JP3979166B2 - 点火コイル - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は点火コイル、より詳しくはエンジンの各気筒のプラグホールに直接取り付けられる点火コイルに関する。
【0002】
【従来の技術】
点火コイルは、例えば、ハウジングとコイル部とコネクタ部とから構成されている。このうちハウジングは円筒状を呈している。またコイル部はハウジング内に配設されている。コイル部は、中心コア部と二次巻線と二次スプールと一次巻線と一次スプールとを備えている。二次巻線は二次スプールに巻回されている。また一次巻線は一次スプールに巻回されている。そして、中心コア部を軸に、内周側から二次スプールと一次スプールとが、各々離間して同軸状に配置されている。また、ハウジング内には、上記部材同士を接合し、また部材間の絶縁を確保するために、エポキシ樹脂が注入されている。一方、コネクタ部はハウジング上方に配置されている。コネクタ部は位置決め部材を有している。この位置決め部材の下端面には、リング状の位置決めリブが下方に向かって立設されている。
【0003】
図7に点火コイル100の位置決めリブ101付近の拡大断面図を示す。なお、図においては二次巻線102よりも外周側の部材は省略している。図に示すように、位置決めリブ101は、二次スプール103と中心コア部104との隙間に上方から介挿されている。この位置決めリブ101により、ハウジング内における中心コア部104と二次スプール103との位置が決定されている。また位置決めリブ101により、中心コア部104と二次スプール103との間に所定幅の隙間105が確保されている。そしてこの隙間105には、硬化したエポキシ樹脂106が介在している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、中心コア部104の中心コアは、珪素鋼板を積層させて作製されている。一方、二次スプール103は樹脂を成形して作製されている。このため、中心コア部104と二次スプール103との線膨張率は、それぞれ異なる。しかしながら、中心コア部104と二次スプール103とは、隙間105に介在するエポキシ樹脂106により接合されている。また、点火コイル100は、エンジンの運転と停止に伴い、昇温と降温を繰り返す。したがって、点火コイル100の温度変化により、線膨張率がそれぞれ異なる中心コア部104と二次スプール103とが膨張および収縮を繰り返すと、隙間105に介在し両部材を接合しているエポキシ樹脂106は、両部材から熱応力を受ける。
【0005】
ここで、従来の点火コイル100によると、隙間105に介在するエポキシ樹脂106中にボイド(空洞)107が残留するおそれがあった。エポキシ樹脂106中にボイド107が残留していると、エポキシ樹脂106や二次スプール103に不具合が生じるおそれもある。
【0006】
ここで、中心コア部104と二次スプール103との隙間105がスプール外部と連通していれば、隙間105に注入されたエポキシ樹脂106が硬化する前に、ボイド107をスプール外部に逃がすことができる。そして、従来の点火コイル100においても、中心コア部104と二次スプール103との隙間105は、位置決めリブ101外周面と二次スプール103内周面との隙間108を介して、スプール外部と連通している。しかしながら、この位置決めリブ101と二次スプール103との隙間108は幅が狭小である。このためボイド107を逃がす通路としては不十分である。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みて完成されたものである。したがって本発明は、エポキシ樹脂などの絶縁樹脂中にボイドが残留しにくい点火コイルを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
