以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、この発明の第1の実施形態に係わる、図2に斜視図として示すヘミング加工装置におけるリンク構造の内部構造図である。図3は、図2のへミング加工装置を4つのユニットU1,U2,U3,U4として配置した装置全体を示す斜視図である。
図2に示すように、ベースプレート1上に一対のベースフレーム3を立設し、この一対のベースフレーム3の上端の切欠段部3d上にヘム型支持板5を設け、ヘム型支持板5上に、ワークW(後述する図5参照)をセットするヘム型7を設置する。
上記した一対のベースフレーム3相互間には回転支持部としての揺動支持軸9を回転可能に連結し、この揺動支持軸9に揺動フレーム11の下部を回転可能に取り付ける。揺動フレーム11は、揺動支持軸9を取り付ける一対の側板13と、側板13相互を連結する連結板15とを備える。
この連結板15の前記したヘム型7側には、上下方向に延びる一対のガイドレール17を設け、ガイドレール17に沿って上下方向にスライド移動するスライドフレーム19を設ける。スライドフレーム19は幅方向両端に、一対のスライドフレーム側板20を備えている。
上記したスライドフレーム側板20の揺動フレーム11と反対側の端部に、ヘム刃として、ワークWの縁部F(図5参照)に対する予備曲げ加工を行う予備曲げ刃21および同本曲げ加工を行う本曲げ刃23を、予備曲げ刃21が本曲げ刃23の下部側となるようそれぞれ取り付ける。
なお、図1は、予備曲げ刃21により予備曲げ加工を行う状態を示しており、図2は、本曲げ刃23により本曲げ加工を行う状態を示している。本曲げ加工を行う際には、下部側の予備曲げ刃21をヘム型7に設けた退避用凹部7aに入り込ませる。
前記した揺動支持軸9には、図1に示すように、ほぼ三角形状の第1のリンク25の一部位を連結固定する。第1のリンク25の一端としての他の部位には、駆動連結部としてのナット27を連結軸29を介して回転可能に連結し、ナット27は、このナット27とでボールねじ機構を構成するねじ棒31に螺合連結する。
ねじ棒31は、減速機33を介して駆動源としてのサーボモータ35によって回転する。減速機33は、サーボモータ35とともに、ベースプレート1上に設置してあるブラケット37に回転支持軸38を介して回転可能となっている。
すなわち、サーボモータ35の駆動により、ボールねじ機構を介して第1のリンク25が揺動支持軸9を中心として回転する。
第1のリンク25のさらに他の部位には、連結軸39を介して第2のリンク41の一端を回転可能に連結する。第2のリンク41の他端は連結軸43に連結し、連結軸43の両端は、前記したスライドフレーム側板20の下部に支持させる。
上記した第1のリンク25および第2のリンク41によりトグルリンク機構52を構成している。
また、前記した揺動支持軸9には第3のリンク45の一端を連結固定し、第3のリンク45の他端は連結部47を介して揺動フレーム11に連結する。連結部47は、第3のリンク45に連結エアシリンダ49を設け、この連結エアシリンダ49の駆動により進退移動するピン51と、このピン51が挿入される側板13に設けた二つのピン挿入孔13a,13bとを備える。図1に示す状態では、ピン51は下部側に位置する一方のピン挿入孔13aに挿入してあり、これにより第3のリンク45と揺動フレーム11とを互いに連結している。
また、揺動フレーム11の側板13とベースフレーム3との間には、揺動フレーム11をベースフレーム3に対して位置決め固定する位置決め部53を備えている。この位置決め部53は、側板13に位置決めエアシリンダ55を設け、位置決めエアシリンダ55の駆動により進退移動するピン57と、このピン57が挿入されるベースフレーム3に設けた三つのピン挿入孔3a,3b,3cとを備える。図1に示す状態では、ピン51は最上部に位置するピン挿入孔3aに挿入してあり、これにより揺動フレーム11は、鉛直方向に起立した状態でベースフレーム3に対して位置決め固定されている。
ピン51を他のピン挿入孔3b,3cにそれぞれ挿入する際には、揺動フレーム11が図1の起立状態から2段階に揺動して傾斜した状態であり、最も傾斜したときに、揺動フレーム11の側板13が当接するストッパ59を、ベースフレーム3に設けている。また、揺動フレーム11が起立した状態で、側板13の上記ストッパ59と反対側が当接するストッパも、図示していないがベースフレーム3に設けてある。
