JP3978294B2 - 流体噴射織機の緯糸保持装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、流体噴射織機の緯糸保持装置に関するもので、特に飛走ないし打込時の緯糸通路に設けられて緯入れ後の緯糸のノズル側または反ノズル側端部を保持する緯糸保持装置に関し、特に筬打ちされた後の緯糸のノズル側端部を保持するのに好適な緯糸保持装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
流体噴射織機では、緯糸の検出や筬打ち時の緯糸の張力を安定化させるために、緯入れされた緯糸のノズル側端部や反ノズル側端部を保持する緯糸保持装置が用いられる。この目的で用いられる緯糸保持装置には、種々の構造のものがあり、筬打ち動作を利用して緯糸をジグザグに折り曲げてその摩擦力で保持する装置や、水噴射織機では、水の表面張力や付着力によって緯糸を保持する装置が多く用いられている。
【0003】
一方近時差別化された布帛や特殊な機能を有する布帛を得るため、流体噴射織機特に水噴射織機で伸縮率の非常に大きな緯糸を用いて製織を行いたいという要望が生じている。この種の緯糸は伸縮率が400ないし600%もあり、筬打ちされたあと緯糸ノズル側端部を切断すると、緯糸が縮んでノズル抜けを生じ、次のピックの緯入れができなくなるので、筬打ちされたあと緯糸のノズル側端部を保持することが製織を可能にする必須の条件となる。
【0004】
この条件を満たすことを目的とした緯糸保持装置として、たとえば特開平8−49134号公報、特開平8−260291号公報、特開平8−260292号公報などに開示された技術が知られている。前二者の公報に開示された技術は、水の表面張力ないし粘着力によって緯糸を保持する構造であり、また後者は電磁石の電流の切換えによって開閉する把持フィンガを用いて緯糸の保持及び解放を行う構造である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし伸縮率が400%を超えるような緯糸であると、水の表面張力ないし粘着力だけでは緯糸を保持することが困難になる。そこで緯糸の保持力を増大させようとすると、弾圧された2個の部材の間に緯糸を導いてその摩擦力を利用して緯糸を保持するというような構造が必要になる。ところが筬打ちされた後の緯糸のノズル側端部は、次の緯入れ時に飛走先端となる部分である。従ってこの部分の糸の保持力を大きくすると、次の緯入れ時に飛走先端の解放が遅れ、緯糸がU字状に折れ曲がって経糸開口内に導かれるようになり、ダブルピックや緯糸先端のもつれを生じて種々の織り不良の原因となる。また緯糸の飛走が円滑に行われないことから、ノズルの噴射圧も高くなり、製織速度も抑えられる。
【0006】
一方前記後者の公報に開示されたように、電磁石を用いてその電流のオンオフにより適宜緯糸の保持及び解放を行ってやれば、上述したような緯入れ時の障害を生ずることなく、緯糸のノズル側端部を十分な保持力で保持できる。しかしこの構造は製織速度を高くしようとすると、電磁石の応答速度を速くしなければならないため、装置が高価になる。すなわちこの従来装置では、緯糸の保持及び解放を行う瞬間に電磁石の通電状態を変化させる必要があるが、電磁石の通電状態を急速に切り換えようとすると、大きな逆起電力を生ずるから、それに抗して通電状態を切り換えるには、大きな電圧を必要とし、電気装置が高価になるとともに、電磁石の熱損失が増大するという問題が生ずる。
【0007】
この発明は上述したような従来装置の問題点に鑑み、緯入れ動作と同期した緯糸の保持及び解放を簡単な構造で従って安価に実現することを可能とし、かつ織機の高速化にも対応可能な緯糸保持装置を提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の流体噴射織機の緯糸保持装置は、筬またはその支持ないし駆動部材に装着された駆動側磁石12と、飛走ないし筬打時の緯糸通路に設けられた少なくとも一方が開閉部材6である一対の部材5、6からなる緯糸保持具7と、前記開閉部材を開動ないし閉動させるべく装着された従動側磁石9とを備えている。従動側磁石9は、筬打ち動作と同期して移動する駆動側磁石の移動軌跡の一部区間における磁力線の作用範囲内に配置する。この構造は、緯入れノズルが定位置に置かれている水噴射織機に適している。
