JP3990135B2 - 光記録媒体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、2層以上の記録層を有する多層光記録媒体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、光ディスクに対する高密度化および大容量化の要求が著しい。現在、コンパクトディスクの約7倍に相当する片面約4.7GBの記録容量をもつDVD(Digital Versatile Disk)が発売されているが、より多くの情報を記録できる技術の開発が盛んに行われている。
【0003】
光ディスクの記録容量を高める技術としては、記録/再生に用いるレーザービームの短波長化、レーザービーム照射光学系における対物レンズの高NA(開口数)化、記録層や再生専用情報層等の情報層の多層化、多値記録などが挙げられる。これらのうち記録層や再生専用層等の情報層の多層化による3次元記録は、短波長化や高NA化に比べ、低コストで飛躍的な高容量化が可能である。3次元情報媒体は、例えば特許第2997512号公報、特開平9−44898号公報に記載されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
例えば2層の相変化型記録層を積層した多層記録媒体において、レーザービームの入射面から見て奥側に存在する記録層を記録再生する際には、レーザービームはその手前側に存在する記録層を透過して前記奥側の記録層に到達することになる。一方、相変化型記録層における反射率は、非晶質からなる記録マークと結晶質である未記録領域とで大きく異なる。そのため、手前側の記録層における記録マークの存在パターンが、奥側の記録層に到達するレーザービームの強度に影響し、その結果、記録再生特性も影響を受ける。
【0005】
このような事情から、特開2000−285469号公報では、手前側の記録層に記録した後、奥側の記録層に記録することを提案している。一方、特開平10−269575号公報および特開平3−157816号公報では、手前側の記録層における記録の有無が、奥側の記録層に記録する際に影響を及ぼすとして、奥側の記録層に先に記録することを提案している。
【0006】
多層記録媒体の利点としては、例えば複数の記録層への同時記録が挙げられる。しかし、多層記録媒体において記録層の記録順序が制限されると、このような利点が減殺されるため好ましくない。
【0007】
本発明は、複数の記録層を積層した多層光記録媒体において、記録層への記録順序を制限することなく安定した記録再生を実現することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
(1) 相変化材料を含む少なくとも2層の記録層が積層され、他の記録層を通して照射されるレーザービームによって記録/再生が行われる記録層が少なくとも1層存在する光記録媒体を製造する方法であって、
少なくとも1つの記録層に対して、オーバーライト動作前の平均反射率が、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低くなるように、少なくとも一部を結晶化させる初期化処理を施す工程において、
形成直後の非晶質記録層に対し初期化用レーザービームを間欠的に照射することにより、照射により形成された矩形の結晶質領域と、形成直後の状態のままの非晶質領域とが、記録トラック延在方向において交互に並ぶ状態にすると共に、隣り合う2つの記録層において、記録再生用レーザービームの入射面から見て奥側に存在する一方の記録層に記録再 生用レーザービームが合焦しているときの、前記入射面から見て手前側に存在する他方の記録層において記録トラック延在方向に測った前記レーザービームのビームスポット径をφ k とし、前記他方の記録層において記録トラック延在方向に測った前記矩形の結晶質領域の長さをL C としたとき、
L C /φ k ≦1/4
となり、かつ当該他方の記録層に形成される最長記録マークの長さをL M としたとき、
2≦L C /L M
となるように前記結晶質領域を形成する光記録媒体の製造方法。
(2) 前記矩形の結晶質領域が、2本以上の記録トラックに跨って存在するように前記初期化処理を施す上記(1)の光記録媒体の製造方法。
