JP3986202B2 - 選択成長方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシリコンもしくはシリコン−ゲルマニウム混晶エピタキシャル成長の選択成長法に関する。
【0002】
【従来の技術】
シリコンエピタキシャル層の選択成長とは、シリコン基板の表面が露出している部分のみ成長させ、酸化膜や窒化膜等の絶縁膜上には成長させない技術であり、今後、さらに微細化が進むシリコンデバイスプロセスにおいて、セルフアライン技術の1つとして重要である。
【0003】
従来、シリコンエピタキシャル層の選択成長は、いわゆるコールドウオールタイプの枚葉装置で行われていた。
コールドウォールタイプの枚葉装置の断面図を図3の符号101に示す。この枚葉装置101は、真空チャンバ102と、真空チャンバ102に取り付けられたターボ分子ポンプ1031、1032と、真空チャンバ102内に設けられたサセプタ107と、サセプタ107の下方に設けられたヒータ105とを有している。サセプタ107は後述の基板を支持できるようにされており、ヒータ105は、高周波加熱あるいは赤外線ランプ加熱により、サセプタ107及び後述の基板を加熱できるようにされている。
【0004】
この枚葉装置101を用いて、表面の一部に絶縁膜が形成されたシリコン基板104を用いて、露出しているシリコン基板104の表面にのみ、シリコンエピタキシャル層を選択成長させるには、まず、ターボ分子ポンプ1031、1032で真空チャンバ102内を真空排気し、真空状態を維持した状態で基板104を真空チャンバ102内に入れサセプタ107で支持しておく。
【0005】
この状態でヒータ105を起動し、真空チャンバ102に取り付けられたガス導入管106から、シリコン原料ガス(例えばSiH4、Si26、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4等)と、不純物ドーピングを行うためのドーピング原料ガス(例えばB26、PH3、AsH3等)と、微量のCl2ガス(又はHClガス)とを真空チャンバー102内に導入する。
【0006】
真空チャンバ102は予め不図示の冷却手段で冷却されており、ヒータ105を起動しても、サセプタ107及び基板のみが加熱される。従って、成長圧力が高い場合でもSiH4等のシリコン原料ガスは気相反応せず、また、反応確率の高いSiHxに分解されることなく基板表面に到達する。
【0007】
SiH4ガスはSiHxガスより反応確率が低く、核成長が遅いため、酸化膜や窒化膜等の絶縁膜上に発生した成長核は添加されたCl2ガスによってエッチングされてしまうので成長は促進されず、露出したシリコン基板表面にのみシリコン結晶を成長させることができる。
【0008】
上述の構成の枚葉装置を用いて、Si26をシリコンソースガスとした例として、酸化膜上での選択成長では2μm程度、窒化膜上では100nmまでの選択成長が報告されている。(辰巳 徹、半導体研究XXXVIII UHV−CVDによるGexSi1-x選択成長およびHSG−poly Siの形成p58)
しかし、図3に示すようなコールドウォールタイプの枚葉式装置で前記シリコンエピタキシャル成長を行った場合には、処理基板の枚葉数が10枚/hr以下であるため、スループットが悪くなる。また、反応チャンバーの所望の清浄度を維持するために大量の高純度H2ガスを使わなければならないのでガスの消費量が多くなる。さらに、高周波加熱あるいは赤外線ランプ加熱のために大電流を消費するため、コストパフォーマンスが悪くなるという問題があった。
【0009】
そこで、抵抗加熱炉を使用した、いわゆるホットウォールタイプのバッチ装置を用いた方法が注目されている。この装置では、複数枚の基板を一括処理することが可能なので、スループットの向上が期待できる。
【0010】
しかしながら、ホットウオールタイプのバッチ装置では、成長時の圧力が数十Pa以上と高いために、高温の反応チャンバーや隣接する高温の基板表面で、SiH4ガスが反応性の高いSiHxガスに熱分解して、酸化膜や窒化膜の絶縁膜上に到達し、絶縁膜上でシリコン成長がなされてしまう。
【0011】
