装置
27 シート
36 搬送ローラ
37 分離パッド
43 ローラ軸
45 円周面
46 欠除面
48 ころ
61 外周面
62 支持軸
67 スペーサ
72 大径軸部分
73 小径軸部分

Claims (6)

  1. シートに接触して該シートを搬送する円周面、および前記円周面が欠除されることによって形成される欠除面をもつ搬送ローラと、
    前記搬送ローラと対向し、前記搬送ローラに向かって付勢される分離パッドと、
    前記搬送ローラの前記欠除面が、前記分離パッドに対向したときに、前記分離パッドに当接し、前記分離パッドの付勢力に抗して、前記欠除面と前記分離パッドとの間に間隙を形成する間隙形成部材とを備える、シート搬送装置において、
    前記間隙形成部材は、前記搬送ローラのローラ軸の周りに設けられており、前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離が、変更可能とされており、
    前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離を変更可能とするため、前記間隙形成部材と前記ローラ軸との間に挿脱自在のスペーサをさらに備えていることを特徴とする、シート搬送装置。
  2. シートに接触して該シートを搬送する円周面、および前記円周面が欠除されることによって形成される欠除面をもつ搬送ローラと、
    前記搬送ローラと対向し、前記搬送ローラに向かって付勢される分離パッドと、
    前記搬送ローラの前記欠除面が、前記分離パッドに対向したときに、前記分離パッドに当接し、前記分離パッドの付勢力に抗して、前記欠除面と前記分離パッドとの間に間隙を形成する間隙形成部材とを備える、シート搬送装置において、
    前記間隙形成部材は、前記搬送ローラのローラ軸の周りに設けられており、前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離が、変更可能とされており、
    前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離を変更可能とするため、前記ローラ軸は、外径の大きさがそれぞれ異なり、前記間隙形成部材を支持できる、少なくとも2つの異径軸部分を有していることを特徴とする、シート搬送装置。
  3. 前記異径軸部分は、大径軸部分と小径軸部分とを備え、前記間隙形成部材は、大径軸部分に嵌まり合う大径軸嵌合位置と、小径軸部分に嵌まり合う小径軸嵌合位置とにスライド自在とされている、請求項2に記載のシート搬送装置。
  4. 前記ローラ軸の軸心から前記間隙形成部材と前記分離パッドとの当接部までの距離を変
    更可能とするため、前記間隙形成部材と前記ローラ軸との間に挿脱自在のスペーサをさらに備えている、請求項2または3に記載のシート搬送装置。
  5. 前記スペーサは、前記ローラ軸の周りに設けられており、前記間隙形成部材と前記ローラ軸との間に挿入される挿入位置と、前記間隙形成部材と前記ローラ軸との間に挿入されない非挿入位置とにスライド自在とされている、請求項1または4に記載のシート搬送装置。
  6. 前記間隙形成部材は、前記搬送ローラの両側に設けられている、請求項1ないし5のいずれかに記載のシート搬送装置。
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