JP3988388B2 - 電子写真用トナーとその製造方法、画像形成方法及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複写機、プリンタ等に用いられる電子写真用トナーとその製造方法、画像形成方法及び画像形成装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
現在、高速で高画質を要求される画像形成装置には、殆ど電子写真方式の画像形成方法が用いられている。電子写真方式は多色カラー画像の形成にも対応することが出来、今後も引き続きこの分野で大きな地歩を占めていくと考えられるが、それだけに性能の更なる向上を望まれている項目も幾つかある。
【0003】
近来、市場から、電子写真による画像形成方法により原稿同等の画質を再現し、画像汚れのない印刷ライクの高画質の要求が高まっている。
【0004】
通常の粉砕法或いは重合法で製造した均一な濃度を有するトナー粒子を用い、熱ローラ定着器を装着した電子写真画像形成方法で作製した画像は、熱ローラ定着によりトナー粒子が溶融して広がるため原稿を再現出来ず、定着オフセットの発生により画像汚れが発生し、画像表面に凹凸が出来るため印刷ライクとならず問題が有った。
【0005】
現在まで、原稿を再現し印刷ライクの画像を得るために、トナーの粒径を細かくして、熱ローラ定着でのトナーの広がりを少なく且つトナー消費量を少なくして、原稿の階調性、濃度及び解像度を忠実に再現し、画像表面の凹凸を少なくして高画質で印刷ライクの画像を得る試みがなされて来たが、トナーの小粒径化にともないトナーのカバーリングパワーが減少し、充分な画像濃度が得られず、且つ現像、転写、感光体のクリーニング等の画像形成プロセスも難しくなり電子写真による画像形成方法で高画質の画像が得られていない。又、トナー粒径を2〜3μmに小粒径化したトナー粒子を用いると、トナー粒子を吸い込んだ場合、塵肺等の疾病を患うおそれがあり、安全衛生上も好ましくない。
【0006】
塵肺等の心配の無い5μm程度の粒径の単独濃度のトナーを用いて、電子写真法によりトナーを重ね合わて画像を形成すると、定着時にトナー粒子が溶融し広がるため原稿の階調性、濃度及び解像度を忠実に再現することが出来ていない。
【0007】
又、熱ローラ定着時に、トナーが熱ローラに少しずつ付着堆積し、付着したトナーにより定着オフセットが発生し、定着オフセットによる画像汚れで高画質の画像が得られていないのが現状である。
【0008】
一方、熱定着器の省エネルギーやウォーミングアップ時間の短縮の要望が強いが、この要望に応えようとすると、定着の堅牢度や安定性を充分確保した上での低温定着可能なトナーを開発する必要がある。
【0009】
又、画質の向上のため、特にカラー階調画像においては、低濃度部での粒状性が良く最高濃度は高く、しかも低濃度部から高濃度部まで長い直線階調特性を持たせる必要がある。
【0010】
その改善策の一つとして、コアシェル構造を有するトナーを用いることが考えられているが、単にトナーをコアシェル構造にしただけでは、必ずしも性能向上が図れず、従ってコアシェル構造を有するトナーが急速に実用化がなされるという状況に至っていない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の状況に鑑み、コアシェル構造を有するトナーの特性を充分発揮させる方法を見出すことにある。
【0012】
即ち、トナーをコアシェル構造とすることにより定着時のオフセットを有効に防止する技術や、低濃度部でも粒状性がよく、低濃度部から高濃度部まで広いダイナミックレンジを有する画像を作る技術の開発に役立つ等の、優れた特性を発揮する電子写真用トナーとその製造方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、鋭意検討した結果、上記の問題解決には、トナー粒子構造をコアシェル化するだけでなく、更にトナーのコアの形状を扁平化することが極めて有効であることを見出し、本発明に至った。
【0014】
本発明の目的は、下記構成の何れかを採用することにより達成される。
〔1〕 コアシェル構造を有する電子写真用トナーにおいて、トナー粒子の形状が、コア部の扁平度をH1、シェル部の扁平度をH2とするとき下記関係を有することを特徴とする電子写真用トナー。
【0015】
H1>H2
〔2〕 コア部とシェル部の扁平の方向が同一であるトナー粒子よりなることを特徴とする〔1〕記載の電子写真用トナー。
【0016】
〔3〕 シェル部に比してコア部の溶融粘度が低く、離型剤含有量が多いことを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の電子写真用トナー。
【0017】
〔4〕 シェル部に比してコア部の溶融温度が高いことを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載の電子写真用トナー。
【0018】
〔5〕 コアシェル構造を有する電子写真用トナーの製造方法において、トナー粒子の形状が、コア部の扁平度をH1、シェル部の扁平度をH2とするとき下記関係になるようにすることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
【0019】
H1>H2
〔6〕 〔1〕〜〔4〕の何れか1項記載の電子写真用トナーを用い、電子写真感光体上の静電潜像を現像することを特徴とする画像形成方法。
【0020】
〔7〕 〔1〕〜〔4〕の何れか1項記載の電子写真用トナーを用い、電子写真感光体を一様帯電、像露光、現像する手段、及び形成されたトナー像を転写、熱定着する各手段を有することを特徴とする画像形成装置。
【0021】
本発明の如く、コア形状が非常に扁平なトナー粒子を用いることにより、コアシェル型のトナーが持つ優れた特性を充分発揮することが出来る。
【0022】
本発明において、コアシェル構造を有するトナーとは、そのトナー粒子の表面部分(シェル部分)とより中心部(コア部分)との特性が異なる構造を有するトナーをいう。特性とはその構成成分や組成、又は樹脂の重合度、軟化点及び溶融粘度等の物理化学特性の何れをも含まれる。
【0023】
又、扁平形状を有するとは、通常広く用いられる意味で本発明でも用いている。即ち、図1は、扁平形状を有するトナー粒子の平面図と側面図であるが、平面図に示す粒子の長軸r1及び短軸r2より、側面図に示す厚さdが小さい形状を有するトナーを扁平形状を有するトナーと呼んでいる。これらは電子写真感光体や転写材(転写紙、画像支持体)に付着するときには、最も付着面積が大きくなるようdの長さ方向と垂直方向の面で付着すると考えられる。
【0024】
本発明における扁平形状をさらに詳しく述べれば、上記長軸r1、短軸r2、厚さdが下記式を満たすものをいう。
【0025】
r1≧r2>d
{(r1+r2)/d}>2
ここに、扁平度Hを下記で定義し、
H=(r1+r2)/2d
コアの扁平度をH1で、またシェルの扁平度をH2で表す。
【0026】
本発明において、扁平度H2は1.5〜8が好ましく、より好ましくは2〜5である。扁平度H1はこれより大きく、2〜10が好ましく、より好ましくは3〜8であるのがよい。ここで、コアの長軸r1′、短軸r2′、厚さd′は、各々対応するr1、r2、dに対し、(r1′/r1)、(r2′/r2)、(d′/d)が0.3〜0.8の比率を有すものが適当である。また、r2/r1は0.6〜1.0、より好ましくは0.8〜1.0がよい。
【0027】
さらにコア部とシェル部の扁平な方向が同一であることが好ましい。即ち、本発明のトナー粒子とは、形状が扁平なだけでなく、各トナー粒子を個々に見たとき扁平な方向(上記図1でdの長さ方向)がコア部とシェル部が共に同じであるものが好ましい。これらの説明を行ったのが、図2である。
【0028】
本発明の如く、コアシェル構造のトナーの特徴がトナー粒子のコア部を扁平にすることにより発揮される理由は、すでに上記したが、トナーの特性が扁平であることにより、その最も大きな面で感光体或いは転写材(画像支持体、転写紙ともいう)との付着がより確実なものとなるためである。この様にシェル構造でトナーの付着状態が規定されるので、コアは同様に扁平面を感光体或いは転写材へと向けることになる。また、積層された形で付着される場合にも、より上の層のトナーにも感光体或いは転写材と及ぼし合う力が有効に働くと考えられる。また、転写時等でもトナーの積層状態が崩れることなく一緒に転写されるため、その工程での画像劣化が少ないのであろうと考えられる。
