JP3981418B2 - 固体電気化学装置用の電極構造体 - Google Patents

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Description

技術分野
本発明は、固体電解質膜と接触している1個以上の電極からなる固体電気化学装置に関する。さらに特に、本発明は、電池のより低い全内部抵抗が、例えば固体酸化物又はセラミック燃料電池装置又は固体酸化物又はセラミック電解質電池のような装置のより良好な性能をもたらす固体電気化学装置に関する。
背景技術
固体電気化学電池は、2個の電極即ち陽極及び陰極、及び電池の陽極及び陰極の部分を隔てる密な固体電解質膜からなる。陽極及び陰極の反応は、それぞれ、陽極/電解質及び陰極/電解質の界面で生ずる。固体の電解質膜は、イオン性種例えば酸素イオン、ナトリウムイオン、フッ素イオン又は水素イオンを伝導できる物質であり、しかも低い電導性を有する。電解質膜は、電気化学的反応物を透過してはならない。
セラミック酸素イオン導体の密な電解質膜、電池の燃料側の電解質膜と接触しているセラミック又は金属又は最も普通にはセラミック−金属複合体の多孔質の陽極層、並びに電池のオキシダント側の電子的に伝導性の金属酸化物の多孔質の陰極層からなる固体の酸化物燃料電池を製造することは周知であり、それは、燃料とオキシダントとの間の電気化学反応により電気を発生する。この全電気化学反応は、イオン的に伝導性の電解質膜、電子的に伝導性の電極及び蒸気相(燃料又は酸素)の間の界面で生ずる電荷移動段階を含む。固体酸化物燃料電池装置の全内部抵抗への、これらの電荷移動段階特に酸素電極で生ずる電荷移動の寄与は、特にもし燃料電池操作温度が比較的低いならば、顕著にできる。固体酸化物燃料電池装置の内部抵抗を低下させることは、その性質の特徴を改良する。
電解質の多孔性層上及びその中に電気触媒(electrocatalyst)物質を有する密な電解質膜上の電解質粒子の多孔性層からなる電極構造体は、周知である。これらの電極では、電気触媒物質は、多孔性電解質物質の表面上で連続して3相境界(TPB)を生成させ、電解質物質、電気触媒及び気体が接触する。電極は、多孔性電解質膜へスラリーとして電気触媒プレカーサ物質を適用し、次にプレカーサ物質を加熱して電気触媒を形成させることにより製造される。しかしながら、所望の性能の特徴を有する燃料電池を得るのに十分な電気触媒を提供するために、多孔性基体へ電気触媒プレカーサ物質を適用する工程を数回繰り返すことが通常必要とされる。燃料電池の適用では、電気触媒のスラリーの適用の繰り返しにより多孔性電解質構造体上及びその中に電気触媒の層を生成するこの方法は、工業的な製法で望ましいのより燃料電池の製造においてより多い工程を生じさせるだろう。さらに、これらの方法により製造される電極構造体の性能の特徴、例えば或る電流密度での電圧は、或る適用について望ましいのより低いだろう。
発明の開示
一つの態様では、本発明は、密な電解質膜と接触している多孔性複合体電極を有する固体電気化学装置用の複合酸素電極/電解質構造体であり、該電極は、
(a)イオン伝導性物質(以下、イオン的に伝導性の物質と称する場合がある)及び電子伝導性物質(以下、「電子的に伝導性の物質と称する場合がある」の相互浸透性網目構造を有する多孔性構造体;及び
(b)多孔性構造体の孔内の分散した電子伝導性物質とは異なる電気触媒からなる複合酸素電極/電解質構造体である。
上記(a)において、多孔性構造体の網目構造は、イオン伝導性物質と電子伝導性物質の均一混合物から形成されていることを意味する。
第二の態様では、本発明は、密な電解質膜と接触している多孔性複合体電極を有する積層の複合酸素電極/電解質構造体を製造する方法であり、それは、
(i)イオン的に伝導性の物質及び電子的に伝導性の物質の粒子からなる混合物をイオン的に伝導性の電解質物質と接触させて、電解質物質の層の少なくとも一面上に混合物の層からなるアセンブリを形成する工程;
(ii)アセンブリを焼結する工程;及び
(iii)電気触媒プレカーサの溶液又は分散物をアセンブリに浸透させる工程からなる。
本発明の電極構造体及び方法が、酸素電極/電解質アセンブリを提供し、それは製造するのに比較的簡単であり、電気触媒プレカーサ物質を浸透する比較的少ない工程を要して、固体酸化物燃料電池で有利に行われ、比較的低い内部抵抗を有し、さらに最適な電子的に伝導性の物質及び電気触媒の選択を可能にするであろう電極構造体を得る。本発明は、また、電気触媒、電気触媒と接触するイオン的に伝導性の物質及び気相の間の有利な三相境界(TPB)の長さを有する電極/電解質構造体を提供する。陰極及び固体酸化物燃料電池の電解質膜として利用されるとき、これらの燃料電池は、700−800℃のような比較的低い操作温度で有利な電力密度を有する。本発明のこれら及び他の利点は、以下の記述から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
