JP3987949B2 - 交流直流変換回路 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、交流電源に接続され、該交流電源から与えられた交流電圧を直流電圧に変換する交流直流変換回路(以下、AC−DCコンバータという)であって、特に、交流電源から見た力率改善を行う機能を持つAC−DCコンバータに関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は、従来のAC−DCコンバータの要部を示す回路図である。
このAC−DCコンバータは、交流電源70に接続された力率改善回路71を備えている。力率改善回路71は、4個のダイオード72,73,74,75で構成された全波整流回路を有している。ダイオード72のアノード及びダイオード74のカソードが、交流電源70の一端に接続され、ダイオード73のアノード及びダイオード75のカソードが、交流電源70の他端に接続されている。ダイオード72,73のカソード同士が接続され、この接続点が全波整流回路の正極出力端子を構成している。ダイオード74,75のアノード同士が接続され、この接続点が全波整流回路の負極出力端子を構成している。
【0003】
全波整流回路の正極出力端子に、リアクトル76とダイオード77とからなる直列回路が接続されるとともに、ダイオード78のアノードが接続されている。ダイオード78のカソードは、ダイオード77のカソードに接続されている。
リアクトル76及びダイオード77のアノードの接続点と全波整流回路の負極出力端子との間には、スイッチング素子79が接続されている。スイッチング素子79には、制御回路80から制御信号が与えられる。
【0004】
ダイオード77,78のカソードが、力率改善回路71の一方の出力端子であり、充電コンデンサ81の一方の電極に接続されている。全波整流回路の負極出力端子が力率改善回路71の他方の出力端子であり、充電コンデンサ81の他方の電極に接続されている。力率改善回路71中の制御回路80は、充電コンデンサ81に充電する際の力率を改善するために、この充電コンデンサ81の一方の電極の電圧と、全波整流回路の正極出力端子の電圧を入力し、スイッチング素子79をオンオフする。
【0005】
次に、図8のAC−DCコンバータの動作を説明する。
力率改善回路71中の全波整流回路は、交流電源70から与えられる交流電圧を整流して出力する。スイッチング素子79は、制御回路80が出力するスイッチ駆動信号により、オンオフを繰り返す。
スイッチング素子79がオンしているときに、リアクトル76にエネルギーが蓄積され、スイッチング素子79がオフすると、リアクトル76に蓄積されたエネルギーが放出されて充電コンデンサ81が充電される。
【0006】
スイッチング素子79に対してこのようなオンオフ制御を行うことにより、力率改善回路71の出力電圧、つまり、充電コンデンサ81の充電電圧は、力率改善回路71の入力電圧に関わらず、昇圧された状態で一定になる。力率改善回路71の出力電圧は、例えば交流電源70がAC100V系のときには、入力電圧のピーク値よりも高い、160V或いは190Vに設定される。また、AC240Vのワイド入力用電源では、入力電圧のピーク値の340Vよりも高い400Vに設定される。なお、全波整流回路の正極出力端子に接続されたダイオード78は、ダイオード77を破壊から守ために設けられたものである。交流電源70の電圧が高いときに電源投入されると、全波整流回路からリアクトル76、ダイオード77及び充電コンデンサ81に突入電流が流れる。ダイオード77は高周波用で突入電流には弱い。そのため、突入電流に強い低周波用のダイオード78を介して突入電流を流すことにより、ダイオード77が破壊から防御される。通常の運転時には、充電コンデンサ81の充電電圧が高いので、ダイオード78がオンすることはなく、充電コンデンサ81の充電に関与することはない。
【0007】
充電コンデンサ81に接続されたDC−DCコンバータ82では、スイッチング素子83,84が相補的にオンオフし、充電コンデンサ81からトランス85の一次側巻線に交番する電流を流す。これにより、トランス85の二次側巻線に、交番する電圧が誘導される。ダイオード88〜91で構成された整流回路がこの交番電圧を整流し、中間タップとの間に接続されたコンデンサ92,93を直流電圧で充電する。なお、図示しない電圧制御機構により、コンデンサ92,93の電圧が一定に保たれるように、制御される。コンデンサ92,93から負荷94,95に電力が供給される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、従来の図8のようなAC−DCコンバータをオーディオ用スイッチング電源として用いると、次のような問題があった。