図4は、上記したヘミング加工装置の一つのユニットにおける制御ブロック図である。トグルリンク機構52を駆動するサーボモータ35,ピン51を駆動する連結エアシリンダ49,ピン57を駆動する位置決めエアシリンダ55を、例えばマイクロコンピュータなどで構成したコントローラ61がそれぞれ駆動制御する。
次に、図5〜図16の簡略化した動作説明図に基づいて、第1の実施形態によるヘミング加工装置の動作を説明する。
図5は、ワークWをヘム型7上に投入セットする状態を示すもので、揺動フレーム11は、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWの縁部Fから離れた位置にあって、傾斜している。投入するワークWは、例えば自動車のパネル材であって、そのインナパネルとアウタパネルとを結合したもので、アウタパネルに設けた縁部Fをインナパネルに重ね合わせるべく縁曲げ加工を行う。投入後のワークWは、ヘム型7に位置決め固定されるものとする。
図5の状態での位置決めエアシリンダ55は、そのピン57が中央のピン挿入孔3bに対応する位置にあるものの、ピン挿入孔3bに挿入しておらず、揺動フレーム11はベースフレーム3に対して位置決め固定していない。一方、連結エアシリンダ49のピン51は、下部のピン挿入孔13aに挿入し、第3のリンク45と揺動フレーム11とを連結している。
ワークWの投入後、上記した図5の状態で、サーボモータ35を正転駆動してねじ棒31を回転させると、ナット27がねじ棒31に沿って減速機33に近付く方向に移動する。これにより、トグルリンク機構52および第3のリンク45を介して揺動フレーム11が、揺動支持軸9を中心として図5中で反時計方向に揺動回転し、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWの縁部Fに接近する図6に示す起立状態となる。
このときスライドフレーム19は、揺動フレーム11に対して最上部に位置したままであり、予備曲げ刃21がワークWの縁部Fの直上に位置して、プリヘムセット状態となる。また、揺動フレーム11は、上記した起立状態で、ベースフレーム3に設けてある前記した図示しないストッパに当接する。
図6のプリヘムセット状態で、位置決めエアシリンダ55を駆動し、そのピン57を前進させて位置決め孔3aに挿入し(図1と同じ状態)、これにより揺動フレーム11をベースフレーム3に位置決め固定する。一方、連結エアシリンダ49は、挿入してあるピン51をピン挿入孔13aから引き抜き、第3のリンク45と揺動フレーム11との連結を解除する。
この状態で、サーボモータ35をさらに正転駆動してナット27を減速機33に対して接近移動させると、図7に示すように、第1のリンク25および第2のリンク41を介してスライドフレーム19が、揺動フレーム11に対して図中で下方にスライド移動する。スライドフレーム19の下方への移動により、これと一体の予備曲げ刃21も同方向に移動(下降)してワークWの縁部Fを例えば45度程度に予備曲げ加工し、プリヘム完了状態となる。
予備曲げ加工完了後は、サーボモータ35を逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させることで、スライドフレーム19を前記図6と同様の状態となるよう上昇させて図8のプリヘムセット状態とする。このとき、予備曲げ刃21もスライドフレーム19とともに上昇してワークWの縁部Fから離れた状態となる。
続いて図8の状態で、連結エアシリンダ49を駆動して、そのピン51をピン挿入孔13aに挿入し、第3のリンク45と揺動フレーム11とを連結する一方、位置決めエアシリンダ55を駆動して、そのピン57をピン挿入孔3aから引き抜き、揺動フレーム11のベースフレーム3への固定を解除する。
次にこの状態で、サーボモータ35をさらに逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させることで、揺動フレーム11が、揺動支持軸9を中心として図8中で時計方向に揺動回転(スイング)し、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWの縁部Fから離反する、図9に示す傾斜状態(図5の傾斜状態と同じ)となる。
図9のスイング後の状態では、連結エアシリンダ49を駆動して、そのピン51をピン挿入孔13aから引き抜き、第3のリンク45と揺動フレーム11との連結を解除する一方、位置決めエアシリンダ55を駆動して、そのピン57をピン挿入孔3bに挿入し、揺動フレーム11をベースフレーム3に位置決め固定する。