また、数十Pa以上の成長圧力でCl2ガスを添加すると、SiHxガスとCl2ガスが気相反応してSiCl2のように蒸気圧の高いガスになり、基板表面に到達されることなく排気されてしまうため、絶縁膜上に形成されたシリコン核をエッチング・除去するための実質的なCl2ガス量が少なくなり、十分なエッチング・除去が進行しにくくなる。
【0012】
従って、ホットウオールタイプのバッチ装置では、選択成長をすることができないか、ごく薄い薄膜しか成長できないという旨の報告が、上記辰巳らによりなされている。
このため、低温、低圧の条件下で、選択成長させることができる技術が要求されている。
【0013】
また、塩素を添加しない場合でも、反応チャンバー内の水分や酸素分圧を低下させるなどして、反応チャンバー内の高清浄化を図ることにより、酸化膜や窒化膜などの絶縁膜とシリコン基板の表面が露出している部分との材質差による反応確率の違いで、数分から数十分間は選択成長することが知られている。このような、反応雰囲気を高清浄化することでの選択成長については、室田らによって報告されている(SDM88-3 p.9)。しかし、そこで得られる選択成長の膜厚では薄すぎて、シリコンデバイスに応用できないという問題がある。
【0014】
以上まではシリコンエピタキシャル層の選択成長について説明したが、近年シリコン系バイポーラトランジスタでは、SiGeエピタキシャル層をベース層に用いてヘテロ接合を形成することによって高速化を図る研究が盛んに行われており、SiGeエピタキシャル成長においても選択成長技術が必要とされてきている。
【0015】
GeとSiには格子不整合が4%もあるため、成長時にミスフィット転位が発生したり、表面モホロジーが悪化しやすいという問題がある。これらの問題を抑制しながらSiGeエピタキシャル成長をするには、成長温度を低温にしなければならない。Si上のSi1-xGex成長においてのミスフィット転位の起こる臨界膜厚の温度依存性については、白木靖寛、辰巳徹らによって報告されている(シリコン系ヘテロデバイス p201 丸善)。
【0016】
例えば、従来エピタキシャル成長が行われる1000℃以上の高温ではGe濃度10%の場合に、成長層の臨界膜厚は140nm以下であった。デバイスに応用できる膜厚は200nm以上必要であり、200nm以上の成長膜厚を得るためには成長温度を650℃以下に低くする必要がある。
【0017】
このように低温でエピタキシャル成長を行うためには、非常に清浄度の高い雰囲気で成膜しなければならない。特に、成膜装置内部の水分や酸素の分圧を十分に低減しなければ良好な結晶性を有するエピタキシャル成長層を得ることはできない。
【0018】
エピタキシャル成長の可否と、成長温度と、雰囲気中の水分分圧との関係については、G.Ghidini and F.W.Smith によって報告されている(J.Electrochem. Soc. vol.131,pp.2924(1984)。図4は、この文献における上記の関係を示す図である。
【0019】
これによると、エピタキシャル成長の可否の境界直線Lで示されるように、設定した成膜の温度条件(横軸)において直線L上の水分分圧以下の水分分圧で成膜しなければ酸化され易く、表面のラフネスが悪くなる。すなわち結晶欠陥の多い単結晶成長になることを示し、シリコンエピタキシャル成長を低温で行う程、水分分圧を低くしないと酸化が生じ易くなることを示している。一例として、成長温度を600℃としてエピタキシャル成長を行う場合には、水分分圧は2×10-8Pa以下にしなければならない。
【0020】
上述した低温エピタキシャル成長において、水分分圧を低減する対策の一つとしてUHV−CVD(超高真空化学気相成長)技術がB.S.Meyersonによって報告されている。(Appl.Phys.Lett.48.p797(1986)、米国特許第5,298,452号、日本国特許第2,681,098号)。
【0021】
このUHV−CVD装置は、横型のバッチ式であり、シリコン基板を出し入れするためのロードロック室と加熱手段が設けられた反応チャンバーとを有し、それぞれに高真空排気する手段が設けられている。
【0022】
このUHV−CVD装置によれば、反応チャンバ内を超高真空雰囲気にして、真空チャンバ内の水分分圧を低減することができるので、低温条件下でもエピタキシャル成長が可能である。
