JP3985720B2 - 水素ガスセンサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の抵抗変化から水素濃度を計測する水素ガスセンサに関する。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池自動車の燃料電池に用いる水素ガスや、半導体製造に用いる水素ガスの濃度検出を行う従来の水素ガスセンサとしては、特許文献1および特許文献2に記載の水素ガスセンサがある。
【0003】
上記の従来の水素ガスセンサでは、水素ガスの感応部材料としてSnO2 ,
In2O3,ZnO,WO3,Fe2O3,TiO2,SrTiO3,BaTiO3等の金属酸化物を用いて、発熱抵抗体により所定の温度に加熱して上記の感応部材料の抵抗値の変化から水素ガス濃度を検出している。
【0004】
特に特許文献2に記載の従来の水素ガスセンサでは、発熱抵抗体の発熱量を低減する為に、Si基板を用いた半導体マイクロマシニング技術により熱容量の小さい薄膜絶縁体上に上記発熱抵抗体と感応部材を形成し、低電力で駆動する水素ガスセンサを実現している。
【0005】
しかし、このような従来の水素ガスセンサでは、水素ガスの感応部材料として上記の金属酸化物を用いているため、特殊な金属酸化物材料であることから標準的な半導体プロセスが利用できずに材料および装置の面からコスト高になる。また、上記の金属酸化物材料は、被測定ガスの強い還元性雰囲気に対しては酸素が脱離して金属酸化物から金属に還元ざれ易く長期に安定性が保てなくなる恐れが高い。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−71611号公報
【特許文献2】
特許第3219855号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上記の様に、従来技術には水素ガスの感応部材料としての金属酸化物を用いているため、標準的な半導体プロセスが利用できずに材料および装置の面からコストが高く、また、被測定ガスの強い還元性雰囲気に対しては、金属酸化物が還元ざれ易く長期に安定性が保てなくなる課題がある。
【0008】
従って、本発明の目的は、長期の性能信頼性が高く低コストの水素ガスセンサを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、空洞部が形成された半導体基板と、前記空洞部上に絶縁膜を介して形成された少なくとも薄膜抵抗体とを備え、前記薄膜抵抗体は、少なくとも一対の不純物ドープ処理された多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜であり、一方の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は上層と下層において前記絶縁膜よりも水素を透過しにくく且つ吸収しにくいバリア層で包含されており、他方の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は上層と下層のいずれかにて上記バリア層から開放されており、更に、入力側が前記一対の多結晶ケイ素 (Si) 半導体薄膜に接続され、出力側が装置出力に接続された抵抗値差検出手段を備えた水素ガス濃度検出装置により達成される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明による水素ガスセンサについて、図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の一実施形態における水素ガスセンサのセンサ素子の平面図で、図2は、図1のA−A′線による断面図であり、これらの図において、1がセンサ素子1で、これは、全体が半導体基板2をベースとして形成されている。
【0016】
半導体基板2は、空洞部9が形成されている単結晶ケイ素(Si)の板で、その一方の面(図では上側の面)にダイヤフラム部3が形成されている。ここで、空洞部9は、平面形状が略矩形の孔として形成されているものである。
【0017】
半導体基板2の一方の面に設けてある絶縁膜7a,バリア層8a,絶縁膜7bの3層膜は、空洞部9を含め半導体基板2の全面を覆う構造であり、ダイヤフラム部3を構成する絶縁膜7bの表面には、加熱抵抗体4と2対の薄膜抵抗体5a,5b及び5c,5dが形成してある。ここで、絶縁膜7a,7bは二酸化ケイ素(SiO2 )からなり、バリア層8aは水素を透過しにくく且つ吸収しにくい化学量論的に安定な窒化ケイ素(Si3N4)薄膜で作られている。