(3) 相変化材料を含む少なくとも2層の記録層が積層され、他の記録層を通して照射されるレーザービームによって記録/再生が行われる記録層が少なくとも1層存在する光記録媒体を製造する方法であって、
少なくとも1つの記録層に対して、オーバーライト動作前の平均反射率が、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低くなるように、少なくとも一部を結晶化させる初期化処理を施す工程において、形成直後の非晶質記録層の全面にレーザービームを照射することにより、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低い反射率を示す結晶質を形成する光記録媒体の製造方法。
(4) 前記初期化処理後かつオーバーライト動作前における記録層の平均反射率が、オーバーライト動作後の記録層の平均反射率とほぼ等しくなるように、前記初期化処理を施す上記(1)〜(3)のいずれかの光記録媒体の製造方法。
(5) 最長マークと最長スペースとからなる単一信号を記録した領域における最大再生出力をILH、最小再生出力をILLとし、ILH−ILL=ILとし、前記初期化処理を施した後の記録層の平均再生出力をIINIとしたとき、
0<(ILH−IINI)/IL<1
となるように前記初期化処理を施す上記(1)〜(4)のいずれかの光記録媒体の製造方法。
(6) 最短マークと最短スペースとからなる単一信号を記録した領域における最大再生出力をISH、最小再生出力をISLとし、ISH−ISL=ISとし、前記初期化処理を施した後の記録層の平均再生出力をIINIとしたとき、
0<(ISH−IINI)/IS<1
となるように前記初期化処理を施す上記(1)〜(5)のいずれかの光記録媒体の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
複数の相変化型記録層が積層された多層記録媒体において、記録再生対象の記録層に、他の記録層を通してレーザービームが照射される場合、レーザービーム入射面から見て相対的に手前側にある前記他の記録層の反射率の影響を受け、記録再生対象の記録層に到達するレーザービームが減衰してしまう。この減衰が一定であれば、問題はそれほど大きくない。
【0010】
しかし、相変化型記録層は、非晶質記録マークが形成された記録済み領域と、結晶質からなる未記録領域とで、反射率が異なる。一方、レーザービームは、奥側の記録層に合焦するようにフォーカシングされるため、手前側の記録層におけるビームスポットは著しく広がったものとなる。したがって、手前側の記録層において一部だけが記録済みである場合、前記広がったビームスポット内に記録済み領域だけが存在するときと、記録済み領域と未記録領域の両方が存在するときと、未記録領域だけが存在するときとの三者で、奥側の記録層に到達するレーザービームの強度が大きく異なることになる。
【0011】
また、ディスク状媒体では、積層された複数の記録層において記録トラックの偏心を完全になくすことおよび偏心を同一にすることは困難である。そのため、手前側の記録層におけるビームスポット内に記録済み領域と未記録領域の両方が存在する場合には、媒体の回転に伴って両領域の境界の位置がビームスポット内でぶれる。したがって、奥側の記録層に到達するレーザービームの強度に周期的な変動が生じることになる。
【0012】
このように相変化型の多層記録媒体では、各記録層において最適条件で記録再生を行うことが困難である。このような反射率変動による悪影響は、記録の際に特に問題となり、低パワーで記録を行うシステムにおいて特に影響が大きくなる。
【0013】
これに対し本発明では、形成直後の非晶質記録層に対し、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低い平均反射率を示すように、少なくとも一部を結晶化させる初期化処理を施す。これにより、奥側の記録層にレーザービームが合焦したときに、手前側の記録層では、記録済領域の存在パターンに依存することなくレーザービームの反射率をほぼ一定にできる。そのため、奥側の記録層では、手前側の記録層の記録状態によらず安定した記録再生特性が得られる。
【0014】
