JP3986165B2 - 杭の振動圧入・引抜装置および同工法、並びに振動圧入・引抜装置用チャック機構 - Google Patents

杭の振動圧入・引抜装置および同工法、並びに振動圧入・引抜装置用チャック機構 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設杭をクランプで把持して反力を支持しつつ、作業対象杭に液圧シリンダの伸縮力を与えて該作業対象杭を地盤中に圧入したり、地盤中から引き抜いたりする技術に係り、特に、上記圧入・引抜方式特有の長所を損うことなく、その短所を補うように、振動杭打抜方式を導入した新規な杭打,抜技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
既成杭を地盤中に打設する方式を大別すると、アースオーガで穴を掘って杭を植え込む方式と、地盤を形成している土砂を圧密排除して貫入させる方式とが有る。上記のうち、圧密排除貫入方式の中で広く実用されているものにに、液圧シリンダ(通常は油圧シリンダ)の伸縮力による圧入引抜方式と、起振機で杭を振動させる振動杭打抜方式とが有る。
図6は振動杭打抜装置の1例として示したリーダ式振動杭打抜装置によって杭を地盤中に打ち込んでいる状態を描いた側面図であるが、杭を引き抜いている状態を描いた側面図として見ることもできる。
作業対象杭6は、起振機15に装着されたチャック5によって把持されている。一方、ショベルカー18のアーム18aの先端に装着されたリーダ17が地盤19上に立てられて支持されている。18bは前記アーム18aを起伏動させるアームシリンダであり、18cは該アーム18aを傾動させるチルトシリンダである。上記リーダ17は、前記起振機15を支持するブラケット16を上下に案内するとともに上下方向に駆動する。
以上に述べた状態で、作業対象杭6には下向きの重力荷重が掛かっており、これに加えて、リーダ17によるブラケット16の上下動駆動力を作用させて押し下げることもできる。しかし、これだけでは通常の硬さの地盤19の中へ作業対象杭6を貫入させるに足りない。
【0003】
そこで、起振機15を作動させて上下方向の振動を発生させ、これを作業対象杭6に伝える。該作業対象杭6は上下振動によって地盤19との間の摩擦を切られた状態となり、重力荷重と圧下荷重とによって地盤19の中へ沈下してゆく。上記の摩擦が切れるという現象は力学的に正確な術語ではないが、杭打ち技術に関する通常の技術者間において公知の経験的事実であり、多少の語弊を忍んで概要的に表現するならば、静止摩擦が動摩擦に変換されて杭の貫入に容易になることを言う。
同様に、重力荷重に杭してリーダ17のブラケット16駆動力で作業対象杭6を引き抜こうとしても引き抜けない場合、起振機15を作動させることによって引き抜きが可能になる。
以上に述べたように、杭を打ち込むための技術を利用して杭を引き抜くことができ、杭の打込装置が杭の引抜装置として用いられる場合が少なくない。このような共用可能機器を杭の打ち,抜き装置といい、紛らわしくない場合は打抜装置というものとする。この場合の「打抜」は「打込み,引抜き」の意であって、プレス技術における「打抜」とは異なるものである。
【0004】
上述の作動から明らかなように、振動杭打抜における起振機15はチャック5を装着して使用に併せられる。以下、説明の便宜上、これらの機器を「チャック付起振機」と呼ぶことにする。
【0005】
図7は在来形静圧圧入引抜機の1例を示し、既設杭をクランプして反力を支持しつつ、油圧シリンダによって作業対象杭を地盤中に圧入したり引き抜いたりしている状態の側面図である。
符号3は、地盤19に打設されている複数の既設杭である。旋回台1aの下方に設置されたクランプ2は上記の既設杭3を把持して反力を支承する。
上記の旋回台1aの上部にガイド1bが垂直姿勢となるよう固定的に支持されており、このガイド1bは油圧シリンダ4の本体部分を上下方向に案内している。上記油圧シリンダ4の本体部分に対してチャック5の本体部分が一体的に連設されている。このチャック5は、回転機構5aを介して1対の把持爪(ジョー)5bを開閉駆動可能に支持している。
前記旋回台1aの上部およびガイド1bに対して固定的に二又アーム1dが取り付けられている。前記油圧シリンダ4の設置個数は2個であって、それぞれのピストンロッド4aの先端は前記二又アーム1dの先端に軸支されている。これにより、油圧シリンダ4が伸縮作動するとチャック5の把持爪5bによって把持された作業対象杭6が地盤19内に圧入され、および/または地盤19から引き抜かれる。この圧入引抜を、前述の振動打抜に対して明確に区別するよう、以下静圧圧入引抜と呼ぶ。
【0006】
以上に説明した図7の在来形静圧圧入引抜機においては、作業対象杭6を鉛直に保持して鉛直に圧入することが非常に難しい。その理由の主たるものは、地盤19の表面が必ずしも水平でなく、地盤19を構成する土質が均一でなく、従って既設杭3が必ずしも鉛直でなく、該既設杭群の頂面が必ずしも水平に揃っていないからである。こうした不具合を解消するため、改良形の静圧圧入引抜機が創作され、既に広く用いられている。
【0007】
図8は、前掲の図7に示した在来形静圧圧入引抜装置を母体として改良された静圧圧入引抜機の1例を示す側面図に、作業対象杭の傾斜角を前傾・後傾自在に調節する状態を付記した図である。
本図8の改良形について、図7の在来形と異なる点を説明すると、クランプ2によって既設杭3に固定された静止ベース7に旋回台10が搭載され、水準器12が設けられている。上記旋回台10の上部に対してガイド8aが固定されることなく、枢支軸9によって傾動可能に支承された傾動フレーム8に対して前記のガイド8aが一体的に連結されてガイドフレームを形成している。
上記のガイドフレームを形成している傾動フレーム8は、チルトシリンダ11によって枢支軸9周りに回動せしめられる。油圧シリンダ4のピストンロッド4aの先端は、傾動フレーム8に固着された傾動二又アームの先端に取り付けられている。これにより、前記チルトシリンダ11を伸縮作動せしめると、作業対象杭6は前傾姿勢6Fと後傾姿勢6Rとの間で傾動し、鉛直となるように修正操作することができる。
前記の傾動フレーム8とガイド8aとが一体的に連設されて形成されているガイドフレームには、油圧シリンダ4およびチルトシリンダ11を制御するための弁機構や遠隔操作機構が搭載され、本体カバー8bで覆われている。このため、比較的背の高い機器となっている。
図9は、前傾の図8に示した改良形静圧圧入引抜機を更に改良した、最新形の公知の静圧圧入引抜機を既設杭に装着するとともに作業対象杭を把持して打抜きしている状態を描いた側面図である。
図に現れていない操作,制御系統を除いた力学的構造部分は、原理的に前掲の図8に示した改良形静圧圧入引抜機と同様であって、旋回台14aに対して枢支軸9によってガイドフレーム14bが傾動可能に支承されるとともに、チルトシリンダ11によって傾動を駆動される。14cは本体カバーであって、制御系の改良によって著しく小形化されている。14dは傾動二又アームであって、前記ガイドフレーム14bに対して一体的に連結されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前掲の図6に示した振動打抜装置と、図7〜9に示した静圧圧入引抜装置とを比較すると、その作動原理の本質的な差異に由来する長所,短所が有る。
静圧圧入引抜装置は杭に振動荷重を与えずに静的荷重を与えて杭を打抜くものであるから、振動や騒音を発生せず、運転状態が非常に静粛である。
これに比して振動打抜装置は杭に振動荷重を与えるので、振動や騒音を生じ、住宅地周辺などにおいては使用に制約を受けるという不具合は有るが、強力な打抜きが可能である。
さらに、静圧圧入引抜装置は(例えば図9参照)クランプ2で既設杭3を把持して作業対象杭6を地盤中に圧入するので、圧入され終わった作業対象杭は既設杭となり、次のサイクルにおける新たな作業対象杭(図示せず)を圧入する際には反力支持の役割りを果たす。このようにして順次に作業対象杭を圧入してゆくとき、その直前のサイクルで圧入された数本の杭が既設杭として反力支持の役目を受け持つので非常に好都合であり、合理的に作業を進めてゆくことができる。しかし乍ら、最初の作業対象杭を圧入する際は反力を支持する手段が無いので、種々の工夫が為されているが、いずれにしても最初の杭の圧入は非常に困難である(引き抜きの際は、最初の杭の引抜き反力の支持に格別の困難は無い。最後の杭の引抜反力の支持は多少難しいが、最初の杭の圧入反力を支持することほどの難しさは無い)。