【0018】
加熱抵抗体4,ガス温度測温抵抗体6および薄膜抵抗体5a〜5dは、リン
(P)又はボロン(B)がドープ処理された多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜により、所定の導電性(抵抗値)を持つ細条として作られる。各抵抗体の配線接続部11および外部接続端子部12は、低抵抗値のアルミニウム(Al),金(Au)等の金属薄膜により形成され、各抵抗体との電気接続がなされる。
【0019】
絶縁膜7bおよび各抵抗体の上層には、絶縁膜7c,バリア層8bが、各抵抗体を保護するとともに、各抵抗体の上層と下層にそれぞれ、水素を透過しにくく且つ吸収しにくいバリア層8a,8bによって包含するために形成される。但し、薄膜抵抗体5a,5dの上層においては、上記のバリア層8bの部分が除去されて開口部10a,10dが形成される。
【0020】
ここで、加熱抵抗体4は、矩形形状のダイヤフラム部3の縦方向に沿って、ほぼ一直線上に配置されており、薄膜抵抗体5a,5b,5c,5dは、この加熱抵抗体4に対して夫々離間して、夫々が対になるようにして設けられている。
【0021】
次に、この実施形態による水素ガスセンサによる水素ガスセンサの計測原理について説明する。
【0022】
図3は、図2の素子断面図の薄膜抵抗体5dおよび開口部10d領域の拡大図で、上部のバリア層8bが無い(開口されている)場合である。5dが、多結晶ケイ素(Si)半導体膜からなる薄膜抵抗体で、7b,7cが二酸化ケイ素(SiO2 )からなる絶縁膜である。多結晶ケイ素(Si)半導体膜5dで、14がケイ素(Si)の結晶粒、13が粒界、15が二酸化ケイ素(SiO2 )との境界面である。
【0023】
図3のケイ素(Si)の結晶粒14内では、図6(a)に示した様にケイ素
(Si)原子が規則的に配列結合した単結晶状態であり、化学的に安定していて理想の構造となっている。一方、図3の粒界13,二酸化ケイ素(SiO2)との境界面15および結晶粒14内の欠陥(図示せず)では、図6(b)に示す様に、ケイ素(Si)原子の規則的な配列結合が寸断されて不安定な状態となる。
【0024】
特に、バリア層8bが開口された構成の多結晶ケイ素(Si)半導体膜5dが、水素ガス雰囲気に置かれると、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の粒界13、欠陥領域または境界面15では、図6(b)に示した様に、規則的な配列結合が寸断されたケイ素(Si)の終端と水素(H)の結合(ダングリングボンド)が形成される。
【0025】
このSi−Hの結合(ダングリングボンド)エネルギーは3.1eV と他のガスのSi−N,Si−F結合等に比べて小さく、温度上昇等により容易にダングリングボンドの形成および解離が起こる。図6(b)のように、水素ガス雰囲気に置かれてSi−Hのダングリングボンドが形成された状態では、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の粒界または欠陥領域におけるエネルギー障壁が下がることから抵抗値が低減する。
【0026】
一方、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜5dが、水素ガスが無い雰囲気に置かれて、ある一定温度以上になった場合には、図6(c)のようにSi−Hのダングリングボンドが容易に解離し、水素が二酸化ケイ素(SiO2)膜7c内を拡散脱離することにより、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の粒界または欠陥領域におけるエネルギー障壁が増大し抵抗値が増大する。
【0027】
つまり、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜5dの抵抗値が、水素ガスの濃度によって抵抗値が変化することを利用して水素ガス濃度の検出が可能となる。
【0028】
これに比較して、図4の上下層にバリア層8a,8bを形成した多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜5bの場合には、バリア層8a,8bが水素の拡散脱離を止めることから、Si−Hのダングリングボンドが安定し、水素ガス濃度に関係なく長時間に渡って安定した抵抗を示し基準抵抗体となる。この薄膜抵抗体5bと上記の水素ガスの濃度によって抵抗値が変化する薄膜抵抗体5dの抵抗値の差から水素ガス濃度が検出できる。
【0029】
