JP3988968B2 - トラクション制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、基準速度に応じて複数の車輪をトラクション制御するトラクション制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のトラクション制御装置は特許2803472号公報に記載されている。本装置は、左右従動輪の速度差が所定値を越えた場合を車輪速センサの異常として認識し、異常時にはトラクション制御の基準速度を最低車輪速よりも大なる車輪速から算出している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、異常時の検出は左右従動輪の速度差に基づくため、速度差がつくまでは異常検出が行われず、トラクション制御に遅れが発生する。本発明は、従来に比してトラクション制御の遅れが抑制されたトラクション制御装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は車輪のスリップ状態を検知する場合に、当該車輪の車輪速と比較される基準速度(V STD )を求め、この基準速度(V STD )に応じて複数の車輪をトラクション制御するトラクション制御装置を対象とする。
今回の基準速度(V STD(n) )となる車輪速(V 0 )は、以下のように設定する。
(A)前回の基準速度(V STD(n−1) )が第1の値未満の場合であって、最低車輪速(V min )が前記第1の値よりも小さな第2の値以上の場合に、最低車輪速(V min )に設定する(図2参照)。
(B)前回の基準速度(V STD(n−1) )が前記第1の値以上の場合に、最低車輪速(V min )よりも大きく最大車輪速(V max )よりも小さな車輪速(V NEXT )に設定する。
第1の値は60km/h、第2の値は5km/hにすることができる(図2参照)。
前回の基準速度(V STD(n−1) )が、第1の値(例えば60km/h)以上の場合においては、最低車輪速(V min )ではなく、車輪速(V NEXT )を、今回の基準速度を与える車輪速(V 0 )としても、トラクション制御は円滑に実行することができる。
【0005】
上述の制御では、最低車輪速(V min )ではなく、車輪速(V NEXT )を、今回の基準速度を与える車輪速(V 0 )に設定している。したがって、このような場合においては、車輪速異常であって、その出力値が零である場合においても、トラクション制御に入ることができるため、トラクション制御の遅れを抑制することができる。
【0006】
なお、車速は、車輪速センサ、Gセンサ、又はスピードセンサ等から算出することができる。
【0007】
車輪速(V NEXT )は、最低車輪速(V min )の次に小さな車輪速であることが好ましい。
【0008】
車輪速(V NEXT )は、最低車輪速(V min )の次の次に小さな車輪速であることが好ましい。
【0009】
上記車両の車輪は全てトラクション制御される駆動輪になりえることとしてもよい。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、実施の形態に係るトラクション制御装置について説明する。同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いるものとし、重複する説明は省略する。
【0011】
図1は実施の形態に係るトラクション制御装置を搭載した車両の概略構成図である。
【0012】
本車両は、車体BDYに対して回転可能に設けられた4つの車輪(前輪WFL,WFR、後輪WRL,WRR)を備えている。車輪WFL,WFR,WRL,WRRにそれぞれ対応して車輪速センサ10、10x、10y、10zがそれぞれ設けられており、その出力は車輪速に比例している。ここでは、車輪速センサ10、10x、10y、10zは、電気/磁気学的或いは光学的に車輪の回転速度を検出し、回転速度に応じた交流信号を出力するものとする。
【0013】
各センサ10、10x、10y、10zからの出力は、車両内部に配置されたECU(電子制御ユニット)やABS(アンチロックブレーキシステム)&TRC(トラクション制御)システムコンピュータ等の制御装置100に入力される。
【0014】
各センサ10、10x、10y、10zから出力される交流信号は、A/Dコンバータ12を介して制御装置100内のプロセッサ24に入力される。A/Dコンバータ12は、車輪速センサからの交流信号を所定のサンプリングタイミングでサンプリングしてデジタル信号に変換し、プロセッサ24に供給する。プロセッサ24は、ROM16に格納されたプログラムを用いてデジタル信号を処理し、車輪速を検出して各種制御を行う。なお、プロセッサ24やROM16、RAM18はマイクロコンピュータで構成することができる。