本発明は上述の事情に鑑みて為されたものであって、作業条件に応じて許容される範囲内に振動,騒音を抑制しつつ、最大限の強力,高能率の杭打抜作業を遂行することができ、しかも、多数の杭を順次に打設する場合の最初の杭を容易に打設することができる杭の打抜き技術を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために創作した本発明の基本的な方策は、静圧圧入・引抜方式の長短と、振動打抜方式の長短とを相補わしめるところに在る。
双方の方式を比較するための項目である静粛性と貫入力とは、作業地点の立地条件によって左右され、しかも、作業地点の地質その他の条件は一定・均一ではない。すなわち、一つの工区の中で杭を列設して打ち込んだり、列設された杭を引き抜いたりする場合、静圧圧入引抜の困難なよく締まった地質の箇所も有れば、静圧圧入引抜の容易な弛んだ地質の箇所も有る。また、振動騒音公害を生じ易い民家の近傍も有れば、該民家から離れた区域も有る。
こうした考察から、それぞれ長短を有する静圧圧入引抜方式と振動打抜方式とを使い分けたり併用したりすることに想到する。このようにして創作された本発明の基本的な原理について、その1実施形態を対応する図1を参照して略述すると、油圧シリンダ4および本体カバー14c、並びに、それよりも図の下方に記載した構成部分は前掲の図9に示した公知の最新型の静圧圧入引抜装置におけると同様ないし類似である。そして、上記静圧圧入引抜装置の上に、往復矢印L−Rのごとく往復回動できるように、起振機15とチャック21とを搭載してある。
地盤19が比較的軟弱で静圧圧入引抜が可能で、しかも振動騒音公害が問題となる虞れの大きいときは、前記のチャック付起振機(符号21+15)を矢印L方向に回動させて作業対象杭6から離間させた退避位置(2点鎖線)ならしめ、油圧シリンダ4の伸縮力によって作業対象杭6の圧入引抜を行なう。
また、地盤19が比較的硬くて圧入引抜が困難で、しかも振動騒音公害が問題となる虞れの少ないときは、前記チャック付起振機(21+15)を矢印R方向に回動させて、実線で描いたように作業対象杭6に装着し、油圧シリンダ4の伸縮力と起振機15で発生した振動とを協働させて、強力な貫入および/または引抜きを遂行する。また、何らかの事情(例えば最初の杭の打込み)により、クランプ2が充分な反力を得られない場合も、作業対象杭6を所定の地点で垂直に保持することさえ出来れば、油圧シリンダ4の伸縮力に依存することなく振動杭打方式で作業対象杭を打設することができる。
【0010】
以上に説明した原理に基づいて請求項1に係る発明装置の構成は、既設の杭を把持して静圧圧入,引抜の反力を支持するクランプと、上記クランプによってほぼ垂直に支持されるガイドフレームと、上記ガイドフレームによって昇降動を案内されるとともに作業対象杭を把持するチャックと、上記チャックを昇降動せしめる駆動手段とを具備し、
かつ、上記ガイドフレームに対して、水平な回動軸を介してチャックは起振機が約90度の往復回動可能に支持されており、
または上記ガイドフレームに対して、垂直な回転軸を介してチャック付起振機が約180度の往復回動可能に支持されていて、
上記チャック付起振機が作業対象杭へ接近する方向に回動すると、該起振機に付属するチャックで作業対象杭を把持し得るようになり、上記と反対方向に回動すると該起振機に付属するチャックが作業対象杭から離間するようになっていることを特徴とする。
【0011】
以上に説明した請求項1の発明装置によると、クランプによって垂直に支承されるガイドフレームと、該ガイドフレームに案内されて昇降駆動される杭チャックとを具備しているので、該杭チャックによって作業対象杭を把持するとともに、前記のクランプにより既設杭を把持して反力を支承しつつ、上記作業対象杭の圧入,引抜を行なうことができる。すなわち、装置の基本的構成として杭の静圧圧入,引抜きの機能を備えている。
さらに、チャック付起振機が、接近,離間回動可能に搭載されているので、これを用いて杭の振動打抜を併用することもでき、また、前記静圧圧入引抜機構の駆動手段(例えば油圧シリンダ)をフリーにしておいて単独の振動打抜を行なうこともできる。
上述のように、純静圧圧入引抜作業と、静圧圧入引抜+振動打抜併用作業と、純振動打抜作業とを任意に選択することができるので、作業条件(特に作業地点の立地条件)に応じて無公害・高能率の杭打,抜作業を行なうことができる。
例えば油圧シリンダによる静圧的な上下方向駆動力を常時与えつつ、民家との距離や地層構成と杭先端深さとの関係によって許容される振動,騒音の限度を越えない範囲内で起振機を併用すれば、無公害の枠内で最大限の作業能率を発揮せしめることができる。
【0012】
請求項2の発明装置の構成は、既設の杭を把持して静圧圧入,引抜の反力を支持するクランプと、上記クランプによってほぼ垂直に支持されるガイドフレームと、上記ガイドフレームによって昇降動を案内されるとともに作業対象杭を把持するチャックと、上記チャックを昇降動せしめる駆動手段とを具備し、
かつ、上記ガイドフレームに対して、ほぼ水平なガイドを介してチャック付起振機が作業対象杭に対して接近,離間可能に案内されており、
上記チャック付起振機が作業対象杭に接近すると、該起振機に付属するチャックで作業対象杭を把持し得るようになっていることを特徴とする。
【0013】
以上に説明した請求項2の発明装置によると、先に述べた請求項1と同様にクランプとガイドフレームと作業対象杭用のチャックと昇降駆動手段とを備えているので、常時的に作業対象杭の静圧圧入引抜を行なうことができ、また静圧圧入引抜を随時に休止することもできる。
そして、上記静圧圧入引抜用構成部分に対してチャック付起振機が、作業対象杭に接近・離間するように前後進可能に搭載されているので、必要に応じて該チャック付起振機を作業対象杭に装着して作動せしめたり、情況に応じて該チャック付起振機を作業対象杭から退避させて休止せしめたりすることができる。
上記のチャック付起振機の装着・退避が、回動を伴わない水平移動によって行なわれるので、起振機の姿勢が傾斜したり上下反転したりすることが無い。従って、該起振機が撥ね掛け潤滑方式の油溜を備えていても、姿勢変化によって漏油トラブルを誘発する虞れが無い、そして、本請求項2の発明によっても請求項1におけると同様に、純静圧圧入引抜作業と、純振動打抜作業と、双方の併用作業とを作業条件に応じて任意に選択して施工することができ、無公害かつ最大作業能率で杭打ち,抜きを行なうことができる。
【0014】
請求項3に係る発明機構の構成は、作業対象杭に対して静的圧入・引抜力を与えるシリンダ手段と、上記作業対象杭に対して振動を与える起振機とが設けられて協働する構造の振動圧入・引抜装置に装着されるチャック機構であって、
前記シリンダ手段に、作業対象杭を把持するシリンダ用チャックが装着されるとともに、前記起振機には作業対象杭を把持する起振機用チャックが装着されていて、
上記双方のチャックがそれぞれ単独に作業対象杭を把持し得るようになっており、
かつ、(a)作業対象杭を把持した状態の起振機用チャックの外側をシリンダ用チャックで把持し得るようになっており、または(b)作業対象杭を把持した状態のシリンダ用チャックの外側を起振機用チャックで把持し得るようになっており、
さらに、シリンダ用チャックで作業対象杭の上端部を把持してシリンダ用の案内手段のストローク下端まで圧入したときの作業対象杭の上下方向位置と、起振機用チャックで作業対象杭の上端部を把持して起振機用の案内手段のストローク下端まで打ち込んだときの作業対象杭の上下方向位置とがほぼ同じであることを特徴とする。
以上に説明した請求項3に係る発明機構によると、例えば杭を垂直下方へ打ち込む場合、シリンダ手段の静的な出力で杭を打ち込み得る高さ(詳しくは打ち終り時の杭の上端の上下方向の位置)と、起振機によって杭を打ち込み得る高さとが一致しているので、静圧圧入と振動杭打との協働が旨くバランスして行なわれる。
また、上記のように打込み高さが揃っているから、杭を抜く場合にも、把持可能な作業対象杭の高さが同じとなり、静圧引抜と振動引抜との協働が旨くバランスして行なわれる。