図1−5は、それぞれ、実施例1−5に記載された手順により製造且つテストされた陽極/電解質/陰極構造体の性能を示す。
発明を実施するための最良の形態
用語「酸素電極」は、本明細書で使用されるとき、電池の機能に応じて、酸素が還元されるか、又は酸素アニオンが酸化されるかの何れかである電極をいう。本発明の電極/電解質構造体の酸素電極部分は、その孔に分散した電子的に伝導性の物質とは異なる電気触媒を有する、イオン的に伝導性の物質及び電子的に伝導性の物質の多孔性の固体−固体混合物からなる。混合物は、イオン的に伝導性の物質の連続相、及び電子的に伝導性の物質の連続相からなり、それらはそれぞれについて相互に浸透する網目構造を形成する。
本発明の電極/電解質構造は、任意の好適な方法により製造できる。例えば、電子的に伝導性の物質及びイオン的に伝導性の物質の焼結されていない混合物は、焼結される前に焼結された又は焼結されていないイオン的に伝導性の電解質物質からなる層上にデポジットされて、本発明の第二の態様の方法で説明されるように、層の間で十分な接触を確実にする。これらの方法の一つの態様では、イオン的に伝導性の物質及び電子的に伝導性の物質の混合物は、電解質物質の焼結されていない層上にデポジットされ、そして混合物及び電解質層は、同時に焼結される。他の態様では、混合物は電解質の既に焼結された層上にデポジットされ、次に焼結される。
イオン的に伝導性の粒子及び電子的に伝導性の粒子の混合物は、任意の好適な手段、例えばテープ注型法、電解質層上への1種以上の物質のスラリーのペインティング又はシルクスクリーニングにより、又は蒸着技術例えば固体電解質構造体上への直接プラズマスプレーにより、電解質物質の粒子からなる層(以下、「電解質層」とする)に適用できる。焼結されたとき、イオン的に伝導性の物質及び電子的に伝導性の物質は、それぞれイオン的に伝導性の物質又は電子的に伝導性の物質の融解粒子からなる相互に浸透する網目構造を形成する。混合物が電解質層に焼結した後、電気触媒は、任意の好適な技術、例えば電気触媒プレカーサの溶液又は分散物を網目構造に浸透させそして相当する電気触媒を形成するのに十分な条件下で浸透した網目構造を加熱することにより、電子的に伝導性の粒子及びイオン的に伝導性の粒子の多孔性の網目構造中に配合される。
用語「電子的に伝導性の物質」は、本明細書で使用されるとき、装置の操作温度で少なくとも10-1シーメンス/cm(S/cm)の電子伝導度を有する物質を意味する。好ましくは、物質の伝導度は、少なくとも10S/cm、さらに好ましくは少なくとも100S/cmである。この相は、また、電解質層及び複合体電極のイオン的に伝導性の物質と相溶性でなければならない。例えば、処理温度又は操作温度における層又は物質の何れかで反応を顕著に行って、実際の装置で使用しては不十分な伝導度又は電気触媒の性質を有する新しい相を形成してはならない。電子的に伝導性の物質の主要な機能は、外部の回路から電極の活性部位へ又は活性部位から外部回路への何れかの電気(電子)の移動であるが、電子的に伝導性の相はまた顕著なイオン性伝導度を有しそしてまた良好な電気触媒であることができる。
用語「電気触媒」は、本明細書で使用されるとき、実際の装置でのその使用で電極で生ずる1種以上の電気化学反応に十分な触媒活性を有する物質をいう。この物質は、また、装置の操作温度で電解質層、イオン的に伝導性の物質及び電子的に伝導性の物質と相溶性がなければならない。この物質の主要な機能は、電極内の1種以上の電気化学反応を有効に促進することである。
好適な電子的に伝導性の物質及び電気触媒は、金属性又は半伝導性の物質、例えば金属、伝導性金属合金、伝導性金属酸化物、及びこれらの混合物を含む。好適な金属の例は、白金、銀、パラジウム、ロジウム、イリジウム及びルテニウムを含む。好適な伝導性金属合金の例は、伝導性金属酸化物、例えば一般式A1-aA′a1-bB′b3-δ(式中、0≦a≦1;0≦b≦1;−0.2≦δ≦0.5であり、Aは少なくとも1種の希土類カチオン例えばLa、Pr、Nd、Sm又はTbであり、A′は少なくとも1種のドーパントカチオン例えばアルカリ土類カチオンSr又はCaであり、BはMn、Co、Fe、Cr又はNiからの少なくとも1種の遷移元素であり、そしてB′はBとは異なる遷移元素カチオンである)を有する希土類ペロブスカイトを含む。