JP3984415B2 - 射出成形機の温度制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、温度検出値が予め設定した温度目標値になるように、温度に対するフィードバック制御を行う射出成形機の温度制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
射出成形機に備える射出装置の加熱筒及び射出ノズルは、外周部に装着したヒータにより数百〔℃〕程度に加熱されるとともに、各加熱ゾーン毎に最適な温度(温度分布)になるように温度制御される。
【0003】
従来、このような加熱筒及び射出ノズルに対する温度制御方法としては、特開平6−55601号公報で開示される温度制御方法が知られている。同公報で開示される温度制御方法は、熱電対及びこの熱電対を接続したサーモ制御部からなるサーモスタットを用いることにより、加熱筒及び射出ノズルの温度検出を行うとともに、予め設定した目標温度になるように、温度に対するフィードバック制御を行う。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述した射出装置に備える加熱筒は、内蔵するスクリュの回転により成形材料を可塑化溶融するため、材料剪断等による発熱を生ずるとともに、溶融樹脂の射出充填後は成形品に対する冷却を行うため、金型により熱が奪われるなど、一成形サイクル中における温度の変動が激しい。一方、加熱筒は、外周部に装着したヒータにより加熱するとともに、温度検出部位は、加熱筒の比較的内側に設けるため、フィードバック制御時の制御応答性が低くなる。
【0005】
したがって、リアルタイムで検出される温度検出値により温度制御を行う従来の温度制御方法では、温度変動が激しく、しかも制御応答性の低い加熱筒に対しては、高精度で安定した温度制御を行うことができないとともに、高度の成形品質を得ることができない問題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の技術に存在する課題を解決したものであり、高精度で安定した温度制御を行うことができるとともに、高度の成形品質を得ることができる射出成形機の温度制御方法の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び実施の形態】
本発明に係る射出成形機の温度制御方法は、被温度制御部2の温度Tを検出し、検出した温度検出値が予め設定した温度目標値Tsになるように、温度Tに対するフィードバック制御を行うに際し、所定のサンプリング周期tsにより温度Tを順次計測することにより温度計測値Tm…を得、かつ温度計測値Tm…を得る毎に過去の所定期間Z内における温度計測値Tm…を平均した温度検出値Tdを算出するとともに、温度制御処理を実行する際に、サンプリング周期tsよりも長く設定した制御周期tcにより、温度検出値Tdを用いてフィードバック制御を行うようにしたことを特徴とする。
【0008】
この場合、好適な実施の態様により、被温度制御部2としては、射出装置Miに備える加熱筒11に適用できるとともに、所定期間Zとしては、一成形サイクルに対応する期間Zを適用できる。
【0009】
これにより、一成形サイクル期間中における温度変動が大きく、しかも制御応答性の低い加熱筒11等に対する温度制御を行う場合であっても、所定期間(一成形サイクルに対応する期間)Z内における温度計測値Tm…を平均した温度検出値Tdを用いてフィードバック制御を行うため、高精度で安定した温度制御が可能となる。
【0010】
【実施例】
次に、本発明に係る好適な実施例を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0011】
まず、本実施例に係る温度制御方法を実施できる射出成形機の要部構成について、図3を参照して説明する。
【0012】
同図中、Miは射出成形機に備える射出装置を示す。射出装置Miは、加熱筒11を備え、この加熱筒11の前端には加熱筒11内で可塑化溶融された樹脂を、不図示の金型内に射出充填する射出ノズル12を有するとともに、後部には加熱筒11内に成形材料を供給するホッパー13を備える。この場合、加熱筒11は、本実施例に係る温度制御方法を実施するための被温度制御部2となる。また、加熱筒11の内部にはスクリュ14を内蔵する。このスクリュ14は後側に配したスクリュ駆動機構部15により回転又は進退移動せしめられる。
【0013】
一方、加熱筒11及び射出ノズル12には、加熱装置20を付設する。加熱装置20は、射出ノズル12の外周部に装着したノズルヒータ21及び加熱筒11の外周部に装着した前部ヒータ22,中間部ヒータ23及び後部ヒータ24を備えるとともに、各ヒータ21,22…をオン−オフ制御するヒータ制御部25を備える。また、ヒータ制御部25はコントローラ26に接続するとともに、ヒータ制御部25には、各ヒータ21〜24により加熱される加熱部位の温度を検出する温度センサ27,28,29,30を接続する。
【0014】
次に、本実施例に係る温度制御方法について、図2及び図3を参照しつつ図1に示すフローチャートに従って説明する。
【0015】
まず、ヒータ制御部25(又はコントローラ26)には、予め、サンプリング周期tsと制御周期tcを設定する。サンプリング周期tsは、例えば0.5〔sec〕に、制御周期tcは、例えば3〔sec〕にそれぞれ設定できる。なお、実施例は、温度センサ29及び中間部ヒータ23により温度制御する場合を説明するが、他の各温度センサ27…及び各ヒータ21…により温度制御する場合も同様に実施できる。
【0016】