【0009】
オーディオ用スイッチング電源では、通常使用時には比較的大きな音を出していても、負荷94,95に出力する平均電力は、最大定格電力の1/8から1/50程度である。また、めったにない大きな音を出す場合でも、平均電力は最大定格電力の1/2から1/16程度である。このように、平均電力が低いにもかかわらず、最大定格電力を使用したときに破損しないようにスイッチング電源を設計する必要があるため、通常使用時の効率の低下、力率改善効果の悪化、さらには部品の余裕度の都合で、コストの高騰を招いていた。
また、ピアノや太鼓等のアタックが大きくて低い周波数成分を持った楽器の音や、低音に高音が重畳された音楽を処理するときに、瞬間的、短時間的に大きな電力を必要とする。即ち、負荷に大電流を流す必要性が生じる。
【0010】
これに対し、力率を改善しつつ充電コンデンサ81を充電する力率改善回路71では、最大出力電流が、図示しない電流制限回路等の保護回路で制限される。力率改善回路71では、スイッチング素子79がオンしたときにリアクトル76に流れる電流が直線的に増加し、エネルギーがリアクトル76に蓄積される。そして、スイッチング素子79がオフすると、ダイオード77を介して充電コンデンサ81が充電される。制限を行わない場合には、スイッチング素子79がオンする時間が長いと、該スイッチング素子79に流れる電流が定格を超え、発熱により破壊されたり、電力損失が増大することがある。また、リアクトル76においても、電流の増大による銅損の増加、鉄損の増大或いはコア飽和が発生することがある。
【0011】
この力率改善回路71の最大出力電流を制限することにより、大きな電流を負荷に流す場合に、図5(a)のように、AC−DCコンバータの出力電力が垂下特性に入り、電圧が急激かつ大幅に低下するという問題があった。その結果、スイッチング電源の出力電力に余裕がないと、負荷で消費する平均電力が低くても、電源の過負荷保護領域に入って、出力電力が急激に低下し、オーディオアンプから出力される音楽の音質を著しく悪化させることがあった。このような問題を解消するために、力率改善回路71の最大出力電流を負荷の消費電力のピークに合わせるように力率改善回路71を設計すると、リアクトル76、スイッチング素子79、ダイオード77のサイズが大きくなり、力率改善回路71の大きさが最大電流を制限した場合の2倍から16倍になって実用的でなくなる。その上、コストが上昇する。
【0012】
本発明は、かかる実情を鑑みてなされた発明であり、通常使用時の電力変換効率及び力率改善効果が高く、また、ピーク時に通常時の数倍の電流を出力しても出力電圧の変動が小さいAC−DCコンバータを提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点に係るAC−DCコンバータは、充電コンデンサと、交流電源に接続された整流回路と該交流電源から入力される入力電圧のピーク値を求めるピーク値検出回路と前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値或いは該ピーク値を所定量だけ超えた値になるように前記整流回路の出力電流を用いて該充電コンデンサを充電する充電手段を有する力率改善回路と、前記充電コンデンサに接続され、負荷に該充電コンデンサの充電電圧を変換した直流電圧を出力するコンバータとを備え、前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値よりも低下したときに前記整流回路から出力される電流で直接該充電コンデンサを充電させるバイパス手段を設けたことを特徴とする。
なお、この場合、前記バイパス手段は、一端が前記整流回路の正極出力端子に接続され、他端が前記充電コンデンサの一方の電極に接続され、該整流回路から該充電コンデンサへ順方向電流を流すダイオードから構成されてもよい。
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の第2の観点に係るAC−DCコンバータは、充電コンデンサと、交流電源に接続された整流回路と該交流電源から入力される入力電圧のピーク値を求めるピーク値検出回路と前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値或いは該ピーク値を所定量だけ超えた値になるように前記整流回路の出力電流を用いて該充電コンデンサを充電する充電手段を有する力率改善回路と、前記充電コンデンサに接続され、負荷に該充電コンデンサの充電電圧を変換した直流電圧を出力するコンバータとを備え、前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値よりも低下したときに前記交流電源から整流した電流を該充電コンデンサに与えて充電させるバイパス手段を設けたことを特徴とする。