なお、本明細書において、記録層の反射率とは、記録およびオーバーライト動作に使用するレーザービーム波長における反射率を意味する。
【0015】
本発明における前記初期化処理の良否は、記録された信号の再生出力を検査することにより判定することができる。図5に、書き換え型媒体における再生出力パターンを模式的に示す。
【0016】
本発明では、再生出力パターンにおいて、
ILH:最長マークと最長スペースとからなる最長単一信号を記録した領域の最大再生出力(または最大反射率)、
ILL:最長マークと最長スペースとからなる最長単一信号を記録した領域の最小再生出力(または最小反射率)、
IL:ILH−ILL、
ISH:最短マーク&最短スペースとからなる最短単一信号を記録した領域の最大再生出力(または最大反射率)、
ISL:最短マーク&最短スペースとからなる最短単一信号を記録した領域の最小再生出力(または最小反射率)、
IS:ISH−ISL、
IINI:前記初期化処理を施した後の記録層の平均再生出力(または平均反射率)
としたとき、好ましくは
0<(ILH−IINI)/IL<1、より好ましくは
0.2≦(ILH−IINI)/IL≦0.8
となるように前記初期化処理を施すことが望ましく、また、好ましくは
0<(ISH−IINI)/IS<1、より好ましくは
0.1≦(ISH−IINI)/IS≦0.9
となるように前記初期化処理を施すことが望ましい。IINIがこのような条件を満足するように前記初期化処理を施すことにより、本発明の効果はより高くなる。
【0017】
次に、本発明の第1の態様を説明する。ここでは、複数の記録層を有する媒体の、隣り合う任意の2つの記録層に注目する。具体的には、図1に模式的に示すように、媒体のレーザービーム入射面側から数えてk番目の記録層RLkと、k+1番目の記録層RLk+1とに注目する。
【0018】
図2は、レーザービーム入射面から見て奥側の記録層RLk+1に記録再生用レーザービームが合焦しているときの、手前側の記録層RLkにおける広がったレーザービームスポット内を表す平面図である。このビームスポットの直径は、φkである。記録トラックは、図2の上下方向に延びている。第1の態様では、前記初期化処理において、形成直後の非晶質記録層に対し、初期化用レーザービームを間欠的に照射する。これにより、図2に示すように、初期化用レーザービームの照射により形成された矩形の結晶質領域ACと、形成直後の状態のままである非晶質領域AAとが、記録トラック延在方向において交互に並んだ状態となる。矩形の結晶質領域ACは、図示するように2本以上の記録トラックに跨るように形成されることが好ましい。なお、ディスク状媒体では、多数の結晶質領域ACが互いにほぼ平行に(巨視的には放射状に)並ぶことになる。
【0019】
矩形の結晶質領域ACが形成された媒体に記録を行うに際しては、記録マークを形成するための記録パワーレベルと、記録マーク間を結晶化するための消去パワーレベルとを少なくとも有する記録用レーザービームを用いてオーバーライト動作を行う。消去パワーレベルのレーザービームが照射された領域は、その照射前に結晶質であっても非晶質であっても結晶質となる。一方、記録パワーレベルのレーザービームが照射された領域は、その照射前に結晶質であっても非晶質であっても非晶質記録マークとなる。
【0020】
図3は、手前側の記録層RLkにおける広がったビームスポット内に、記録済み領域と未記録領域との境界が存在する様子を示している。このビームスポット内の左半分に存在する記録トラックは記録済みであり、これらの記録トラックには記録マークRMが形成されている。一方、ビームスポット内の右半分に存在する記録トラックには記録がなされておらず、初期化処理後の状態のままである。
【0021】
図4は、手前側の記録層RLkにおける広がったビームスポット内のすべての記録トラックが、記録済みとなっている状態を示す。
【0022】
本発明では、図2における非晶質領域AAの面積と結晶質領域ACの面積との比が、非晶質記録マークの面積と、オーバーライト動作によって形成される記録マーク間の結晶質領域の面積との比とほぼ同じになるように、結晶質領域ACの長さLCを決定することが好ましい。このようにして結晶質領域ACの面積を決定すれば、図2、図3および図4のいずれにおいてもビームスポット内の結晶質領域と非晶質領域との面積比がほぼ同じとなるので、ビームスポット内における平均反射率もほぼ同じとなる。その結果、奥側の記録層に到達するレーザービームの強度は、手前側の記録層の記録状態にほとんど依存しなくなる。