図5に、薄膜抵抗体5bと薄膜抵抗体5dの窒素ガス雰囲気での抵抗値のアニール温度依存の実験結果をしめす。図5の曲線17がバリア層の無い薄膜抵抗体5dの抵抗で、16がバリア層8a,8bを形成した薄膜抵抗体5bの結果である。図から、バリア層の無い薄膜抵抗体5dでは、200℃を超える温度にてSi−Hのダングリングボンドが解離することにより抵抗値の増大が始まる。一方、薄膜抵抗体5bでは、550℃まで抵抗値が安定しており、バリア層8a,8bとして用いた化学量論的に安定な窒化ケイ素(Si3N4)のバリア効果が無くなる550℃以上にてSi−Hのダングリングボンドが解離して抵抗値の増大が見られる。
【0030】
このことから、550℃以下の温度を使用温度範囲として、一旦200℃から550℃の高温度に薄膜抵抗体5dを加熱初期化した後に、室温あるいは300℃以下の所定の温度に保持することにより、薄膜抵抗体5bと上記の水素ガスの濃度によって抵抗値が変化する薄膜抵抗体5dの抵抗値の差から水素ガス濃度が検出できる。
【0031】
図7に、薄膜抵抗体5dの抵抗値と水素ガスの濃度の関係を示した。水素ガスの濃度が増加するに従い、薄膜抵抗体5dの抵抗値がほぼ直線的に減少することがわかる。この関係から水素ガス濃度が検出できる。
【0032】
次に、図8および図9により、この実施形態の回路構成について説明する。
【0033】
この図8の回路は、センサ素子1の各抵抗体4,5a,5b,5c,5d,6と、それらを駆動し制御する回路を示したもので、この図において23は電源、24はトランジスタ、22a,22bは抵抗、20は制御回路、そして21はメモリ回路であり、この制御回路20は、A/D変換器など含む入力回路と、D/A変換器などを含む出力回路、それに演算処理などを行うCPUで構成されている。
【0034】
加熱抵抗体4とガス温度測温抵抗体6は、抵抗22a,22bと共にブリッジ回路を形成し、その端子25a,25b,25cの電圧が制御回路20に入力される。また、2対の水素ガス濃度検知する薄膜抵抗体5a,5b,5c,5dは基準電圧Vrefに接続された第二のブリッジ回路を構成しており、その端子25d,25eの電圧も制御回路20に入力される。
【0035】
制御回路20では、ブリッジ回路の25a端子電圧(抵抗22bの両端電圧)からガス温度測温抵抗体6に流れる電流と、25aと25cの端子電圧(ガス温度測温抵抗体6の電圧)から、ガス温度測温抵抗体6の抵抗値を求める。このガス温度測温抵抗体6の抵抗値から、予めメモリ回路21に記憶されてあるガス温度測温抵抗体6の初期抵抗値と抵抗温度係数から、ガス温度を計算する。
【0036】
加熱抵抗体4は、図9の27に示した様に、周期Tにて加熱電流が印加される。加熱電流は最初に初期化の為に200℃から550℃の高温パルス加熱される。この時に、バリア層の無い薄膜抵抗体5a,5dは加熱抵抗体4と同じ温度に加熱され、Si−Hのダングリングボンドが解離して抵抗値が増加して初期化される。
【0037】
その後、室温あるいは300℃以下の所定の温度に保持することにより、バリア層の無い薄膜抵抗体5a,5dは水素ガス雰囲気の水素濃度に比例したSi−Hのダングリングボンドが再度形成されて、図9の28に示す様に抵抗値が徐々に減少する。
【0038】
一方、バリア層が形成された基準となる薄膜抵抗体5b,5cでは、水素ガス雰囲気の水素濃度に不感であり温度にのみ依存した抵抗値を示す。従って、図8の第二ブリッジ回路において、水素ガス濃度に比例して薄膜抵抗体5a,5dの抵抗値が減少し、基準となる薄膜抵抗体5b,5cでは抵抗が変わらないことから、ブリッジ回路の端子電圧25dが増加、端子電圧25eが減少し両端子の電圧差から水素ガス濃度が検出される。
【0039】
この端子電圧25d,25eの電圧差は、実際には計測すべく水素ガス濃度の他に、水素ガス温度,加熱抵抗体4(薄膜抵抗体5a,5d,5b,5c)の保持温度に依存している。この為、上記のガス温度測温抵抗体6から算出された水素ガス温度および保持温度から、予めメモリ回路21に記憶された関係式に従って制御回路20により補正されて水素ガス濃度が出力される。
【0040】
加熱抵抗体4の温度は、ガス温度測温抵抗体6から算出された水素ガス温度に対応して、ブリッジ回路の端子電圧25a,25bの電圧差が所定の電圧になるように制御回路20で制御する。水素ガス温度,加熱抵抗体4の温度およびブリッジ回路の端子電圧25a,25bの電圧差の関係は、予めメモリ回路21に記憶されているので、この関係式に従って、端子電圧25a,25bの電圧差が所定の値になるように、トランジスタ24をオンオフし、加熱抵抗体4の加熱電流を制御する。
【0041】