【0029】
本発明においては、トナー粒子のコアとシェルの扁平度(扁平の度合い)が異なり、コア部扁平度がより大きいものである。その理由としては、シェル部に比してコア部の溶融粘度が低く、離型剤含有量を多くして比較的低温でも確実に定着が出来、オフセットも起こさないトナーを造った場合には、定着ローラ間に狭持されたトナーが熱と圧力を受けたとき、コア部の溶融粘度が低い樹脂が転写材表面に広がり有効にその接着効果が発揮されると考えられる。反対にシェル部に比してコア部の溶融温度を高くしたトナーにより、低濃度部の粒状性を良くし、高い最高濃度と長い階調性を持たせようとする時には、転写材が定着ローラ間に狭持された時、シェル部は転写材上に広がって定着性を高くするが、コア部は溶融温度が高く、しかも扁平度が高いため、その形状が殆ど変化せず、やはり低濃度部の粒状性を良くし、高濃度部濃度が充分確保され定着性も確保されると考えられる。
【0030】
即ち、シェル部に比してコア部の扁平度が大きく、溶融粘度が低く、離型剤含有量が多い扁平トナーは定着時のオフセット防止性能がよいので、本発明の好ましい実施態様の一つである。トナーが扁平で確実に転写材に付着しているため、熱ローラ対で狭持したとき、確実に熱と圧力がトナー像に作用し、コア内部の溶融粘度が低い樹脂も外部に流れ出して確実に定着される。しかし、この部分には離型剤も多量に含まれているのでオフセットは防止できるのであろう。
【0031】
又、コア部の扁平度が大きい扁平トナーを用いると、シェル部に比してコア部の溶融温度が高いコアシェル構造トナーにおいては、低濃度部の粒状性が良く高濃度部の濃度がより高い画像が得られるという特性が確実に発揮され好ましい。
【0032】
本発明の扁平形状を有するトナーを作製するには、乳化重合、或いは懸濁重合で製造した粒子を熱と外圧で扁平化処理することにより製造することが出来る。
【0033】
具体的には、上記重合反応が80%程度まで進行した時点で、加圧された隘路を循環させた後、重合触媒を追加し重合反応を完了させることにより製造することが出来る。
【0034】
このとき、実際の作製工程においては、シェル部がコア部に比して軟化点が高いトナーを造る場合には、一旦、コアシェル構造のトナーを造った後、温度を充分上げるとシェル部の形状がやや丸くなり、適当な扁平度になった時、急冷すればよい。この関係が逆の場合は、外部からの温度、シェアを強く掛け結果として、コア部に強いシェアが掛かる様にする必要がある。
【0035】
加圧された隘路を循環させる装置としては、アニュラー型連続湿式撹拌ミルを用いることが出来る。
【0036】
図3にアニュラー型連続湿式撹拌ミルの一例の要部断面図を示す。
アニュラー型連続湿式撹拌ミルは、既に知られているミルの1種で、断面三角形のアニュラー型(環状)のステータ1内にほぼ同じ形状を有するロータ2が回転し、このステータ1とロータ2との間の幅の狭い間隙、即ち、破砕帯3にメディア4が充填されていて、ミルに供給される80%程度まで重合が進んだ2次粒子を含む溶液に機械的な衝撃力を与え、2次粒子の形状を扁平化する。前記溶液は、ミルの供給口5からポンプにてW型断面の前記破砕帯3を一巡し、上部のキャップセパレータ6でメディア4と分離されて、出口7から排出される。又、扁平化処理中の溶液の温度制御は、温水8をステータとロータに循環させることにより行われる。メディア4は、遠心力によって、W型の粉砕帯を順次に移動し、再度、入り口まで戻って、循環する。メディアとしては、通常、0.5〜3mm径のジルコン、ガラス及びスチール等が用いられる。
【0037】
【発明の実施の形態】
先ず本発明の電子写真用トナー粒子について説明を行う。
【0038】
本実施形態の一例としてのトナー粒子は、コアとして濃部とその周辺部(シェル部)に淡部とを有した着色粒子から成るトナー粒子であって、濃部と淡部とは同一色相を有している。図1には本実施形態のトナー粒子の中央部での断面形成を模式的に示しているが、本発明のトナー粒子の個数平均粒径D0は4〜10μmであって、中央部近くに位置した濃部についての個数平均粒径D1は2〜7μmである。トナー粒子中で濃部の占める割合は中央部での断面積で25〜70%となっている。そして、トナー付着量が0.5mg/cm2の状態において、淡部のみから成るトナー粒子のトナー濃度は、濃部のみから成るトナー粒子のトナー濃度の15〜35%となっている。
【0039】
本実施形態のトナー粒子は、濃部は小径なので観察される画面上での粗さが目立たず、淡部については大径であっても色調が淡いので、画面上での粗さが目立たない優れた特徴をもっている。
【0040】
本実施形態のトナー粒子と、淡部のみから成るトナー粒子(淡トナー)と、濃部のみから成るトナー粒子(濃トナー)とについて、トナー付着量と反射画像濃度との関係を見ると、トナー付着量は0.5mg/cm2で略1層のトナーが付着した状態となり、1.0mg/cm2で略2層のトナーが付着した状態となる。従来、一般に用いられているトナーでは、トナー付着量が0.5mg/cm2になると画像濃度は略飽和状態となる。濃トナーについても同様であって、トナー付着量0.5mg/cm2の条件下において、淡トナーの反射画像濃度は濃トナーの反射濃度の15〜35%の関係となっている。本発明トナーにあっては、トナー付着量が0.5mg/cm2の条件下でトナーの淡部は重なり合っているが濃部は重なり合っていないので、反射濃度は飽和状態には達しない。
【0041】
トナー付着量が0.5mg/cm2以下の条件下では、本発明トナーではトナー淡部も重ならず、トナー付着量の増加と共に、比例的に反射画像濃度は高くなる。
【0042】
トナー付着量が1.0mg/cm2の条件下では、例えば濃部の断面積が1/2の本発明トナーについてはトナー濃部も重なって、反射画像濃度は略飽和状態となる。
【0043】
本発明トナーでは、トナー濃部の断面積の割合を変えることによって、反射画像濃度の傾きが変化し、トナー濃部断面積の割合と飽和トナー層の層厚とは、略逆数の関係になっている。例えばトナーの濃部断面積が1/2の場合には、トナー層厚が2層で反射濃度は略飽和状態となる。従って、画像形成に当たっての帯電条件、現像条件の設定はかかるトナーの特応して設定がなされる。
【0044】
次に本発明トナーの製造方法について説明する。粒子中の中央部に濃部と、その周辺部に淡部とを有した着色トナー粒子は、▲1▼高濃度着色核使用懸濁重合法、▲2▼ミニエマコアシェル化法、▲3▼高濃度着色核粒子表面改質法の何れかによって製造することができる。
【0045】
▲1▼高濃度着色核使用懸濁重合法
・ポリオレフィンなどのワックス類と着色剤とを混合し、ワックス類を着色する。ついで、モノマーに分散し、懸濁重合する。その結果、内部に着色剤を高濃度で含有するトナー粒子を形成することができる。ここで、モノマー中にワックス類よりも少ない量の着色剤を含有させる。
【0046】
まずポリオレフィン(低分子量ポリエチレンや低分子量ポリプロピレン)と着色剤とを混合、ついで混練して着色剤含有のポリオレフィンを調製する。この着色されたポリオレフィンを着色剤(前述のポリオレフィン中に存在する着色剤の10〜80質量%の量とする)を分散あるいは溶解したスチレンやアクリル系モノマー中に分散する。その際、加熱(最大で80℃程度。これ以上高温にするとモノマーの熱重合が開始されてしまう。)して分散することが好ましい。加熱分散した後に冷却することでモノマー中にある大きさの核として着色されたポリオレフィンが分散された状態となる。このものを分散安定剤を含有した水系媒体中にホモミキサーやホモジナイザーなどを使用しトナーとしての所望の大きさの油滴に分散させる。その後、攪拌機構が後述の攪拌翼である反応装置へ移し、加熱することで重合反応を進行させる。反応終了後、分散安定剤を除去し、濾過、洗浄し、さらに乾燥することで本発明のトナーを調製する。
【0047】
▲2▼ミニエマコアシェル化法
・着色剤と樹脂粒子を塩析/融着させ、高濃度の着色剤粒子を調製し、その周囲にミニエマ重合で着色剤を少量含有する樹脂粒子を塩析/融着させ、コアシェル化する。
【0048】