同様の理由により、静圧圧入単独で打設した杭と、振動杭打単独で打設した杭とが同じ背丈に揃うので杭打作業の施工管理が容易であり、運転車に高度の熟練を要せずに高精度の杭打作業を行なうことができ、特に、土質条件が付近一な地域における静圧・振動併用作業に好適である。
【0015】
請求項4に係る発明装置の構成は前記請求項1もしくは同2の発明の構成要件に加えて、前記のチャック付起振機が、前記ガイドフレームに対して、緩衝部材を介して支持されており、起振機が作動してその本体部分が振動したとき、発生した振動がガイドフレームに対して直接的に伝動されないようになっていることを特徴とする。
以上に説明した請求項4の発明装置によると、起振機で発生した振動は静圧圧入引抜機構に対してほとんど伝わらず、主として作業対象杭に伝えられる。これにより、起振機で発生した振動エネルギーの有効利用率が高く、強力な振動打抜が可能となる上に、静圧圧入引抜機構部分が激しい振動を受けて耐久性を損われる虞れが無い。特に、上記静圧圧入引抜機構部分に耐振性の少ない計器類(例えば水準器など)が搭載されている場合、この部分に激しい振動が伝わらないことの実用的効果が大きい。
本請求項4における緩衝部材は、コイルスプリング、リーフスプリング、トーションスプリングのようなスプリング部材であっても良く、また、板状,柱状,繊維状など各種形態のゴム部材であっても良く、あるいは空気バネなどのような流体バネ手段であっても所望の防振効果が得られる。
さらに、起振機が静圧圧入引抜機構のクランプに対して振動的に絶縁されているので、該起振機で発生した振動が反力支持杭に伝わって該反力支持杭の沈下を誘発する虞れが無い。
【0016】
請求項5に係る発明装置の構成は前記請求項1もしくは請求項2の発明の構成要件に加えて、前記の起振機に付属しているチャックは、垂直姿勢の作業対象杭を把持した状態における平面図形の輪郭で概要的にコの字状ないしC字状であって、環状ないし輪状の一部を切り欠いた形状をなすとともに、
上記の切欠き部分の形状寸法は作業対象杭の通過を許容するように設定されており、
かつ、前記の起振機に付属しているチャックは、作業対象杭を把持する姿勢において、該作業対象杭を中心として回動可能な構造であり、
前記のガイドフレームは前記のクランプに対して、水平軸周りの傾動可能であるとともに、垂直軸周りの回動も可能な構造であることを特徴とする。
以上に説明した請求項5の発明装置によると、チャック付起振機が回動し、もしくは水平方向に移動して作業対象杭に接近する際、該作業対象杭を吊り上げたり吊り降ろしたりする必要なく、該作業対象杭を静止させたままでチャックが作業対象杭に接近し、「環状を切り欠いた形状の部分」を相対的に通過せしめて、これをコの字状もしくはC字状の内腔部に貫通せしめて把持することができる。同様に、チャックが作業対象杭を貫通せしめて把持しているとき、チャック爪(ジョー)による挟圧を解除してチャック付起振機を回動させもしくは水平方向に移動させて該作業対象杭から離間させる際も、該作業対象杭を静止させたまま、相対的に切欠部を通過させて、双方の部材が干渉することなく、チャック付起振機を退避させることができる。
そして、チャックの平面図形がコの字状ないしc字状をなしているので、その両端部付近が作業対象杭を両側から挟みつける形となり、これに液圧シリンダ手段を併用すると作業対象杭を確実に把持することができ、上記液圧シリンダ手段を操作して把持を解除することも自在である。
さらに、この請求項5の発明装置によると、列設された杭を順次に引き抜き、もしくは多数の杭を列設して打ち込む際、法線のコーナー部分において、その屈曲状態に順応することが容易である。
作業対象軸はほぼ垂直姿勢に保持されるので、チャックが作業対象杭周りに回動できることは垂直軸周りの回動が可能であることを意味し、さらに、そのチャックを支持しているガイドフレームが水平軸周りに傾動可能であるから、上記のチャックによって把持されている作業対象杭は水平軸周り、垂直軸周りの回動が可能であって、該作業対象杭を打ち込む場合はこれを任意所望の姿勢に支持して打ち込むことができる。また、作業対象杭を引き抜く際は当該振動圧入・引抜装置を作業対象杭が打設されている姿勢に合わせ、かつ、該作業対象杭のグリップ抵抗を勘案して補正し、最も適正な方向に引き抜くことができるので、引抜き作業を高能率で遂行できる。
【0017】
請求項6に係る発明工法の構成は、地盤の中に打設されている杭を把持して反力を支持しつつ、上記の杭と異なる作業対象杭を液圧シリンダの伸縮力によって地盤中に圧入し、および/または、地盤の中に打設されている上記以外の杭を作業対象の杭として液圧シリンダの伸縮力によって地盤から引き抜き、多数の杭を順次に打込み、引き抜く工法において、
前記の液圧シリンダに対して「作業対象杭を把持して振動を与えたり、該作業対象杭の把持を解除して退避したりできる機能を有するチャック付起振機」を予め取り付けておき、
杭の打抜地点の立地条件によって振動公害・騒音公害を発生する虞れの多い場合は前記チャック付起振機を退避させ、主として液圧シリンダの伸縮力によって該杭の静圧圧入・引抜を行ない、
杭の打設地点の立地条件によって振動公害・騒音公害を発生する虞れの少ない場合は前記チャック付起振機を作業対象杭に装着して作動せしめ、前記液圧シリンダの伸縮力に振動を併用して杭を圧入し、および/または引抜くことを特徴とする。
【0018】
以上に説明した請求項6の発明工法によると「静圧荷重によって杭の圧入引抜を行なう液圧シリンダ(例えば油圧シリンダ)に対してチャック付起振機を予め取り付けておく」という新規な構成により、静圧圧入引抜方式と振動打抜方式とを併用することも、何れか一方のみを施工することも可能になる。
さらに応用操作として静圧圧入・引抜を全負荷施工するとともに、これと併行して振動打抜を半負荷で施工することもできる。このようにして、無振動無騒音である静圧圧入引抜を主体としつつ、作業地点の立地条件に応じて許容される範囲内で振動打抜を併用することにより、振動公害,騒音公害に因る社会的トラブルの発生を回避しつつ、許容される範囲内で強力な打込み,引抜き作業を遂行して、作業能率を高め、ひいては施工コストを低減することができる。
また、振動・騒音が受忍限度の境界線付近に在る場合、上述のようにして作業能率を高めることによって振動・騒音の発生時間が短縮され、間接的に公害軽減の効果を奏する。さらに、作業条件によっては作業の終了時刻が深夜に及ぶことが無くなって振動・騒音に因る社会的トラブルが回避されるとともに、深夜作業が不要になるため作業員の健康管理や安全管理が容易になるという派生的効果の実用的価値も大きい。
【0019】
請求項7の発明工法の構成は、地盤の中に打設されている杭を把持して反力を支持しつつ、上記の杭と異なる作業対象杭を液圧シリンダの伸縮力によって地盤中に圧入し、
上記のようにして圧入された作業対象杭を把持して、これを次の作業サイクルにおける反力支持杭として用いつつ、前記と更に異なる作業対象杭を前記の液圧シリンダの伸縮力によって地盤中に圧入し、
上述の作業サイクルを繰り返して多数の杭を配列しつつ順次に打設する工法において、
前記の液圧シリンダに対して「作業対象杭を把持して振動を与えたり、該作業対象杭の把持を解除して退避したりできる機能を有するチャック付起振機」を予め取り付けておき、
順次に打設される多数の杭のうちで、最初に打設される杭を地盤中に貫入せしめる際、前記チャック付起振機を上記最初の作業対象とされる杭に装着して作動せしめることにより、該最初の作業対象杭を液圧シリンダで押し下げるに必要な反力を軽減することを特徴とする。
【0020】
以上に説明した請求項7の発明工法によると「直前の作業サイクルで打ち込まれた杭を把持して反力を支持して、その次の作業サイクルの作業対象杭を圧入する」という方式の静圧圧入における技術的困難とされていて「最初の作業対象杭を圧入する際、把持して反力を支持すべき既設の杭が無い」という問題を、振動杭打技法の導入によって解決することができる。