この状態でサーボモータ35を正転駆動してナット27を減速機33に接近する方向に移動させると、図10に示すように、トグルリンク機構52を介してスライドフレーム19が揺動フレーム11に対して図中で下方に移動し、これとともに移動する予備曲げ刃21がヘム型7の退避用凹部7aに対応する位置となるとともに、本曲げ刃23がヘム型7の上方位置となり、これによりヘム刃の切り替えを行う。
ヘム刃の切り替え動作によるトグルリンク機構52の回転動作によって、第3のリンク45は、揺動支持軸9とともに回転してその先端の連結エアシリンダ49におけるピン51が上部のピン挿入孔13bに対応する位置となる。そして、このピン51をピン挿入孔13bに挿入して、第3のリンク45と揺動フレーム11と連結するとともに、位置決めエアシリンダ55におけるピン57をピン挿入孔3bから引き抜いて、揺動フレーム11のベースフレーム3への固定を解除する。
上記図10の状態から、サーボモータ35を正転駆動してナット27を減速機33に接近する方向に移動させ、これによりトグルリンク機構52および第3のリンク45を介して揺動フレーム11を、揺動支持軸9を中心として図中で反時計方向に揺動回転させ、図11のように鉛直方向に起立した状態とする。
このとき、予備曲げ刃21がヘム型7の退避用凹部7aに入り込むと同時に、本曲げ刃23がワークWの縁部Fの直上に位置するヘムセット状態となる。
図11のヘムセット状態で、位置決めエアシリンダ55を駆動し、そのピン57を前進させて位置決め孔3aに挿入し、これにより揺動フレーム11をベースフレーム3に位置決め固定する。一方、連結エアシリンダ49は、挿入してあるピン51をピン挿入孔13bから引き抜き、第3のリンク45と揺動フレーム11との連結を解除する。
この状態で、サーボモータ35をさらに正転駆動してナット27を減速機33に対して接近移動させると、図12に示すように、第1のリンク25および第2のリンク41を介してスライドフレーム19が、揺動フレーム11に対して図中で下方にスライド移動する。スライドフレーム19の下方への移動により、これと一体の本曲げ刃23も同方向に移動(下降)して、ワークWの予備曲げ加工されている縁部Fを本曲げ加工し、ヘム完了状態となる。このとき予備曲げ刃21は、退避凹部7a内を下方へ移動するので、ヘム型7に干渉することはない。
本曲げ加工後は、サーボモータ35を逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させることで、スライドフレーム19を図11と同様の状態となるよう上昇させて図13の状態とする。このとき、本曲げ刃23も上昇してワークWの縁部Fから離れた状態となる。
図13の状態では、連結エアシリンダ49を駆動して、そのピン51をピン挿入孔13bに挿入し、第3のリンク45と揺動フレーム11とを連結する一方、位置決めエアシリンダ55を駆動して、そのピン57をピン挿入孔3aから引き抜き、揺動フレーム11のベースフレーム3に対する連結を解除する。
次にこの状態で、サーボモータ35をさらに逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させることで、揺動フレーム11が、揺動支持軸9を中心として図13中で時計方向に揺動回転し、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWの縁部Fから離反する図14に示す傾斜状態(図5の傾斜状態と同じ)となる。
上記した図14の状態で加工後のワークWを取り出し、その後、連結エアシリンダ49を駆動して、そのピン51をピン挿入孔13bから引き抜き、第3のリンク45と揺動フレーム11との連結を解除する一方、位置決めエアシリンダ55を駆動して、そのピン57をピン挿入孔3bに挿入し、揺動フレーム11をベースフレーム3に位置決め固定する。
この状態でサーボモータ35をさらに逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させると、図15に示すように、スライドフレーム19が揺動フレーム11に対して図中で上方に移動し、これとともに移動する予備曲げ刃21および本曲げ刃23が、前記図5に示したワークWの投入時と同じ状態となり、次に加工するワークの投入を待つ状態となる。
図16は、メンテナンス時の状態を示している。これは、図15のように加工後のワークWを取り出した後、連結エアシリンダ49のピン51をピン挿入孔13aに挿入する一方、位置決めエアシリンダ55のピン57をピン挿入孔3bから引き抜いた状態で、さらにサーボモータ35を逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させる。