乳化重合法で樹脂粒子を調製する。ついで、この乳化重合法で調製された樹脂粒子と着色剤粒子とを塩析/融着することで着色粒子を形成する。この際、モノマー中に着色剤を分散あるいは溶解させたものを使用し、50〜1000nmの液滴に機械的に分散させた後に重合させて着色樹脂粒子を調製する方法を使用してもよい。この着色剤含有樹脂粒子を核樹脂粒子とする。なお、核樹脂粒子の大きさは個数平均粒径で0.5〜6.0μmである。
【0049】
別途、モノマー中に着色剤を分散あるいは溶解させたものを使用し、50〜1000nmの液滴に機械的に分散させた後に重合させて着色樹脂粒子を調製する。この際、核となる部分の着色剤に対して着色剤の量は10〜80質量%とする。この着色樹脂粒子を表層樹脂粒子とする。なお、この表層樹脂粒子の大きさは体積平均粒子径で50〜1000nmである。この粒子径は大塚電子社製の電気泳動光散乱光度計ELS−800等で測定することができる。
【0050】
前述の核樹脂粒子を核としてこの表層樹脂粒子を塩析/融着させることで本発明の濃淡トナーを調製することができる。
【0051】
*塩析/融着型トナーを製造するための例
樹脂粒子と着色剤などの構成材料の分散粒子、あるいは樹脂および着色剤等より構成される微粒子を複数以上会合させる方法、特に水中にてこれらを乳化剤を用いて分散した後に、臨界凝集濃度以上の凝集剤を加え塩析させると同時に、形成された重合体自体のガラス転移点温度以上で加熱融着させて融着粒子を形成しつつ徐々に粒径を成長させ、目的の粒径となったところで水を多量に加えて粒径成長を停止し、さらに加熱、攪拌しながら粒子表面を平滑にして形状を制御し、その粒子を含水状態のまま流動状態で加熱乾燥することにより、本発明のトナーを形成することができる。なお、ここにおいて凝集剤と同時に水に対して無限溶解する有機溶媒を加えてもよい。
【0052】
なお、この核樹脂粒子を塩析/融着型ではなく、モノマー中に高濃度に着色剤を分散あるいは溶解させ、ついで懸濁重合することで高濃度着色された核樹脂粒子を調製してもよい。
【0053】
▲3▼高濃度着色核粒子表面改質法
・高濃度の着色粒子を混練粉砕法あるいは懸濁重合法等の重合法で製造し、その表面に着色剤濃度の少なく且つ粒径の小さい着色粒子を機械的攪拌で付着させ、ついて機械的衝撃力を付与することで表面に固着する。乾式コーティング方法と呼ばれる製法である。
【0054】
まず、樹脂と着色剤とを溶融、混練、粉砕して個数平均粒径が0.5〜6.0μmの着色剤含有樹脂粒子を調製する。この着色剤含有樹脂粒子を核樹脂粒子とする。
【0055】
別途、モノマー中に着色剤を分散あるいは溶解させたものを使用し、50〜1000nmの液滴に機械的に分散させた後に重合させて着色樹脂粒子を調製する。この際、核となる部分の着色剤に対して着色剤の量は10〜80質量%とする。この着色樹脂粒子を表層樹脂粒子とする。なお、この表層樹脂粒子の大きさは体積平均粒子径で50〜1000nmである。この粒子径は大塚電子社製の電気泳動光散乱光度計ELS−800等で測定することができる。この表層樹脂粒子は前述の溶融混練粉砕法で、着色剤の量は10〜80質量%として調製してもよい。この場合、体積平均粒子径で1.0〜2.0μmの粒子とする。
【0056】
ついで、前述の核樹脂粒子と表層樹脂粒子とを乾式で混合し、静電的に核樹脂粒子表面に表層樹脂粒子を付着させ、ついで機械的衝撃力を付与することで機械的に核樹脂粒子表面に表層樹脂粒子を融着させ、本発明の濃淡トナーを製造することができる。
【0057】
この乾式で混合する装置としては、ヘンシェルミキサー、V型混合機、OMダイザー、LAM等をあげることができ、機械系衝撃力を付与するための装置としてはヘンシェルミキサー、LAM、ハイブリダイザーなどをあげることができる。
【0058】
▲1▼▲2▼▲3▼で説明した製造方法では、トナーに使用する着色剤として次のものが用いられる。
【0059】
(顔料の構成)
本発明のトナーに使用する着色剤としてはカーボンブラック、磁性体、染料、顔料等を任意に使用することができ、カーボンブラックとしてはチャンネルブラック、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等が使用される。磁性体としては鉄、ニッケル、コバルト等の強磁性金属、これらの金属を含む合金、フェライト、マグネタイト等の強磁性金属の化合物、強磁性金属を含まないが熱処理する事により強磁性を示す合金、例えばマンガン−銅−アルミニウム、マンガン−銅−錫等のホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、二酸化クロム等を用いる事ができる。
【0060】
染料としてはC.I.ソルベントレッド1、同49、同52、同58、同63、同111、同122、C.I.ソルベントイエロー19、同44、同77、同79、同81、同82、同93、同98、同103、同104、同112、同162、C.I.ソルベントブルー25、同36、同60、同70、同93、同95等を用いる事ができ、またこれらの混合物も用いる事ができる。顔料としてはC.I.ピグメントレッド5、同48:1、同53:1、同57:1、同122、同139、同144、同149、同166、同177、同178、同222、C.I.ピグメントオレンジ31、同43、C.I.ピグメントイエロー14、同17、同93、同94、同138、同156、同158、同180、同185、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15:3、同60等を用いる事ができ、これらの混合物も用いる事ができる。数平均一次粒子径は種類により多様であるが、概ね10〜200nm程度が好ましい。
【0061】
製造に当たって、樹脂を構成するためのモノマーとしては、下記のものが用いられる。
【0062】
(樹脂を構成するためのモノマーの例)
樹脂を構成する重合性単量体として使用されるものは、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンの様なスチレンあるいはスチレン誘導体、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等のメタクリル酸エステル誘導体、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等の、アクリル酸エステル誘導体、エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン類、塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン等のハロゲン系ビニル類、プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等のビニルエステル類、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル類、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等のビニルケトン類、N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル化合物、ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体がある。これらビニル系単量体は単独あるいは組み合わせて使用することができる。
【0063】
また、樹脂を構成する重合性単量体としてイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることがさらに好ましい。例えば、カルボキシル基、スルフォン酸基、リン酸基等の置換基を単量体の構成基として有するもので、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルフォン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルフォン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート等が挙げられる。
【0064】
さらに、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート等の多官能性ビニル類を使用して架橋構造の樹脂とすることもできる。