【0023】
しかし、この横型バッチ式UHV−CVD装置は、その設置面積が大きくなってしまい、維持費の高いクリーンルームスペースの有効活用ができないという問題がある。
【0024】
以上に鑑みて、縦型バッチ式で超高真空排気の可能なダブルロードロック機構を備える縦型UHV−CVD装置が提案されている(特願平11−15420号)。
この縦型UHV−CVD装置もまた、シリコン基板を出し入れするためのロードロック室と加熱手段が設けられた反応チャンバーとを有し、それぞれに高真空排気する手段が設けられ、反応チャンバ内を超高真空雰囲気にすることで、低温条件下でもエピタキシャル成長が可能である。
【0025】
さらに、縦型UHV−CVD装置は1バッチ当たり100枚の一括処理を行うことから、スループットが枚葉装置の1.5〜2倍に向上し、かつ縦型バッチ式のため、設置面積が小さくなるという利点があるため、期待されている。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記従来技術の不都合を解決するために創作されたものであり、ホットウォールタイプのバッチ装置でデバイスに応用可能なエピタキシャル成長における選択成長膜を提供することにある。
【0027】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、シリコン単結晶面が一部で露出したシリコン基板を、室内がホットウォールによって加熱可能に構成された反応室内に配置し、前記シリコン単結晶面に、選択的にエピタキシャル層を結晶成長をさせる選択成長方法であって、前記反応室内に前記シリコン基板を複数枚配置し、前記ホットウォールによって前記シリコン基板を加熱し、前記反応室内を分子流領域の圧力で、SiH4ガスを含む原料ガスを前記反応室内に導入して、エッチングガスの不存在雰囲気で前記単結晶面に結晶核を選択的に成長させる第一成膜ステップと、成長温度を800℃以下とし、前記原料ガスと、化学構造中にハロゲン原子を有するエッチングガスとを前記反応室内に導入し、前記単結晶面に結晶層を成長させる第二成膜ステップを有することを特徴とする。
請求項2記載の発明は、請求項1記載の選択成長方法であって、前記結晶層として、シリコン又はシリコン−ゲルマニウム混晶エピタキシャル層を成長させることを特徴とする。
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の選択成長方法であって、前記エッチングガスとして、Cl2ガス、HClガス、Br2ガス又はHBrガスのいずれか一つを用いることを特徴とする。
請求項4記載の発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の選択成長方法であって、前記エッチングガスとしてCl 2 ガスを用い、前記Cl 2 ガスの濃度を1.4%〜1.8%にすることを特徴とする。
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の選択成長方法であって、前記第二成膜ステップによる前記結晶層の成長時間を90分未満にすることを特徴とする。
【0028】
本発明では、表面に絶縁膜が形成され、シリコン単結晶面が一部で露出したシリコン基板のシリコン単結晶面に、選択的に結晶成長をさせる際に、加熱可能に構成された反応室を用いて、成長温度を800℃以下の低温にし、反応室内の圧力を1Pa以下とする成長条件で、化学構造中にシリコン原子を有するシリコン原料ガスと、化学構造中にハロゲン原子を有するエッチングガスとを、反応室内に導入して、単結晶面に結晶層を成長させている。
【0029】
一例として、シリコン原料ガスとしてSiH4ガスを用い、エッチングガスとしてCl2ガスを用いると、成長温度を800℃以下の低温にし、成長圧力を1Pa以下の分子流領域とした場合には、これらのガスは気相反応をせず、またSiH4ガスは反応確率の高いSiHxに分解されることなく基板表面に到達する。
【0030】
SiH4ガスはSiHxガスより反応確率が低く、核成長が遅いため、酸化膜や窒化膜等の絶縁膜上に発生した成長核は添加されたCl2ガスによって十分エッチングされてしまうので成長は促進されず、露出したシリコン基板表面にのみシリコン結晶成長をさせることができる。