【0009】
請求項2の発明は、駆動側磁石12がそのN極またはS極を上向きにしてマグネットホルダ11を介してスレイ10またはスレイソードの上端に固定的に設けられており、緯糸保持具7が緯入れノズル1から織前のノズル側端部に至る緯糸通路に配置された揺動フィンガ6と固定フィンガ5からなる把持対であり、従動側磁石9はそのN極またはS極を下方に向けて揺動フィンガ6に固定的に装着されていることを特徴とする、請求項1記載の流体噴射織機の緯糸保持装置である。
【0010】
請求項3の発明の流体噴射織機の緯糸保持装置は、飛走ないし筬打時の緯糸通路に設けられた少なくとも一方が開閉部材6である一対の部材5、6からなる緯糸保持具7と、前記開閉部材を開動ないし閉動させるべく筬またはその支持ないし駆動部材に搭載して装着された従動側磁石9と、この従動側磁石の移動軌跡の一部区間を磁力線の作用範囲内にして配置された駆動側磁石12とを備えている。この構造は、緯入れノズルがスレイに装着されている空気噴射織機に適している。
【0011】
請求項4の発明は、開動用と閉動用の2個の駆動側磁石12がそのN極またはS極を上向きにしてマグネットホルダ11を介して織機フレームに固定的に設けられており、緯糸保持具7が緯入れノズル1の直前の緯糸通路に配置された揺動フィンガ6と固定フィンガ5からなる把持対であり、従動側磁石9はそのN極またはS極を下方に向けて揺動フィンガ6に固定的に装着されており、従動側磁石と共に移動して従動側磁石の磁力により揺動フィンガの開状態又は閉状態を保持する吸着部材27を備えていることを特徴とする、請求項3記載の流体噴射織機の緯糸保持装置である。
【0012】
請求項5の発明は、複数個の駆動側磁石12と、従動側磁石への磁力線の作用領域内に駆動側磁石を選択的に進出させる切換装置15、16と、複数個の緯入れノズルに対応する緯糸通路にそれぞれ配置された緯糸保持具7とを備えていることを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載の流体噴射織機の緯糸保持装置である。
【0013】
これらの構造の緯糸保持装置における駆動側磁石12及び従動側磁石9は、共に永久磁石である。
【0014】
駆動側磁石12及び従動側磁石9を永久磁石とした構造は、電気的制御装置を全く必要としないため、装置構造が非常に簡単になる。緯糸の保持ないし解放のタイミングは、駆動側磁石9の移動軌跡上のどの位置に極性をどの方向にして従動側磁石を配置するかによって設定できる。
【0015】
1個の緯糸把持具に設ける従動側磁石や駆動側磁石の個数は1個である必要はなく、たとえばデテント機構(二位置止め機構)や吸着部材27と組み合わせて移動磁石(筬打ち動作と同期して移動する駆動側又は従動側磁石)の移動軌跡に沿って異なる位置に複数個の定置磁石(定位置に設けた駆動側又は従動側磁石)を配置することにより、所望のタイミングでの緯糸の保持と解放及び保持状態と解放状態の維持を行わせることができる。また移動磁石の移動軌跡に沿う方向の駆動側磁石または従動側磁石の寸法により、緯糸を保持または解放する期間の長さを設定することができる。
【0016】
後述する実施例においては、駆動側磁石と従動側磁石との間の磁気作用を阻害しないように、固定フィンガ5及び揺動フィンガ6として透磁性のある材料を用いているが、たとえばフィンガの側方に延びるマグネットホルダを介して磁石を取り付ける等の構造により、実際に糸を保持する位置から離れた位置で磁力を作用させることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下図示実施例を参照してこの発明の実施の形態を説明する。図1及び図2はこの発明の緯糸保持装置で織前に打ち込まれた緯糸のノズル側端部を保持する水噴射織機の最も簡単な構造の例を示す第一実施例である(図1は側面図、図2はノズル側端部の平面図)。水噴射織機は、通常、緯入れノズル1が定位置に設けられている。
【0019】
