JP4339999B2 - 光学的情報記録媒体とその製造方法、記録再生方法及び記録再生装置 - Google Patents

光学的情報記録媒体とその製造方法、記録再生方法及び記録再生装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、基板上に形成された薄膜に、レーザー光等の高エネルギービームを照射することにより、信号品質の高い情報信号を記録・再生することのできる光学的情報記録媒体とその製造方法、記録再生方法及び記録再生装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基板上に形成したカルコゲン材料等の薄膜にレーザー光線を照射して局所的な加熱を行い、照射条件の違いにより光学定数(屈折率n、消衰係数k)の異なる非晶質相と結晶相との間で相変化させることが可能であることが知られており、この現象を応用した、いわゆる相変化型の光学的情報記録媒体の開発が行われてきた。
【0003】
相変化型の光学的情報記録媒体においては、単一のレーザービームのみを使い、レーザー出力を記録レベルと消去レベルの2レベル間で情報信号に応じて変調し情報トラック上に照射することにより、既存の信号を消去しつつ新しい信号を記録することが可能である。この方法は光磁気記録等と違って、磁気回路部品が不要なことからヘッドが簡素化できる点、さらに、記録と消去が同時に行えるため書換時間を短縮できる点で情報の記録に有利である。
【0004】
こういった光学的情報記録媒体においては、繰り返し使用する際の記録層の蒸発、基板の熱変形等を防止する目的で耐熱性に優れた誘電体等を保護層として記録層の上下に設け、更に、基板と反対側の保護層の上に入射光を効率良く使い、冷却速度を向上させて非晶質化しやすくする目的で金属材料等の反射層を設けた4層以上の材料薄膜層を積層した構成が一般的である。
【0005】
相変化型の光学的情報記録媒体を高密度化・大容量化する手段としては、記録に用いる光源の短波長化、対物レンズの高NA(開口数)化などによってより小さいマークを形成し、記録マークの基板上における周方向の線密度及び径方向のトラック密度を向上させるのが一般的である。また、線密度向上のためにマークの長さに情報を持たせるマークエッジ記録が、トラック密度向上のために基板上に設けられたレーザー光案内用の溝であるグルーブとその案内溝間のランドの両方を記録トラックとするランド&グルーブ記録が、それぞれ提案され、導入されている。
【0006】
そしてさらに、このような記録可能な情報層を分離層を介して複数積層し、容量を倍増させた記録媒体(特開平9−212917号公報、特表平10−505188号公報等)、及びこのような複数の情報層のいずれか一つを選択して記録再生を行うための層認識手段及び層切り替え手段(特表平10−505188号公報等)が提案されている。
【0007】
また、高密度化のみならず、情報処理速度、すなわち情報の記録再生の速度を向上させることも重要で、そのために同じ半径位置でも高い回転数でディスクを回転させて記録再生を行う高線速度化も検討が進められている。
【0008】
このような光学的情報記録媒体においては、良好で実用的な信号品質・記録再生特性を得るために幾つかの課題があり、対策が講じられている。
【0009】
まず、大きな信号振幅及び高いC/N比を得るためには、結晶−非晶質間の反射率変化が大きくなくてはならない。そのためには、波長λのレーザー光線に対する記録層が結晶及び非晶質の場合のディスクの反射率をそれぞれRc及びRaとして、反射率差ΔR=Rc−Raの絶対値が大きいことが必要である。
【0010】
また、単一ビームによるオーバーライトの場合、記録前の下地が非晶質の場合と結晶の場合とでは、結晶では溶融に融解潜熱を要するため、同じパワーのビームを照射しても到達温度の差が生じ、このため、オーバーライト時にオーバーライト前の信号の影響を受けてマーク形状の歪みが生じてしまう。これにより、消去率の低下や再生信号の時間軸方向の誤差(ジッタ)の増大が起こってしまう。この現象は高線速度になるほど顕著になり、高密度になるほど影響が大きくなる(例えば、Noboru Yamada,“Potential of Ge-Sb-Te Phase-Change Optical Disks for High-Data-Rate Recording”,Optical Data Storage '97,Proceedings of SPIE,Vol.3109,28(1997))。この課題を解決するために、結晶部及び非晶質部に同じパワーのビームを照射した場合の両者の到達温度を等しくする方法が提案されている(特開平1−149238号公報等)。この方法によると、波長λのレーザー光線に対する記録層が結晶及び非晶質の場合の記録層の吸収率をそれぞれAc及びAaとして、吸収率比Ac/Aaが、結晶部の融解潜熱分を補償するために、少なくとも1より大きいこと(Ac/Aa>1)が必要である。
【0011】
ΔRの絶対値を大きくするには、Rc>Ra、すなわちΔRが正の値をとる反射率減少型と、Rc<Ra、すなわちΔRが負の値をとる反射率増加型の2つがある。反射率減少型では、Rcを大きくしやすいのでベースとなる反射率を高くでき、Raをほとんど0にできるため、信号のコントラストを大きくできるという利点がある。しかし、同時にAc/Aaも大きくするためには入射光の一部を透過させるか、または記録層以外に吸収させるかのどちらかが必要となり、入射光を効率よく利用する上で、また、光学設計上の自由度の点で不利である。一方、反射率増加型では、ΔRの絶対値を大きくするほどAc/Aaも同時に大きくなるため、入射光の一部を透過させたり、記録層以外に吸収させたりする必要がなく、入射光を効率よく利用する上で、また、光学設計上の自由度の点で有利である。
【0012】