これにより、揺動フレーム11が揺動支持軸9を中心として、図15中で時計方向に揺動回転し、前記図1に示してあるストッパ59に側板13が当接した状態となる。このとき、位置決めエアシリンダ55のピン57がピン挿入孔3cに対応した位置となり、ピン57をピン挿入孔3cに挿入することで、揺動フレーム11をベースフレーム3に位置決め固定し、この揺動フレーム11が大きく開いた状態でメンテナンス作業を行う。
上記したように、予備曲げ加工および本曲げ加工時には、予備曲げ刃21および本曲げ刃23が、起立状態の揺動フレーム11に対し、下方に位置するワークWに向けて直線移動する。
このため、図3に示すように、コーナ部を境にして互いに角度をもって隣接する縁部をそれぞれ縁曲げ加工する互いに隣接するヘミング装置の各ユニットU1,U2,U3,U4は、相互の干渉を回避でき、動作タイミングをずらす必要がなく、加工時間を短縮することができるとともに、コーナ部専用の別ユニットも不要となるので、設備費の増大も防止することができる。
また、予備曲げ加工および本曲げ加工時には、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWに対して加圧方向に直線的に接近移動するので、ワークWに対する進入角度が常に一定となり、加工品質が向上するとともに、設計が容易であり、ワーク形状に合わせてその都度設計する必要もなく、標準化も容易である。
また、揺動フレーム11は、加圧部直下の揺動支持軸9を中心として揺動回転するので、装置全体の高さ方向の寸法を抑えることができ、装置高さの小型化を図ることができる。
図17は、この発明の第2の実施形態に係わるヘミング加工装置の斜視図、図18は、そのリンク構造を示す内部構造図である。前記した第1の実施形態では、予備曲げ加工後に、予曲げ刃21を本曲げ刃23に切り替える刃切替動作を、トグルリンク機構52により行っているが、第2の実施形態では、刃切替動作をエアシリンダを用いて行っている。また、ここでは、第1の実施形態とは逆に、予備曲げ刃21を上部に、本曲げ刃23を下部に配置している。
以下、第2の実施形態の第1の実施形態と異なる部位を詳細に説明する。
上記した予備曲げ刃21および本曲げ刃23は、曲げ刃保持フレーム63に保持させ、曲げ刃保持フレーム63を、スライドフレーム65に対して上下可能に取り付ける。スライドフレーム65は、第1の実施形態と同様に、予備曲げ加工および本曲げ加工を行う際に、トグルリンク機構52によって曲げ刃保持フレーム63とともに揺動フレーム67に対して上下動する。すなわち、このスライドフレーム65は、第1の実施形態と同様に、その下端部がトグルリンク機構52における第2のリンク41に連結軸43を介して連結している。
曲げ刃保持フレーム63には、予備曲げ刃21および本曲げ刃23を設けた側と反対側に、スライドフレーム65を両側から挟むようにして一対のT字型のガイドレール69を設ける。一方、揺動フレーム67には、上記したガイドレール69の外側に位置するL字型のガイド部材71を設ける。このガイド部材71とスライドフレーム65との間にガイドレール69が保持された状態で、曲げ刃保持フレーム63がスライドフレーム65に対して図17中で上下方向に移動して、曲げ刃の切り替えを行う。
図18は、図17に対して曲げ刃保持フレーム63が下部に移動した状態を示しており、曲げ刃保持フレーム63は、曲げ刃の切り替え時に、スライドフレーム65に設けた刃切替エアシリンダ73によって上下動する。
揺動フレーム67は、両側に設けた一対の側板75の内側に一対の仕切り板77を設け、側板75および仕切り板77を相互に連結する連結板79を、スライドフレーム65側に備えている。上記した一対の仕切り板77相互間における連結板79には、図19の側面断面図に示すように、刃切替シリンダ73を下部側に配置する開口79aを形成してあり、この開口79aに配置した刃切替シリンダ73は、スライドフレーム65に上下に設けた取付具81,83を介して固定する。
刃切替エアシリンダ73の上方に延びるピストンロッド85は、連結ロッド87の一端側下部に連結し、連結ロッド87の他端は、曲げ刃保持フレーム63に連結している。連結ロッド87は、スライドフレーム65に設けた切欠孔65aおよび、揺動フレーム67の前記した開口79a内を、曲げ刃保持フレーム63とともに図19中で上下方向に移動可能である。
