JP3985291B2 - 燃焼排ガス中の水銀除去方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、酸素の共存する燃焼排ガス中に含まれる有害な水銀を除去する方法に関する。更に詳しくは、ゴミ焼却排ガスより、銀を含有するゼオライト吸着剤を用いて水銀を除去する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ナフサ分解ガス、天然ガス等の酸素を含有しない炭化水素ガス中に含まれる微量水銀の除去に、銀を含有するゼオライトを使用する方法が提案されている(米国特許4892567号、米国特許第4874525号)。これらの方法で使用されるゼオライト中の銀は、還元処理により金属状にして使用するか、イオン状又は元素状にて使用することが必要である。
【0003】
一方、酸素の共存するゴミ焼却排ガスから水銀を除去する方法として、塩酸除去用の冷却吸収塔等への水銀吸収液の添加が知られている。水銀吸収液としては、過マンガン酸カリウム−硫酸の混合液、次亜塩素酸−食塩水溶液、チオ尿酸、硫化ソーダ、チオ硫酸ソーダ等の水溶液が用いられる。しかしながら、この方法では、水銀を吸収した排水の処理の問題がある。
【0004】
また、ゴミ焼却排ガスを気相で直接処理する方法として、排ガスを活性炭吸着剤に接触させる方法が提案されている(特開昭60−129124号公報)。また、排ガス中に炭素粉末を噴射し水銀を吸着した後、捕集する方法が提案されている(特開平4−346822号公報)。
【0005】
しかしながら、これらの方法では、水銀除去能が充分ではなく、また、吸着剤の再生ができないため経済的に不利となる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、酸素が共存する燃焼排ガス中の水銀を効率良く除去し、浄化する方法を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、銀水溶液を添加し、撹拌、洗浄、乾燥後焼成して得られた銀を含有したゼオライトを水銀及び酸素を含有する燃焼排ガスに接触させ、従来のような銀を還元処理により金属状、イオン状又は元素状にする必要なしに水銀をゼオライト側へ吸着させることができ、そのことにより燃焼排ガス中の水銀を除去できることを見出だし、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は、水銀及び酸素を含有する燃焼排ガスを銀水溶液を添加し、撹拌、洗浄、乾燥後焼成して得られた銀を含有するゼオライトに接触させることを特徴とする燃焼排ガスから水銀を除去する方法を要旨とするものである。
【0009】
尚、本明細書においては、「吸着」の意味は、水銀をゼオライト側へ種々の様式により引き込むことを意味するものであって、物理的吸着、化学的吸着のみならず、アマルガムを形成してなることを意味することもある。
【0010】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
本発明の方法で用いられるゼオライトとしては、銀を含有することができればその種類は特に限定されることはなく、A型ゼオライト、X型ゼオライト、Y型ゼオライト、L型ゼオライト、モルデナイト、ZSM−5等が使用できる。この内、経済面からA型ゼオライトやX型ゼオライトが好ましく用いられる。また、ゼオライト中の陽イオンとしては、Na,K等のアルカリ金属イオンや水素イオン、アンモニウムイオン等が使用されるが、排ガス中に塩酸、硫黄化合物等の酸性ガスが含まれる場合には、Ca,Ba,Sr等のアルカリ土類金属イオンに交換して用いても良い。
【0012】
本発明の方法で用いられるゼオライトに含有させる銀の原料(以下「銀源」という)としては、硝酸銀、酸化銀、塩化銀、硫酸銀等が例示できる。
【0013】