この場合、前記バイパス手段は、前記交流電源の一端と前記充電コンデンサの一方の電極との間に接続されたダイオードと該交流電源の他端と該充電コンデンサの一方の電極との間に接続されたダイオードとで構成されてもよい。
【0015】
なお、本発明の第1及び第2の観点に係るAC−DCコンバータにおいて、前記充電手段の出力電力は、前記コンバータの出力電力が所定電力以上のときに該コンバータの出力電力以下となる構成としてもよい。
【0016】
また、前記力率改善回路は、前記整流回路と、前記整流回路の正極出力端子に一端が接続されたリアクトルと、前記リアクトルの他端と前記充電コンデンサの一方の電極との間に接続されて該リアクトルから該充電コンデンサへ順方向電流を流す第1の整流素子と、前記リアクトルの他端に一端が接続され、他端が前記整流回路の負極出力端子及び前記充電コンデンサの他方の電極の接続点に接続された第1のスイッチング素子と、前記整流回路の出力電圧のピーク値を求めるピーク値検出回路と、前記充電コンデンサの充電電圧と前記ピーク値検出回路で求めたピーク値とをモニタするモニタ手段と、前記モニタ手段のモニタ結果を参照し、前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値或いは該ピーク値を所定量だけ超えた値になるように第1のスイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、から構成され、前記第1のスイッチング素子のオンオフを繰り返すことにより、前記交流電源側から見た力率を改善するように構成されてもよい。
【0017】
また、前記第1の整流素子は、アノードが前記リアクトルの他端に接続され、カソードが前記充電コンデンサの一方の電極に接続されたダイオード、から構成されてもよい。
或は、前記第1の整流素子は、制御電極が前記リアクトルの他端に別のリアクトルを介して接続され、第1導通電極が前記整流回路の正極出力端子に接続されるとともに第2導通電極が該充電コンデンサの一方の電極に接続され、該制御電極の電圧によって該第1及び第2導通電極間が導通制御される半導体スイッチング素子から構成されもよい。
【0018】
また、前記力率改善回路が前記第1のスイッチング素子のオンオフにより前記力率を改善するのは、前記コンバータの出力電力が該出力電力に想定される最大値の高々1/2乃至1/16までとし、それ以上の電力の出力時には前記バイパス手段から出力される電流で直接前記充電コンデンサを充電してもよい。
また、前記コンバータには、前記負荷に与える電圧を予め設定された量だけ変化させて定電圧化させる制御機構が設けてもよい。
また、前記ピーク値検出回路は、前記整流回路の正極出力端子にアノードが接続されたダイオードと、該ダイオードのカソードと該整流回路の前記負極出力端子との間に接続されたコンデンサと、から構成されてもよい。
また、前記所定量は、前記入力電圧の電圧値に関わらない固定された電圧であってもよい。
【0019】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態を示すAC−DCコンバータの要部の回路図である。
このAC−DCコンバータは、交流電源10に接続された力率改善回路20と、力率改善回路20の出力側に接続された充電コンデンサ30と、充電コンデンサ30に接続されたDC−DCコンバータ40とを備えている。
【0020】
力率改善回路20は、4個のダイオード21a,21b,21c,21dで構成された全波整流回路21を有している。ダイオード21aのアノード及びダイオード21bのカソードが、交流電源10の一端に接続され、ダイオード21cのアノード及びダイオード21dのカソードが、交流電源10の他端に接続されている。ダイオード21a,21cのカソード同士が、全波整流回路21の正極出力端子(+)に接続されている。ダイオード21b,21dのアノード同士が、全波整流回路21の負極出力端子(−)に接続されている。
【0021】
全波整流回路21の正極出力端子(+)に、リアクトル22の一端が接続され、リアクトル22の他端に整流素子23であるダイオード23aのアノードが接続されている。ダイオード23aのカソードが、充電コンデンサ30の一方の電極に接続されている。その充電コンデンサ30の一方の電極30aと全波整流回路21の正極出力端子(+)との間には、リアクトル22及びダイオード23aとは並列に、バイパス回路24としてのダイオード24aが接続されている。ダイオード24aのアノードが、全波整流回路21の正極出力端子(+)に接続されている。