すなわち、従来においては最初の杭を静圧圧入する際、予め準備しておいた「クランプで把持し得る箇所を設けた基盤架台」を用い、この基盤の重量によって最初の杭の圧入反力を支持するという工夫が為されていたが、該最初の杭を静圧圧入する反力の支持に充分な重量を有する基盤を構成すると該基盤の搬送,保管に多大な労力と経費を要して不経済であり、また、この基盤の重量が不足であると最初の杭の静圧圧入ができないという二律背反的な困難が有った。こうした困難を克服するため従来一般に、基盤の上に重量物を載置するなどの工夫が為されていたが、何れにしても、最初の杭の静圧圧入に多大の労力を費していた。本請求項7の発明工法においては、静圧圧入の実施に欠くことのできない液圧シリンダに対してチャック付起振機を予め取り付けておくという新規な構成によって、最初の杭の圧入に振動打込を併用して、支持すべき反力の大きさを軽減し、該最初の杭の静圧圧入を容易ならしめることが出来た。
【0021】
請求項8に係る発明工法の構成は前記請求項6,7の発明工法の構成要件に加えて、前記チャック付起振機を偏心重錘式の起振機によって構成するとともに、液圧モータによって上記偏心重錘式起振機を回転駆動し、
前記液圧シリンダの動力源である圧力液体送出手段と、前記液圧モータの動力源である圧力液体送出手段とを共用することを特徴とする。
以上に説明した請求項8の発明工法によると、単一の液圧源によって静圧圧入引抜と振動打抜との両方の機構部分を駆動することができ、動力源の構成を簡単にできるとともに、いわゆるパワーユニットから装置本体部分へのエネルギー供給手段が簡素になり、その保守整備が容易である。
起振機として偏心重錘式(別称・振子式)を用いることによって強力な振動打抜が可能になる。この偏心重錘の回動駆動手段としては電気モータもしくは液圧モータを用い得るが、本請求項8においては液圧モータを用いることによって静圧圧入引抜用の液圧シリンダとのエネルギー供給系統の単一化,共用化を図っている。さらに、起振機に付属するチャックも一般に液圧シリンダによって作業対象杭を把持する構造であり、杭打抜反力を支持するクランプも一般に液圧シリンダによって既設杭を挟持する構造であるから、本請求項8を適用することによって振動発生エネルギー源と、静圧発生エネルギー源と、作業対象杭把持エネルギー源と、反力支持エネルギー源とを一本化して所要設備費および保守管理費を低減せしめることができる。
【0022】
請求項9に係る発明工法の構成は前記請求項6,7の発明工法の構成要件に加えて、地盤の中に打設されている杭を反力支持杭として把持する手段によって固定的に支持されるとともに、前記の作業対象杭の上下動を案内するガイドフレームに対して、前記のチャック付起振機を水平軸周りもしくは垂直軸周りの回動可能に搭載し、
上記チャック付起振機をガイドフレームに対して回動せしめることにより、該チャック付起振機を作業対象杭に接近させて装着したり該作業対象杭から退避させたりすることを特徴とする。
以上に説明した請求項9の発明工法によると、作業手順、および必要機材の準備を誤る虞れなく前記請求項6もしくは請求項7に係る発明工法を容易に実施することができ、作業員に格別に高度な知識や熟練を必要とせず、かつ作業員の労力負担を軽減することができる。
すなわち、前記請求項6の発明工法も請求項7の発明工法も「作業対象杭を把持して振動を与えたり、該作業対象杭の把持を解除して退避したりできる機能を有するチャック付起振機を、予め液圧シリンダに取り付けておくこと」が必須の構成要件になっている。しかしながら、前記のチャック付起振機は相当な大重量機器(最も小形のもので約0.5トン)であるから、人力で取り外したり、持ち上げたり、運んだり、取り付けたりすることは困難であるが、クレーンを協働させることは厄介である上に不経済である。ここにおいて本請求項の構成を適用すると、チャック付起振機を回動せしめることにより、クレーン等の荷役機器を用いる必要無く、多大の労力を要せずに、前記チャック付起振機を作業対象杭に接近させたり退避させたりすることができる。
【0023】
請求項10に係る発明工法の構成は前記請求項6,7の発明工法の構成要件に加えて、地盤の中に打設されている杭を反力支持杭として把持する手段によって固定的に支持されるとともに、前記の作業対象杭の上下動を案内するガイドフレームに対して、前記チャック付起振機を水平方向の移動可能に搭載し、
上記チャック付起振機を水平な案内手段に沿って移動せしめることにより、該チャック付起振機を作業対象杭に接近せしめて装着したり、該作業対象杭から離間させて退避せしめたりすることを特徴とする。
以上に説明した請求項10の発明工法によっても、前記請求項9におけると同様に、作業員に格別の技術的知識や高度の熟練を必要とせず、かつ作業員の労力負担を軽減することができる。
すなわち、前記請求項6の発明工法も請求項7の発明工法も「作業対象杭を把持して振動を与えたり、該作業対象杭の把持を解除して退避したりできる機能を有するチャック付起振機を、予め液圧シリンダに取り付けておくこと」が必須の構成要件になっている。しかしながら、前記のチャック付起振機は相当な大重量機器(最も小形のもので約0.5トン)であるから、人力で取り外したり、持ち上げたり、運んだり、取り付けたりすることは困難であるが、クレーンを協働させることは厄介である上に不経済である。ここにおいて本請求項を適用すると、チャック付起振機を水平移動させることにより、クレーン等の荷役機器を用いる必要無く、多大の労力を要せずに、前記チャック付起振機を作業対象杭に接近させたり退避させたりすることができる。
【0024】
請求項11に係る発明工法の構成は前記請求項8〜10の発明工法の構成要件に加えて、前記チャック付起振機を前記ガイドフレームに対して、緩衝部材を介して支承し、起振機で発生した振動が直接的にガイドフレームへ伝わらないようにすることを特徴とする。
以上に説明した請求項11の発明工法によると、起振機で発生した振動エネルギーの大部分を作業対象杭に伝えて有効に利用することができる。
起振機で発生した振動は、緩衝部材によって伝達を遮断され、ガイドフレームに伝わらない。従って液圧シリンダやクランプなどの静圧圧入機構部分に伝わらないので、該静圧圧入機構の構成部材が振動によって破損したり、機械的疲労を促進されたりする虞れが無い。このような効果は、該静圧圧入機構部分に耐振性の低い部材(例えば水準器)が搭載されている場合、特に実用的価値が大きい。上述のようにして振動の伝達を遮断する緩衝部材は、起振機の外筐体とガイドフレームとの間であれば、どこに介装されていても良く、また、スプリング部材,ゴム弾性部材,流体バネ機構など、適宜に公知の手段を選択して適用することができる。
さらに、上記の緩衝部材の介装は、静圧圧入引抜機構部分が起振機と共振して振動,騒音公害を助長したり、共振による応力増大を誘発したりする虞れを未然に防止するという副次的効果も奏する。
【0025】
【発明の実施の形態】
図1は本発明の1実施形態を示し、模式的に描いた側面図に作動状態を付記した説明図である。
この実施形態は、前掲の図8に示した最新形の公知の静圧圧入引抜機を母体とし、本発明を適用して改良した1例であって、該図8と同一の符号を付したものは上記最新形の公知の静圧圧入引抜機におけると同様ないし類似の構成部分である。次に、本図1について前記図8(公知例)と異なる点、すなわち本発明を適用して構成した機構部分について説明する。
ガイドフレーム14bは図8について説明したように、静圧圧入引抜機構部分の骨格をなし、枢支軸9によって傾動可能に支承されるとともにチルトシリンダ11によって傾動駆動され、かつ、油圧シリンダ4の本体部分の昇降動を案内している。このガイドフレーム11に対して、ほぼ水平な回動軸20が、緩衝部材22を介して支持されている。この緩衝部材22の具体的な構成は、図4を参照して後述する。前記油圧シリンダ4は昇降動を駆動する手段であって、ピストンロッド4aの先端が枢支軸9により固定的に支持され、シリンダ本体部分は昇降動する。
【0026】
一方、起振機15にチャック21が装着されている。本発明において上記のチャック21は常に起振機15に装着されているので、説明の便宜上、これをチャック付起振機(15+21)と呼ぶ。このチャック付起振機はブラケット16によって支持されており、該ブラケット16は往復円弧矢印L−Rのように約90度の往復回動可能に、前記の回動軸20によって支承されている。
図示を省略するが、上記と異なる実施形態として、前記の回動軸20をガイドフレーム14bに対して固定的に支持するとともに、ブラケット16とチャック付起振機(21+15)との間に緩衝部材を介装しても良い。