図の織機において、緯糸は緯入れノズル1から経糸開口内に緯入れされ、筬2の筬打ち動作により、織前3に打ち込まれる。織前に打ち込まれた緯糸のノズル側端部は、織前のノズル側端部3aとノズル先端1cとの間で引き伸ばされた状態になる。この状態で緯糸のノズル側端部がカッタ4で切断されるが、緯糸の伸縮率が大きいときは、カッタで切断された後のノズル側の緯糸が縮んで、ノズルの先端から抜け落ちるという現象が生ずる。これを防止するために図示装置では、織前のノズル側端部とノズル先端との間に張架される緯糸を挟むように固定フィンガ5とそれに弾圧される揺動フィンガ6とで構成された緯糸保持具7を配置している。
【0020】
固定フィンガ5及び揺動フィンガ6は、支持バー8を介して織機のフレームに固定されている。固定フィンガ5は非磁性系ステンレス板であり、揺動フィンガ6は弾性を有する薄いベリリウム銅板である。揺動フィンガ6は基端(織機の手前側)が固定されており、自身の弾性により固定フィンガ5に弾圧されている。固定フィンガ5及び揺動フィンガ6の先端(織機の奥側)は両者の間に緯糸を導くようにラッパ状に開いている。揺動フィンガ6の上面先端側に従動側磁石9がN極を下向きにして接着されている。
【0021】
一方筬2を固定しているスレイ10のノズル側端部にマグネットホルダ11を介して駆動側磁石12がN極を上方に向けて固定されている。駆動側磁石12の固定位置は、固定フィンガ5の真下の部分であり、筬打ちのためにスレイ10が揺動するとクランク角略90度の位置で駆動側磁石12と従動側磁石9とが対向する。両磁石は互いにN極が対向するように設けられているため、両磁石9、12が対向したとき従動側磁石9が反撥させられ、揺動フィンガ6は上方に撓んで開く。
【0022】
緯入れノズル1の噴射流によって飛走した緯糸は、筬2の前進動作により、織前3に打ち込まれる。この打込み途中の時点で緯糸のノズル直前の部分がノズル先端1cと織前のノズル側端部3aとの間で斜めに張られた状態となり、ラッパ状開口部に案内された当該緯糸の部分が固定フィンガ5と揺動フィンガ6との間に導かれ、揺動フィンガ6の弾力によって保持される。筬の前進途中において駆動側磁石12と従動側磁石9とが対向したとき、揺動フィンガ6が開いて緯糸の把持が一時解放されるが、このとき緯糸はいずれにしてもノズル先端と織前のノズル側端部との間で張られた状態となっているため、揺動フィンガ6の開閉運動は緯糸に何の影響も与えない。
【0023】
筬打ちが行われた後、筬が後退し緯糸のノズル側端部がカッタ4で切断されると、緯糸は縮もうとするが、緯糸保持具7で保持されているため、そのままの状態で残る。筬が後退し次の緯入れのためにノズルから流体が噴射された直後のタイミングで駆動側磁石12が従動側磁石9と対向する(このタイミングで両磁石が対向するように両磁石の位置関係が決められている)。そこで揺動フィンガが両磁石の反力により開き、把持されていた緯糸が解放されて、次のピックの緯糸先端となって飛走していく。
【0024】
筬が織前に向かって移動する途中で揺動フィンガ6が開かれた後、バンピング動作によって緯糸の把持が安定しないおそれがあるときは、図3に示すように揺動フィンガ6の基端側にS極を下方に向けた補助従動磁石13を固定する。駆動側磁石によって従動側磁石9が反撥して揺動フィンガ6が開いた後、パンピングによって再び開こうとする揺動フィンガ6を駆動側磁石12が次の瞬間に補助従動磁石13のS極を引き付けることによって抑え、筬打ち後の緯糸の保持を安定化させる。
【0025】
図4及び図5は第3実施例を示す図で、緯入れノズルを2個設けた織機に本願発明を実施した例である。2個の緯入れノズル1a、1bは織機の前後方向に並べて配置されており、各ノズル先端から織前のノズル側端部3aに至る糸通路は同一平面上で角度の異なる2本の通路として形成される。この通路で2本の緯糸が絡み合わないようにガイドする必要があり、図の例では、上下の緯糸保持具7a、7bに共通の固定フィンガ5aの上下に各ノズルからの緯糸を案内するようになっている。そしてこの固定フィンガの上下に対向して揺動フィンガ6a及び6bが配置され、上側揺動フィンガ6aの上面と下側揺動フィンガ6bの下面とにともにN極を下方に向けた従動側磁石9a、9bが接着されている。緯糸把持具7a、7bの取付位置及び取付構造は、図1、2の実施例のものと変わりはないが、緯糸通路が若干前後する関係上、奥側の緯入れノズル1bに対応する下側揺動フィンガ6bは、上側揺動フィンガ6aより長く、また従動側磁石9bの固定位置も若干奥側となっている。