上記の一連の動作を示したのが、図9である。図9の26が測定すべき水素ガス濃度で濃度C1,C2,C3と変化する。この時、図9の27が加熱抵抗体4の電流波形で、周期Tの最初に初期化の為に200℃から550℃の高温パルス加熱され、その後、室温あるいは300℃以下の所定の温度に保持される。図9の28がバリア層の無い薄膜抵抗体5a,5dの抵抗値の変化を示したもので、加熱抵抗体4の初期化高温パルス加熱により一旦上昇し初期化抵抗値に到達した後、水素ガス濃度C1,C2,C3に対応した抵抗値に減少し安定する。
【0042】
本実施形態では、2対の薄膜抵抗体5a,5b,5c,5dを用いたブリッジ回路で構成したが、例えば5a,5c一対の薄膜抵抗体の構成でも計測は可能である。2対の薄膜抵抗体の構成により端子電圧25d,25eの電圧差が、一対の測温抵抗体からなるブリッジ回路に比して、約2倍になるので、感度が上り、精度が向上する。
【0043】
次に、本実施例である水素ガスセンサのセンサ素子製造工程の具体例について、図10を参照して説明する。
【0044】
図10(a)にて、シリコン半導体基板2の上下面に熱酸化処理により二酸化ケイ素(SiO2)層7a、29を約0.2 ミクロン厚に形成する。次に、バリア層8aとして、温度範囲(<550℃)において水素を透過しにくく且つ吸収しにくい化学量論的に安定な窒化ケイ素(Si3N4)薄膜を、770〜800℃の温度で減圧CVD(Chenical Vapor Deposition:以下LPCVD法とする)法により約0.15 ミクロン厚に形成する。
【0045】
この、化学量論的に安定な窒化ケイ素(Si3N4)薄膜は、緻密な膜質となっており、引張り残留応力を有する機械強度が高い膜であるとともに、温度範囲(<550℃)において水素を透過しにくく且つ吸収しにくい特性を有している。
【0046】
同じ窒化ケイ素薄膜でも、形成温度が低くプラズマ雰囲気で膜形成するプラズマCVD法やスパッタリング法による窒化ケイ素薄膜(プラズマ窒化ケイ素薄膜)は、上記の化学量論的に安定な窒化ケイ素(Si3N4)薄膜とは異なり、SixNy(x,y=不定)の化学構造となり膜質が疎で不安定であり、機械強度が低く且つ水素を多量に含有するとともに容易に水素を透過するために、本実施例のバリア層としては不適である。
【0047】
次に、バリア層8aの上層に、二酸化ケイ素(SiO2 )層7bを約0.5 ミクロン厚に、LPCVD法により形成する。LPCVD法により形成された二酸化ケイ素(SiO2 )膜は、上記の窒化ケイ素(Si3N4)薄膜と比較して、膜応力が逆の圧縮応力となり且つ熱伝導率が一桁小さくなる。
【0048】
従って、上記二酸化ケイ素(SiO2)層7a,7bと窒化ケイ素(Si3N4)薄膜8aの多層構成とし、熱膨張係数および残留応力のマッチングを図った構成とすることにより、ダイヤフラム部3の熱応力および残留応力による撓みが低減でき強度向上が図られる。
【0049】
また、ダイヤフラム部3の上層に形成する絶縁膜7cとバリア層8bの多層構造においても同様の膜構成とし、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜30の上下方向に対して膜応力のバランスをとることにより、更に、ダイヤフラム部3の熱応力および残留応力による撓みが低減でき強度向上が図られる。
【0050】
次に(b)にて、絶縁膜7b上に加熱抵抗体4と薄膜抵抗体5a〜5d,ガス温度測温抵抗体6として多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜30を約1ミクロンの厚さでLPCVD等の方法で形成する。ここで、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は、他の製造方法であるプラズマを用いたLPCVDあるいは電子サイクロトロン共鳴を用いたECR−PCVD,マイクロ波を用いたCVD等の方法にて形成することも可能である。
【0051】
次に、形成した多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜30に熱拡散処理またはイオン打ち込みにて不純物ドープ処理を行う。
【0052】
また、この工程にて不純物としてリン(P)を用いたが、ボロン(B)を不純物に用いてドープ処理を行うことも可能であるが、形成した多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の抵抗値の安定性に関しては不純物としてリン(P)を用いた方がより効果が得られる。
【0053】
