JP3982264B2 - 乗客コンベア - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エスカレーターや電動道路等の乗客コンベアに係り、特に、狭域の場所に設置されるのに好適な乗客コンベアに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、乗客コンベアの幅寸法を狭くするために、踏段を駆動する駆動軸周囲に電動機を設置して駆動軸を直接駆動する構成(例えば特開昭56−108683号公報)や、踏段の往復通路間において、踏段チェーンを直接駆動する構成(例えば特開昭55−40185号公報)などが既に提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の技術は、踏段や踏段チェーンを直接電動機で駆動することで、動力伝達用の余分な駆動チェーンや駆動スプロケットを省略できる分、幅寸法を狭くできる利点がある。
【0004】
しかし、上記構成は、さらなる幅寸法の低減が要求された場合についての配慮がなされておらず、それ以上の幅方向の低減は事実上困難であった。
【0005】
本発明の目的は、十分なる幅寸法の低減を行い得る乗客コンベアを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、踏段等の構成部品を支持する主枠を構成する左右の側枠の縦部材を、側枠の幅寸法以下の高さ寸法を有する2つの脚辺を備えた断面U字状部材で構成すると共に、前記両脚辺の自由端を前記踏段の幅方向端側に向けて配置したのである。
【0007】
一般に、乗客コンベアの主枠の側枠を構成する縦部材は、L型鋼が用いられており、強度確保のためにL型鋼の長辺を踏段の幅方向に沿わせて配置させている。このため、踏段の幅方向端部を縦部材に接近させて幅狭化を図ろうとすると、縦部材のL型長辺を短くしなければならない。そこで、L型鋼の短辺を踏段の幅方向に沿わせて配置すると、縦部材としての強度が低下して撓みやすくなり、乗客コンベアの構成部品を主枠によって強固に支持できなくなる問題があり、これが乗客コンベアの幅狭化を妨げていた。
【0008】
しかし、本願発明は、上述のように、主枠の側枠を構成する縦部材を、側枠の幅寸法以下の高さ寸法を有する2つの脚辺を備えた断面U字状部材で構成し、この2つの脚辺によってL型鋼の長辺が有していた強度を確保するようにしたので、側枠としての強度を低下させることなく、側枠の幅方向に沿う高さ寸法を減らすことができる縦部材が得られるのである。その結果、踏段の幅方向の端部を側枠の縦部材に接近させることができ、踏段を縦部材に接近させた分、乗客コンベアとしての幅寸法を低減し得るのである。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下本発明による一実施の形態を、図1〜図4に示すエスカレーターについて説明する。
【0010】
一般にエスカレーター1は、建築物の上階2と下階3に跨って設置された主枠4をベースに構成されている。主枠4は、図2,図3に示すように、左右一対の側枠5A,5Bと、これら左右の側枠5A,5Bを連結する底板6や横桁7から構成され、さらに前記側枠5A,5Bは、エスカレーターの長手方向に延在する上弦材8及び下弦材9と、これら上弦材8と下弦材9との間を連結する縦部材10とから構成されている。
【0011】
上記構成の主枠4の上階2側には、上部機械室となる上部水平部11が形成され、下階3側には、下部機械室となる下部水平部12が形成され、これら上部水平部11と下部水平部12とは傾斜部13よって連結されている。そして、一般的に、上部水平部11と下部水平部12の上部は、乗客が乗り降りするための床である乗降床11F,12Fによって夫々塞がれている。
【0012】
このように構成された主枠4の上部水平部11と下部水平部12の乗降床11F,12Fの下方、いい代えれば上部機械室と下部機械室内には、夫々一対の主スプロケット14と従スプロケット15とが軸支されている。一対の主スプロケット14は、駆動軸16に固定され、この駆動軸16は端部を軸受17によって回転自在に保持されている。この軸受17は前記側枠5A,5Bの縦部材10に固定され、その鉛直投影は側枠5A,5Bの幅寸法h(図3)内にある。
【0013】
前記主スプロケット14と従スプロケット15に跨って無端状の踏段チェーン18が巻掛けられており、この踏段チェーン18に複数の踏段19が連結されている。これら踏段19は、前記主枠4内に敷設されたガイドレール20,21上を走行する前輪22と後輪23を備えている。そして、前輪22を軸支する前輪軸24を前記踏段19の幅方向両端から突出させ、この前輪軸24を踏段チェーン18に連結することで、踏段チェーン18に踏段19を連結しているのである。
【0014】