温度制御時には、基本的な処理としてヒータ制御部25に内蔵するタイマにより計時処理が行われる(ステップS1)。そして、タイマの計時によりサンプリング時間に到達すれば、ヒータ制御部25は温度計測処理を行う(ステップS2,S3)。具体的には、前回の温度計測から0.5〔sec〕経過した時点で、温度センサ29から得られるアナログ検出信号をサンプリングする。なお、このアナログ検出信号は、加熱筒11の中間部における温度Tに対応する。図2(a)に温度Tの波形及び温度目標値Tsを示す。一方、サンプリングされたアナログ信号は、デジタル信号(デジタルデータ)に変換し、温度計測値Tmとして一次保存する(ステップS4)。このような温度計測値Tmは、一定のサンプリング周期ts毎に順次得られるため、得られた温度計測値Tm…は一次保存する。図2(b)はサンプリング周期ts…を示す。
【0017】
また、ヒータ制御部25は、得られた温度計測値Tm…から過去の所定期間Z内、即ち、一成形サイクルに対応する期間Z内における温度計測値Tm…を平均することにより温度検出値Tdを求める。具体的には、任意の時刻knで得られた温度計測値Tmに対し、この時刻knから過去に溯った一成形サイクルに対応する期間Z内、具体的には、時刻knから時刻kaまでの全ての温度計測値Tm…(実施例は二十データ)を加算するとともに、データ数により除した平均値を算出する。これにより、一成形サイクルに対応する期間Z内における温度計測値Tm…を平均した温度検出値Tdが得られる(ステップS5)。図2(c)に、一成形サイクルに対応する期間Zを示す。温度検出値Tdの算出処理は、得られる温度計測値Tm…毎に行うとともに、実際の温度制御とは関係なく独立して行われる。
【0018】
一方、温度制御は、予め設定した制御周期tc…毎に行われる。図2(d)に制御周期tc…を示す。今、前回の制御処理から3〔sec〕経過し、次の制御実行時間、例えば、図2に示す時刻knに到達したものとする(ステップS6)。これにより、ヒータ制御部25は、上述した時刻knで得た温度検出値Tdを用いて、温度Tに対するフィードバック制御を行う。具体的には、温度検出値Tdと温度目標値Tsを比較し、温度検出値Tdが温度目標値Tsよりも小さい場合には、中間部ヒータ23をオンにし、温度検出値Tdが温度目標値Tsよりも大きい場合には、中間部ヒータ23をオフにするフィードバック制御を行う(ステップS7)。そして、このような制御処理は、制御周期tc…毎に同様に行われる。
【0019】
このように、本実施例に係る温度制御方法によれば、一成形サイクル期間中における温度変動が大きく、しかも制御応答性の低い加熱筒11に対する温度制御を行う場合であっても、一成形サイクルに相当する期間Z内における温度計測値Tm…を平均した温度検出値Tdを用いてフィードバック制御を行うため、高精度で安定した温度制御を行うことができるとともに、高度の成形品質を得ることができる。
【0020】
以上、実施例について詳細に説明したが、本発明はこのような実施例に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数値,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で任意に変更,追加,削除することができる。
【0021】
例えば、被温度制御部2として、射出装置Miに備える加熱筒11を例示したが、射出ノズル12をはじめ、金型等の他の被温度制御部にも同様に適用できる。また、所定期間Zとして、一成形サイクルに対応する期間Zを例示したが、二成形サイクル,一般的にはn成形サイクル等の期間を排除するものではない。他方、加熱装置20は、各ヒータ21…に対してオン−オフ制御する場合を示したが、温度検出値Tdと温度目標値Tsの偏差を求め、この偏差の大きさに基づいて各ヒータ21…に対する供給電力量を連続可変制御してもよい。
【0022】
【発明の効果】
このように、本発明に係る射出成形機の温度制御方法は、所定のサンプリング周期により温度を順次計測することにより温度計測値を得、かつ温度計測値を得る毎に過去の所定期間内における温度計測値を平均した温度検出値を算出するとともに、温度制御処理を実行する際に、サンプリング周期よりも長く設定した制御周期により、温度検出値を用いてフィードバック制御を行うようにしたため、高精度で安定した温度制御を行うことができるとともに、高度の成形品質を得ることができるという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好適な実施例に係る射出成形機の温度制御方法の処理手順を示すフローチャート、
【図2】同温度制御方法の処理タイミングを示すタイミングチャート、
【図3】同温度制御方法を実施する射出成形機の要部構成図、
【符号の説明】
2 被温度制御部
11 加熱筒
ts サンプリング周期
tc 制御周期
T 温度
Ts 温度目標値
Z 所定期間
Mi 射出装置
Claims (3)
- 被温度制御部の温度を検出し、検出した温度検出値が予め設定した温度目標値になるように、温度に対するフィードバック制御を行う射出成形機の温度制御方法において、所定のサンプリング周期により前記温度を順次計測することにより温度計測値を得、かつ前記温度計測値を得る毎に過去の所定期間内における温度計測値を平均した温度検出値を算出するとともに、温度制御処理を実行する際に、前記サンプリング周期よりも長く設定した制御周期により、前記温度検出値を用いて前記フィードバック制御を行うことを特徴とする射出成形機の温度制御方法。
- 前記被温度制御部は、射出装置に備える加熱筒であることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の温度制御方法。
- 前記所定期間は、一成形サイクルに対応する期間であることを特徴とする請求項1記載の射出成形機の温度制御方法。
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