これらの伝導性希土類ペロブカイトは、La1-aSraMnO3-δ(“LSM”)(式中、0≦a≦0.5である)、Pr1-aSraMnO3-δ(“PSM”)(式中、0≦a≦0.6である)、Pr1-aSraCoO3-δ(式中、0≦a≦0.5である)、La1-aSraCo1-bFeb3-δ(式中、0≦a≦0.4であり、0≦b≦0.8である)、La1-aSraCo1-bNib3-δ(式中、0≦a≦0.6であり、0≦b≦0.4である)、そしてLa1-aSraCrO3-δ又はLa1-aCaaCrO3-δ(式中、0≦a≦0.5である)を含む。他の伝導性金属酸化物の例は、0−90%のIn23、10−100%のPrO1.83、0−50%のZrO2の組成比を有するIn23−PrO1.83−ZrO2の混合物から形成される生成物、並びに0−70%のCo34、30−100%のPrO1.83、0−50%のZrO2の組成比を有するCo34−PrO1.83−ZrO2の混合物から形成される生成物を含む。電池操作温度で少なくとも0.1S/cmの伝導度を有する他の伝導性又は半伝導性の物質も有用である。好ましくは、電子的に伝導性の物質は、特に電解質物質がドープされたジルコニアであるとき、PSM又はLSMのような希土類亜マンガン酸塩である。
用語「イオン的に伝導性の物質」は、本明細書で使用されるとき、実際の燃料電池装置におけるその使用に十分なイオン伝導度(概して、装置の操作温度においてσi≧10-3S/cm)を有する物質を意味する。この物質は、また、それが電解質/電極構造体で隣接しているイオン的に伝導性の物質及び電子的に伝導性の物質と相溶性がなければならない。例えば、それは、処理又は操作温度でこれらの物質の何れかと反応を顕著に行って、燃料電池における使用に不十分な伝導度又は電気触媒的性質を有する新しい相を形成してはならない。電極のイオン的に伝導性の物質の主要な機能は、電極が利用される装置が燃料電池か又は電解質電池かに応じて、電極の活性部位から電解質膜へそしてその逆のイオンの有効な移動である。しかしながら、イオン的に伝導性の物質はまた顕著な電子伝導度を有することができ、そしてまた良好な電気触媒になる。
好適なイオン的に伝導性の物質は、ドープされたジルコニア、例えばイットリア安定化ジルコニア(“YSZ”)、イッテルビウム安定化ジルコニア(“YbSZ”)、スカンジウムドープ化ジルコニア、セリア、ガドリニウムドープ化セリア、Gd0.19Pr0.01Ce0.82-y(yはGd及びPrの酸化状態により変化する)、ストロンチウムドープ化BaCeO3、希土類又はアルカリ土類ドープ化LaAGaO3、カルシウムドープ化Gd2Ti27、0−70%のPrCoO3、30−100%のYSZの組成比を有するPrCoO3−YSZの混合物の反応生成物、並びにこれらの混合物を含む。好ましくは、イオン的に伝導性の物質は、ドープ化ジルコニアであり、最も好ましくはYSZである。
電子的に伝導性の物質及びイオン的に伝導性の物質は、焼結後同じ粒子の間で伝導性の網目構造を形成するのに十分な量で使用されるが、好ましくは、多孔性層を製造するのに使用される物質の固体体積に基づいて、それぞれの少なくとも20容量%そして好ましくは何れかの80容量%以下の量で存在する。イオン的に伝導性の物質及び電子的に伝導性の物質の粒子のサイズ、並びに焼結後存在する物質の粒子のサイズ(走査電子顕微鏡により観察できるように)は、好ましくは、0.1−20ミクロンの範囲にある。多孔性の相互に浸透する網目構造を製造するのに使用される混合物は、所望により、一時的な結合剤例えば有機ポリマー、及び/又は一時的な孔形成剤例えば炭素粒子を含むことができ、それらは、焼結温度以下で燃焼して構造体の孔度を増大させるだろう。好適な一時的な結合剤の例は、アクリレート、ポリ(ビニルブチラール)(Butvar(商標)としてMonsantoから入手可能)、ポリビニルアセトン、メチルセルローズ及びスチレン/ブタジエンコポリマーを含む。
用語「電解質膜」は、本明細書で使用されるとき、装置の操作温度で少なくとも10-3S/cmのイオン伝導度(σi)を有しさらに固体電気化学装置において陰極から陽極を隔てる電解質膜としてのその使用において十分に低い電子伝導度(σe)を有するイオン的に伝導性の固体膜をいう。好ましくは、σe/σi≦10-2そしてさらに好ましくはσe/σi≦10-3である。好ましくは、膜の面積抵抗率は、0.1Ωcm2より小さく、それはその厚さをその伝導度σにより除することにより計算できる。電解質膜は、任意の好適な方法、例えば電極一つの上に直接イオン的に伝導性の電解質物質のスラリーをデポジットすることにより、又は電極物質の注型テープにラミネートされるイオン的に伝導性の電解質物質の注型テープを製造することにより製造できる。最も好ましい態様では、イオン的に伝導性の電解質物質は、焼結されていない物質の層の上にデポジットされ、それは、焼結後、本発明の方法により製造される電極に関して電解質膜の反対の面上で電極になるだろう。陰極の陽極面又は陰極面の何れか又はその両者/電解質膜/陽極の構造体は、本発明の電極であるか、又は本発明の方法により製造できる。