このような反射率増加型の記録媒体の構成例としては、基板上にAuなどの半透過性の光干渉層、下側保護層、記録層、上側保護層、反射層の少なくとも5層をこの順に設け、特に前記光干渉層による光の干渉効果を利用して反射率増加型でΔRの絶対値を大きくする構成(特開平7−78354号公報、特開平7−105574号公報、特開平7−262607号公報等)等が開示されている。
【0013】
ところで、前述のような情報層を複数備えた記録媒体では、レーザー光入射側からみて奥側に位置する第2情報層に対しては、手前側に位置する第1情報層を透過した光で記録再生を行う。したがって、第1情報層には高い透過率、第2情報層には高い記録感度と高い反射率が求められる。
【0014】
このような課題に対して、第1情報層は反射層を有さない反射率減少型、第2情報層は光入射側に半透明層を設けた反射率増加型としたディスク構成も提案されている。そうすることで、第1情報層及び第2情報層の|ΔR|及びAc/Aa、第1情報層の透過率、第2情報層の感度及び反射率をいずれも高くでき、良好な記録再生特性が得られる。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発明者の計算によれば、第1情報層としては、前述のごとく|ΔR|及びAc/Aaを同時に大きくするという観点からは、反射率増加型記録媒体を適用する方が光学設計上は有利であるという結論が得られた。しかし、従来の反射率増加型記録媒体は、記録層及び/または反射層が厚く、ほとんど透過率が得られないものであった。即ち、透過率の高い反射率増加型記録媒体を考案し、多層記録媒体の第1情報層に適用することが可能かつ有効であることは示されていない。
【0016】
また、赤色レーザー光での記録再生による高密度化はほぼ限界の域に達している。そこで新たな高密度化の手段として、青色レーザー光を用いて、より小さなビームスポットでの記録密度向上が検討されつつある。ここで課題となるのは、記録層の光学定数、すなわち屈折率n及び消衰係数kに波長依存性があることである。例えば、最も代表的な記録材料であるGe−Sb−Teは、赤色光波長域では、n、kともに結晶状態での値が非晶質状態での値よりも大きいが、青色光波長域では非晶質状態のnが結晶状態のnよりも大きく、大小が逆転してしまう。これにより、例えば前述の構成では、特に第1情報層で|ΔR|、Ac/Aa、及び透過率をいずれも大きくすることが困難となる。青色光波長域に限らず、他の材料でも非晶質状態のnよりも結晶状態のnが大きい場合は、同様の課題がある。
【0017】
本発明は、上記課題を解決し、高密度・高線速度なオーバーライトにおけるC/N比、消去率がいずれも高い情報層を複数備えた光学的情報記録媒体を提供することを目的とする。また、この光学的情報録媒体の製造方法と、この光学的情報記録媒体の記録再生方法および記録再生装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の光学的情報記録媒体は、第1基板の上に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層及び第2基板をこの順に備え、前記第1情報層が、前記第1基板に近い側から順に少なくとも下側保護層、光ビームの照射により光学的に検出可能な異なる2以上の状態間で可逆的に変化する記録層及び上側保護層をこの順に備えた多層薄膜からなり、前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第1情報層に集光してマークを形成した領域(マーク領域)における反射率が、前記マークを形成していない領域(スペース領域)における反射率より高く、前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第2情報層に集光したときに、前記第1情報層を透過して前記第2情報層に到達する前記光ビームの割合が40%以上であることを特徴とする。
【0019】
上記光学的情報記録媒体においては、マークを形成した領域が非晶質状態であり、マークを形成していない領域が結晶状態であることが好ましい。また、上記光学的情報記録媒体においては、光ビームの波長が500nm以下であることが好ましい。また、第1情報層が、上側保護層の分離層側に、さらに反射層を備えていることが好ましい。また、第1情報層が、反射層の分離層側に、さらに透過率向上層を備えていることが好ましい。また、第1情報層が、下側保護層と記録層との間の界面及び記録層と上側保護層との間の界面から選ばれる少なくとも一方に、さらに界面層を備えていることが好ましい。
【0020】
また、上記光学的情報記録媒体においては、記録層の膜厚が3nm以上10nm以下であることが好ましい。また、記録層が少なくともGe、Sb及びTeを含むことが好ましい。また、記録層に含まれるGe、Sb及びTeの原子比Ge:Sb:Teをx:y:z(x+y+z=1)と表示したときに、0.10≦x≦0.50及び0.40≦z≦0.60であることが好ましい。
【0021】
また、上記目的を達成するために、本発明の光学的情報記録媒体の製造方法は、第1基板の上に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層及び第2基板をこの順に備え、前記第1情報層が、前記第1基板に近い側から順に少なくとも下側保護層、光ビームの照射により光学的に検出可能な異なる2以上の状態間で可逆的に変化する記録層及び上側保護層をこの順に備えた多層薄膜からなり、前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第1情報層に集光してマークを形成した領域における反射率が、前記マークを形成していない領域の反射率より高く、前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第2情報層に集光したときに、前記第1情報層を透過して前記第2情報層に到達する前記光ビームの割合が40%以上である光学的情報記録媒体の製造方法であって、前記第1基板上に前記第1情報層を、前記第2基板上に前記第2情報層をそれぞれ積層する成膜工程と、前記第1情報層及び前記第2情報層を記録可能な初期状態にする初期化工程と、前記第1情報層と前記第2情報層とが向かい合うように前記分離層を介して前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる密着工程とを含み、前記成膜工程において、前記記録層を希ガス及び窒素を必須成分とする雰囲気中で成膜することを特徴とする。