【0026】
一方、スレイのノズル側端部には、外周を四等分する位置に4個の駆動側磁石12を固定した回転マグネットホルダ14が緯糸飛走方向の軸まわりに自由回転可能に装着されている。4個の駆動側磁石12は交互にN極とS極とを外側に向けて装着されている。回転マグネットホルダ14と同軸に外周に4個のラチェット歯を備えたラチェットホイール15が設けられており、一方織機の固定部材にこのラチェットホイールと対向するラチェット爪16が装着されている。またスレイには、駆動側磁石12の1個が上方を向く位置で保持されるように、他の1個の磁石で吸引される鉄板などの磁性体板17が固定されている。
【0027】
ラチェット爪16をスレイの打込端側に設けたときの動作を次に説明する。N極を外周側に向けた駆動側磁石12が上方を向いた状態で、反対側の駆動側磁石と磁性体板17とが引き合って、回転マグネットホルダ14の回動を固定している。前回ピック時に奥側ノズル1bから射出された奥側緯糸の端部が、下側の緯糸保持具7bで保持されている。緯入れ後筬が前進すると、その前進途中で駆動側磁石12の磁気作用により、上側揺動フィンガ6aが一時開かれ、下側揺動フィンガ6bは固定フィンガ5aに一時強く押し付けられる。これらの動作は何の作用も生じない。
【0028】
前側緯糸が打ち込まれると、当該緯糸のノズル側糸端は上側緯糸保持具によって保持され、ラチェット爪16が回転マグネットホルダ14を90度回転させ、S極を外側に向けた駆動側磁石が上方を向く。この状態は反対側の駆動側磁石が磁性体板17を吸引することにより保持される。筬が後退を開始し緯糸端が切断され、今度は奥側ノズル1bから流体噴射が開始される。その直後にS極を上向きにした駆動側磁石12が下側揺動フィンガ6bを開き、上側揺動フィンガ6aを固定フィンガ5aに押し付ける。下側揺動フィンガ6bが開いたとき、奥側ノズル1bの緯糸先端が解放され、緯糸の飛走が行われる。
【0029】
そして筬打ちのために再び筬が前進したとき下側揺動フィンガと上側揺動フィンガが上記動作を繰り返すが、これらの動作は何の作用も生じさせない。そして筬打ちが行われたとき、ラチェット爪16が回転マグネットホルダ14を90度回動させてN極を上向きにする。次に筬が後退を始めると、奥側緯糸の端部が切断され、前側ノズルの流体噴射が開始される。筬が後退する途中でN極を上向きにした駆動側磁石が下側揺動フィンガ6bを固定フィンガ5aに押し付け、上側揺動フィンガ6aを一時的に開く。このとき前側緯糸の保持が解放されて、緯糸先端が飛走していく。以上の動作を繰り返すことによって、前側緯糸と奥側緯糸が交互に緯入れされる。駆動側磁石12を回転マグネットホルダ14にN極を2個連続して外向きに装着すれば、前側緯糸と奥側緯糸が2本ずつ交互に緯入れされる。
【0030】
上記実施例の4個の駆動側磁石に代えて、図6に示すように、1個の直流電磁石18を設け、その通電方向の切換手段19を設けることにより、上側揺動フィンガ6aと下側揺動フィンガ6bの開閉を電気的に任意に制御することができる。すなわち2個のノズルの噴射弁の制御と、電磁石18の極性の変換とを同期して切り換えることにより、前側緯糸と奥側緯糸とを任意の順序で緯入れすることが可能になる。
【0031】
また2ノズル織機において、図7、図8に示すように前側緯糸20と奥側緯糸21に対応する緯糸保持具7a、7bを緯糸飛走方向に並べて配置し、スレイに設けた1個の駆動側磁石を緯糸飛走方向に往復動させて、各ピック毎に対応する緯糸保持具の従動側磁石に対向させることにより、2個の緯糸保持具における糸端の解放を交互に行わせることが可能である。駆動側磁石12を緯糸飛走方向に往復動させる機構としては、突当て具とデテント機構とを用いる機械的な構造や、ソレノイドを用いる電気的構造が可能である。
【0032】
図9及び図10、図11は緯糸保持具の他の手段を示したものである。この実施例の緯糸保持具は、緯入れノズル1に円周方向に回動自在に装着されたスリットリング22と、固定フィンガ24とで構成されている。スリットリング22は円周一箇所に軸方向のスリット23を有しており、緯糸25はこのスリット23を通して織前のノズル側端部に導かれている。またスリットリング22には従動側磁石9が下方を向けて固定されている。
【0033】