これにより、チャック付起振機(21+15)を矢印R方向に回動させると作業対象杭6に装着することができ、矢印L方向に回動させると作業対象杭6から離間して退避することができる。この場合、作業対象杭をクレーンで吊り上げ、吊り降ろしたりなどせずに静止させたまま、チャック21で該作業対象杭6を把持したり放したりできるようにするためのチャック構造については、図3を参照して後に詳しく述べる。
【0027】
以上に説明した図1の実施形態の構成によれば、作業対象杭6に対して常時的に静圧圧入・引抜力を与えて、その反力を既設杭3で支持することができる(特殊な場合として、既設杭3が存在しないときについては後述する)。
そして、必要に応じてチャック付起振機(21+15)を作業対象杭6に装着して振動を与えたり、作業対象杭6から退避させて純静圧圧入引抜を行なったりすることができる。
上述の機能を利用して杭の打込み、引抜きを行なうには、杭打抜作業地点の条件に応じて、(イ)振動・騒音公害を発生する虞れが無いときは、静圧圧入引抜に振動打抜を併用して強力に施工して作業能率を向上させる。また(ロ)振動・騒音公害を発生する虞れが非常に大きいときは、純静圧圧入引抜を行なう。
そして(ハ)或る程度の振動・騒音が許容されるときは、静圧圧入引抜を行なうとともに、例えば半負荷で振動打抜を併用するというように、許容される範囲内の部分負荷状態で起振機15を作動させる。この場合、振動打抜の併用によって能率が向上すれば施工所要時間が短縮されて種々のメリットを生じる。このメリットの内容は情況によって種々であるが、例えば作業時間の短縮によって夜間作業が回避されて付近住民の安眠を妨げなくなったり、夜間作業の回避によって作業者の健康管理や安全管理が向上したり、作業能率向上に伴う作業時間の短縮によって工事のための交通遮断時間や施工騒音発生時間が短くなるという効果が期待される。
【0028】
また、多数の杭を順次に静圧圧入する場合、最初の杭を圧入する際に反力支持が困難であるという問題も、振動杭打の併用によって解決される。すなわち、最初の杭の圧入反力が取れないというのは、全く反力支持できないのではなく、先に述べた基盤を置くなどしても充分な反力が取れないということであるから、振動杭打の併用に際して起振機15を全負荷作動させなくても、支持反力の不足分を、起振機15の部分負荷によって補うという形で、発生する振動・騒音が受忍され得る範囲内で最初の1本ないし数本の杭を、静圧・振動併用で打ち込めば良い。この場合、最初の1本ないし数本の杭を打込むだけの時間は比較的短い上に、必ずしも起振機を全負荷運転しなくても良いので、社会的トラブルを発生する虞れは少ない。少なくとも、従来技術に比して著しく容易に、低公害で、最初の杭を打ち込むことができる。
【0029】
図2は前記と異なる実施形態を示す側面図であって、2種類の実施形態における作動状態を表している。
静圧圧入引抜機構部分の骨格となすガイドフレーム14の上に、レール状の水平ガイド23が設けられ、スライダ24を往復矢印f−rのように前後進可能に支持しており、このスライダ24の上に緩衝部材22を介してチャック付起振機(21+15)が搭載されている。これにより該チャック付起振機(21+15)は、実線で描いた前進把持位置と仮想線で描いた後退待避位置との間を往復することができる。このようにして、前掲の図1に示した実施形態におけると同様に、純静圧圧入引抜と、純振動打抜と、静圧・振動併用打抜とを選択して施工することができる。
【0030】
本図2に示したように、ほぼ垂直な回転軸z′により前記のチャック付起振機(21+15)を支承して、往復円弧矢印のように約180度回動させても、実線で描いた前進把持位置と仮想線で描いた後退待避位置との間を交互に移動することができる。本図2に示した水平前後進(矢印f〜r)においても、垂直軸z′周りの回動においても、起振機15は横倒しになったり上下反転したりすることが無い。従って、該起振機15内に撥ね掛け潤滑用の油溜(図示せず)が設けられていても漏洩トラブルを誘発する虞れが無い。
前傾の図1の実施形態においても、図2の実施形態においても、チャック付起振機(21+15)が作業対象杭6を把持したり放したりするとき、側面投影図形においてチャック付起振機(21+15)が、作業対象杭6を横切る形に移動する。このように移動できることにより、作業対象杭6の吊り上げ・吊り降ろしを要せずに該作業対象杭6の把持・放出が可能となるので非常に便利であるが、その為には、チャック付起振機(21+15)を特殊に構造にしておかねばならない。
【0031】
図3は、作業対象杭を横掴みできるようにしたチャック付起振機の1実施形態を示す平面図であって、(A)はチャックで作業対象杭を挟みつける操作を模式的に表しており、(B)は作業対象杭を把持した状態で該作業対象杭を回動させる操作を模式的に表している。
チャック21は、その平面形状のコの字状ないしC字状(すなわち、環状または枠状の一部を切り欠いた形状)をなしており、これを(A)図に示した矢印fのように作業対象杭に接近させると、仮想線6′で示した位置の作業対象杭が相対的に矢印f′方向に、チャック21の切欠部を通過して内腔部を貫通する位置(ハッチングを付して示す)に入り込むので、チャックシリンダ21で挟圧して把持する。
次いで(B)図に示すように、作業対象杭6の長手方向中心線Zを中心として所望の角度θだけ回動させる。この回動の意義について次に述べる。
【0032】
図1もしくは図2に示したようにして、列設された既設杭3の延長線上に作業対象杭6を保持する場合、作業計画書で指示される法線(杭の列設線)は必ずしも直線とは限らず、緩やかに湾曲している場合も有り鋭く屈曲している場合も有る。これに順応して、作業対象杭6を所定の位置に位置決めするとともに、所定の向き(平面図形上の姿勢)に修正しなければならない。
この場合、作業対象杭6の位置決めは旋回台14aで行ない、その向きは図3に示した回動角θによって調節される。以上は杭の打ち込みについて述べたが、杭を引き抜くために把持する場合も同様である。
【0033】
図1および図2に示した緩衝部材は、公知の弾性部材を適宜に選定して用いることができ、コイルスプリング,リーフスプリング,トーションスプリングなどのバネ鋼性のスプリング部材であっても良く、ゴム弾性部材であっても良く、または空気バネのような流体緩衝機構を適用することもできる。
図4は、前掲の図1および図2に示した実施形態における緩衝部材の1例を示す分解斜視図である。
上側に描いた22aと下側に描いた22bとはそれぞれゴムの厚板であり、上側のゴム板22aの下面には平行縦溝が形成されていて、溝と溝との間は突条になっている。同様に、下側のゴム板22bの上面には平行横溝が形成されて、溝と溝との間は突条になっている。縦溝と横溝とについて、どちらを縦と呼んでも構わないが、要するに双方がほぼ直交して対向するようになっている。これら2枚の溝付ゴム板22a,22bを重ね合わせて、ガイドフレーム14bと起振機15との間に介装すると、振動の伝達を遮断することができる。
【0034】
起振機の振動を静圧圧入引抜機構部分へ伝動させないように緩衝部材で遮断すことの技術的な意味は、
一つには静圧圧入引抜機構を防振して保護するという意味が有る。該静圧圧入引抜機構部分に耐振性の弱い部材(例えば水準器)が装着されているとき、緩衝部材22による防振の実用的価値が高い。
また、静圧圧入引抜機構に伝わった振動が、クランプ2を介して既設杭3に伝わって該既設杭3の位置が変わるといった不具合も未然に防止させる。
もう一つは、起振機で発生した振動が静圧圧入引抜機構部分に伝わらないので振動エネルギーの大部分がチャック5を介して作業対象杭に伝えられ、振動エネルギーの有効利用率を向上させる。
【0035】
次に、本発明の適用によって新たに発生した技術的な問題とその対策について、前掲の図1を参照して説明すると、
既設杭3の背の高さ(上端面の上下方向の位置)は符号H1で示したレベルである。
この実施形態においては、油圧シリンダに装着されたチャック5によって作業対象杭6の上端部を把持した状態で油圧シリンダ1をストロークエンドまで下降させると、上記作業対象杭6の頂面が既設杭3の頂面と揃うようにレベルH1まで圧入することができる。