【0023】
非晶質記録マークの面積と、オーバーライト動作によって記録マーク間に形成される結晶質領域の面積との比(平均値)は、記録用レーザービームを強度変調するための信号を生成する方式(変調方式)によって異なる。したがって、結晶質領域ACの面積と非晶質領域AAの面積との比は、上記変調方式に応じて決定すればよい。ただし、通常用いられる変調方式では、上記面積比はほぼ1:1となる。したがって、記録層の記録対象領域(記録トラック存在領域)の好ましくは30〜70%、より好ましくは40〜60%を結晶質領域ACが占めるように、初期化処理を行うことが望ましい。
【0024】
図2に示すように、奥側の記録層RLk+1に合焦しているときの手前側の記録層RLkにおけるレーザービームスポットの直径をφkとし、手前側の記録層RLkにおいて記録トラック延在方向に測った前記矩形の結晶質領域ACの長さをLCとしたとき、
LC/φk≦1/4、特に
LC/φk≦1/8
であることが好ましい。φkに対するLCの比が大きすぎると、直径φkのビームスポット内における平均反射率が、レーザービームの走査に伴って大きく変動することになり、本発明の効果が減じられる。なお、手前側の記録層RLkにおけるレーザービームスポットが円形ではない場合、φkは記録トラック延在方向に測った長さとする。
【0025】
図3に示すように、隣接する2つの記録トラックにそれぞれ形成された記録マーク間に隙間が存在するように記録がなされた場合、すなわち、前記隙間を初期化処理後の状態で残す場合、前記隙間は、前記結晶質領域ACの一部と非晶質領域とが交互に存在する状態であり、これは単一信号が記録されている状態と同じである。そのため、再生用レーザービームの端部が前記隙間にかかるように再生が行われると、前記隙間の反射率変化パターンに応じて弱い再生出力が発生する。この弱い再生出力は、記録マークによる本来の再生出力にとってノイズとなる。このようなノイズの発生を抑えるためには、手前側の記録層RLkに形成される最長記録マークの長さをLMとしたとき、
2≦LC/LM、特に
4≦LC/LM
となるように結晶質領域ACの長さLCを設定することが好ましい。LMに対するLCの比が小さすぎると、再生出力にノイズが混入しやすくなる。
【0026】
また、前記隙間に残存している結晶質領域ACに起因する前記弱い再生出力の周波数帯域が、記録マークによる本来の再生出力の周波数帯域と重ならないように結晶質領域ACの長さLCを設定すれば、再生出力へのノイズ混入をさらに抑制することができる。
【0027】
結晶質領域ACの形成には、相変化型光記録媒体に対する従来の初期化処理の際と同様に、バルクイレーザーを用いることが好ましい。バルクイレーザーは、出力の高いガスレーザーや半導体レーザーのビームをあまり絞らずに照射して、多数の記録トラックを一挙に結晶化させる装置である。このバルクイレーザーを用い、かつ結晶質領域ACの配列パターンに応じて照射強度を変調することにより、複数の記録トラックに跨る結晶質領域ACを、短時間で容易に形成できる。このときの結晶質領域ACの幅(記録トラックと直交する方向の寸法)は、2〜500μm程度とすることができる。なお、第1の態様における初期化処理は、後述する溶融初期化である。
【0028】
通常、スパッタ法により形成された非晶質は、記録マークを構成する非晶質と質的に異なる。そのため、形成直後の非晶質に対しオーバーライト動作を行っても、記録が困難ないし不可能となる場合がある。また、非晶質記録層は反射率が極めて低いため、トラッキングサーボが困難である。そのため、通常、相変化型光記録媒体は記録層全面を結晶化してから使用する。ただし、記録層の組成や媒体の構造(熱設計)を適切に選択すれば、結晶化処理なしでも記録が可能な場合がある。また、本発明の第1の態様のように、記録層が比較的短い周期で部分的に結晶化されていれば、トラッキングサーボに関しほとんど問題は生じない。
【0029】
次に、本発明の第2の態様について説明する。
【0030】