次に(c)にて、公知のホトリソグラフィ技術によりレジストを所定の形状に形成した後反応性ドライエッチング等の方法により多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜30をパターニングし、加熱抵抗体4,薄膜抵抗体5a〜5d,ガス温度測温抵抗体6(図示せず)を形成する。
【0054】
(d)では、上記(a)の工程と同様に、絶縁膜7cとして二酸化ケイ素(SiO2)層を約0.5 ミクロン厚に、バリア層8bとして化学量論的に安定な窒化ケイ素(Si3N4)薄膜を、770〜800℃の温度でLPCVD法により約0.15ミクロン厚に積層する。
【0055】
その後、図示していないが絶縁膜7c,バリア層8bの所定の位置にスルーホールを形成後、引出電極11および端子電極12が、アルミニウム,金等で形成されて、端子電極と抵抗体間の電気接続がなされる。次に、シリコン半導体基板2に空洞9を形成する為に、エッチングのマスク材29を所定の形状にパターニングし半導体基板2のエッチング部のみを露出させる。マスク材29としては二酸化ケイ素あるいはよりエッチング選択比の高い窒化ケイ素等が用いられる。
【0056】
(e)では、最後に、シリコン半導体基板2の裏面より二酸化ケイ素あるいは窒化ケイ素等をマスク材29として、水酸化カリウム(KOH)等のエッチング液を用いて異方性エッチングすることにより空洞9を形成する。
【0057】
本実施例では、バリア層8a,8bとして、化学量論的に安定な窒化ケイ素(Si3N4)薄膜を適用した実施例を説明したが、例えば金,銀等の金属でも水素を透過しにくく且つ吸収しにくい特性を有しているバリア膜材料であれば同様の効果が得られることは自明である。
【0058】
また、先に計測原理を示した様に本実施例の水素ガスセンサでは、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の粒界,膜欠陥および境界部におけるSi−Hのダングリングボンドの形成,解離により水素ガス濃度を検出する。そのため、水素ガス濃度の検出感度を高める為には、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の粒界,膜欠陥および境界部の領域を十分大きく取ることが有効である。従って、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜としては、結晶粒を小さく形成し粒界部を増加させることがより望まれる。
【0059】
ここで、バリア層8a,8b材料として、チタン(Ti,Ti合金)系、或いはニッケル(Ni,Ni合金)系の水素吸収、貯蔵型の金属の適用は不向きである。水素吸収,貯蔵型のバリア層では、バリア層内の水素が多結晶ケイ素(Si)半導体膜のSi−Hダングリングボンドの形成が時間とともに変動し、抵抗値が不安定で一定しなくなる為である。
【0060】
また、バリア層8a,8b材料として、二酸化ケイ素(SiO2 )は水素を容易に透過することから不向きであり、ケイ素(Si)半導体膜も水素吸収,貯蔵型であることからバリア層材料として向かない。
【0061】
図11には、本発明の第二の実施例である水素ガスセンサのセンサ素子の断面図を示す。図中の符号は図2の断面図と同じである。図11の第二の実施例と図2の第一の実施例との差異は、第二の実施例ではバリア層8a,8bに挟まれる絶縁膜7b,7cを省略した構造としたことである。このような構造とすることにより、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の加熱抵抗体4と基準となる薄膜抵抗体5bがバリア層8a,8bにより確実に包含されることから、水素ガスセンサの測定精度がより向上する。
【0062】
本実施例によれば、空洞部が形成された半導体基板と、上記空洞部上に絶縁膜を介して形成された少なくとも薄膜抵抗体を有し、該薄膜抵抗体の抵抗変化から水素ガスの濃度を計測する水素ガスセンサにおいて、上記薄膜抵抗体を少なくとも一対の不純物ドープ処理された多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜とし、一方の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は上層と下層において水素を透過しにくく且つ吸収しにくいバリア層で包含されており、他方の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は上層と下層のいずれかにて上記バリア層から開放されており、上記一対の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の抵抗値の差から水素ガスの濃度を計測するように構成したことにより、従来例に比較して金属酸化物を用いずに標準半導体プロセスにて製造出来ることから低コストで長期の性能信頼性が高い水素ガスセンサを提供することが出来る。