【0022】
リアクトル22及びダイオード23aのアノードの接続点と充電コンデンサ30の他方の電極30bとの間には、例えばM0S(Metal−Oxide Semiconductor)トランジスタで形成されたスイッチング素子25が接続されている。この充電コンデンサ30の他方の電極30bは、スイッチング素子25に流れるスイッチ電流検出用抵抗29を介して全波整流回路21の負極出力端子(−)に接続されている。
この力率改善回路20には、充電コンデンサ30の充電電圧を制御するために、全波整流回路21の出力電圧のピーク値を検出するピーク値検出回路26と、該充電コンデンサ30の充電電圧及び全波整流回路21の出力電圧のピーク値をモニタするモニタ回路27と、制御回路28とが、設けられている。
ピーク値検出回路26は、アノードが全波整流回路21の正極出力端子(+)に接続されたダイオード26aと、該ダイオード26aのカソードと該全波整流回路21の負極出力端子(−)との間に接続されたコンデンサ26bとで構成されている。モニタ回路27は、コンデンサ26bとダイオード26aとの接続点の電圧と、充電コンデンサ30の電極30aの電圧とを入力する2入力のコンパレータ27aで構成されている。
【0023】
図2は、図1中の制御回路28の構成例を示す回路図である。
制御回路28は、コンパレータ27aの出力端子が接続された電圧入力端子Voと全波整流回路21aの正極出力端子(+)が接続された電圧入力端子Vinとを持っている。電圧入力端子Voは、差動増幅器28aの一方の入力端子に接続されている。差動増幅器28aの他方の入力端子には、基準電源28bが接続されている。差動増幅器28aの出力端子が、マルチプライヤ28cの一方の入力端子に接続されている。マルチプライヤ28cの他方の入力端子には、電圧入力端子Vinの電圧が、分圧抵抗28d,28eで分圧されて与えられる。このマルチプライヤ28cは、入力電圧波形に相似の電流波形基準電圧Irefを出力するものであり、マルチプライヤ28cの出力端子が、2入力比較回路28fの一方の入力端子に接続されている。比較回路28fの他方の入力端子は、スイッチング素子25に流れるスイッチ電流を表す電圧信号ILを入力するように、図1の抵抗29と全波整流回路21の負極出力端子(−)との間に接続された端子Tiに接続されている。
【0024】
比較回路28fの出力端子が、比較回路28gの一方の入力端子に接続されている。比較回路28gの他方の入力端子は、図示しない発振器(OSC)に接続され、該発振器から三角波等の基準波形を入力する。比較回路28gの出力信号(スイッチ駆動信号)S28が、スイッチング素子25の制御端子に与えられる接続になっている。
【0025】
図1のDC−DCコンバータ40は、ハーフブリッジ形電流共振型であり、2個のスイッチング素子41,42と、トランス43と、2個のコンデンサ44,45とを備えている。スイッチング素子41は、図示しない制御回路によってオンオフされるものであり、充電コンデンサ30の一方の電極30aとトランス43の一次側巻線のホット側との間に接続されている。スイッチング素子42は、図示しない制御回路によってスイッチング素子41とは相補的にオンオフされるものであり、充電コンデンサ30の他方の電極30bとトランス43の一次側巻線のコールド側との間に接続されている。コンデンサ44は、トランス43の一次側巻線のホット側と充電コンデンサ30の一方の電極30aとの間に接続されている。コンデンサ45は、トランス43の一次側巻線のコールド側と充電コンデンサ30の他方の電極30bとの間に接続されている。
【0026】
トランス43の二次側巻線には、ダイオード46,47,48,49で構成された整流回路が組み込まれている。ダイオード46のアノードとダイオード48のカソードとが二次側巻線のホット側に接続され、ダイオード47のアノードとダイオード49のカソードが二次側巻線のコールド側に接続されている。ダイオード46,47のカソード同士が接続され、ダイオード48,49のアノード同士が接続されている。トランス43の二次側巻線には、中間タップが設けられている。この二次側巻線の中間タップとダイオード46,47のカソードとの間にコンデンサ50が接続されるとともに、負荷51が該コンデンサ50に並列に接続されている。二次側巻線の中間タップとダイオード48,49のアノードとの間にコンデンサ52が接続されるとともに、負荷53が該コンデンサ52に並列に接続されている。