(1)上記課題を解決するため、請求項1に記載の点火コイルは、ハウジングと、ハウジング内に配置される棒状の中心コア部と、ハウジング内において中心コア部の外周側に配置され一次巻線が巻回された筒状の一次スプールと、ハウジング内において中心コア部の外周側に配置され二次巻線が巻回された筒状の二次スプールと、中心コア部の上方に配置されるとともに、一次スプールと二次スプールのうち、より内周側に配置される内周側スプールと中心コア部との隙間に上方から介挿されることにより、ハウジング内における内周側スプールと中心コア部との位置決めを行う位置決めリブを下端面に持つ位置決め部材と、ハウジング内に注入され硬化し各部材間の絶縁を確保する絶縁樹脂と、を備えてなる点火コイルであって、内周側スプールは、隙間と内周側スプール外部とを連通することにより、隙間に注入された絶縁樹脂中に内在するボイドを逃がすボイド逃がし通路を持ち、位置決めリブは、位置決めリブの内周面と外周面とを貫通し、内周側スプールに配置されたボイド逃がし通路と連通する補助ボイド逃がし通路を持つことを特徴とする。
【0009】
つまり、本発明の点火コイルは、一次スプールと二次スプールのうち、中心コア部の隣りに配置される方のスプール、つまり内周側スプール(上記、従来例においては二次スプール)にボイド逃がし通路を配置し、位置決めリブに内周側スプールに配置されたボイド逃がし通路と連通する補助ボイド逃がし通路を配置するものである。そして、この補助ボイド逃がし通路と、内周側スプールのボイド逃がし通路とを連通させるものである。
【0010】
ボイド逃がし通路は、中心コア部と内周側スプールとの隙間と内周側スプール外部とを連通している。このため、注入された絶縁樹脂中に内在するボイドは、絶縁樹脂が硬化する前にこのボイド逃がし通路を通って、スプール外部に放出される。
さらに、位置決めリブは、中心コアと内周側スプールとの隙間に上方から介挿されている。すなわちハウジング内において、中心から拡径方向に中心コアと位置決めリブと内周側スプールとが同軸状に配置されている。このため位置決めリブと内周側スプールとは、径方向に重複している。したがって内周側スプールにボイド逃がし通路が配置されていても、ボイド逃がし通路の内周側開口を、位置決めリブの外周面が、部分的に閉塞してしまう場合がある。すなわち通路断面積が小さい場合がある。
本構成によると、ボイド逃がし通路の内周側開口は補助ボイド逃がし通路と連通している。このため、位置決めリブの外周面による閉塞部分が小さい。したがってボイドを逃がすための通路断面積を大きくすることができる。つまり本構成によると、内周側スプールのみにボイド逃がし通路が形成されている点火コイルと比較して、さらに絶縁樹脂中にボイドが残留しにくい。
【0011】
特に、内周側スプールが一次スプールである場合と比較して、内周側スプールが二次スプールである場合は、二次巻線と中心コア部との電位差が大きい。このため、絶縁樹脂中にボイドが残留していると、絶縁破壊が起こるおそれが大きい。しかしながら、内周側スプールが二次スプールである場合であっても、本発明の点火コイルによると、絶縁樹脂中にボイドが残留しにくいため、二次巻線と中心コア部との間の絶縁破壊を抑制することができる。
【0028】
(2)また、請求項2に記載の点火コイルは、ハウジングと、ハウジング内に配置される棒状の中心コア部と、ハウジング内において中心コア部の外周側に配置され一次巻線が巻回された筒状の一次スプールと、ハウジング内において中心コア部の外周側に配置され二次巻線が巻回された筒状の二次スプールと、中心コア部の上方に配置されるとともに、一次スプールと二次スプールのうち、より内周側に配置される内周側スプールと中心コア部との隙間に上方から介挿されることにより、ハウジング内における内周側スプールと中心コア部との位置決めを行う位置決めリブを下端面に持つ位置決め部材と、ハウジング内に注入され硬化し各部材間の絶縁を確保する絶縁樹脂と、を備えてなる点火コイルであって、隙間と内周側スプール外部とを連通することにより、隙間に注入された絶縁樹脂中に内在するボイドを逃がすボイド逃がし通路として、位置決め部材に嵌着されている位置決めリブの内周面と外周面とを貫通するボイド逃がしリブ孔が、位置決めリブと位置決め部材との嵌着部に形成されていることを特徴とする。