【0022】
また、上記目的を達成するために、本発明の光学的情報記録媒体の記録再生方法は、第1基板の上に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層及び第2基板をこの順に備え、前記第1情報層が、前記第1基板に近い側から順に少なくとも下側保護層、光ビームの照射により光学的に検出可能な異なる2以上の状態間で可逆的に変化する記録層及び上側保護層をこの順に備えた多層薄膜からなり、前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第1情報層に集光してマークを形成した領域における反射率が、前記マークを形成していない領域における反射率より高く、前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第2情報層に集光したときに、前記第1情報層を透過して前記第2情報層に到達する前記光ビームの割合が40%以上である光学的情報記録媒体の記録再生方法であって、前記光ビームの波長が500nm以下であり、前記第1情報層及び前記第2情報層に、前記第1基板側から入射した前記光ビームによって前記マークを形成及び検出することにより、情報の記録及び再生を行うことを特徴とする。
【0023】
また、上記目的を達成するために、第1基板の上に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層及び第2基板をこの順に備え、前記第1情報層が、前記第1基板に近い側から順に少なくとも下側保護層、光ビームの照射により光学的に検出可能な異なる2以上の状態間で可逆的に変化する記録層及び上側保護層をこの順に備えた多層薄膜からなり、前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第1情報層に集光してマークを形成した領域における反射率が、前記マークを形成していない領域における反射率より高く、前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第2情報層に集光したときに、前記第1情報層を透過して前記第2情報層に到達する前記光ビームの割合が40%以上である光学的情報記録媒体の記録再生装置であって、波長500nm以下の前記光ビームを発生させる光源と、前記第1情報層及び前記第2情報層に前記第1基板側から入射した前記光ビームによって前記マークを形成及び検出するための層認識手段及び層切り替え手段とを備えたことを特徴とする。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
図1に示すとおり、本発明の光学的情報記録媒体の一形態では、第1基板1上に第1情報層2、分離層3、第2情報層4及び第2基板5がこの順に形成されている。第1情報層2は、第1基板1に近い側から順に、下側保護層6、記録層7、上側保護層8、反射層9及び透過率向上層10が積層された多層薄膜である。但し、反射層9及び透過率向上層10は必須の層ではない。この光学的記録情報媒体では、第1基板1の側からレーザー光11を照射することにより、第1情報層2及び第2情報層4の両方に対して情報が記録再生される。
【0025】
第1基板1の材料としては、ポリカーボネイト樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、アートン樹脂、ガラス等を用いることができる。第1基板1の厚さは、特に限定されないが、0.05〜2.0mm程度が好ましい。また、第1基板1の、膜を形成する側の表面には、レーザー光11のトラッキング用のスパイラル状または同心円状の溝が設けられていることが好ましい。
【0026】
第1情報層2は、第2情報層4に対して十分なパワーで記録を行い、なおかつ十分な反射光量を得るために透過率が高くなければならない。第2情報層4を再生する場合、レーザー光11の光量は、第1情報層2を往復する(即ち2度透過する)ため、第1情報層2の透過率の2乗分減衰してしまう。第1情報層2及び第2情報層4に対してフォーカシング及びトラッキングといったサーボ制御を行うためには最低でも5%の反射率が要求される。そこで、第1情報層2及び第2情報層4の反射率をそれぞれR1及びR2、第1情報層2の透過率をTとすると、(1)R1≧5%、(2)R2×T2≧5%が必要となる。R2を大きくすると第2情報層4の光吸収率が小さくなって感度が悪くなり、記録パワー不足となるため、R2は最大30%程度が限界である。そうすると、(2)を満たすためには概略、T≧40%が必要となる。
【0027】
また、第2情報層4に記録を行う場合、レーザー光11は第2情報層4に到達する前に第1情報層2を一度透過してそのパワーが減衰してしまう。例えば、現在利用可能な波長660nmの半導体レーザーの実質的な記録パワーは15mW程度が限界である。したがって、例えば、第1情報層2の透過率が30%、40%及び50%の場合、第1情報層2を透過して第2情報層4に到達する実質的な最大の記録パワーはそれぞれ4.5mW、6.0mW及び7.5mWである。これに対し、実際に必要な記録パワーは、高感度な記録媒体であっても少なくとも6mWが必要である。
【0028】