また、前記側枠5A,5Bには、前記踏段19の移動方向に沿って欄干25が夫々立設されており、この欄干25の周縁には無端状の移動手摺26が案内されている。この移動手摺26は、欄干25の下部に設置された手摺駆動装置27によって駆動される。この手摺駆動装置27は、前記駆動軸16の両主スプロケット14の反踏段19側に夫々取付けた手摺駆動スプロケット28に巻掛けた手摺駆動チェーン(図示せず)を介して動力を導いている。ここで、前記手摺駆動スプロケット28は、前記主スプロケット14の外周から反踏段19側に突出する前輪22と干渉しないように、前記主スプロケット14の半径よりも小径をなしている(図3)。
【0015】
一方、前記駆動軸16の一端部側には、前記手摺駆動スプロケット28よりも反踏段19側に歯部を有する駆動スプロケット29が固定されている。この駆動スプロケット29は皿状に形成され、駆動スプロケット29の駆動軸16への固定部は前記主スプロケット14側寄りにあり、外周に形成された歯部は、前記主枠4の側枠5Aの幅寸法h内に臨ませて平面から見て駆動スプロケット29の歯部と側枠5Aとが重なるように、いい代えれば、駆動スプロケット29の歯部と側枠5Aとは、互いの鉛直投影が重なるように、配置されている。このため、駆動スプロケット29の歯部と前記軸受17と前記主枠4の側枠5Aの3者も、互いの鉛直投影が互いに重なり、前記側枠5Aの幅寸法h内に位置することになる。
【0016】
そして、前記駆動スプロケット29の歯部には動力伝達チェーン30が巻掛けられている。この動力伝達チェーン30は、また、前記踏段19が往復循環する通路の外側となる上部機械室(上部水平部11)内に設置された駆動機械装置31のスプロケット32に巻掛けられている。前記駆動機械装置31は、電動機と減速機と制動機等からなるが、減速機は必ずしも必要とするものではない。
【0017】
上記のように構成したので、本来なら駆動スプロケット29の歯部が軸受17と手摺駆動スプロケット28との間に位置していたことにより必要としていたスペース及び主枠4や欄干25の設置バランスを考慮して反駆動スプロケット29側にも必要としていた同等のスペースを不要とすることができ、その結果、主枠4の全幅Wfを縮小することができ、エスカレーター1の設置幅寸法Woを狭めることができるのである(図2)。加えて、踏段19の前輪22と前記移動手摺26の帰路側26Rの鉛直投影を重ね、かつ前輪22と前記駆動スプロケット29の皿状部の鉛直投影を重ねることによって、従来、主スプロケット14と駆動スプロケット29との間に必要としていた前輪用のスペースを不要とすることができるので、さらに駆動軸16の軸方向長さを縮めることができる。
【0018】
この外、上記エスカレーター1は、さらなる幅方向の短縮を図るために、移動手摺26が循環移動する位置、特に、移動手摺26の帰路側26Rの位置を、主枠4の側枠5A,5Bに対して接近させている。このように、移動手摺26の循環移動する位置を、主枠4の側枠5A,5Bに対して接近させることにより、移動手摺26の帰路側26Rは、従来よりも側枠5A,5B側に接近し、帰路側26Rが側枠5A,5B側に接近した分、踏段19の幅方向端も側枠5A,5B側に接近させることができ、その結果、主枠4の全幅Wfを縮小し、エスカレーター1の設置幅寸法Woを狭めることができるのである。
【0019】
さらに、従来において側枠を構成する縦部材は、強度的にL型鋼の長辺を主枠4の幅方向に沿わせて用いているが、このL型鋼の長辺のために、移動手摺26の帰路側26Rの位置を、主枠4の側枠に対して接近させるには限度があった。
【0020】
そこで本発明による実施の形態においては、縦部材10としてL型鋼の代わりに、底辺10Bとその両端にL字状に連続する2つの脚辺10L1,10L2を備えた断面U字状部材を用い、そして、2つの脚辺10L1,10L2の自由端側、いい代えればU字状の開口側が踏段19の幅方向端側を向くように、この断面U字状部材を上弦材8と下弦材9に連結したのである。しかも、この断面U字状部材(縦部材10)は、図4に示すように、底辺10Bの幅寸法Wに対して両脚辺10L1,10L2の高さ寸法H1,H2が短く形成され、さらに、この高さ寸法H1,H2は前記側枠5A,5Bの幅寸法h以下となるように形成されている。このように、縦部材10を、L型鋼の代わりに、2つの短い脚辺10L1,10L2を備えた断面U字状部材とすることにより、L型鋼と同等の強度を確保することができると共に、高さ寸法H1,H2が短い両脚辺10L1,10L2によって、前記移動手摺26の帰路側26Rを、さらに側枠5A,5B側に接近させることができ、結果的に、エスカレーター1の設置幅寸法Woを狭めることができるのである。
【0021】
尚、前記断面U字状部材(縦部材10)の脚辺10L1の高さ寸法H1は、脚辺10L2の高さ寸法H2よりも大きく形成されている。それは、この脚辺10L1に、踏段19の前輪22や後輪23を案内するガイドレール20,21を支持するレールブラケット33や前記横桁7等の強度を有する部材を連結するためである。反対に、高さ寸法が小さい脚辺10L2側には、強度負担が小さい、例えば、前記移動手摺26の帰路側26Rを支持する支持ローラ34を、ブラケット35を介して固定している。