上記構造のスリットリング22を備えたノズルの下方をスレイに装着した駆動側磁石が通過すると、駆動側磁石の移動に引きずられてスリットリング22が回動し、スリット23を通過している緯糸25を固定フィンガ24との間で保持したり解放したりする。
【0034】
スリットリング22の回動端が磁石とその両側に設けた鉄板などによって保持されるようにしておけば、緯糸の保持と解放がスレイの前後動に関連して交互に切り換えられることになる。すなわち緯糸の保持と解放は、駆動側磁石がノズルの下方を通過する度に切り換えられ、次の切換動作が起こるまで切り換えられた後の状態が保持される。一方、スリットリング22を巻バネ等によって一方の回動端に付勢するようにしておけば、駆動側磁石が緯入れノズルの下方を前記バネの付勢力と反対の方向に通過したときのみ、一時的に緯糸が保持または解放されるようになる。なお図1、2または図4、5の実施例において、揺動フィンガの保持状態または開放状態を保持したいときは、その保持期間をカバーする寸法の駆動側磁石を設けてやればよい。
【0035】
この発明の緯糸保持装置は、伸縮率の大きな緯糸の緯入れを行うときに、緯入れされた緯糸のノズル側端部を把持する保持装置として特に有用である。伸縮率の大きな緯糸は水噴射織機で織られることが多く、上記実施例は水噴射織機に適した構造のものについて説明したが、空気噴射織機においてもこの発明の緯糸保持装置を用いることができる。空気噴射織機では緯入れノズル1がスレイに搭載されて筬と同期運動をする。従って緯糸保持具7及び従動側磁石9がスレイなどの移動部材に設けられ、駆動側磁石12が織機フレームから延びる支持バー8などの不動部材に設けられる。
【0036】
図12ないし図15は、この発明の装置で緯糸のノズル側端部を保持する空気噴射織機の例を示す図である。図12は織機の緯入れ部分を示す斜視図、図13はスレイに装着された緯糸保持装置を示す模式的な側面図、図14は緯糸保持装置の動作を示す側面図、図15は緯糸の挟持及び解放状態を示す模式図である。
【0037】
前述したように、空気噴射織機の緯入れノズル1は、筬2に設けた空気ガイド26にノズル先端を向けてスレイ10に取付けられている。緯糸保持具7は、ノズル1の直前の緯糸通路の上下に配置された揺動フィンガ6と固定フィンガ5とを備えている。揺動フィンガ6は、図15に示すように、フォーク状に設けられた2本の棒材からなる固定フィンガ5の間に入り込んで、緯糸25を屈曲させた状態で把持する。従動側磁石9は揺動フィンガ6に固定して設けられている。
【0038】
駆動側磁石は織機のフレームに固定された支持バー8に取付けられている。緯糸保持具7をノズル1直前の緯糸通路に設けたこの実施例の装置では、緯糸が飛走している期間継続して揺動フィンガ6の開状態を保持する必要がある(これに対して第1実施例などに示した水噴射織機では、飛走が開始されれる時に揺動フィンガが開いていれば足りる)。この動作を実現するために、第6実施例の装置では、支持バー8に開動作用駆動側磁石12aと閉動作用駆動側磁石12bとを設け、かつ揺動フィンガ6の開状態を保持する磁性材料からなる吸着板27を筬2の側方に設けている。
【0039】
図13、14に示した装置の開動作用駆動側磁石12aは、従動側磁石9を磁気反発して揺動フィンガ6を開き、閉動作用駆動側磁石12bは、従動側磁石9を磁気吸着して揺動フィンガ6を閉じる。開放された揺動フィンガ6は、閉動作用駆動側磁石12bで吸引されるまで、自分自身の磁力により、吸着板27に吸着されて開状態を保持する。駆動側磁石と従動側磁石が離れていることによる磁力の低下を避けたいときは、例えば図13、14の例で、閉動作用駆動側磁石12bを揺動フィンガ6の上方に配置して従動側磁石9を磁気反発して閉じる構造とする。
【0040】
開動作用駆動側磁石12aは、緯入れの開始位置(例えばクランク角90度)に設けられ、閉動作用駆動側磁石12bは、筬打ち直前の位置(例えばクランク角300度)に配置されている。筬2が後退する途中で、従動側磁石9と開動作用駆動側磁石12aとが対向すると、揺動フィンガ6は上動して緯糸を解放する。このとき同時にノズル1から空気が噴射されて緯入れが開始される。筬2が後退端に達したあと前進して筬打ちされる直前の位置で、従動側磁石9が閉動作用駆動側磁石12bに対向すると、揺動フィンガ6が下動して緯糸を把持し、この状態で筬打ちが行われ、緯糸のノズル側端部がカッタにより切断される。この動作を繰り返すことによって、緯入れが行われる。