【0027】
次に、図1のAC−DCコンバータの動作を説明する。
力率改善回路20中の全波整流回路21は、交流電源10から与えられる交流電圧を整流して出力する。通常使用時では、スイッチング素子25が、制御回路28の出力するスイッチ駆動信号S28により、オンオフを繰り返す。スイッチング素子25がオンしているときに、リアクトル22にエネルギーが蓄積され、スイッチング素子25がオフすると、リアクトル22に起電力が発生してダイオード23aがオンし、蓄積されたエネルギーが放出されて充電コンデンサ30が充電される。
【0028】
この全波整流回路21の出力電圧は脈動するが、ピーク値検出回路26のダイオード26aは、全波整流回路21の正極出力端子(+)の電圧が、該ダイオード26aのカソード側、つまりコンデンサ26bの充電電圧よりも高くなるとオンし、順方向電流を流す。この順方向電流により、コンデンサ26bが充電される。全波整流回路21の出力電圧が脈動を繰り返すと、コンデンサ26bの充電電圧は、全波整流回路21の出力電圧のピーク値に等しい電圧になる。この電圧がピーク値検出回路26の出力電圧としてダイオード26aとコンデンサ26bの接続点から、コンパレータ27aに出力される。コンパレータ27aは、ピーク検出回路26の出力電圧と充電コンデンサ30の充電電圧を比較し、充電コンデンサ30の充電電圧が全波整流回路21の出力電圧のピーク値以上であるか否かを判定し、ピーク値以上と判定したときには、充電コンデンサ30の充電電圧を下げる制御を行うために、通常よりも高い電圧信号を制御回路28の電圧入力端子Voへ送出する。ピーク値未満と判定したときには、充電コンデンサ30の充電電圧を上げる制御を行うために、通常よりも低い電圧を制御回路28の電圧入力端子Voへ送出する。充電コンデンサ30の充電電圧が設定値になると、コンパレータ27aは通常の電圧を出力する。
【0029】
制御回路28中の差動増幅器28aは、コンパレータ27aから与えられた電圧と基準電源28bの出力電圧との差に対応する電圧をマルチプライヤ28cへ与える。マルチプライヤ28cは、分圧抵抗28d,28eで分圧されて入力された全波整流回路21の出力電圧に比例する電流波形基準電圧Irefを生成し、これを出力する。この電流波形基準電圧Irefを生成する際の比例定数は、差動増幅器28aから与えられた電圧により、設定される。そのため、充電コンデンサ30の充電電圧が、全波整流回路21の出力電圧のピーク値以上になっている場合と、該充電コンデンサ30の充電電圧が全波整流回路21の出力電圧のピーク値未満の場合とで、電流波形基準電圧Irefの比例定数が異なり、電流波形基準電圧Irefは波形が相似するが、値が異なる。充電コンデンサ30の充電電圧が、全波整流回路21の出力電圧のピーク値以上になっている場合には、電流波形基準電圧Irefの指令値が低く、充電コンデンサ30の充電電圧が全波整流回路21の出力電圧のピーク値未満の場合には、電流波形基準電圧Irefの指令値が高くなる。
【0030】
電流波形基準電圧Irefは、比較回路28fに供給される。比較回路28fは、リアクトル22及びスイッチング素子25を流れるスイッチ電流検出抵抗29の端子電圧ILを入力し、電流波形基準電圧Irefと比較する。電圧信号ILで示される平均電流波形が電流波形基準Irefより低いときには、比較回路28fの出力電圧は高くなり、電圧信号ILで示される平均電流波形が電流波形基準Irefより高いときには、比較回路28fの出力電圧は低くなる。この比較回路28fの出力電圧は、該比較回路28gに出力される。
【0031】
比較回路28gは、発振器から与えられた三角波等の基準波形と、比較回路28fの出力電圧との比較を行い、比較回路28fの出力電圧が基準電圧波形より高いときに、スイッチ駆動信号S28を“H”にし、比較回路28fの出力電圧が基準電圧波形よりも低いとき、スイッチ駆動信号S28を“L”にし、PWM変調を行う。PWM変調されたスイッチ駆動信号S28により、スイッチング素子25がオンオフ制御される。
このように、スイッチング素子25のオン、オフ制御を行うことにより、充電コンデンサ30の充電電圧が、全波整流回路21の出力電圧のピーク値よりも低いときには、スイッチング素子25のオン時間が長くなり、充電電力が増加して充電コンデンサ30の充電電圧が高くなる。逆に、充電コンデンサ30の充電電圧が、全波整流回路21の出力電圧のピーク値よりも高いときには、スイッチング素子25のオン時間が短くなり、充電電力が減少して充電コンデンサ30の充電電圧が下がる。よって、充電コンデンサ30の充電電圧、つまり、力率改善回路20の出力電圧は、交流電源10から与えられる入力電圧のピーク値になるまで、そのピーク値を追尾することになる。
