JP3981424B2 - ハロゲン化エチレンの分解処理方法 - Google Patents

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Description

【0001】
(産業上の利用分野)
本発明はハロゲン化エチレンの分解処理方法に関する。
【0002】
【従来の技術および発明の解決すべき課題】
塩素系有機化合物であるトリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等のハロゲン化エチレンは不燃性の液体であり、物質を溶解する溶解速度が大きいことから脱脂剤および洗浄剤として重用され広く利用されてきた。しかしながらこれら脱脂剤等は環境汚染の見地から公害対策基本法における規制対象物となっており、現在これらの代替となる実用的な技術は確立されていない。
【0003】
一方、使用済のトリクロロエチレン等のハロゲン化エチレンについての回収、除去方法が従来から種々提案されており、たとえば、活性炭等による吸着/回収法、紫外線照射による分解法、オゾン分解法あるいは特定の酸化剤による酸化分解法等が提案されてている(特開昭63−190620号公報、特開平229593等)。
【0004】
しかし前記処理方法は、たとえば吸着媒体の二次処理を必要とし、分解効率が不十分であり、処理操作が複雑でありまたは処理コストが嵩んだりする等の点で必ずしも実用化には適してはいない。
【0005】
本発明者らはトリクロロエチレン等のハロゲン化エチレンが所定の電解条件におかれた際に極めて効率的に分解されることを図らずも発見し、この知見に基いて本発明を完成するに到った。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の方法によれば隔膜によって陽極側と陰極側とに区画される電解槽中に硝酸カリウムを含む水溶液を電解液として用い前記電解槽の酸性を呈する陽極側および/またはアルカリ性を呈する陰極側にトリクロロエチレンまたはその水溶液を導入し、電解電圧の印加下において電解を行うことを特徴とするトリクロロエチレンの分解処理方法により、トリクロロエチレンが効果的に分解処理される。
【0007】
【発明の実施態様】
本発明においては、隔膜によって陽極側と陰極側とに区画された電解槽において電子キャリヤ性の電解質、たとえばKNO3 を含む水溶液を電解液として用いる。槽の具体的な構成は、たとえば電解槽中に円筒状の素焼磁性隔膜(以下素焼き円筒)等を設置することによって簡単に得られる。
【0008】
前記電解槽中の素焼円筒の内部を陽極、外部を陰極として所定の電圧を印加すると、電解電流が流れ、KNO3 を含む電解液の電解により陽極側がpH約0.8の硝酸の強酸性に陰極側がpH約13.2の水酸化カリウムの強アルカリ性となる。かゝる電解槽に対してその陽極側、陰極側又はその双方の側にハロゲン化エチレン、たとえばトリクロロエチレンを導入すると、トリクロロエチレンが次亜塩素酸、塩素ガスおよび有機・無機の炭素化合物に分解される。
【0009】
一定時間毎に陰極側および陽極側の溶液を採取してトリクロロエチレン濃度を測定すると、トリクロロエチレンは通電時間の経過と共に減少し分解の進行が確認される。電解初期には陽極室中に次亜塩素酸が認められ、また電解終了後の陽極側および陰極側には塩素イオンおよび無機炭素等が認められトリクロルエチレンはほとんど残留していなかった。
【0010】
前記電解処理工程において電解槽に導入されたトリクロロエチレンは陽極側および陰極側において次のような反応によって分解されるものと考えられる。
【0011】
陽極側ではトリクロルエチレンの塩素が発生する活性酸素で酸化され塩素ガスあるいは塩素イオンとして存在しこれらがさらに水と反応する。
【0012】
Cl2 C=CClH + nO2 = Cl2 +Cl- +CO2 +CO3 2-
Cl2 + H2 O = HClO + H+
Cl- + 2H2 O = 2HClO + 2H+
【0013】
陰極側ではトリクロルエチレンの塩素が発生する活性水素によって置換されて塩素ガスあるいは塩素イオン等となりこれらがさらに水と反応して次亜塩素酸イオンとなる。