以上を勘案すると、記録・再生いずれの観点からも第1情報層2の透過率は少なくとも40%以上、より好ましくは50%以上が必要である。以上は赤色光波長域の場合であるが、青色光波長域においては赤色光波長域の場合に比べて波長が短くなる、すなわち1光子あたりのエネルギーが高くなるから、より低い、例えば2/3倍程度のレーザー強度での記録が可能となることが実験によって確認された。しかし、現在開発されている青色光半導体レーザーは、赤色光半導体レーザと比べてその出力の限界も低く、例えば2/3倍程度になってしまう見通しであるから、結局、第1情報層2に要求される透過率は、青色光波長域においても赤色光波長域の場合と同程度である。以上より、第1情報層2の透過率は、40%以上とする。
【0029】
下側保護層6及び上側保護層8は、レーザー光11照射時の第2基板5または記録層7等の熱的損傷によるノイズ増加の抑制、レーザー光11に対する反射率、吸収率及び反射光の位相の調整等の目的で設けられる。これら保護層の材料としては、物理的・化学的に安定で、記録層7の融点よりも融点及び軟化温度が高く、記録層7の材料と相固溶しない材料が好ましい。具体的には、Y、Ce、Ti、Zr、Nb、Ta、Co、Zn、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Te等の酸化物、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb等の窒化物、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Si等の炭化物、Zn、Cd等の硫化物、セレン化物またはテルル化物、Mg、Ca等のフッ化物、C、Si、Ge等の単体、あるいはこれらの混合物からなる誘電体または誘電体に準ずる材料を用いることができる。下側保護層6及び上側保護層8は、必要に応じて異なる材料を用いてもよいし、同一の材料を用いることもできる。
【0030】
記録層7としては、レーザー光11を照射することによりその光学定数(屈折率n、消衰係数k)が変化する材料を用いることが好ましい。例えば、TeやSeをベースとするカルコゲナイド、例えばGe−Sb−Te、Ge−Te、Pd−Ge−Sb−Te、In−Sb−Te、Sb−Te、Ag−In−Sb−Te、Ge−Sb−Bi−Te、Ge−Sb−Se−Te、Ge−Sn−Te、Ge−Sn−Te−Au、Ge−Sb−Te−Cr、In−Se、In−Se−Co等を主成分とする合金系、あるいはこれらに窒素、酸素等を適宜添加した合金系を用いることができる。
【0031】
記録層7の膜厚は、薄すぎると急速に冷却されるために結晶化しにくくなり、厚すぎると透過率が低くなってしまう。この限界を調べるために、石英基板上に膜厚100nmのZnS−SiO2誘電体層、様々な膜厚のGe−Sb−Te記録層、膜厚100nmのZnS−SiO2誘電体層の各層をこの順にスパッタリング法により成膜し、これらサンプルに波長660nmの半導体レーザーパルス光を照射して膜の状態が変化する様子を顕微鏡で観察した。その結果、膜厚3nm未満ではパルスの強度及び幅をどのように変えても結晶化は見られなかったが、膜厚3nm以上では結晶化する条件が存在した。また、後述のGe−Sb−Teの光学定数を用いて計算を行った結果、膜厚約10nm以下であれば透過率を40%以上にできる構成が存在することがわかった。これらのことを考慮すると、記録層7の膜厚は3nm以上10nm以下であることが好ましい。
【0032】
反射層9としては、入射光を効率良く使い、冷却速度を向上させて非晶質化しやすくする等の目的で設けられる。反射層9の材料としては、Al、Au、Ag、Cu等の熱伝導率の高い単体金属材料、あるいはこれらのうちの1つまたは複数の元素を主成分とし、耐湿性の向上あるいは熱伝導率の調整等のために適宜他の元素を添加したAl−Cr、Al−Ti、Ag−Pd、Ag−Pd−Cu、Ag−Pd−Ti等の合金材料を用いることができる。特にAg系の材料は、青色光波長域でも屈折率nが0.5以下と低いため、光吸収を小さく抑えることができる。このため、高い透過率が要求される第1情報層の反射層として好ましい材料である。ただし、線速度等の記録条件あるいは記録層7の組成等によっては反射層9の冷却効果がなくとも十分非晶質化しやすい場合もある。このような場合には、透過率をより大きくするために反射層9は省略してもよい。
【0033】
透過率向上層10としては、高い|ΔR|及びAc/Aaと高い透過率とを両立させる等の光学設計上の自由度を高める目的で設けられる。透過率向上層10の材料としては、反射層9との屈折率の差が大きく(好ましくは0.5以上、さらに好ましくは1.0以上の屈折率差)、透明あるいは略透明な材料が好ましい。例えば反射層9がAg合金などの屈折率の小さい材料の場合は、TiO2、Si、SiC等の屈折率が高い(好ましくは屈折率が1.5以上、さらに好ましくは2.0以上)誘電体あるいは半導体材料を用いることができる。このような透過率向上層10を設けることにより、光吸収のある記録層7及び反射層9の膜厚が同じでも、透過率向上層10がない場合に比べて透過率を高くすることができ、逆に透過率を同じにすると、その分|ΔR|及びAc/Aaを大きくすることができる。
【0034】
分離層3の材料としては、第1情報層2及び第2情報層4のそれぞれに対してレーザー光11で記録再生を行うために、レーザー光11の波長λにおいて透明で、耐熱性及び接着性の高い材料が好ましい。具体的には、例えば、紫外線硬化性樹脂などの接着樹脂、両面テープ、誘電体膜などを用いることができる。また、分離層3の厚さは、第1情報層2及び第2情報層4のどちらか一方に対して記録再生を行う際に、他方に記録されている信号情報が漏れ込んでしまうことを避けるために、焦点深度以上、例えば2μm以上であることが必要であり、なおかつ第1情報層2及び第2情報層4のどちらにもレーザー光11を集光できるように、基材厚との合計が基材厚公差の範囲内、例えば100μm以下であることが好ましい。