アセンブリは、次に、好適な圧力及び温度の条件下で焼結される。焼結条件は、それらがイオン的に伝導性の粒子及び電子的に伝導性の粒子を含むアセンブリ層中の同様な粒子の大多数を融解するのに十分であり、さらにそれらの間にイオン的に伝導性の通路を形成するのに十分なように電解質膜/電極の界面で同様な粒子の大多数を融解するのに十分であるように、選択されねばならない。もしイオン的に伝導性の物質の層が前もって焼結されていないならば、焼結条件は、気体が浸透できる電解質膜を形成するのに十分なようにイオン的に伝導性の物質の密度を高めるように選択しなければならない。焼結温度以下で燃える一時的な孔形成物質は、また、混合物中に配合されて、以下に述べるように電極層の孔度をコントロールできる。最適な孔度を有する構造体を形成するのに必要な焼結条件は、(燃料電池又は電解質電池の性能に関する限り)、実験的に容易に決定できる。
本発明の電極/電解質構造体の製造では、イオン的に伝導性の物質及び電子的に伝導性の物質の混合物が焼結された後、電子的に伝導性の物質及びイオン的に伝導性の物質の混合物から形成される多孔性の構造体又はアセンブリは、次に、電気触媒プレカーサ物質の溶液又は分散物を浸透される。好ましくは、プレカーサ物質の溶液が利用される。溶液プレカーサ又は溶液プレカーサの蒸発の残存物を加熱処理することにより形成できる電気触媒は、電極に溶液プレカーサを浸透させ、次に電極/電解質アセンブリを加熱することにより多孔性の電極構造体に利用できる。好ましくは、電気触媒は、PrCoO3又はPrCoO3/銀、30−100%のPrCoO3及び0−70%のYSZの組成比を有するPrCoO3−YSZの混合物から形成される反応生成物、La(Sr)CoO3又はLa(Sr)Co(Ni)O3である。もしイオン的に伝導性の物質がYSZ又はYbSZであるならば、電気触媒は好ましくはPrCoO3である。もしイオン的に伝導性の物質がセリア又はドープ化セリアであるならば、電気触媒は好ましくはLa(Sr)CoO3、La(Sr)Co(Ni)O3又はLa(Sr)Fe(Co)O3である。
電気触媒の溶液プレカーサは、上記の金属塩、例えば硝酸塩、酢酸塩及びクエン酸塩の水溶液又は非水溶液を含む。さらに、気相のプレカーサからのデポジット又は分解により形成できる任意の電気触媒は、また、電極に前記の気相プレカーサを浸透することにより多孔性の電極構造体内に導入できる。例えば、La1-xSrxMnO3は、それが1−xモル当量の硝酸ランタン、xモル当量の硝酸ストロンチウム、及び1モル当量の硝酸マンガンの混合物を含む溶液を浸透した後に構造体を加熱することにより多孔性の構造体内に形成できる。
多孔性の構造体は、任意の好適な手段、例えば多孔性の構造体中に電気触媒物質の溶液をペイントするか又はシルクスクリーニングすることにより浸透できる。もし所望ならば、電池の集まりが、浸透される前に組み立てられ、そして同時に浸透される。もしプレカーサ物質が使用されるならば、物質を加熱して電気触媒を形成する工程は、好ましくは、燃料電池がその操作温度に加熱されるとき、実施される。電気触媒プレカーサを加熱して電気触媒を形成する工程は、浸透後、又はアセンブリが複数の電池の集まりの製造に使用された後に、アセンブリに実施できる。
複合電極の電子的に伝導性の相及びイオン的に伝導性の相を製造するのに使用される物質は、好ましくは、電解質膜と相溶性であるように選ばれて、電池の性能に顕著に有害な反応は、焼結又は電池操作の条件で生じない。しかし、最適な電子的に伝導性の物質の触媒的性質は、望ましいものではないだろう。電気触媒プレカーサは、多孔性の網目構造の層及び電解質層が焼結された後浸透されるため、それは、プレカーサ物質が加熱されるか又は燃料電池が操作される温度(電極が既に焼結されたであろう温度より概して遥かに低い温度)で網目構造及び電解質層と相溶性であることのみが要する。電子的に伝導性の物質は、好ましくは、化学的反応性及び熱膨脹係数の両者において、焼結及び燃料電池操作温度で電解質膜との電子伝導度、化学的相溶性を有する。