【0041】
上記のようにこの発明の緯糸保持装置の緯糸の保持と解放は、駆動側磁石と従動側磁石の寸法及び位置関係によって、その開閉タイミングを任意に設定することができるとともに、その開閉期間も自由に設定することができるから、伸縮性の大きな緯糸を使用するときのノズル側緯糸端の保持のみでなく、反ノズル側の緯糸端の保持にも利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1実施例の緯糸保持装置の側面図
【図2】 図1の装置の平面図
【図3】 緯糸保持具の第2実施例の側面図
【図4】 この発明を2ノズル織機に採用した第3実施例の側面図
【図5】 2ノズル織機における駆動側磁石の切換装置の例を示す側面図
【図6】 2ノズル織機における駆動側磁石を電磁石とした参考例を示す側面図
【図7】 この発明を2ノズル織機に採用した第4実施例の側面図
【図8】 図7の装置の平面図
【図9】 緯糸保持具の第5実施例の側面図
【図10】 図9の装置の断面平面図
【図11】 図9の装置の緯糸保持状態を示す側面図
【図12】 第6実施例を示す斜視図
【図13】 第6実施例の模式的な側面図
【図14】 第6実施例の動作を示す側面図
【図15】 緯糸の保持及び解放を模式的に示す図
【符号の説明】
1 ノズル
5 固定フィンガ
6 揺動フィンガ
7 緯糸保持具
9 従動側磁石
10 スレイ
11 マグネットホルダ
12 駆動側磁石
Claims (5)
- 筬またはその支持ないし駆動部材に装着された駆動側永久磁石(12)と、飛走ないし筬打時の緯糸通路に設けられた少なくとも一方が開閉部材(6)である一対の部材(5,6)からなる緯糸保持具(7)と、前記開閉部材を開動ないし閉動させるべく装着された従動側永久磁石(9)とを備え、従動側永久磁石(9)は筬打ち動作と同期して移動する駆動側永久磁石の移動軌跡の一部区間における磁力線の作用範囲内に配置されていることを特徴とする、流体噴射織機の緯糸保持装置。
- 駆動側永久磁石(12)がそのN極またはS極を上向きにしてマグネットホルダ(11)を介してスレイ(10)またはスレイソードの上端に固定的に設けられており、緯糸保持具(7)が緯入れノズル(1)から織前のノズル側端部に至る緯糸通路に配置された揺動フィンガ(6)と固定フィンガ(5)からなる把持対であり、従動側永久磁石(9)はそのN極またはS極を下方に向けて揺動フィンガ(6)に固定的に装着されていることを特徴とする、請求項1記載の流体噴射織機の緯糸保持装置。
- 飛走ないし筬打時の緯糸通路に設けられた少なくとも一方が開閉部材(6)である一対の部材(5,6)からなる緯糸保持具(7)と、前記開閉部材を開動ないし閉動させるべく筬またはその支持ないし駆動部材に搭載して装着された従動側永久磁石(9)と、この従動側永久磁石の移動軌跡の一部区間を磁力線の作用範囲内にして配置された駆動側永久磁石(12)とを備えていることを特徴とする、流体噴射織機の緯糸保持装置。
- 開動用と閉動用の2個の駆動側永久磁石(12)がそのN極またはS極を上向きにしてマグネットホルダ(11)を介して織機フレームに固定的に設けられており、緯糸保持具(7)が緯入れノズル(1)の直前の緯糸通路に配置された揺動フィンガ(6)と固定フィンガ(5)からなる把持対であり、従動側永久磁石(9)はそのN極またはS極を下方に向けて揺動フィンガ(6)に固定的に装着されており、従動側永久磁石と共に移動して従動側永久磁石の磁力により揺動フィンガの開状態又は閉状態を保持する吸着部材(27)を備えていることを特徴とする、請求項3記載の流体噴射織機の緯糸保持装置。
- 複数個の駆動側永久磁石(12)と、従動側永久磁石への磁力線の作用領域内に駆動側永久磁石を選択的に進出させる切換装置(15,16)と、複数個の緯入れノズルに対応する緯糸通路にそれぞれ配置された緯糸保持具(7)とを備えていることを特徴とする、請求項1、2、3又は4記載の流体噴射織機の緯糸保持装置。
Priority Applications (2)
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