【0035】
第2情報層4は、第1情報層2と同様に、レーザー光11で記録再生できる情報層であればよいが、例えば第1情報層2と同じ材料を用い、各層の膜厚を適宜変えたものとすることが製造上有利である。ただし、第1情報層2を透過し、減衰したレーザー光11でも十分に記録でき、なおかつ十分な反射光量が得られるように、記録感度及び反射率が高い構成とする必要がある。
【0036】
第2基板5の材料としては、第1基板1と同様の材料を用いてもよいが、透明でない材料を用いてもよく、第1基板1とは材質、厚さ、溝形状が異なっていてもよいし、スパイラルの方向が逆でもよい。また、分離層3の第2情報層4側の表面に、第2情報層4用の案内溝を2P法によって形成することも可能である。この場合、第2基板5は、第2情報層4側の表面には溝があってもよいが、溝を有さない平面であってもよい。第2基板5は、例えば接着剤等を用いて第2情報層4の上に貼り合わせることもできるし、あるいは直接オーバーコート樹脂層を形成して第2基板としてもよい。
【0037】
また、本発明の光学的情報記録媒体は、図2に示すように、下側保護層6と記録層7の間及び記録層7と上側保護層8の間のいずれか一方または両方の界面に、繰り返し記録時の界面における原子の相互拡散による特性劣化を防止する等の目的で、界面層20を設けることができる。もちろん、第2情報層4の記録層に隣接して、同様の界面層を設けてもよい。界面層としては、下側保護層6及び上側保護層8として用いることのできる材料の中でその役割を果たす誘電体材料が幾つか存在するが、Ge、Si、Al、Cr等の窒化物、酸化物、炭化物あるいはこれらの混合物を主成分とする材料が特に適している。
【0038】
以下、本発明の光学的情報記録媒体の光学的設計及び光学的特性について説明する。多層膜について各層の材料の屈折率、消衰係数及び膜厚を決めると、全ての界面に対してエネルギー保存則に基づき各界面における光エネルギー収支の連立方程式を立て、これを解くことで多層膜全体としての入射する光ビームに対する反射率、透過率及び各層の吸収率を求めることができる(久保田広著「波動光学」岩波書店、1971年等)。この手法を用いて、(表1)に示す材料、屈折率n及び消衰係数kの各層からなる第1情報層2について、レーザー光の波長が405nm及び660nmの場合の光学計算を行った。
【0039】
【表1】
Figure 0004339999
【0040】
各層の膜厚を任意に変化させて、平均透過率Taveが50%以上かつ|ΔR|が5%以上の範囲でAc/Aaが最大値となる場合の結果を(表2)に示す。
【0041】
【表2】
Figure 0004339999
【0042】
ここで平均透過率Taveは、記録済みの記録層7の表面におけるスペース部分(結晶)とマーク部分(非晶質)との面積比が約4:1であるため、入射するレーザー光線に対する記録層が結晶及び非晶質の場合のディスクの透過率をそれぞれTc及びTaとして、Tave=(4Tc+Ta)/5と仮定した。また、(表2)の結果が得られた構成は、記録層7の膜厚はいずれも6nmで、反射層の膜厚は反射率増加型の場合がいずれも10nm、反射率減少型の場合がいずれも5nmであった。(表2)によると、反射率減少型は、赤色波長領域の波長660nmでAc/Aaは1.20と大きいが、青色波長領域の波長405nmではAc/Aaは0.85と小さく、前述のように高線速度・高密度なオーバーライトにおける消去率低下・ジッタ増大の問題が顕著となる。これに対し、反射率増加型では波長405nmにおいてもAc/Aaが1.10と大きい。
【0043】
反射率増加型ではRcがRaよりも低いため、一般にTcがTaよりも高く、逆に反射率減少型ではRcがRaよりも高いため、一般にTcがTaよりも低い。記録層における面積は、非晶質(記録マーク部分)よりも結晶(非記録部分)が大きいため(例えば4倍程度の差がある)。TcがTaよりも高い反射率増加型のほうがTaveを大きくしやすい。言い換えれば、反射率増加型のほうが、Taveが同じという条件下では、反射層の膜厚を厚くできる。例えば、40%以上のTaveが得られる反射層の膜厚の範囲は、上記のように波長405nmで記録層の膜厚が6nmの場合、反射率増加型では13nm以下、反射率減少型では7nm以下であった。
【0044】
反射層の膜厚を厚くすると、記録層の冷却速度が向上する。従って、記録層を容易に非晶質化することができる。反射層の厚膜化は、形状が整った記録マークの形成という観点からも有利である。
【0045】
このように、反射率増加型では青色光波長域においても高線速度・高密度なオーバーライトに対応でき、なおかつ第1情報層として必要な高い透過率も得られる。これは、660nm及び405nmの2つの波長のみの計算結果であるが、各層の光学定数は波長に応じて変化しており、特に記録層7は、材料にもよるが、およそ波長500nmより短波長側で結晶のnが非晶質のnよりも小さくなる傾向が顕著であり、例えば結晶のnの非晶質のnに対する比が0.8以下になる場合が多い。したがって、光学特性において反射率増加型が反射率減少型よりも有利になるのは、特に波長500nm以下の場合である。
【0046】
以下、本発明の光学的情報記録媒体の製造方法について説明する。本発明の光学的情報記録媒体の製造方法は、成膜工程、オーバーコート工程、初期化工程、密着工程からなり、基本的にはこの順に各工程を行う。
【0047】