従って、反応室全体が加熱される、いわゆるホットウオールタイプの真空熱処理装置を用いても、上記の成長条件で選択成長が可能になる。
【0031】
なお、本発明においては、まずエッチングガスとシリコン原料ガスとを反応室内に導入する前に、シリコン原料ガスのみを反応室内に導入して、単結晶面に予め結晶層を成長させている。
【0032】
シリコン原料ガスが塩素原子を含むガスを含まない場合でも、反応室内の水分分圧や酸素分圧が十分に低ければ、シリコン基板の表面が露出している部分と絶縁膜との材質差による反応確率の違いにより、薄い膜厚ではあるが選択成長をさせることができるためである。
【0033】
かかるシリコン原料ガスのみを反応室内に導入して選択成長をした後に、塩素原子を含むガスを含むエッチングガスを導入して、二段階の選択成長をすることにより、エピタキシャル層の成長開始時から成長終了時まで、終始化学構造中に塩素原子を有するガスをシリコン原料ガスに添加しなくても、デバイスに応用可能な膜厚まで選択成長させることができる。
【0034】
これにより、成長開始時から成長終了時まで、エッチングガスをシリコン原料ガスに添加し続ける場合に比較して、エッチングガスを添加する時間を短くすることができるので、単結晶面上に成長した結晶層がエッチングされる時間も短くなり、終始エッチングガスを導入していた場合に比して、成長速度を向上させることができる。
【0035】
なお、本発明において、反応室は、複数枚の基板を搭載できるように構成してもよい。この場合には、数枚の基板を一括処理することができるので、スループットを向上させることができる。
【0036】
また、シリコン原料ガスには、希釈ガスや、ドーピングを行なうためのガスを含有するようにしてもよい。
さらに、エッチングガスとして、Cl2ガス、HClガス、Br2ガス又はHBrガスを用いてもよい。
【0037】
【発明の実施の形態】
以下で図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1の符号1に、本実施形態の選択成長方法を実施する縦型真空熱処理装置を示す。この縦型真空熱処理装置1は、石英チューブから成る反応チャンバー12と、反応チャンバー12周囲に配置された発熱体15と、反応チャンバー12に気密に接続された第2のロードロック室32と、第2のロードロック室32にゲートバルブ23を介して接続された第1のロードロック室31と、第1のロードロック室31にゲートバルブ22を介して接続された移載室25と、移載室25にゲートバルブ19を介して接続されたカセット室14と、カセットの出し入れのためのゲートバルブ18とを有している。
【0038】
反応チャンバー12は、一端が封止され、他端が開放されており、略垂直にされた状態で、開放部分側が第2のロードロック室32に気密に取り付けられている。そして、反応チャンバー12と第2のロードロック室32との間にはゲートバルブ24が設けられており、ゲートバルブ24を開けると内部が接続されるように構成されている。
【0039】
反応チャンバー12、第2のロードロック室32、第1のロードロック室31には真空ポンプ43、42、41がそれぞれ接続されており、各室12、32、31内を超高真空排気できるように構成されている。移載室25、カセット室14には窒素ガス導入ポート21、20がそれぞれ接続されており、移載室25、カセット室14を窒素ガス置換できるように構成されている。
【0040】
以下で、上記の構成の縦型真空熱処理装置1内に、図2に示すように表面に酸化膜44が形成されたシリコン基板17を配置し、シリコン単結晶が露出する面(以下単にシリコン露出面と称する。)45に、シリコンエピタキシャル層を選択的に成長させる工程について説明する。
【0041】
縦型真空熱処理装置1では、予め2台の真空ポンプ41、42を用いて第1のロードロック室31及び第2のロードロック室32の内部をそれぞれ約1×10-6Paの圧力にしておく。また、移載室25、カセット室14にはそれぞれ窒素ガス導入ポート21、20より窒素ガスを導入し、各室25、14を窒素ガス置換しておく。さらに、シリコン基板を載置するためのポート16は、第1のロードロック室31内部に配置しておく。また、反応チャンバー12内部についても真空ポンプ43を用い約1×10-7Paの圧力にしておく。更に、発熱体15への通電量を制御して、反応チャンバー12の内部温度が約400℃になるようにしておく。