【0014】
Cl2 C=CClH + nH2 = 2CH4 + Cl2 + Cl-
Cl- + 2OH- = ClO- + H2
【0015】
電解質硝酸カリウム
電解液としての硝酸カリウム溶液は電解操作後も何等変化を示さず、添加時の濃度を維持する。電解開始から時間と共に陽極としての素焼き円筒内部の液容が増加する。これは陽極に対する外部からの硝酸イオンの移動に水が随伴するためであると考えられる。
【0016】
トリクロロエチレンの濃度は時間と共に低下するが、その分解速度は電解電圧の増加にともなって増大する。したがってこの場合の印加電圧は目的とする処理量や処理時間にしたがって適宜に設定される。
【0017】
尚本発明をトリクロロエチレンの分解について説明したが、本発明の方法は分子量が比較的小さく、二重結合を有するたとえばテトラクロロエチレン等の他のハロゲン化エチレンについても同様に適用することができる。また電解操作の電解液として用いる電子キャリヤ性の電解質としては、前記硝酸カリウムの他、硫酸カリウム、硝酸ナトリウム、硫酸ナトリウム等の強電解質も同様に用いられる。また隔膜としては前記素焼き円筒の他、中性、アニオンもしくはカチオンのイオン交換樹脂繊維が用いられる。
【0018】
【実施例】
以下本発明の方法を図面に基づいて説明する。図1は本発明のハロゲン化エチレンの分解処理方法を示す概念図である。
【0019】
実施例 1
2000cm3 容積のガラスビーカ(1)の内部に250cm3 容積の素焼円筒(2)を配置し、素焼円筒(2)の内部に白金(Pt)電極(3)、外部にスティンレス鋼(SUS)電極(4)を夫々設けた。この電解槽に電解液(5)として硝酸カリウムの0.05モル水溶液1750cm3 を充填し、陽極室としての素焼円筒(2)の内部にトリクロロエチレンの水溶液(0.98g/リットル)200cm3 を導入し、初期電圧1.5Vおよび電流2.1Aで電解操作を行った。2時間後のトリクロルエチレン濃度は排水基準値の0.03mg/リットルに対して0.01mg/リットルに低下していた。
【0020】
実施例 2
実施例1と同様な構成の電解槽(1)に対して、トリクロロエチレン10gを素焼き円筒(2)に導入し、初期電圧18Vおよび電流5.8Aで電解操作を行った。電解開始後10時間後のトリクロロエチレン濃度は排水基準値の0.03mg/リットルに対して0.02mg/リットルに低下していた。
【0021】
全く同様な条件でトリクロロエチレン2gを導入して電解操作を行ったところ、10時間後のトリクロロエチレンの濃度は0.01mg以下となった。
【0022】
【発明の効果】
本発明によれば、トリクロロエチレンまたはその水溶液を電子キャリヤ性の強電解質の水溶液を電解液として用いる隔膜電解法により極めて容易にかつ著しく高い処理効率によって分解することができる。
【0023】
この方法に用いる装置としては素焼き円筒等の隔膜を設置した電解槽を用いるだけの簡単な構造でよく、また処理量や処理時間によって電解電圧を設定して連続もしくはバッチ方式により簡単な操作で処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分解処理方法に用いる装置を示す概念図である。
【符号の説明】
1…電解槽(陰極側)
2…素焼円筒(陽極側)
3…白金電極(陽極)
4…SUS電極(陰極)
5…電解液

Claims (2)

  1. 隔膜によって陽極側と陰極側とに区画される電解槽中に硝酸カリウムを含む水溶液を電解液として用い前記電解槽の酸性を呈する陽極側および/またはアルカリ性を呈する陰極側にトリクロロエチレンまたはその水溶液を導入し、電解電圧の印加下において電解を行うことを特徴とするトリクロロエチレンの分解処理方法。
  2. 前記隔膜が素焼き磁性隔膜、および中性、アニオンもしくはカチオン型の合成繊維隔膜からなる群より選ばれる請求項1記載のトリクロロエチレンの分解処理方法。
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