【0065】
これら重合性単量体はラジカル重合開始剤を用いて重合することができる。この場合、懸濁重合法では油溶性重合開始剤を用いることができる。この油溶性重合開始剤としては、2,2′−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2′−アゾビスイソブチロニトリル、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2′−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系またはジアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンペルオキサイド、ジイソプロピルペルオキシカーボネート、クメンヒドロペルオキサイド、t−ブチルヒドロペルオキサイド、ジ−t−ブチルペルオキサイド、ジクミルペルオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルペルオキサイド、ラウロイルペルオキサイド、2,2−ビス−(4,4−t−ブチルペルオキシシクロヘキシル)プロパン、トリス−(t−ブチルペルオキシ)トリアジンなどの過酸化物系重合開始剤や過酸化物を側鎖に有する高分子開始剤などを挙げることができる。
【0066】
また、乳化重合法を用いる場合には水溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。水溶性重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸およびその塩、過酸化水素等を挙げることができる。
【0067】
分散安定剤としては、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等を挙げることができる。さらに、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルフォン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等の界面活性剤として一般的に使用されているものを分散安定剤として使用することができる。
【0068】
先に説明した塩析/融着型トナーを製造するに当たっての素材としては、下記のものが用いられる。
【0069】
(塩析/融着の場合の素材使用例)
塩析/融着の場合に使用される凝集剤としては特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。具体的には、一価の金属として例えばナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩、二価の金属として例えばカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類の金属塩、マンガン、銅等の二価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の三価の金属の塩等が挙げられ、具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等を挙げることができる。これらは組み合わせて使用してもよい。
【0070】
これらの凝集剤は臨界凝集濃度以上添加することが好ましい。この臨界凝集濃度とは、水性分散物の安定性に関する指標であり、凝集剤を添加して凝集が発生する濃度を示すものである。この臨界凝集濃度は、乳化された成分および分散剤自体によって大きく変化するものである。例えば、岡村誠三他著「高分子化学 17、601(1960)日本高分子学会編」等に記述されており、詳細な臨界凝集濃度を求めることができる。また、別な手法として、目的とする粒子分散液に所望の塩を濃度を変えて添加し、その分散液のζ(ゼータ)電位を測定し、この値が変化する塩濃度を臨界凝集濃度として求めることもできる。
【0071】
本発明の凝集剤の添加量は、臨界凝集濃度以上であればよいが、好ましくは臨界凝集濃度の1.2倍以上、さらに好ましくは、1.5倍以上添加することがよい。
【0072】
無限溶解する溶媒とは、すなわち水に対して無限溶解する溶媒を示し、この溶媒は、本発明においては形成された樹脂を溶解させないものが選択される。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メトキシエタノール、ブトキシエタノール等のアルコール類、アセトニトリル等のニトリル類、ジオキサン等のエーテル類を挙げることができる。特に、エタノール、プロパノール、イソプロパノールが好ましい。この無限溶解する溶媒の添加量は、凝集剤を添加した重合体含有分散液に対して1〜100体積%が好ましい。
【0073】
以上、製造法の説明を行った本発明のトナーは少なくとも樹脂と着色剤を含有するものであるが、必要に応じて定着性改良剤である離型剤や荷電制御剤等を含有することもできる。さらに、上記樹脂と着色剤を主成分とするトナー粒子に対して無機微粒子や有機微粒子等で構成される外添剤を添加したものであってもよい。
【0074】
さらに、定着性改良剤としての低分子量ポリプロピレン(数平均分子量=1500〜9000)や低分子量ポリエチレン等を添加してもよい。
【0075】
荷電制御剤も同様に種々の公知のもので、且つ水中に分散することができるものを使用することができる。具体的には、ニグロシン系染料、ナフテン酸または高級脂肪酸の金属塩、アルコキシル化アミン、第4級アンモニウム塩化合物、アゾ系金属錯体、サリチル酸金属塩あるいはその金属錯体等が挙げられる。
【0076】
なお、これら荷電制御剤や定着性改良剤の粒子は、分散した状態で数平均一次粒子径が10〜500nm程度とすることが好ましい。
【0077】
また、本発明のトナーでは、外添剤として無機微粒子や有機微粒子などの微粒子を添加して使用することでより効果を発揮することができる。この理由としては、外添剤の埋没や脱離を効果的に抑制することができるため、その効果が顕著にでるものと推定される。
【0078】
この無機微粒子としては、シリカ、チタニア、アルミナ等の無機酸化物粒子の使用が好ましく、さらに、これら無機微粒子はシランカップリング剤やチタンカップリング剤等によって疎水化処理されていることが好ましい。疎水化処理の程度としては特に限定されるものでは無いが、メタノールウェッタビリティーとして40〜95のものが好ましい。メタノールウェッタビリティーとは、メタノールに対する濡れ性を評価するものである。この方法は、内容量200mlのビーカー中に入れた蒸留水50mlに、測定対象の無機微粒子を0.2g秤量し添加する。メタノールを先端が液体中に浸せきされているビュレットから、ゆっくり撹拌した状態で無機微粒子の全体が濡れるまでゆっくり滴下する。この無機微粒子を完全に濡らすために必要なメタノールの量をa(ml)とした場合に、下記式により疎水化度が算出される。
【0079】
疎水化度={a/(a+50)}×100
この外添剤の添加量としては、トナー中に0.1〜5.0質量%、好ましくは0.5〜4.0質量%である。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて使用してもよい。
【0080】
本発明のトナーは、例えば磁性体を含有させて一成分磁性トナーとして使用する場合、いわゆるキャリアと混合して二成分現像剤として使用する場合、非磁性トナーを単独で使用する場合等が考えられ、いずれも好適に使用することができるが、本発明ではキャリアと混合して使用する二成分現像剤として使用することが好ましい。
【0081】
このようにして形成されたトナー粒子の核部分に相当する濃部の断面積は、トナー全体の断面積の25〜65%である。断面積の測定は、透過型電子顕微鏡で観察する。5000倍に拡大した断面写真を使用し、画像解析装置を使用し、トナー自体の断面積と核部分の断面積を観察する。トナー200個を観察し、その算術平均値とする。
【0082】
また、トナー粒子の個数平均粒径は4〜10μmで、濃部の個数平均粒径は2〜7μmであって、測定はコールターカウンターTAIIあるいはコールターカウンターマルチサイザー(いずれもコールター社製)により想定された個数平均粒径を求める。なお、濃部の個数平均粒径とは前述のトナー断面写真を使用し、各トナーの水平方向での径を求め、その算術平均を示している。