第2の態様では、前記初期化処理において、形成直後の非晶質記録層の全面にレーザービームを照射することにより、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低い反射率を示す結晶質を形成する。すなわち第2の態様における初期化処理では、オーバーライト動作時に形成される結晶質とは質の異なる結晶質となるように、非晶質記録層の全面を結晶化する。
【0031】
相変化型光記録媒体における従来の初期化処理には、溶融初期化と固相初期化とがある。溶融初期化は、非晶質記録層を溶融状態となるように加熱してから冷却して結晶化させる方法であり、固相初期化は、非晶質記録層を完全に溶融する前に冷却して結晶化する方法である。溶融初期化では、比較的高いパワーのレーザービームを用い、また、比較的遅い線速度でレーザービームを照射する。これに対し固相初期化は、比較的低いパワーおよび/または比較的遅い線速度で実施する。溶融初期化により形成される結晶質記録層は結晶粒径が比較的大きいため、反射率が高い。一方、固相初期化により形成される結晶質記録層では、結晶粒径は記録層の組成および媒体の熱設計によって異なる。
【0032】
本発明の第2の態様における初期化処理では、記録層全面を固相初期化することにより、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低い反射率を示す結晶質を形成する。また、好ましくは、初期化処理後の記録層の平均反射率が、オーバーライト動作後の記録層の平均反射率とほぼ等しくなるように、記録層全面を固相初期化する。その結果、手前側の記録層RLkにおいて、広がったビームスポット内に記録済み領域と未記録領域との境界が存在する場合でも、未記録領域の反射率が記録済み領域の平均反射率とほぼ同じとなるため、ビームスポット内に反射率分布が存在せず、記録再生特性が影響を受けることはない。
【0033】
第2の態様において、初期化処理の際のレーザービームのパワーおよび媒体の線速度は、初期化処理後に最適な反射率が得られるように、記録層の組成や媒体の熱設計に応じて実験的に決定すればよい。
【0034】
なお、多層光記録媒体において信号再生に影響を与えるのは、レーザービーム入射側から見て再生対象の記録層よりも手前側にある記録層だけではない。すなわち、再生対象の記録層を透過し、奥側の記録層で反射して戻ってくるレーザービームも再生出力に影響する。したがって、奥側の記録層が一部だけ記録された状態であると、記録信号の再生出力にノイズが混入してしまう。したがって、記録再生用レーザービームの入射面から最も遠い記録層についても、本発明を適用して初期化処理を施すことが好ましい。
【0035】
本発明において複数の記録層を初期化する必要がある場合、通常、以下に説明する初期化後貼り合わせ法、積層時初期化法および完成後初期化法のいずれかを利用して初期化を行うことが好ましい。
【0036】
初期化後貼り合わせ法では、自立可能な程度の剛性をもち、かつ、レーザービームが透過可能な基板を用意し、この基板上に記録層を形成した後、記録層を初期化する作業を、積層する記録層の数だけ繰り返す。次いで、初期化された記録層を有する基板同士を貼り合わせることにより、媒体を作製する。この方法では、基板を介して記録層同士が隣り合う構造の媒体が得られる。
【0037】
積層時初期化法では、自立可能な程度の剛性をもつ基板上に第1の記録層を形成した後、第1の記録層を初期化する。次いで、第1の記録層上に、レーザービームが透過可能な樹脂からなる中間層を形成する。次いで、中間層上に第2の記録層を形成した後、第2の記録層を初期化する。これ以降、中間層の形成、記録層の形成およびその初期化を繰り返す。この方法では、中間層を介して記録層同士が隣り合う構造の媒体が得られる。
【0038】
完成後初期化法では、上記した初期化後貼り合わせ法または積層時初期化法と同様にして、複数の記録層が積層された媒体を作製する。ただし、媒体作製中に記録層の初期化は行わず、媒体完成後に記録層を初期化する。
【0039】
完成後初期化法において初期化をレーザービームによって行う場合、媒体の一方の面側からレーザービームを照射して、記録層を1層ずつ初期化すればよい。初期化によって記録層の透過率が低下する場合には、まず、レーザービーム入射面から最も遠い記録層を初期化し、次いで、初期化済みの記録層と隣り合う手前側の記録層を初期化する作業を繰り返すことが好ましい。一方、初期化によって記録層の透過率が向上する場合には、逆に、レーザービーム入射面に最も近い記録層から初期化を開始することが好ましい。なお、1回のレーザービーム照射により複数の記録層を同時に初期化することも可能である。