又、ゼオライトに銀を含有させる方法としては、イオン交換法、含浸担持法、練り込み、乾式混合等の物理混合法などが使用できる。これらの内、ゼオライトへ銀を、より高分散に含有させる方法としてイオン交換法が挙げられる。イオン交換法は通常行われている方法で良く、硝酸銀等の可溶性の銀源を溶解した水溶液中にゼオライトを添加し、撹拌、洗浄、乾燥、焼成することによって行われる。焼成の温度としては、200℃〜800℃で、空気、窒素、還元ガス等の雰囲気下で実施できる。焼成の時間としては、特に限定されるものではないが、通常5分〜50時間程度で充分である。
【0014】
本発明の方法で用いられるゼオライト中の銀の含有量は、燃焼ガス中の水銀を充分に吸着できる量であれば特に限定されないが、効率良く水銀を除去するためには、銀を含有したゼオライト全量に対して銀含有量が0.01〜20重量%の範囲であることが好ましく、更に0.02〜2重量%が好ましい。
【0015】
以上のようにして、本発明の方法において用いられる銀を含有するゼオライト(以下「水銀吸着除去剤」という)を調製することができる。
【0016】
本発明の方法において用いられる水銀吸着除去剤は、粘土鉱物等のバインダーと混合し成形して使用することもできる。成形する際に用いられるバインダーとしては、カオリン、アタパルガイト、モンモリロナイト、ベントナイト、アロフェン、セピオライト等の粘土鉱物を挙げることができる。また、コージェライト製あるいは金属製のハニカム状基材にこの水銀吸着除去剤をウォッシュコートして用いることもできる。
【0017】
又、水銀吸着除去剤の成形方法については、通常用いられる方法、例えば、プレス成形、転動造粒等の方法を採用できる。水銀吸着除去剤の形状については具体的な排ガス中の水銀の除去方法、例えば水銀吸着除去剤を塔に充填して用いたり、バッチ処理に用いたりするように、その方法に依存するが、その形として、球状、楕円球状、円板状、円柱状、ペレット状等を採用でき、又、大きさとして、直径0.5〜5mm程度が通常用いられる。さらに必要に応じて、ふるい等を用いて分級して用いることもできる。
【0018】
この様にして調製された水銀吸着除去剤は、水銀及び酸素を含有する燃焼排ガスと接触させて水銀の除去を行なう。本発明の方法における対象となる燃焼排ガスは、水銀及び酸素を含む燃焼排ガスであることが必須であるが、塩酸、硫黄化合物等が含まれている場合にも有効である。
【0019】
燃焼排ガス中に含まれる水銀濃度は、通常含まれる濃度であれば特に限定されるものではないが、より良い反応効率を得るためには、体積基準で0.1ppb〜10ppm、更には、1ppb〜1ppmであることが好ましい。
【0020】
また、燃焼排ガス中の酸素濃度は、通常含まれる濃度であれば特に限定されるものではないが、より効率良く水銀を除去するためには、酸素濃度が体積基準で0.5〜20%であることが好ましい。
【0021】
燃焼排ガスの種類としては、特に限定されるものではないが、ボイラー、ディーゼルエンジン等の内燃機関から排出される排ガス、ゴミ焼却排ガス等が例示され、この内、ゴミ燃焼排ガスが好ましい。更に、ゴミ焼却排ガスの内でも、ゴミ焼却プラントの冷却吸収塔からの排ガスや、冷却吸収塔の塔底槽からの排ガスが好ましい。ここで、冷却吸収塔は、塩酸、硫黄化合物を除去するために設置されるものであり、冷却吸収液には苛性溶液が使用される。また、冷却吸収塔の塔底槽は、冷却吸収水を回収、循環する設備として設置されるものである。又、ゴミ焼却排ガスとして、乾式又は半乾式の塩酸、硫黄化合物の除去装置からの排ガスであっても良い。
【0022】
本発明の方法により酸素の共存する燃焼排ガス中の水銀を除去する際の線速、温度等は特に限定されないが、水銀除去の効率面から、線速としては0.01〜5m/s、温度としては室温〜100℃の範囲が好ましく、更に、線速は0.05〜1m/s、温度は室温〜70℃の範囲であることが好ましい。尚、ここでいう室温とは、水銀除去を実施する際の外気温を意味するものである。
【0023】