【0032】
図3は、力率改善回路の直流出力電圧を示す特性図であり、縦軸には力率改善回路の直流出力電圧値、横軸には力率改善回路の入力電圧が示されている。
力率改善回路を用いた従来のAC−DCコンバータでは、力率改善回路の出力電圧T1が、入力電圧に関わらず該入力電圧よりも高い一定電圧になるように制御していた。これに対し、本実施形態では、前記のように、ピーク値検出回路26で全波整流回路21の出力電圧のピーク値を検出し、制御回路28が、充電コンデンサ30の充電電圧が帰還されたコンパレータ27aの出力電圧を参照してスイッチング素子25のオンオフ制御を行う。これにより、力率改善回路20の出力電圧が、全波整流回路21の出力電圧のピーク値になり、充電コンデンサ30に充電される。よって、力率改善回路20の平均入力電圧が変化すると、力率改善回路20の出力電圧T2もその変化に対応してリニアに変化する。
【0033】
図4は、DC−DCコンバータ40の動作を説明する波形図である。同図4中のVdsは、スイッチング素子41のスイッチ端子間電圧波形、Iq1はスイッチング素子41に流れるスイッチ電流波形、Iq2はスイッチング素子42に流れるスイッチ電流波形、Itはトランス43の一次側巻線に流れる電流波形、IiはDC−DCコンバータ40の入力電流波形、Id1,Id2は、ダイオード46,47にそれぞれ流れる電流波形を示している。
スイッチング素子41のゲートに”L”が与えられると、スイッチング素子41がオンして電流Iq1を流す。スイッチング素子41がオフ状態のときに、スイッチング素子42がオンし、スイッチング素子42がオフ状態のときにスイッチング素子41がオンして電流Iq2を流す。これにより、DC−DCコンバータ40では、充電コンデンサ30がトランス43の一次側巻線に交番する電流を流す(It)。これにより、トランス43の二次側巻線に、交番する電圧が誘導される。ダイオード46〜49で構成された整流回路がこの交番電圧を整流し、中間タップとの間に接続されたコンデンサ50,52を直流電圧で充電する。コンデンサ50,52から負荷51,53に電力が供給される。
【0034】
ここで、図1のAC−DCコンバータを、オーディオ用スイッチ電源として用いる場合の動作を補足的に説明する。
本実施形態のAC−DCコンバータでは、充電コンデンサ30の充電電圧が、交流電源10から入力される入力電圧のピーク値となる。ここで、負荷51,53に出力する電流が増加して、充電コンデンサ30の充電電圧が低下すると、ダイオード24aがオンし、全波整流回路21の正極出力端子から直接電流が充電コンデンサ30に流れる構成になる。よって、瞬間的、短時間的に負荷に大電流が流れても、それによって、出力電圧が降下することが防止される。
次に、力率改善回路20とDC−DCコンバータ40の出力電力の関係を従来と比較する。
【0035】
図5(a)は、図8の出力電力と力率改善回路の出力電圧の関係を示し、同図(b)は図1の出力電力と力率改善回路の出力電圧の関係を示している。
従来の図8のAC−DCコンバータでは、負荷に供給する出力電力が多い場合も少ない場合も、一定の電圧が力率改善回路71から出力される。そのため、負荷に供給する電力が多くなって、定格電力を超えるような場合には、力率改善回路71の出力電圧が、図5(a)のA点のように、極端に低下することが想定された。しかしながら、本実施形態では、負荷51,53へ供給する電力が増加しても、それにより充電コンデンサ30の電圧が低下したときに、ダイオード24aが導通して順方向電流を流す。よって、AC−DCコンバータは、通常のコンデンサインプット型の形態になり、力率改善は行わないが、負荷51,53で必要な電力を全波整流回路21から直接充電コンデンサ30に与えることになる。
【0036】
ここで、オーディオ用スイッチング電源を使用する場合、図5(b)のように、DC−DCコンバータ40の出力電力が、該出力電力の最大定格の1/16〜1/2以下のときに、充電コンデンサ30を全波整流回路21の出力電圧のピーク値に充電する構成とし、出力電力がそれを越える場合には、ダイオード24aがオンするように、リアクタ22、スイッチング素子25或いは発振器を設計するとよい。これにより、過剰品質とならない、安価で小型のAC−DCコンバータが実現できる。
【0037】
上記実施形態のAC−DCコンバータによれば、以下のような特徴を得ることができる。