ところが、起振機15に装着されているチャック21で作業対象杭6の上端部を把持して該起振機15をストロークエンドまで下降させたとき、作業対象杭6の頂面を下降せしめ得る限度は図示のレベルH2であって、既設杭3よりも上方に突出したままの状態になる。このような場合、起振機15のチャック21と作業対象杭6との間にヤットコと呼ばれる接続具を介装して、前記対業対象杭6の頂面をレベルH2まで下げることは可能であるが、時間と労力とを要する煩わしい作業になる。そこで本発明においては上記のヤットコを用いなくても作業対象杭を既設杭のレベルに揃えて打設することのできるチャック機構を創作した。
【0036】
図5は、起振機用のチャック部材とシリンダ用のチャック部材とを別体に構成して、上記双方のチャック部材がそれぞれ独立に杭を把持することもでき、相互に協働することも出来るように構成したチャック機構の1例を模式的に描いた垂直断面図である。
起振機15に装着された起振機用チャック31は、その二又状部31aが起振機15に固定されて下方に延出しており、その下端部付近に、油圧シリンダ31bで駆動される可動爪31cが設けられていて、前記起振機15の底面よりも下方で作業対象杭6を把持できるようになっている。
一方、油圧シリンダ4に装着されているシリンダ用チャック32は、前記起振機用チャック31の外側を挟みつけて把持し得る固定爪32a,32bと可動爪32eとを備えたおり、該固定爪32aはアーム32fによって油圧シリンダ4に対して支持され、該可動爪32eは油圧シリンダ32c,32dによって駆動されるようになっている。
以上の構成により、起振機用チャック31を介して作業対象杭6に振動を与えつつ、シリンダ用チャック32を介して作業対象杭6に対し静的な圧入力もしくは静的な引抜力を与えることができる。
【0037】
前記油圧シリンダ32c,32dのストロークは比較的長く設定されていて、起振機用チャック31を退避させてシリンダ用チャック32によって作業対象杭6を把持することもでき、また、起振機用チャック31のみで作業対象杭6を把持させておいてシリンダ用チャック32を退避させることもできるようになっている。
本図5の実施形態は以上に述べたように、起振機用チャック31の外側をシリンダ用チャック32で挟みつけることにより、協働して作業対象杭6を把持できるようになっている。図示を省略するが、シリンダ用チャックの外側を起振機用チャックで挟みつけて協働できるように構成しても良い。
本図5から明らかなように、本実施形態のチャック機構によると、「油圧シリンダ4のシリンダ用チャック32によって作業対象杭6を圧入し得る下限位置」と、「起振機15の起振機用チャック31によって作業対象杭6を打込み得る下限位置」とを揃えることができ、先に述べたヤットコなどの補助具を用いる必要が無く、また、作業者に高度の熟練を必要としない。
図5の実施形態に関する以上の説明は作業対象杭6を打設する場合に述べたが、既に地中に打ち込まれている杭を引き抜くため、その頂部を把持する場合についても同様の効果が有る。すなわち、図示の位置まで打ち込まれている作業対象杭6の頂部を把持して、シリンダによる静的引抜力のみで引き抜くこともでき、また、上述のようにシリンダによる静的引抜力を与えつつ、これに併せて振動を与えて強力に引き抜くこともできる。
【0038】
【発明の効果】
以上に本発明の実施形態を挙げてその構成・機能を明らかならしめたように、請求項1の発明装置によると、クランプによって垂直に支承されるガイドフレームと、該ガイドフレームに案内されて昇降駆動される杭チャックとを具備しているので、該杭チャックによって作業対象杭を把持するとともに、前記のクランプにより既設杭を把持して反力を支承しつつ、上記作業対象杭の圧入,引抜を行なうことができる。すなわち、装置の基本的構成として杭の静圧圧入,引抜きの機能を備えている。
さらに、チャック付起振機が、接近,離間回動可能に搭載されているので、これを用いて杭の振動打抜を併用することができ、また、前記静圧圧入引抜機構の駆動手段(例えば油圧シリンダ)をフリーにしておいて単独の振動打抜を行なうこともできる。
上述のように、純静圧圧入引抜作業と、静圧圧入引抜+振動打抜併用作業と、純振動打抜作業とを任意に選択することができるので、作業条件(特に作業地点の立地条件)に応じて無公害・高能率の杭打・抜作業を行なうことができる。
例えば油圧シリンダによる静圧的な上下方向駆動力を常時与えつつ、民家との距離や地層構成と杭先端深さとの関係によって許容される振動,騒音の限度を越えない範囲内で起振機を併用すれば、無公害の枠内で最大限の作業能率を発揮せしめることができる。
【0039】
請求項2の発明装置によると、先に述べた請求項1と同様にクランプとガイドフレームと作業対象杭用のチャックと昇降駆動手段とを備えているので、常時的に作業対象杭の静圧圧入引抜を行なうことができ、また静圧圧入引抜を随時に休止することもできる。
そして、上記静圧圧入引抜用構成部分に対してチャック付起振機が、作業対象杭に接近・離間するように前後進可能に搭載されているので、必要に応じて該チャック付起振機を作業対象杭に装着して作動せしめたり、情況に応じて該チャック付起振機を作業対象杭から退避させて休止せしめたりすることができる。
上記のチャック付起振機の装着・退避が、回動を伴わない水平移動によって行なわれるので、起振機の姿勢が傾斜したり上下反転したりすることが無い。従って、該起振機が撥ね掛け潤滑方式の油溜を備えていても、姿勢変化によって漏油トラブルを誘発する虞れが無い。そして、本請求項2の発明によっても請求項1におけると同様に、純静圧圧入引抜作業と、純振動打抜作業と、双方の併用作業とを、作業条件に応じて任意に選択して施工することができ、無公害かつ最大作業能率で杭打ち,抜きを行なうことができる。
【0040】
請求項3に係る発明機構によると、例えば杭を垂直下方へ打ち込む場合、シリンダ手段の静的な出力で杭を打ち込み得る高さ(詳しくは打ち終り時の杭の上端の上下方向の位置)と、起振機によって杭を打ち込み得る高さとが一致しているので、静圧圧入と振動杭打との協働が旨くバランスして行なわれる。
【0041】
また、上記のように打込み高さが揃っているから、杭を抜く場合にも、把持可能な作業対象杭の高さが同じとなり、静圧引抜と振動引抜との協働が旨くバランスして行なわれる。
同様の理由により、静圧圧入単独で打設した杭と、振動杭打単独で打設した杭とが同じ背丈に揃うので杭打作業の施工管理が容易であり、運転者に高度の熟練を要せずに高精度の杭打作業を行なうことができ、特に、土質条件が不均一な地域における静圧・振動用作業に好適である。
【0042】
請求項4の発明装置によると、起振機で発生した振動は静圧圧入引抜機構に対してほとんど伝わらず、主として作業対象杭に伝えられる。これにより、起振機で発生した振動エネルギーの有効利用率が高く、強力な振動打抜が可能となる上に、静圧圧入引抜機構部分が激しい振動を受けて耐久性を損われる虞れが無い。特に、上記静圧圧入引抜機構部分に耐振性の少ない計器類(例えば水準器など)が搭載されている場合、この部分に激しい振動が伝わらないことの実用的効果が大きい。
本請求項4における緩衝部材は、コイルスプリング、リーフスプリング、トーションスプリングのようなスプリング部材であっても良く、また、板状,柱状,繊維状など各種形態のゴム部材であっても良く、あるいは空気バネなどのような流体バネ手段であっても所望の防振効果が得られる。
さらに、起振機が静圧圧入引抜機構のクランプに対して振動的に絶縁されているので、該起振機で発生した振動が反力支持杭に伝わって該反力支持杭の沈下を誘発する虞れが無い。
【0043】
請求項5の発明装置によると、チャック付起振機が回動し、もしくは水平方向に移動して作業対象杭に接近する際、該作業対象杭を吊り上げたり吊り降ろしたりする必要なく、該作業対象杭を静止せしたままでチャックが作業対象杭に接近し、「環状を切り欠いた形状の部分」を相対的に通過せしめて、これをコの字状もしくはC字状の内腔部に貫通せしめて把持することができる。
同様に、チャックが作業対象杭を貫通せしめて把持しているとき、チャック爪(ジョー)による挟圧を解除してチャック付起振機を回動させもしくは水平方向に移動させて該作業対象杭から離間させる際も、該作業対象杭を静止させたまま、相対的に切欠部を通過させて、双方の部材が干渉することなく、チャック付起振機を退避させることができる。