本構成によると、位置決めリブが位置決め部材に嵌着されるのと同時に、ボイド逃がしリブ孔を配置することができる。このため、より簡単にボイド逃がしリブ孔を配置することができる。また、ボイド逃がしリブ孔を位置決めリブに配置する工程を、位置決めリブを位置決め部材に嵌着する工程と、別に設ける必要がない。このため、工数が少なくなる。
【0029】
(3)また、請求項3に記載の点火コイルは、請求項2に記載の点火コイルと同様な構成において、ボイド逃がしリブ孔は、さらに位置決め部材を貫通していることを特徴とする。
本構成によると、径方向のみならず、上方にもボイドを逃がすことができる。このため、本構成によると、さらに絶縁樹脂中にボイドが残留しにくくなる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の点火コイルの実施の形態について説明する。
【0032】
(1)第一実施形態
まず、本実施形態の点火コイルの構成について説明する。図1に本実施形態の点火コイルの軸方向断面図を示す。点火コイル1は、エンジンブロックの上部において、気筒毎に形成されたプラグホール(図略)内に収納されている。また、点火コイル1は、後述するように、点火プラグ(図略)と図中下側において接続されている。
【0033】
点火コイル1は、ハウジング2を備えている。このハウジング2は、樹脂製であり上方に向かって拡径する段付円筒状を呈している。そしてハウジング2の拡径した上端部には、広口部20が形成されている。また広口部20の側壁の一部には、切り欠き窓21が形成されている。
【0034】
ハウジング2の内部には、中心コア部5と一次スプール3と一次巻線30と二次スプール4と二次巻線40とが、収納されている。
【0035】
このうち中心コア部5は、中心コア54と弾性部材50とゴムチューブ52とからなる。中心コア54は、幅の異なる短冊状の珪素鋼板を直径方向に積層して形成されており、棒状を呈している。弾性部材50はシリコンゴム製であって円柱状を呈している。弾性部材50は、中心コア54の上端と下端とに計二つ配置されている。ゴムチューブ52は筒状を呈している。そして中心コア54および弾性部材50は、このゴムチューブ52により被覆されている。
【0036】
二次スプール4は、樹脂製であって有底円筒状を呈している。二次スプール4は、中心コア部5と同軸的に、かつ中心コア部5の外周側隣りに配置されている。なお二次スプール4は、本発明における内周側スプールに該当する。二次巻線40は、二次スプール4の外周面に巻回されている。また二次スプール4の上端面からは、上方向に向かって延びるスプール側係合爪41が立設されている。このスプール側係合爪41は、周方向に離間して計三つ配置されている。
【0037】
一次スプール3は、二次スプール4と同軸的に、かつ二次スプール4の外周側隣りに配置されている。一次巻線30は、一次スプール3の外周面に巻回されている。また、一次スプール3の外周側には、長手方向に貫通するスリットの入った円筒状の外周コア31が配置されている。
【0038】
エポキシ樹脂8は、ハウジング2内に配置された上記部材間に介在している。このエポキシ樹脂8は、エポキシプリポリマと硬化剤とを、前記広口部20から予め真空引きしたハウジング2内に注入することにより、上記部材間に浸透し硬化する。このエポキシ樹脂8は、上記各々の部材同士を接合し、かつ部材間の絶縁性を確保する役割を有する。エポキシ樹脂8は本発明にいう絶縁樹脂に該当する。
【0039】
コネクタ部6は、ハウジング2の広口部20に配置されている。コネクタ部6は、信号入力用コネクタ64とイグナイタ65とを備えている。この信号入力用コネクタ64は、樹脂製であって角筒状を呈している。また信号入力用コネクタ64は、広口部20の切り欠き窓21から拡径方向に突出して配置されている。
【0040】