【0040】
また、完成後初期化法では、媒体がもつ少なくとも2層の記録層を、媒体の一方の面に近い一方のグループと他方の面に近い他方のグループとにわけ、前記一方のグループに所属する記録層を、前記一方の面側から照射したレーザービームにより順次または同時に初期化し、前記他方のグループに所属する記録層を、前記他方の面側から照射したレーザービームにより順次または同時に初期化してもよい。
【0041】
完成後初期化法は、記録層の積層数が少ない場合、好ましくは2層の場合に特に適する。
【0042】
本発明は相変化型記録媒体に好適であるが、相変化型記録媒体以外では、形成直後の記録層に対し、記録マークの反射率より高く、かつ、隣接する記録マーク間の領域の反射率より低い平均反射率を示すように、少なくとも一部を変質させるような初期化処理を施せばよい。
【0043】
【実施例】
第2の態様
配列ピッチ0.74μm、幅0.20μmのグルーブを表面に有するポリカーボネート製ディスク基板上に、誘電体層、SbおよびTeを主成分とする相変化型記録層、誘電体層およびAgを主成分とする反射層をこの順で形成し、反射層上に紫外線硬化型樹脂からなる保護層を形成して、相変化型ディスクを作製した。形成直後の記録層は非晶質であった。このディスクの反射率は、1.1%であった。なお、反射率はパルステック工業(株)のDDU−1000(レーザー波長634nm、開口数0.6)により測定した。
【0044】
このディスクに対し、波長810nmのレーザービームを用い、レーザーパワーを1000mW、ディスクの線速度を6m/sとして、記録層の全面に初期化処理を施した。前記レーザービームは、記録層上におけるビームスポット形状が矩形となるように整形した。前記矩形の寸法は、記録トラックに平行な方向において1.5μm、記録トラックと直交する方向において210μmとし、ディスク1回転あたりディスク半径方向に130μmずつビームをずらしながら照射した。この初期化処理では前記した溶融初期化が行われており、初期化処理後のディスクの反射率は、25.9%であった。
【0045】
また、レーザーパワーを600mWとし、ディスクの線速度を3m/sとしたほかは上記初期化処理と同じ条件で、ディスクに対し初期化処理を施した。この初期化処理では前記した固相初期化が行われており、初期化処理後のディスクの反射率IINIは、21.1%であった。
【0046】
これら2種の初期化処理の結果から、初期化処理条件を変更することでディスクの反射率を制御できることがわかる。
【0047】
次に、最長信号(8T信号)からなる最長単一信号と、最短信号(2T信号)からなる最短単一信号とを、オーバーライト動作によってディスクに記録した。それぞれの単一信号は、マークとスペースとを同じ長さに設定した。記録後のディスクについて反射率を測定したところ、
最長単一信号を記録した領域の最大反射率ILHは25.9%、
最長単一信号を記録した領域の最小反射率ILLは12.5%、
IL=ILH−ILLは13.4%、
最短単一信号を記録した領域の最大反射率ISHは22.6%、
最短単一信号を記録した領域の最小反射率ISLは16.8%、
IS=ISH−ISLは5.8%
であった。また、初期化処理後の記録層の反射率IINIは、前記したように21.1%であった。したがって、
(ILH−IINI)/IL=0.358、
(ISH−IINI)/IS=0.259
であり、このディスクは、本発明における好ましい初期化処理がなされていることが確認できた。
【0048】
【発明の効果】
本発明では、複数の記録層を積層した多層光記録媒体において、記録層への記録順序を制限することなく安定した記録再生を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 多層光記録媒体が有する記録層のうちの隣り合う2層を模式的に表す側面図である。