【0083】
本発明のトナー粒子は、同一色相を有する着色トナーであって、濃、淡部の色材は少なくとも一部は共通の顔料を使用し、使用色材の量(質量%)を変化させることによって濃淡が生じるようにしている。濃、淡部に用いられる色材量(質量%)は、濃部に対し淡部は10〜40%となっている。濃、淡部について同一色相とすることによって、トナーの付着量の違いによっても色味の変化をなくすようにしている。色材に共通の顔料を用いれば、濃、淡部について色相は略同一に保たれるが、更に色材を一部付加することが必要な場合もある。例えば黒色トナーについては、カーボンブラックが色材として用いられるが、淡部に対しての少量のカーボンブラックの添加では、カーボンブラックの種類によっては灰色から赤、茶、青系のものに色味が少しずれてしまうことがある。このような場合には少量の他の色材を添加しブレンドして、淡部でも灰色になるような色材の添加が行われる。
【0084】
以上説明した本発明のトナーは、一成分現像を行う際の現像剤としても用いられるが、好ましくは二成分現像を行う際のトナーとして用いられる。二成分現像を行う際のキャリアとしては下記のものが用いられる。
【0085】
(二成分現像剤のキャリアの例)
二成分現像剤を構成するキャリアとしては、磁性粒子としては、鉄、フェライト、マグネタイト等の金属、それらの金属とアルミニウム、鉛等の金属との合金等の従来から公知の材料を用いることができる。特にフェライト粒子が好ましい。上記磁性粒子は、その個数平均粒径としては15〜100μm、より好ましくは25〜60μmのものが良い。キャリアの個数平均粒径の測定は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパティック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0086】
キャリアは、さらに樹脂により被覆されているもの、あるいは樹脂中に磁性粒子を分散させたいわゆる樹脂分散型キャリアが好ましい。コーティング用の樹脂組成としては、特に限定は無いが、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン/アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル系樹脂あるいはフッ素含有重合体系樹脂等が用いられる。また、樹脂分散型キャリアを構成するための樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えば、スチレンアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素系樹脂、フェノール樹脂等を使用することができる。
【0087】
本発明によるトナーは電子写真方式によって画像形成を行う画像形成装置に広く用いることができる。モノクロ画像を形成する画像形成装置にも勿論用いられるが、多色のトナーを用いてのカラー画像形成装置に用いるときは、階調性と色調において優れ、しかも解像性の高い画像を形成することができる。次に本発明の多色のトナーを内蔵した現像装置を複数組搭載した画像形成装置の一例であるカラープリンタの画像形成プロセス及び各機構について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の画像形成装置の一例であるカラープリンタの断面構成図である。
【0088】
図4によれば、像形成体である感光体ドラム10は、例えばガラスや透光性アクリル樹脂等の透光性部材によって形成される円筒状の基体の外周に、透光性の導電層及び有機感光層(OPC)の光導電体層を形成したものである。
【0089】
感光体ドラム10は、図示しない駆動源からの動力により、透光性の導電層を接地された状態で図4の矢印で示す時計方向に回転される。
【0090】
本実施例では、画像露光用の露光ビームは、その結像点である感光体ドラム10の光導電体層において、光導電体層の光減衰特性(光キャリア生成)に対して適正なコントラストを付与できる波長の露光光量を有していればよい。従って、本実施形態における感光体ドラムの透光性の基体の光透過率は、100%である必要はなく、露光ビームの透過時にある程度の光を吸収するような特性を有していてもよい。要は、適切なコントラストを付与できればよい。透光性の基体の素材としては、アクリル樹脂、特にメタクリル酸メチルエステルモノマーを重合したものが、透光性、強度、精度、表面性等において優れており好ましく用いられるが、その他一般光学部材などに使用されるアクリル、フッ素、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートなどの各種透光性樹脂が使用可能である。また、露光光に対して透光性を有していれば、着色していてもよい。透光性の導電層としては、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化錫、酸化鉛、酸化インジウム、ヨウ化銅や、Au、Ag、Ni、Alなどからなる透光性を維持した金属薄膜が用いられ、成膜法としては、真空蒸着法、活性反応蒸着法、各種スパッタリング法、各種CVD法、浸漬塗工法、スプレー塗布法などが利用できる。また、光導電体層としては各種有機感光層(OPC)が使用できる。
【0091】
光導電体層の感光層としての有機感光層は、電荷発生物質(CGM)を主成分とする電荷発生層(CGL)と電荷輸送物質(CTM)を主成分とする電荷輸送層(CTL)とに機能分離された二層構成の感光層とされる。二層構成の有機感光層は、CTLが厚いために有機感光層としての耐久性が高く本発明に適する。なお有機感光層は、電荷発生物質(CGM)と電荷輸送物質(CTM)を1つの層中に含有する単層構成とされてもよく、該単層構成又は前記二層構成の感光層には、通常バインダ樹脂が含有される。
【0092】
以下に説明する帯電手段としてのスコロトロン帯電器11、画像書込手段としての露光光学系12、現像手段としての現像器14は、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及び黒色(K)の各色毎の画像形成プロセス用として準備されており、本実施形態においては、図4の矢印にて示す感光体ドラム10の回転方向に対して、Y、M、C、Kの順に配置される。
【0093】
帯電手段としてのスコロトロン帯電器11は像形成体である感光体ドラム10の移動方向に対して直交する方向(図4において紙面垂直方向)に感光体ドラム10と対峙し近接して取り付けられ、感光体ドラム10の前述した有機感光体層に対し所定の電位に保持された制御グリッド(符号なし)と、コロナ放電電極11aとして、例えば鋸歯状電極を用い、トナーと同極性のコロナ放電とによって帯電作用(本実施形態においてはマイナス帯電)を行い、感光体ドラム10に対し一様な電位を与える。コロナ放電電極11aとしては、その他ワイヤ電極や針状電極を用いることも可能である。
【0094】
各色毎の露光光学系12は、それぞれ、像露光光の発光素子としてのLED(発光ダイオード)を感光体ドラム10の軸と平行に複数個アレイ状に並べた線状の露光素子(不図示)と等倍結像素子としてのセルフォックレンズ(不図示)とがホルダに取り付けられた露光用ユニットとして構成される。円柱状の保持部材20に、各色毎の露光光学系12が取付けられて感光体ドラム10の基体内部に収容される。露光素子としてはその他、FL(蛍光体発光)、EL(エレクトロルミネッセンス)、PL(プラズマ放電)等の複数の発光素子をアレイ状に並べた線状のものが用いられる。
【0095】
各色毎の画像書込手段としての露光光学系12は、感光体ドラム10上での露光位置を、スコロトロン帯電器11と現像器14との間で、現像器14に対して感光体ドラム10の回転方向上流側に設けた状態で、感光体ドラム10の内部に配置される。
【0096】
露光光学系12は、別体のコンピュータ(不図示)から送られ、或いは原稿画像が読み取られてメモリに記憶された各色の画像データに基づいて後に詳しく説明する画像処理を施した後、一様に帯電した感光体ドラム10に像露光を行い、感光体ドラム10上に潜像を形成する。この実施形態で使用される発光素子の発光波長は、通常Y、M、Cのトナーの透光性の高い680〜900nmの範囲のものが良好であるが、裏面から像露光を行うことからカラートナーに透光性を十分に有しないこれより短い波長でもよい。