イグナイタ65は、樹脂製であって直方体状を呈している。このイグナイタ65は、広口部20のほぼ中心に配置されており、信号入力用コネクタ64の縮径側端部に一体的に形成されている。
【0041】
位置決め部材61(図1中、点線で示す。)は、樹脂製であってイグナイタ65の下方に一体的に形成され配置されている。またイグナイタ65の下方には、位置決め部材側係合爪66が立設されている。この位置決め部材側係合爪66は、周方向に離間して計三つ配置されている。そして、この位置決め部材側係合爪66と前記スプール側係合爪41とが係合することにより、位置決め部材61に二次スプール4が係止されている。また位置決め部材61の下端面62からは、リング状の位置決めリブ63が下方に向かって立設されている。この位置決めリブ63は、中心コア部5の弾性部材50と、二次スプール4との隙間に上方から介挿されている。この介挿により、ハウジング2内における中心コア5と二次スプール4との位置決めがなされている。そして、中心コア部5と二次スプール4との隙間が確保されている。
【0042】
高圧タワー部7は、ハウジング2の下方に配置されている。高圧タワー部7は、タワーハウジング70と高圧ターミナル71とスプリング72とプラグキャップ73とを備えている。
【0043】
タワーハウジング70は、樹脂製であって円筒状を呈している。タワーハウジング70の内周側中程には、上方に向かって縮径しながら突出するボス部74が形成されている。
【0044】
高圧ターミナル71は、下方に開口76を持つカップ状を呈している。開口76にはボス部74が挿入されている。すなわち、高圧ターミナル71は、ボス部74に対して、ちょうど伏せられたカップのように配設されている。また高圧ターミナル71の上端面中央からは、上方に向かって突出する円柱状の凸部75が配置されている。この凸部75は、前記二次スプール4の下端部に挿入されている。
【0045】
スプリング72は、螺旋状を呈している。スプリング72の上端は、高圧ターミナル71の開口76に止着されている。一方スプリング72の下端には、点火プラグ(図略)が嵌挿されている。
【0046】
プラグキャップ73は、ゴム製であって円筒状を呈している。このプラグキャップ73は、タワーハウジング70の下端部に環装されている。プラグキャップ73の内周側には、点火プラグが圧入され弾接している。
【0047】
次に、本実施形態の点火コイル1の動作について説明する。制御信号は信号入力用コネクタ64からイグナイタ65を介して一次巻線30に伝達される。そしてこの制御信号による相互誘導作用で、二次巻線40に高電圧が発生する。二次巻線40に発生した高電圧は、高圧ターミナル71とスプリング72とを介して点火プラグに伝達される。そして、この高電圧により点火プラグのギャップに火花が発生する。
【0048】
次に、本実施形態の点火コイル1の、位置決め部材61付近の構成について説明する。図2に位置決め部材61付近の拡大断面図を示す。図に示すように、位置決めリブ63は弾性部材50と二次スプール4との間に介挿されている。そして二次スプール4の上端部42には、二次スプール4の内周面と外周面とを貫通し、上方に向かって開口するスプール側ボイド逃がしスリット43が形成されている。図3に拡大して示すように、スプール側ボイド逃がしスリット43は、上端部42の周方向120゜ごとに計三つ配置されている。そして、図2に示すように、中心コア部5と二次スプール4との間には、筒状の隙間51が形成されている。また、この隙間51には、エポキシ樹脂8が注入されている。
【0049】
ところで、エポキシ樹脂8の原料となるエポキシプリポリマおよび硬化剤は、図1に示すように、ハウジング2の内周側に各部材が配設された後から、ハウジング2の広口部20を介してハウジング2の内部に注入される。そして注入されたエポキシプリポリマおよび硬化剤は、ハウジング2の内周面に沿って一旦流下し、二次スプール4と高圧ターミナル71との間を通って、図2に示す隙間51に下側から流入する。
【0050】