また、図17に示すように、揺動フレーム67における側板75と仕切り板77との間における連結板79にも、開口79bを形成してある。この開口79bには、スライドフレーム65に固定する曲げ刃ストッパエアシリンダ89を配置してある。曲げ刃ストッパエアシリンダ89は、図20の側面断面図に示すように、曲げ刃保持フレーム63側に向けて突出するピストンロッド91がスライドフレーム65に設けた切欠孔65bを貫通し、その先端をストッパブロック93に連結している。
ストッパブロック93は、曲げ刃保持フレーム63の上下に設けた一対のストッパ95,97相互間に入り込むことで、曲げ刃保持フレーム63のスライドフレーム65に対する図20中で上下方向の移動を規制する。この規制位置は、図20に示すように、曲げ刃保持フレーム63がスライドフレーム65に対し下部に位置して、上部に設けてある予備曲げ刃21により予備曲げ加工を行う状態に対応している。
本曲げ加工を行う際には、ストッパブロック93を後退させて切欠孔65b内に入り込ませた状態で、図19に示してある刃切替シリンダ73のピストンロッド85を前進限位置として、曲げ刃保持フレーム63をスライドフレーム65に対して上昇させた状態とする。このとき曲げ刃保持フレーム63のストッパ95,97は、スライドフレーム65に形成した凹部65c内を移動する。
また、この第2の実施形態では、揺動フレーム67をベースフレーム3に位置決め固定するための位置決めエアシリンダ55は、そのピン57(図18参照)を、揺動フレーム67が鉛直方向に起立した状態でのみ、ベースフレーム3に設けた一つのピン挿入孔3a(図17参照)に挿入する構成としてある。
これは、揺動フレーム67を傾斜させた状態で、曲げ刃の切り替えを行う際には、トグルリンク機構52を使わずに刃切替エアシリンダ73を使用するので、この傾斜状態では揺動フレーム67をベースフレーム3に固定する必要がないからである。
上記したピン挿入孔3aは、図17および、図17におけるピン挿入孔3aに対応する部分の拡大した平面断面図である図21に示すように、L字型の位置決めブロック98を設けてある。この位置決めブロック98は、ピン挿入孔3aに挿入している挿入部98aのピン57に接触する部分にテーパ面98bを形成し、これに対応してピン57にもテーパ面57aを形成し、これにより位置決め精度を高めている。
また、第2の実施形態では、第3のリンク45と揺動フレーム67とを連結するための連結エアシリンダ49は、そのピン51を、ベースフレーム3に設けた一つのピン挿入孔13c(図17参照)にのみ挿入する構成としてある。
これは、揺動フレーム67を揺動させる際のトグルリンク機構52および第3のリンク45の位置が、曲げ刃の切り替えを刃切替エアシリンダ73で行うために曲げ刃の切り替え前後で変化していないことによる。これに対して第1の実施形態では曲げ刃の切り替えをトグルリンク機構52で行っているので、トグルリンク機構52および第3のリンク45の位置が曲げ刃の切り替え前後で変化しており、このため二つのピン挿入孔13a,13bが必要となる。
さらに、第2の実施形態では、ベースプレート1上に設置してあるブラケット37に、減速機側ブラケット99を介して、サーボモータ35に連結される減速機33を、回転支持軸38を介して回転可能に取り付けている。
図22は、第2の実施形態によるヘミング加工装置の一つのユニットにおける制御ブロック図である。トグルリンク機構52を駆動するサーボモータ35,ピン51を駆動する連結エアシリンダ49,ピン57を駆動する位置決めエアシリンダ55を、コントローラ61がそれぞれ駆動制御する点は、第1の実施形態と同様である。その他、曲げ刃保持フレーム63を駆動する刃切替エアシリンダ73および、ストッパブロック93を駆動する曲げ刃ストッパエアシリンダ89に対しても、コントローラ61がそれぞれ駆動制御する。
次に、図23〜図33の簡略化した動作説明図に基づいて、第2の実施形態におけるヘミング加工装置の動作を説明する。この図23〜図33までの動作は、前記した第1の実施形態における図5〜図15の動作にそれぞれ対応している。
図23は、第1の実施形態と同様のワークWをヘム型7上に投入セットする状態を示すもので、揺動フレーム67は、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWの縁部Fから離れた位置にあって、傾斜している。