電気触媒を含む複合電極構造体の孔度は、好ましくは、少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも20%であるが、好ましくは50%以下、さらに好ましくは35%以下である。複合構造体の平均孔サイズは、好ましくは、少なくとも0.1ミクロン、さらに好ましくは少なくとも1ミクロンであるが、好ましくは20ミクロン以下、さらに好ましくは10ミクロン以下である。もし構造体が加熱されて電気触媒の正しい形を形成するならば、それは、好ましくは、粒子のきめがさらに粗くならないように、物質及び多孔性層の焼結温度より低い温度で加熱される。焼結された電解質膜の厚さは、好ましくは、少なくとも5μm、さらに好ましくは少なくとも10μmであるが、好ましくは35μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。焼結された複合電極の厚さは、好ましくは、少なくとも5μm、さらに好ましくは少なくとも50μmであるが、好ましくは500μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
本発明の電極を配合する固体酸化物燃料電池は、好ましくは、オキシダントとして空気そして燃料として水素気体を使用して、800℃で操作して少なくとも0.3ワット/cm2のピーク電力密度を有する。
以下の実施例は、本発明を説明するために示され、そして本発明を制限するものと解釈してはならない。他に述べられていない限り、すべての部及び%は重量に基づく。
実 施 例
実施例 1
陽極/電解質/陰極構造体の陽極部分は、NiO(62重量%)/YSZ(38重量%)の混合物2.5gからの直径1.25インチ(3.2cm)のディスクをプレスすることにより形成された。NiO/YSZの混合物は、NiO(Johnson Matthey,Ward Hill,MAから入手)31.0g、YSZ(Tosoh TZ−8Y,Tosoh Ceramics,Boundbrook,NJから入手)19.0g、及びスチレン/ブタジエンラテックス結合剤1.45gをエタノール65mL及び水10mL中で1.5日間ボールミリングすることにより製造された。YSZ(イオン的に伝導性の電解質物質)の薄いコーティングは、ディスクの表面上に無水アルコール中のYSZの分散物7−8滴を置き、そして円を画くやり方でディスクを直ぐに傾けて、ディスクの表面を完全にそしてできる限り均一にカバーするようにすることにより、NiO/YSZディスクの一面に適用された。分散物は、約4分間無水エタノール20mL中のYSZ0.5gの懸濁物を超音波処理することにより製造された。コーティングされたディスクを、ガラスカバー皿下で50分間乾燥させた。コーティングのやり方は、合計4回の適用のためにさらに3回繰り返された(これは概して厚さ約15μmの焼結されたYSZ電解質膜を生ずる)。
YSZ(イオン的に伝導性の物質)、LSM(電子的に伝導性の物質)及びグラファイト(一時的な孔形成物質)の混合物のコーティングを、YSZを既にコーティングしたディスクの表面に適用した。YSZ/LSM/グラファイト混合物は、無水エタノール22mL中で1.8gのYSZ(Tosoh TZ−8Y)、1.4gのLSM(La0.8Sr0.2MnO3、Seattle Specialty Ceramics,Seattle,WA)及び1.5gのグラファイト(325メッシュサイズ、Johnson Mattheyから入手)の懸濁物を4分間超音波処理することにより製造された。約2時間乾燥後、ディスクに点火して一時的な孔形成剤及び結合剤を燃焼させ、そして以下のスケジュールにより構造体を焼結した。1:10(1時間10分)で室温から300℃、5:00で300℃から750℃、1:30で750℃から800℃、2:30で800℃から1200℃、3:00で1200℃から1225℃に加熱、2:00で1225℃から1000℃、2:30で1000℃から500℃に冷却し、次に500℃から室温(RT)に炉で冷却。点火後、ディスクは直径約1.0インチ(2cm)であり、そして僅かにゆがんでいた。ディスクは、1250℃で3時間セッターの錘の下で平らに点火することにより、平らにされた。
冷却後、多孔性のLSM/YSZの層に、多孔性のLSM/YSZ層が十分に溶液を吸収するまでブラッシュで溶液を適用することにより、1M硝酸プラセオジム及び1M硝酸コバルトの水溶液を浸透させた。約1時間室温で乾燥後、ディスクを1時間900℃で燃焼した(電気触媒プレカーサ)。冷却後、Ptインクの第二のコーティングを陽極の面に適用し、陰極層の第二の浸透を行い、このときには1M硝酸プラセオジム、1M硝酸コバルト及び1M硝酸銀を含む水溶液によった。1時間約110℃で乾燥後、Ptインクを陰極の面上にペイントし、そして銀のメッシュを燃料電池の陽極及び陰極の面の両方に付着させて集電装置として機能させた。電池アセンブリを次に875℃で2時間燃焼した。Ptインク及び銀メッシュは、電池テスト装置の集電装置として働いた。