【0015】
制御装置100は、入力された車輪速情報等に基づいて各車輪の車輪速vFL,vFR,vRL,vRRを求め、求められた各車輪速から算出される車速を表示器上に表示したり、車輪速vFL,vFR,vRL,vRRに基づいてブレーキ制御を実行する。
【0016】
ブレーキ制御を実行するための駆動手段として、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRにはブレーキBFL,BFR,BRL,BRRが設けられている。ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRは、ブレーキ駆動用アクチュエータACTによって駆動され、車輪WFL,WFR,WRL,WRRに制動力を与える。ブレーキ制御としては、ABSにおける車輪WFL,WFR,WRL,WRRのロックタイミング制御、TRCによるスリップ抑制制御、姿勢安定のための車両挙動制御等があるが、ここではTRCによるスリップ制御について説明する。
【0017】
図2はトラクション制御の実行を説明するためのフローチャートである。四輪駆動(4WD)車は、四輪WFL,WFR,WRL,WRRが駆動輪となり得る車両である。すなわち、四輪駆動走行モードにおいては全ての車輪WFL,WFR,WRL,WRRが駆動輪となり、二輪駆動走行モードにおいては前輪WFL,WFR又は後輪WRL,WRRが駆動輪となる。ここでは、四輪駆動走行モードにおいて説明する。
【0018】
四輪駆動走行モードによる悪路走行中において、図1に示した左前輪WFLが路面に対してスリップすることにより空転し、他の車輪WFR,WRL,WRRがスリップしないように路面に接触していたとする。この場合、トラクション制御時においては、ブレーキ駆動用アクチュエータACTを駆動することによってブレーキBFLを動作させ、左前輪WFLに制動力を与えてこの回転を停止させることにより、スリップを抑制する。
【0019】
この制御を行うためにはスリップ状態の検知が必要である。当該車輪の車輪速vFLが基準となる基準車輪速(基準速度)vSTDに比較して著しく大きい場合に、これをスリップ状態と判定することができる。トラクション制御において、基準車輪速vSTDと特定車輪速との偏差が所定値を超えた場合には、高速側の車輪に制動力を与えて(ブレーキをかけて)スリップを抑制する。
【0020】
詳説すれば、車輪速偏差Δv(=vFL−vRR)が所定偏差を超えた場合に、制御装置100は車輪WFLがスリップ状態であることを認識し、ブレーキ駆動用アクチュエータACTを駆動することによってブレーキBFLを動作させ、左前輪WFLに制動力を与えてこの回転を停止させる。換言すれば、トラクション制御時において、制御装置100は検出された車輪速等に基づいて四輪WFL,WFR,WRL,WRRがスリップしないようにアクチュエータACTを制御する。
【0021】
このように、トラクション制御は特定の基準車輪速vSTD(n)に基づいて実行される(S9)。
【0022】
また、システムがフェイル中の場合には(S1)、フェイル処理を行いトラクション制御を禁止する(S2)。
【0023】
フェイル中でない場合には必要に応じて上記の如くトラクション制御を実行するが、トラクション制御を実行するためには、制御装置100によって4つの車輪速vFL,vFR,vRL,vRRから基準車輪速vSTD(n)を求める。
【0024】
今回の基準車輪速vSTD(n)は、以下のように所定車輪速v0に基づいて求められる。
【0025】
(1)最低車輪速(4輪の車輪速のうち最も小さいもの)vminが比較的低く(例えば5km/hよりも小さく)(S3)、且つ、車輪速センサ等が異常と判定又は推定される場合においては(S4)、v0に最低車輪速vminの次に小さい車輪速vNEXTを用いる(S5)。
【0026】
(2)前回の基準車輪速vSTD(n-1)が所定値(例えば60km/h)以上の場合においても(S7)、v0に最低車輪速vminの次に小さい車輪速vNEXTを用いる(S5)。
【0027】
(3)前回の基準車輪速vSTD(n-1)が所定値よりも小さい場合においては(S7)、v0に最低車輪速vminを用いる(S8)。
【0028】
(4)惰性走行中やABS制御中等の場合には、v0として最大車輪速を用いる。
【0029】