【0042】
また、予めシリコン基板17を所定の温度に加熱した硫酸−過酸化水素水溶液にて処理してシリコン基板17に付着している有機物を除去した後に水洗し、フッ酸で処理する。次いで、所定の温度に加熱したアンモニア−過酸化水素水溶液でシリコン基板17表面のパーティクル除去を行った後に水洗し、フッ酸で処理する。その後、希フッ酸を用いてシリコン基板17表面の金属汚染物及び自然酸化膜の除去を行なっておく。
【0043】
最初に、上述の処理がなされた複数枚のシリコン基板17をカセットに入れ、ゲートバルブ18を開け、カセットをカセット室14に載置する。カセットがカセット室14に載置されたら直ちにゲートバルブ18を閉め、窒素ガス導入口20より窒素ガスを導入すると、カセット室14内は所定範囲の水分濃度、酸素濃度になる。
【0044】
その後、カセット室14と移載室25との間のゲートバルブ19と、移載室25と第1のロードロック室31との間のゲートバルブ22を開け、カセット室14、移載室25、第1のロードロック室31の内部を接続し、移載室25に配置された移載機8を用いて、シリコン基板17を第1のロードロック室31内部に搬入し、ボート16に移載させる。移載が完了したら各ゲートバルブ19、22を閉じ、真空ポンプ41により、第1のロードロック室31を真空排気する。
【0045】
第1のロードロック室31内の圧力が約1×10-6Paまで低下したら、第1、第2のロードロック室31、32の間のゲートバルブ23を開け、シリコン基板17を搭載したボート16を、図示しない移載機を用いて第2のロードロック室32内部へと移載する。その後、ゲートバルブ23を閉め、第2のロードロック室32を真空ポンプ42により約1×10-6Paの圧力まで排気する。
【0046】
次いで、反応チャンバー12と第2のロードロック室32との間のゲートバルブ24を開け、反応チャンバー12内部の図示しないガス導入口より水素ガスを導入しながら、ボートローダー29によりシリコン基板17を載置したボート16を反応チャンバー12に移載する。ボート16を移載中には、図示しない真空ポンプの排気量を制御して、反応チャンバー12と第2のロードロック室32の圧力が2660Pa程度になるようにしておく。
【0047】
完全にボート16が反応チャンバー12に移載されたら、水素ガスの導入を止め、真空ポンプ43により、400℃の状態でシリコン基板が酸化しない水分分圧2×10-8Pa以下の超高真空圧力まで、反応チャンバー12内の圧力を低下させる。
【0048】
次いで、反応チャンバー12内部の図示しないガス導入口より水素ガスを導入しながら発熱体15に通電して反応チャンバー12内を加熱し、シリコン基板17の温度を900℃程度にすることにより、シリコン露出面45の表面に形成された自然酸化膜を還元除去する。自然酸化膜が完全に除去されたら、通電量を制御して、シリコン基板17の温度を600℃程度まで低下させる。
【0049】
次に、反応チャンバー12内部の図示しないガス導入口より、シリコンエピタキシャル層の原料ガスであるSiH4ガス(シリコン原料ガス)を流量12SCCMで反応チャンバー12内に導入する。このとき、反応チャンバー12内は、0.1Paと分子流領域であり、SiH4ガスは、反応確率の高いSiHxに熱分解されることなく基板表面に到達する。
【0050】
SiH4ガスはSiHxガスより反応確率が低い。また、材質の差により、SiH4ガスの反応確率はシリコン露出面45と酸化膜44とで異なり、シリコン露出面45でシリコン結晶が成長しても、酸化膜44上ではシリコンの核は発生しにくいので、シリコン露出面45にのみシリコンエピタキシャル層を選択的に成長させることができる。
【0051】
成膜開始後、約30分経過したら、引き続き反応チャンバー12内部の図示しないガス導入口より、SiH4ガスとCl2ガスとの混合ガス(第2の原料ガス)を、反応チャンバー12内に導入する。このとき、SiH4ガス、Cl2ガスの流量をそれぞれ12SCCM、0.2SCCMとしておく。この条件では、シリコン基板17の酸化膜44上にシリコンの核が発生し出すのは成膜開始後約40分後であり、成膜開始後約30分経過した時点では、シリコンの核は酸化膜44上には発生していない。