【0097】
各色毎の現像手段としての現像器14は、トナーホッパ200(T)からトナー補給され内部に後に実施例で説明するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)若しくは黒色(K)の二成分の現像剤を収容し、それぞれ、例えば厚み0.5〜1mm、外径15〜25mmの円筒状の非磁性のステンレスあるいはアルミ材で形成された現像剤担持体である現像スリーブ141を備えている。
【0098】
現像領域では、現像スリーブ141は、突き当てコロ(不図示)により感光体ドラム10と所定の間隙、例えば100〜1000μmをあけて非接触に保たれ、感光体ドラム10の回転方向と最近接位置において順方向に回転するようになっており、現像時、現像スリーブ141に対してトナーと同極性(本実施形態においてはマイナス極性)の直流電圧或いは直流電圧に交流電圧ACを重畳する現像バイアス電圧を印加することにより、感光体ドラム10の露光部に対して非接触の反転現像が行われる。この時の現像間隔精度は画像ムラを防ぐために20μm程度以下が必要である。
【0099】
画像形成のスタートにより不図示の像形成体駆動モータの始動により、結合部を介して感光体ドラム10に伝達され、感光体ドラム10が図4の矢印で示す時計方向へ回転され、同時にYのスコロトロン帯電器11の帯電作用により感光体ドラム10に電位の付与が開始される。感光体ドラム10は電位を付与されたあと、Yの露光光学系12において第1の色信号すなわちYの画像データに対応する電気信号による露光が開始され感光体ドラム10の回転走査によってその表面の感光層に原稿画像のイエロー(Y)の画像に対応する静電潜像が形成される。この潜像はYの現像器14により非接触の状態で反転現像され、感光体ドラム10上にイエロー(Y)のトナー像が形成される。
【0100】
次いで、感光体ドラム10は前記イエロー(Y)のトナー像の上に、Mのスコロトロン帯電器11の帯電作用により電位が付与され、Mの露光光学系12の第2の色信号すなわちマゼンタ(M)の画像データに対応する電気信号による露光が行われ、Mの現像器14による非接触の反転現像によって前記のイエロー(Y)のトナー像の上にマゼンタ(M)のトナー像が重ね合わせて形成される。
【0101】
同様のプロセスにより、Cのスコロトロン帯電器11、露光光学系12及び現像器14によってさらに第3の色信号に対応するシアン(C)のトナー像が、また、Kのスコロトロン帯電器11、露光光学系12及び現像器14によって第4の色信号に対応する黒色(K)のトナー像が順次重ね合わせて形成され、感光体ドラム10の一回転以内にその周面上にカラーのトナー像が形成される。
【0102】
このように、本実施の形態では、Y、M、C及びKの露光光学系12による感光体ドラム10の有機感光層に対する露光は、感光体ドラム10の内部より透光性の基体を通して行われる。従って、第2、第3及び第4の色信号に対応する画像の露光は何れも先に形成されたトナー像により遮光されることなく静電潜像を形成することが可能となり、好ましいが、感光体ドラム10の外部から露光してもよい。
【0103】
一方、転写材としての記録紙Pは、転写材収納手段としての給紙カセット15より、送り出しローラ(符号なし)により送り出され、給送ローラ(符号なし)により給送されてタイミングローラ16へ搬送される。
【0104】
記録紙Pは、タイミングローラ16の駆動によって、感光体ドラム10上に担持されたカラートナー像との同期がとられ、紙帯電手段としての紙帯電器150の帯電により搬送ベルト14aに吸着されて転写域へ給送される。搬送ベルト14aにより密着搬送された記録紙Pは、転写域でトナーと反対極性(本実施形態においてはプラス極性)の電圧が印加される転写手段としての転写器14cにより、感光体ドラム10の周面上のカラートナー像が一括して記録紙Pに転写される。
【0105】
カラートナー像が転写された記録紙Pは、転写材分離手段としての紙分離AC除電器14hにより除電されて、搬送ベルト14aから分離され、定着装置17へと搬送される。
【0106】
定着装置17はカラートナー像を定着するための上側のロール状の熱線定着用回転部材(上側の定着部材)としての熱線定着ローラ17aと、下側の定着部材としての加圧ゴムローラ47aとにより構成され、熱線定着ローラ17aの内部には、光源によっては可視光を含んだ赤外線或いは遠赤外線等の熱線を発光するハロゲンランプ171gが熱線照射手段として配設される。
【0107】
熱線定着ローラ17aと加圧ゴムローラ47aとの間で形成されるニップ部Nで記録紙Pが挟持され、熱と圧力とを加えることにより記録紙P上のカラートナー像が定着され、記録紙Pが排紙ローラ18により送られて、装置上部のトレイへ排出される。
【0108】
本発明においては、Y,M,C,K各色の画像濃度データは、それぞれ画像処理がなされた後、露光光学系12により感光体ドラム10上への像露光が行われる。
【0109】
尚、画像形成装置としては、感光体とカラー現像器からなる像形成ユニットを複数並列設置したタンデム構成、或いは中間転写体を用いたタンデム構成を用いたカラー画像形成装置とすることが出来る。
【0110】
この場合でも、シェル構造でトナー付着状態が規定されることから、コアは同様に扁平面を感光体あるいは転写体に向けて積層した形で転写、定着される。
【0111】
【実施例】
本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の態様はこれに限定されるものではない。
【0112】
〈トナー製造の材料作製〉
「着色剤分散液1」 黒色
n−ドデシル硫酸ナトリウム0.90kgと純水10.0lを入れ撹拌溶解する。この溶液に、リーガル330R(キャボット社製カーボンブラック)1.20kgを徐々に加え、1時間よく撹拌した後に、サンドグラインダー(媒体型分散機)を用いて、20時間連続分散した。このものを「着色剤分散液1」とする。
【0113】
「着色剤分散液2」 イエロー色
着色剤分散液1において、着色剤をカーボンブラックの代わりにC.I.ピグメントイエロー17を1.05kg使用した他は同様にして製造した分散液を「着色剤分散液2」とする。
【0114】
「着色剤分散液3」 マゼンタ色
着色剤分散液1において、着色剤をカーボンブラックの代わりにC.I.ピグメントレッド122を1.20kg使用した他は同様にして製造した分散液を「着色剤分散液3」とする。
【0115】
「着色剤分散液4」 シアン色
着色剤分散液1において、着色剤をカーボンブラックの代わりにC.I.ピグメントブルー15:3を0.60kg使用した他は同様にして製造した分散液を「着色剤分散液4」とする。
【0116】
「アニオン界面活性剤溶液A」
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgとイオン交換水4.0lからなる溶液を「アニオン界面活性剤溶液A」とする。
【0117】
「ノニオン界面活性剤溶液B」
ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgとイオン交換水4.0lからなる溶液を「ノニオン界面活性剤溶液B」とする。
【0118】
「開始剤溶液C」
過硫酸カリウム223.8gをイオン交換水12.0lに溶解した溶液を「開始剤溶液C」とする。
【0119】
「アニオン界面活性剤溶液D」
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.055kgをイオン交換純水4.0lに溶解した溶液を「アニオン界面活性剤溶液D」とする。
【0120】
「ノニオン界面活性剤溶液E」
ノニルフェノールポリエチレンオキサイド10モル付加物0.014kgをイオン交換水4.0lに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液E」とする。
【0121】
「開始剤溶液F」
過硫酸カリウム(関東化学株式会社製)200.7gをイオン交換水12.0lに溶解した溶液を「開始剤溶液F」とする。
【0122】
「塩化ナトリウム溶液G」
塩析剤としての塩化ナトリウム5.36kgをイオン交換水20.0lに溶解した溶液を「塩化ナトリウム溶液G」とする。