【図2】 本発明により製造された多層光記録媒体において、アウトフォーカス状態のレーザービームスポット内における記録層を模式的に示す平面図であり、ビームスポット内のすべての記録トラックに記録マークが形成されていない状態を示す図である。
【図3】 本発明により製造された多層光記録媒体において、アウトフォーカス状態のレーザービームスポット内における記録層を模式的に示す平面図であり、ビームスポット内の一部の記録トラックに記録マークが形成されている状態を示す図である。
【図4】 本発明により製造された多層光記録媒体において、アウトフォーカス状態のレーザービームスポット内における記録層を模式的に示す平面図であり、ビームスポット内のすべての記録トラックに記録マークが形成されている状態を示す図である。
【図5】 本発明により製造された多層記録媒体の再生出力パターンを模式的に示す図である。
Claims (6)
- 相変化材料を含む少なくとも2層の記録層が積層され、他の記録層を通して照射されるレーザービームによって記録/再生が行われる記録層が少なくとも1層存在する光記録媒体を製造する方法であって、
少なくとも1つの記録層に対して、オーバーライト動作前の平均反射率が、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低くなるように、少なくとも一部を結晶化させる初期化処理を施す工程において、
形成直後の非晶質記録層に対し初期化用レーザービームを間欠的に照射することにより、照射により形成された矩形の結晶質領域と、形成直後の状態のままの非晶質領域とが、記録トラック延在方向において交互に並ぶ状態にすると共に、隣り合う2つの記録層において、記録再生用レーザービームの入射面から見て奥側に存在する一方の記録層に記録再生用レーザービームが合焦しているときの、前記入射面から見て手前側に存在する他方の記録層において記録トラック延在方向に測った前記レーザービームのビームスポット径をφ k とし、前記他方の記録層において記録トラック延在方向に測った前記矩形の結晶質領域の長さをL C としたとき、
L C /φ k ≦1/4
となり、かつ当該他方の記録層に形成される最長記録マークの長さをL M としたとき、
2≦L C /L M
となるように前記結晶質領域を形成する光記録媒体の製造方法。 - 前記矩形の結晶質領域が、2本以上の記録トラックに跨って存在するように前記初期化処理を施す請求項1の光記録媒体の製造方法。
- 相変化材料を含む少なくとも2層の記録層が積層され、他の記録層を通して照射されるレーザービームによって記録/再生が行われる記録層が少なくとも1層存在する光記録媒体を製造する方法であって、
少なくとも1つの記録層に対して、オーバーライト動作前の平均反射率が、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低くなるように、少なくとも一部を結晶化させる初期化処理を施す工程において、
形成直後の非晶質記録層の全面にレーザービームを照射することにより、オーバーライト動作によって形成される非晶質記録マークの反射率より高く、かつ、オーバーライト動作によって非晶質記録マーク間に形成される結晶質の反射率より低い反射率を示す結晶質を形成する光記録媒体の製造方法。 - 前記初期化処理後かつオーバーライト動作前における記録層の平均反射率が、オーバーライト動作後の記録層の平均反射率とほぼ等しくなるように、前記初期化処理を施す請求項1〜3のいずれかの光記録媒体の製造方法。
- 最長マークと最長スペースとからなる単一信号を記録した領域における最大再生出力をILH、最小再生出力をILLとし、ILH−ILL=ILとし、前記初期化処理を施した後の記録層の平均再生出力をIINIとしたとき、
0<(ILH−IINI)/IL<1
となるように前記初期化処理を施す請求項1〜4のいずれかの光記録媒体の製造方法。 - 最短マークと最短スペースとからなる単一信号を記録した領域における最大再生出力をISH、最小再生出力をISLとし、ISH−ISL=ISとし、前記初期化処理を施した後の記録層の平均再生出力をIINIとしたとき、
0<(ISH−IINI)/IS<1
となるように前記初期化処理を施す請求項1〜5のいずれかの光記録媒体の製造方法。
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