燃料電池の電流−電圧レスポンスは、オキシダント気体として空気そして燃料として含湿水素(約3%の水)を使用して、800℃で測定された。陰極を通る空気の流れは、約500mL/分で維持され、そして陽極を通る燃料の流れは約150mL/分で維持された。図1に示される電流−電圧のデータは、電池が約0.6オーム(V電池=0.795V、I電池=約1.3A)の負荷の下で約22.5時間操作された後、一定の電圧モードでHewlett−Packard DC Electronic Loadにより集めた。2.34cm2の電池の面積(直径0.68インチ(4.3cm)のディスクの面積)を使用して、図1に示される電池の電池密度及び電力密度を計算した。電池の電圧対電流密度のプロットの傾きは、電気の面積抵抗率である(図1からの0.35オーム−cm2)。
実施例 2
陽極/電解質/陰極構造体は、実施例1に記述したように製造されたが、但し電池は12時間800℃に加熱され、そしてPrCoO3への触媒プレカーサにより1回浸透される前に周囲温度に再び冷却された。電池は、次に実施例1に記載されたやり方に従ってテストされ、そして電池の電流−電圧のデータは図2に示される。
実施例 3
直径1.25インチ(3.2cm)のディスクを、62重量%のNiO(Alfa)、26重量%のYSZ(Tosoh TZ−8Y)及び12重量%のYbSZ(8モル%のYbドープ化ZrO2、Seatle Specialty Chemicals)を含む混合物2.5gからプレスした。YbSZの薄いコーティングは、ディスクの表面上に無水アルコール中の8モル%Ybドープ化ZrO2の分散物6−8滴を置き、そして円を画くやり方でディスクを直ぐに傾けて、ディスクの表面を完全にそしてできる限り均一にカバーするようにすることにより、NiO/YSZ/YbSZディスクの一面に適用された。コーティングされたディスクを、ガラスカバー皿下で50分間乾燥させた。コーティングのやり方は、合計5回の適用のためにさらに4回繰り返された。次に、YbSZ、LSM及びグラファイトの混合物のコーティングは、無水エタノール中の38重量%のYbSZ、30重量%のLSM(La0.8Sr0.2MnO3、Seattle Specialty Ceramics,Seattle,WA)及び32重量%のグラファイト粉末(Johnson Mattheyから入手)のスラリーを適用することにより、YSZを既にコーティングしたディスクの表面に適用した。乾燥後、ディスクを以下のスケジュールにより燃焼させた。1:10(1時間10分)で室温から300℃、5:00で300℃から750℃、1:30で750℃から850℃、3:00で850℃から1225℃、3:00で1225℃から1250℃に加熱、2:00で1250℃から1000℃、1:30で1000℃から500℃に冷却し、次に0:50で500℃から室温(RT)に冷却。点火後、燃料電池は、1250℃で3:00でセッターの錘の下で平らにされた。
燃料電池のYbSZ/LSM陰極に次に水中のPr及びCoの硝酸塩の1M溶液を浸透させ、900℃で1時間熱処理された。浸透/熱処理のやり方を2回繰り返した。白金インク/銀メッシュの集電装置を適用後、電池の性能を、燃料気体として含湿水素を用いそしてオキシダント気体として空気を用いて800℃で測定した。陰極を通る空気の流れを約520mL/分で維持し、陽極を通る燃料の流れを約150mL/分で維持した。燃料電池の電流−電圧のレスポンスを図3に示す。電池は、0.95W/cm2のピーク電力を生成する。電池の電圧対電流密度のプロットの傾きは、ASR=0.24Ω−cm2の電池の面積抵抗率(ASR)について値を与える。
実施例 4
YSZ(Tosoh TZ−8Y)、NiO/YSZ(NiO/YSZ=50/50重量)、及びLSM/YSZ/グラファイト(LSM/YSZ/C=100/30/20重量)の陽極/電解質/陰極テープを、バッチキャスター上に注型した。テープ注型スリップは、溶媒としてメチルエチルケトン/エタノールの50/50混合物、結合剤としてポリビニルブチラール(Monsanto)及び可塑剤としてジブチルフタレート(Aldrich)を使用した。YSZ電解質層のテープは、0.002インチ(.005cm)の厚さで注型され、NiO/YSZ電解質層のテープは0.010インチ(.02cm)の厚さで注型され、LSZ/YSZ/グラファイト陰極層のテープは0.010インチ(.02cm)の厚さで注型された。LSM/YSZ/グラファイト陰極;(1層)/YSZ電解質;(1層)/NiO/YSZ/陽極;(5層)からなる積層構造体は、イソタクチックラミネータを使用して10分間2ksiイソタクチック圧で70℃でテープをラミネートすることにより生成された。積層構造体は、次に、以下のスケジュールに従って共焼結された。5℃/分でRTから300℃;2℃/分で300℃から900℃;1時間900℃に維持;2.5℃/分で900℃から1250℃;3時間1250℃に維持;5℃/分でRTに冷却。