(1)充電コンデンサ30を充電する力率改善回路20の出力電圧は、入力電圧に応じて増減するので、充電コンデンサ30の充電電圧を必要以上に高くすることがない。そのため、電圧変換における効率がよい。また、各部品の特性を必要以上に高めることがなくなり、コストを低減できる。
【0038】
(2) 負荷が重くなり出力電流が増大したときには、充電コンデンサ30の充電電圧が低下し、ダイオード24aが導通して順方向電流を流すので、負荷51,53に出力する電力が瞬間的、短時間的に多くなっても、AC−DCコンバータの出力電圧が図5(b)のB点のようになり、極端に降下しない。
なお、本発明は、上記実施形態に限定されず種々の変形が可能である。図6及び図7を参照しつつ、変形例を説明する。
(a) 図1中のダイオード23aは、図6のように、ソースがリアクトル22の他端に接続され、ドレインが充電コンデンサ30の一方の電極に接続され、ゲートがリアクトル22の他端にリアクトル22aを介して接続されたFET61等の半導体スイッチング素子に置換できる。
(b) 図1中のダイオード24aは、図6のように、交流電源10の一端にアノードが接続されるとともにカソードが充電コンデンサ30の一方の電極30aに接続されたダイオード62aと、交流電源10の他端にアノードが接続されるとともにカソードが充電コンデンサ30の一方の電極30a接続されたダイオード62bとからなるバイパス回路で置換できる。
【0039】
(c) DC−DCコンバータ40は、ハーフブリッジ形電流共振型でなくてもよく、どのようなDC−DCコンバータを用いてもよい。
(d) DC−DCコンバータ40には、定電圧制御をわずかに行う制御機構64を設けてもよい。
(e) 図7のように、コンパレータ27aの入力端子等に電源65を接続し、ピーク値検出回路26の出力電圧をバイアスさせてもよい。これにより、充電コンデンサ30の充電電圧を一定値だけ高めることができる。
【0040】
(f) ピーク値検出回路26は、全波整流回路21の出力電圧から、入力電圧のピーク値を求めたが、交流電源10に接続して交流入力電圧から直接ピーク値を求める構成にしてもよい。
【0041】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明によれば、ピーク値検出回路を備え、充電コンデンサを充電する力率改善回路の出力電圧を、入力電圧に応じて増減させるので、必要以上に充電コンデンサを充電する必要がなくなり、電力の供給効率が高く維持できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態を示すAC−DCコンバータの回路図である。
【図2】図1中の制御回路28を示す回路図である。
【図3】力率改善回路20の入力電圧、直流出力電圧を示す特性図である。
【図4】DCコンバータ40の各部の動作を示す波形図である。
【図5】力率改善回路20の出力電力と出力電圧の関係を示す概念図である。
【図6】図1の変形例を示す回路図である。
【図7】図1の他の変形例を示す回路図である。
【図8】従来のAC−DCコンバータを示す回路図である。
【符号の説明】
10 交流電源
20 力率改善回路
21 全波整流回路
22 リアクトル
23 第1の整流素子
24 バイパス回路
25 第1のスイッチング素子
26 ピーク値検出回路
27 モニタ回路
28 制御回路
30 充電コンデンサ
40 DC−DCコンバータ
51,53 負荷

Claims (12)

  1. 充電コンデンサと、
    交流電源に接続された整流回路と該交流電源から入力される入力電圧のピーク値を求めるピーク値検出回路と前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値或いは該ピーク値を所定量だけ超えた値になるように前記整流回路の出力電流を用いて該充電コンデンサを充電する充電手段を有する力率改善回路と、
    前記充電コンデンサに接続され、負荷に該充電コンデンサの充電電圧を変換した直流電圧を出力するコンバータとを備え
    前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値よりも低下したときに前記整流回路から出力される電流で直接該充電コンデンサを充電させるバイパス手段を設けたことを特徴とする交流直流変換回路。
  2. 前記バイパス手段は、一端が前記整流回路の正極出力端子に接続され、他端が前記充電コンデンサの一方の電極に接続され、該整流回路から該充電コンデンサへ順方向電流を流すダイオードから構成されることを特徴とする請求項に記載の交流直流変換回路。
  3. 充電コンデンサと、