【0063】
【発明の効果】
本発明によれば、長期の性能信頼性が高く低コストの水素ガスセンサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による水素ガスセンサの一実施形態におけるセンサ素子の平面図である。
【図2】本発明による水素ガスセンサの一実施形態におけるセンサ素子の断面図である。
【図3】本発明による水素ガスセンサの原理を説明するための説明図である。
【図4】本発明による水素ガスセンサの原理を説明するための説明図である。
【図5】本発明による水素ガスセンサの原理を説明するための、抵抗値と熱処理アニールの特性図である。
【図6】本発明による水素ガスセンサの原理を説明するための説明図である。
【図7】本発明による水素ガスセンサの原理を説明するための、抵抗値と水素ガス濃度の特性図である。
【図8】本発明による水素ガスセンサの一実施形態における回路図である。
【図9】本発明による水素ガスセンサの動作を説明するための説明図である。
【図10】本発明による水素ガスセンサの製造方法を説明するためのプロセス図である。
【図11】本発明による水素ガスセンサの第二の実施形態におけるセンサ素子の断面図である。
【符号の説明】
1…センサ素子、2…半導体基板、3…ダイヤフラム部、4…加熱抵抗体、
5a〜5d…薄膜抵抗体、6…ガス温度測温抵抗体、10a,10d…開口部、11…配線接続部、12…端子電極。
Claims (5)
- 空洞部が形成された半導体基板と、
前記空洞部上に絶縁膜を介して形成された薄膜抵抗体とを備え、
前記薄膜抵抗体は、少なくとも一対の不純物ドープ処理された多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜を含み、
一方の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は上層と下層において前記絶縁膜よりも水素を透過しにくく且つ吸収しにくいバリア層で包含されており、
他方の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は上層と下層のいずれかにて上記バリア層から開放されており、
更に、入力側が前記一対の多結晶ケイ素 (Si) 半導体薄膜に接続され、出力側が装置出力に接続された抵抗値差検出手段を備えた水素ガス濃度検出装置。 - 請求項1において、
前記一対の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜を含んで構成されたブリッジ回路を備え、
前記抵抗値差検出手段の入力側が、前記ブリッジ回路の端子を介して、前記一対の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜に接続され、
更に、前記装置出力と前記抵抗値差検出手段との間に補正手段を介することを特徴とする水素ガス濃度検出装置。 - 請求項1において、
前記バリア層は窒化ケイ素(Si3N4)薄膜であることを特徴とする水素ガス濃度検出装置。 - 請求項1から3のいずれかにおいて、
前記多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は、不純物としてリン(P)又はボロン(B)がドープ処理され、
上層と下層のいずれかがバリア層から開放された前記他方の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜は、粒界,境界又は欠陥領域で水素ガスとダングリングボンドが形成もしくは解離されることにより抵抗値が変化することを特徴とする水素ガス濃度検出装置。 - 請求項1から4のいずれかにおいて、
前記一対の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜間に、多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜で形成された抵抗体と、
前記抵抗体に電流を流して所定の時間間隔にて前記一対の多結晶ケイ素(Si)半導体薄膜の温度を200℃から550℃間の所定の温度に制御する制御手段とを備えたことを特徴とする水素ガス濃度検出装置。
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