上記(2)について詳説すれば、車速が所定値以上の場合(S7)においては、車輪速vNEXTをv0とし、これに基づく基準車輪速vSTD(n)を用いてもトラクション制御は円滑に実行することができる。ステップ(S6)においては、このv0を用いてトラクション制御に用いる基準車輪速vSTD(n)を求める。これは、以下の演算、又は予めこれらを対応づけたマップを用いたルックアップテーブル方式によって求めることができる。
【0030】
このような場合においては、車輪速異常であって、その出力値が零である場合においても、トラクション制御(S9)に入ることができるため、トラクション制御の遅れを抑制することができる。
【0031】
車輪速VNEXTは、最低車輪速Vminよりも大きく最大車輪速Vmaxよりも小さい。
【0034】
上述のように、基準車輪速vSTD(n)は所定車輪速v0等に基づいて求められるが、これの算出方法は以下の通りである。
【0035】
(A)システムにノイズが検出された場合、システムの起動初期等の場合においては、基準車輪速vSTD(n)にv0ではなく最大車輪速を用いる。
【0036】
(B)システムの遮断からの復帰直後やシステム起動時等においては、最大車輪速及び前回の基準車輪速vSTD(n-1)の中で最大のものを今回の基準車輪速vSTD(n)とする。
【0037】
(C)これら2つの場合(A,B)以外の場合には、v0、vT(n-1)−αdwΔt、vT(n-1)+αupΔtのうち、真中の大きさのものを今回の基準車輪速vSTD(n)とする。ここで、係数αdwは、vT(n-1)が2km/h以上の場合1、これ以外の場合1.15を満たす。係数αupは、vT(n-1)が2km/h以上の場合1、これ以外の場合5を満たす。なお、Δtは演算(サンプリング)周期である。
【0038】
また、車輪速異常やノイズ、センサ瞬断時などにおいては、上記前後輪最大車輪速及び前後輪最小車輪速は、前輪対及び後輪対のそれぞれにおいて、正常と判定される左右いずれかの車輪速を採用することとしてもよい。
【0039】
以上、説明したように、上記トラクション制御装置は、基準速度vSTD(n)に応じて複数の車輪WFL,WFR,WRL,WRRをトラクション制御するトラクション制御装置において、前回の車速vSTD(n-1)が所定値(例えば60km/h)以上の場合に今回の基準速度vSTD(n)を最低車輪速vminよりも大きく最大車輪速vmaxよりも小さな所定車輪速vNEXTに基づいて求めることを特徴とする。
【0040】
なお、車速は、車輪速センサ、Gセンサ、又はスピードセンサ等から算出することができる。
【0041】
所定車輪速vNEXTは、最低車輪速vminの次に小さな車輪速であってもよいし、最低車輪速vminの次の次に小さな車輪速であってもよい。また、上記車両の車輪WFL,WFR,WRL,WRRは全てトラクション制御される駆動輪になりえる。
【0042】
【発明の効果】
以上、説明したように、本発明のトラクション制御装置は従来に比してトラクション制御の遅れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係るトラクション制御装置を搭載した車両の概略構成図。
【図2】トラクション制御の実行を説明するためのフローチャート。
【符号の説明】
WFL,WFR,WRL,WRR…駆動輪、100…制御装置、BFL,BFR,BRL,BRR…ブレーキ。
Claims (4)
- 車輪のスリップ状態を検知する場合に、当該車輪の車輪速と比較される基準速度(V STD )を求め、この基準速度(V STD )に応じて複数の車輪をトラクション制御するトラクション制御装置において、
今回の基準速度(V STD(n) )となる車輪速(V 0 )は、
前回の基準速度(V STD(n−1) )が第1の値未満の場合であって、最低車輪速(V min )が前記第1の値よりも小さな第2の値以上の場合に、最低車輪速(V min )に設定し、
前回の基準速度(V STD(n−1) )が前記第1の値以上の場合に、最低車輪速(V min )よりも大きく最大車輪速(V max )よりも小さな車輪速(V NEXT )に設定する、
ことを特徴とするトラクション制御装置。 - 前記車輪速(V NEXT )は、前記最低車輪速(V min )の次に小さな車輪速であることを特徴とする請求項1に記載のトラクション制御装置。
- 前記車輪速(V NEXT )は、前記最低車輪速(Vmin)の次の次に小さな車輪速であることを特徴とする請求項1に記載のトラクション制御装置。
- 前記車両の車輪は全てトラクション制御される駆動輪になりえることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のトラクション制御装置。
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