燃料電池のYSZ/LSM陰極に1回水中のPr及びCo硝酸塩(電気触媒プレカーサ)の1M溶液を浸透させ、そして900℃で1時間加熱処理した。白金インク/銀メッシュ集電装置を適用した後、電池の性能は、燃料気体として含湿水素を用いオキシダント気体として空気を用いて800℃で測定された。陰極を通る空気の流れは、約750mL/分で維持され、そして陽極を通る燃料の流れは、約200mL/分で維持された。燃料電池の電流−電圧レスポンスは、図4に示される。電池は0.74W/cm2のピーク電力を生成した。電池の電圧対電流密度のプロットの傾きは、ASR=0.33Ω−cm2の電池の面積抵抗率について値を与える。
実施例 5
直径1.25インチ(3.2cm)のディスクを、62重量%のNiO(Alfa)、26重量%のYSZ(Tosoh TZ−8Y)及び12重量%のYbSZ(8モル%のYbドープ化ZrO2、Seatle Specialty Chemicals)を含む混合物2.5gからプレスした。この混合物は、実施例3に記載されたのと同じ方法により製造されたが、但しラテックス結合剤は使用されなかった。YbSZの薄いコーティングは、ディスクの表面上に無水アルコール中のYSZ(Tosoh TZ−8Y)の分散物6−8滴を置き、そして円を画くやり方でディスクを直ぐに傾けて、ディスクの表面を完全にそしてできる限り均一にカバーするようにすることにより、NiO/YSZ/YbSZディスクの一面に適用された。分散物は、100Wで2分間無水エタノール20mL中の0.497gのYSZを超音波処理することにより製造された。コーティングのやり方は、合計3回の適用のためにさらに2回繰り返された。次に、YbSZの2回のコーティングを、同じやり方でYSZ層の表面に適用した。YbSZ分散物は、100Wで4分間無水エタノール20mL中の8モル%のYbドープ化ZrO2(Seattle Specialty Ceramics)0.506gを超音波処理することにより製造された。最後に、YbSZ/グラファイトのコーティングを、無水エタノール中の38重量%のYbSZ、30重量%のLSM及び32重量%のグラファイト粉末(Alfa、−325メッシュ)のスラリーを適用することにより、YSZを既にコーティングしたディスクの表面に適用した。
乾燥後、ディスクを以下のスケジュールにより燃焼させた。1:10で室温から300℃、5:00で300℃から750℃、1:30で750℃から850℃、3:00で850℃から1225℃、3:00で1225℃から1250℃、2:00で1250℃から1000℃、1:30で1000℃から500℃、0:50で500℃から室温(RT)。燃焼後、燃料電池は、以下のスケジュールでセッターの錘の下で平らにされた。1:10で室温から300℃、5:00で300℃から750℃、1:30で750℃から800℃、3:00で800℃から1225℃、3:00で1225℃から1250℃で加熱、2:00で1250℃から1000℃、1:30で1000℃から500℃で冷却、0:50で500℃から室温に炉冷却。焼結後、電池は直径約1.0インチ(3.2cm)であり、僅かにゆがんでいた。ゆがみは、1250℃で3時間セッターの錘の下に電池を平らにすることにより除かれた。
LSM/YbSZ層に1回1MのPrCoO3−銀プレカーサを浸透し、そして陽極及び陰極の表面をPtインクによりペイントした。電池を次に1時間900℃で燃やした。冷却後、浸透を繰り返し、陽極及び陰極の表面を再びPtインクによりペイントし、900℃で1時間燃やした。Ptインクの他のコーティングを陰極の表面に適用し、電池を3回目に900℃で1時間燃やした。最後に、Ptインクの他の適用を陽極及び陰極の表面にし、電池を銀メッシュの間にサンドウィッチし、2個のセッターの錘の下に1時間900℃で燃やした。