更に、本発明の方法において用いられる水銀吸着除去剤は、実際に使用した後に、これを空気、還元ガス等を用いて焼成することにより再生し、再利用することができる。その焼成温度としては、200℃〜800℃で実施できる。焼成の時間としては、その形状を保持できる条件であれば特に限定されないが、通常5分〜50時間程度で充分である。
【0024】
【実施例】
以下、実施例について本発明を更に詳細に説明する。しかし、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0025】
水銀除去率
ガス中の水銀の濃度の測定は、肥料分析法(1982年版)に基づいて、加熱分解−金アマルガム−冷原子吸光法により測定した。水銀除去率(Xn、nは処理番号で1以上の整数であり、以下に示す実施例1〜5に対応する)の計算は、水銀除去処理するガス中の水銀濃度(Hg−0とする)と処理されたガス中の水銀濃度(Hg−nとする、nは処理番号)とから、Xn(%)=(1−(Hg−n)/(Hg−0))×100により計算される。
【0026】
実施例1
0.72mmol/Lの硝酸銀水溶液20Lに、Na−A型ゼオライト(東ソー株式会社製)2Kgを投入後、室温で16時間撹拌し、銀イオン交換を行なった。次いで、洗浄、乾燥し、銀の含有量が0.1重量%の銀含有ゼオライトを得た。この銀含有ゼオライト100重量部に対し、アタパルガイト25重量部を用いて、3mmφのペレットに成形し、650℃で4時間焼成し、水銀吸着除去剤1を得た。
【0027】
実施例2
14mmol/Lの硝酸銀水溶液20Lに、K−A型ゼオライト(東ソー株式会社製)2Kgを投入後、室温で16時間撹拌し、銀イオン交換を行なった。次いで、洗浄、乾燥し、銀の含有量が2重量%の銀含有ゼオライトを得た。この銀含有ゼオライト100重量部に対し、アタパルガイト25重量部を用いて、3mmφのペレットに成形し、650℃で4時間焼成し、水銀吸着除去剤2を得た。
【0028】
実施例3
1.4mmol/Lの硝酸銀水溶液20Lに、Ca−A型ゼオライト(東ソー株式会社製)2Kgを投入後、室温で16時間撹拌し、銀イオン交換を行なった。次いで、洗浄、乾燥し、銀の含有量が0.2重量%の銀含有ゼオライトを得た。この銀含有ゼオライト100重量部に対し、アタパルガイト25重量部を用いて、3mmφのペレットに成形し、650℃で4時間焼成し、水銀吸着除去剤3を得た。
【0029】
実施例4
1.4mmol/Lの硝酸銀水溶液20Lに、Na−X型ゼオライト(東ソー株式会社製)2Kgを投入後、室温で16時間撹拌し、銀イオン交換を行なった。次いで、洗浄、乾燥し、銀の含有量が0.2重量%の銀含有ゼオライトを得た。この銀含有ゼオライト100重量部に対し、アタパルガイト25重量部を用いて、3mmφのペレットに成形し、650℃で4時間焼成し、水銀吸着除去剤4を得た。
【0030】
実施例5
Na−A型ゼオライト(東ソー株式会社製)100重量部に対し、アタパルガイト25重量部と成形体中の銀の含有量が0.2重量%になるように硝酸銀水溶液を添加して、混練、成形し、3mmφのペレットを得た。次いで650℃で4時間焼成し、水銀吸着除去剤5を得た。
【0031】
実施例6
実施例1〜5で得られた水銀吸着除去剤1〜5を用いて水銀除去試験を行なった。水銀吸着除去剤360ccをカラム(内径:30mm、高さ:50cm)に充填し、表1に示す組成のゴミ焼却排ガスを模擬したガスを、25℃にて、線速0.15m/sで流した。3時間処理後の水銀除去率を表2に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【発明の効果】
本発明の水銀除去方法によれば、酸素を含有する燃焼排ガスから水銀を効率良く除去することができ、また、その繰り返し使用できることも明らかである。
Claims (1)
- 水銀及び酸素を含有する燃焼排ガスを、銀水溶液を添加し、撹拌、洗浄、乾燥後焼成して得られた銀を含有するゼオライトに接触させることを特徴とする燃焼排ガス中の水銀除去方法。
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