成膜工程として、第1基板1の案内溝の設けられた表面上に第1情報層2を、第2基板5の案内溝の設けられた表面上に第2情報層4をそれぞれ形成する。第1情報層2及び第2情報層4は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法等の通常の気相薄膜堆積法によって形成することができる。中でも成膜レート、製造コスト、得られる膜の品質等の観点からはスパッタリング法が最もバランスが良い。一般的には高真空状態のチャンバー内に不活性ガスを流しながら成膜を行うが、その際、酸素、窒素などを混入させながら成膜を行うことがある。これにより膜中にO原子、N原子などが混入し、膜の特性・各原子の結合状態を調整することができ、繰り返し特性や耐湿性等を向上させるのに有効な場合がある。特に、記録層7を成膜する際に窒素を混入させると、前述のように繰り返し特性等を向上させるだけでなく、記録層7の屈折率n及び/または消衰係数kを小さくすることができ、透過率を高くすることができる点で有利である。
【0048】
オーバーコート工程として、第1情報層2及び第2情報層4の上にUV樹脂などをスピンコートし、紫外線光を照射して硬化させ、オーバーコートを施す。ただし、この工程は、次の初期化工程の際に膜が蒸発するおそれがない場合等には省略することも可能である。
【0049】
初期化工程として、第1情報層2及び第2情報層4に対して、それぞれ第1基板1側及びオーバーコート側から、例えばレーザー光等のエネルギー光を照射することにより全面を初期化、すなわち結晶化させる。ただし、第2情報層の反射層の透過率が十分高い場合等には、先のオーバーコート工程を省略し、かつ次の密着工程を先に行った後に、第1情報層2及び第2情報層4に対して、それぞれ第1基板1側及び第2基板5側から、例えばレーザー光等のエネルギー光を照射することにより全面を初期化、すなわち結晶化させることも可能である。
【0050】
密着工程として、第1情報層2と第2情報層4をオーバーコート面同士を向かい合わせて、第1基板1と第2基板5とを分離層3を介して貼り合わせる。例えば、いずれか一方の膜面上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、膜面同士を向かい合わせて両基板を加圧・密着させ、紫外線光を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させることができる。
【0051】
図3は、本発明による光学的情報記録媒体の記録・再生を行うための装置の概略図である。レーザーダイオード12を出たレーザー光11は、ハーフミラー13及び対物レンズ14を通じて、モーター15によって回転されている光ディスク16上にフォーカシングされ、情報信号の記録・再生が行われる。
【0052】
情報信号の記録を行う際には、図4に示すパルス波形を用いてレーザー光11の強度を変調する。すなわち、レーザー光11の強度を、少なくとも、光を照射した場合においても照射部を瞬時溶融させるに十分なパワーレベルP1、光を照射しても照射部を瞬時溶融させることが不可能なパワーレベルP2及びP3(但し、P1>P2≧P3≧0)の間で変調する。なお、レーザー強度を上記のように変調するには、半導体レーザーの駆動電流を変調して行うのが良く、あるいは電気光学変調器、音響光学変調器等の手段を用いることも可能である。
【0053】
マークを形成する部分に対しては、パワーレベルP1の単一矩形パルスでもよいが、特に長いマークを形成する場合は、過剰な熱を省き、マーク幅を均一にする目的で、パワーレベルP1、P2及びP3との間で変調された複数のパルスの列からなる記録パルス列を用いる。マークを形成しない、あるいはマークを消去する部分に対しては、パワーレベルP2で一定に保つ。
【0054】
さらに、上記複数のパルス列の直後にパワーレベルP4(但し、P2>P4≧0)の冷却区間を設けると、特に熱過剰になり易いマーク後端部分の熱を除去できてマーク形状を整えるのに効果的である。逆に、非晶質化しにくくマーク幅が細くなり易いマーク前端部分においては、マーク幅を後端と揃えるために前記複数のパルス列のうち、図4に示したように、先頭のパルスだけその幅を広くしたり、そのパワーレベルをP1よりも高くすることもできる。
【0055】
また、上記複数のパルス列の各パルス及びパルス間の長さを一定にすると、単一周波数で変調できるため、変調手段が簡略化できて有利である。
【0056】
ここで、マークの長さやその前後のスペースの長さ、さらには隣のマークの長さ等の各パターンによってマークエッジ位置に不揃いが生じ、ジッタ増大の原因となることがある。本発明の光学的情報記録媒体の記録再生方法では、これを防止し、ジッタを改善するために、上記パルス列の各パルスの位置または長さをパターン毎にエッジ位置が揃うように必要に応じて調整・補償することができる。
【0057】
こうして記録された情報信号を再生する場合には、第1情報層2及び第2情報層4に記録されている情報が消去されない程度のパワーのレーザー光11を光ディスク16に照射し、その反射光をフォトディテクター17に入射させ、その反射光量変化を再生信号として検出する。
【0058】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例により制限されるものではない。
【0059】
第1基板としては、ポリカーボネイト樹脂からなり、直径12cm、厚さ0.58mm、グルーブ及びランド幅はともに0.4μm、グルーブ深さは約40nmのものを用いた。この第1基板のグルーブが形成された表面上に、第1情報層として、ZnS−SiO2(モル比ZnS:SiO2=80:20)ターゲットを用いて膜厚約110nmの下側保護層、Ge−Sb−Te(原子比Ge:Sb:Te=29:21:50)ターゲットを用いて膜厚約6nmの記録層、ZnS−SiO2(モル比ZnS:SiO2=80:20)ターゲットを用いて膜厚約40nmの上側保護層、Ag−Pd−Cu(原子比98:1:1)ターゲットを用いて膜厚約10nmの反射層の各層をスパッタリング法により順次積層した。
【0060】