【0052】
反応チャンバー12内に、SiH4ガスに加えてCl2ガスを導入すると、仮に酸化膜44上でシリコンの核が発生しても、成長前に直ちにCl2ガスによってエッチングされてしまうので、絶縁膜上にはシリコン結晶は成長せず、露出したシリコン基板上にのみ選択的に成長させることができる。
【0053】
Cl2ガスの導入を開始してから、約90分が経過したら、反応チャンバー12内へのSiH4ガス及びCl2ガスの導入を停止して成長を終了させる。
その後、シリコン基板17を、反応チャンバー12の内部へ移載してきたのと逆の手順によりシリコン基板17を縦型真空熱処理装置1から移載して取り出し、一連の成膜処理を終了する。
【0054】
上記条件で、シリコンエピタキシャル層は、SiH4ガスのみで成長させた30分間に約120nm成長し、SiH4ガスにCl2ガスを添加して成長させた90分間に約280nm成長しており、合計120分の成膜時間で約400nmのシリコンエピタキシャル層を成長させることができた。
【0055】
以上説明したように、本実施形態によれば、SiH4ガスを反応チャンバー12内に30分間導入した後に、SiH4ガスに加えてCl2ガスを添加して、90分間反応チャンバー12内に導入することで、エピタキシャル層を成長させている。
【0056】
従って、成長を開始してから成長が終了するまでCl2ガスを添加し続ける従来方法よりもCl2ガスを添加する時間が短時間になり、選択成長したエピタキシャル層がCl2ガスでエッチングされる時間も短くなるので、従来に比して成長速度を向上させることができる。
【0057】
本発明者らは上記条件で、Cl2ガスを添加してから90分以上経過した場合には、酸化膜44上にシリコンの核発生が始まり、上記条件ではこの400nm以上では選択性がなくなることを確認した。
【0058】
以上までは、シリコンエピタキシャル層の選択成長について説明したが、上記の縦型真空熱処理装置1を用いれば、シリコン−ゲルマニウム混晶エピタキシャル層を選択成長させることもできる。
【0059】
本発明者らは、上述の縦型真空熱処理装置1を用いて、不図示のガス導入口から、シリコン原料ガス(SiH4ガスとGeH4ガス)と、ボロンドープのためのガス(B26ガス)、希釈のためのガス(H2ガス)及びエッチングガス(Cl2ガス)を、それぞれ反応チャンバー12内に導入し、成長温度600℃、成長圧力0.1Paの条件下で、成長時間68分によりSiGeでのエピタキシャル成長によるCl2ガスの濃度依存と選択成長との関係を調べた。
【0060】
その結果を図5に示す。Cl2濃度の最適化によりCl2濃度が1.4〜1.8%の範囲(以下で最適範囲と称する。)では、酸化膜上にはSiGe核が全く発生せずに完全な選択成長をし、膜厚215nmのSiGeエピタキシャル膜が得られることが確認された。
【0061】
また、Cl2濃度が、最適範囲より高くなるとシリコンのエッチング反応が律速して、エピタキシャル成長が全く行われないことが確認された。さらに、Cl2濃度が最適範囲より低いとSiGe核が絶縁膜上に発生し、やがてポリシリコンの膜成長になって選択成長ができなくなることが確認された。
Cl2濃度が最適範囲の場合には膜厚215nmのSiGeエピタキシャル膜が成膜された。215nmという膜厚はデバイスに応用できる膜厚である。
【0062】
以上述べたように、成長温度600℃、成長圧力0.1Paという低温、低圧条件下では、縦型真空熱処理装置1を用いて、シリコン−ゲルマニウム混晶エピタキシャル層を選択成長させることができることが確認できた。
【0063】
なお、本実施形態では、エッチングガスとしてCl2ガスを用いているが、本発明はこれに限らず、例えば、HClガスや、Br2ガスや、HBrガスを用いてもよい。
また、シリコン原料ガスとしてSiH4ガスを用いているが、本発明はこれに限らず、Si26ガスや、SiH2Cl2ガスを用いてもよい。
【0064】
さらに、本実施形態では、シリコンエピタキシャル層を成長させているが、シリコン−ゲルマニウム混晶のエピタキシャル成長に適用してもよい。この場合には、例えばSiH4ガスとGeH4ガスとの混合ガスをシリコン原料ガスとして用いればよい。