作業対象杭はほぼ垂直姿勢に保持されるので、チャックが作業対象杭周りに回動できることは垂直軸周りの回動が可能であることを意味し、さらに、そのチャックを支持しているガイドフレームが水平軸周りに傾動可能であるから、上記のチャックによって把持されている作業対象杭は水平軸周り、垂直軸周りの回動が可能であって、該作業対象杭を打ち込む場合はこれを任意所望の姿勢に保持して打ちこむことができる。また、作業対象杭を引き抜く際は当該振動圧入・引抜装置を作業対象杭が打設されている姿勢に合わせ、かつ、該作業対象杭のグリップ抵抗を勘案して補正し、最も適正な方向に引き抜くことができるので、引抜き作業を高能率で遂行できる。
【0044】
請求項6の発明工法によると「静圧荷重によって杭の圧入引抜を行なう液圧シリンダ(例えば油圧シリンダ)に対してチャック付起振機を予め取り付けておく」という新規な構成により、静圧圧入引抜方式と振動打抜方式とを併用することも、何れか一方のみを施工することも可能になる。
さらに応用操作として静圧圧入・引抜を全負荷施工するとともに、これと併行して振動打抜を半負荷で施工することもできる。このようにして、無振動無騒音である静圧圧入引抜を主体としつつ、作業地点の立地条件に応じて許容される範囲内で振動打抜を併用することにより、振動公害,騒音公害に因る社会的トラブルの発生を回避しつつ、許容される範囲内で強力な打込み,引抜き作業を遂行して、作業能率を高め、ひいては施工コストを低減することができる。
また、振動・騒音が受認限度の境界線付近に在る場合、上述のようにして作業能率を高めることによって振動・騒音の発生時間が短縮され、間接的に公害軽減の効果を奏する。さらに、作業条件によっては作業の終了時刻が深夜に及ぶことが無くなって振動・騒音に因る社会的トラブルが回避されるとともに、深夜作業が不要になるため作業員の健康管理や安全管理が容易になるという派生的効果の実用的価値も大きい。
【0045】
請求項7の発明工法によると、「直前の作業サイクルで打ち込まれた杭を把持して反力を支持して、その次の作業サイクルの作業対象杭を圧入する」という方式の静圧圧入における技術的困難とされていた「最初の作業対象杭を圧入する際、把持して反力を支持すべき既設の杭が無い」という問題を、振動杭打技法の導入によって解決することができる。
すなわち、従来においては最初の杭を静圧圧入する際、予め準備しておいた「クランプで把持し得る箇所を設けた基盤(架台)」を用い、この基盤の重量によって最初の杭の圧入反力を支持するという工夫が為されていたが、該最初の杭を静圧圧入する反力の支持に充分な重量を有する基盤を構成すると該基盤の搬送,保管に多大の労力と経費を要して不経済であり、また、この基盤の重量が不足であると最初の杭の静圧圧入ができないという二律背反的な困難が有った。こうした困難を克服するため従来一般に、基盤の上に重量物を載置するなどの工夫が為されていたが、何れにしても最初の杭の静圧圧入に多大の労力を費していた。本請求項7の発明工法においては、静圧圧入の実施の欠くことのできない液圧シリンダに対してチャック付起振機を予め取り付けておくという新規な構成によって、最初の杭の圧入に振動打込を併用して、支持すべき反力の大きさを軽減し、該最初の杭の静圧圧入を容易ならしめることが出来た。
【0046】
請求項8の発明工法によると、単一の液圧源によって静圧圧入引抜と振動打抜との両方の機構部分を駆動することができ、動力源の構成を簡単にできるとともに、いわゆるパワーユニットから装置本体部分へのエネルギー供給手段が簡素になり、その保守整備が容易である。
【0047】
請求項9の発明工法によると、作業手順,および必要機材の準備を誤る虞れ無く前記請求項6もしくは請求項7に係る発明工法を容易に実施することができ、作業員に格別に高度な知識や熟練を必要とせず、かつ作業員の労力負担を軽減することができる。
すなわち、前記請求項6の発明工法も請求項7の発明工法も「作業対象杭を把持して振動を与えたり、該作業対象杭の把持を解除して退避したりできる機能を有するチャック付起振機を予め液圧シリンダに取り付けておくこと」が必須の構成要件になっている。しかしながら、前記のチャック付起振機は相当な大重量機器(最も小形のもので約0.5トン)であるから、人力で取り外したり、持ち上げたり、運んだり、取り付けたりすることは困難であるが、クレーンを協働させることは厄介である上に不経済である。ここにおいて本請求項の構成を適用すると、チャック付起振機を回動せしめることにより、クレーン等の荷役機器を用いる必要無く、多大の労力を要せずに、前記チャック付起振機を作業対象杭に接近させたり退避させたりすることができる。
【0048】
請求項10の発明工法によっても、前記請求項9におけると同様に、作業員に格別の技術的知識や高度の熟練を必要とせず、かつ作業員の労力負担を軽減することができる。
すなわち、請求項6の発明工法も請求項7の発明工法も「作業対象杭を把持して振動を与えたり、該作業対象杭の把持を解除して退避したりできる機能を有するチャック付起振機を、予め液圧シリンダに取り付けておくこと」が必須の構成要件になっている。しかしながら、前記のチャック付起振機は相当な大重量(最も小形のもので約0.5トン)であるから、人力で取り外したり、持ち上げたり、運んだり、取り付けたりすることは困難であるが、クレーンを協働させることは厄介である上に不経済である。ここにおいて本請求項を適用すると、チャック付起振機を水平移動させることにより、クレーン等の荷役機器を用いる必要無く、多大の労力を要せずに、前記チャック付起振機を作業対象杭に接近させたり退避させたりすることができる。
【0049】
請求項11の発明工法によると、起振機で発生した振動エネルギーの大部分を作業対象杭に伝えて有効に利用することができる。
起振機で発生した振動は、緩衝部材によって伝達を遮断され、ガイドフレームに伝わらない。従って液圧シリンダやクランプなどの静圧圧入機構部分に伝わらないので、該静圧圧入機構の構成部分が振動によって破損したり、機械的疲労を促進されたりする虞れが無い。このような効果は、該静圧圧入機構部分に耐振性の低い部材(例えば水準器)が搭載されている場合、実用的価値が大きい。
上述のようにして振動の伝達を遮断する緩衝部材は、起振機の外筐体とガイドフレームとの間であれば、どこに介装されていても良く、また、スプリング部材、ゴム弾性部材,流体バネ機構など、適宜に公知の手段を選択して適用することができる。
さらに、上記の緩衝部材の介装は、静圧圧入引抜機構部分が起振機と共振して振動,騒音公害を助長したり、共振による応力増大を誘発したりする虞れを未然に防止するという副次的効果も奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態を示し、模式的に描いた側面図に作動状態を付記した説明図である。
【図2】前記と異なる実施形態を示す側面図であって、2種類の実施形態における作動状態を表している。
【図3】作業対象杭を横掴みできるようにしたチャック付起振機の1実施形態を示す平面図であって、(A)はチャックで作業対象杭を挟みつける操作を模式的に表しており、(B)は作業対象杭を把持した状態で該作業対象杭を回動させる操作を模式的に表している。
【図4】前掲の図1および図2に示した実施形態における緩衝部材の1例を示す分解斜視図である。
【図5】起振機用のチャック部材とシリンダ用のチャック部材とを別体に構成して、双方のチャック部材がそれぞれ独立に杭を把持することもでき、相互に協働することも出来るように構成したチャック機構の1例を模式的に描いた垂直断面図である。
【図6】振動杭打抜装置の1例として示したリーダ式振動杭打抜装置によって杭を地盤中に打ち込んでいる状態を描いた側面図であるが、杭を引き抜いている状態を描いた側面図として見ることもできる。
【図7】在来形静圧圧入引抜機の1例を示し、既設杭をクランプして反力を支持しつつ、油圧シリンダによって作業対象杭を地盤中に圧入したり引き抜いたりしている状態の側面図である。
【図8】前掲の図6に示した在来形静圧圧入引抜装置を母体として改良された静圧圧入引抜機の1例を示す側面図に、作業対象杭の傾斜角を前傾・後傾自在に調節する状態を付記した図である。
【図9】前掲の図7に示した改良形静圧圧入引抜機を更に改良した、最新形の公知の静圧圧入引抜機を既設杭に装着するとともに作業対象杭を把持して打抜きしている状態を描いた側面図である。