【0022】
ところで、エスカレーター1の設置幅寸法Woをさらに狭めるには、前記移動手摺26の帰路側26Rと側枠5A,5Bとの鉛直投影が互いに重なるように配置すればよい。しかし、移動手摺26の帰路側26Rと側枠5A,5Bとの鉛直投影が互いに重なるようにすると、移動手摺26の帰路側26Rが前記断面U字状部材(縦部材10)の高さ寸法H1の脚辺10L1と接触する問題が生じる。これを避けるために、本実施の形態においては、脚辺10L1に凹部状の切欠き部10Gを形成して移動手摺26の帰路側26Rとの接触を回避している。この切欠き部10Gの大きさは、移動手摺26の断面形状とその周囲に安全距離を含む大きさの移動通路空間を確保できる大きさである。
【0023】
このように、脚辺10L1,10L2の最大高さ寸法H1,H2を、従来のL型鋼に比べて小さくして前記側枠5A,5Bの幅寸法h以下に収め、さらにその脚辺10L1に切欠き部10Gを設けて移動手摺26の帰路側26Rと側枠5A,5Bとの鉛直投影が互いに重なるようにしたので、主枠4としての強度を損なうことなく、踏段19の幅方向端を最大限に側枠5A,5Bに接近させることができ、エスカレーター1として大幅に幅方向寸法を低減させることができるのである。
【0024】
以上のように、上記実施の形態においては、移動手摺26の帰路側26Rと側枠5A,5Bとの鉛直投影を互いに重ね(図2)、移動手摺26の帰路側26Rと前輪22との鉛直投影も互いに重ね(図2)、さらに、駆動スプロケット29の歯部と側枠5A,5Bと駆動軸16の軸受17の鉛直投影も互いに重ねる(図3)ことによって、エスカレーター1の幅方向寸法の低減を図ったのである。しかし、エスカレーター1の設置条件によっては、これら鉛直投影が全て重ならなくてもよいのは勿論である。
【0025】
尚、上記切欠き部10Gの高さ寸法H3は、強度的に脚辺10L2の高さ寸法H2と同等にしている。このような前記断面U字状部材(縦部材10)の各部の寸法関係を示すと、W>H1>H2≒H3のようになる。因みに、W=70mm、H1=50mm、H2=30mm、H3=30mmであり、W<H1+H2となる。また、側枠5A,5Bの幅寸法hとの関係は、W>h≧H1>H2≒H3となる。
【0026】
上記実施の形態は、乗客コンベアとしてエスカレーターを説明したが、本発明はエスカレーターに限らず、踏板間に段差が生じない電動道路にも適用することができる。この場合、各請求項の踏段を踏板と読替えることが必要である。
【0027】
さらに、本発明による乗客コンベアは、狭域の場所の一例として駅舎の既設階段に設置する場合に有効であるが、駅舎用既設階段に限らず、一般の建築物及び平坦通路に省スペース乗客コンベアとして使用することができる。
【0028】
また、上記実施の形態は、踏段循環路の外側となる上部機械室内に駆動機械装置を設置した例を説明したが、踏段を駆動する駆動軸周囲に電動機を設置して駆動軸を直接駆動する構成や、踏段の往復通路間において踏段チェーンを直接駆動する構成等、踏段循環路内に駆動機械装置を設置した乗客コンベアに適用すれば、さらなる幅方向の低減が可能である。
【0029】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、十分なる幅寸法の低減を行い得る乗客コンベアを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による一実施の形態のエスカレーターを示す概略側面図。
【図2】図1のII−II線に沿う縦断拡大図。
【図3】図1のIII−III線に沿う主枠内部を示す縦断拡大図。
【図4】図2に示す側枠の縦部材を中心とした拡大斜視図。
【符号の説明】
1…エスカレーター、4…主枠、5A,5B…側枠、10…縦部材、10B…底辺、10L1,10L2…脚辺、14…主スプロケット、16…駆動軸、17…軸受、18…踏段チェーン、19…踏段、22…前輪、25…欄干、26…移動手摺、26R…移動手摺26の帰路側、29…駆動スプロケット、31…駆動機械装置。
Claims (1)
- 無端状に連結された複数の踏段と、これら踏段の移動方向両側に沿って立設された欄干と、この欄干の周縁に案内され前記踏段と同期して移動する移動手摺と、これらを支持し左右に側枠を有する主枠とを備えた乗客コンベアにおいて、前記側枠は、上弦材、下弦材及びこれらを連結する縦部材を有し、この縦部材を、前記側枠の幅寸法以下の高さ寸法を有する2つの脚辺を備えた断面U字状部材で構成すると共に、前記両脚辺の自由端を前記踏段の幅方向端側に向けて配置し、かつ、前記移動手摺の帰路側と前記側枠との鉛直投影が互いに重なるように配置し、前記断面U字状部材に、前記移動手摺の移動通路空間を確保する切欠き部を設けたことを特徴とする乗客コンベア。
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