【0065】
また、エピタキシャル層中に不純物ドーピングを行うため、シリコン原料ガスに、例えばB26、PH3、AsH3等の不純物材料を含むガスを添加してもよい。
【0066】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、Cl2ガスやHClガス等を添加してエピタキシャル成長を分子流領域の圧力で成長させているので、選択成長をさせることが可能になる。
【0067】
また、エピタキシャル成長前に反応チャンバーの水分および酸素分圧をシリコン基板が酸化しない分圧まで低下させてから、Cl2ガスやHClガスを添加しないエピタキシャル成長を分子流領域の圧力で行うことで、酸化膜や窒化膜等の絶縁膜上とシリコン基板の表面が露出している部分との材質差による反応確率の違いによって起こる選択成長と、引き続きCl2ガスやHClガスを添加してエピタキシャル成長を分子流領域の圧力で行い、酸化膜や窒化膜等の絶縁膜上に発生したシリコンの核をエッチング・除去させる選択成長との二つの選択成長を組み合わせることにより、ホットウォールタイプのバッチ装置でも、長時間Cl2ガスを添加することによる成長速度の低下を抑制し、よりデバイスに応用可能な膜厚が確保でき、エピタキシャル成長における選択成長を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に用いられる縦型真空熱処理装置を説明する要部断面図
【図2】本発明の実施形態に用いられるシリコン基板を説明する断面図
【図3】従来のコールドウオールタイプの枚葉装置を説明する断面図
【図4】エピタキシャル成長の可否と、成長温度と、雰囲気中の水分分圧との関係を示すグラフ
【図5】Si−Ge選択成長のCl2濃度依存性を示すグラフ
【符号の説明】
1…縦型真空熱処理装置 12…反応チャンバー(反応室) 13…ゲートバルブ 14…カセット室 15…発熱体 16…ボート 17…シリコン基板 18、19、22、23…ゲートバルブ 20、21、28…窒素ガス導入口 25…移載室 29…ボートローダー 31…第1のロードロック室 32…第2のロードロック室 41〜43…真空ポンプ 45…シリコン露出面

Claims (5)

  1. シリコン単結晶面が一部で露出したシリコン基板を、室内がホットウォールによって加熱可能に構成された反応室内に配置し、前記シリコン単結晶面に、選択的にエピタキシャル層を結晶成長をさせる選択成長方法であって、
    前記反応室内に前記シリコン基板を複数枚配置し、前記ホットウォールによって前記シリコン基板を加熱し、
    前記反応室内を分子流領域の圧力で、SiH 4 ガスを含む原料ガスを前記反応室内に導入して、エッチングガスの不存在雰囲気で前記単結晶面に結晶核を選択的に成長させる第一成膜ステップと、
    成長温度を800℃以下とし、前記原料ガスと、化学構造中にハロゲン原子を有するエッチングガスとを前記反応室内に導入し、前記単結晶面に結晶層を成長させる第二成膜ステップを有することを特徴とする選択成長方法。
  2. 前記結晶層として、シリコン又はシリコン−ゲルマニウム混晶エピタキシャル層を成長させることを特徴とする請求項1記載の選択成長方法。
  3. 前記エッチングガスとして、Cl2ガス、HClガス、Br2ガス又はHBrガスのいずれか一つを用いることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれか1項記載の選択成長方法。
  4. 前記エッチングガスとしてCl 2 ガスを用い、前記Cl 2 ガスの濃度を1.4%〜1.8%にすることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の選択成長方法。
  5. 前記第二成膜ステップによる前記結晶層の成長時間を90分未満にすることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の選択成長方法。
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