燃料電池のYbSZ/LSM陰極に次に水中のPr及びCoの硝酸塩の1M溶液を浸透させ、900℃で1時間熱処理された。浸透/熱処理のやり方を2回繰り返した。白金インク/銀メッシュの集電装置を適用後、電池の性能を、燃料気体として含湿水素を用いそしてオキシダント気体として空気を用いて800℃で測定した。陰極を通る空気の流れを約520mL/分で維持し、陰極を通る燃料の流れを約150mL/分で維持した。燃料電池の電流−電圧のレスポンスを図3に示す。電池は、0.95W/cm2のピーク電力を生成する。電池の電圧対電流密度のプロットの傾きは、ASR=0.24Ω−cm2の電池の面積抵抗率(ASR)について値を与える。マイカのシートを、電池アセンブリとセッターとの間に置いて、電池がセッターに付着するのを防いだ。燃焼後電池に付着したすべてのマイカは、軽くサンドペーパーで擦ることにより除かれた。電池をテストスタンドに置き、図5に示された条件下でテストした。燃料電池の電流−電圧レスポンスは、図5に示される。

Claims (19)

  1. 電極が、
    (a)イオン伝導性物質及び電子伝導性物質の相互浸透性網目構造体を有する多孔性の構造体;及び
    (b)多孔性の構造体の孔内に分散した電子伝導性物質とは異なる電気触媒
    からなることを特徴とする密な電解質膜と接触した多孔性の複合電極を有する固体電気化学装置用の複合酸素電極/電解質構造体。
  2. イオン伝導性物質がYSZからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項1の構造体。
  3. イオン伝導性物質がYbSZからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項1の構造体。
  4. 電解質膜がYSZからなり、そして少なくとも0.5μmであって30μm以下の厚さを有し、さらに電極が少なくとも10μmであって200μm以下の厚さを有する請求項1の構造体。
  5. 電解質膜がYbSZからなり、そして少なくとも0.5μmであって30μm以下の厚さを有し、さらに電極が少なくとも10μmであって200μm以下の厚さを有する請求項1の構造体。
  6. イオン伝導性物質がYbSZからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項4の構造体。
  7. イオン伝導性物質がYSZからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項4の構造体。
  8. イオン伝導性物質がセリア又はドープ化セリアからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項1の構造体。
  9. 電気触媒がPrCoO3からなる請求項1の構造体。
  10. (i)イオン伝導性物質及び電子伝導性物質の粒子からなる混合物をイオン伝導性電解質物質からなる層と接触させて、電解質物質の層の少なくとも一面上に混合物の層からなるアセンブリを形成させる工程、
    (ii)アセンブリを焼結する工程、そして
    (iii)アセンブリに電気触媒プレカーサの溶液又は分散物を浸透させる工程からなることを特徴とする密な電解質膜と接触した多孔性の複合電極を有する複合酸素電極/電解質構造体を製造する方法。
  11. イオン伝導性物質がYSZからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項10の方法。
  12. イオン伝導性物質がYbSZからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項10の方法。
  13. イオン伝導性物質がセリア又はドープ化セリアからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項10の方法。
  14. 電気触媒がPrCoO3からなる請求項10の方法。
  15. 工程(i)で利用される電解質層が、あらかじめ焼結されていない請求項10の方法。
  16. 電解質膜がYSZからなり、そして少なくとも0.5μmであって30μm以下の厚さを有し、さらに電極が少なくとも10μmであって200μm以下の厚さを有する請求項15の方法。
  17. イオン伝導性物質がYbSZからなり、電子伝導性物質がLSM、PSM又はこれらの混合物である請求項16の方法。
  18. 電解質膜がYbSZからなり、そして少なくとも0.5μmであって30μm以下の厚さを有し、さらに電極が少なくとも10μmであって200μm以下の厚さを有する請求項15の方法。
  19. 工程(i)で利用される電解質層が、あらかじめ焼結されている請求項10の方法。
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