図23の状態での位置決めエアシリンダ55のピン57はピン挿入孔3aに挿入しておらず、揺動フレーム67はベースフレーム3に対して位置決め固定していない。一方、連結エアシリンダ49のピン51はピン挿入孔13cに挿入し、第3のリンク45と揺動フレーム11とを連結している。
ワークWの投入後、上記した図23の状態で、サーボモータ35を正転駆動してねじ棒31を回転させると、ナット27がねじ棒31に沿って減速機33に近付く方向に移動する。これにより、トグルリンク機構52および第3のリンク45を介して揺動フレーム67が、揺動支持軸9を中心として図23中で反時計方向に揺動回転し、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWの縁部Fに接近する図24に示す起立状態となる。
このとき、前記図20に示す状態と同様に、曲げ刃保持フレーム63はスライドフレーム65に対して下部に位置し、かつ曲げ刃ストッパエアシリンダ89により、ストッパブロック93を前進させて曲げ刃保持フレーム63のストッパ95,97相互間に入り込ませ、曲げ刃保持フレーム63をスライドプレート65に一体化させておく。
上記図23の状態から揺動フレーム67が起立する図24の状態では、予備曲げ刃21がワークWの縁部Fの直上に位置するとともに、本曲げ刃23がヘム型7の退避用凹部7aに入り込むことになる。
次に、位置決めエアシリンダ55を駆動し、そのピン57を前進させて位置決め孔3aに挿入し、これにより揺動フレーム67をベースフレーム3に位置決め固定する。一方、連結エアシリンダ49は、挿入してあるピン51をピン挿入孔13cから引き抜き、第3のリンク45と揺動フレーム67との連結を解除する。
この状態で、サーボモータ35をさらに正転駆動してナット27を減速機33に対して接近移動させると、図25に示すように、第1のリンク25および第2のリンク41を介してスライドフレーム65が、揺動フレーム67に対して図中で下方にスライド移動する。スライドフレーム65の下方への移動により、スライドフレーム65と曲げ刃保持フレーム63を介して一体の予備曲げ刃21も同方向に移動(下降)してワークWの縁部Fを例えば45度程度に予備曲げ加工し、プリヘム完了状態となる。このとき本曲げ刃23は、退避用凹部7a内を下方へ移動するので、ヘム型7に干渉することはない。
また、このときピン57をピン挿入孔3aに挿入して位置決めする際には、ピン57のテーパ面57aが位置決めブロック98のテーパ面98bに接触しているので、位置決め精度が向上しており、このため予備曲げ加工時での加工精度が向上する。
予備曲げ加工完了後は、サーボモータ35を逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させることで、スライドフレーム65を前記図24と同様の状態となるよう上昇させて図26のプリヘムセット状態とする。このとき、予備曲げ刃21もスライドフレーム65および曲げ刃保持フレーム63とともに上昇してワークWの縁部Fから離れた状態となる。
続いて図26の状態で、連結エアシリンダ49を駆動して、そのピン51をピン挿入孔13cに挿入し、第3のリンク45と揺動フレーム67とを連結する一方、位置決めエアシリンダ55を駆動して、そのピン57をピン挿入孔3aから引き抜き、揺動フレーム67のベースフレーム3への固定を解除する。
この状態で、サーボモータ35をさらに逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させることで、揺動フレーム67が、揺動支持軸9を中心として図26中で時計方向に揺動回転(スイング)し、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWの縁部Fから離反する、図27に示す傾斜状態となる。
次にこの状態で、曲げ刃ストッパエアシリンダ89を後退駆動してストッパブロック93をストッパ95,97相互間から引き抜き、曲げ刃保持フレーム63をスライドフレーム65に対して移動可能な状態とする。
そして、前記図19に示してある刃切替エアシリンダ73を前進駆動することで、曲げ刃保持フレーム63をスライドフレーム65に対して上昇移動させ、これとともに移動する本曲げ刃23がヘム型7の上方位置となり、これによりヘム刃の切り替えを行う図28の状態となる。
すなわち、このとき刃切替エアシリンダ73は、そのピストンロッド85が、図19に示す後退位置から、図34に示す前進限位置まで突出した状態となる。