ここで、二次スプール4にスプール側ボイド逃がしスリット43が配置されていない場合、硬化前のエポキシ樹脂8中に内在するボイド9は、隙間51から逃げることができない。このため硬化したエポキシ樹脂8中にボイド9が残留してしまう。
【0051】
これに対し、本実施形態の点火コイル1は、二次スプール4の上端部42にスプール側ボイド逃がしスリット43を備えている。このため図2中矢印で示すように、エポキシ樹脂8が硬化する前に、ボイド9は隙間51からスプール側ボイド逃がしスリット43を通って二次スプール4の外部に放出される。また二次スプール4の外部に放出されたボイド9は、図1に示す広口部20からハウジング2外部に放出される。したがってエポキシ樹脂8が硬化した後に、エポキシ樹脂8中にボイド9が残留するのを抑制することができる。またスプール側ボイド逃がしスリット43は、上下方向に長く配置されている。このため、ボイド9が上下方向にばらついて分布する場合であっても、ボイド9の残留を抑制することができる。
【0054】
次に、位置決めリブ63に配置されている補助ボイド逃がしスリットについて説明する。なお、補助ボイド逃がしスリットは、本発明における補助ボイド逃がし通路に該当する。
【0055】
図3に二次スプールの上端部と位置決め部材との分解斜視図を示す。図に示すように、二次スプール4の上端部42にはスプール側ボイド逃がしスリット43が配置されている。また位置決めリブ63には、下方に向かって開口する補助ボイド逃がしスリット67が形成されている。この補助ボイド逃がしスリット67は、周方向120゜ごとに計三つ配置されている。図2に本実施形態の点火コイルの位置決め部材付近の拡大断面図を示す。図に示すように、補助ボイド逃がしスリット67は、径方向においてスプール側ボイド逃がしスリット43と連通している。本実施形態によると、両スリットにより隙間51と二次スプール4外部とが連通している。このため、ボイド9を逃がすための通路断面積が、内周側スプールのみにボイド逃がし通路が形成されている点火コイルと比較して、より広くなっている。したがって本実施形態によると、さらに絶縁樹脂8中へのボイド9の残留を抑制することができる。
【0111】
(2)第二実施形態
本実施形態と第一実施形態との相違点は、位置決め部材と別体に作製された位置決めリブが位置決め部材に嵌着されている点と、補助ボイド逃がし通路は持たず、位置決めリブと位置決め部材との嵌着部にボイド逃がしリブ孔のみが配置されている点である。その他の構成、動作などは第一実施形態と同様である。したがって、本項では、相違点である位置決めリブおよびボイド逃がしリブ孔についてのみ説明する。
【0112】
図4に本実施形態の点火コイルの位置決め部材付近の拡大断面図を示す。なお図2と対応する部材については同じ記号で示す。また図5に本実施形態の点火コイルの二次スプール上端部と位置決め部材と位置決めリブとの分解斜視図を示す。なお図3と対応する部材については同じ記号で示す。
【0113】
図5に示すように、リング溝620は、他の部分よりも溝深が深く、また径方向に長い拡張部621を備えている。拡張部621は、リング溝620の周方向に45゜ずつ離間して、合計八つ配置されている。
【0114】
図4に示すように、リング溝620に位置決めリブ63が嵌挿されると、位置決めリブ63の上端と、拡張部621との間に隙間が形成される。本実施形態においては、この隙間がボイド逃がしリブ孔84となる。
【0115】
本実施形態によると、位置決めリブ63をリング溝620に嵌挿するのと同時に、ボイド逃がしリブ孔84が形成される。このため、さらに簡単にボイド逃がしリブ孔84を配置することができる。
【0116】
(3)第三実施形態
本実施形態と第二実施形態との相違点は、ボイド逃がしリブ孔が位置決め部材を貫通している点である。その他の構成、動作などは第二実施形態と同様である。したがって、本項では、相違点である位置決めリブおよびボイド逃がしリブ孔についてのみ説明する。
【0117】