【符号の説明】
1a…旋回台、1b…ガイド、1c…本体カバー、1d…二又アーム、2…クランプ、3…既設杭、4…油圧シリンダ、5…チャック、6…作業対象杭、7…静止ベース、8…傾動フレーム、9…枢支軸、10…旋回台、11…チルトシリンダ、14a…旋回台、14b…ガイドフレーム、14c…本体カバー、14d…傾動二又アーム、15…起振機、16…ブラケット、20…回動軸、21…チャック、22…緩衝部材、23…水平ガイド、24…スライダ、31…起振機用チャック、31a…二又状部、31b…油圧シリンダ、31c…可動爪、32…シリンダ用チャック、32a,32b…固定爪、32c,32d…油圧シリンダ、32e…可動爪、32f…アーム。

Claims (11)

  1. 既設の杭を把持して静圧圧入・引抜の反力を支持するクランプと、上記クランプによってほぼ垂直に支持されるガイドフレームと、上記ガイドフレームによって昇降動を案内されるとともに作業対象杭を把持するチャックと、上記チャックを昇降動せしめる駆動手段とを具備し、
    かつ、上記ガイドフレームに対して、水平な回動軸を介してチャック付起振機が約90度の往復回動可能に支持されており、
    または上記ガイドフレームに対して、垂直な回転軸を介してチャック付起振機が約180度の往復回動可能に支持されていて、
    上記チャック付起振機が作業対象杭へ接近する方向に回動すると、該起振機に付属するチャックで作業対象杭を把持し得るようになり、上記と反対方向に回動すると該起振機に付属するチャックが作業対象杭から離間するようになっていることを特徴とする、杭の振動圧入・引抜装置。
  2. 既設の杭を把持して静圧圧入・引抜の反力を支持するクランプと、上記クランプによってほぼ垂直に支持されるガイドフレームと、上記ガイドフレームによって昇降動を案内されるとともに作業対象杭を把持するチャックと、上記チャックを昇降動せしめる駆動手段とを具備し、
    かつ、上記ガイドフレームに対して、ほぼ水平なガイドを介してチャック付起振機が作業対象杭に対して接近,離間可能に案内されており、
    上記チャック付起振機が作業対象杭に接近すると、該起振機に付属するチャックで作業対象杭を把持し得るようになっていることを特徴とする、杭の振動圧入・引抜装置。
  3. 作業対象杭に対して静的圧入・引抜力を与えるシリンダ手段と、上記作業対象杭に対して振動を与える起振機とが設けられて協働する構造の振動圧入・引抜装置に装着されるチャック機構であって、
    前記シリンダ手段に、作業対象杭を把持するシリンダ用チャックが装着されるとともに、前記起振機には作業対象杭を把持する起振機用チャックが装着されていて、
    上記双方のチャックがそれぞれ単独に作業対象杭を把持し得るようになっており、
    かつ、(a)作業対象杭を把持した状態の起振機用チャックの外側をシリンダ用チャックで把持し得るようになっており、または(b)作業対象杭を把持した状態のシリンダ用チャックの外側を起振機用チャックで把持し得るようになっており、
    さらに、シリンダ用チャックで作業対象杭の上端部を把持してシリンダ用の案内手段のストローク下端まで圧入したときの作業対象杭の上下方向位置と、起振機用チャックで作業対象杭の上端部を把持して起振機用の案内手段のストローク下端まで打ち込んだときの作業対象杭の上下方向位置とがほぼ同じであることを特徴とする、振動圧入・引抜装置用チャック機構。
  4. 前記のチャック付起振機が、前記ガイドフレームに対して、緩衝部材を介して支持されており、起振機が作動してその本体部分が振動したとき、発生した振動がガイドフレームに対して直接的に伝動されないようになっていることを特徴とする、請求項1もしくは請求項2に記載した杭の振動圧入・引抜装置。
  5. 前記の起振機に付属しているチャックは、垂直姿勢の作業対象杭を把持した状態における平面図形の輪郭が概要的にコの字状ないしC字状であって、環状ないし輪状の一部を切り欠いた形状をなすとともに、
    上記の切欠き部分の形状寸法は作業対象杭の通過を許容するように設定されており、
    かつ、前記の起振機に付属しているチャックは、作業対象杭を把持する姿勢において、該作業対象杭を中心として回動可能な構造であり、
    前記のガイドフレームは前記のクランプに対して、水平軸周りの傾動可能な構造であるとともに、垂直軸周りの回動も可能な構造であることを特徴とする、請求項1もしくは請求項2に記載した杭の振動圧入・引抜装置。
  6. 地盤の中に打設されている杭を把持して反力を支持しつつ、上記の杭と異なる作業対象杭を液圧シリンダの伸縮力によって地盤中に圧入し、および/または、地盤の中に打設されている上記以外の杭を作業対象の杭として液圧シリンダの伸縮力によって地盤から引き抜き、多数の杭の順次に打込み,引き抜き工法において、
    前記の液圧シリンダに対して「作業対象杭を把持して振動を与えたり、該作業対象杭の把持を解除して退避したりできる機能を有するチャック付起振機」を予め取り付けておき、
    杭の打抜地点の立地条件によって振動公害・騒音公害を発生する虞れの多い場合は前記チャック付起振機を退避させ、主として液圧シリンダの伸縮力によって該杭の静圧圧入・引抜を行ない、
    杭の打設地点の立地条件によって振動公害・騒音公害を発生する虞れの少ない場合は前記チャック付起振機を作業対象杭に装着して作動せしめ、前記液圧シリンダの伸縮力に振動を併用して杭を圧入し、および/または引抜くことを特徴とする、杭の振動圧入・引抜工法。
  7. 地盤の中に打設されている杭を把持して反力を支持しつつ、上記の杭と異なる作業対象杭を液圧シリンダの伸縮力によって地盤中に圧入し、上記のようにして圧入された作業対象杭を把持して、これを次の作業サイクルにおける反力支持杭として用いつつ、前記と更に異なる作業対象杭を前記の液圧シリンダの伸縮力によって地盤中に圧入し、
    上述の作業サイクルを繰り返して多数の杭を配列しつつ順次に打設する工法において、
    前記の液圧シリンダに対して「作業対象杭を把持して振動を与えたり、該作業対象杭の把持を解除して退避したりできる機能を有するチャック付起振機」を予め取り付けておき、
    順次に打設される多数の杭のうちで、最初の打設される杭を地盤中に貫入せしめる際、前記チャック付起振機を上記最初の作業対象とされる杭に装着して作動せしめることにより、該最初の作業対象杭を液圧シリンダで押し下げるに必要な反力を軽減することを特徴とする、杭の振動圧入・引抜工法。
  8. 前記チャック付起振機を偏心重錘式の起振機によって構成するとともに、液圧モータによって上記偏心重錘式起振機を回転駆動し、
    前記液圧シリンダの動力源である圧力液体送出手段と、前記液圧モータの動力源である圧力液体送出手段とを共用することを特徴とする、請求項6もしくは請求項7に記載した杭の振動圧入・引抜工法。
  9. 地盤の中に打設されている杭を反力支持杭として把持する手段によって固定的に支持されるとともに、前記の作業対象杭の上下動を案内するガイドフレームに対して、前記のチャック付起振機を水平軸周りもしくは垂直軸周りの回動可能に搭載し、
    上記チャック付起振機をガイドフレームに対して回動せしめることにより、該チャック付起振機を作業対象杭に接近させて装着したり該作業対象杭から退避させたりすることを特徴とする、請求項6もしくは請求項7に記載した杭の振動圧入・引抜工法。
  10. 地盤の中に打設されている杭を反力支持杭として把持する手段によって固定的に支持されるとともに、前記の作業対象杭の上下動を案内するガイドフレームに対して、前記チャック付起振機を水平方向の移動可能に搭載し、
    上記チャック付起振機を水平な案内手段に沿って移動せしめることにより、該チャック付起振機を作業対象杭に接近せしめて装着したり、該作業対象杭から離間させて退避せしめたりすることを特徴とする、請求項6もしくは請求項7に記載した杭の振動圧入・引抜工法。
  11. 前記チャック付起振機を前記ガイドフレームに対して、緩衝部材を介して支承し、起振機で発生した振動が直接的にガイドフレームへ伝わらないようにすることを特徴とする、請求項8ないし請求項10の何れかに記載した杭の振動圧入・引抜工法。
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