上記図28の状態から、サーボモータ35を正転駆動してナット27を減速機33に接近する方向に移動させ、これによりトグルリンク機構52および第3のリンク45を介して揺動フレーム67を、揺動支持軸9を中心として図中で反時計方向に揺動回転させ、図29のように鉛直方向に起立した状態とする。このとき、本曲げ刃23がワークWの縁部Fの直上に位置するヘムセット状態となる。
図29のヘムセット状態で、位置決めエアシリンダ55を駆動し、そのピン57を前進させて位置決め孔3aに挿入し、これにより揺動フレーム67をベースフレーム3に位置決め固定する。一方、連結エアシリンダ49は、挿入してあるピン51をピン挿入孔13cから引き抜き、第3のリンク45と揺動フレーム67との連結を解除する。
この状態で、サーボモータ35をさらに正転駆動してナット27を減速機33に対して接近移動させると、図30に示すように、第1のリンク25および第2のリンク41を介してスライドフレーム65が、揺動フレーム67に対して図中で下方にスライド移動する。
このとき、前記した図34のように、ピストンロッド85が前進限位置となっている刃切替エアシリンダ73によって、この刃切替エアシリンダ73を固定しているスライドフレーム65と、刃切替エアシリンダ73に連結ロッド87を介して連結している曲げ刃保持フレーム63とが、互いに一体となって揺動フレーム67に対して移動する。
そして、曲げ刃保持フレーム63と一体の本曲げ刃23も同方向に移動(下降)して、ワークWの予備曲げ加工されている縁部Fを本曲げ加工し、ヘム完了状態となる。
本曲げ加工後は、サーボモータ35を逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させることで、スライドフレーム65を図29と同様の状態となるよう上昇させて図31の状態とする。このとき、本曲げ刃23も上昇してワークWの縁部Fから離れた状態となる。
図31の状態では、連結エアシリンダ49を駆動して、そのピン51をピン挿入孔13cに挿入し、第3のリンク45と揺動フレーム67とを連結する一方、位置決めエアシリンダ55を駆動して、そのピン57をピン挿入孔3aから引き抜き、揺動フレーム67のベースフレーム3に対する連結を解除する。
次にこの状態で、サーボモータ35をさらに逆転駆動してナット27を減速機33から離れる方向に移動させることで、揺動フレーム67が、揺動支持軸9を中心として図31中で時計方向に揺動回転し、予備曲げ刃21および本曲げ刃23がワークWの縁部Fから離反する図32に示す傾斜状態となる。
上記した図32の状態で加工後のワークWを取り出し、その後、図34に示してある刃切替エアシリンダ73を後退駆動することで、曲げ刃保持フレーム63をスライドフレーム65に対して下降移動させる。これにより、曲げ刃保持フレーム63の下降とともに移動する予備曲げ刃21が、図33に示すように、ヘム型7の上方位置となるとともに、本曲げ刃23がヘム型7の退避用凹部7aに対応する位置となり、曲げ刃の切り替え作業が完了して、前記図23に示したワークWの投入時と同じ状態となり、次に加工するワークの投入を待つ状態となる。
また、このとき曲げ刃ストッパエアシリンダ89により、ストッパブロック93を前進させて曲げ刃保持フレーム63のストッパ95,97相互間に入り込ませ、曲げ刃保持フレーム63をスライドプレート65に一体化させておく。
上記した第2の実施形態によれば、前記した第1の実施形態と同様の効果を有するほか、第1の実施形態に比べて、以下に示す点で優れている。
図25に示す予備曲げ加工時での第1のリンク25および第2のリンク41の回転位置が、図30に示す本曲げ加工時と同様に、連結軸39と連結軸43とを結ぶ直線Pが、連結軸39と揺動支持軸9とを結ぶ直線Qに、より近接して加圧方向により近いものとなっているため、予備曲げ加工時において、本曲げ加工時と同様に駆動源の出力を効率よく加圧動作に伝達することができ、省力化が可能となる。
これに対して第1の実施形態における図7の予備曲げ加工時には、連結軸39と連結軸43とを結ぶ直線Pが、連結軸39と揺動支持軸9とを結ぶ直線Qに対し、図12の本曲げ加工時ほどに近接しておらず、予備曲げ加工時での駆動源の出力を多く必要とする。
また、予備曲げ刃21は、ワークWの縁部Fを所定角度まで予備曲げ加工するものであって、その曲げ角度を出すために、研磨などの調整作業が本曲げ刃に比べて頻繁に行う必要があるが、第2の実施形態では、予備曲げ刃21を本曲げ刃23の上部に配置しているので、その調整作業が容易である。
さらに第2の実施形態での曲げ刃の切替作業は、刃切替エアシリンダ73によって行っているので短時間に行える。