図6に本実施形態の点火コイルの位置決め部材付近の拡大断面図を示す。なお図4と対応する部材については同じ記号で示す。図に示すように、拡張部621の溝底面には、位置決め部材61を上下方向に貫通する溝底孔622が穿設されている。本実施形態においては、位置決めリブ63上端と拡張部621との隙間および溝底孔622がボイド逃がしリブ孔84となる。
【0118】
本実施形態によると、二次スプール4の外周側のみならず、位置決め部材61の上方にもボイド9を逃がすことができる。
【0122】
(4)その他
以上、本発明の点火コイルの実施の形態について説明した。しかしながら実施の形態は上記形態に特に限定されるものではない。当業者が行いうる種々の変形的形態、改良的形態で実施することもできる。
【0123】
例えば、上記実施形態においては二次スプール4を一次スプール3の内周側に配置したが、この配置は逆であってもよい。すなわち、一次スプール3を二次スプール4の内周側に配置してもよい。また、スプール側ボイド逃がしスリット、スプール側ボイド逃がし孔、位置決め部材側ボイド逃がしリブ孔などのボイド逃がし通路の個数、配置場所は特に限定しない。ボイドが多い場合は、ボイド逃がし通路の個数を増やしてもよい。またボイドの存在場所に応じて、ボイド逃がし通路の配置場所も変えてよい。また上記実施形態においては、絶縁樹脂としてエポキシ樹脂を用いたが、シリコン樹脂や不飽和ポリエステル樹脂などを用いてもよい。また上記実施形態においては、位置決め部材をイグナイタと一体に設けたが、位置決め部材は別体として成形し、後から溶着などにより接合してもよい。また第一実施形態においては、補助ボイド逃がし通路として、補助ボイド逃がしスリット67を計三つ配置した。しかし、補助ボイド逃がしスリットの個数、配置場所は特に限定しない。また補助ボイド逃がし通路として、補助ボイド逃がし孔を配置してもよい。また中心コア部の断面形状は特に限定しない。ボイドが通過できる程度の隙間を中心コア部と位置決めリブとの間に確保できれば、位置決め部材側ボイド逃がし孔を配置することができる。また、上記実施形態において、エポキシプリポリマと硬化剤とをハウジング内に注入して後で、広口部からハウジング内に高圧力をかけてもよい。こうすると、圧力によりボイドが押し出されるため、より迅速にエポキシ樹脂中からボイドを除去することができる。また、真空引きしながらエポキシプリポリマと硬化剤とをハウジング内に注入してもよい。こうすると、より確実にエポキシ樹脂中からボイドを除去することができる。
【0124】
【発明の効果】
本発明によると、絶縁樹脂中にボイドが残留しにくい点火コイルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第一実施形態の点火コイルの軸方向断面図である。
【図2】 第一実施形態の点火コイルの位置決め部材付近の拡大断面図である。
【図3】 第一実施形態の点火コイルの二次スプール上端部の斜視図である。
【図4】 第二実施形態の点火コイルの位置決め部材付近の拡大断面図である。
【図5】 第二実施形態の点火コイルの二次スプール上端部と位置決め部材と位置決めリブとの分解斜視図である。
【図6】 第三実施形態の点火コイルの位置決め部材付近の拡大断面図である。
【図7】 従来の点火コイルの位置決めリブ付近の軸方向断面図である。
【符号の説明】
1:点火コイル、2:ハウジング、20:広口部、21:切り欠き窓、3:一次スプール、30:一次巻線、31:外周コア、4:二次スプール、40:二次巻線、41:スプール側係合爪、42:上端部、43:スプール側ボイド逃がしスリット、44:スプール側ボイド逃がし孔、5:中心コア部、50:弾性部材、51:隙間、510:隙間、52:ゴムチューブ、54:中心コア、540:珪素鋼板、6:コネクタ部、60:ターミナル、61:位置決め部材、62:下端面、620:リング溝、621:拡張部、622:溝底孔、63:位置決めリブ、64:信号入力用コネクタ、65:イグナイタ、66:位置決め部材側係合爪、67:補助ボイド逃がしスリット、68:位置決め部材側ボイド逃がし孔、7:高圧タワー部、70:タワーハウジング、71:高圧ターミナル、72:スプリング、73:プラグキャップ、74:ボス部、75:凸部、76:開口、8:エポキシ樹脂、82:ボイド逃がしテーパ孔(ボイド逃がしリブ孔)、84:ボイド逃がしリブ孔、9:ボイド。