【0123】
「ノニオン界面活性剤溶液H」
フッ素系ノニオン界面活性剤1.00gをイオン交換水1.00lに溶解した溶液を「ノニオン界面活性剤溶液H」とする。
【0124】
「ラテックス1−A」の作製: 高溶融粘度ワックス含有
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた100lのグラスライニング(GL)反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均1次粒子径=120nm/固形分濃度=29.9%)3.41kg、「アニオン界面活性剤溶液A」全量及び「ノニオン界面活性剤溶液B」全量を入れ、撹拌を開始する。次いで、イオン交換水44.0lを加える。
【0125】
次いで、加熱を開始し、液温度が75℃になったところで、「開始剤溶液C」全量を滴下して加えた。その後、液温度を75℃±1℃に制御しながら、スチレン13.5kg、アクリル酸n−ブチル1.50kg、メタクリル酸1.04kg及びt−ドデシルメルカプタン548gの予め混合した溶液を滴下した。滴下終了後、液温度を80℃±1℃に上げて、6時間加熱撹拌を行った。次いで、液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止し、ポールフィルターで濾過し、これを「ラテックス1−A」とする。
【0126】
尚、ラテックス1−A中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は140℃、重量平均分子量は1.40万、重量平均粒径は120nmであった。
【0127】
「ラテックス2−A」の作製: 高溶融粘度ワックス無し
ラテックス1−Aの原料からワックスを除いた他は同様にして「ラテックス2−A」を作製する。
【0128】
尚、ラテックス2−A中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は140℃、重量平均分子量は1.40万、重量平均粒径は120nmであった。
【0129】
「ラテックス1−B」の作製: ワックス多量含有
温度センサー、冷却管、窒素導入装置を付けた100lのGL反応釜に、WAXエマルジョン(数平均分子量3000のポリプロピレンエマルジョン:数平均一次粒径=120nm/固形分濃度=29.9%)5.00kgと「アニオン界面活性剤溶液A」全量と「ノニオン界面活性剤溶液B」全量とを入れ、撹拌を開始する。次いで、イオン交換水44.0lを加える。
【0130】
加熱を開始し、液温度が70℃になったところで、「開始剤溶液F」を添加する。次いで、スチレン11.0kg、アクリル酸n−ブチル4.00kg、メタクリル酸1.04kg及びt−ドデシルメルカプタン9.02gの予め混合した溶液を滴下した。滴下終了後、液温度を72℃±2℃に制御して、6時間加熱撹拌をおこなった。次いで、液温を80℃±1℃に上げて、12時間加熱撹拌を行った。次いで、液温度を40℃以下に冷却し撹拌を停止し、ポールフィルターで濾過し、これを「ラテックス1−B」とする。
【0131】
尚、ラテックス1−B中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は132℃、重量平均分子量は1.40万、重量平均粒径は120nmであった。
【0132】
「ラテックス2−B」の作製: ワックス無し
ラテックス1−Bの原料からワックスを除いた他は同様にして「ラテックス2−B」を作製する。
【0133】
尚、ラテックス2−B中の樹脂粒子のガラス転移温度は58℃、軟化点は132℃、分子量分布は、重量平均分子量=1.40万、重量平均粒径は120nmであった。
【0134】
〈実施例1〉
(トナー製造例1) 濃淡黒トナー
「融着粒子分散液1−A」の作製
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、粒径および形状のモニタリング装置を付けた100lのSUS反応釜に、上記で製造した「ラテックス1−A」=25.0kg、「着色剤分散液1」=0.4kg及びイオン交換水20.0kgを入れ撹拌する。ついで、40℃に加温し、「塩化ナトリウム溶液G」、イソプロパノール(関東化学社製)6.00kg、「ノニオン界面活性剤溶液H」をこの順に添加する。その後、10分間放置した後に、液温度85℃まで60分かけて昇温し、85±2℃にて0.5〜3時間加熱撹拌して塩析/融着させながら粒径を6μmまで成長させる。次に純水2.1lを添加して粒径の成長を停止する。この液を「融着粒子分散液1−A」とする。
【0135】
「融着粒子分散液1」の作製
次いで、「ラテックス2−B」=10.0kg、「着色剤分散液1」=0.1lkg、及びイオン交換水8.0lを入れ撹拌する。次いで、40℃に加温し、「塩化ナトリウム溶液G」=8.0l、イソプロパノール2.4kg、「ノニオン界面活性剤溶液H」=0.4lをこの順に添加した液を、10分間放置した後、「融着粒子分散液1−A」に混合し、液温度85℃まで60分かけて昇温し、85±2℃にて0.5〜3時間撹拌して「ラテックス1−Aの融着粒子1−A」の上に、「ラテックス2−B」と「着色剤分散液1」を塩析/融着させ粒径8μmまで成長させる。次に純水0.8lを添加し粒径成長を停止する。この液を「融着粒子分散液1」とする。
【0136】
「濃淡黒粒子1」の作製
「融着粒子分散液1」を温度センサー、冷却管を付けた5lの反応容器に5.0kgを入れ、液温度85℃±2℃にて、4時間加熱撹拌して重合率が80%になった時点で、前記液をアニュラー型連続湿式撹拌ミル(神鋼パンテンツ社製)に連続して供給し、温度80℃、ローター周速13m/分、平均滞留時間15分の条件にて扁平化処理を行う。その後、温度80℃にて2時間ゆっくり撹拌しながら放置した。
【0137】
さらに、前記反応容器に扁平化処理した液をもどし、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.03kgを添加し、液温度85℃±2℃にて、4時間加熱撹拌して重合を完了させる。その後、40℃以下に冷却し撹拌を停止する。次に遠心分離機を用いて、遠心沈降法により液中にて分級を行い、次いで目開き45μmの篩いで濾過した。この濾液をヌッチェを用いて、ウェットケーキ状の扁平な濃淡黒粒子1を濾取する。その後、イオン交換水により洗浄する。
【0138】
この「ウェットケーキ状の濃淡黒粒子1」をフラッシュジェットドライヤーを用いて吸気温度60℃にて乾燥させ、次いで流動層乾燥機を用いて60℃の温度で乾燥させ「濃淡黒粒子1」を得た。
【0139】
尚、このものの、融着粒子分散液1を球形化処理を行わずに、他は上記の如く処理したものは形状が球形で、その体積平均粒径は、5.1μmであった。また、扁平化処理を行ったものは、粒子の長軸r1は7.9μm、短軸r2が7.0μm、dは3μmであった。また、コア粒子の長軸r1′は6.5μm、短軸r2′が6.0μm、d′は1.7μmであった。なお、これらの特性は、後記するカラートナーについてもほぼ同じ値であった。
【0140】
「黒トナー1」の製造
得られた「濃淡黒粒子1」の100質量部に、シリカ微粒子1質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合して、濃部と淡部の溶融粘度が同じで、濃部と淡部を有する、扁平形状の「黒色トナー1」を得た。
【0141】
(トナー製造例2) 濃淡イエロートナー
トナー製造例1の「着色剤分散液1」を「着色剤分散液2」に変えた以外はトナー製造例1と同様にして、「濃淡イエロートナー2」を得た。
【0142】
(トナー製造例3) 濃淡マゼンタトナー
トナー製造例1の「着色剤分散液1」を「着色剤分散液3」に変えた以外はトナー製造例1と同様にして、「濃淡マゼンタトナー3」を得た。
【0143】
(トナー製造例4) 濃淡シアントナー
トナー製造例1の「着色剤分散液1」を「着色剤分散液4」に変えた以外はトナー製造例1と同様にして、「濃淡シアントナー4」を得た。
【0144】
《評価》
(現像剤の調製)
トナー製造例1〜4のトナー各々と、シリコーン樹脂で被覆した65μmフェライトキャリアを、トナー/キャリア=50g/950gの割合で混合して、評価用の「現像剤1〜4」を調製した。
【0145】