また、同じ基板を第2基板として用い、そのグルーブが形成された表面上に、第2情報層として、Ag−Pd−Cu(原子比98:1:1)ターゲットを用いて膜厚約80nmの反射層、ZnS−SiO2(モル比ZnS:SiO2=80:20)ターゲットを用いて膜厚約40nmの上側保護層、Ge−Sb−Te(原子比Ge:Sb:Te=29:21:50)ターゲットを用いて膜厚約10nmの記録層、ZnS−SiO2(モル比ZnS:SiO2=80:20)ターゲットを用いて膜厚約90nmの下側保護層の各層をスパッタリング法により順次積層した。ここで、第2情報層は、レーザー光入射側から見て逆順、すなわち奥にある層から順に積層している。いずれも直径10cm、厚さ6mm程度のターゲットを用い、記録層以外はArガス、記録層はNを添加するためにArとN2の混合ガス(N2ガス分圧は約5%)をスパッタガスとして成膜した。
【0061】
次に、第1情報層及び第2情報層の膜面上に紫外線硬化性樹脂をスピンコートし、紫外線光を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させることでオーバーコートを施した。
【0062】
次に、第1情報層及び2情報層に対して、それぞれ第1基板及びオーバーコート側からレーザー光でアニールすることにより、全面を初期化、すなわち結晶化させた。
【0063】
最後に第2情報層のオーバーコート面上に紫外線硬化性樹脂を塗布し、第1情報層の膜面と向かい合わせて両者を加圧・密着させ、第1基板の側から紫外線光を照射して紫外線硬化性樹脂を硬化させて分離層とし、2つの情報層を有する1枚のディスクとした(ディスクA)。
【0064】
また、本発明のもう一つの実施例として、第1情報層2において、TiO2ターゲットを用いて膜厚約40nmの透過率向上層を反射層上に形成し、上側誘電体層の膜厚を50nmとした点を除いてはディスクAと同様にして、ディスクBを作製した。
【0065】
さらに、比較例として、下側誘電体層及び上側誘電体層の膜厚をそれぞれ60nm及び20nmとしたこと以外は、ディスクAと全く同様に作製したディスクCも準備した。
【0066】
各層の材料の屈折率n及び消衰係数kは表1に示したものと同じであり、ディスクA(反射率増加型)及びディスクC(反射減少型)の光学特性は、表2に示したものと同じである。なお、実測により求めた波長405nmにおけるTiO2の光学定数はn=2.7、k=0.0であり、ディスクA及びディスクCと同様に行った光学計算によると、ディスクBのAc/Aa、ΔR、Taveの値はそれぞれ1.20、10%、50%であった。
【0067】
これらのディスクを、波長405nm、NA0.6の光学系を用い、線速5m/sの条件でマークエッジ記録を行い、以下の測定をした。まず、グルーブ及びランドに9.7MHzの3T信号と2.6MHzの11T信号とを交互に11回記録し、3T信号が記録された状態でこのトラックを再生してそのC/N比及び消去率をスペクトラムアナライザーで測定した。ここで測定した消去率は、有効消去率、すなわち3T信号の振幅と11T残留信号との振幅の比とした。
【0068】
信号を記録する際のレーザー変調波形は、3T信号の場合はパルス幅51.3ns(パワーレベルP1)の単一矩形パルスとし、11T信号の場合は9個のパルスからなるパルス列(パワーレベルP1)とし、その先頭は51.3ns、2番目以降はすべて17.1nsのパルス幅で、各パルス間(パワーレベルP3)の幅も17.1nsとした。マークを記録しない部分ではパワーレベルP2の連続光とした。パワーレベルの決め方としては、記録パワーレベルP1は3T信号を記録した場合にそのC/N比が45dBを超えるパワーの下限値の1.5倍、パワーレベルP2及びP3は消去率が15dBを超えるパワー範囲の中央値、再生パワーレベルは第1情報層を再生する場合は1.0mW、第2情報層を再生する場合は1.5mWとした。上記測定を行った結果を表3に示す。
【0069】
【表3】
Figure 0004339999
【0070】
本実施例のディスクA及びディスクBの第1情報層は48dB以上のC/N比と20dB以上の消去率が得られており、実用的な記録媒体として用いるのに十分な、良好な信号品質であった。特に、ディスクBではディスクAよりもさらに高い25dB程度の消去比が得られており、Ac/Aaの値がより大きい効果が反映されている。これに対し、比較例のディスクCの第1情報層では、C/N比こそ48dB程度得られているものの、消去比は13dB程度と低く、実用的な記録媒体としては不十分であった。
【0071】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、高密度・高線速度なオーバーライトにおけるC/N比、消去率がいずれも高い情報層を複数備えた光学的情報記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の光学的情報記録媒体の一形態の構成断面図である。
【図2】 本発明の光学的情報記録媒体の別の一形態の構成断面図である。
【図3】 本発明の光学的情報記録媒体の記録再生装置の一形態の構成図である。
【図4】 本発明の光学的情報記録媒体の記録再生方法に用いるパルス波形の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 第1基板
2 第1情報層
3 分離層
4 第2情報層
5 第2基板
6 下側保護層
7 記録層
8 上側保護層
9 反射層
10 透過率向上層
20 界面層
11 レーザー光
12 レーザーダイオード
13 ハーフミラー
14 対物レンズ
15 モーター
16 光ディスク
17 フォトディテクター

Claims (10)

  1. 第1基板の上に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層及び第2基板をこの順に備えた光学的情報記録媒体であって、
    前記第1情報層が、前記第1基板に近い側から順に少なくとも下側保護層、光ビームの照射により光学的に検出可能な異なる2以上の状態間で可逆的に変化する記録層、上側保護層、反射層及び透過率向上層をこの順に備えた多層薄膜からなり、