Claims (3)

  1. ハウジングと、
    該ハウジング内に配置される棒状の中心コア部と、
    該ハウジング内において該中心コア部の外周側に配置され一次巻線が巻回された筒状の一次スプールと、
    該ハウジング内において該中心コア部の外周側に配置され二次巻線が巻回された筒状の二次スプールと、
    該中心コア部の上方に配置されるとともに、該一次スプールと該二次スプールのうち、より内周側に配置される内周側スプールと該中心コア部との隙間に上方から介挿されることにより、該ハウジング内における該内周側スプールと該中心コア部との位置決めを行う位置決めリブを下端面に持つ位置決め部材と、
    該ハウジング内に注入され硬化し各部材間の絶縁を確保する絶縁樹脂と、
    を備えてなる点火コイルであって、
    該内周側スプールは、該隙間と該内周側スプール外部とを連通することにより、該隙間に注入された該絶縁樹脂中に内在するボイドを逃がすボイド逃がし通路を持ち、前記位置決めリブは、該位置決めリブの内周面と外周面とを貫通し、前記内周側スプールに配置された前記ボイド逃がし通路と連通する補助ボイド逃がし通路を持つことを特徴とする点火コイル。
  2. ハウジングと、
    該ハウジング内に配置される棒状の中心コア部と、
    該ハウジング内において該中心コア部の外周側に配置され一次巻線が巻回された筒状の一次スプールと、
    該ハウジング内において該中心コア部の外周側に配置され二次巻線が巻回された筒状の二次スプールと、
    該中心コア部の上方に配置されるとともに、該一次スプールと該二次スプールのうち、より内周側に配置される内周側スプールと該中心コア部との隙間に上方から介挿されることにより、該ハウジング内における該内周側スプールと該中心コア部との位置決めを行う位置決めリブを下端面に持つ位置決め部材と、
    該ハウジング内に注入され硬化し各部材間の絶縁を確保する絶縁樹脂と、
    を備えてなる点火コイルであって、
    該隙間と該内周側スプール外部とを連通することにより、該隙間に注入された該絶縁樹脂中に内在するボイドを逃がすボイド逃がし通路として、前記位置決め部材に嵌着されている前記位置決めリブの内周面と外周面とを貫通するボイド逃がしリブ孔が、前記位置決めリブと前記位置決め部材との嵌着部に形成されていることを特徴とする点火コイル。
  3. ハウジングと、
    該ハウジング内に配置される棒状の中心コア部と、
    該ハウジング内において該中心コア部の外周側に配置され一次巻線が巻回された筒状の一次スプールと、
    該ハウジング内において該中心コア部の外周側に配置され二次巻線が巻回された筒状の二次スプールと、
    該中心コア部の上方に配置されるとともに、該一次スプールと該二次スプールのうち、より内周側に配置される内周側スプールと該中心コア部との隙間に上方から介挿されることにより、該ハウジング内における該内周側スプールと該中心コア部との位置決めを行う位置決めリブを下端面に持つ位置決め部材と、
    該ハウジング内に注入され硬化し各部材間の絶縁を確保する絶縁樹脂と、
    を備えてなる点火コイルであって、
    該隙間と該内周側スプール外部とを連通することにより、該隙間に注入された該絶縁樹脂中に内在するボイドを逃がすボイド逃がし通路として、前記位置決め部材に嵌着されている前記位置決めリブの内周面と外周面とを貫通するボイド逃がしリブ孔が、前記位置決めリブと前記位置決め部材との嵌着部に形成され、さらに前記位置決め部材を貫通していることを特徴とする点火コイル。
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