    交流電源に接続された整流回路と該交流電源から入力される入力電圧のピーク値を求めるピーク値検出回路と前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値或いは該ピーク値を所定量だけ超えた値になるように前記整流回路の出力電流を用いて該充電コンデンサを充電する充電手段を有する力率改善回路と、
    前記充電コンデンサに接続され、負荷に該充電コンデンサの充電電圧を変換した直流電圧を出力するコンバータとを備え、
    前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値よりも低下したときに前記交流電源から整流した電流を該充電コンデンサに与えて充電させるバイパス手段を設けたことを特徴とする交流直流変換回路。
  4. 前記バイパス手段は、前記交流電源の一端と前記充電コンデンサの一方の電極との間に接続されたダイオードと該交流電源の他端と該充電コンデンサの一方の電極との間に接続されたダイオードとで構成されていることを特徴とする請求項3に記載の交流直流変換回路。
  5. 前記充電手段の出力電力は、前記コンバータの出力電力が所定電力以上のときに該コンバータの出力電力以下となる構成としたことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の交流直流変換回路。
  6. 前記力率改善回路は、
    前記整流回路と、
    前記整流回路の正極出力端子に一端が接続されたリアクトルと、
    前記リアクトルの他端と前記充電コンデンサの一方の電極との間に接続されて該リアクトルから該充電コンデンサへ順方向電流を流す第1の整流素子と、
    前記リアクトルの他端に一端が接続され、他端が前記整流回路の負極出力端子及び前記充電コンデンサの他方の電極の接続点に接続された第1のスイッチング素子と、
    前記整流回路の出力電圧のピーク値を求めるピーク値検出回路と、
    前記充電コンデンサの充電電圧と前記ピーク値検出回路で求めたピーク値とをモニタするモニタ手段と、
    前記モニタ手段のモニタ結果を参照し、前記充電コンデンサの充電電圧が前記ピーク値或いは該ピーク値を所定量だけ超えた値になるように第1のスイッチング素子のオンオフを制御する制御回路と、から構成され、前記第1のスイッチング素子のオンオフを繰り返すことにより、前記交流電源側から見た力率を改善するように構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の交流直流変換回路。
  7. 前記第1の整流素子は、アノードが前記リアクトルの他端に接続され、カソードが前記充電コンデンサの一方の電極に接続されたダイオード、から構成されることを特徴とする請求項に記載の交流直流変換回路。
  8. 前記第1の整流素子は、制御電極が前記リアクトルの他端に別のリアクトルを介して接続され、第1導通電極が前記整流回路の正極出力端子に接続されるとともに第2導通電極が該充電コンデンサの一方の電極に接続され、該制御電極の電圧によって該第1及び第2導通電極間が導通制御される半導体スイッチング素子から構成されることを特徴とする請求項6または7に記載の交流直流変換回路。
  9. 前記力率改善回路が前記第1のスイッチング素子のオンオフにより前記力率を改善するのは、前記コンバータの出力電力が該出力電力に想定される最大値の高々1/2乃至1/16までとし、それ以上の電力の出力時には前記バイパス手段から出力される電流で直接前記充電コンデンサを充電することを特徴とする請求項乃至のいずれか1項に記載の交流直流変換回路。
  10. 前記コンバータには、前記負荷に与える電圧を予め設定された量だけ変化させて定電圧化させる制御機構が設けられることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の交流直流変換回路。
  11. 前記ピーク値検出回路は、前記整流回路の正極出力端子にアノードが接続されたダイオードと、該ダイオードのカソードと該整流回路の前記負極出力端子との間に接続されたコンデンサと、から構成されることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の交流直流変換回路。
  12. 前記所定量は、前記入力電圧の電圧値に関わらない固定された電圧であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の交流直流変換回路。
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