    前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第1情報層に集光してマークを形成した領域における反射率が、前記マークを形成していない領域における反射率より高く、
    前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第2情報層に集光したときに、前記第1情報層を透過して前記第2情報層に到達する前記光ビームの割合が40%以上であることを特徴とする光学的情報記録媒体。
  2. 前記マークを形成した領域が非晶質状態であり、前記マークを形成していない領域が結晶状態である請求項1に記載の光学的情報記録媒体。
  3. 前記光ビームの波長が500nm以下である請求項1または2に記載の光学的情報記録媒体。
  4. 前記第1情報層が、前記下側保護層と前記記録層との間の界面及び前記記録層と前記上側保護層との間の界面から選ばれる少なくとも一方に、さらに界面層を備えた請求項1〜3のいずれかに記載の光学的情報記録媒体。
  5. 前記記録層の膜厚が3nm以上10nm以下である請求項1〜4のいずれかに記載の光学的情報記録媒体。
  6. 前記記録層が少なくともGe、Sb及びTeを含む請求項1〜5のいずれかに記載の光学的情報記録媒体。
  7. 前記記録層に含まれるGe、Sb及びTeの原子比Ge:Sb:Teをx:y:z(x+y+z=1)と表示したときに、0.10≦x≦0.50及び0.40≦z≦0.60である請求項に記載の光学的情報記録媒体。
  8. 第1基板の上に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層及び第2基板をこの順に備える光学的情報記録媒体の製造方法であって、
    前記第1情報層が、前記第1基板に近い側から順に少なくとも下側保護層、光ビームの照射により光学的に検出可能な異なる2以上の状態間で可逆的に変化する記録層、上側保護層、反射層及び透過率向上層をこの順に備えた多層薄膜からなり、
    前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第1情報層に集光してマークを形成した領域における反射率が、前記マークを形成していない領域における反射率より高く、
    前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第2情報層に集光したときに、前記第1情報層を透過して前記第2情報層に到達する前記光ビームの割合が40%以上であり、
    前記第1基板上に前記第1情報層を、前記第2基板上に前記第2情報層をそれぞれ積層する成膜工程と、前記第1情報層及び前記第2情報層を記録可能な初期状態にする初期化工程と、
    前記第1情報層と前記第2情報層とが向かい合うように前記分離層を介して前記第1基板と前記第2基板とを貼り合わせる密着工程とを含み、
    前記成膜工程において、前記記録層を希ガス及び窒素を必須成分とする雰囲気中で成膜することを特徴とする光学的情報記録媒体の製造方法。
  9. 第1基板の上に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層及び第2基板をこの順に備える光学的情報記録媒体の記録再生方法であって、
    前記第1情報層が、前記第1基板に近い側から順に少なくとも下側保護層、光ビームの照射により光学的に検出可能な異なる2以上の状態間で可逆的に変化する記録層、上側保護層、反射層及び透過率向上層をこの順に備えた多層薄膜からなり、
    前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第1情報層に集光してマークを形成した領域における反射率が、前記マークを形成していない領域における反射率より高く、
    前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第2情報層に集光したときに、前記第1情報層を透過して前記第2情報層に到達する前記光ビームの割合が40%以上であり、
    前記光ビームの波長が500nm以下であり、
    前記第1情報層及び前記第2情報層に、前記第1基板側から入射した前記光ビームによって前記マークを形成及び検出することにより、
    情報の記録及び再生を行うことを特徴とする光学的情報記録媒体の記録再生方法。
  10. 第1基板の上に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層及び第2基板をこの順に備える光学的情報記録媒体の記録再生装置であって、
    前記第1情報層が、前記第1基板に近い側から順に少なくとも下側保護層、光ビームの照射により光学的に検出可能な異なる2以上の状態間で可逆的に変化する記録層、上側保護層、反射層及び透過率向上層をこの順に備えた多層薄膜からなり、
    前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第1情報層に集光してマークを形成した領域における反射率が、前記マークを形成していない領域における反射率より高く、
    前記第1基板側から入射した前記光ビームを前記第2情報層に集光したときに、
    前記第1情報層を透過して前記第2情報層に到達する前記光ビームの割合が40%以上であり、
    波長500nm以下の前記光ビームを発生させる光源と、
    前記第1情報層及び前記第2情報層に前記第1基板側から入射した前記光ビームによって前記マークを形成及び検出するための層認識手段及び層切り替え手段とを備えたことを特徴とする光学的情報記録媒体の記録再生装置。
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