尚、比較のため上記で扁平化処理のみ行わなかったトナーを用いた現像剤(比較用現像剤1〜4)を作製し同時に評価した。
【0146】
(画像作製)
図4に示すと同様な構成を持つカラープリンターを使用した。現像剤は現像剤1〜4とその比較用現像剤1〜4をそれぞれ1組にしてフルカラー用現像剤として用い、A4版カラー原稿(印字率25%)の単色とフルカラー混在画像をプリントして評価した。
【0147】
(評価結果)
得られた画像の評価は、原稿再現性、画像汚れ及び印刷ライクの評価を目視にて行った。
【0148】
本発明内の扁平なトナーの方が、扁平化してないトナーより原稿再現性に優れ、画像汚れのない印刷ライク画像が得られ良好であった。
【0149】
〈実施例2〉
(トナー製造例5) 濃淡黒トナー
「融着粒子分散液1−B」の作製
温度センサー、冷却管、窒素導入装置、粒径および形状のモニタリング装置を付けた100lのSUS反応釜に、上記で製造した「ラテックス1−B」=25.0kg、「着色剤分散液1」=0.4kg及びイオン交換水20.0kgを入れ撹拌する。ついで、40℃に加温し、「塩化ナトリウム溶液G」、イソプロパノール(関東化学社製)6.00kg、「ノニオン界面活性剤溶液H」をこの順に添加する。その後、10分間放置した後に、液温度85℃まで60分かけて昇温し、85±2℃にて0.5〜3時間加熱撹拌して塩析/融着させながら粒径を6μmまで成長させる。次に純水2.1lを添加して粒径の成長を停止する。この液を「融着粒子分散液1−B」とする。
【0150】
「融着粒子分散液」の作製
次いで、「ラテックス2−A」=10.0kg、「着色剤分散液1」=0.1lkg、及びイオン交換水8.0lを入れ撹拌する。次いで、40℃に加温し、「塩化ナトリウム溶液G」=8.0l、イソプロパノール2.4kg、「ノニオン界面活性剤溶液H」=0.4lをこの順に添加した液を、10分間放置した後、「融着粒子分散液1−B」に混合し、液温度85℃まで60分かけて昇温し、85±2℃にて0.5〜3時間撹拌して「融着粒子1−B」の上に、「ラテックス2−A」と「着色剤分散液1」を塩析/融着させ体積平均粒径8μmまで成長させる。次に純水0.8lを添加し粒径成長を停止する。この液を「融着粒子分散液」とする。
【0151】
「濃淡黒粒子5」の作製
上記「融着粒子分散液」を温度センサー、冷却管を付けた5lの反応容器に5.0kgを入れ、液温度85℃±2℃にて、4時間加熱撹拌して重合率が80%になった時点で、前記液をアニュラー型連続湿式撹拌ミル(神鋼パンテンツ社製)に連続して供給し、温度67℃、ローター周速13m/分、平均滞留時間15分の条件にて扁平化処理を行う。その後、温度120℃にて30秒間撹拌しながら放置した。
【0152】
さらに、前記反応容器に扁平化処理した液をもどし、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.03kgを添加し、液温度85℃±2℃にて、4時間加熱撹拌して重合を完了させる。その後、40℃以下に冷却し撹拌を停止する。次に遠心分離機を用いて、遠心沈降法により液中にて分級を行い、次いで目開き45μmの篩いで濾過した。この濾液をヌッチェを用いて、ウェットケーキ状の扁平な濃淡黒粒子5を濾取する。その後、イオン交換水により洗浄する。
【0153】
この「ウェットケーキ状の濃淡黒粒子5」をフラッシュジェットドライヤーを用いて吸気温度60℃にて乾燥させ、次いで流動層乾燥機を用いて60℃の温度で乾燥させ「濃淡黒粒子5」を得た。
【0154】
「黒トナー5」の製造
得られた「濃淡黒粒子5」の100質量部に、シリカ微粒子1質量部をヘンシェルミキサーにて外添混合して、濃部(コア部)溶融粘度が淡部(シェル部)の溶融粘度より低く、ワックス(離型剤)含有量が多い濃部と、淡部を有する扁平形状の「黒色トナー5」を得た。
【0155】
(トナー製造例6) 濃淡イエロートナー
トナー製造例5の「着色剤分散液1」を「着色剤分散液2」に変えた以外はトナー製造例5と同様にして、「濃淡イエロートナー6」を得た。
【0156】
(トナー製造例7) 濃淡マゼンタトナー
トナー製造例5の「着色剤分散液1」を「着色剤分散液3」に変えた以外はトナー製造例5と同様にして、「濃淡マゼンタトナー7」を得た。
【0157】
(トナー製造例8) 濃淡シアントナー
トナー製造例5の「着色剤分散液1」を「着色剤分散液4」に変えた以外はトナー製造例5と同様にして、「濃淡シアントナー8」を得た。
【0158】
上記トナー製造例5〜8の融着粒子分散液を球形化処理を行わずに、他は上記の如く処理したものは、いずれも形状が球形で、その体積平均粒径は、4.8μmであり、扁平化処理を行ったものは、粒子の長軸r1は7.5μm、短軸r2が6.0μm、dは4μmであった。また、コア粒子の長軸r1′は7.0μm、短軸r2′が6.5μm、d′は2.0μmであった。
【0159】
《評価》
(現像剤の調製)
トナー製造例5〜8のトナー各々と、シリコーン樹脂で被覆した65μmフェライトキャリアを、トナー/キャリア=50g/950gの割合で混合して、評価用の「現像剤5〜8」を調製した。
【0160】
尚、比較のため上記で扁平化処理のみ行わなかったトナーを用いた現像剤(比較用現像剤5〜8)を作製し同時に評価した。
【0161】
(画像作製)
図4に示すと同様な構成を持つカラープリンターを使用した。現像剤は現像剤5〜8とその比較用現像剤5〜8をそれぞれ1組にしてフルカラー用現像剤として用い、A4版カラー原稿(印字率25%)の単色とフルカラー混在画像をプリントして評価した。
【0162】
但し、通常178℃に調整されている定着熱ローラ表面温度を182℃とし、通常20枚/分のプリント速度を23枚/分に上げてテストした。
【0163】
(評価結果)
得られた画像の評価は、定着オフセットの有無を中心に、1000プリント毎に20万枚まで目視にて行った。
【0164】
本発明内の扁平なトナーは、20万枚までオフセットが見られなかったのに対し、扁平化してないトナーは10万枚より、目視される様になってきて画像汚れの程度はプリントを続けるにつれて激しくなった。
【0165】
【発明の効果】
本発明により、トナーをコアシェル構造とすることにより定着時のオフセットを有効に防止する技術や、低濃度部でも粒状性がよく、低濃度部から高濃度部まで広いダイナミックレンジを有する画像を作る技術の開発に役立つ等の、優れた特性を発揮する電子写真用トナーとその製造方法、画像形成方法及び画像形成装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のトナー粒子の平面図及び側面図。
【図2】トナー粒子の断面形状と付着状態を示す模式図。
【図3】アニュラー型連続湿式撹拌ミルの一例の要部断面図。
【図4】本実施形態のカラープリンタの断面構成図。
【符号の説明】
10 感光体ドラム
11 スコロトロン帯電器
12 露光光学系
14 現像器
14a 搬送ベルト
14c 転写器
17 定着装置
20 保持部材
Claims (7)
- コアシェル構造を有する電子写真用トナーにおいて、トナー粒子の形状が、コア部の扁平度をH1、シェル部の扁平度をH2とするとき下記関係を有することを特徴とする電子写真用トナー。
H1>H2 - コア部とシェル部の扁平の方向が同一であるトナー粒子よりなることを特徴とする請求項1記載の電子写真用トナー。
- シェル部に比してコア部の溶融粘度が低く、離型剤含有量が多いことを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
- シェル部に比してコア部の溶融温度が高いことを特徴とする請求項1又は2記載の電子写真用トナー。
- コアシェル構造を有する電子写真用トナーの製造方法において、トナー粒子の形状が、コア部の扁平度をH1、シェル部の扁平度をH2とするとき下記関係になるようにすることを特徴とする電子写真用トナーの製造方法。
H1>H2 - 請求項1〜4の何れか1項記載の電子写真用トナーを用い、電子写真感光体上の静電潜像を現像することを特徴とする画像形成方法。
- 請求項1〜4の何れか1項記載の電子写真用トナーを用い、電子写真感光体を一様帯電、像露光、現像する手段、及び形成されたトナー像を転写、熱定着する各手段を有することを特徴とする画像形成装置。
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